JPH07118814A - 耐食性、加工性に優れる非磁性鉄基合金 - Google Patents

耐食性、加工性に優れる非磁性鉄基合金

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JPH07118814A
JPH07118814A JP20476194A JP20476194A JPH07118814A JP H07118814 A JPH07118814 A JP H07118814A JP 20476194 A JP20476194 A JP 20476194A JP 20476194 A JP20476194 A JP 20476194A JP H07118814 A JPH07118814 A JP H07118814A
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JP
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alloy
less
workability
corrosion resistance
magnetic
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JP20476194A
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English (en)
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Kazuyuki Nakasuji
和行 中筋
Masaki Takashima
昌樹 高島
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Sanyo Special Steel Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sanyo Special Steel Co Ltd
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】Niを含有せず、耐食性、加工性に優れた非磁性
合金で、しかも安価で実用性の高い金属材料の提供。 【構成】(1) 重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%
およびCo:3〜40%を含有し、残部が実質的にFeからな
り、かつMnとCoの含有量が下記式、望ましくは式を
満たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性であるFe基合
金。 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・ 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・ (2) 上記(1) の合金成分に加えて更にAg:0.02〜2重量
%を含有し、耐食性と加工性に優れ、非磁性であり、更
に被削性にも優れたFe基合金。 【効果】この合金は、金属アレルギーを誘発するおそれ
のあるNiを含有しないので、人体に触れる各種の機器類
の構成材料やインプラント材料として使用することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耐食性および加工性
に優れ、しかも非磁性の合金、さらに詳しくは、ニッケ
ル (Ni) を含まないFe−Cr−Mn−Co系合金またはFe−Cr
−Mn−Co−Ag系合金であって、使用中に人体に接触する
ことの多い製品の構成材料として用いる合金に関する。
【0002】
【従来の技術】耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性であ
る合金としては、JIS に SUS 304、SUS 316 等として規
定されるオーステナイト系ステンレス鋼あるいはNi基合
金が知られている。
【0003】時計や眼鏡フレーム等の人体に接触する日
用品の構成材料としては、耐食性、加工性および耐久性
を生かして金属材料の使用が一般的になっている。ま
た、歯根や人工関節のように人体に埋め込んで使用する
材料 (インプラント材料) としても金属が用いられるよ
うになってきた。これらの材料には耐食性や加工性の外
に、磁場においても磁化しない、いわゆる非磁性が必要
とされることが多い。
【0004】上記のような性質を兼備している代表的な
金属材料は、前記のようにオーステナイト系ステンレス
鋼およびNi基合金であり、インプラント材料以外では広
く用いられている。例えば、特公昭60−24175 号公報で
提案されている眼鏡部品用合金も、オーステナイト系ス
テンレス鋼の改良合金である。しかし、この特公昭60−
24175 号公報の合金も含めて、オーステナイト系ステン
レス鋼は、主要な成分としてNiを含有している。
【0005】近年、Niによる金属アレルギーや発ガンの
可能性が指摘され、人体に直接接触して使用される眼鏡
フレーム、時計バンド等の装飾品構成材料、インプラン
ト材料、および使用中に人体に直接接触することの多い
医療用機器、サニタリ機器、食器・厨房製品、さらに電
