JPH07165614A - 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤 - Google Patents

経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤

Info

Publication number
JPH07165614A
JPH07165614A JP6279911A JP27991194A JPH07165614A JP H07165614 A JPH07165614 A JP H07165614A JP 6279911 A JP6279911 A JP 6279911A JP 27991194 A JP27991194 A JP 27991194A JP H07165614 A JPH07165614 A JP H07165614A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nasal
composition
propylene glycol
alcohol
medicine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP6279911A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3597233B2 (ja
Inventor
Katsuya Mukai
勝也 迎
Mitsuhiro Mizumachi
充宏 水町
Takayoshi Ito
孝喜 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Original Assignee
Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc filed Critical Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Priority to JP27991194A priority Critical patent/JP3597233B2/ja
Publication of JPH07165614A publication Critical patent/JPH07165614A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3597233B2 publication Critical patent/JP3597233B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】薬理活性物質と水とアルコール類を含有し、そ
のアルコール類の含量が組成物全体量の10〜70容量
%であることを特徴とする経鼻組成物及びこれを含有又
は応用してなる経鼻製剤。 【効果】水とアルコール類を所定割合配合した経鼻組成
物及びこれに薬理活性物質を配合した経鼻製剤は、鼻粘
膜からの良好な薬物の吸収性を有し、組織に対する刺
激、毒性が著しく低く、安全性が高い。また薬効、薬物
血中濃度等を十分に維持することができ、さらには水と
アルコール類は混合がきわめて容易であり、可溶化剤の
添加、乳化の必要もない等、生産、管理面においても優
れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、経鼻組成物及び経鼻
製剤に関し、さらに詳しくは、鼻粘膜への刺激性が非常
に低く、しかも薬理活性物質の吸収性を高める新規な経
鼻組成物及び経鼻製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、親水性が高く、油水分配率の小さ
い医薬化合物は、消化管から吸収されないか、きわめて
吸収され難いことが知られている。生理活性を有するペ
プチド或いは蛋白は、一般に親水性が高く、油水分配率
が小さいばかりでなく、消化管内或いは消化管壁の酵素
により分解を受けるため、消化管からの吸収はきわめて
困難である。
【0003】また、消化管から吸収された薬物の多く
は、肝臓での初回通過効果を受けるため、これら薬物に
十分な薬効を期待するには、これら生理活性を有するペ
プチド或いは蛋白の投与は注射に限られていた。しか
し、注射による投与は専門家に限られる上に、被投与者
に苦痛を伴うものであるので、特に頻回投与を必要とす
る場合には、より簡便で適用し易い製剤が望まれてい
る。
【0004】そこで、近年、注射に代わる投与法として
経鼻投与製剤が注目を集めている。鼻粘膜は、毛細血管
が豊富であり、膣粘膜等と比較して薬物の吸収性が良好
である上、その毛細血管に直接吸収された薬物は、肝臓
での初回通過効果も回避できる等の利点がある。しか
し、その生物学的利用率は必ずしも十分とはいい難く、
