JPH067974A - パルスレーザ照射装置および方法 - Google Patents

パルスレーザ照射装置および方法

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JPH067974A
JPH067974A JP5078370A JP7837093A JPH067974A JP H067974 A JPH067974 A JP H067974A JP 5078370 A JP5078370 A JP 5078370A JP 7837093 A JP7837093 A JP 7837093A JP H067974 A JPH067974 A JP H067974A
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pulse
pulse laser
rectangular wave
peak power
stage
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JP5078370A
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English (en)
Inventor
Koichi Haruta
浩一 春田
Yuichiro Terashi
雄一郎 寺師
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 パルスレーザ照射で溶接を行う際に、ブロー
ホール等の溶接欠陥のない良好な溶接外観を持ち、スパ
ッタ等の飛散が少なく、溶接強度の十分な溶接ビードを
得る 【構成】 パルスレーザの各周期におけるパルス波形の
中に2つの矩形波を生成し、1段目の矩形波のピークパ
ワー値P1及びそのパルス幅t1と、2段目の矩形波のピ
ークパワー値P2及びそのパルス幅t2との関係を所定の
範囲に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザ照射装置、特に
溶接を行うレーザ溶接装置に適用して有効な技術に関す
る。
【0002】
【従来の技術】Znメッキ鋼板は、防錆効果を得るため
に、表面及び裏面にZnメッキ処理を施した鋼板であ
り、代表的な鋼板としてJIS規格 G3302で規定
されている。このZnメッキ鋼板の板厚は、熱延原板を
用いた場合には、1.6mm以上6.0mm以下であ
り、冷延原板を用いた場合には、0.11mm以上3.
2mm以下である。このZnメッキ鋼板は、自動車、家
電製品等の軽工業及び重工業において広く利用されてい
る。
【0003】Znメッキ鋼板の重ね溶接としては、以下
のような技術がある。図13(a)に示すような2枚重
ね溶接例では、両面にZnメッキ3を有する2つの鋼板
2−1,2−2を重ねたものであり、図13(b)に示
す例ではZnメッキ3を有する1つの鋼板2aを折り曲
げて2枚重ねとしたものである。
【0004】図14(a)に示すような3枚重ね溶接で
は、両面にZnメッキ3を有する3つの鋼板2−1,2
−2,2−3を重ねたものであり、図14(b)に示す
例では両面にZnメッキ3を有する1つの鋼板2bを折
り曲げ、且つこの鋼板2bのくぼみに両面にZnメッキ
3を有する1つの鋼板2−1を挿入して3枚重ねとした
ものである。
【0005】図15(a)(b)に示すような4枚以上
の複数枚重ね溶接なども、上記同様にして行われる。重
ね溶接におけるセミペネトレーション溶接の目的は、お
もに接合強度を確保しながら、表面鋼板の外観品質を維
持することにある。すなわち、図14(b)に示すよう
に溶接後に表面仕上げ加工をする必要がなく、元の鋼板
表面のままの外観品質を確保している。
【0006】また、図14(a)に示すような場合に
は、最小の表面仕上げ加工で元の鋼板表面の外観品質を
維持している。Znメッキ鋼板に表面加工として例えば
研削加工等を施すと、表面のZnメッキ層が研削されて
