JPH0683931U - ジェットエンジンの着火装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ジェットエンジンの着火装置に係り、燃焼ダ
クト内に形成される高速の気流内において着火の確実性
の向上を図る。 【構成】 燃焼ダクト１内に流通させられる気流Ｇ内に
循環域Ａを形成する保炎器２と、循環域Ａに発熱端４ａ
を配する点火栓４と、その発熱端４ａ近傍の循環域Ａに
霧状の燃料を噴射する燃料噴射手段１１とを配設してな
り、燃料噴射手段１１の作動によって発熱端４ａ近傍に
燃料を集中させ、着火条件を満足するように空燃比を適
正化する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ジェットエンジンのアフタバーナ等に使用される着火装置に関する ものである。

【０００２】

【従来の技術】

ガスタービンエンジン等のジェットエンジンにおいては、排気管（燃焼ダクト ）から噴出される燃焼ガスの噴出速度およびその流量に比例した推力を得ること ができる。また、燃焼ガスの温度を上昇させることにより、温度の平方根に比例 して燃焼ガスの噴出速度が増加することが知られている。そして、これらの性質 を利用してジェットエンジンの推力を増大させる手段として、従来よりアフタバ ーナが採用されている。

【０００３】 該アフタバーナは、燃焼器から排出される高温状態の燃焼ガスに多量の未燃酸 素が含有されていることに着目して、排気管内において該燃焼ガスに燃料を混合 して再度燃焼させることにより燃焼ガスの温度を高めて推力の増大を図るもので ある。このアフタバーナとしては、例えば、図４に示すように、燃焼ガスが流通 させられる排気管１内に、下流側に開口するＶ字形断面を有する円環状の保炎器 ２を配設するとともに、該保炎器２の上流に燃料ノズル３を配設し、保炎器２の 内側に発熱端４ａを配する点火栓４を設けることにより構成したものがある。前 記排気管１には、エンジン頭部のファン（図示略）によって取り込まれたファン 流が直接送入され、排気管１内において燃焼ガスに混合されるようになっている 。

【０００４】 また、前記保炎器２の周囲に流通させられた燃焼ガスの気流Ｇは、ファン流を 混合し、保炎器２の後縁から剥離させられるようにして、該保炎器２の後流に乱 流域Ａ（循環域）を形成する。保炎器２の上流には燃料ノズル３が配設されてお り、該燃料ノズル３から噴射された燃料は、気流Ｇおよびファン流に乗せられて 保炎器２の周囲を流通させられた後に乱流域Ａに取り込まれて燃焼ガスおよび空 気と混合されることになる。そして、この状態で、保炎器２の内側、すなわち乱 流域Ａの内部に発熱端４ａを配した点火栓４を作動させることにより、混合気に 着火させることができるようになっている。図４において、符号５は排気ノズル 、６はライナである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上記のような着火装置であると、排気管１内の燃焼ガスの流通速度 が速いために、燃料ノズル３から噴射された燃料の多くは、その慣性力によって 乱流域Ａに取り込まれることなく気流Ｇに乗って押し流される。排気管１内にお いて燃焼が行われている場合は、押し流された燃料も、展炎により燃焼させられ るので、有効に推力を発生することができるが、着火時においては、乱流域Ａ内 に取り込まれる燃料が不足して、着火時における空燃比を適正なものとすること ができず、着火の確実性が低下するという問題点がある。この場合には、アフタ バーナ７を確実に作動させることができないという不都合があった。

【０００６】 本考案は上述した事情に鑑みてなされたものであって、燃焼ダクト内に形成さ れる高速の気流Ｇ内においても確実に着火させることができるジェットエンジン の着火装置を提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案は、次の２つの手段を提案している。 第１の手段は、燃焼ダクト内に流通させられる気流内に配され流通方向下流に 向けて拡幅する断面形状を有しかつその後流に気流の循環域を形成する保炎器と 、該保炎器の上流に配され燃料を噴射する燃料ノズルと、前記循環域に発熱端を 配する点火栓と、該点火栓の発熱端近傍の循環域に霧状の燃料を噴射する燃料噴 射手段とが配設されているジェットエンジンの着火装置を提案している。 第２の手段は、燃焼ダクト内に流通させられる気流内に配され流通方向下流に 向けて拡幅する断面形状を有しかつその後流に気流の循環域を形成する保炎器と 、該保炎器の上流に配され燃料を噴射する燃料ノズルと、該燃料ノズルの下流に 形成される循環域に発熱端を配する点火栓と、該点火栓の発熱端近傍の保炎器の 側方から後方にかけて配されその表面に沿って気流を流通させることにより前記 点火栓近傍の循環域に保炎器周囲の気流を指向させる気流偏向部材とが配設され ているジェットエンジンの着火装置を提案している。

