JPH0688185A - 耐衝撃密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

耐衝撃密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JPH0688185A
JPH0688185A JP23594292A JP23594292A JPH0688185A JP H0688185 A JPH0688185 A JP H0688185A JP 23594292 A JP23594292 A JP 23594292A JP 23594292 A JP23594292 A JP 23594292A JP H0688185 A JPH0688185 A JP H0688185A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐衝撃密着性、
特に低温での耐衝撃密着性を、プレス成形性を低下させ
ずに改善し、自動車車体の外板にも適用可能にする。 【構成】 前焼鈍炉内の予熱工程において鋼板表面の酸
化皮膜量が 0.1〜5g/m2となるように前酸化を行った
後、還元工程で還元処理し、溶融亜鉛めっきを施した
後、30℃/sec以上の昇温速度で鋼板温度 420〜700 ℃の
温度領域内に加熱して合金化を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れためっき密着性を
有し、種々の用途、例えば、自動車用鋼板の内板はもと
より、外板としても適用可能な、耐衝撃密着性に優れた
合金化溶融亜鉛めっきの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板 (以下「GA
鋼板」と称する) は、塗装後の耐食性および塗膜密着性
に優れた材料であるため、従来から建材や家電製品など
の用途のほかに、自動車車体用の防錆鋼板としても使用
されている。自動車車体に適用する場合、以前は、孔あ
き腐食対策用として、例えば、フロアー、メンバー、イ
ンナーパネルといった内板用材料として使用されてきた
が、最近では、GA鋼板製造技術の向上と防錆目標の高
度化が相まって、表面欠陥や塗装性などに対して非常に
厳しい外板用材料 (例、ドアー、フード、フェンダー、
シル) としても、既存の電気亜鉛めっき鋼板および電気
亜鉛合金めっき鋼板と同様に適用されている。
【0003】ところで、少量のPを添加したP添加鋼
は、Pの添加により強度が著しく高まることから、通称
P添加ハイテン鋼と呼ばれ、自動車車体用鋼板の高張力
化、軽量化の要求に伴って、自動車車体の内外板に25〜
45 kg/mm2 のレベルで使用されるようになってきた。従
って、GA鋼板の母材鋼板としてもP添加鋼が使用され
ることがある。
【0004】自動車車体の外板用材料の外面 (塗装面)
側では、その内面側とは異なり、走行時に飛来する石、
砂などによりいわゆるチッピング衝撃を受ける。ところ
が、GA鋼板のめっき皮膜は、FeとZnの金属間化合物で
あり、純亜鉛めっきに比べて硬度が高く、かなり脆いた
め、前記チッピング衝撃によりめっき皮膜が下地鋼板か
ら剥離し易い傾向にある。
【0005】特に、北米、カナダ等のの寒冷地において
は、低温 (−20〜−40℃) のために塗膜が硬化して、め
っき皮膜への拘束力が高くなるとともに、凍結防止のた
めに路面上に散布される岩塩によりチッピングを生じる
ために、めっき皮膜の剥離が極めて発生し易い。めっき
皮膜の剥離が発生した部分は、その周りに残存するめっ
き皮膜によるある程度の犠牲防食作用を期待することは
できるものの、それには限界があり、最終的には自動車
車体の外板にGA鋼板を用いた効果が失われてしまう。
【0006】GA鋼板のめっき密着性の改善について
は、従来から、成形時の皮膜剥離 (パウダリングまたは
