JPH0694697A - 炭化水素油の炭化水素タイプ別分析方法およびその装置 - Google Patents

炭化水素油の炭化水素タイプ別分析方法およびその装置

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JPH0694697A
JPH0694697A JP26546692A JP26546692A JPH0694697A JP H0694697 A JPH0694697 A JP H0694697A JP 26546692 A JP26546692 A JP 26546692A JP 26546692 A JP26546692 A JP 26546692A JP H0694697 A JPH0694697 A JP H0694697A
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JP26546692A
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Shigeaki Takamura
重昭 高村
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COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
Original Assignee
COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 炭化水素タイプ別組成〔飽和(S)分、芳香
族(A)分、オレフィン(O)分〕を高精度で分析する
方法と装置を提供する。 【構成】 方法は、液体クロマトグラフ(LC)にて、
第1カラム1でS分とA分を分離するステップ、第1カ
ラムからS分溶出後第1カラムにバックフラッシュ(B
F)をかけるステップ、第1カラムから溶出するS分を
第2カラム2でO分と分離するステップ、第2カラムか
ら溶出するS分を示差屈折計(RI)で検出後分取する
ステップ、S分のピーク検出後第2カラムにBFをかけ
るステップ、第2カラムから溶出するO分をRIで検出
後分取するステップ、O分のピーク検出後第2のカラム
に再度BFをかけるステップ、第2カラムから溶出する
A分をRIで検出後分取するステップからなる。装置
は、LCの試料の流れに沿って順に、第1カラム1、第
2カラム2、示差屈折計RI、各炭化水素タイプの分取
手段FCを配置し、第1カラム1と第2カラム2にBF
用切替えバルブ3,4を取付けてなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オレフィン分を含有す
る炭化水素油、例えば、流動床式接触分解法(FCC)
のライトサイクル油(LCO)、オレフィン分を殆ど含
まない灯油、軽油などにおける飽和分、オレフィン分、
芳香族分などの炭化水素タイプ別の組成を、高精度で分
析する分析方法と、この方法に使用するのに適した装置
とに関する。
【0002】
【従来の技術】灯油、軽油は、精製された液状炭化水素
混合物であり、灯油は、主に、灯火、暖房、厨房、発動
機、溶剤などに用いられ、軽油は、主に、ディーゼル機
関、発動機、溶剤などに用いられている。
【0003】これら灯油、軽油の組成分析法について
は、JISに規定されているFIA法があり、飽和分、
オレフィン分、芳香族分の定量を行うことができる。
【0004】また、質量分析法については、カラムクロ
マトグラフにより飽和分と芳香族分に分別した後、飽和
分6タイプ、芳香族分21タイプに類別して定量する方
法がある(ASTM D2786、D3239)。
【0005】さらに、高速液体クロマトグラフ(以下、
「HPLC」と略す)を用いる組成分析方法として、
HPLCカラムを銀イオンで修飾し、密度と示差屈折計
のデータから補正係数を算出し、飽和分、オレフィン
分、芳香族分の分析値を算出する方法、HPLCカラ
ムを銀イオンで修飾し、移動相に塩素を含む溶媒を使用
して、誘電率検出器により炭化水素の各タイプでの感度
差を殆ど無くして検出し、飽和分、芳香族分、オレフィ
ン分を定量する方法などがある。
【0006】加えて、超臨界流体クロマトグラフ法を用
いて、銀イオン担持カラムとモディファイヤと呼ばれる
展開溶媒とを組み合わせて、水素炎イオン化検出器によ
り、飽和分、オレフィン分、芳香族分に定量する方法も
