JPH0720216A - バッテリの残容量推定方法 - Google Patents

バッテリの残容量推定方法

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JPH0720216A
JPH0720216A JP5160647A JP16064793A JPH0720216A JP H0720216 A JPH0720216 A JP H0720216A JP 5160647 A JP5160647 A JP 5160647A JP 16064793 A JP16064793 A JP 16064793A JP H0720216 A JPH0720216 A JP H0720216A
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current
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straight line
discharge current
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Masahide Yokoo
雅秀 横尾
Masao Nagano
正雄 永野
Hidetomo Takemoto
英知 竹本
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Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】バッテリの放電電流値の変化が少ないような場
合であっても、最大出力推定法を用いてバッテリの残容
量を確実に推定することができるバッテリの残容量推定
方法を提供する。 【構成】最大出力推定法を用いてバッテリの残容量を推
定するに際し、あらかじめバッテリの複数種類の残容量
にそれぞれ対応する複数の前記電流・電圧特性直線の交
点またはその近傍領域に基準点を設定しておき、その基
準点と、バッテリの放電時に測定された放電電流及び出
力電圧の測定値に対応する該バッテリの測定動作点とを
略通るように電流・電圧特性直線を求める。求めた電流
・電圧特性直線からバッテリの最大出力値を求め、その
最大出力値によりバッテリの現在の残容量を推定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉛蓄電池やニッケル−
カドミウムバッテリ等のバッテリ(二次電池)の残容量
をリアルタイムで推定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】バッテリの残容量を推定する方法として
は、例えば特公平1−39069号公報に開示されてい
るような所謂、最大出力推定法が知られている。
【0003】この最大出力推定法は、バッテリの放電時
の電流・電圧特性がバッテリの残容量に応じて変化する
ことに着目したものであり、その基本的概要は次の通り
である。
【0004】すなわち、図6を参照して、例えば鉛蓄電
池において、その任意の残容量における放電電流と出力
電圧との関係(電流・電圧特性)は、図6の直線aに示
すように、出力電圧が放電電流の増加に伴ってほぼ直線
的に変化する特性となる。そして、この電流・電圧特性
直線aは、バッテリの残容量が減少するに従って、図6
の破線示の直線bに示すように、前記電流・電圧特性直
線aの下側(放電電流値を示す横軸側)に移動してい
く。尚、このような傾向は、鉛蓄電池以外にも、ニッケ
ル−カドミウムバッテリ等の種々のバッテリにおいて一
般的に認められる傾向である。
【0005】一方、今、バッテリの残容量が電流・電圧
特性直線aに対応する残容量であるとすると、バッテリ
の放電は電流・電圧特性直線a上の動作点で行われるの
で、この時、該バッテリから取り出すことのできる最大
出力値は次式(1)により求められる。
【0006】 最大出力値=(1/4)・Vmax ・Imax ……(1) ここで、Vmax 、Imax は、それぞれ電流・電圧特性直
線a上の動作点における出力電圧及び放電電流の最大値
であり、出力電圧の最大値は、電流・電圧特性直線aを
表す一次式において放電電流値を“0”とした場合の出
力電圧値、放電電流の最大値は、電流・電圧特性直線a
を表す一次式において出力電圧値を“0”とした場合の
放電電流値として求められる。
