JPH07107182B2 - 高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合金 - Google Patents

高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合金

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JPH07107182B2
JPH07107182B2 JP21067187A JP21067187A JPH07107182B2 JP H07107182 B2 JPH07107182 B2 JP H07107182B2 JP 21067187 A JP21067187 A JP 21067187A JP 21067187 A JP21067187 A JP 21067187A JP H07107182 B2 JPH07107182 B2 JP H07107182B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、高強度と高靭性を有し、さらに耐摩耗性に
すぐれ、さらに摩擦係数で評価される相手部材に対する
同期特性にもすぐれ、したがってこれらの特性が要求さ
れる自動車のトランスミッション構造部材や変速機のシ
ンクロナイザリングなどの製造に用いるのに適したCu合
金に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、一般に、上記の自動車のトランスミッション構造
部材や変速機のシンクロナイザリングなどの製造には、
強度および靭性、耐摩耗性、さらに高い摩擦係数が要求
されることから、これらの特性を具備したアルミニウム
青銅や高力黄銅などのCu合金が用いられている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、近年、上記各種機器の小型化および軽量化、並
びに高出力化に伴い、これを構成する部材はより一段と
すぐれた強度、靭性、および耐摩耗性、さらに高い摩擦
係数を具備することが要求されるようになっているが、
上記のアルミニウム青銅や高力黄銅などの従来Cu合金で
は、これらの要求を十分満足させることができないのが
現状である。
〔問題点を解決するための手段〕
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記各
種機器の小型化および軽量化、さらに高出力化に対応で
きる構造部材用材料を開発すべく研究を行なった結果、
重量%で(以下、組成に関する%は重量%を示す)、 Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
%、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mn:0.1〜4%、Sn:0.05〜2.5%、 Pb:0.05〜1.5%、 のうちの1種または2種以上を含有し、残りがCuと不可
避不純物からなる組成、並びに素地中に平均粒径:3〜50
μmの金属間化合物が面積比で1〜20%分散した組織を
有するCu合金は、高強度および高靭性、さらにすぐれた
耐摩耗性を有し、かつ摩擦係数も高く、したがってこの
Cu合金をトランスミッション構造部材やシンクロナイザ
リングなどの製造に用いた場合に、これら部材で構成さ
れる各種機器の小型化および軽量化が可能となり、かつ
高性能化をはかることができるようになるという知見を
得たのである。
この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであっ
て、以下に成分組成および組織を上記の通りに限定した
理由を説明する。
A.成分組成 (a) ZnおよびAl これらの成分には、共存した状態で合金の強度および靭
性を向上させる作用があるが、その含有量がそれぞれZ
n:17%未満およびAl:2%未満では所望の高強度および高
靭性を確保することができず、一方その含有量がZn:40
%およびAl:11%を越えてもより一層の向上効果は現わ
れないことから、その含有量をそれぞれZ:17〜40%およ
びAl:2〜11%と定めた。
(b) Si Si成分には、合金素地を強化し、もって耐摩耗性を向上
させる作用があるが、その含有量が0.005%未満では所
望の耐摩耗性向上効果が得られず、一方その含有量が0.
5%を越えると、靭性が低下し、被削性が劣化するよう
になることから、その含有量を0.005〜0.5%と定めた。
(c) Ti,Zr,およびV これらの成分には、CuおよびAlなどと結合して素地中に
均一に分散する粒状の金属間化合物を形成し、もって相
手部材に対する同期特性の評価となる摩擦係数を高める
ほか、対摩耗性を向上させる作用があるが、その含有量
が0.1%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一
方その含有量が3.5%を越えると、合金の靭性が低下す
るようになることから、その含有量を0.1〜3.5%と定め
た。
(d) P,Mg,およびCa これらの成分には、素地中に分散する金属間化合物を粒
状化および微細化して、合金の強度および靭性を改善す
るほか、被削性を向上させる作用があるが、その含有量
が0.003%未満では前記作用に所望の効果が得られず、
一方その含有量が0.3%を越えると、金属間化合物が平
均粒径で3μm未満に微細化しすぎてしまい、耐摩耗性
および靭性の低下を招くようになることから、その含有
量が0.003〜0.3%と定めた。
(e) Mn Mn成分には、合金の強度を一段と向上させ、かつ熱履歴
に対して合金組織を安定化する作用があるので、必要に
応じて含有させるが、含有量が0.1%未満では前記作用
に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が4%を
越えると、溶製時に酸化物スラグの量が増えるようにな
って、鋳塊の健全性が損なわれるようになることから、
その含有量を0.1〜4%と定めた。
(f) Sn Sn成分には、合金の素地を強化するほか、金属間化合物
の偏析を防止する作用があるので、必要に応じて含有さ
せるが、その含有量が0.05%未満では、前記作用に所望
の効果が得られず、一方その含有量が2.5%を越える
と、靭性が低下し、塑性加工性が損なわれるようになる
ことから、その含有量を0.05〜2.5%と定めた。