気・電子機器等の材料としてもNiを含有するステンレス
鋼あるいはNi基合金の使用が危惧されている。既に、ヨ
ーロッパ諸国の一部では、眼鏡フレームや時計バンド等
の装飾品の材料について、Ni含有量の規制が始まってい
る。
【0006】上記のような事情から、従来、眼鏡フレー
ム等の装飾品に使われている洋白(Cu−Ni合金の一つ)
やNi基合金に替わるものとして、TiまたはTi基合金およ
びCo基合金が注目されている。人体への影響を考慮し、
上記の問題に対処する有効な金属としては、上記のTiま
たはTi基合金の外に、Zr、Taおよびそれらの合金、Co−
Cr−Mo合金等が考えられている。これらの金属材料は耐
食性に優れていると同時に非磁性でもある。しかし、こ
れらの金属材料は上記の製品の素材として使用する材料
としては高価すぎる材料である。
【0007】特開昭63−11653 号公報 (米国特許第4,75
1,046 号明細書) には、Co: 8 〜30wt%、Cr: 13〜30wt
%を主成分とするFe基合金が記載されている。しかし、
この合金は、耐キャビテーション浸食性を特徴とし、水
力機械部品の素材または補修用に使用されるものであっ
て、Niの人体への影響を考慮して成分設計を行ったもの
ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Niを
実質的に含有せず、耐食性、加工性に優れた非磁性合金
で、しかも安価で使用中に人体に触れることの多い製品
の構成材料として用いてもアレルギー誘発のおそれがな
い金属材料を提供すること、および上記の特性を備え、
かつ被削性にも優れた金属材料を提供すること、にあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は下記 (1)、(2)
および(3) の合金を要旨とする。
【0010】(1) 重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35
%およびCo:3〜40%を含有し、残部が実質的にFeから
なり、かつMnとCoの含有量が下記式を満たす合金であ
って、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材料
として用いる耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性である
合金。
【0011】 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・ (2) 重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%、Co:3〜
40%、C、N:各々 0.5%以下、Si: 2.0%以下、W、
Mo:各々 5.0%以下、V:3.0 %以下、Y: 0.5%以
下、Nb、Ti、Al:各々 1.0%以下、希土類元素:各々
0.05 %以下、S、Se、Te、Zr、Ca、Pb:各々 0.20 %
以下を含有し残部が実質的にFeおよび不可避の不純物か
らなり、かつMnとCoの含有量が下記式を満たす合金で
あって、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材
料として用いる耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性であ
る合金。
【0012】 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・ (3) 上記(1) または(2) の合金成分に加えて更にAg:0.
02〜2重量%を含有する合金。
【0013】上記の (1)〜(3) の本発明合金が、熱間加
工ののち冷間加工を行うプロセスで製造される製品の素
材となる場合には、MnとCoの含有量は下記式を満足す
るように調整されていることが望ましい。
【0014】 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・ 本発明合金の用途、即ち、使用中に人体に触れることの
多い製品の構成材料の代表的なものを例示すれば以下の
とおりである。
【0015】1. 眼鏡フレーム、時計バンド等の身に着
ける装飾品および日用品用の材料 2. 食器、厨房製品およびサニタリ機器用材料 3. 電気、電子機器等の構成材料 4. インプラント材料および医療用機器材料
【0016】
【作用】Fe(鉄)をベースとし、比較的安価で、耐食性
に優れ、かつ非磁性である合金としては、前述のとおり
オーステナイト系ステンレス鋼(Fe−Cr−Ni合金)が代
表的なものである。このNiは、合金の組織を非磁性のオ
ーステナイト組織に安定させる作用をもつ成分である。
【0017】本発明者は、経済性を重視する観点からFe
をベースとすることを基本とし、上記のNiと同様の作用
効果を持つ元素としてMn(マンガン)に着目した。一
方、耐食性を確保するためにCr(クロム)を使用し、さ
らに、合金の組織と非磁性等の性質の安定化および加工
性の向上を図るという観点からCo (コバルト) を必須成
分として選んだ。これらの合金成分を最も適当な含有量
の範囲で組み合わせたのが前記(1) および(2) の合金で
ある。
【0018】(3) の合金は、機械切削によって加工され