しまい、Znメッキ処理の防錆効果が、著しく損なわれ
てしまう。
【0007】一般に、Znメッキ鋼板をレーザ溶接する
方法として、例えばCW(連続発振)型及びパルス発振
型レーザ(以下、パルスレーザという。)を用いる方法
が知られている。これらの方法を以下に説明する。
【0008】(1)CW型レーザを用いた例として、例
えばCW型CO2レーザによる重ね溶接が上げられる。
CW型CO2レーザでは、溶接中にキーホール及びレー
ザ誘起プラズマが連続して保持される。このため、レー
ザ照射により発生したZn金属蒸気(一部はプラズマ
化)は、キーホールから効率的に除去されるものの、レ
ーザ出力がパルスレーザに比較して投入過多になってし
まう。
【0009】このため、溶融凝固部が大となり、フルペ
ネトレーション(貫通溶接)になってしまう。また、注
意深く照射条件を選定して部分的にセミペネトレーショ
ンが得られても、溶接ワークであるZnメッキ鋼板間の
隙間(以下、ワーク間ギャップという。)にバラツキが
あり、さらにはZnメッキ鋼板のメッキ目付け量にもバ
ラツキがある(例えばF08の場合に、Zn目付け量;
60〜100g/m2)等の理由によりフルペネトレー
ションが発生してしまうか、または過大な入熱のために
歪が発生するため、健全な鋼板の表面外観が得られなか
った。
【0010】(2)一方、パルスレーザを用いた例とし
ては、Nd:YAGレーザなどの固体レーザによる重ね
溶接が上げられる。Nd:YAGレーザでは、重ね連続
溶接及び重ねスポット溶接が知られている。
【0011】パルスレーザでの出力は、以下のように規
定される。平均出力P(kW)は、 P=E・f となる。
【0012】また、1パルスのエネルギーEは、 E=P’・t となる。
【0013】ここで、P(kW)は平均出力であり、E
(J)は1パルスのエネルギーである。P’(kW)
は、1パルスのピークパワーであってパルス幅当りの平
均ピークパワーのことであり、t(msec:miliseco
nd)は、1パルスのパルス幅であり、f(Hz)は、パ
ルス周波数である。
【0014】一般的に、パルスレーザ溶接において所定
の溶接速度に対する溶接体積及び溶け込み深さは、パル
スエネルギーでほぼ決定される。そこで、所望の溶け込
みを得るために必要な1パルスのエネルギー(平均出力
とパルス周波数で決定)は、例えば図16に示すように
報告されている。ここで、図16において、パルス溶接
では同一曲線中でも加工条件として、例えばパルス時
間、周波数、平均出力を最適に合わせている。平均出力
が同じ場合には、CWに比較してパルスでは溶け込みが
深くなる。
【0015】パルスエネルギーを与えるパルス波形とし
ては、次のようなものがある。図17に示すような矩形
波では、パルス幅t内でピークパワーPがほぼ変化して
いない。図18に示すような積分波形では、パルス幅t
内でピークパワーPが変化している。図19にCW重畳
型例を示す。これらの例では、基本的には前述したよう
に矩形波でのパルスエネルギーで所望の溶け込み深さが
決定される。
【0016】また、パルスレーザ照射により表面が吹き
飛ばされ易い金属の場合には、パルスエネルギー密度
(ピークパワー密度)を選定することにより、良好な溶
接ビードが得られる。
【0017】このようなZnメッキ鋼板の板厚や所定の
溶接速度に対する所望の溶け込み深さを得るために必要
なパルスエネルギー及びパルスエネルギー密度(ピーク
パワー密度)は、従来の公知の方法により容易に得られ
る。
【0018】また、レーザ溶接に際しては、溶接ヒュー
ムやスパッタがレンズに付着するなど光学系を損ねるた
め、ヒューム及びスパッタ防止法が検討されきた。光学
系をスパッタ及びヒュームから保護する方法としては、
ワークレンズ間に保護のためのガラス板を設置する方法
と、圧搾空気をノズルから吹き出してスパッタ等を吹き