生理活性を有するペプチド又は蛋白の必要投与量は、経
鼻投与とはいえ、注射に比べると多く、また鼻粘膜の生
理的状態の変動(風邪、アレルギーなど)が薬物の吸収
性に影響を及ぼすという難点がある。
【0005】例えば、特開昭61ー33126号公報で
はフシジン酸誘導体を、特開平1ー501550号公報
ではリン脂質を、特開昭63ー243033号公報では
アルキルグルコシド類を、特開昭63ー39822号公
報ではショ糖脂肪酸エステルを、また特開昭52ー25
013号公報では界面活性剤等を用いることにより、経
鼻投与後の薬物の吸収率を高めたり、吸収のばらつきを
減らすための努力が払われているが、これらの組成物又
は吸収促進剤は、鼻粘膜刺激という重大な副作用を併わ
せもつため、未だ実用化に至ったものはないのが現状で
ある。しかも、従来の経鼻投与製剤に多く使用されてい
る防腐剤や保存剤の一部は界面活性能があるためそれに
よる局所刺激も問題視されている(J.pharm.p
harmacol,1990,42,145〜15
1)。
【0006】また特公平3ー38255号公報には、所
定粘度のヒドロキシプロピルセルロースを用いることに
より、粘膜への滞留性を上昇させ、吸収を増加させるこ
とが紹介されているが、その効果は必ずしも十分とはい
い難い。このため、より低刺激性で高い薬物吸収性をも
つ経鼻組成物及び経鼻製剤が強く望まれている。
【0007】一方、アルコール類は、例えば特開昭61
ー267528号公報、特開平1ー160916号公
報、特開昭63ー258821号公報等に記載されてい
るように、経鼻投与用組成物の成分として利用されてお
り、とりわけプロピレングリコールは、刺激性も弱く、
経口剤或いは注射剤の基剤としての使用前例もあり、安
全性も確認されていることから、添加剤として多く用い
られている。しかし上掲特開昭61ー267528号公
報及び特開平1ー160916号公報、また特開平1ー
501708号公報、特開平1ー501709号公報等
の記載によると、その添加は主に防腐剤、浸透圧調整
剤、可溶化剤、保湿剤として行われており、これらの場
合に用いられる濃度は通常5重量%前後である。
【0008】このほか、特開昭62ー283927号公
報では、プロピレングリコールを基剤として10%程
度、特公平4ー38728号公報では溶媒として20%
添加しているが、その薬物としてはステロイドに限定さ
れており、その主薬の溶解性上の問題からプロピレング
リコール添加量が多くなっているものである。しかし、
アルコール類は、以上における何れの処方においても、
局所投与製剤用であり、それらにプロピレングリコール
の添加による薬物の吸収性に関しては何らの記述もな
く、これらに、以降で述べる生理活性ペプチド類、生理
活性蛋白類等の粘膜吸収性が粘膜上の分解酵素阻害等の
作用により増加することを予想できるものではないし、
また鼻粘膜に対する一次刺激性についても一切考察され
ていない。
【0009】ただ、わずかに特開平1ー160916号
公報では、特定の薬理活性物質であるドーパミン用とし
てプロピレングリコールを吸収促進剤として例示しては
いるが、その添加量はただ主たる薬理活性物質であるド
ーパミンに対して0.1〜10重量%配合されると記載
されているだけで、組成物又は製剤中での添加量につい
て示されているのではなく、またこの点に関する具体例
が示されているのでもないから、これによって薬理活性
物質に対する本発明に係る効果を容易に類推することは
不可能である。
【0010】他方、経鼻投与組成物以外では、例えば特
開昭62ー51617号公報や特開昭62ー51619
公報に記載されているように、皮膚角質に保湿性を与
え、薬物の皮膚透過性を増加する効果は認められている
が、それが薬物吸収のバリアーである角質を有さない鼻
粘膜に対しても吸収促進効果を有することを類推するこ
とは容易ではなく、またプロピレングリコールを皮膚へ
適用した場合には、皮膚一次刺激性の問題等もあり
(「皮膚」、第26巻、1119〜1127、昭和59
年10月)、粘膜投与時の低刺激性を類推できるもので
はない。
【0011】また、プロピレングリコール以外のアルコ
ール類の経鼻組成物への応用例としては、例えば特開昭
63ー13965号公報に記載されているとおり、エタ
ノールがあるが、ここでの薬物は麦角アルカロイドに限
定されており、しかもこれは超音波エアロゾル装置を用
いる場合の使用に限定されている。またそこでは最も好
ましい溶剤としてエタノールの含量を10%としている
が、このエタノール含量では鼻粘膜への刺激性の問題が
残る。さらに、特開昭61ー267528号公報では、
ベンジルアルコールとエタノールを吸収促進剤として例
示されている。しかし、ここでの薬物は、カルシトニン
に限定されている上、エタノールについては、特に好ま