【0007】この場合、電流・電圧特性直線aはバッテ
リの残容量に応じて前述したように変化する傾向がある
ので、上記式(1)により求められる最大出力値とバッ
テリの残容量との間には一定の相関関係があり、最大出
力値は、バッテリの残容量の低下に従って低下してい
く。従って、あらかじめ上記最大出力値と残容量との相
関関係を求めておけば、上記最大出力値により現在のバ
ッテリの残容量を推定することができる。
【0008】そこで、従来の最大出力推定法において
は、バッテリの放電時に放電電流値と出力電圧値との組
を充分短い時間間隔で複数組(少なくとも2組)測定
し、これらの放電電流値及び出力電圧値の複数組の測定
点から前記電流・電圧特性直線を表す一次式を求めると
共に、その求めた電流・電圧特性直線の式から前記出力
電圧及び放電電流の最大値Vmax ,Imax を求め、これ
らの最大値Vmax ,Imaxから前記式(1)により現在
の最大出力値を求める。そして、その求めた最大出力値
によりバッテリの現在の残容量を推定するようにしてい
る。
【0009】ところで、このような最大出力推定法によ
りバッテリの残容量を推定する場合、放電電流値及び出
力電圧値の複数組の測定点から電流・電圧特性直線を表
す一次式を求めるため、各測定点における放電電流値は
比較的大きな差異を有するものであることが好ましい。
これは、各測定点における放電電流値が同一であれば、
明らかに電流・電圧特性直線を表す一次式を求めること
ができず、また、各測定点における放電電流値の差異が
比較的小さいものである場合には、放電電流値及び出力
電圧値の測定精度等や電流・電圧特性直線を求める際の
演算精度等に起因して、求められる電流・電圧特性直線
のばらつきが大きなものとなり易いからである。例え
ば、バッテリの放電電流値があまり変化しないような時
に放電電流値及び出力電圧値の組を複数組測定した場合
には、図6に示すように、放電電流値及び出力電圧値の
組の測定点Pは放電電流値の差異の小さい領域に密集
し、このような場合には、最小自乗法等の演算手法を用
いて電流・電圧特性直線の式を求めたとしても、測定点
Pの僅かな変動により、求められる電流・電圧特性直線
は、同図仮想線cのようになったり、同図仮想線dのよ
うになったりして大きくばらつく。そして、このような
電流・電圧特性直線から前記最大出力値を求めても、バ
ッテリの残容量を正しく推定することができない。
【0010】この場合、エンジン自動車に備えられたバ
ッテリにおいては、特公平1−39069号公報に開示
されているように、エンジンの起動時においてバッテリ
の放電電流値が比較的大きく変化するため、放電電流値
の差異が比較的大きなものとなる複数の測定点を得るこ
とが可能であり、従って、エンジンの起動時におけるバ
ッテリの残容量に対応する電流・電圧特性直線を比較的
精度よく求めることが可能である。また、エンジン自動
車の走行時においては、バッテリがオルタネータ等によ
り充電されるため、最大出力推定法によりバッテリの残
容量を推定することは困難であるものの、本来、このよ
うにバッテリが充電される状態でバッテリの残容量を把
握する必要性が乏しいため、さほど支障はない。
【0011】しかしながら、例えば、電気自動車に備え
られたバッテリにおいて、従来の最大出力推定法により
バッテリの残容量を推定する場合には、次のような不都
合があった。
【0012】すなわち、電気自動車においては、バッテ
リの残容量は、航続可能距離等の走行性能に直接影響を
及ぼすため、バッテリの時々刻々の残容量を把握するこ
とが重要である一方、例えば定速走行時等のように、バ
ッテリの放電電流値があまり変化しないような状態が多
い。
【0013】このため、最大出力推定法によりバッテリ
の残容量を推定しようとしても、放電電流値の差異が比
較的大きなものとなる複数の測定点を得ることができな
い場合が多く、このような場合には、前述したように、
求められる電流・電圧特性直線がばらつき、時々刻々の
バッテリの残容量を精度よく推定することが困難なもの
となっていた。
【0014】尚、このような従来の最大出力推定法によ
るバッテリの残容量の推定における不都合は、電気自動
車に限らず、バッテリの放電電流値があまり変化しない
ような状態でバッテリを使用するものにあっては、同様
に生じる不都合である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる不都合