【０００８】

【作用】

本考案の第１の手段に係るジェットエンジンの着火装置によれば、燃焼ダクト 内に配される保炎器が気流の流通方向下流に向けて拡幅する断面形状を有してい るので、気流が保炎器の表面に沿って流通し保炎器を通過するときに剥離され、 保炎器の後流に気流の循環域が形成される。そして、燃料噴射手段によって、該 循環域に霧状の燃料を噴射することにより、該燃料が循環域に滞留させられ、点 火栓の発熱端近傍における適正な空燃比が達成されることになる。 本考案の第２の手段に係るジェットエンジンの着火装置によれば、第１の手段 と同様にして、燃焼ダクトの気流内に配置された保炎器の後流に、気流が滞留さ せられる循環域が形成される。保炎器の上流に配された燃料ノズルから燃料が噴 射されると、該燃料は、気流に乗って保炎器の周囲を流通させられる。そして、 保炎器の側方から後方にかけて配された気流偏向部材によって循環域に指向させ られた気流に乗って、循環域に強制的に送り込まれ、点火栓の発熱端近傍におけ る空燃比の適正化が図られることになる。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案に係るジェットエンジンの着火装置の第１実施例について、図１ を参照して説明する。 なお、本実施例において、図４に示す従来例と共通する箇所に同一符号を付し 、説明を簡略化する。

【００１０】 本実施例の着火装置１０も、ジェットエンジンの排気管１（燃焼ダクト）に配 設されるアフタバーナの着火装置であって、燃焼ガスの気流Ｇが流通させられる 排気管１内に、下流側に開口するＶ字形断面を有する円環状の保炎器２を配設す るとともに、該保炎器２の内側に発熱端４ａを配する点火栓４を設けている点で 、図４に示す従来例と共通している。しかし、本実施例の着火装置１０は、保炎 器２によって排気管１内に形成される乱流域Ａに燃料を噴射する燃料噴射手段１ １を配設している点で、従来例と相違している。

【００１１】 前記燃料噴射手段１１は、例えば、排気管１の壁面から、排気管１内に先端を 突出状態に配される筒状部材の内部の燃料供給管１１ａを通して、燃料を排気管 １内に導入するノズルであって、その先端を前記保炎器２によって形成される乱 流域Ａの内側に配するようになっている。該燃料噴射手段１１の先端には、導入 された燃料を霧状にして乱流域Ａに噴出するための圧力噴射弁１２が配設されて いる。また、排気管１内に配される燃料噴射手段１１は、その先端部が高温状態 となるために、中空構造とされており、内部に連通する空気供給ライン１１ｂに よって冷却空気を挿通させることができるようになっている。

【００１２】 この燃料噴射手段１１は、点火栓４の発熱端４ａの近傍に、点火栓４の数と同 数配設されている。これにより、点火栓４の発熱端４ａ近傍の乱流域Ａにのみ燃 料を集中させることが可能となり、混合気内の燃料の割合を向上させて着火時に おける空燃比を適正なものとすることができるようになっている。また、保炎器 ２の上流側には、気流Ｇに乗せて燃料を噴出する燃料ノズル３が配設されており 、燃焼時における排気管１内の適正な空燃比を達成することができるようになっ ている。

【００１３】 このように構成されたジェットエンジンの着火装置１０によれば、着火時に燃 料噴射手段１１を作動させて点火栓４の発熱端４ａ近傍の乱流域Ａ内に霧状の燃 料を噴射することにより、高速で流通する燃焼ガスの気流Ｇ内において着火条件 を満足する適正な空燃比を実現することができる。したがって、点火栓４の作動 によって容易に、しかも、確実に着火させることが可能となり、着火ミス等を回 避して機体の操縦性能を向上することができるという効果を奏する。

【００１４】 次に、本考案に係るジェットエンジンの着火装置の第２実施例について、図２ および図３を参照して説明する。 本実施例の着火装置も、ジェットエンジンのアフタバーナの着火装置２０であ って、上記第１実施例と同様に、保炎器２後流に形成される乱流域Ａ内に燃料を 集中させる技術に関するものである。

【００１５】 本実施例の着火装置２０は、燃焼ガスが流通させられる排気管１内に、下流側 に開口するＶ字形断面を有する円環状の保炎器２を配設するとともに、該保炎器 ２の上流に気流Ｇに乗せて燃料を噴射する燃料ノズル３を設け、保炎器２の内側 に発熱端４ａを配する点火栓４を設けている点で、図４に示す従来例と共通して いる。しかし、本実施例の着火装置２０は、保炎器２の近傍にスクープカラー２ １（気流偏向部材）を配設している点で、従来例と相違している。

