JPH0714220U - 液中軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 軸受摺動面に流体潤滑を可能にする溝を容易
に形成でき、かつ、溝を形成しても軸受効率が低下しな
い液中軸受を提供する。 【構成】 液体ポンプに使用される樹脂製の液中軸受で
あって、液体の吐出圧に伴う反力で１方向に偏位する回
転軸（３）に対して、該偏位部分で対向する上記軸受
（４）の内面に、軸方向の両端を除いて軸方向に延在す
る溝（５）を周方向に間隔をあけて形成し、上記溝の形
状を回転軸の回転に伴って溝内に流入した液体が回転軸
の外周面に対して径方向に流出するように設定し、該溝
から流出する液体により回転軸を軸受内面より浮かせる
力を発生させる構成としている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、液体ポンプのインペラ軸等に使用される液中軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、液体ポンプ用インペラ軸受には、腐食防止のため樹脂で形成されたもの が用いられており、その軸受面は滑らかにされている。このような軸受を遠心式 ポンプに採用すると、ポンプ吐き出し側に発生する圧力により、軸との接触位置 が常に一定方向に偏った状態で使用されるため、極圧による摩擦係数が増大して 軸受の効率が低下したり、偏摩耗を発生して、軸受けの寿命を縮める問題があっ た。

【０００３】 これを防止するために、従来、実開昭５９−１０５６１６号公報の「キャプス タン軸受」では、軸受の内面に螺旋状の溝を形成し、又、実開昭５９−４２３１ ７号公報の「動圧気体軸受装置」では、軸受面に軸方向と平行な複数の溝を形成 している。このような溝を形成しておくと、軸受と回転軸との間で、回転軸の回 転に追随するようにして流れる液体が、溝の箇所で乱れ、この乱流が回転軸を押 し返すように作用する結果、回転軸は軸受と非接触の状態で回転する。しかもそ の力は、回転軸と軸受とのギャップが小さい程、大きいため、回転軸は常に軸受 面から浮いた状態で回転(流体潤滑)するため、軸受部での摩擦係数を小さくでき る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、前者では、軸受面に螺旋溝を彫るには、軸受を幾つかに分割し た上で、エッチング手法等によって行わなければならないために、多大の手間お よびコストを要する欠点があった。 又、気体用軸受であった後者を、液体用軸受として使用すると、軸全面にわた って存在する動圧溝に粘性係数の高い液体が入り込むことにより、軸受全周にわ たって、乱流が生じて軸受の効率を低下させる欠点があった。

【０００５】 本考案は、上述した課題を解決するためになされたものであり、軸受面に容易 に溝を形成でき、かつ、溝を形成しても軸受効率が低下しない液中軸受を提供す ることを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本考案は、液体ポンプに使用される樹脂製の液中軸 受であって、 液体の吐出圧に伴う反力で１方向に偏位する回転軸に対して、該偏位部分で対 向する上記軸受の内面に、軸方向の両端を除いて軸方向に延在する溝を周方向に 間隔をあけて形成し、上記溝の形状を、回転軸の回転に伴って溝内に流入した液 体が回転軸の外周面に対して径方向に流出するように設定し、該溝から流出する 液体により回転軸を軸受内面より浮かせる力を発生させる構成としている液中軸 受を提供するものである。

【０００７】 上記溝の形状は、例えば、軸方向に平行な細長い溝とし、該溝の断面形状を液 体の流入側は傾斜させる一方、液体の流出側は回転軸の法線方向（径方向）に形 成している。該溝は回転軸の偏位部分と対向する軸受内面に周方向に所要間隔を あけて並設することが好ましい。尚、この溝を設ける範囲は軸受内周面の１８０ °以下としている。

【０００８】 溝は上記形状に限定されず、断面形状が鋸歯状、矩形状、円弧状、Ｖ字状等の いずれでも良く、溝より流出する液体により回転軸を軸受内面から浮かせられる 形状であれば良い。 また、溝の軸方向両端の形状も矩形状、円弧状、Ｖ字状等とすることが好まし い。

【０００９】

【作用】 上記軸受の構成とすると、液体の吐出に伴い、その反作用として回転軸が１方 向に偏位して、軸受と接触しようとする時、該軸受箇所に、軸方向と平行に延在 し、かつ、軸受の両端部を除くようにして形成した複数本の溝に、軸受と回転軸 との間で回転軸の回転に追随するようにして流れる液体が流入し、該流入した液 体が回転軸を押し返すように外周面に対して径方向に流出する結果、回転軸を軸 受と非接触で回転させることが出来る。