を解消し、バッテリの放電電流値の変化が少ないような
場合であっても、最大出力推定法を用いてバッテリの残
容量を確実に推定することができるバッテリの残容量推
定方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者等は、種
々の検討を行った結果、バッテリの種々の残容量におけ
る電流・電圧特性直線を放電電流値が負の値となる領域
に向かって延長すると、各電流・電圧特性直線が一点あ
るいはその近傍領域に収束し、従って、各電流・電圧特
性直線は、いずれもほぼ同一の点を通る直線となるとい
うことを知見した。
【0017】そこで、本発明は前記の目的を達成するた
めに、バッテリの放電時に該バッテリの放電電流と出力
電圧とを測定し、その測定した放電電流と出力電圧とを
基に該バッテリの現在の放電電流と出力電圧との関係を
示す電流・電圧特性直線を求め、該電流・電圧特性直線
に従って該バッテリを放電させた場合に得られる該バッ
テリの最大出力値を該電流・電圧特性直線から求め、そ
の求めた最大出力値により該バッテリの現在の残容量を
推定するバッテリの残容量推定方法において、あらかじ
め前記バッテリの複数種類の残容量に対応してそれぞれ
求められる複数の前記電流・電圧特性直線の交点または
その近傍領域に基準点を設定しておき、前記バッテリの
放電時の残容量を推定するに際して、前記基準点と該バ
ッテリの放電時に測定された放電電流及び出力電圧の測
定値に対応する該バッテリの測定動作点とを略通るよう
に前記電流・電圧特性直線を求めることを特徴とする。
【0018】そして、前記バッテリの放電時に前記放電
電流と出力電圧との組を複数組測定し、各組の放電電流
及び出力電圧の測定値に対応するバッテリの測定動作点
と前記基準点とを略通るように前記電流・電圧特性直線
を求めることを特徴とする。
【0019】さらに、前記複数組の放電電流及び出力電
圧の測定値の平均値を求め、その求めた放電電流の測定
値の平均値及び出力電圧の測定値の平均値に対応するバ
ッテリの平均測定動作点と前記基準点とを通るように前
記電流・電圧特性直線を求めることを特徴とする。
【0020】
【作用】本発明によれば、前記基準点は、前記バッテリ
の各残容量に対応する電流・電圧特性直線がほぼ収束す
る点であり、任意の残容量における電流・電圧特性直線
は、該基準点もしくはその近傍を通る直線となる。従っ
て、前記バッテリの残容量を推定するに際して、前記バ
ッテリの放電時に測定された放電電流及び出力電圧の測
定値に対応する該バッテリの測定動作点と前記基準点と
を略通るように電流・電圧特性直線を求めることによ
り、現在の残容量に対応する電流・電圧特性直線を精度
よく得ることが可能となる。
【0021】この場合、直線は2点により求められるの
で、前記放電電流及び出力電圧の測定値の組を一組と
し、これに対応する一つの前記測定動作点と前記基準点
とを通るように電流・電圧特性直線を求めてもよいが、
前記放電電流と出力電圧との組を複数組測定し、各組の
放電電流及び出力電圧の測定値に対応するバッテリの測
定動作点と前記基準点とを略通るように前記電流・電圧
特性直線を求めることが好ましい。このようにすること
により、放電電流及び出力電圧の測定誤差等の影響を少
なくして現在の残容量に対応する電流・電圧特性直線を
より高い精度で得ることが可能となる。
【0022】そして、このように前記放電電流と出力電
圧との組を複数組測定する場合には、これらの各組の測
定値に対応する測定動作点と前記基準点とを併せて最小
自乗法等の演算手法により電流・電圧特性直線を求めて
もよいが、前記複数組の放電電流及び出力電圧の測定値
の平均値を求め、その求めた放電電流の測定値の平均値
及び出力電圧の測定値の平均値に対応するバッテリの平
均測定動作点と前記基準点とを通るように前記電流・電
圧特性直線を求めてもよい。このようにすることによ
り、電流・電圧特性直線を求めるための演算処理を簡略
なものとすることができる。
【0023】
【実施例】
〔実施例1〕本発明の一例を図1乃至図4を参照して説
明する。図1乃至図4は、本実施例の残容量推定方法を
説明するための説明図である。
【0024】まず、本発明の発明者等は、定格容量50
Ahの鉛蓄電池(以下、単にバッテリという)につい
て、所定の温度条件の基で放電電流を種々の値に変化さ