飛ばす方法、または両方を併用する方法がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方
法にあっては、次のような問題があった。すなわち、一
般的なNd:YAGレーザパルスレーザでは、パルス発
振によるレーザ照射により、キーホール及びレーザ誘起
プラズマが断続的に発生する。このため、レーザ照射に
より発生したメッキ金属蒸気(有機材料をコートしてい
る場合は、有機物の分解物の蒸気)(なおこれらの蒸気
の一部はプラズマ化している)を1パルス毎に効率的に
取り除く必要がある。
【0020】ところが、単一の矩形波パルスでは、メッ
キ金属蒸気を除去することができず、溶融池内に取れ込
まれて溶接欠陥となる(これをブローホールという。)
場合と、蒸気圧力によって溶融金属が飛散する場合(接
合不良)のどちらかになる。どちらの場合にも、ブロー
ホール、スパッタ飛散等の溶接外観不良に加え、溶接強
度の著しい低下を生じてしまう。
【0021】また、多くのスパッタ飛散等は、光学系の
損傷を引き起こし、メンテナンスの負担を増加させてし
まう。さらには、鋼板間に隙間がある場合では、前述の
現象に加え、隙間を通ってメッキ金属蒸気が外に逃げ出
すことによって溶接金属が鋼板間で飛散する現象が発生
し、溶接不良となる。ただし、ワーク間ギャップがある
範囲にあるときには、鋼板間からメッキ金属蒸気が効率
的に逃げ出すために良好な溶接ビードが得られる場合が
ある。
【0022】しかしながら、このワーク間ギャップ範囲
を維持することは、工業的に非常に困難なことであっ
た。また、光学系の保護に関しては、従来の方法では、
スパッタが大きな運動量を持って飛散してくる(これを
スプラッシュという。)ために、圧搾空気ではこれを完
全に除去できず、スパッタが保護ガラスに付着したり、
損傷を受ける。
【0023】また、ヒューム(金属微粒子)も完全には
除去できずに、保護ガラスや放物鏡等の光学系に付着す
る。このため、保護ガラス等の光学部品にコストがかか
ることや、保護ガラス等の光学部品の交換による時間的
な損失が生ずる等の問題があった。
【0024】本発明は、パルスレーザを用いた被覆金属
材料のパルスレーザ照射方法に関し、特にメッキ鋼板の
重ねスポット溶接及び重ね連続(ラップシーム)溶接に
おいて部分溶け込み溶接(セミペネトレーション)を行
なう際に、ブローホール等の溶接欠陥のない良好な溶接
外観を持ち、スパッタ等の飛散が少なく、溶接強度の十
分な溶接ビードを得ることのできる被覆金属材料のパル
スレーザ照射装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明はレーザ媒質と、
このレーザ媒質を外部から励起する励起源とを有するパ
ルスレーザ発振器を備えたパルスレーザ照射装置から出
力されるパルスレーザを被覆した金属材料に照射するパ
ルスレーザ照射装置において、前記パルスレーザ発振器
で発振するパルスレーザの各周期におけるパルス波形の
中に2つの矩形波を生成するよう前記パルスレーザ発振
器を制御する発振制御部を備えている。
【0026】
【作用】前記発振制御部は、1段目の矩形波のピークパ
ワー値P1及びそのパルス幅t1と、2段目の矩形波のピ
ークパワー値P2及びそのパルス幅t2との関係を所定の
範囲に制御し、この発振制御部の制御の下に前記パルス
レーザ発振器で発振したパルスレーザを前記メッキ鋼板
に照射しメッキ鋼板の溶接を行なう。
【0027】なお、レーザ媒質としては、固体レーザで
はネオンジウムをドープしたイットリウム・アルミニウ
ムガーネット(Nd:YAG),半導体レーザー、ルビ
ー,ガラス等が用いられる。また、気体レーザではCO
2等が用いられる。
【0028】励起源としては、Nd:YAGレーザ,ル
ビーレーザ,色素レーザ,ガラスレーザ等にはフラッシ
ュランプ及び半導体レーザ等が用いられる。発振制御部
としては、励起源の電力を変化させることで、前記ピー
クパワーを制御し、また励起源の例えば半導体スイッチ
