JPH07134940A - 電子放出素子の製造方法 - Google Patents

電子放出素子の製造方法

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JPH07134940A
JPH07134940A JP28146293A JP28146293A JPH07134940A JP H07134940 A JPH07134940 A JP H07134940A JP 28146293 A JP28146293 A JP 28146293A JP 28146293 A JP28146293 A JP 28146293A JP H07134940 A JPH07134940 A JP H07134940A
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JP
Japan
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emitter
substrate
electron
emitting device
emitter substrate
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JP28146293A
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English (en)
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Masato Usuda
真人 薄田
Atsushi Hagiwara
萩原  淳
Katsuto Nagano
克人 長野
Munemitsu Hamada
宗光 濱田
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 エミッタ基体の表面にエミッタ基体材料より
低い仕事関数を有する化学的に安定な導電性被膜を有す
る電子放出素子化の製造方法を提供する。 【構成】 表面に被膜のないエミッタ基体9を作製した
後に、エミッタ基体が設けられている表面に炭化、窒
化、ホウ化等の処理をして、金属よりなるエミッタ基体
の表面に、炭化、窒化、ホウ化物等の被膜11を設け
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子源として使用する電
界放射型電子放出素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電界放射型冷電子源は半導体の微細加工
技術を利用してミクロンサイズに製造できしかも集積化
やバッチ加工が容易であるため、熱電子放射型電子源で
は不可能であったGHz帯増幅器や大電力・高速スイッ
チング素子、さらには高精細度フラットパネルディスプ
レイ用電子源への応用が期待されており、国内外におい
て盛んに研究開発がなされている。
【0003】特性の良い冷電子源を作製するためには電
子を放出し易い材料で、曲率半径0.1μm以下の鋭い
先端形状を有する陰極を形成するとともに、陰極先端と
電子引き出し電極の距離を極力近づけて配置させるよう
に設計する必要がある。
【0004】第5図にもっとも実績のある電界放射型冷
陰極のひとつであるコーン型エミッタを有する電子放出
素子の側断面概略を示す。このエミッタの形成方法は文
献(J.Appl.Phys., Vol47, No. 12, December 1976, p.
5248-5263)に詳しく記載されている。しかしモリブデ
ンやタングステンなどの金属の蒸着により形成されたコ
ーン型エミッタは仕事関数が高いために、電子を引き出
すために要する電圧が高く、またエミッタ表面へのガス
の吸着に起因する電子放出特性の劣化が起こりやすい等
の問題があった。
【0005】エミッタ表面へのガスの吸着の問題を解決
するためにエミッタ材料としてガスが吸着しにくい白
金、パラジウム、イリジウム、ロジウムなどの金属また
はそれらを含む合金で形成することが試みられている
(特開平4-138636号公報)ものの電子を引き出すために
は100 V程度の電圧を印加する必要があり、種々のデ
バイスに応用するうえにおいてはよりいっそうの低電圧
化の必要性がある。
【0006】そこで電子引きだし電圧、特性劣化の両方
の問題を解決する方法としてエミッタ表面に低い仕事関
数を有する、化学的に安定な抵抗材料を被覆する試み
(特開平2-220337号公報)がなされており、50 V程度
の電子引きだし電圧から電子の放出が開始し、かつ安定
動作が可能になった。
【0007】しかし、一旦コーン状に形成したエミッタ
基体の表面のみに金属酸化物、金属炭化物などの低仕事