フレーキング) を軽減する目的から、合金化温度やヒー
トパターンといったGA鋼板の操業条件の影響などに関
する研究が行われ (日本鉄鋼協会講演大会: CAMP-ISIJ
vol. 1 (1988): 655頁) 、また特公平2−39585 号公報
に提案されているように、めっき皮膜の構造、生成形
態、組成などを限定することも試みられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、GA鋼板の衝
撃時のめっき皮膜密着性、とりわけ低温での耐衝撃密着
性は、前記のような成形時のめっき皮膜剥離とは異な
る。本発明者らの調査では、前記方法によっても、GA
鋼板鋼板では、主に北米で自動車車体外板に現在使われ
ている電気亜鉛めっき鋼板のような充分な耐衝撃密着性
の性能を得ることができなかった。
【0008】特に、P添加鋼をめっき母材とするGA鋼
板は、一般のAlキルド低炭素鋼や深絞り成形用の極低炭
素Ti(Nb)添加鋼を母材とするGA鋼板に比べ、同一めっ
き組成 (合金化度) において、成形加工時の耐パウダリ
ング (粉状剥離) 性能は同等以上の性能を示すものの、
耐衝撃密着性は劣り、その改善が要望されている。
【0009】特開平2−97653 号公報には、自動車車体
外板で問題となる耐衝撃密着性とは異なるが、鋼板表面
の結晶粒界への亜鉛の拡散侵入を利用してFe濃度が8〜
17%(重量%、以下も特に指定しない限り、%は重量%
を意味する) のGA鋼板のエナメルヘアー (即ち、塗装
後のめっき鋼板の剪断応力を伴う変形過程における各層
間の密着性能が最も低い部分での界面剥離現象) の発生
を抑制する技術が提案されている。
【0010】この方法は、素地鋼板に対しZnが粒界に比
較的侵入し易い極低炭素Ti(Nb)添加鋼、低炭素鋼などを
めっき母材とする場合には、エナメルヘアーの発生があ
る程度抑制されるが、粒界にPが偏析し、Znの侵入量の
少ないP添加鋼を母材とする場合には効果が少なく、ま
してや、ここで問題としている厳しい低温耐衝撃密着性
に対しては、鋼種を問わずほとんど効果がない。
【0011】GA鋼板、特にP添加鋼を母材とするGA
鋼板の低温での耐衝撃密着性を、その他の重要な性能で
あるプレス成形性 (プレス加工時の耐パウダリング性)
を損なうことなく改善することは、自動車車体外板とし
て使用する際の防錆力向上のために重要な課題である。
【0012】本発明の目的は、密着性に優れ、P添加鋼
を母材とした場合であっても耐衝撃密着性、とりわけ低
温での耐衝撃密着性に優れた、自動車車体の内板用はも
とより、外板用にも適用可能な、GA鋼板の製造方法を
提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐衝撃密
着性が特に劣化し易いP添加鋼を母材とするGA鋼板に
ついて、その原因と改善策について検討し、次のような
知見を得た。P添加鋼は、一般の低炭素鋼、極低炭素鋼
に比べ、合金化処理時のFe、Zn合金化反応速度が遅く、
同一昇温速度、ヒートパターンで合金化した場合には、
マクロ的な合金化度 (Fe%) が同じでも、生成する合金
層が異なる。
【0014】例えば、一般の低炭素鋼をAl濃度0.10%の
溶融亜鉛めっき浴中で溶融めっき後、Fe 8〜11%に合金
化した場合、鋼板/めっき界面には表層よりFe濃度の高
いΓ相 (Fe3Zn10)、或いはΓ1 相 (Fe5Zn21)が形成され
るが、P添加鋼では、同じ合金化度でもΓ相やΓ1 相は
あまり生成しない。Γ相は脆性が高く、プレス加工時の
圧縮−引張り変形による耐パウダリング性を劣化させる
ので、P添加鋼はこの点において有利であり、実際、良
好な耐パウダリング性を示す。
【0015】しかし、本発明者らの調査によれば、P添
加鋼をめっき母材とするGA鋼板の鋼板/めっき界面
は、Γ相、Γ1 相が形成されにくい反面、非常に平滑な