等を用いて導通時間を制御することで、前記パルス幅を
制御する。
【0029】本発明によれば、発振制御部により、パル
スレーザ発振器においてパルスレーザの各周期における
パルス波形の中に2つの矩形波が生成され、また1段目
の矩形波のピークパワー値P1(kW)及びそのパルス
幅t1(msec)と、2段目の矩形波のピークパワー
値P2(kW)及びそのパルス幅t2(msec)との関
係が所定の範囲に制御されるので、発振したパルスレー
ザをメッキ鋼板に照射すると、溶接ビードからメッキ金
属蒸気を効率的に除去して、溶接欠陥の非常に少ない良
好な溶接外観を持つ溶接強度の大きい溶接ビードを得る
ことができる。
【0030】また、前記発振制御部における所定の範囲
は、 0<t1/(t1+t2)<1 P1/P2>1 t1/(t1+t2)≦0.6・(P1/P2)−0.2 より好ましくは、 0.3≦t1/(t1+t2)≦0.5 1.5≦P1/P2≦2.0 であり、この範囲にあるパルスレーザを照射すること
で、さらに効果が大となる。この場合に前記波形にCW
(連続発振)重畳するようにしても良い。
【0031】さらに、発振制御部の制御の下に、2つの
矩形波間の時間間隔tintを10msec以下にするこ
とで、効果を奏する。また、発振制御部の制御の下に、
2つの矩形波間の時間間隔tintを2msec以下にす
ることで、さらに効果が大となる。
【0032】さらに、発振制御部は、パルスレーザのパ
ルスエネルギーが複数枚の重ね合わせのメッキ鋼板に対
して1枚目のメッキ鋼板を貫通して2枚目のメッキ鋼板
を部分溶け込みさせる強度となるようにパルス発振器を
制御することで、セミペネトレーションの強度を持つパ
ルスレーザを照射できる。
【0033】また、パルスレーザの中心軸とメッキ鋼板
表面に対する垂線とのなす角度θが0°から60°の範
囲とすることで効果を奏する。さらに、パルスレーザの
中心軸とメッキ鋼板表面に対する垂線とのなす角度θが
10°から40°の範囲とすることでさらに効果が大と
なる。
【0034】
【実施例1】以下、本発明の具体的な実施例を説明す
る。図1は本発明の一実施例のパルスレーザ照射装置の
概略構成図である。
【0035】図1に示すように、パルスレーザ照射装置
はレーザ加工機として機能し、その構成は次のようにな
っている。パルスレーザ照射装置11は、Nd:YAG
ロッド12及びフラッシュランプ13を有するレーザ装
置本体11a、レーザ装置本体11aに電源を供給する
レーザ電源部14、レーザ電源部14を制御するレーザ
コントローラ11b、冷却装置15から構成される。
【0036】前記レーザ電源部14は、レーザ媒質であ
るYAGレーザ12の発振制御部として機能し、具体的
にはフラッシュランプ13の電圧制御によるピークパワ
ーの制御、あるいは半導体スイッチ等を用いた導通時間
の制御を行う。
【0037】Nd:YAGロッド12は、フラッシュラ
ンプ13の電力供給を受けてマルチモードで、平均出力
400Wであって、波長が1.06μmで発振するよう
になっている。なお、パルス繰り返し数は、8ppsと
なっており、1パルスエネルギーが50Jとする。
【0038】光ファイバー21は、レーザ装置本体11
aに接続され、レーザ装置本体11aから出射されたレ
ーザ光をレーザ出射ユニット22に伝送する。レーザ出
射ユニット22は、6軸多関節ロボット17に取り付け
られており、この6軸多関節ロボット17によってX,
Y,Zの3方向に移動可能になっており、任意の座標位
置(X1,Y1,Z1)に設定されるようになっている。
【0039】6軸多関節ロボット17は、自己の座標位
置(X2,Y2,Z2)と、ロボットコントロール装置1
6から出力されるレーザ出射ユニット22を所定の位置
に設定するための制御位置情報(X1,Y1,Z1)とに
基づき、レーザ出射ユニット22を座標位置(X1
1,Z1)に移動するよう制御を行なう。