る用途向けに、さらに合金の被削性を向上させるべくAg
(銀)を添加した合金である。
【0019】上記のとおり、本発明合金はそれを構成す
る成分元素とそれらの含有量の適正な組合せの総合的な
効果として、前述の多様な性質を兼ね備えるのである
が、以下、各成分元素の作用をその含有量を特定した理
由とともに説明する。なお、成分含有量についての%は
重量%を意味する。
【0020】(A)必須成分について Cr:Crは、合金の耐食性を確保するのに必須の元素であ
る。しかし、過度の添加は合金の加工性を損なう。これ
らの作用を考慮して、Crの含有量を9〜25%の範囲とし
た。
【0021】Mn:Mnは、非磁性のオーステナイト相を安
定化する元素であり、しかも、Niのような人体への好ま
しくない作用を持たない元素である。次に述べるCoと複
合添加することによって、合金組織をオーステナイトと
するのに寄与する。この効果を発揮する最小限の量が3
%である。一方、Mnが35%を超えると、合金の加工性が
極端に低下する。そのためにMn含有量は3〜35%とし
た。
【0022】Co:Coは、オーステナイト組織を安定化さ
せて、合金の非磁性化を確実にし、また、耐食性と加工
性を安定させるのに有効である。Coが3%より少ないと
オーステナイト組織が安定せず、または加工性も低下す
る。一方、40%より多いと非磁性化を阻害するばかりで
なく加工性も低下する。Coは、上記の範囲内のMnと同時
に含有させることによって上記の効果を発揮するのであ
る。
【0023】上記のMnとCoの相互効果を総合して、これ
らの元素の含有量は、式を満たすこと、即ち、19%≦
(Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%の範囲にあること、を必須
とした。(Mn %+ 0.6×Co%) が19%未満では非磁性で
なくなり、40%を超えると加工性が悪化する。
【0024】なお、Mn%+ 0.6×Co%が 22 %よりも少
なくと、熱間加工のままでは非磁性であっても、さらに
冷間加工を行えば加工誘起変態によって磁性が生じるこ
とがある。また、Mn%+ 0.6×Co%が 22 %よりも多い
と冷間加工性が悪くなる。従って、本発明合金が、冷間
加工を伴うプロセスで製造される製品の素材となる場合
には、前記の式を満足するようにMnとCoの含有量が調
整されていることが望ましい。
【0025】Ag:Agは被削性を向上させるのに極めて有
効な元素であり、同時に加工性を損なわず、人体への悪
影響もない元素である。後述する表3にも示すように、
0.02%以上の含有量で合金の被削性が顕著に向上する。
一方、2%を超える含有量では、被削性向上の効果は飽
和し加工性劣化の弊害が出る。従って、Agを添加する場
合は、その含有量は0.02〜2%の範囲とするのがよい。
【0026】以上が本発明合金の必須成分である。これ
ら必須成分の外、残部は実質的にFe(および不可避的不
純物) のみであってもよい。しかし、次に述べる副次的
な成分を必要に応じて添加することもできる。なお、こ
れらの副次的な成分の含有量は、実質的に0であっても
よいことは言うまでもない。
【0027】(B) 副次的成分および不純物に成分につい
て C、N:合金のオーステナイト組織の安定化、強度の向
上にはC、Nは有効であるが、Crの炭化物や炭窒化物の
生成が加工性に悪い影響を与えるので極力少ないことが
望ましい。それぞれ 0.5%以下の範囲とするのがよい。
【0028】Si:Siは合金溶製時の脱酸作用を有し、か
つ強度の向上に有効であるが、加工性に悪い影響を与え
るので、 2.0%以下の範囲とするのがよい。
【0029】W、Mo、V:これらは合金の弾性および硬
度の向上に有効であるから、これらの特性を重視する場
合に、必要に応じて添加すればよい。しかし、いずれの
元素も添加し過ぎると加工性を損ねるので、W、Moにつ
いては 5.0%以下、Vについては 3.0%以下に抑えるべ
きである。
【0030】S、Se、Te、Zr、Ca、Pb:これらの元素
は、合金の被削性向上に有効である。従って、特に優れ
た被削性が必要とされる場合に添加してもよい。しか
し、いずれの元素も添加し過ぎると合金の加工性および
靱性を損ねるので、それぞれ0.20%以下の範囲とするの
がよい。
【0031】Nb、TiおよびAl:Nb、TiおよびAlは合金の
高強度化に有効であり、必要に応じて添加できる。しか
し、いずれの元素も添加し過ぎると合金の靱性を損なう
ことになるので、 1.0%以下の範囲とする。
【0032】Y:Yは、合金中に固溶して、合金が加熱
されたときには優先的に酸化され、その耐酸化性を向上
させる作用があるので、必要に応じて添加すればよい。
しかし、添加し過ぎると加工性を損ねるので、0.5 %以
下の含有量に抑えるべきである。
【0033】希土類元素:これらはミッシュメタルとし
て添加すれば、合金の脱酸剤として働き、耐酸化性を向
上させる効果がある。従って、必要に応じて添加すれば
よいが、過剰に添加すると合金の加工性を損ねるので、
それぞれの含有量は0.05%以下とするのがよい。
【0034】その他、不可避的不純物としてP (燐) が
あるが、これは加工性を悪化させるので 0.1%以下に抑