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、以上のような
従来の技術には、以下のような問題が存在する。JIS
に規定されているFIA法では、適用留出温度が315
℃以下となっており、軽油留分は、この留出温度の範囲
には入らない。
【0008】また、質量分析法では、カラムクロマトグ
ラフによる飽和分と芳香族分の分別には、低沸点成分が
失われるという欠点があり、ASTM D2786、D
3239の手法には、平均炭素数の算出、補正係数の計
算など組成分析の前段階で非常に煩雑な操作を必要とす
るという欠点がある。しかも、これらの質量分析法で
は、いずれもオレフィン分含有試料では重大な分析誤差
を生じるため、オレフィン分の有無の確認が不可欠であ
るが、現状ではこの作業も困難である。
【0009】高速液体クロマトグラフを用いた方法で
は、パラフィン分、芳香族分、オレフィン分の判別しか
できず、それぞれの化合物の沸点分布の状態の把握や個
々の成分の定量を行うことができない。このうち、前記
の示差屈折計と密度のデータを用いる検出方法では、
測定試料により補正係数に誤差が生じてしまい、分析誤
差が大きい。また、前記の誘電率検出器を用いる方法
では、移動相に用いる塩素含有溶媒の安定性の面で問題
があるのみならず、検出器の安定に長時間を要する点、
銀イオン担持カラムの寿命が短い点などの問題もあり、
汎用性に乏しい。加えて、これらの液体クロマトグラフ
法では、炭化水素の各タイプがそれぞれオーバーラップ
してしまい、完全な分離は得られない。
【0010】超臨界流体クロマトグラフ法では、検出器
として水素炎イオン化検出器を用いているため、上記の
液体クロマトグラフ法と比較して定量性には優れている
が、高速液体クロマトグラフ法と同様に、パラフィン
分、芳香族分、オレフィン分の判別と定量しかできず、
それぞれの化合物の分布状態の把握や、個々の成分の定
量を行うことができない。
【0011】しかも、軽油留分の場合、ガスクロマトグ
ラフにより非常に理論段数の高いキャピラリーカラムを
用いて測定を行っても、炭化水素の各タイプはそれぞれ
オーバーラップしたものになってしまうため、ガスクロ
マトグラフでは、分析手法が確立されていないのが現状
である。
【0012】本発明は、以上のような問題を解決し、オ
レフィン分の有無に関係無く、種々の炭化水素油の炭化
水素の各タイプを、該炭化水素油中の成分の種類や量の
影響を受けること無しに、ほぼ完全に分離し、飽和分、
オレフィン分、芳香族分および飽和分中のn−パラフィ
ン分の定量を行い、これらの炭化水素の各タイプ毎の沸
点分布状態の把握、特定成分の定量分析をも行うことが
できる分析方法と分析装置とを提供することを目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、検討を重ねた結果、 (1)軽油試料を、液体クロマトグラフにより、高分離
能の例えばシリカ系カラムを用いて、紫外線検出器と示
差屈折計で測定を行ったところ、(a)飽和分と芳香族
分とをほぼ完全に分離できること、(b)飽和分検出後
に、カラムにバックフラッシュをかけることにより、芳
香族分を1本の鋭いピークで検出できること、 (2)さらに、陽イオン交換樹脂を担持したカラムに硫
酸銀水溶液でフラッシングを行って銀イオン担持カラム
を作製し、このカラムを用いて、パラフィンとオレフィ
ンとの混合試料を、液体クロマトグラフを用いて、示差
屈折計で測定したところ、(a)パラフィン分が溶出し
た後に、オレフィン分が大幅に遅れて溶出すること、
(b)パラフィン分溶出後に、カラムにバックフラッシ
ュをかけることにより、テーリングのない1本のピーク
として観測できること、(c)移動相の溶媒に低級炭化
水素を用いても、カラム寿命が非常に長くなること、の
知見を得た。
【0014】本発明らは、これらの知見に着目してさら
に検討を加えたところ、(3)軽油試料を、先ず、液体
クロマトグラフにより、飽和分、オレフィン分、芳香族
分に、精度、繰り返し性とも良く、ほぼ完全に分離する
ことができること、(4)次いで、これらの分離分を、
例えばガスクロマトグラフで分析すれば、飽和分、飽和
分の中のn−パラフィン分、オレフィン分、芳香族分の
定量を精度良く行うことができること、(5)さらに、
質量分析と併用すれば、n−パラフィン類、i−パラフ