構造を有し、そのために耐衝撃密着性に劣ることが判明
した。この界面付近の構造は、めっき浴への侵入時の鋼
板温度、めっき浴中Al濃度、めっき浴温度などの操業因
子によっても変化する。しかし、一般的な操業範囲 (浴
中Al濃度0.08〜0.15%、侵入時の鋼板温度 450〜550
℃) ではその影響は小さく、めっき操業因子によるGA
鋼板、特にP添加鋼を母材とするGA鋼板の耐衝撃密着
性の改善は困難である。
【0016】さらに検討した結果、鋼板を溶融めっき前
に、無酸化炉内である程度前酸化させ、次いで還元した
後、所定のめっきを施し、急速加熱にて合金化処理する
と、耐パウダリング性を損なうことなく、GA鋼板の耐
衝撃密着性が著しく向上することを見出した。この方法
による耐衝撃密着性の向上は、耐衝撃密着性が劣化し易
いP添加鋼板を母材とする場合に特に顕著であるが、低
炭素鋼板や極低炭素鋼板を母材とするGA鋼板について
も有効であることも判明した。
【0017】本発明は上記知見に基づき完成したもの
で、「鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを連続的に施すにあ
たり、前焼鈍炉内の予熱工程において鋼板表面の酸化皮
膜量が0.1〜5g/m2となるように前酸化を行った後、還
元工程で還元処理した鋼板に所定量の溶融亜鉛めっきを
付着させた後、30℃/sec以上の昇温速度で鋼板温度 420
〜700 ℃の温度領域内に加熱し、この温度領域内で熱処
理して合金化を行うことを特徴とする、耐衝撃密着性に
優れたGA鋼板の製造方法」を要旨とする。
【0018】
【作用】本発明のGA鋼板の製造方法における母材鋼板
の鋼種は特に限定されない。即ち、GA鋼板の製造に利
用されている任意の種類の鋼種でよく、P添加鋼、低炭
素鋼 (例、アルミキルド低炭素鋼) 、極低炭素鋼 (例、
深絞り用の極低炭素TiまたはNb添加鋼) などが例示され
る。P添加鋼とは、Pを意図的に添加した鋼であって、
通常はP含有量が0.03%以上、0.2 %以下である。P添
加高張力鋼板は、一般にP添加鋼を熱間圧延、酸洗およ
び冷間圧延することにより製造される。
【0019】本発明の方法は、GA鋼板の製造に従来よ
り使用されている連続溶融亜鉛めっきラインを利用して
実施することができる。GA鋼板の連続製造は、一般に
前焼鈍工程→溶融亜鉛めっき工程→合金化工程を経て製
造される。使用する鋼板は、前焼鈍工程の前に、常法に
より表面を洗浄する。洗浄は、アルカリ脱脂、或いはア
ルカリと酸洗 (塩酸または硫酸など) により行うのが普
通である。
【0020】前焼鈍工程は、前酸化炉と還元炉とからな
る前焼鈍炉内で行われる。前酸化炉では、鋼板の表面浄
化を兼ねて鋼板を弱酸化性雰囲気で加熱し、鋼板表面に
薄い酸化皮膜を形成する。代表的な前酸化炉は無酸化炉
と呼ばれているものであり、無酸化炉の前に鋼板を予熱
する予熱炉を設けることもある。本発明においては、還
元炉の前の無酸化炉や予熱炉で行われる加熱をすべて含
めて予熱工程と称する。次いで、還元炉で鋼板表面の酸
化鉄の還元を行い、表面を活性化するとともに、焼鈍ま
たは焼ならしを行う (還元工程) 。
【0021】本発明によれば、アルカリ脱脂などにより
表面を洗浄した鋼板を、前焼鈍炉内の予熱工程において
弱酸化性雰囲気中にて予熱し、鋼板表面の酸化皮膜量が
0.1〜5g/m2、好ましくは 0.3〜3g/m2となるように前
酸化を行う。酸化皮膜量は、重量法、X線回折法などに
より測定できる。従来の溶融亜鉛めっきラインにおける
無酸化炉でも、鋼板にごく薄い酸化皮膜は形成される
が、酸化皮膜量は0.1 g/m2未満である。予熱工程で酸化
皮膜量が 0.1〜5g/m2となるように前酸化を行うには、
予熱工程の加熱炉内の雰囲気 (空燃比) と加熱温度を制
御すればよい。例えば、上記範囲内の皮膜量の酸化皮膜