えるべきである。また、NiもCoに伴って不可避的に混入
する場合があるが、できる限り少ないことが望ましい。
許容上限は 2.0%である。
【0035】(C) 本発明合金の製造方法について 本発明合金は、種々の溶製法で溶製し、鋳造のまま、あ
るいは鋳造後、熱間加工 (鍛造、圧延等) 、さらに必要
に応じて冷間加工を施して所定形状に加工して使用され
る。また、粉末冶金法や液体急冷法のような特殊な製造
方法によっても製造できる。熱処理も、溶体化処理、時
効処理等、材料に要求される諸性質に応じた様々な熱処
理が適用できる。
【0036】
【実施例1】合金の磁性および加工性に及ぼすMn含有
量、Co含有量およびMnとCoとの組み合わせ含有量の影響
について検討した。
【0037】表1に示すように、Crを17.0%、Si(脱酸
剤)を 0.2%の一定値として、Mnの含有量およびCoの含
有量を種々変化させてた合金を真空溶解し、径が70mmで
長さが 300 mm のビレットに鋳込み、その合金ビレット
を1200℃に加熱し熱間鍛造して径20mmの棒材に加工し
た。
【0038】上記の鋳込み材および棒状加工材について
磁気特性および加工性を調べた。磁気特性は、磁石に付
くか付かないかという着磁状況から評価し、加工性は、
棒状に熱間鍛造加工を行ったときの加工状態から評価し
た。その結果を表1に併記する。
【0039】表1において、着磁状況の欄の×は磁石に
着磁することを、○は磁石に着磁しないことを示す。加
工性の欄の×は鍛造加工中表面に割れを発生したこと
を、○は割れ発生なしに良好な加工ができたことを示
す。
【0040】表1の結果から、次のことが明らかになっ
た。即ち、MnとCoを複合して含有しない合金(No.12、1
3、14、15、16、17) は、非磁性と良好な加工性を兼備
する合金にならない。MnとCoを複合含有していても、(M
n %+ 0.6×Co%) が19%未満の合金(No.18、19、20、
21) は、非磁性にならない。
【0041】また、(Mn %+ 0.6×Co%) が40%を超え
る合金(No.24) は加工性が悪い。
【0042】No.25 の合金は、(Mn %+ 0.6×Co%) が
27.2%で式を満たしているが、Mnが2%と低く、かつ
Coが42%と高いため非磁性にならないばかりでなく、加
工性も良くない。No.24 の合金は、Mnが36%と高過ぎる
ため、やはり加工性が悪い。
【0043】No.22 および23の合金は、(Mn %+ 0.6×
Co%) がそれぞれ22.2%、31.2%で式を満足するもの
であるが、Coが少な過ぎるために加工性が悪い。
【0044】上記の比較例の合金に対して、Mnの含有量
が 3〜35%、Coの含有量が 3〜40%で、しかも式を満
足するNo.1からNo.11 までの本発明合金は、非磁性であ
り、かつ熱間加工性も良好である。なお、磁石に着磁し
ない非磁性の合金について、透磁率 (μ) を測定したと
ころ、1.0 〜1.2 であった。さらに、各合金のオーステ
ナイト相の比率を測定したところ58〜49%であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【実施例2】表2に示すようにCr含有量が10.0%、13.0
%、21.0%および24.0%(Siは 0.2%一定) の4系統の
合金において、MnとCoの含有量を種々変化させたもの
(ただしこれらの含有量は式を満足している) を実施
例1と同様に溶製し、ビレットとしたのち熱間鍛造で径
20mmの棒材とした。これを外削して径18mmとし、冷間で
スウェージング加工して径14mmの棒材にした。
【0047】上記径14mmの棒材を供試材として、実施例
1と同じ調査方法で、Cr含有量が変化したときのMn含有
量、Co含有量およびMnとCoとの組み合わせ含有量が、磁
気特性、加工性および耐食性に及ぼす影響を調査した。
磁気特性と加工性は実施例1と同じ方法で調べ、耐食性
はJIS 規定の塩水噴霧試験で評価した。その結果を表2
に示す。
【0048】表2の着磁状況の欄および加工性の欄の評
価基準は前記のとおりである。耐食性の欄の○印は試験
後に変色が見られず、孔食の発生もなかったことを示
す。
【0049】表2の結果から、Cr含有量のレベルが、本
発明において定める範囲内で変化しても、上述のMnおよ
びCoの含有量の範囲において非磁性で、かつ熱間加工
性、冷間加工性および耐食性に優れた合金となることが
確認された。
【0050】
【表2】
【0051】
【実施例3】合金の被削性に及ぼすAg含有量の影響につ
いて調査した。
【0052】表3に示すように、Agの含有量を種々変化
させた合金を真空溶解し、径が70mmで長さが 300mmのビ
レットに鋳込み、その合金ビレットを1200℃に加熱し、
熱間鍛造して径 20mm の棒材に加工した。
【0053】上記の各合金棒から5mm厚の円板をバイト
で切り出す切削試験を行い、被削性の評価を行った。そ
の結果を表3に併記する。
【0054】表3では、Agを含有しない合金(No.52)の
切削性(所定のバイト1本で切削できる量で評価)を 1
00として、各合金での切削性はこれに対する割合で示し
た。
【0055】この割合が高いほど被削性が良い。
【0056】表3に示すとおり、Agを含まない合金(No.