せながら満充電状態から放電させ、この時、所定のサン
プリングタイム(本実施例では0.6秒)毎に、バッテ
リの放電電流と出力電圧(端子電圧)とを測定し、これ
らの測定データが所定数(本実施例では480個)に達
する毎に、その所定数の放電電流及び出力電圧の測定値
から例えば最小自乗法を用いて電流・電圧特性直線を求
めた。尚、放電電流は、0〜70Aの範囲で変化させ
た。
【0025】その結果を図1(a)〜(c)に示す。こ
こで、図1(a)〜(c)は、それぞれバッテリの温度
を−8°C、25°C、40°Cとした場合において上
記のように求めた電流・電圧特性直線を示したものであ
り、横軸を放電電流、縦軸を出力電圧とした。
【0026】これらの図1(a)〜(c)を参照して明
らかなように、電流・電圧特性直線は、バッテリの放電
が進行するに従って、換言すればバッテリの残容量が減
少するに従って、電流・電圧特性直線の傾きが大きくな
っていく。そして、種々の残容量に対応する各電流・電
圧特性直線は、放電電流値が負の値となる領域で収束
し、その収束領域は、放電電流値が−200A〜−10
0A、出力電圧が13V〜15Vの範囲となる領域であ
る。
【0027】そこで、本発明の発明者等は、上記のバッ
テリについて、任意の残容量に対応する電流・電圧特性
直線のいずれもが略通ると考えられる基準点として、例
えば放電電流値が−100A、出力電圧値が14Vであ
る点を設定した。
【0028】次いで、本発明の発明者等は、上記のバッ
テリについて、前述の場合と同様に、バッテリの温度の
−8°C、25°C、40°Cの条件の基で、放電電流
を種々の値に変化させながら満充電状態から放電させ、
この時、例えば0.6秒のサンプリングタイム毎に、バ
ッテリの放電電流と出力電圧(端子電圧)とを測定し、
これらの測定データが例えば50個に達する毎に、その
50個の放電電流及び出力電圧の測定値と前記基準点
(−100A,14V)とからこれらを併せて例えば最
小自乗法により電流電圧特性直線の式を求めた。ここ
で、電流電圧特性直線の式は、放電電流値をI、出力電
圧値をVとして、次式(2)により与えられる。
【0029】V=aI+b ……(2) 上式(2)において、a,bが放電電流及び出力電圧の
測定値と前記基準点とから求めた未知数である。
【0030】そして、その求めた電流電圧特性直線の式
から前記(1)式により最大出力値を求めた。
【0031】 最大出力値=(1/4)・Vmax ・Imax ……(1) ここで、Vmax は、式(2)においてI=0としたとき
のVの値(=b)であり、Imax はV=0としたときの
Iの値(=−b/a)である。
【0032】このようにして求めた最大出力値の変化の
様子を図2(a)〜(c)に●点で示す。これらの図2
(a)〜(c)において、横軸は放電量、縦軸は最大出
力値であり、放電量は、前記サンプリングタイム毎に測
定した放電電流値を積算したものである。放電量が大き
くなるに従って、バッテリの残容量は減少する。
【0033】これらの図2(a)〜(c)を参照して判
るように、最大出力値は放電量が大きくなるに従って、
すなわち、バッテリの残容量が減少するに従って減少し
ていく。また、バッテリの温度が−8°Cのときには、
25°C、40°Cの場合に較べて最大出力値が小さく
なり、このことは、バッテリの温度の低温領域では、バ
ッテリの実質上の残容量が小さくなることを示してい
る。
【0034】次いで、本発明の発明者等は、バッテリの
温度に応じて例えば図3に示すような特性テーブルと、
上記のように求めた最大出力値とからバッテリの残容量
を推定した。ここで、図3に示した特性テーブルは、最
大出力値と残容量との関係を種々の実験に基づいて定め
たものであり、その基本的傾向は、最大出力値が大きい
程、残容量も大きくなる傾向となる。〔比較例1〕本発
明の発明者等は、前記実施例1において前記基準点を用
いて電流・電圧特性直線を求めるのと並行して、前記5
0個の放電電流及び出力電圧の測定値を得る毎に、これ
らの測定値のみを用いて最小自乗法により電流・電圧特
性直線を求め、さらにその求めた電流電圧特性直線から
実施例1と同様に最大出力値を求めた。
【0035】このようにして求めた最大出力値の変化の
様子を前記図2(a)〜(c)に○点で示す。
【0036】図2を参照して明らかなように実施例1と