を形成するには、空燃比は 1.0〜1.3 の範囲内、加熱温
度は鋼板温度で 500〜650 ℃の範囲内とすることが好ま
しい。
【0022】予熱工程での加熱炉の種類は、上記酸化が
可能な炉であればよく特に限定されないが、例えば、ガ
ス燃焼炉、直火加熱炉などが例示される。この加熱炉と
しては、従来の溶融亜鉛めっきラインに設置されている
無酸化炉または予熱炉と無酸化炉をそのまま使用しても
よく、或いは別に専用の加熱炉を還元炉の前に設置して
もよい。
【0023】前酸化での酸化皮膜量が0.1 g/m2未満で
は、後述のように急速加熱により合金化処理した場合で
あっても、得られたGA鋼板の耐衝撃密着性の向上が認
められない。一方、酸化皮膜量が5g/m2を超えると、そ
の後の還元工程で酸化皮膜が充分に還元されないため
か、耐衝撃密着性がかえって劣化し、耐パウダリング性
やめっき外観も不良となる。
【0024】この前酸化の後、前焼鈍炉内の還元炉にお
いて鋼板を高温の還元雰囲気に保持し、前酸化で生じた
酸化層を還元して表面を活性化すると共に、焼なましま
たは焼ならしを行う。この還元工程の操業条件 (炉内雰
囲気、温度、処理時間) は特に限定されず、従来と同様
でもよいが、前酸化での酸化量が従来より多いため、25
〜30% H2+N2雰囲気で、温度750 〜850 ℃、時間60〜12
0 秒とすることが好ましい。その後、鋼板は冷却帯を経
て大気に触れることなく、溶融亜鉛めっき浴に導かれ
る。
【0025】溶融亜鉛めっきも通常の条件下で実施すれ
ばよい。例えば、浴中Al濃度は0.08〜0.15%程度、侵入
時の鋼板温度は 450〜550 ℃程度が好ましい。めっき付
着量の制御はガスワイピングなどの慣用手段により実施
でき、それにより所定量の亜鉛が付着した溶融亜鉛めっ
き鋼板が得られる。
【0026】溶融亜鉛めっきを施した鋼板を、次いで、
合金化炉において、30℃/sec以上の昇温速度で鋼板温度
420〜700 ℃の温度領域内に急速加熱し、この温度領域
内で熱処理して合金化を行い、GA鋼板を得る。この急
速加熱は、鋼板がめっき付着量制御手段 (通常はガスワ
イピング装置) を経た後の初期加熱 (昇温時) に行わ
れ、この状態ではめっきの上層にはZnのη相のみが残存
している。この状態で上記の急速加熱をすることによ
り、耐衝撃密着性の改善効果が現れる。
【0027】この時の昇温速度が30℃/sec未満では、前
酸化量がどの程度であっても、耐衝撃密着性の改善効果
は全く認められない。また、たとえ30℃/sec以上の昇温
速度で急速加熱しても、合金化温度が鋼板温度で420 ℃
より低いと、耐衝撃密着性の改善効果は認められない。
一方、この温度が700 ℃を超えると、合金化が進みす
ぎ、耐パウダリング性などの性能が劣化する。
【0028】合金化炉の加熱手段としては、ガス燃焼加
熱、輻射加熱、直火加熱バーナー、通電加熱、高周波誘
導加熱など従来より利用されてきたいずれの方式でもよ
い。また、合金化熱処理時のヒートパターンは、その初
期過程での昇温速度が上記条件を満たす限り、その後の
ヒートパターンは特に制限されない。鋼板温度 420〜70
0 ℃の温度領域内で、合金化炉の滞留時間 (熱処理時
間) やめっき付着量に応じて所望の合金化度が得られる
ように合金化温度やヒートパターンを選択すればよい。
合金化度は特に限定されないが、通常はFe含有量8〜12
%の範囲内に管理する。
【0029】こうして製造されたGA鋼板は、その後溶
融亜鉛めっきライン内で化成処理を施してから製品化し
てもよい。化成処理としては、塗膜密着性を高めるリン
酸塩処理、或いは耐食性を高めるクロメート処理が代表
的であり、これらを併用してもよい。
【0030】図1に、P含有量0.06%のP添加鋼板をめ
っき母材とするGA鋼板の前酸化における酸化皮膜量と
低温での耐衝撃密着性との関係について実験結果で示