関数材料を被覆するためには非常に複雑なプロセスが必
要であり実用化するには至っていない。
【0008】特に、金属酸化物や金属炭化物は化学的に
安定であるからケミカルエッチングによる加工は難し
く、一旦面状に形成した金属酸化物や金属炭化物をフォ
トリソグラフィーにより加工し、鋭い先端形状を有する
エミッタを形成することは非常に困難である。
【0009】前記公報には、エミッタ基体の表面に金属
炭化物が被覆されている冷陰極基体が開示されているも
のの、コーン状に形成したエミッタ表面のみに金属炭化
物を形成する具体的な方法については、何ら開示されて
いない。
【0010】また、同じく前記公報には、コーン状に形
成したエミッタ表面に金属酸化物の被膜を形成する方法
が開示されているものの、この方法では基板に平行な庇
状突出部を有する楔状エミッタ基体の表裏全面に均一な
被膜を形成することは困難である。
【0011】一方最近になって、半導体プロセスでシリ
コンのエミッタ基体を形成し、高温でエチレンガスと反
応させることにより、エミッタ基体の表面に炭化シリコ
ンの被膜を形成する方法が報告された。(40th interna
tional field Emission Sym-posium Program and Abstr
act,1993,p12)しかしながら、上記構成ではエミッタ基
体に半導体のシリコンを使っているので、エミッタ基体
材料(シリコン)とその表面を被覆している導電材料
(炭化シリコン)の仕事関数は共に大きく、駆動電圧の
低い電子放出素子を得ることはできない。また、単結晶
シリコン基板を用いるので、大面積が要求されるフラッ
トパネルディスプレイとしての用途には限界がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】金属やシリコン単結晶
を陰極に使用した微小電界放射型冷電子源は電子放出を
起こさせるために、エミッタとゲート電極との間に通常
100 V以上の電圧を印加する必要があり、デバイスに
応用した場合駆動回路のIC化が困難である。
【0013】さらに10-8 Torr程度の真空度で駆動さ
せるデバイスに応用した場合残留ガスがエミッタ表面に
吸着するとエミッタ表面の仕事関数を増加させるため放
出電子電流が減少する。またエミッタ先端部分が加熱さ
れると吸着ガスの脱離にともなう局所的圧力上昇がおこ
り、局所的な放電によるエミッタ表面の損傷という問題
が発生するため、安定な放出電子電流を得ることが困難
である。
【0014】本発明は電子引き出し電圧が低く、放出電
子電流が安定してデバイスの長寿命化を達成した微細な
電子放出素子、すなわちエミッタ基体の表面にエミッタ
基体材料より低い仕事関数を有する化学的に安定な導電
性被膜を有する電子放出素子を、広い面積に渡って均一
に製造する方法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】これらの目的は、下記
(1)〜(4)の本発明によって達成される。
【0016】(1)エミッタ基体の表面が、前記エミッ
タ基体を構成する金属材料より低い仕事関数を有する化
学的に安定な導電性材料で被覆されている電子放出素子
の製造方法において、前記エミッタ基体の表面に炭化、
窒化、ホウ化のいずれか1種または2種以上の処理をし
て、エミッタ基体材料より低い仕事関数を有する化学的
に安定な導電性材料を前記エミッタ基体の表面に被覆す
る電子放出素子の製造方法。
【0017】(2)前記エミッタ基体は基板上に設けら
れており、かつ前記基板に平行に庇状突出部を有する楔
型エミッタであって、前記庇状突出部において前記エミ
ッタ基体の基板側まで均一に前記導電性被膜を形成する
上記(1)の電子放出素子の製造方法。
【0018】(3)ゲート電極と前記エミッタ基体を薄
膜プロセスを用いて基板上に一体的に形成した後に、前
記ゲート電極と前記エミッタ基体が形成されている前記
基板面を炭化、窒化、ホウ化のいずれか1種または2種
以上の処理が為される雰囲気中に晒し、優先的に前記エ
ミッタ基体の表面に炭化、窒化、ホウ化のいずれか1種
または2種以上の処理をする上記(1)または(2)の
電子放出素子の製造方法。
【0019】(4)前記エミッタ基体は、4A族、5A
族および6A族から選ばれる1種以上よりなる上記
(1)ないし(3)のいずれかの電子放出素子の製造方
法。
【0020】本発明のエミッタ基体を構成する金属とし
ては、その金属を炭化して炭化物とするか、窒化して窒
化物とするか、ホウ化してホウ化物とするか、または炭
化、窒化、ホウ化のいずれか2種以上の処理をして炭化
物、窒化物、ホウ化物の2種以上の混合物とした場合
に、仕事関数が小さくなるものであればよく、単体の金
属または合金でもよい。