比較例1とを比較すると、前記基準点を用いないで最大
出力値を求めた比較例1においては、得られる最大出力
値のばらつきが大きく、バッテリの満充電状態からの放
電量の僅かな変化、換言すればバッテリの残容量の僅か
な変化に対して最大出力値が大きく変化することがあ
る。
【0037】これに対して、前記基準点を用いた実施例
1においては、得られる最大出力値のばらつきが極めて
小さなものに抑えられ、バッテリの満充電状態からの放
電量の増加、換言すれば残容量の減少に従って、比較的
滑らかに最大出力値が減少していくことが判る。従っ
て、実施例1においては、バッテリのある残容量に対応
する最大出力値を常にほぼ同一の値で得ることができ、
その最大出力値からバッテリの残容量を前記特性テーブ
ルを用いて精度よく推定することができる。
【0038】このように基準点を用いることにより求め
られる最大出力値のばらつきが抑制されるのは、該基準
点の放電電流値(−100A)と、最大出力値を求める
際に測定される放電電流値の測定値(0A〜数百A程
度)とが大きな差異を有するからである。そして、この
ように基準点の放電電流値と、放電電流値の測定値とが
大きな差異を有するために、放電電流の複数の測定値が
あまり変化しないようなバッテリの放電時においても、
基準点を略通るように電流・電圧特性直線を求めること
により、その求められる電流・電圧特性直線のばらつき
を抑制することができ、従って、残容量を推定するため
の最大出力値を精度よく求めることができる。
【0039】尚、本実施例では、図3に示したような特
性テーブルを用いて最大出力値から残容量を推定するよ
うにしたが、例えば該特性テーブルに見られるような最
大出力値と残容量との関係をあらかじめ二次式や三次式
等の高次式により近似し、その近似式を用いて最大出力
値から残容量を推定するようにしてもよい。 〔実施例2〕本発明の他の例を図4(a),(b)を参
照して説明する。図4は本実施例の残容量推定方法を説
明するための説明図である。
【0040】本発明の発明者等は、定格容量60Ahの
鉛蓄電池(以下、単にバッテリという)について、前記
実施例1と同様に、バッテリの温度の20°Cの条件の
基で、放電電流を種々の値に変化させながら満充電状態
から放電させ、この時、0.6秒のサンプリングタイム
毎に、バッテリの放電電流と出力電圧(端子電圧)とを
測定し、これらの測定データが例えば50個に達する毎
に、その50個の放電電流及び出力電圧の測定値と、あ
らかじめ設定した基準点とから電流・電圧特性直線の式
を求めた。この場合、前記実施例1と同様に、あらかじ
めバッテリの種々の残容量に対応する電流・電圧特性直
線を求めておき、これらの電流・電圧特性直線のいずれ
もが略通る基準点として、放電電流値が−150A、出
力電圧値が14Vの点を設定した。
【0041】そして、該基準点(−150A,14V)
を用いて電流・電圧特性直線を求めるに際しては、前記
50個の放電電流及び出力電圧の測定値の加算平均値を
求め、その放電電流及び出力電圧の測定値の平均値に対
応するバッテリの動作点(平均測定動作点)と上記基準
点との2点を通るように電流・電圧特性直線を求めた。
ここで、基準点の放電電流値をI0 、出力電圧値を
0 、放電電流の測定値の平均値をIX 、出力電圧値の
測定値の平均値をVX とすると、上記平均測定動作点と
基準点との2点を通る電流・電圧特性直線の式は、次式
により表される。
【0042】 V=〔(V0 −VX )/(I0 −IX )〕・I +〔(VX 0 −V0 X )/(I0 −IX )〕 ……(3) 次いで、このようにして求めた電流・電圧特性直線の式
から前記実施例1と同様に最大出力値を求めた。求めた
最大出力値の変化の様子を図4(a)に示す。
【0043】尚、このようにして求めた最大出力値か
ら、前記実施例1と同様に、あらかじめ定めた特性テー
ブルを用いてバッテリの残容量を推定した。 〔比較例2〕本発明の発明者等は、前記実施例2におい
て前記基準点を用いて電流・電圧特性直線を求めるのと
並行して、前記50個の放電電流及び出力電圧の測定値
を得る毎に、前記実施例1と同様に、これらの測定値と
基準点とを併せて最小自乗法により電流・電圧特性直線
を求め、その求めた電流・電圧特性直線から最大出力値
を求めた。このようにして求めた最大出力値の変化の様
子を図4(b)に示す。
【0044】図4(a),(b)を参照して明らかなよ