(g) Pb Pb成分には、高負荷摩擦条件下における耐焼付性を向上
させ、かつ被削性を改善する作用があるので、必要に応
じて含有させるが、その含有量が0.05%未満では前記作
用に所望の効果が得られず、一方、その含有量が1.5%
を越えると、強度および靭性が低下するようになること
から、その含有量が0.05〜1.5%と定めた。
B.組織 金属間化合物の平均粒径が3μm未満でも、または分散
割合が面積比で1%未満でも、所望の高い摩擦係数およ
びすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その
平均粒径が50μmを越えたり、さらにその分散割合が面
積比で20%を越えたりすると、合金の靭性が低下するよ
うになることから、金属間化合物の平均粒径を3〜50μ
m、同分散割合を面積比で1〜20%と定めた。
〔実 施 例〕
つぎに、この発明のCu合金を実施例により具体的に説明
する。
通常の高周波炉を用い、ArガスとCOガスの雰囲気中、そ
れぞれ第1表に示される成分組成をもった溶湯を調製
し、これらの溶湯をそれぞれ水冷鋳型に、金属間化合物
の平均粒径および分散割合を制御する目的で、これの内
部を流れる冷却水の水量を調製しながら鋳造し、直径:2
00mmφ×長さ:400mmのビレットとし、このビレットに60
0〜750℃の範囲内の所定温度で熱間押出し加工を施し
て、所定径の丸棒試験片とし、ついでこの丸棒試験片に
550〜700℃の範囲内の所定温度に1時間保持後空冷の熱
処理を施すことによって本発明のCu合金1〜36および比
較Cu合金1〜8をそれぞれ製造した。
なお、比較Cu合金1〜8は、いずれも構成成分のうちの
いずれかの成分含有量(第1表に*印を付したもの)、
あるいは金属間化合物の平均粒径および面積比のうちの
いずれか(同じく第1表に*印を付したもの)がこの発
明の範囲から外れたものである。
つぎに、この結果得られた本発明のCu合金1〜 36および比較Cu合金1〜8について、強度を評価する目
的で引張強さ、靭性を評価する目的でシャルピー衝撃性
と伸びを測定し、さらに耐摩耗性と、部材に対する同期
特性を評価する目的で、 試料:直径3mmのピン材、 相手材:JIS・SCM420の浸炭焼入鋼(硬さ:HRC61.5)、 オイル:ギヤオイル90番、 油温:60℃、 摩擦速度:2m/sec、 圧力:100kg/cm2、 滑り距離:1.5km、 の条件でピン摩耗試験を行ない、比摩耗量を測定すると
共に、トルクメータから摩擦係数を算出した。これらの
結果を第2表に示した。
なお、第1表における金属間化合物の平均粒径および面
積比は顕微鏡観察により測定したものである。
〔発明の効果〕
第1表および第2表に示される結果から、本発明のCu合
金1〜36は、いずれも高強度および高靭性を有し、さら
にすぐれた耐摩耗性と高い摩擦係数を有するのに対し
て、比較Cu合金1〜8に見られるように、構成成分のう
ちのいずれかに成分含有量がこの発明の範囲から外れて
も、さらに金属間化合物の平均粒径および面積比のうち
のいずれかでもこの発明の範囲から外れると、上記の特
性のうちの少なくともいずれかの特性が劣ったものにな
ることが明らかである。
上述のように、この発明のCu合金は、高強度および高靭
性を有し、さらにすぐれた耐摩耗と性高い摩擦係数を有
するので、特にこれらの特性が要求される自動車のトラ
ンスミッション構造部材や変速機のシンクロナイザリン
グなどの製造に用いた場合に、これら機器の小型化、軽
量化、および高出力化を可能とするなど工業上有用な特
性を有するのである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  2. 【請求項2】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5% Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜4%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  3. 【請求項3】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Sn:0.05〜2.5% を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  4. 【請求項4】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Pb:0.05〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  5. 【請求項5】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜4%、Sn:0.05〜2.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  6. 【請求項6】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜4%、Pb:0.05〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  7. 【請求項7】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Sn:0.05〜2.5%、Pb:0.05〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
  8. 【請求項8】Zn:17〜40%、Al:2〜11%、 Si:0.005〜0.5%、 Ti,Zr,およびVのうちの1種または2種以上:0.1〜3.5
    %、 P,Mg,およびCaのうちの1種または2種以上:0.003〜0.3
    %、 を含有し、さらに、 Mn:0.1〜4%、Sn:0.05〜2.5%、 Pb:0.05〜1.5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に平均粒径:3〜50μmの金属間
    化合物が面積比で1〜20%分散した組織を有することを
    特徴とする高強度および高靭性を有する耐摩耗性Cu合
    金。
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