す。酸化皮膜量は、予熱工程で使用した無酸化炉内の雰
囲気 (空燃比) および予熱温度を変化させることにより
変動させた。めっき後の合金化処理は520 ℃で行い、そ
の際の昇温速度は20℃/sec (破線) および80℃/sec (実
線) とした。耐低温衝撃密着性は、実施例1に記載した
のと同じ方法で評価した。
【0031】図1に示した結果からわかるように、合金
化初期段階での昇温速度が20℃/secと遅い場合には、前
酸化を皮膜量 0.1〜5g/m2の範囲内の量で行っても、耐
衝撃密着性の改善はほとんど得られない。これに対し、
この昇温速度が80℃/secと急速加熱により合金化処理を
行った場合には、前酸化の皮膜量が0.1 g/m2以上になる
と耐衝撃密着性が無酸化の場合に比べて著しく改善され
る。ただし、酸化皮膜量が5g/m2を超えると、耐衝撃密
着性の改善効果が失われる。
【0032】本発明の方法により製造されたGA鋼板が
非常に良好な耐衝撃密着性を示す理由は明らかではない
が、適正な皮膜量での前酸化と急速加熱による合金化処
理との複合効果により、密着性を支配するめっき/鋼板
界面にFe含有量がかなり高くミクロな凹凸の多い特異な
合金層が形成されるためではないかと考えられる。
【0033】本発明の方法により、耐パウダリング性な
どのプレス成形性の劣化を伴わずに低温での耐衝撃密着
性が改善されたGA鋼板を製造することができる。従っ
て、得られたGA鋼板は、塗装後に低温でチッピング衝
撃を受けても塗膜やめっき皮膜が剥離しにくいので、自
動車車体の内板はもとより、外板用にも充分に適用可能
である。もちろん、建材や家電製品といった用途にも使
用できる。
【0034】
【実施例】板厚0.8 mmの各種P添加鋼板 (フルハード冷
延鋼板) またはP無添加鋼板をめっき母材とし、前洗浄
として、通常のアルカリ脱脂 (NaOH水溶液中にてブラシ
洗浄) 、水洗、乾燥を行った。その後、ガス燃焼式加熱
炉において炉内の空燃比を0.9〜1.3 の範囲内、加熱温
度を鋼板温度で 400〜650 ℃の範囲内で変化させて前酸
化を行った。炉内の滞留時間は60秒であった。この前酸
化で生成した酸化皮膜量をX線回折法により測定した。
【0035】前酸化を受けた鋼板を還元炉内で25%H2
N2の雰囲気にて850 ℃×100 秒間の還元焼鈍を行った
後、外気に触れさせずに直ちに溶融亜鉛めっき浴中に導
入した。めっき浴は、温度460 ℃、Al添加量0.10%であ
り、ガスワイピング装置によりめっき付着量を片面当た
り60 g/m2 に調整した。
【0036】その後、加熱手段として高周波誘導加熱装
置を用いて、周波数100 kHz で加熱することにより合金
化のための熱処理を行った。この熱処理初期過程での昇
温速度を変化させ、ゾーン選択により所定温度に到達し
た時点で加熱を止めるか、或いはさらに合金化を進める
場合にはその到達温度に温度保持するヒートパターンと
した。このようにして、Fe8〜12%の範囲内の合金化度
のGA鋼板を得た。
【0037】得られたGA鋼板の耐パウダリング性、耐
フレーキング性および耐低温衝撃密着性を、次のように
して測定した、試験結果を母材鋼板の鋼種、P添加量、
前酸化量 (酸化皮膜量) 、合金化初期の昇温速度、合金
化温度範囲、めっき皮膜の合金化度とともに、表1に示
す。
【0038】1) 耐パウダリング性 GA鋼板を直径60 mm の円板状に打ち抜き、ポンチ直径
30 mm 、ダイス肩半径3Rの円筒絞り試験を行った後、
外側円筒部のテープ剥離を行い、剥離程度を目視により
4段階 (◎、○、△、×) の4段階で評価した。◎が優
秀、×が不良である。
【0039】2) 耐フレーキング性 250 ×50 mm の寸法に切り出したGA鋼板の試験片を用
い、図2に示す装置によりビード付ハット成形試験を行
った。ビード高さは7mm、成形高さは50 mm 、成形速度