ィン類、オレフィン類、ナフテン類、芳香族類に分別、
定量することができること、の知見を得た。
【0015】本発明は、以上の知見に基づき、前述のよ
うに個々には各種の問題を有している液体クロマトグラ
フと、ガスクロマトグラフ、質量分析、その他の適宜の
分析手段とを巧みに組合せることにより、これらの問題
を悉く解決することのできる炭化水素油の炭化水素タイ
プ別分析法と装置とを提供するものである。
【0016】すなわち、本発明の炭化水素油の炭化水素
タイプ別分析方法は、液体クロマトグラフを用い、炭化
水素油を第1カラムに通し、オレフィン分を含む飽和分
と芳香族分とに分離するステップ(以下、「第1ステッ
プ」)、第1カラムから飽和分が溶出した後、第1カラ
ムにバックフラッシュをかけるステップ(以下、「第2
ステップ」)、第1カラムから溶出してきた飽和分を銀
イオン担持第2カラムに通し、オレフィン分と分離する
ステップ(以下、「第3ステップ」)、銀イオン担持第
2カラムから溶出してきた飽和分を示差屈折計にて検出
し、分取するステップ(以下、「第4ステップ」)、飽
和分のピークを検出後、銀イオン担持第2カラムにバッ
クフラッシュをかけるステップ(以下、「第5ステッ
プ」)、銀イオン担持第2カラムから溶出してきたオレ
フィン分を示差屈折計にて検出し、分取するステップ
(以下、「第6ステップ」)、オレフィン分のピークを
検出した後、再度、銀イオン担持第2のカラムにバック
フラッシュをかけるステップ(以下、「第7ステッ
プ」)、銀イオン担持第2カラムから溶出してきた芳香
族分を示差屈折計にて検出し、分取するステップ(以
下、「第8ステップ」)、からなることを特徴とする。
【0017】また、本発明の炭化水素油の炭化水素タイ
プ別分析装置は、液体クロマトグラフにおいて、試料の
流れに沿って上流から下流に順に、第1カラム、銀イオ
ン担持第2カラム、示差屈折計、各炭化水素タイプ別の
分取手段を配置するとともに、第1カラムおよび銀イオ
ン担持第2カラムに、それぞれバックフラッシュ用の切
り替えバルブを取り付けてなることを特徴とす。
【0018】
【作用】第1ステップは、試料の炭化水素油を、オレフ
ィン分を含む飽和分と芳香族分とに分離する作用をな
す。第2ステップは、バックフラッシュにより、第1ス
テップで飽和分が溶出した後に第1カラム内に残留して
いる芳香族分を、第1カラム内で逆流させ、可能な限り
長く第1カラム内に止める作用と、この結果としての芳
香族分の濃縮作用とをなす。
【0019】第3ステップは、第1ステップで溶出した
飽和分とオレフィン分とを分離させる作用をなし、分離
されたオレフィン分は、銀イオン担持第2カラムに吸着
されて残留する。第4ステップは、銀イオン担持第2カ
ラムから溶出した飽和分を、検出し、分取する作用をな
す。このとき、芳香族分は未だ第1カラム内に止まって
おり、オレフィン分は銀イオン第2カラム内に吸着され
ているため、飽和分のみが検出され、分取される。
【0020】第5ステップは、バックフラッシュによ
り、銀イオン担持第2カラム内に吸着しているオレフィ
ン分を溶出させる作用をなす。これにより、オレフィン
分は濃縮されて溶出する。第6ステップは、このオレフ
ィン分を検出し、分取する作用をなす。このとき、オレ
フィン分は濃縮されているため、検出ピークはシャープ
になる。
【0021】第7ステップは、銀イオン担持第2カラム
に再度バックフラッシュをかけて、第1カラムから徐々
に溶出し、第2カラムの一端に入り始めている芳香族分
を該第2カラムの内部まで流入させることなく、次の第
8ステップに移行させる作用をなす。この第7ステップ
を行う理由は、芳香族分中の多環芳香族化合物は、銀イ
オン担持第2カラムに吸着され易く、一旦、吸着されて
しまうと、この吸着分の溶出、検出、分取のための操作
を要するため、この吸着を避けるべく、芳香族分の銀イ
オン担持第2カラム内部への流入を防止することにあ
る。
【0022】第8ステップは、上記の第7ステップによ
り銀イオン担持第2カラムから溶出してきた芳香族分
を、検出し、分取する作用をなす。
【0023】
【実施例】以下に、本発明を、軽油を試料とする場合を
例に採って説明するが、軽油以外の他の炭化水素につい
ても同様である。図1〜図4は、同図に示す本発明の分
析装置の一実施例による本発明の分析方法の一実施例
を、操作手順にしたがって説明するための図である。図