【００１６】 該スクープカラー２１は、例えば、図２に示すように、保炎器２の側方に保炎 器２の表面に対して間隔を空けて配される概略平面状の導入部２１ａと、該導入 部２１ａの後端を保炎器２の後流に向けて湾曲させた曲面形状よりなる偏向部２ １ｂとを具備する板状の部材である。前記導入部の上流側は、流通する気流Ｇを 保炎器との間に導入し易くするために、上流方向に向かって若干開いた形状に形 成されている。そして、図３に示すように、点火栓４近傍の保炎器２に部分的に 配設されている。該スクープカラー２１によれば、該スクープカラー２１の上流 側から流れてきた燃料を含む気流Ｇが、導入部２１ａによって、スクープカラー ２１と保炎器２との間に導かれ、偏向部２１ｂの表面に沿って挿通させられるこ とにより、保炎器２の後流に向けて偏向させられるようになっている。

【００１７】 また、前記燃料ノズル３は、前記スクープカラー２１の配設されている部分の 保炎器２の上流に配設され、その下流に向けて霧状の燃料を噴射するようになっ ている。

【００１８】 このように構成された着火装置２０によれば、燃料ノズル３から噴射された燃 料が燃焼ガスの気流Ｇに乗って下流側に流れると、スクープカラー２１の導入部 ２１ａによって保炎器２とスクープカラー２１との間に導かれた後に、偏向部２ １ｂに沿って保炎器２の後流に指向させられる。保炎器２の後流には、保炎器２ によって乱流域Ａが形成されているので、保炎器２の後流に指向させられた燃料 は、乱流域Ａに滞留させられることになる。これにより、スクープカラー２１の 近傍には点火栓４の発熱端４ａが配設されているので、該発熱端４ａの近傍に燃 料が集中させられることになり、着火条件を満足する適正な空燃比が実現され、 点火栓４の作動によって、確実に着火させることができる。

【００１９】 なお、本考案に係るジェットエンジンの着火装置１０・２０においては、排気 管内１において燃焼ガスを再燃焼させるアフタバーナに適用することとしたが、 これに代えて、例えば、ラムジェットエンジン等の着火装置として使用すること にしてもよい。

【００２０】

【考案の効果】

以上詳述したように、本考案の第１の手段に係るジェットエンジンの着火装置 は、燃焼ダクト内に流通させられる気流内に循環域を形成する保炎器と、循環域 に発熱端を配する点火栓と、その発熱端近傍の循環域に霧状の燃料を噴射する燃 料噴射手段とが配設されているので、燃料噴射手段の作動によって点火栓の発熱 端近傍の循環域に燃料を集中させることにより、空燃比を適正化し得て、着火の 確実性を向上することができるという効果を奏する。 また、第２の手段に係るジェットエンジンの着火装置は、燃焼ダクト内に流通 させられる気流内に循環域を形成する保炎器と、その上流に配され燃料を噴射す る燃料ノズルと、その下流に形成される循環域に発熱端を配する点火栓と、保炎 器の側方から後方にかけて配され発熱端近傍の循環域に保炎器周囲の気流を指向 させる気流偏向部材とが配設されているので、燃料ノズルから噴射された燃料を 気流偏向部材によって偏向させられる気流に乗せて発熱端の近傍に集中させるこ とができ、発熱端近傍の空燃比を適正化して着火の確実性を向上することができ るという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例に係るジェットエンジンの
着火装置を示す縦断面図である。

【図２】本考案の第２実施例に係るジェットエンジンの
着火装置を示す縦断面図である。

【図３】図２の着火装置のスクープカラーを示す正面図
である。

【図４】ジェットエンジンの着火装置の従来例を示す縦
断面図である。

【符号の説明】

１ 排気管（燃焼ダクト） ２ 保炎器 ３ 燃料ノズル ４ 点火栓 ４ａ 発熱端 １０・２０ 着火装置 １１ 燃料噴射手段 １２ 圧力噴射弁 ２１ スクープカラー（気流偏向部材） Ａ 乱流域（循環域）

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃焼ダクト内に流通させられる気流内に
   配され流通方向下流に向けて拡幅する断面形状を有しか
   つその後流に気流の循環域を形成する保炎器と、該保炎
   器の上流に配され燃料を噴射する燃料ノズルと、前記循
   環域に発熱端を配する点火栓と、該点火栓の発熱端近傍
   の循環域に霧状の燃料を噴射する燃料噴射手段とが配設
   されていることを特徴とするジェットエンジンの着火装
   置。
2. 【請求項２】 燃焼ダクト内に流通させられる気流内に
   配され流通方向下流に向けて拡幅する断面形状を有しか
   つその後流に気流の循環域を形成する保炎器と、該保炎
   器の上流に配され燃料を噴射する燃料ノズルと、該燃料
   ノズルの下流に形成される循環域に発熱端を配する点火
   栓と、該点火栓の発熱端近傍の保炎器の側方から後方に
   かけて配されその表面に沿って気流を流通させることに
   より前記点火栓近傍の循環域に保炎器周囲の気流を指向
   させる気流偏向部材とが配設されていることを特徴とす
   るジェットエンジンの着火装置。