【0040】また、ロボットコントロール装置16は、
レーザ出射ユニット22が所定の位置または所定の方向
に移動するための制御位置情報も、6軸多関節ロボット
17に与えるようになっている。
【0041】図2はレーザ出射ユニット22の構成図で
ある。図2に示すように、本体22c内には、集光レン
ズ22aが設けられており、先端が先細りに構成されて
いる。集光レンズ22aで集光されたレーザ光が、レー
ザ出射口22dから出射するように構成されている。集
光レンズ22aは、焦点距離が120mmであり、広が
り角(ハーフアングル)が15mradの範囲内であっ
て、焦点位置がジャストフォーカスのものを用いる。ま
た、レーザ出射ユニット22には、アルゴンガス又は窒
素ガスなどのガスが10l/分で流入するようになって
いる。
【0042】前記6軸多関節ロボット17は、自己の座
標位置(X2,Y2,Z2)と、ロボットコントロールユ
ニット18から出力されるレーザ出射ユニット22を所
定の位置に設定するための制御位置情報(X1,Y1,Z
1)とに基づき、レーザ出射ユニット22を座標位置
(X1,Y1,Z1)に移動するよう制御を行なう。
【0043】従って、6軸多関節ロボット17によるレ
ーザ出射ユニット22のX方向への傾き制御によって、
溶接試料1cの表面からの垂線Hに対するレーザ光の中
心軸Cの角度θが、20°に設定されるようになってい
る。また、6軸多関節ロボット17によるレーザ出射ユ
ニット22のX方向への移動制御によって、溶接試料1
cの溶接速度を50cm/minにしている。
【0044】被溶接物1cは、亜鉛メッキ鋼板(JIS
G3302 SGCC SDN)であり、F08(最
小呼び目付け量 両面60/60g/m2)であり、長
さL100(mm)×幅W30(mm)×厚さT0.8
(mm)であり、3枚重ねであって、各鋼板間の隙間は
0mmである。また溶接ビード長は20mmとする。前
述の発振制御部としてのレーザ電源部14の制御の下
に、パルスYAGレーザ12で発振したパルスレーザの
レーザ波形として、図3に示すように2段矩形波を用い
ている。ここで、P1(kW)は1段目のピークパワー
であり、t1(msec)はそのパルス幅である。P
2(kW)は2段目のピークパワーであり、t2(mse
c)はそのパルス幅である。また、fはパルス繰り返し
周波数である。
【0045】従って、1段目のエネルギーE1(J)
は、 E1=P1・t1 で表され、2段目のエネルギーE2(J)は、 E2=P2・t2 で表される。また、ここで1パルスの平均ピークパワー
AU(kW)を、1パルスのパルスエネルギーをEtot
(J)として、 PAU=Etot/(t1+t2)=(E1+E2)/(t1+t
2) で定義する。
【0046】実施例1では、1枚目の鋼板2−1貫通か
ら2枚目の鋼板2−2の部分溶け込みの溶接ビードを得
るために、パルスエネルギー一定の他に、平均ピークパ
ワーPAUを一定になるように設定した。この条件下で
は、その他の設定を変えても、溶け込み深さは、あまり
かわらない。実施例1では、PAU=5kWに設定した。
【0047】さらに、次の量を定義する。すなわち、 α=P1/P2 β=t1/(t1+t2) である。このα、βを変数としてマトリックスを組み、
変数αが3以下の範囲で実験を行った。ビード外観の
他、引張試験による引張せん断荷重の測定値を得て評価
を行なう。
【0048】この結果、各点での引張強度から図4に示
すような評価結果が得られた。図4において、○は25
0kgf以上であり、△は150kgf以上250kg
f未満であり、×は150kgf未満の点である。ま
た、図5に、変数βを0.4に固定したときにおける変
数αを変化させたときの引張せん断荷重の変化を示す。
【0049】以上の結果を総合すると、図6に示すよう
に 1<α<3、0<β<1、β≦0.6α−0.2 ・・・・・(1) の範囲では、従来の単純な1段の矩形パルスから得られ