1〜図4においては、溶媒サーバー11とポンプ12の
間に脱気装置(図示省略)を組み込み、第1カラム(シ
リカ系カラム)1と銀イオン担持第2カラム(オレフィ
ン選択用カラム)2は、それぞれモーターバルブ3およ
び4によりバックフラッシュができるように構成する。
また、図1に示す初期フローにおいて、試料が第2カラ
ム2に入る前の位置に紫外線検出器UVを装着し、第2
カラム2を通過した成分が示差屈折計RIで検出された
後にフラクションコレクタFCで分取さるように構成す
る。さらに、送液ポンプ12から示差屈折計RIに至る
リファレンスフロー5が設けられている。
【0024】そして、移動相として例えばn−ペンタン
を使用する場合、n−ペンタンは、沸点が36℃と低
く、しかも粘性も低いため、クロマトグラフチャンバー
(図示省略)により、システム全体を約10℃に保持す
ることが好ましい。なお、このn−ペンタンを送液する
ためのポンプ12としては、定流量性に優れるものを使
用することが好ましい。
【0025】以上のように構成される本発明の分析装置
を使用して本発明の分析方法を実施する場合において、
先ず、図1の状態で操作を開始する。すなわち、サンプ
ラー13から試料を注入すると、溶媒サーバー11から
ポンプ12により送液されるn−ペンタンの移動相に同
伴されて、試料成分が第1カラム1に入る(第1ステッ
プ)。なお、本例では、サンプラー13としてオートサ
ンプラーを使用しているが、本発明の分析装置では、こ
れに限らず、マニアルサンプラーをも使用することがで
きる。
【0026】通常、シリカ系カラムは、試料成分のう
ち、分子の極性の低い飽和分から極性の高い芳香族分の
順に溶出する。第1カラム1は、このような特性を有す
るシリカ系カラムを使用しており、該第1カラム1から
飽和分が溶出し終わり、芳香族分が溶出し始めると、第
2カラム2の直前にセットされた紫外線検出器UVでの
検出が始まるので、予め、長鎖のアルキル基が結合し極
性の低いドデシルベンゼンなどの芳香族分を使用し、こ
の芳香族分が第1カラム1から溶出してくる直前のタイ
ミングを確認しておき、第1カラム1から芳香族分が溶
出してくる直前に第1カラム1のモーターバルブ3を切
り替えて、第1カラム1にバックフラッシュをかけるよ
うにする(第2ステップ)。このバックフラッシュの状
態を図2に示す。
【0027】銀イオン担持第2カラム2には、図1の状
態において、オレフィン分を含んだ飽和分のみが入って
くるが、これらの成分の内、オレフィン分はオレフィン
選択カラムである第2カラム2の銀イオンに吸着される
ため、飽和分より溶出時間が大幅に遅れる(第3ステッ
プ)。したがって、先ず、飽和分(パラフィン類、ナフ
テン類)のみが第2カラム2を通過して、示差屈折計R
Iで検出され、フラクションコレクタFCで分取される
(第4ステップ)。
【0028】次に、オレフィン分のみを第2カラム2か
ら溶出させるために、飽和分が第2カラム2を通過する
直後のタイミングを、予め、示差屈折計RIでn−ノナ
ンなどのn−パラフィンで確認しておき、そのタイミン
グで第2カラム2のモーターバルブ4を切り替えてバッ
クフラッシュをかける(第5ステップ)。このバックフ
ラッシュの状態を図3に示す。
【0029】図3において、第2カラム2からオレフィ
ン分が溶出し始め、示差屈折計RIで検出され、フラク
ションコレクタFCで分取される(第6ステップ)。こ
の頃に、第2カラム2のもう一端には、第1カラム1か
らバックフラッシュにより溶出してきた芳香族分が狭い
バンド幅(溶出時間で1分程度の時間幅)で入り始め
る。
【0030】そこで、オレフィン分について示差屈折計
RIでモニターして第2カラム2から溶出し終わるタイ
ミングを、予め、テトラデセンなどのオレフィン分で確
認しておき、そのタイミングで第2カラム2に、再度、
バックフラッシュをかける(第7ステップ)。このバッ
クフラッシュの状態を図4に示す。
【0031】すなわち、図3の段階で第2カラム2の
(図3の紙面に対し左側)端から入り始めている芳香族
分を、図4の第7ステップにおいて、第2カラム2にバ
ックフラッシュをかけることにより、示差屈折計RIに
送る。これにより、芳香族分は、第2カラム2の内部に
まで入ることなく、示差屈折計RIにて検出され、フラ
クションコレクタFCで分取されることとなる(第8ス
テップ)。以上の第1〜第8ステップにより試料の測定
