JPH0715247A - 電力増幅器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、非線型の入出力特性を有し、かつ
電力効率が高い増幅回路にその入出力特性を線型補償す
る回路を付加して構成された電力増幅器に関し、各出力
電力レベルで線型補償の精度を保持できることを目的と
する。 【構成】 非線型の入出力特性を有し、入力信号の電力
を外部指定された出力電力レベルに増幅する増幅手段１
１と、入力信号に伝送情報による変調に応じて伴う振幅
変動分を出力電力レベルに比例したレベルで抽出する振
幅変動分抽出手段１３と、出力信号の振幅変動分を検出
する振幅変動分検出手段１５と、振幅変動分抽出手段１
３と振幅変動分検出手段１５とから得られた振幅変動分
の差分を増幅手段１１に負帰還し、入出力特性を線型補
償する線型補償手段１７とを備えた電力増幅器におい
て、振幅変動検出手段１５に与えられる出力信号の電力
レベルをその可変範囲内で一定に保つ電力レベル補償手
段１９を備えて構成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、非線型の入出力特性を
有し、かつ電力効率が高い増幅回路にその入出力特性を
線型補償する回路を付加して構成された電力増幅器に関
する。

【０００２】

【従来の技術】ディジタル移動通信システムの携帯移動
局装置では、装置の小型・軽量化と並行して駆動電力を
低く抑えることが要求される。また、ディジタル移動通
信システムでは、無線周波数の有効利用を目的として振
幅位相変調方式が採用されるために、従来のアナログ方
式の移動通信システムと同様に送信電力の切り替えおよ
び安定化の制御に並行して、その制御の過程で送信波信
号に生じる歪みを補償することが要求される。したがっ
て、上述した携帯移動局装置では、電力効率が高い非線
型の増幅回路に線型補償を施して電力増幅器を構成する
ことにより、消費電力の低減と歪み補償とが同時にはか
られる。

【０００３】図３は、従来の電力増幅器の構成例を示す
図である。図において、電力増幅器３１の励振入力には
波形生成回路３２を介して伝送情報から得られたベース
バンド信号に応じて搬送波信号を変調する変調器３３の
出力が接続され、電力増幅器３１の出力には送信波信号
が得られる。

【０００４】電力増幅器３１では、変調器３３の出力が
飽和増幅回路３４の入力に接続され、その出力は結合器
３５の入力および後段に上述した送信波信号を与える。
結合器３５の出力は、抵抗器３６の一方の端子およびダ
イオード３７のアノードに接続され、そのカソードは差
動増幅器３８の反転入力に接続される。Ｄ／Ａ変換器３
９の入力および包絡線生成回路４０の一方の入力には送
信電力制御信号が与えられ、その第一の出力は差動増幅
器３８の非反転入力に接続される。Ｄ／Ａ変換器３９の
出力は、抵抗器３６の他方の端子に接続される。差動増
幅器３８の出力は加算器４１の一方の入力に接続され、
その他方の入力には包絡線生成回路４０の他方の出力が
接続される。加算器４１の出力は、ドレイン電圧制御回
路４２の入力に接続され、その出力は飽和増幅器３４の
増幅素子であるＧaＡs ＦＥＴ のドレイン端子に接続さ
れる。

【０００５】このような構成の電力増幅器では、飽和増
幅回路３４は、変調器３３から与えられる被変調波信号
の電力レベルを増幅して上述した送信波信号を得る。一
方、Ｄ／Ａ変換器３９は、所定の制御手順に基づいて数
ビット長の並列信号として与えられる送信電力制御信号
を取り込んで、その信号で与えられる所望の送信電力レ
ベルを電圧により示す電圧信号に変換する。ダイオード
３７は、抵抗器３６を介して与えられるこのような電圧
信号の電圧を基準として送信波信号を包絡線検波する。

【０００６】包絡線生成回路４０は、上述したベースバ
ンド信号の瞬時値Ｉ、Ｑと、送信電力制御信号で示され
る送信電力レベルにその電力レベルにおけるダイオード
３７の非直線性に起因した誤差の補償分を盛り込んだ係
数ｋとに応じて