うに、実施例2と比較例2とでは、得られる最大出力値
はほとんど差異がなく、また、いずれのものにおいて
も、得られる最大出力値のばらつきが極めて小さなもの
に抑えられ、バッテリの満充電状態からの放電量の増
加、換言すれば残容量の減少に従って、比較的滑らかに
最大出力値が減少していくことが判る。このことから、
電流・電圧特性直線を求めるに際しては、実施例1のよ
うに放電電流及び出力電圧の測定値と基準点との両者を
併せて最小自乗法により求めても、実施例2のように放
電電流及び出力電圧の測定値の平均値と基準点とから電
流・電圧特性直線を求めてもほぼ同一の最大出力値を精
度よく得ることができることが判る。そして、この場
合、本実施例の手法によれば、最小自乗法を用いる前者
の手法に比較して簡単な演算処理で電流・電圧特性直線
を求めることができ、バッテリの残容量に対応する最大
出力値を容易に精度よく得ることができる。
【0045】尚、以上説明した各実施例においては、鉛
蓄電池について説明したが、これに限らず、例えばニッ
ケル−カドミウムバッテリ等、その残容量に応じた電流
・電圧特性直線がほぼ一点に収束するようなバッテリで
あれば、本発明を適用することが可能であることはもち
ろんである。
【0046】また、前記各実施例においては、電流・電
圧特性直線を求めるための放電電流値及び出力電圧値の
組を複数測定するようにしたが、電流・電圧特性直線は
2点が定まれば求めることができ、また、そのうちの1
点は基準点を用いればよいので、放電電流値及び出力電
圧値の測定値は一つであってもよい。但し、測定誤差や
演算精度等を考慮すると、前記各実施例のように、放電
電流値及び出力電圧値の測定値の個数は複数であること
が好ましい。
【0047】ところで、以上説明した各実施例において
は、電流・電圧特性直線を求めるための基準点を設定す
るに際して、あらかじめ種々の残容量のバッテリについ
て、放電電流及び出力電圧を複数組測定し、これらの測
定値から求めた電流・電圧特性直線に基づいて基準点を
設定するようにしたが、次のようにして求めることも可
能である。
【0048】すなわち、例えば鉛蓄電池について、その
無負荷時の起電圧(開放電圧)をV O 、内部抵抗をRO
とすると、該鉛蓄電池は、回路的には図5(a)に示す
ような等価回路で表される。そして、鉛蓄電池において
は、一般に、起電圧VO 及び内部抵抗RO はそれぞれ図
5(b)及び図5(c)に示すように、残容量Cに対し
て直線的に変化する。ここで、図5(b)において、V
F は満充電状態における開放電圧、VE は全放電状態に
おける開放電圧であり、図5(c)において、RF は満
充電状態における内部抵抗、RE は全放電状態における
内部抵抗である。また、図5(b),(c)において、
横軸の残容量Cは、満充電状態における残容量を
“1”、全放電状態における残容量を“0”として表し
た。
【0049】これらの図5(b),(c)を参照して明
らかなように、任意の残容量Cにおける前記起電圧VO
及び内部抵抗RO は、前記VF ,VE ,RF ,RE を用
いてそれぞれ次式(4),(5)により表される。
【0050】 VO =VE +C(VF −VE ) ……(4) RO =RE +C(RF −RE ) ……(5) 一方、図5(a)を参照して、上記鉛蓄電池の放電時の
電流・電圧特性直線は、バッテリの出力電圧をV、放電
電流をIとすると、次式(6)により表される。
【0051】V=VO −RO I ……(6) そこで、上記式(6)に式(4),(5)を代入して整
理すると、次式(7)を得る。
【0052】 V=VE +C(VF −VE )−〔RE +C(RF −RE )〕I =VE −RE I+C〔(VF −VE )−(RF −RE )I〕 ……(7) ここで、上記式(7)が残容量Cの値によらずに成立す
る条件を求めると、 (VF −VE )−(RF −RE )I=0 すなわち、 I=(VF −VE )/(RF −RE ) ……(8) であり、このとき、上記式(7)から V=VE −RE I =VE −RE (VF −VE )/(RF −RE ) ……(9) が得られる。
【0053】従って、前記式(6)で表される電流・電
圧特性直線は、残容量Cの値によらず、放電電流値が上
記式(8)により与えられる値、出力電圧値が上記式
(9)により与えられる値となる点を通ることとなり、