52) と比べ、0.02%のAgを含む合金(No.34) の切削性は
1.2倍となり、Agの含有量が増加するに従って切削性が
向上することがわかった。しかし、Agを2.50%または3.
00%含む合金(No.50、51) の切削性は、Agが2.00%の合
金のそれと比較して、顕著な差異がない。さらに、Agが
2.50%以上の合金では棒材に鍛造する時に表面割れが発
生した。
【0057】別途、No.34 〜49のAgを0.02〜2 %含む合
金の上記径 20mm の熱間鍛造材を外削して径18mmとし、
冷間でスウェージング加工して径14mmの棒材にしたとこ
ろ、表面割れの発生がなく、優れた冷間加工性が確認で
きた。
【0058】以上の結果から、被削性に優れ、かつ熱間
および冷間の加工性に優れた合金を製造するためには、
Ag含有量は0.02〜2%の範囲とするのがよいと言える。
【0059】
【表3】
【0060】
【実施例4】本発明合金の用途の一つとして好適な眼鏡
フレーム材料への適用を試みた。
【0061】表4に示す合金の中の2種類(No.53 およ
び54)を、真空溶解して径が70mmで長さが300 mmのビレ
ットに鋳込み、その合金ビレットを1200℃に加熱して、
熱間鍛造にて径20mmの棒材に加工し、これを外削して径
17mmにした後、冷間加工、ダイス伸線および軟化熱処理
を繰り返すことによって径 3.2〜1.8 mmの線材とした。
【0062】冷間加工率50%での各線材の引張強度およ
び絞りは、両合金とも 1500 MPa および25%であり、Ag
の含有によって引張強度および絞りが低下することはな
かった。また、塩水噴霧試験による耐食性試験におい
て、両合金線とも変色せず、孔食の発生もなく良好な耐
食性を示した。
【0063】上記の線材を用い、冷間にてロール加工、
スウェージ加工、プレス加工等により眼鏡フレーム部品
であるテンプル、リム、箱足とし、各部品をろう付する
ことにより眼鏡フレームを製作した。2種類の合金線と
も良好に加工および組立を行うことができた。特に、Ag
含有合金は切削性に優れ、艶出しの研磨性にも優れてい
た。これらのことから、本発明の合金は、眼鏡フレーム
材料としてきわめて有用であることが確認できた。
【0064】
【表4】
【0065】
【実施例5】さらに表4に示すNo.53 〜No.56 の合金を
使用して下記の試作を行い、種々の用途に相応しい特性
を確認した。
【0066】〔試作1〕上記の合金を真空溶解して径70
mm×長さ300 のビレットに鋳込んだ。その合金ビレット
を1200℃に加熱し、熱間鍛造して径20mmの棒材に加工し
た。
【0067】〔試作2〕上記のビレットを1200℃に加熱
して、穿孔圧延と絞り圧延により、外径が60mmで内径が
50mmの管材に加工した。
【0068】〔試作3〕上記のビレットを1200℃に加熱
して、熱間圧延により3mm厚とし、続いて冷間圧延によ
り1mm厚の板材とした。
【0069】上記いずれの加工も割れ等の発生なしに順
調に実施できた。得られた棒、管および板材から切削加
工、プレス加工等により、時計バンド等の装飾品、スプ
ーン、フォーク等の食器・厨房製品、浴槽等のサニタリ
製品、オーディオ等の電気・電子機器の構成材料を製作
した。各製品の製作に際して加工性や被削性の問題は全
く無く、製品の非磁性、耐食性も満足できるものであっ
た。
【0070】これらのことから、本発明の合金は、一般
的に用いられている加工プロセスを適用して、種々の製
品に適用可能であることが確認できた。
【0071】
【発明の効果】本発明の合金は、安価なFeをベースとし
て、Cr、MnおよびCo、あるいは更にAgの適正量を配合し
た新しい非磁性合金である。この合金は、耐食性、加工
性に優れ、さらに被削性にも優れた合金であるので、精
密加工する場合にも容易に加工することができ、製品を
所望の形状にするときの能率は著しく向上する。しかも
実質的にNiを含まない合金であるから、前述した金属ア
レルギーの懸念なしに、人体に触れる各種の機器類等の
材料として使用し得る画期的な金属材料である。
【0072】

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%お
    よびCo:3〜40%を含有し、残部が実質的にFeからな
    り、かつMnとCoの含有量が下記式を満たす耐食性と加
    工性に優れ、かつ非磁性である合金であって、使用中に
    人体に触れることの多い製品の構成材料として用いる合
    金。 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・
  2. 【請求項2】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%お
    よびCo:3〜40%、C、N:各々 0.5%以下、Si: 2.0
    %以下、W、Mo:各々 5.0%以下、V:3.0 %以下、
    Y: 0.5%以下、Nb、Ti、Al:各々 1.0%以下、希土類
    元素:各々 0.05 %以下、S、Se、Te、Zr、Ca、Pb:各
    々 0.20 %以下を含有し残部が実質的にFeおよび不可避
    の不純物からなり、かつMnとCoの含有量が下記式を満
    たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性である合金であ
    って、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材料