【0021】好ましくは、ニッケル等よりなるゲート電
極およびゲート電極とエミッタ基体の間に存在するSi
2などからなる絶縁層より炭化、窒化、ホウ化のいず
れか1種または2種以上の処理が為される雰囲気中に晒
した場合に、優先的に炭化、窒化、ホウ化のいずれか1
種または2種以上の処理が為される金属または合金がよ
い。
【0022】更に好ましくは、炭化物、窒化物、ホウ化
物の生成自由エネルギーの小さい4A族、5A族および
6A族の単体金属または合金がよく、特にタンタル、チ
タン、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウムがよい。
【0023】エミッタ基体の表面に炭化、窒化、ホウ化
のいずれか1種または2種以上の処理をするには、エミ
ッタ基体の周囲に炭素、窒素、ホウ素の1種以上を含む
ガスが接するようにしてエミッタ基体を加熱することで
達成される。
【0024】また、この場合、エミッタ基体が設けられ
ている基板と一緒に基板全体を加熱することが好まし
い。
【0025】更に、加熱温度が高いと基板の制約を受け
るので、少なくともエミッタ基体の周囲にプラズマが生
じるようにすると加熱温度を下げることができるので好
ましい。
【0026】
【作用】請求項1の発明では、表面に被膜のない従来の
エミッタ基体を形成した後に、エミッタ基体が設けられ
ている基板の表面を炭化、窒化、ホウ化のいずれか1種
または2種以上の処理が為される雰囲気に晒す。する
と、エミッタ基体の表面からその雰囲気に応じて、炭
素、窒素、ホウ素が拡散して、炭化、窒化、ホウ化等が
進み、エミッタ基体を構成元素に含む炭化物、窒化物、
ホウ化物等の被膜が形成される。エミッタ基体とこれら
の被膜の界面では、炭素、窒素、ホウ素が拡散している
ので、その界面が剥離することはない。
【0027】請求項2の発明では、スッパタ法、蒸着法
で生じるステップカバレッジの問題がないので、楔型エ
ミッタの庇状突出部の基板側の面や先端にも均一に炭化
物、窒化物、ホウ化物等の被膜を形成することができ
る。楔型エミッタの場合、突出部の突出している方向は
基板面と平行な方向であり、突出部の先端部や突出部の
基板側の面は、蒸着法やスパッタではステップカバレッ
ジが問題になって均一な被膜を付け難いか又は被膜を付
けることはできないにもかかわらず、本発明の方法によ
れば、電子が放出される最も重要な楔型エミッタの庇状
突出部の先端部分に均一な被膜を形成できる。
【0028】請求項3の発明では、表面に被膜のないエ
ミッタ基体及びゲート電極等を従来の公知の薄膜プロセ
スで加工した後にそれらが形成されている基板ごと炭
化、窒化、ホウ化の処理が為される雰囲気中に晒す。す
ると、ニッケル等からなるゲート電極やゲート電極とエ
ミッタ基体の間に存在するSiO2などからなる絶縁層
にはほとんど炭化、窒化、ホウ化の影響をほとんど受け
ないまま、エミッタ基体だけに炭化物、窒化物、ホウ化
物からなる被膜が形成される。
【0029】請求項4の発明では、炭化物、窒化物、ホ
ウ化物の生成自由エネルギーの小さい4A族、5A族お
よび6A族の単体金属又はそれらの合金をエミッタ基体
に用いることにより、エミッタ基体上の被膜の化学的安
定性は向上し、より低温、短時間でエミッタ基体上に所
望の被膜が形成されるので、相対的に前記ゲート電極や
前記絶縁層への炭化、窒化、ホウ化の影響は更に少なく
なる。
【0030】(実施例1)図1に本発明による微小電界
放射型電子放出素子の製造方法の一実施例を示す。
【0031】まず低抵抗シリコン単結晶基板5表面に熱
酸化により絶縁層として厚さ1.2μmのSiO2膜6を
形成し、続いてこのSiO2膜6の表面に電子引き出し
電圧印可用のゲート電極となる厚さ0.3μmのニッケ
ル膜7をスパッタリングにより堆積する。
【0032】次にニッケル膜7に直径1.5μmの円形
の穴を通常のフォトプロセスで形成後、ニッケル膜7を
マスクとしてSiO2膜6をドライエッチングすること
により図1(a)のごときゲート電極が庇状に突き出し
た構造を形成する。
【0033】その後アルミニウムの犠牲層8を基板5に
対して浅い角度で蒸着する。この工程により図1(b)
に示したようにゲート電極は犠牲層8に覆われるととも
にゲート孔径は縮小する。
【0034】この後タンタルを基板5に対して垂直に蒸
着することによりコーン状のエミッタ基体9を形成す
る。この工程においてゲート孔は膜の堆積とともに小さ
くなるので穴の内部に図1(c)のごときコーン状のエ
ミッタ基体を形成することができる。
【0035】この後犠牲層8のエッチングによりゲート
電極上の不要のタンタル10を除去して、通常のスピン
ト型の電界放射型電子放出素子図1(d)は完成する。