【００１０】

【実施例】

図１は、本考案の軸受が適用される液体ポンプの正面図を示しており、その平 面図を図２に示している。 液体ポンプ１のインペラ２の回転軸３は、本考案の軸受４で軸承されている。 この回転軸３が不図示の駆動源により図中の矢印方向に回転することにより、吸 込部１ａから液体が吸い込まれて、吐出部１ｂより吐出される。その時の吐出圧 がＰであれば、その反作用としてインペラ２に反対向きの力Ｐ'が生じ、その半 力Ｐ'により、回転軸３が図３に示したように、図中左方向に常に押圧される。 そこで本考案では、回転軸３が押圧される軸受４の部位に、軸方向に延在する 例えば７本の溝５を形成している。

【００１１】 図４は、軸受４の内面を回転軸３の回転方向に展開した図であり、本液体ポン プ１で送給される液体が溝５を通じて駆動源側へ漏れ出ることがないように、軸 受４の両端４ａより所定長Ｇを除くようにして、７本の溝をほぼ等間隔で形成し ている。図５は、溝５の両端部にそれぞれ丸みＲをつけた例を示している。 このような軸方向に平行な溝であれば、軸受を分割することなく溝を容易に形 成することができる。

【００１２】 図６は、溝５が形成される部位の詳細を示しており、更に溝部分の拡大図を図 ７に示した。各溝５は、前壁５１、後壁５２、底５３からなる。回転軸３の回転 に伴って流入する側が前壁５１であり、流出する側が後壁５２である。後壁５２ は法線方向（回転軸の径方向）に向かっているが、前壁５１は、溝５の開口幅が 広くなるように傾斜させている。 かかる形状の溝５であれば、回転軸３の回転に伴なって軸受４と回転軸３との ギャップ部に流れる液体が前壁５１に沿うようにして溝５内に入り込み、その入 り込んだ液体が底５３にぶつかった後、後壁５２に沿って(つまり、回転軸３の 表面に対して法線方向にして)溝５外へ流れ出る。その際、液体が回転軸３を図 中右方向に押しやる。即ち、回転軸３を軸受４の内周面から浮かせた状態し、回 転軸３が軸受４と非接触とし、流体潤滑させている。

【００１３】 一方、溝５を形成した部位以外では図３に示したように、軸受４と回転軸３と は常に非接触にあり、かつ、その部位では両表面が滑らかなため、そのギャップ 部に巡回する液体に乱れがなく、よって、軸受４と回転軸３との間の摩擦係数が 小さくなる。

【００１４】 溝５の断面形状としては、図７の外に、逆Ｖ字状の溝５ａ(図８)、角溝５ｂ( 図９)、半円状の溝５ｃ(図１０)等であってもよく、溝より流出する液体が回転 軸に対して法線方向に流出して回転軸を軸受内面より浮き上がらせる形状であれ ば良い。

【００１５】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案は、液体吐出に伴い回転軸が偏位する、軸受の箇 所に、軸方向と平行に延在し、かつ、軸受の両端部を除くように、複数本の溝を 形成し、軸受と回転軸との間で流れる液体が、溝の流入した後、回転軸を軸受内 面より浮き上がるように流出させているため、回転軸を軸受と非接触で回転させ ることが出来る。よって、回転軸が一方向に偏位をうけても、この偏位部分の摩 擦係数を小さくすることができる。 又、その溝は、軸方向と平行するため、溝の形成は容易である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の軸受が適用される液体ポンプの正面
図

【図２】 図１の液体ポンプの平面図

【図３】 本考案の軸受の１実施例を示した断面図

【図４】 図３の軸受の軸受面の展開図

【図５】 図３の軸受の変形例に対する展開図

【図６】 図３の軸受に対する部分詳細図

【図７】 図６の溝部分の拡大図

【図８】 別の形状を有する溝の断面図

【図９】 別の形状を有する溝の断面図

【図１０】 別の形状を有する溝の断面図

【符号の説明】

１ 液体ポンプ ２ インペラ ３ 回転軸 ４ 軸受 ５ 溝

フロントページの続き (72)考案者 伊藤 徹 静岡県湖西市梅田390番地 アスモ株式会 社内

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 液体ポンプに使用される樹脂製の液中軸
   受であって、 液体の吐出圧に伴う反力で１方向に偏位する回転軸に対
   して、該偏位部分で対向する上記軸受の内面に、軸方向
   の両端を除いて軸方向に延在する溝を周方向に間隔をあ
   けて形成し、上記溝の形状を、回転軸の回転に伴って溝
   内に流入した液体が回転軸の外周面に対して径方向に流
   出するように設定し、該溝から流出する液体により回転
   軸を軸受内面より浮かせる力を発生させる構成としてい
   る液中軸受。