    として用いる合金。 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・
  3. 【請求項3】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%お
    よびCo:3〜40%を含有し、残部が実質的にFeからな
    り、かつMnとCoの含有量が下記式を満たす耐食性と加
    工性に優れ、かつ非磁性である合金であって、使用中に
    人体に触れることの多い製品の構成材料として用いる合
    金。 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・
  4. 【請求項4】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%お
    よびCo:3〜40%、C、N:各々 0.5%以下、Si: 2.0
    %以下、W、Mo:各々 5.0%以下、V:3.0 %以下、
    Y: 0.5%以下、Nb、Ti、Al:各々 1.0%以下、希土類
    元素:各々 0.05 %以下、S、Se、Te、Zr、Ca、Pb:各
    々 0.20 %以下を含有し残部が実質的にFeおよび不可避
    の不純物からなり、かつMnとCoの含有量が下記式を満
    たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性である合金であ
    って、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材料
    として用いる合金。 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・
  5. 【請求項5】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%、
    Co:3〜40%およびAg: 0.02〜2 %を含有し、残部が実
    質的にFeからなり、かつMnとCoの含有量が下記式を満
    たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性である合金であ
    って、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材料
    として用いる合金。 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・
  6. 【請求項6】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%、
    Co:3〜40%、Ag: 0.02〜2 %、C、N:各々 0.5%以
    下、Si: 2.0%以下、W、Mo:各々 5.0%以下、V:3.
    0 %以下、 Y: 0.5%以下、Nb、Ti、Al:各々 1.0%
    以下、希土類元素:各々 0.05%以下、S、Se、Te、Z
    r、Ca、Pb:各々 0.20 %以下を含有し残部が実質的にF
    eおよび不可避の不純物からなり、かつMnとCoの含有量
    が下記式を満たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性
    である合金であって、使用中に人体に触れることの多い
    製品の構成材料として用いる合金。 19%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦40%・・・・
  7. 【請求項7】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%、
    Co:3〜40%およびAg: 0.02〜2 %を含有し、残部が実
    質的にFeからなり、かつMnとCoの含有量が下記式を満
    たす耐食性と加工性に優れ、かつ非磁性である合金であ
    って、使用中に人体に触れることの多い製品の構成材料
    として用いる合金。 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・
  8. 【請求項8】重量%で、Cr:9〜25%、Mn:3〜35%、
    Co:3〜40%、Ag: 0.02〜2 %、C、N:各々 0.5%以
    下、Si: 2.0%以下、W、Mo:各々 5.0%以下、V:3.
    0 %以下、 Y: 0.5%以下、Nb、Ti、Al:各々 1.0%
    以下、希土類元素:各々 0.05%以下、S、Se、
    Te、Zr、Ca、Pb:各々 0.20 %以下を含有し残部が実質
    的にFeおよび不可避の不純物からなり、かつMnとCoの含
    有量が下記式を満たす耐食性と加工性に優れ、かつ非
    磁性である合金であって、使用中に人体に触れることの
    多い製品の構成材料として用いる合金。 22%≦ (Mn%+ 0.6×Co%) ≦36%・・・・
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111074132A (zh) * 2019-12-30 2020-04-28 依波精品(深圳)有限公司 无镍无磁高强度不锈钢及其应用

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