【0036】続いて、得られた電界放射型電子放出素子
のエミッタ基体に炭化物被膜を形成する方法を説明す
る。
【0037】図2にこの工程に使用した装置の概略を示
す。この装置はステンレス製の真空容器12、ターボ分
子ポンプおよびロータリーポンプからなる高真空排気系
13、ガス供給系14、基板ホルダー15高周波電極1
6、マッチング回路17、高周波電源18、赤外線導入
用石英窓19および赤外線加熱装置20からなる。
【0038】基板ホルダーに図2(d)のスピント型電界
放射電子放出素子が形成されたシリコン基板5を素子形
成面が高周波電極16と相対するようにセットした後、
真空容器12内を10-8 Torr台まで排気する。
【0039】次に水素をガス供給系14を通して100
sccmの流量に調整して真空容器12内に導入しながら
赤外線加熱装置20により基板5を1000℃まで急速
加熱する。
【0040】続いて前記ガス供給系を通して水素に加え
てプロパンを10 sccmの流量に調整して真空容器内に
導入するとタンタルからなるエミッタ基体9の表面は炭
化され始め、1時間の炭化処理によりエミッタ基体9の
表面に約30nmの炭化タンタル層11が形成される。
【0041】炭化タンタル層の存在はX線回折法および
に二次イオン質量分析法により確認した。X線回折パタ
ーンには炭化タンタルの(111)、(200)、(2
20)、(311)および(222)の各格子面からの
回折ピークが観察されることから多結晶状の炭化タンタ
ルがエミッタ9の表面に形成されたと考えられる。
【0042】一方ゲート電極のニッケル膜7および絶縁
層のSiO2膜6は上記分析により炭化層の存在が認め
られなかった。タンタルのみが炭化された原因としては
ニッケルおよびSiO2の炭化物生成自由エネルギーが
正であるのに対し、タンタルの炭化物生成自由エネルギ
ーが負側に大きいためタンタルの炭化物は非常に安定で
生成されやすいことが考えられる。
【0043】このようにして作製したスピント型の電界
放射型電子放出素子図1(e)はエミッタ基体9とゲー
ト電極7との間に40 Vの電圧を印加すると電子放出が
開始し、電子引きだし電圧の大幅な低減が達成された。
また1×10-8 Torrという比較的悪い真空度において
70 V印加による電子放出試験を行ったところ電子放出
電流は1週間後にも初期値を維持していた。
【0044】また、比較のため、図1(d)までの工程
で得られた、従来のスピント型の電界放射型電子放出素
子のエミッタ基体9とゲート電極との間に電圧を印加し
て電子放出状態を調べた。その結果、95 Vの電圧を印
可すると電子の放出が開始したが、真空中(1.0×1
-8 Torr)における120 V、1時間の駆動後の電子
放出電流は初期の90%にまで減少し、24時間後には
素子が破壊していた。
【0045】以上より、本発明の電子放出素子では、電
子引きだし電圧を下げるとともに電子放出特性を長期間
安定に保つことを可能とするものであることがわかる。
【0046】(実施例2)図3及び図4に本発明による
微小電界放射型電子放出素子の別の実施例を示す。
【0047】先ず石英もしくはホウケイ酸系ガラスなど
の透明絶縁性基板21上にスパッタリングにより基板保
護層として機能するO.1μ mのアルミナ層22および
0.8μ mの厚さを有するSiO2層23、さらにエミ
ッタ基体24(この時には、エミッタ基体に加工する前
のただの0.3μ mのチタン層)を順次堆積し、図3
(a)の積層構造を形成する。
【0048】次に鋭い先端形状を有するエミッタ基体を
形成するために通常のフォトリソグラフィおよびRIE
法により図3(b)及び図4に示した形状にチタン層を
加工する。図3(b)及び図4は、各々楔型エミッタ側
断面図、楔型エミッタが形成された面を上方から見た正
面図である。この時点ではまだエミッタ基体24上のレ
ジスト25は次のゲート電極のリフトオフプロセスに利
用するために除去していない。
【0049】その後エミッタ基体24およびレジスト2
5をマスクとしてSiO2をドライエッチング法により
等方的に加工することにより図3(c)のごときエミッ
タ基体が庇状に突きだした庇状突出部29を有する形状
を形成する。
【0050】さらにその後ニッケルなどの比較的高融点
な金属膜を基板に対して垂直な方向から全面に蒸着する
ことにより図3(d)のごとき構造を形成する。エミッ
タ基体上の不要なニッケル膜はレジストとともに剥離除
去すれば図3(e)のようなゲート電極26パターンを
自己整合的に形成することができ、これによってチタン
よりなる楔型のエミッタ基体24とゲート電極26が完
成する。
【0051】この楔型エミッタを有する微小電界放射型
電子放出素子ではエミッタとゲート電極との間隔を0.