【０００７】

【数１】

【０００８】の式で与えられる算術演算を行い、伝送情
報により変調された送信波信号の包絡線がとるべき瞬時
値ｅを求める。差動増幅器３８は、このような瞬時値ｅ
と上述した包絡線検波により得られた検波出力信号の瞬
時値との差をとることにより、その検波出力信号に飽和
増幅回路３４の非直線性に起因して含まれる歪みの成分
を求める。加算器４１は、包絡線の瞬時値ｅに上述した
誤差分を加算する。

【０００９】ドレイン電圧制御回路４０は、このように
して加算器４１から与えられる帰還信号が取り得る全て
の値に対応させて、飽和増幅回路３４の入出力特性を線
型補償するために与えるべきドレイン電圧の値を予め記
憶し、その記憶されたドレイン電圧の値を上述した帰還
信号に応じて逐次読み出してドレイン端子に与える。

【００１０】すなわち、飽和増幅回路３４ではその出力
に得られる送信波信号の包絡線の瞬時値を負帰還するこ
とにより非線型の入出力特性が線型補償されるので、電
力増幅器３１の出力には、送信電力制御信号に応じて設
定された電力レベルで低歪みの送信波信号が得られる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
従来の電力増幅器では、送信電力制御信号に応じて送信
波信号の電力レベルが数十dBの範囲で切り替えられ、そ
の切り替えに連動してダイオード３７の動作点が変動す
る。このように変動する各動作点では、ダイオード３７
は一様の直線性を有しないために歪み成分を発生し、そ
の歪み成分は差動増幅器３８、加算器４１およびドレイ
ン電圧制御回路４２を介して飽和増幅回路３４に負帰還
される。このような歪み成分は、例えば、角度変調方式
を用いた現用のアナログ方式の移動通信システムでは送
信波信号の振幅成分に伝送情報が含まれないために無視
できたが、振幅位相変調方式を用いたディジタル移動通
信システムでは伝送品質を劣化させる原因となってい
た。

【００１２】本発明は、切り替え設定された各出力電力
レベルにおいて、電力効率の劣化をを抑えつつ入出力特
性を精度よく線型補償できる電力増幅器を提供すること
を目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】図１は、本発明の原理ブ
ロック図である。本発明は、非線型の入出力特性を有
し、入力信号の電力を外部から指定された出力電力レベ
ルに増幅して出力信号を得る増幅手段１１と、入力信号
に伝送情報による変調に応じて伴う振幅変動分を出力電
力レベルに比例したレベルで抽出する振幅変動分抽出手
段１３と、出力信号を包絡線検波してその信号の振幅変
動分を検出する振幅変動分検出手段１５と、振幅変動分
抽出手段１３によって抽出された振幅変動分と振幅変動
分検出手段１５によって検出された振幅変動分との差分
を増幅手段１１に負帰還し、入出力特性を線型補償する
線型補償手段１７とを備えた電力増幅器において、振幅
変動検出手段１５に与えられる出力信号の電力レベルを
出力電力のレベルの可変範囲内で一定に保つ電力レベル
補償手段１９を備えたことを特徴とする。

【００１４】

【作用】本発明では、電力レベル補償手段１９は、増幅
手段１１の出力信号について、その信号の電力レベルの
変動分を吸収する処理を施した後に振幅変動分検出手段
１５に与える。

【００１５】すなわち、振幅変動分検出手段１５の動作
点は上述した出力電力レベルが切り替えられてもその出
力電力レベルの可変範囲内で一定に保たれるので、線型
補償手段１７を介して増幅手段１１に負帰還される帰還
量には、従来例のように出力電力レベルの切り替えに応
じて上述した動作点がシフトし、このような動作点にお
ける振幅変動分検出手段１５の直線性の誤差によって生
じていた歪み成分は含まれない。