が終了し、次の試料の測定に移る前に、モーターバルブ
3,4を図1に示す初期の状態に戻しておく。
【0032】なお、以上のように、紫外線検出器UV
は、第1,第2カラム1,2からの芳香族分、飽和分、
オレフィン分の溶出タイミングを確認するために、予
め、これらの標準試料により、このタイミングを確定し
ておくために使用するものである。したがって、分析に
先立ち、これらの標準試料により上記のタイミングを確
認し、このタイミングによりモーターバルブ3,4の自
動切り替え指令をセットしておく場合には、紫外線検出
器UVは不要となることは言うまでもない。
【0033】また、飽和分、オレフィン分、芳香族分を
フラクションコレクタFCで分取する際には、分取容量
を定容としておくことが望ましい。
【0034】以上のようにして、フラクションコレクタ
FCで分取した試料(飽和分、オレフィン分、芳香族
分)は、それぞれ図示省略の例えばガスクロマトグラフ
により分析する。ガスクロマトグラフを使用する場合
は、得られる波形の処理を行い、各炭化水素タイプの面
積値を求めた後、各炭化水素タイプ間の感度差は無いも
のとして各タイプの重量%を算出する。このとき、分離
能の高いキャピラリーカラムを用いて分析を行えば、個
々の成分についての定量分析ができ、またメチルシリコ
ン液相カラムを用いて分析を行えば、炭化水素のタイプ
別の沸点分布の状態をも明らかにすることができる。
【0035】また、図1〜図4に示す構成において、第
1カラム1に使用するシリカ系カラムは、球状多孔質シ
リカで、粒子径3μm〜5μmのものが望ましいが、シ
リカにアミノ基、フェニル基、シアノ基などを結合させ
た順相モードで使用される化学修飾型でもよい。カラム
サイズは、内径4.0mm〜6.0mm程度のもので、
長さは100mm〜250mm程度のものが望ましい。
【0036】移動相としての溶媒は、炭素数5〜7の低
級炭化水素が望ましく、移動相の流速は、0.6〜1.
5ミリリットル/分(以下、ミリリットルを「mL」と
記し、リットルを「L」と記し、マイクロリットルを
「μL」と記す)程度が望ましい。送液ポンプ12は、
定流量性に優れるものを使用することが、高精度での分
析を行う上で望ましい。試料注入量は、濃度約10重量
%の溶液(移動相により希釈)として、約30〜50μ
Lとすることが望ましい。
【0037】紫外検出器UVは、第1カラム1と第2カ
ラム2の中間に位置するため、30kg/cm程度の
圧力に耐え得る光学セルを持つものが好ましい。モータ
ーバルブ3および4は、高圧バルブで、200kg/c
程度までの耐圧性を持つものが望ましい。示差屈折
計RIは、移動相に低級炭化水素を使用するため、サン
プルフロー(送液ポンプ12から第1,第2カラム1,
2を介して示差屈折計に至るラインを言う)とリファレ
ンスフロー5とで、それぞれ独立したものを使用するこ
とが望ましい。
【0038】さらに、フラクションコレクタFCでの分
取物を、例えば、上記のようにガスクロマトグラフを使
用して分析する場合には、炭化水素の各タイプについて
ほぼ同程度の感度を持つFID(水素炎イオン化検出
器)付きガスクロマトグラフを使用することが望まし
い。
【0039】ガスクロマトグラフに使用する分析カラム
は、大容量の試料注入が行え、高分離能を有する内径
0.53〜1.2mm、長さが5m〜40mのキャピラ
リーカラムを使用することが望ましい。このカラムに
は、メチルシリコンまたはメチルシリコンを主成分とす
るコーティング剤(液相)を使用し、メチルシリコン液
相を架橋化学結合させたものを、膜厚約0.1〜5.0
μmでコーティングしたものを使用することが望まし
い。
【0040】キャリヤーガスとしては、水素、ヘリウ
ム、窒素を使用することができるが、分子拡散が大き
く、不活性で安全なヘリウムが好ましく、その速度は2
〜30mL/分の範囲が好ましい。試料注入量は、軽油
留分の場合、5μL程度で、直接注入法もしくはオンカ
ラム注入法が好ましい。
【0041】ガスクロマトグラフのオーブンは、分析時
間を短縮し、カラムの分離能を損なわないために、昇温
できるものが好ましい。昇温条件は、20℃〜100℃
の温度から5℃〜20℃/分の昇温速度で250℃〜3
00℃まで昇温し、その温度で5〜20分保持するのが
望ましい。
【0042】具体例 FCCのLCO、灯油、3号軽油、2号軽油を試料と