5μm程度に膜厚によって制御することができるため、
50Vという低い電子引き出し電圧から電子放出が開始
する。
【0052】本発明は更に低い電子引き出し電圧によっ
て電子放出を可能とするものであり、次にその作製プロ
セスを詳細に説明する。
【0053】図2に示した装置の基板ホルダー15に図
3(e)に示した微小電界放射型電子放出素子が形成さ
れた基板5を載置し、真空容器12内を高真空排気系1
3により10-8 Torr台まで真空排気する。
【0054】次に水素ガス100 sccmをガス供給系1
4を通して真空容器12内に導入し、高真空排気系13
の排気速度を調整することにより真空容器12内の圧力
を0.1 Torrに維持する。
【0055】その後RF電極16に高周波電源18から
マッチング回路17を通して50Wの高周波電力を供給
し、水素ガスをグロー放電させるとともに赤外線加熱装
置20により微小電界放射型電子放出素子が形成された
基板5に石英窓19を通して赤外線を照射し400℃に
基板5全体を10分間加熱する。このプロセスにより基
板に付着していた汚れを除去し清浄な表面を得ることが
できる。
【0056】さらにその後水素ガスに加えてエチレンガ
ス20 sccmをガス供給系14を通して真空容器12内
に導入し、圧力を0.1 Torrに再調整した後高周波電
極16に100 Wの高周波電力を供給して水素ガスおよ
びエチレンガスをグロー放電させる。400℃において
炭化水素の活性種にさらされたチタンからなるエミッタ
基体24表面は徐々に炭化され、1時間の炭化処理によ
りエミッタ基体24の表面全体に約0.02μ mmの炭
化チタン層28が均一に形成される。
【0057】このようにして得られたエミッタ基体表面
に炭化チタンが形成された楔型の微小電界放射型電子放
出素子は25 Vの電子引き出し電圧から電子放出が開始
し、しかも10-6 Torr台の低真空中においても100
0時間以上放出電流に何の変化も見られなかった。
【0058】以上本発明によれば他に例を見ない画期的
な電界放射型電子放出素子を得ることができる。
【0059】なお、本実施例においてはエミッタとして
炭化タンタル及び炭化チタンを用いたが、ニオブ、ジル
コニウム、ハフニウムなどの比較的炭化物生成自由エネ
ルギーの小さい遷移金属またはそれらの合金を炭化して
も同様の好ましい効果を得ることができる。
【0060】さらにアンモニアプラズマによる窒化処理
やジボランプラズマによるホウ化処理によっても優れた
電子放出特性を有する電界放射型電子放出素子を得るこ
とができる。
【0061】また、炭化、窒化およびホウ化の2種類以
上の組み合わせの処理をしても本発明の効果が得られる
ことは自明であり、この場合、炭化、窒化、ホウ化の処
理を分けて行い多層状にしてもよいし、炭化、窒化、ホ
ウ化の処理を同時に行ってもよい。
【0062】
【発明の効果】請求項1の発明によれば化学的に安定な
酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などにケミカルエッ
チングなどの難しい加工を施すことなく、エミッタ基体
の表面がエミッタ基体材料より低い仕事関数を有する化
学的に安定な導電性材料で被覆されている電子放出素子
を容易に得ることができる。
【0063】またエミッタ基体の表面が非常に緻密な炭
化物、窒化物、ホウ化物またはその組み合わせからなる
被膜で覆われているため、酸素を主体とする残留ガスに
対して安定であり比較的悪い真空度においても安定な電
子放出特性が得られ、たとえ局所的な放電がおこったと
してもスパッタされにくい高硬度高融点材料であるため
素子の破壊には至らず、長寿命である。
【0064】更に、冷陰極基体をエッチングによって作
製しないのでエッチングむらによる各素子間のバラツキ
もない。
【0065】請求項2の発明によれば電子引きだし電圧
が50V以下で、低真空中においても安定した電子放出
特性を示す長寿命の電子放出素子を容易に作製すること
ができる。
【0066】請求項3の発明によれば表面に被膜のない
エミッタを有する電子放出素子を作製する従来の薄膜プ
ロセスをそのまま用いることができる。