しい使用割合を1〜10%(w/v)であるとしてい
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、前述の諸
問題点を解決すべく種々の組成物につき鋭意実験、検討
を重ねた結果、驚くべきことに、水とアルコール類を薬
理活性成分に応じて或る特定の割合で配合することによ
り、前述の諸欠点を克服しうることを見い出し、本発明
を完成するに至ったものである。
【0013】すなわち、本発明は、これまでの以上の事
実ないしは事情に鑑みてなされたものであり、従来の経
鼻投与組成物又は経鼻製剤のもつ欠点を解消し、特定の
基剤処方をもって低刺激性で、しかも良好な薬物の吸収
を実現できる新しい経鼻組成物及びこれを含有又は応用
してなる経鼻製剤を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、薬理活性物質
と水とアルコール類を含有し、そのアルコール類の含量
が組成物全体量の10〜70容量%以上であることを特
徴とする経鼻組成物及びこの経鼻組成物を含有する経鼻
製剤ないしはこの経鼻組成物を応用してなる経鼻製剤を
提供するものである。
【0015】本発明における、アルコール類としては、
アルコール類であれば何れも使用可能であるが、炭素数
1〜4の低級アルコール、炭素数2〜5のアルカンジオ
ール又は炭素数3〜6の低級アルカントリオールである
のが望ましい。これらアルコール類としては、具体的に
は、メタノール、エチルアルコール、nープロピルアル
コール、イソプロピルアルコール、nーブチルアルコー
ル、エチレングリコール(1、3ーエタンジオール)、
プロピレングリコール(1、2ープロパンジオール、
1、3ープロパンジオール)、1、2ーブタンジオー
ル、1、3ーブタンジオール、1、4ーブタンジオー
ル、2、3ーブタンジオール、1、5ーペンタンジオー
ルやグリセリン等を挙げることができる。
【0016】これらのアルコール類は、単独あるいは2
種以上を混合して使用できるが、組成物全体量100容
量%に対して10〜70容量%、好ましくは15〜50
容量%、さらに好ましくは15〜30容量%配合され
る。また好ましい配合割合は、使用するアルコールの種
類、組合せ等如何により上記配合割合の範囲内で適宜決
定される。また、本発明で用いる薬理活性成分の性質
(例えば溶解性)等如何により、2種以上のアルコール
類を混合して用いる場合には、前述のように、単独では
粘膜刺激性等上問題があるエチルアルコール等を必要に
応じて適宜混合することも可能である。
【0017】またその配合割合の上限については、使用
するアルコールの種類、組合せ等如何により適宜決定さ
れるが、この場合その効果、コスト、副作用(特に刺激
性)等をも考慮して決定する必要があることは云うまで
もない。これらの中でもプロピレングリコールは、医薬
品添加物としての使用実績がある点等から特に好適であ
る。なおプロピレングリコール(1、2ープロパンジオ
ール)の場合には、その好ましい配合割合は組成物全体
量の15〜30容量%であるのが好適である。
【0018】さらに、本発明で用いる水としては精製
水、生理食塩水及びpHの調整等に用いられる緩衝液等
の何れであってもよい。これらの水は組成物全体量10
0容量%に対して1〜90容量%、好ましくは20〜8
7容量%、さらに好ましくは70〜85容量%の割合で
配合される。好ましい配合割合は先に述べたアルコール
の種類又はその組合せ等如何により上記配合割合の範囲
内で適宜決定される。
【0019】また、本発明で使用する薬理活性物質とし
ては、鼻粘膜から吸収される薬理活性成分であれば如何
なる種類のものも可能であるが、特に肝での初回通過効
果の大きい薬物、水溶性が高く経口投与では十分な吸収
が得られない薬物、消化管における分解が著しい薬物が
好ましく、具体的には生理活性ペプチド、生理活性蛋
白、これらの可能な塩及び誘導体、これらの異性体及び
光学異性体が使用でき、またこれらの2種以上を混合物
として使用することができる。
【0020】上記薬理活性物質の具体例としてはインス
リン、カルシトニン、カルシトニン関連遺伝子ペプチ
ド、バソプレッシン、デスモプレッシン、プロチレリン
(TRH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、黄体
形成ホルモン放出因子(LHーRH)、成長ホルモン放
出ホルモン(GRH)、神経成長因子(NGF)及びそ
の放出因子、アンギオテンシン(アンジオテンシン)、
副甲状腺ホルモン(PTH)、甲状腺刺激ホルモン(T
SH、サイロトロピン)、卵胞刺激ホルモン(FS
H)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン、血清