【００１６】したがって、増幅手段１１の入出力特性
は、出力電力レベルの可変範囲で精度よく線型補償され
る。

【００１７】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例につい
て詳細に説明する。図２は、本発明の一実施例を示す図
である。

【００１８】図において、図３に示すものと機能および
構成が同じものについては、同じ参照番号を付与して示
し、ここではその説明を省略する。本発明の特徴とする
構成は、本実施例では、飽和増幅回路３４の入力端に可
変減衰器２１を配置し、結合器３５の出力と抵抗器３６
の一方の端子およびダイオード３７のアノードとの間に
縦続接続された可変減衰器２２および緩衝増幅器２３を
配置し、可変減衰器２１、２２の制御入力に送信電力制
御信号を与えた点にある。

【００１９】なお、本実施例と図１に示すブロック図と
の対応関係については、可変減衰器２１および飽和増幅
回路３４は増幅手段１１に対応し、波形生成回路３２お
よび包絡線生成回路４０は振幅変動分抽出手段１３に対
応し、結合器３５、抵抗器３６、ダイオード３７および
Ｄ／Ａ変換器３９は振幅変動分検出手段１５に対応し、
差動増幅器３８、加算器４１およびドレイン電圧制御回
路４２は線型補償手段１７に対応し、可変減衰器２２お
よび緩衝増幅器２３は電力レベル補償手段１９に対応す
る。

【００２０】以下、本実施例の動作を説明する。可変減
衰器２１、２２は、送信電力制御信号の可変範囲の中点
における減衰量が同じであり、かつその減衰量が送信電
力制御信号の変化に対して互いに同じ減衰量で反対方向
に増減する特性に設定される。したがって、可変減衰器
２１は送信電力制御信号に応じて飽和増幅回路３４の入
力電力レベルを増減し、その出力に得られる送信波信号
の電力レベルもこのような入力電力レベルに比例した値
に設定される。

【００２１】また、緩衝増幅器２３の増幅度は、送信波
信号の電力レベルが最大となる（可変減衰器２２の減衰
量が最大となる）ときに、ダイオード３７にそのダイオ
ードが効率よく包絡線検波を行うことができる電力レベ
ルで送信波信号が与えられる値に予め設定される。

【００２２】すなわち、ダイオード３７のアノードに与
えられる送信波信号の電力レベルは送信電力制御信号の
可変範囲内で一定に保たれるので、ダイオード３７の動
作点も同様にして一定に保たれる。したがって、従来例
では送信電力レベルの切り替えに応じてダイオード３７
の動作点が変動し、かつこれらの動作点ではダイオード
３７の直線性が一様に得られないために発生して飽和増
幅器３４に負帰還されていた歪み成分が抑圧され、消費
電力の増加を抑えて直線性のよい電力増幅器が実現され
る。

【００２３】なお、本実施例では、飽和増幅回路３４の
出力に得るべき送信波信号の電力レベルの切り替え、ダ
イオード３７に与えるべき送信波信号の電力レベルを切
り替えるために減衰器２１、２２および緩衝増幅器２３
を用いたが、本発明は、このような構成に限定されず、
例えば、これらに代えて可変利得増幅器を用いたり、減
衰器２１に代えてドレイン電圧制御回路４２を介して飽
和増幅回路３４の負帰還量を増減する方法を用いてもよ
い。

【００２４】また、本実施例では、飽和増幅回路３４の
入出力特性を線型補償するためにドレイン電圧制御回路
４２を介する負帰還路を形成したが、本発明は、このよ
うな構成の負帰還路に限定されず、飽和増幅回路３４の
回路方式や増幅素子の特性に適応した負帰還路を形成す
ればよい。

【００２５】さらに、本実施例では、波形生成回路３２
から出力される２つの直交したベースバンド信号の瞬時
値に基づいて飽和増幅回路３４の出力に得られるべき送
信波信号の振幅変動分を算出しているが、本発明は、こ
のような方法に限定されず、例えば、変調器３３から出
力される被変調波信号の振幅変動分を測定し、その測定
の結果に送信電力制御信号の内容に応じた重み付けその
他の処理を施す方法を用いてもよい。