た溶接ビードに比較して十分な溶接強度を持ち、かつ外
観も良好な溶接ビードが得られ、大幅な改善がなされる
ことが判明した。
【0050】また、その中でも特に 1.5≦α≦2、0.3≦β≦0.5 ・・・・・(2) の範囲では、図9に示すように溶接欠陥が非常に少ない
美しいビード外観が得られるとともに、最も強い溶接強
度が得られた。
【0051】このように実施例1では、溶接ビードから
メッキ金属蒸気を効率的に除去して、溶接欠陥の非常に
少ない良好な溶接外観を持つ溶接強度の大きい溶接ビー
ドを得ることができる。
【0052】以上の実施例1では、鋼板間の隙間を0m
mにして行ったが、これに75μmの隙間を空けて不等
式(2)範囲内の条件で溶接を行った場合には、さらに
良好な400kgfを越す引張せん断荷重と、溶接欠陥
がほとんどない溶接ビードが得られる。
【0053】
【実施例2】レーザ電源部14a(図示しない)は、代
表的な2段矩形波において、1段目のパルス波形と2段
目のパルス波形とのパルス間隔tintを0〜10mse
c.まで変化させるようフラッシュランプ13を制御す
る。パルス間隔tintが0のとき、すなわち、2段連続
矩形波を図7に示す。
【0054】パルス間隔tintを0〜10msec.ま
で変化させると、その結果として、図8に示すように2
段矩形波の1段目と2段目パルス間隔tintを大きくす
るほど引張せん断荷重が減少し、溶接ビードの外観も単
一矩形波(比較例1)に近づくことがわかる。
【0055】
【比較例1】まず、比較例1は、実施例1と同一出力で
あって、かつ同一ピークエネルギーをもつ1段矩形波パ
ルスによる溶接である。比較例1の場合には、図10
(写真2)に示すように溶接ビード表面に盛り上がり、
また穴ができて溶接外観不良となる。穴の部分では、亜
鉛蒸気の噴出による表面溶融金属の飛散が発生し、溶融
金属の欠如が発生している。図10においては、盛り上
がり部A、穴部Bが示されており、盛り上がり部Aの溶
融金属内部にはブローホールが発生している。
【0056】また、このために溶融金属の飛散によるス
パッタが多く、これが試料表面に固着するために、外観
不良の一つとなる。また、盛り上がった部分では、1枚
目の鋼板2−1と2枚目の鋼板2−2との間に亜鉛蒸気
を取り込んだ大きなブローホールが溶融金属内部に発生
しており、これが発生する部分ではほとんど鋼板間に融
着部位を生じない。以上の2つの現象により溶接強度は
極端に落ち込み、溶接不良となっている。
【0057】
【比較例2】比較例2では、1枚目の鋼板2−1と2枚
目の鋼板2−2の間に75μmの隙間を空け、1段の矩
形波での溶接を行った。その結果、比較例1と同様に図
11に示すように溶接外観不良、例えば表面盛り上が
り、ブローホール、スパッタ等となり、引張せん断荷重
も著しく低い値しか示さず、溶接不良となっている。図
11においては、盛り上がり部Aが示されており、盛り
上がり部Aの溶融金属内部にはブローホールが発生して
いる。またスパッタは系外に噴出してレーザ出射部の光
学系を損ねる。
【0058】
【比較例3】比較例3では、パルス波形を2段矩形波と
しているが、変数α,βを前記不等式(1)の範囲外と
したものである。例えば変数αが1.2であって、βが
0.8である点における溶接ビード外観を図12に示
す。この範囲では、溶接ビード外観の乱れ、スパッタの
飛散、ブローホールの溶融池内取り込みによる溶接強度
の低下が見られ、溶接不良となる。
【0059】図12において、ブローホールを含む溶接
ビード乱れ部Cが発生しており、スパッタは系外に噴出
している。また、パルスレーザの中心軸とメッキ鋼板表
面に対する垂線とのなす角度θが0°から60°の範囲
とすることで、レンズ22の直前に配置した保護ガラス
の耐久性(透過レーザ出力が10%低下するまでの溶接
ビード本数を測定)は約200本から約800本とおお
よそ4倍の耐久性が得られた。