この点が求めるべき基準点である。
【0054】よって、鉛蓄電池においては、満充電状態
及び全放電状態における開放電圧V F ,VE 並びに内部
抵抗RE ,RF を測定すれば、その測定値から前記式
(8),(9)により基準点を求めることができる。
【0055】
【発明の効果】上記の説明から明らかなように、本発明
のバッテリの残容量推定方法によれば、最大出力推定法
を用いてバッテリの残容量を推定するに際し、種々の残
容量に対応する複数の電流・電圧特性直線の交点または
その近傍領域にあらかじめ基準点を設定しておき、その
基準点と、バッテリの放電時に測定された放電電流及び
出力電圧の測定値に対応する該バッテリの測定動作点と
を略通るように電流・電圧特性直線を求めると共に、そ
の求めた電流・電圧特性直線からバッテリの最大出力値
を求めるようにしたことによって、バッテリの放電電流
があまり変化しないような場合であっても、求められる
最大出力値のばらつきを抑制してその精度を高めること
ができ、従って、該最大出力値によりバッテリの残容量
を精度よく推定することができる。
【0056】そして、バッテリの放電時に放電電流と出
力電圧との組を複数組測定し、各組の放電電流及び出力
電圧の測定値に対応するバッテリの測定動作点と前記基
準点とを略通るように電流・電圧特性直線を求めること
により、該電流・電圧特性直線から求められる最大出力
値の精度をさらに高めることができる。
【0057】さらに、複数組の放電電流及び出力電圧の
測定値の平均値を求め、その求めた放電電流の測定値の
平均値及び出力電圧の測定値の平均値に対応するバッテ
リの平均測定動作点と前記基準点とを通るように電流・
電圧特性直線を求めることにより、電流・電圧特性直線
を求めるための演算処理を簡単なものとすることがで
き、バッテリの残容量の推定を短時間で容易に行うこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を説明するための説明
図。
【図2】本発明の第1の実施例を説明するための説明
図。
【図3】本発明の第1の実施例を説明するための説明
図。
【図4】本発明の第2の実施例を説明するための説明
図。
【図5】本発明における基準点を求める手法の一例を説
明するための説明図。
【図6】最大出力推定法の原理を説明するための説明
図。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バッテリの放電時に該バッテリの放電電流
    と出力電圧とを測定し、その測定した放電電流と出力電
    圧とを基に該バッテリの現在の放電電流と出力電圧との
    関係を示す電流・電圧特性直線を求め、該電流・電圧特
    性直線に従って該バッテリを放電させた場合に得られる
    該バッテリの最大出力値を該電流・電圧特性直線から求
    め、その求めた最大出力値により該バッテリの現在の残
    容量を推定するバッテリの残容量推定方法において、あ
    らかじめ前記バッテリの複数種類の残容量に対応してそ
    れぞれ求められる複数の前記電流・電圧特性直線の交点
    またはその近傍領域に基準点を設定しておき、前記バッ
    テリの放電時の残容量を推定するに際して、前記基準点
    と該バッテリの放電時に測定された放電電流及び出力電
    圧の測定値に対応する該バッテリの測定動作点とを略通
    るように前記電流・電圧特性直線を求めることを特徴と
    するバッテリの残容量推定方法。
  2. 【請求項2】前記バッテリの放電時に前記放電電流と出
    力電圧との組を複数組測定し、各組の放電電流及び出力
    電圧の測定値に対応するバッテリの測定動作点と前記基
    準点とを略通るように前記電流・電圧特性直線を求める
    ことを特徴とする請求項1記載のバッテリの残容量推定
    方法。
  3. 【請求項3】前記複数組の放電電流及び出力電圧の測定
    値の平均値を求め、その求めた放電電流の測定値の平均
    値及び出力電圧の測定値の平均値に対応するバッテリの
    平均測定動作点と前記基準点とを通るように前記電流・
    電圧特性直線を求めることを特徴とする請求項2記載の
    バッテリの残容量推定方法。
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