性性腺刺激ホルモン、下垂体ホルモン(HCG)、成長
ホルモン、ソマトスタチン、ソマトメジン、オキシトシ
ン、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、エンドルフ
ィン、エンケファリン、エンドセリン、コレシストキニ
ン、ニューロテンシン、インターフェロン、インターロ
イキン、トランスフェリン、エリスロポエチン、スーパ
ーオキサイドデスムターゼ(SOD)、フィルグラスチ
ム(GーCSF)、レニン、バソアクティブ・インテス
ティナル・ポリペプチド(VIP)、ムラミルジペプチ
ド、コルチコトロピン、ウロガストリン、心房性ナトリ
ウム利尿ペプチド(hーANP)、エストロジェン、プ
ロゲステリン、副腎皮質ステロイドホルモン、等を挙げ
ることができる。
【0021】このうち、好ましくは、分子量の比較的小
さな生理活性ペプチドであるカルシトニン、カルシトニ
ン関連遺伝子ペプチド(CGRP)、バソプレッシン、
デスモプレッシン、プロチレリン(TRH)、副腎皮質
刺激ホルモン(ACTH)、黄体形成ホルモン放出因
子、成長ホルモン放出ホルモン(GRH)、成長ホルモ
ン、オキシトシン、ムラミルジペプチド、これらの可能
な塩及び誘導体、異性体及び光学異性体、並びに、これ
らの2種以上の混合物を使用することができる。さらに
好ましくは、より分子量の小さな生理活性ペプチドであ
るプロチレリン(TRH)、その可能な塩及び誘導体、
異性体及び光学異性体、並びに、これらの2種以上の混
合物を使用することができる。
【0022】本発明に係る経鼻組成物及びこれを含有又
は応用してなる経鼻製剤は、水性溶液として、或いは鼻
粘膜上での薬物滞留性を向上させるために、増粘剤とし
て水溶性高分子又は両親媒性高分子を添加し、例えば滴
下容器、スプレー容器、鼻用エアロゾルアプリケーター
等に充填して使用される。その増粘剤或いはゲル化剤と
しては、例えば公知の高分子化合物である多糖類、ゼラ
チン、ポリビニルアルコール又びその誘導体、カルボキ
シビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニ
ルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合体及びそのア
ルキルエステル化物、アルコール可溶性ナイロン、ポリ
ビニルピロリドンービニルアセテート共重合体等が用い
られるが、上記組成物を溶解するものであれば制限はな
い。
【0023】このほか、本発明の経鼻投与組成物は、薬
物の化学的性質や製剤化上の必要に応じて、リポソー
ム、マイクロスフィア、マイクロカプセル、ナノパーテ
ィクル等を用いても差し支えない。これらの製剤は、公
知の手段に従い、適当な任意の順序で混合、溶解、懸
濁、乳化或いは反応させることによって処方し、製造す
ることができる。また何れの経鼻製剤においても、必要
に応じて一般に添加剤として経鼻用或いは外用液剤に通
常用いられる殺菌剤、防腐剤、乳化剤、可溶化剤、安定
化剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤等を所定量、適宜配合す
ることができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明
がこの実施例により限定されるものではないことは勿論
である。酒石酸プロチレリン(以下、TRHーTと略称
する)を薬物のモデルとして用い、ラットを実験動物と
して、以下の薬物の吸収促進効果、薬物の徐放効果、鼻
粘膜刺激性、また、ウサギにより分解酵素阻害性につい
ての評価を行った。
【0025】《1、薬物の吸収促進効果》まず、所要頭
のラットをウレタン麻酔する一方、試薬を以下の実施例
1〜3及び比較例1〜5のとおりに調製し、実施例1〜
3及び比較例1〜3の試薬ではラットの右鼻腔内(30
μl/頭)に投与し、また比較例4では静脈内に、比較
例5では筋肉内に、それぞれ150μlを投与した。次
いで投与5、10、30及び60分後に採血を行い、T
RHーTの血漿中濃度をHPLCにて測定した。
【0026】実施例1:TRHーT50mgを、水とプ
ロピレングリコールとを8.9:1.1(容量比)の割
合で混合した溶液に溶解し全量を1mlとした。 実施例2:TRHーT50mgを、水とプロピレングリ
コールとを8:2(容量比)の割合で混合した溶液に溶
解し、全量を1mlとした。 実施例3:TRHーT50mgを、水とプロピレングリ
コールとを7:3(容量比)の割合で混合した溶液に溶
解し、全量を1mlとした。 比較例1:TRHーT50mgを水とプロピレングリコ
ールを9.5:0.5(容量比)の割合で混合した溶液
に溶解し、全量を1mlとした。 比較例2:TRHーT50mgを、ヒドロキシプロピル
セルロース(20度、2%水溶液における粘度が100