し、表1および表2に示す分析条件にて、具体的な実験
を行った。実験結果は表3に示した。また、2号軽油で
の3回繰り返し実験を行い、この結果を表4に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、少ない移動相(溶媒)
量で、しかも短時間に測定試料油を飽和分、オレフィン
分、芳香族分に、殆どオーバーラップすること無しに、
分離することができ、分析カラムも長期に渡り安定して
使用することができる。また、オレフィン分の有無にか
かわらず、かつ各成分の種類や量に影響されること無し
に、高精度な炭化水素タイプ別分析結果を得ることがで
きる。
【0048】さらに、本発明において、炭化水素の各タ
イプ別分取物の定量に、ガスクロマトグラフを使用する
場合、極微量の試料量で高精度の分析を行うことができ
るとともに、特定の化合物の定量分析をも行うことがで
きる。加えて、各炭化水素タイプ毎に、その沸点分布の
状態も把握することができ、n−パラフィンについて
は、その含有量および炭素数分布をも正確に定量するこ
とができる。
【0049】そして、本発明では、測定試料油を、各炭
化水素タイプ別に分取した後、この分取した試料につい
て、上記のガスクロマトグラフに代えて、あるいはガス
クロマトグラフとともに、質量分析法による各炭化水素
タイプ分析や微量定量分析を行うことができるため、炭
化水素油のタイプ別分取法としても好適である。
【0050】以上により、本発明は、近年、環境問題で
取りざたされているディーゼル問題などの炭化水素油中
の芳香族分の詳細な沸点別の分布状況や、そのタイプの
成分量を正確に知ることができ、自動車、石油などの業
界にとってその工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分析装置の一実施例を説明するための
概略フロー図であって、この装置を使用する本発明の分
析方法の第1ステップと第3,第4ステップの一部とを
示す図である。
【図2】図1の本発明の分析装置を使用する本発明の分
析方法の第2ステップと第3,第4ステップの一部とを
示す図である。
【図3】図1の本発明の分析装置を使用する本発明の分
析方法の第5,第6ステップを示す図である。
【図4】図1の本発明の分析装置を使用する本発明の分
析方法の第7,第8ステップを示す図である。
【符号の説明】
1 第1カラム 2 銀イオン担持第2カラム 3,4 切り替えバルブ 5 リファレンスフロー 11 溶媒サーバー 12 送液ポンプ 13 サンプラー UV 紫外線検出機 IR 示差屈折計 FC 分取手段(フラクションコレクタ)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体クロマトグラフを用い、炭化水素油
    を第1カラムに通し、オレフィン分を含む飽和分と芳香
    族分とに分離するステップ、 第1カラムから飽和分が溶出した後、第1カラムにバッ
    クフラッシュをかけるステップ、 第1カラムから溶出してきた飽和分を銀イオン担持第2
    カラムに通し、オレフィン分と分離するステップ、 銀イオン担持第2カラムから溶出してきた飽和分を示差
    屈折計にて検出し、分取するステップ、 飽和分のピークを検出後、銀イオン担持第2カラムにバ
    ックフラッシュをかけるステップ、 銀イオン担持第2カラムから溶出してきたオレフィン分
    を示差屈折計にて検出し、分取するステップ、 オレフィン分のピークを検出した後、再度、銀イオン担
    持第2のカラムにバックフラッシュをかけるステップ、 銀イオン担持第2カラムから溶出してきた芳香族分を示
    差屈折計にて検出し、分取するステップ、からなること
    を特徴とする炭化水素油の炭化水素タイプ別分析方法。
  2. 【請求項2】 液体クロマトグラフにおいて、試料の流
    れに沿って上流から下流に順に、第1カラム、銀イオン
    担持第2カラム、示差屈折計、各炭化水素タイプ別の分
    取手段を配置するとともに、 第1カラムおよび銀イオン担持第2カラムに、それぞれ
    バックフラッシュ用の切り替えバルブを取り付けてなる
    ことを特徴とする炭化水素油の炭化水素タイプ別分析装
    置。
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