【0067】請求項4の発明によれば400℃程度の低
温でも炭化物被膜をエミッタ基体上に形成することが可
能で、基板に単結晶シリコンを用いる必要がないので大
面積化が可能である。
【0068】以上のように本発明は、従来の電界放射陰
極(エミッタ)に簡単な炭化処理、窒化処理、ホウ化処
理、またはそれらの組み合わせの処理を施すことにより
容易にエミッタ表面に低仕事関数を有し化学的に安定な
被膜を形成することを可能とするもので、電子引きだし
電圧が低く駆動回路が安価で、低真空中においても安定
した電子放出特性を示す長寿命の電子放出素子の製造方
法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(e)は本発明の実施例1のプロセ
スを示す側断面図である。
【図2】 本発明の実施例において使用する炭化処理プ
ロセス用装置を示す概略図である。
【図3】 (a)〜(f)は本発明の実施例2のプロセ
スを示す側断面図である。
【図4】 本発明の実施例2のプロセスを示す側断面図
(図3の(b))の正面図である。
【図5】 従来のコーン型エミッタを有する電子放出素
子の断面図である。
【符号の説明】
1 シリコン基板 3 ゲート電極 4 コーン型エミッタ 5 シリコン基板 9 エミッタ基体 11 炭化タンタル層 24 エミッタ基体 26 ゲート電極 28 炭化チタン層 29 庇状突出部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 濱田 宗光 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティー ディーケイ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エミッタ基体の表面が、前記エミッタ基
    体を構成する金属材料より低い仕事関数を有する化学的
    に安定な導電性材料で被覆されている電子放出素子の製
    造方法において、前記エミッタ基体の表面に炭化、窒
    化、ホウ化のいずれか1種または2種以上の処理をして
    エミッタ基体材料より低い仕事関数を有する化学的に安
    定な導電性被膜を前記エミッタ基体の表面に形成する電
    子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記エミッタ基体は基板上に設けられて
    おり、かつ前記基板に概ね平行に庇状突出部を有する楔
    型エミッタであって、前記庇状突出部において前記エミ
    ッタ基体の基板側まで均一に前記導電性被膜を形成する
    請求項1の電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 ゲート電極と前記エミッタ基体を薄膜プ
    ロセスを用いて基板上に一体的に形成した後に、前記ゲ
    ート電極と前記エミッタ基体が形成されている前記基板
    面を炭化、窒化、ホウ化のいずれか1種または2種以上
    の処理が為される雰囲気中に晒し、優先的に前記エミッ
    タ基体の表面に炭化、窒化、ホウ化のいずれか1種また
    は2種以上の処理をする請求項1または2の電子放出素
    子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記エミッタ基体は、4A族、5A族お
    よび6A族から選ばれる1種以上よりなる請求項1ない
    し3のいずれかの電子放出素子の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100290139B1 (ko) * 1998-09-03 2001-06-01 구자홍 전계방출팁제조방법및그를이용한전계방출소자
US8344607B2 (en) 2008-12-02 2013-01-01 Canon Kabushiki Kaisha Electron-emitting device and display panel including the same

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