0〜4000cP)2gを100mlの蒸留水に溶解し
た水溶液に溶解し、全量を1mlとした。 比較例3:TRHーT50mgを生理食塩水に溶解し、
全量を1mlとした。 比較例4:TRHーT10mgを生理食塩水に溶解し、
全量を1mlとした。 比較例5:TRHーT10mgを生理食塩水に溶解し、
全量を1mlとした。
【0027】〈結果1〉以上の結果を表1及び図1に示
す。これら図表中、TRHーTの血漿中濃度は「μg/
ml」の単位で、またAUCの単位は、「μg・分/m
l」である。またn=5、血漿中濃度は「平均値±標準
誤差」として示し、静脈内投与の0分後は、各個体で外
挿して平均を求めた。またAUCは、各測定時間での平
均値を用い、台形法にて算出した。
【0028】表1及び図1から明らかなとおり、TRH
ーTの血漿中濃度は、実施例1は、単純組成すなわち生
理食塩水である比較例3よりかなり高い。また実施例2
及び3では、吸収速度が速くなり、比較例4(静脈内投
与)を除く全ての比較例に比べて速い段階で明らかに高
濃度となる。またこの結果によると、水にアルコールを
添加することにより薬物の粘膜吸収性が上昇することは
明かであり、その添加による薬物吸収促進効果はアルコ
ールの添加量に依存していることが分かる。
【0029】その薬物吸収促進効果は、実施例1すなわ
ちプロピレングリコール11容量%添加でほぼ筋肉内投
与と同等の生物学的利用率(AUC)を示し、実施例2
すなわち20容量%前後の添加量で吸収促進効果は最大
に近づき、実施例3すなわち30容量%まで高い利用率
を維持している。またその生物学的利用率は、比較例4
すなわち静脈内投与に対して約50%増であり、十分な
薬効が得られることが分かる。
【0030】
【表 1】
【0031】しかも、TRHーTとプロピレングリコー
ルの組合せの場合にはプロピレングリコールを20%以
上添加しても効果の増強はみられない。このことから組
み合わせる薬物とアルコールの種類によって最大の薬物
吸収促進効果を示す最小のアルコール添加量が存在する
ものと思われる。また、比較例2では薬物の滞留性を上
げたことによる徐放効果が認められ、AUCの上昇が認
められるが、本発明に認められるような薬物の速やかな
吸収は認められず、また生物学的利用率も十分とはいい
難い。
【0032】《2、薬物の徐放効果》1の実験と同様に
所要頭のラットをウレタン麻酔する一方、試薬を実施例
4及び比較例6〜7のように調整し、実施例4はラット
の右鼻腔内に投与し(20μl/頭)、比較例6では静
脈内に、比較例7では皮下に、ともに100μl投与し
た。次いで投与後3、5、10、15、20、30、4
5、60、90、120、180分後に採血を行い、T
RHの血中濃度をラジオイムノアッセイ(RIA)で測
定した。 実施例4:TRHーT100mgを、水とプロピレング
リコールとを8:2(容量比)の割合で混合した溶液に
溶解し、全量を1mlとした。 比較例6:TRHーT20mgを生理食塩水に溶解し、
全量を1mlとした。 比較例7:TRHーT20mgを生理食塩水に溶解し、
全量を1mlとした。
【0033】〈結果2〉以上の結果を図2に示す。図中
の血中濃度はng/ml(1ミリリットル中のナノグラ
ム)単位であり、n=5の「平均値±標準偏差」として
示した。図2から明らかなとおり、TRHの血中濃度は
実施例4は比較例6及び7に対し、投与後60分以降高
いレベルを維持している。この結果によると、水にアル
コールを添加することによる薬物の経粘膜吸収は、結果
1に見られるように一過性の薬物の吸収を促進するのみ
ならず、薬物の徐放効果をも併わせ持つことは明らかで
ある。しかもその徐放効果は、比較的徐放効果があると
されている皮下投与に比べても吸収速度に大きな差はな
く、しかも血中濃度を維持する時間は長い。
【0034】《3、鼻粘膜刺激評価》ウレタン麻酔下の
ラットに対し下記実施例5、6及び比較例8〜11のと
おりに調製した試薬を経鼻投与し(30μl/頭)、2
時間後に鼻中隔を摘出した。この摘出は、走査型電子顕
微鏡(SEM)観察用試料作製上の常法により行ったも
のである。次に上記のとおり摘出した鼻中隔を組織固定
し、臨界点乾燥後、金蒸着し、鼻粘膜表面の形態をSE
Mにて観察した。鼻粘膜表面の損傷の程度は、表2に示
したように判定し、その平均値をもってその組成の鼻粘
膜刺激指数とした。
【0035】
【表 2】
【0036】実施例5:水とプロピレングリコールを
8.9:1.1(容量比)で混合した溶液。 実施例6:水とプロピレングリコールを8:2(容量
比)で混合した溶液。 比較例8:生理食塩水。 比較例9:生理食塩水にポリオキシエチレンラウリルエ
ーテル(オキシエチレンは約9単位、以下「BLー9」
と略称する)を0.5%(w/v)の割合で溶解し、全