【0060】θが大きくなりすぎると、溶接ワーク及び
ワーク・クランプ治具等への干渉が問題になる。その場
合には、θが10°から40°の適切な範囲とすること
で、保護ガラスの耐久性が確保できる。
【0061】このように実施例1及び実施例2と比較例
1ないし比較例3とを説明したが、実施例1及び実施例
2によれば、パルスレーザ照射波形を2段矩形波とし、
所定の範囲に照射条件を設定することで、溶接ビードか
らメッキ金属蒸気を効率的に除去して、溶接欠陥の非常
に少ない良好な溶接外観を持つ溶接強度の大きい溶接ビ
ードを得ることができる。また、光学系に損傷を与える
ことが少なく、よってメンテナンスの負担を低減でき
る。
【0062】前記実施例において、被覆した金属材料と
して、メッキ鋼板を用いた場合で説明したが、本発明に
おいて「被覆した金属材料」とは、例えば有機材料また
は無機(又は金属)材料(例えばZnメッキ等のような
メッキ材料)で表面を被覆(メッキを含む)した金属材
料のことであり、またこの金属材料としては例えば鋼
(スチール)、アルミニウム、チタン合金、銅合金等が
挙げられる。本発明はこの中でも特に被覆鋼板へのレー
ザ照射装置または方法として適している。
【0063】また、本発明のパルスレーザ照射装置また
は方法は、メッキ鋼板(例えばZnメッキ鋼板)のパル
スレーザ溶接用に最も適しているが、その他メッキ鋼板
の穴あけ等の加工にも用いることができる。
【0064】
【発明の効果】本発明によればパルスレーザ照射波形を
所定の2段矩形波とすることで、溶接ビードからメッキ
金属蒸気を効率的に除去して、溶接欠陥の非常に少ない
良好な溶接外観を持つ、溶接強度の大きい溶接ビードを
得ることができる。また、光学系に損傷を与えることが
少なく、メンテナンスの負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す図である。
【図2】レーザ出射ユニットの構成図である。
【図3】2段矩形波を示す図である。
【図4】マトリクス試験におけるせん断荷重を示す図で
ある。
【図5】βが0.4におけるαと引張せん断荷重の関係
を示す図である。
【図6】αとβの総合良好溶接範囲を示す図である。
【図7】2段連続矩形波を示す図である。
【図8】1段目と2段目のパルス間隔と引張せん断荷重
の関係を示す図である。
【図9】実施例1の溶接ビード外観を示す図である。
【図10】比較例1の溶接ビード外観を示す図である。
【図11】比較例2の溶接ビード外観を示す図である。
【図12】比較例3の溶接ビード外観を示す図である。
【図13】2枚重ねの部分溶け込み溶接例を示す図であ
る。
【図14】3枚重ねの部分溶け込み溶接例を示す図であ
る。
【図15】4枚重ね以上の部分溶け込み溶接例を示す図
である。
【図16】所望の溶け込み深さを得るために必要な1パ
ルスエネルギーを示す図である。
【図17】矩形波を示す図である。
【図18】積分波形を示す図である。
【図19】CW重畳型の波形を示す図である。
【符号の説明】
1・・メッキ鋼板 2・・鋼板 3・・亜鉛メッキ 11・・パルスレーザ照射装置 11a・・パルスレーザ照射装置本体 11b・・レーザコントローラ 12・・YAGレーザ 13・・フラッシュランプ 14・・レーザ電源部 15・・冷却装置 16・・ロボットコントロール装置 17・・6軸多関節ロボット 21・・光ファイバー 22・・レーザ出射ユニット 22a・・集光レンズ 22c・・本体 22d・・レーザ出射口

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被覆した金属材料にパルスレーザを照射
    するパルスレーザ照射装置であって、 レーザ媒質と、 このレーザ媒質を外部から励起する励起源とを有するパ
    ルスレーザ発振器と、 パルスレーザ発振器を制御する発振制御部とを含み、 前記発振制御部は、前記パルスレーザ発振器で発振する