【００２６】また、本実施例では、ダイオード３７を用
いた包絡線検波回路を介して送信波信号に含まれる振幅
変動分を検出しているが、本発明は、このような検波回
路の方式に限定されず、例えば、検波素子として所定の
動作点に設定されたトランジスタその他の半導体を用い
てもよい。

【００２７】さらに、本実施例では、飽和増幅回路３４
の増幅素子としてＧaＡs ＦＥＴ を用いたが、本発明
は、このような構成の飽和増幅回路に限定されず、所望
の電力レベルで送信波信号が得られ、かつ外部から所定
の精度で入出力特性を線型補償可能であれば、どのよう
な回路方式および増幅素子を用いてもよい。

【００２８】また、本実施例では、飽和増幅回路３４が
増幅する信号は変調器３３が行う振幅位相変調の被変調
波であるが、本発明は、このような直交変調方式により
得られた入力信号に限定されず、例えば、多値のＡＳＫ
変調方式のように伝送情報に応じて搬送波の振幅が変調
して得られた信号を増幅する電力増幅器であれば適用可
能である。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように本発明では、非線型
の入出力特性を有する増幅手段の出力電力レベルの切り
替え変動分を吸収した後にその増幅手段の出力信号の振
幅変動分を検出し、その振幅変動分に基づいて上述した
入出力特性を線型補償する負帰還量を生成する。

【００３０】すなわち、このようにして検出される振幅
変動分には、その変動分を検出する振幅変動分検出手段
の動作点が増幅手段の出力電力レベルの可変範囲内で一
定に保たれるので、従来例のように各動作点における振
幅変動分検出手段の直線性の誤差に起因した歪み成分は
含まれない。

【００３１】したがって、入出力特性が非線型であるが
電力効率が高い増幅手段を出力電力レベルの可変範囲に
わたって従来例より精度よく線型補償して用いることが
でき、特に、送信時の消費電力に制限がある携帯型の無
線機器では、送信波信号の電力増幅に高い精度の直線性
が要求される振幅位相変調方式に対応することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の原理ブロック図である。

【図２】本発明の一実施例を示す図である。

【図３】従来の電力増幅器の構成例を示す図である。

【符号の説明】

１１ 増幅手段 １３ 振幅変動分抽出手段 １５ 振幅変動分検出手段 １７ 線型補償手段 １９ 電力レベル補償手段 ２１，２２ 可変減衰器 ２３ 緩衝増幅器 ３１ 電力増幅器 ３２ 波形生成回路 ３３ 変調器 ３４ 飽和増幅回路 ３５ 結合器 ３６ 抵抗器 ３７ ダイオード ３８ 差動増幅器 ３９ Ｄ／Ａ変換器 ４０ 包絡線生成回路 ４１ 加算器 ４２ ドレイン電圧制御回路

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千葉 耕司 東京都港区虎ノ門２丁目10番１号 エヌ・ ティ・ティ移動通信網株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非線型の入出力特性を有し、入力信号の
   電力を外部から指定された出力電力レベルに増幅して出
   力信号を得る増幅手段（１１）と、 前記入力信号に伝送情報による変調に応じて伴う振幅変
   動分を前記出力電力レベルに比例したレベルで抽出する
   振幅変動分抽出手段（１３）と、 前記出力信号を包絡線検波してその信号の振幅変動分を
   検出する振幅変動分検出手段（１５）と、 前記振幅変動分抽出手段（１３）によって抽出された振
   幅変動分と前記振幅変動分検出手段（１５）によって検
   出された振幅変動分との差分を前記増幅手段（１１）に
   負帰還し、前記入出力特性を線型補償する線型補償手段
   （１７）とを備えた電力増幅器において、 前記振幅変動検出手段（１５）に与えられる出力信号の
   電力レベルを前記出力電力のレベルの可変範囲内で一定
   に保つ電力レベル補償手段（１９）を備えたことを特徴
   とする電力増幅器。