量を1mlとした。 比較例10:経鼻投与用一般市販薬A(全身性)〔スプ
レキュア、登録商標(ヘキスト社)〕、全身作用性製
剤。 比較例11:経鼻投与用一般市販薬B(局所)〔プリビ
ナ、登録商標(チバガイギー社)〕、局所作用性製剤。
【0037】〈結果3〉以上の結果を表3に示す。この
表3のとおり、例えば、実施例5及び実施例6は、比較
例10及び比較例11の市販点鼻剤の刺激と同等かそれ
以下の刺激しか示さなかった。この結果から分かるとお
り、本発明に係る経鼻組成物では、鼻粘膜刺激性が低い
ことが明かである。
【0038】
【表 3】
【0039】《4、分解酵素阻害性評価》ウサギの鼻粘
膜を生理食塩水中でホモジネートし、遠心分離すること
によって得た上清を酵素液とした。この酵素液を用いて
実施例7〜9及び比較例12、13のとおりの試薬を作
成し、温度37℃の温水浴中でインキュベートし、薬物
残存量をHPLC法によって経時的に測定した。
【0040】実施例7:TRHーTの20μgを、酵素
液1.30mlとプロピレングリコール0.21mlと
生理食塩水0.49mlとを混合した溶液(プロピレン
グリコール含量10%、容量比)に溶解した。 実施例8:TRHーTの20μgを、酵素液1.30m
lとプロピレングリコール0.40mlと生理食塩水
0.30mlとを混合した溶液(プロピレングリコール
含量20%、容量比)に溶解した。 実施例9:TRHーTの20μgを、酵素液1.30m
lとプロピレングリコール0.60mlと生理食塩水
0.10mlとを混合した溶液(プロピレングリコール
含量30%、容量比)に溶解した。 比較例12:TRHーT20μgを、酵素液1.30m
lとプロピレングリコール0.10mlと生理食塩水
0.60mlで混合した溶液(プロピレングリコール含
量5%、容量比)に溶解した。 比較例13:TRHーT20μgを、酵素液1.30m
lと生理食塩水0.70mlとを混合した溶液に溶解し
た。
【0041】〈結果4〉以上の結果を図3に示す。図示
のとおり、プロピレングリコール含量10%以上で酵素
阻害作用が認められ、20%以上ではほぼ完全な酵素阻
害作用が認められた。このように、本発明の経鼻組成物
には、鼻粘膜におけるペプチドの分解酵素の阻害効果が
あることは明かであり、このことは本発明の吸収促進効
果に寄与する一つのメカニズムが分解酵素阻害であるこ
とを示すもので、本発明に係る組成物がペプチドの投与
に適したものであることを示すものである。
【0042】また、結果1と同様にTRHーTとプロピ
レングリコールを組合せた場合にはプロピレングリコー
ルを20%添加すればその分解酵素阻害効果は最大とな
る。このことは組み合わせる薬物とアルコールの種類に
よって分解酵素阻害効果を示す最小のアルコール添加量
が存在することを示している。
【0043】
【発明の効果】以上のとおり、本発明に係る、水とアル
コール類をある特定の割合で配合する組成物、またこれ
らの組成物に薬理活性物質を配合した経鼻製剤は、良好
な薬物の吸収性を有することが明かである。またその吸
収促進効果に寄与する作用機序がペプチドの分解酵素阻
害作用という点で、従来の経鼻吸収促進組成物(特に界
面活性作用のあるもの、比較例9)のように粘膜上皮の
構造を部分的に変化あるいは破壊して透過を促進するも
のとは異なり、組織に対する刺激、毒性が著しく低いこ
とが明かである。
【0044】そのため、非常に安全性が高く、かつ速や
かな薬物吸収とともに長時間薬物血中濃度を維持できる
ことから薬効を十分期待できる経鼻製剤を提供すること
ができる。さらに経鼻製剤は、医者に頼ることなく、患
者自身又は介護者でも簡単に投与することが可能であ
り、単回投与はもとより、頻回投与時にも患者の苦痛及
び医師の労力を大幅に減ずることができる。これらの点
より本発明は医薬産業上特に有用なものとなる。
【0045】また、本発明で用いる水とアルコール類
は、混合がきわめて容易であり、安定性も優れている。
すなわち、従来の経鼻投与吸収促進組成物のような吸収
促進剤の混合に伴う可溶化剤の添加、乳化等の必要がな
い。このことは本発明が生産、管理面においても優れて
いることを示すものであり、その点で工業面でも有用な
ものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】薬物としてTRHーTを用い、ラットを実験動
物として実施した場合における、TRHーTの血漿中濃
度の経過を示す図。
【図2】薬物としてTRHーTを用い、ラットを実験動
物として実施した場合における、TRHの血中濃度の経
過を示す図。
【図3】ウサギの鼻粘膜からの酵素液を用いて実施した
分解酵素阻害性評価を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 38/04