    パルスレーザの各周期におけるパルス波形の中に2つの
    矩形波を生成し、1段目の矩形波のピークパワー値P1
    (kW)及びそのパルス幅t1(msec)と、2段目
    の矩形波のピークパワー値P2(kW)及びそのパルス
    幅t2(msec)との関係を所定の範囲に制御するパ
    ルスレーザ照射装置。
  2. 【請求項2】 前記発振制御部における所定の範囲は、 0<t1/(t1+t2)<1 P1/P2>1 t1/(t1+t2)≦0.6・(P1/P2)−0.2 (但し、P1(kW)は1段目の矩形波のピークパワー
    値、P2(kW)は2段目の矩形波のピークパワー値、
    1(msec)は1段目の矩形波のパルス幅、t2(m
    sec)は2段目の矩形波のパルス幅)である請求項1
    記載のパルスレーザ照射装置。
  3. 【請求項3】 前記発振制御部における所定の範囲は、 0.3≦t1/(t1+t2)≦0.5 1.5≦P1/P2≦2.0 (但し、P1(kW)は1段目の矩形波のピークパワー
    値、P2(kW)は2段目の矩形波のピークパワー値、
    1(msec)は1段目の矩形波のパルス幅、t2(m
    sec)は2段目の矩形波のパルス幅)である請求項1
    記載のパルスレーザ照射装置。
  4. 【請求項4】 前記発振制御部は、前記パルスレーザ発
    振器に対して2つの矩形波間の時間間隔を、10mse
    c以下に制御する請求項1記載のパルスレーザ照射装
    置。
  5. 【請求項5】 前記発振制御部は、前記パルスレーザ発
    振器に対して2つの矩形波間の時間間隔を、2msec
    以下に制御する請求項1記載のパルスレーザ照射装置。
  6. 【請求項6】 前記発振制御部は、前記パルスレーザの
    パルスエネルギーが複数枚の重ね合わせのメッキ鋼板に
    対してN枚目までを溶接する時、(N−1)枚目のメッ
    キ鋼板を貫通してN枚目のメッキ鋼板を部分溶け込みさ
    せる強度となるように前記パルスレーザ発振器を制御す
    る請求項1記載のパルスレーザ照射装置。
  7. 【請求項7】 前記パルスレーザの中心軸と前記メッキ
    鋼板表面に対する垂線とのなす角度が0°から60°の
    範囲にある請求項1記載のパルスレーザ照射装置。
  8. 【請求項8】 前記パルスレーザの中心軸と前記メッキ
    鋼板表面に対する垂線とのなす角度が10°から40°
    の範囲にある請求項1記載のパルスレーザ照射装置。
  9. 【請求項9】 パルスレーザを照射するパルスレーザ照
    射方法であって、照射するパルスレーザの各周期におけ
    るパルス波形の中に2つの矩形波を生成し、1段目の矩
    形波のピークパワー値P1(kW)及びそのパルス幅t1
    (msec)と、2段目の矩形波のピークパワー値P2
    (kW)及びそのパルス幅t2(msec)との関係を
    以下の範囲すなわち、 0<t1/(t1+t2)<1 P1/P2>1 t1/(t1+t2)≦0.6・(P1/P2)−0.2 となるように制御するパルスレーザ照射方法。
  10. 【請求項10】 前記範囲は、 0.3≦t1/(t1+t2)≦0.5 1.5≦P1/P2≦2.0 (但し、P1(kW)は1段目の矩形波のピークパワー
    値、P2(kW)は2段目の矩形波のピークパワー値、
    1(msec)は1段目の矩形波のパルス幅、t2(m
    sec)は2段目の矩形波のパルス幅である)となるよ
    うに制御する請求項9記載のパルスレーザ照射方法。
  11. 【請求項11】 前記1段目の矩形波と2段目の矩形波
    との間の時間間隔t intが、 tint≦10msec となるように制御する請求項9記載のパルスレーザ照射
    方法。
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