は80 mm/sec であった。得られた成形体のビード接触部
内壁側についてテープ剥離を行い、その黒化度からフレ
ーキング性を次の基準で判断した。 ○:使用上問題なし、 △:剥離がやや多い、 ×:
使用不可。
【0040】3) 耐低温衝撃密着性 (耐低温チッピング
性) 150 ×70 mm の寸法に切り出したGA鋼板の試験片に、
市販の浸漬式リン酸塩処理液を使用してリン酸塩処理し
た後、カチオン型電着塗料による下塗り→中塗り→上塗
りの3コート塗装 (合計膜厚:100 μm) を施した。得
られた塗装鋼板を−20℃に冷却保持し、グラベロ試験機
において直径4〜6mmの砂利石10個を空気圧2.0 kg/c
m2、衝突速度 100〜150 km/hr の条件で衝突させ、各衝
突点での塗膜の剥離径を測定した。この剥離径の平均値
(平均剥離径) により耐低温衝撃密着性を評価した。
【0041】
【表1】
【0042】表1に示した結果からわかるように、本発
明方法により適量の前酸化を行った後、還元、溶融亜鉛
めっきを施し、次いで急速加熱により合金化処理したG
A鋼板は、耐パウダリング性および耐フレーキング性を
良好に保持したまま、低温での耐衝撃密着性が著しく向
上した。この効果は、P添加鋼に限らず、P無添加鋼に
おいても得られた。これに対して、合金化処理時の昇温
速度が30℃/secより低いと、耐衝撃密着性はほとんど改
善されなかった。また、前酸化での酸化皮膜量が 0.1〜
5 g/m2の範囲を外れるか、或いは合金化処理の熱処理温
度領域が 420〜700 ℃の温度領域を外れると、耐衝撃密
着性のみならず、耐パウダリング性か耐フレーキング性
も劣化した。
【0043】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の方法に
より、耐パウダリング性や耐フレーキング性といった必
要な他の性能を劣化させずに、耐衝撃密着性、特に衝撃
に弱い低温での耐衝撃密着性が著しく改善されたGA鋼
板を製造することができる。本発明の方法は、耐衝撃密
着性が劣化し易いP添加鋼を母材鋼板とするGA鋼板の
製造において特に大きな耐衝撃密着性の改善が得られる
が、低炭素鋼、極低炭素鋼といった他の鋼種を使用した
GA鋼板の衝撃密着性の向上にも有効である。本発明の
方法により製造されたGA鋼板は、自動車車体の外板に
適しているほか、自動車車体の内板、建材、家電製品と
いった各種用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】合金化溶融亜鉛めっき鋼板の前酸化における酸
化皮膜量と低温での耐衝撃密着性 (−20℃でのチッピン
グ試験における平均剥離径) との関係を示すグラフであ
る。
【図2】耐フレーキング性の評価に用いたビード付ハッ
ト成形試験の概要を示す説明図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを連続的に
    施すにあたり、前焼鈍炉内の予熱工程において鋼板表面
    の酸化皮膜量が 0.1〜5g/m2となるように前酸化を行っ
    た後、還元工程で還元処理した鋼板に所定量の溶融亜鉛
    めっきを付着させた後、30℃/sec以上の昇温速度で鋼板
    温度 420〜700 ℃の温度領域内に加熱し、この温度領域
    内で熱処理して合金化を行うことを特徴とする、耐衝撃
    密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
JP4235942A 1992-09-03 1992-09-03 耐衝撃密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JP2725537B2 (ja)

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