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬理活性物質と水とアルコール類を含有
    し、そのアルコール類の含量が組成物全体量の10〜7
    0容量%であることを特徴とする経鼻組成物。
  2. 【請求項2】アルコール類が炭素数1〜4の低級アルコ
    ール、炭素数2〜5のアルカンジオール又は炭素数3〜
    6の低級アルカントリオールである請求項1記載の経鼻
    組成物。
  3. 【請求項3】アルコール類がプロピレングリコールであ
    る請求項2記載の経鼻組成物。
  4. 【請求項4】プロピレングリコールの含量が組成物全体
    量の15〜30容量%である請求項3記載の経鼻組成
    物。
  5. 【請求項5】薬理活性物質が生理活性ペプチド、生理活
    性蛋白、これらの塩、これらの誘導体、これらの異性
    体、これらの光学異性体又はその混合物である請求項
    1、2、3又は4記載の経鼻組成物。
  6. 【請求項6】生理活性ペプチドがプロチレリン(TR
    H)、その塩、その誘導体、その異性体、その光学異性
    体又はそれらの混合物である請求項5記載の経鼻組成
    物。
  7. 【請求項7】薬理活性物質と水とアルコール類を含有
    し、そのアルコール類の含量が組成物全体量の10〜7
    0容量%である経鼻組成物を含有してなることを特徴と
    する経鼻製剤。
JP27991194A 1993-10-21 1994-10-19 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤 Expired - Fee Related JP3597233B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27991194A JP3597233B2 (ja) 1993-10-21 1994-10-19 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28778493 1993-10-21
JP5-287784 1993-10-21
JP27991194A JP3597233B2 (ja) 1993-10-21 1994-10-19 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07165614A true JPH07165614A (ja) 1995-06-27
JP3597233B2 JP3597233B2 (ja) 2004-12-02

Family

ID=26553536

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP27991194A Expired - Fee Related JP3597233B2 (ja) 1993-10-21 1994-10-19 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3597233B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008019245A (ja) * 2006-06-15 2008-01-31 Japan Science & Technology Agency ヒューマニン誘導体又は該誘導体と神経向性ペプチドとの融合ペプチドを有効成分として含有する、アルツハイマー病予防・治療用の経鼻投与剤
JP2008195739A (ja) * 1996-07-03 2008-08-28 Alza Corp 非水性プロトン性ペプチド配合物
JP2014205698A (ja) * 2007-10-31 2014-10-30 ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド 活性剤の中枢神経系への鼻内投与

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008195739A (ja) * 1996-07-03 2008-08-28 Alza Corp 非水性プロトン性ペプチド配合物
JP2010043105A (ja) * 1996-07-03 2010-02-25 Durect Corp 非水性プロトン性ペプチド配合物
JP2008019245A (ja) * 2006-06-15 2008-01-31 Japan Science & Technology Agency ヒューマニン誘導体又は該誘導体と神経向性ペプチドとの融合ペプチドを有効成分として含有する、アルツハイマー病予防・治療用の経鼻投与剤
JP2014205698A (ja) * 2007-10-31 2014-10-30 ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド 活性剤の中枢神経系への鼻内投与

Also Published As

Publication number Publication date
JP3597233B2 (ja) 2004-12-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100217258B1 (ko) 경비조성물
EP1307232B1 (en) Novel composition for transdermal and/or transmucosal administration of active compounds that ensures adequate therapeutic levels
EP1530965B1 (en) Controlled release delivery system of sexual hormones for nasal application
KR100256715B1 (ko) 치료제의 설하 또는 구강 투여를 위한 조성물
JP4785960B2 (ja) 医薬組成物
US5693608A (en) Method of administering a biologically active substance
AU2005328680C1 (en) Pharmaceutical compositions and methods for peptide treatment
CS273139B1 (en) Method of pharmaceutical agent production for intranasal feed
JP2001522804A (ja) 浸透増強および刺激減少システム
Illum et al. Intranasal insulin: clinical pharmacokinetics
EP1517709B1 (en) Transdermal drug delivery system
EA002227B1 (ru) Фармацевтические композиции пептидов, имеющих низкую растворимость в физиологической среде
JP3047948B2 (ja) ペプチド類経鼻投与用組成物
JP3597233B2 (ja) 経鼻組成物及びそれを含有する経鼻製剤
KR20060012030A (ko) 디아제팜을 함유하는 경비 마이크로에멀젼
JPH0578258A (ja) 安定なカルシトニン医薬組成物及びその製造法
JP3123100B2 (ja) 吸収促進剤

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20040406

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040604

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20040803

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040907

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040908

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees