JPH0670266B2 - 二次加工時の耐たて割れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

二次加工時の耐たて割れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼

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JPH0670266B2
JPH0670266B2 JP60168626A JP16862685A JPH0670266B2 JP H0670266 B2 JPH0670266 B2 JP H0670266B2 JP 60168626 A JP60168626 A JP 60168626A JP 16862685 A JP16862685 A JP 16862685A JP H0670266 B2 JPH0670266 B2 JP H0670266B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,プレス成形後の二次加工時の耐たて割れ性に
優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
特に本発明は,鋼板として,プレス成形によって厨房機
器や自動車用部品などの耐久消費材に加工される用途に
供されるプレス成形用素材を提供するもので,成形性並
びに二次加工時の耐たて割れ性に優れたフェライト系ス
テンレス鋼に関する。
〔従来の技術〕
ステンレス鋼は,SUS430に代表されるフェライト系ステ
ンレス鋼と,SUS304に代表されるオーステナイト系ステ
ンレス鋼に大別されるが,フェライト系ステンレス鋼は
オーステナイト系ステンレス鋼に比べて成形後に時期割
れ現象がなく応力腐食割れ感受性が小さいなどの特質を
有し,また高価なニッケルを含有せず廉価であることか
ら,耐久消費材を中心に多量に商用されている。
しかしその反面,フェライト系ステンレス鋼はオーステ
ナイト系ステンレス鋼に比べ,耐食性,溶接性,プレス
成形性などの材料特性が一般的に劣るので,或る面では
用途が限定されている。特に,ステンレス鋼はほとんど
の場合,プレス成形によって最終製品に加工されるの
で,プレス成形性(以後,単に成形性と呼ぶことがあ
る)は重要な材料特性の一つである。例えば,フェライ
ト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS430は,16.00〜1
8.00%のCr,0.12%以下のC,0.75%以下のSi,1.00%以下
のMn,0.040%以下のP,0.030%以下のSを含有する鋼で
あるが,成形性は必ずしも十分とは言えない。
そこで,フェライト系ステンレス鋼の成形性向上を目的
として数多くの研究開発がこれまでなされてきた。その
成果の一つに,炭素および窒素の低減と比較的多量のTi
やNbなどの炭窒化物形成元素の添加との組み合わせがあ
る。その例としては,例えば特公昭51−29694号公報,
特公昭51−35369号公報,特開昭51−14811号公報,特開
昭51−14812号公報,特開昭52−31919号公報および特開
昭58−61258号公報記載のものなどがある。
またJIS G 4305にはSUS430LXとして,16.00〜18.00%のC
r,0.03%以下のC,0.75%以下のSi,1.00%以下のMn,0.04
0%以下のP,0.30%以下のS,および0.10〜1.00%のTiま
たはNbを含有する鋼が規定されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
前述のように,炭素および窒素を低減し且つ比較的多量
のTiやNbなどの炭窒化物形成元素を添加したフェライト
系ステンレス鋼はその成形性の向上に伴って過酷なプレ
ス成形用途に供されるようになったが,新たに二次加工
時のたて割れ性の問題が生じてきた。ここで“二次加工
性”の問題とは,例えば「鉄と鋼」第69巻(1983年),A
269〜272や特開昭58−61258号公報に示されているよう
に,プレス成形において一次加工として厳しい深絞り成
形を施した後の二次加工時に,絞り方向に平行に脆性的
な割れ(亀裂),一般的には「たて割れ」と呼ばれる,
を生じるという問題である。より具体的には,一次絞り
(ファースト・ドロー)に引き続いて二次絞り(セカン
ド・ドローもしくはリストライク)を行った際や,プレ
ス後にフランジカットなどで衝撃が加わった際に,かよ
うなたて割れを生じることが多い。
このたて割れは,一次加工としての深絞り成形による靱
性の低下に起因する一種の加工脆化であり、一次加工度
が高いほど,また温度が低いほど生じやすい。例えば,
深型シンクや円筒状容器などのプレス加工においては,
特に冬期にたて割れが頻発する。これを回避するため
に,経験的な方策として,二次加工の前にたて割れが発
生し易い部位を局部的にバーナー加熱するなどの対策が
とられている。しかし,それでもたて割れを完全に防止
することはできず,ある程度の不良率(たて割れ発生
率)を見込んで生産を行っているのが実状である。ま
た,このようなバーナー加熱を行うと,表面の美麗さが
最重要視されるステンレス製品では,この加熱によって
変色した表面(テンパーカラー発生部)を除去しなけれ
ばならず,このための研磨工程が増えるなどの問題があ
り,このたて割れによる生産性および経済面でのデメリ
ットが非常に大きなものがある。
したがって,プレス成形における深絞り後の二次加工時
のたて割れの問題は従来のフェライト系ステンレス鋼に
おいて解決されねばならない重要な問題であった。本発
明はこの問題の解決を目的とし,二次加工時の耐たて割
れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供しようと
するものである。
ここで,“二次加工時の耐たて割れ性(以下の説明にお
いて,これを「二次加工性」と略称することがある)”
とは,前述のように,二次加工時におけるたて割れの難
易度または耐たて割れ性であり,換言すれば深絞り成形
後の靱性であって,成形前の素材の靱性や,素材の成形
性の指標である伸び,γ値,n値などとは単純には対応し
ない別種の材料特性である。
〔問題点を解決する手段〕
本発明によれば,成形性に優れ且つ二次加工時の耐たて
割れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼として, 重量%で, C:0.03%超え0.08%以下, Si:0.75%以下, Mn:0.40%以下, P:0.04%以下, S:0.01%以下, Cr:11.0〜18.0%, Ni:0.50%未満, N:0.04%以下, O:0.01%以下, sol.Al:0.03%以下で且つAl/Nが1.9以下,を含有し,さ
らに, Ti:0.03%〜0.50%で且つTi/(C+N)が5以下または Nb:0.03%〜0.80%で且つNb/(C+N)が15以下の一種
または二種を含有し, ただし,TiとNbを複合で含有する場合には Ti+Nb:0.03〜0.50%で且つ(Ti+Nb)/(C+N)が
5以下であり, 残部が鉄および不可避の不純物からなり,後述の試験法
に従ったときのたて割れ遷移温度T0.2がマイナス20℃以
下を示す耐たて割れ性に優れたフェライト系ステンレス
鋼を提供するものである。
以下に本発明鋼の内容を本発明者らの行った試験データ
に基づいて具体的に説明する。
本発明者らは,前記の定義に従う二次加工性に及ぼす成
分の影響を検討するために,Cについて0.005〜0.08%の
範囲,Siについて0.1〜0.5%の範囲,Mnについて0.1〜0.5
%の範囲,Pについて0.001〜0.03%の範囲,Sについて0.0
01〜0.01%の範囲,Crについて11〜18%の範囲,Niについ
て0.06〜0.23%の範囲,Nについて0.003〜0.04%の範囲,
Oについて0.002〜0.02%の範囲,sol.Alについてtr.〜0.
25%の範囲,Tiについてtr,〜1.0%の範囲,Nbについてt
r.〜1.0%の範囲で,それらの含有量を変化させた鋼,40
種を溶製し,熱間圧延,冷間圧延,焼鈍により0.9mmの
冷延焼鈍板を製造し,これらの二次加工性を調べた。
第1図は,二次加工性の指標となる「たて割れ遷移温度
T0.2」に及ぼす供試鋼のTi/(C+N),Nb/(C+N)
および(Ti+Nb)/(C+N)の影響を示したものであ
る。この第1図は本発明の基礎となる極めて興味深い重
要な事実を示しているが,その説明に先立ち,二次加工
性の指標として使用した「たて割れ遷移温度T0.2」につ
いて先ず説明する。
たて割れ遷移温度T0.2は第2図に示すような落重試験法
によって決定した。この落重試験は,供試冷延焼鈍板を
段絞りによって絞り比3.1,外形27mmの深絞りカップと
し,耳を落としてカップ高さを42mmとして試験カップ1
を,第2図のように,横置きにし,その上に重錘2を落
下させて,たて割れ発生の有無を調べるものである。そ
のさい,重錘2の落下高さを変えることにより衝撃エネ
ルギーを変化させると共に試験温度を変化させる。そし
て試験は,同一落下高さおよび同一温度で少なくとも5
個以上の同一供試材の試験カップについて行い,その条
件下でのたて割れ発生率を求めた。
この落重試験法の意義について説明すると,二次加工性
は前述のように深絞り後の靱性であり,より詳しくは材
料が深絞りにより縮みフランジ変形を受けた後の靱性で
ある。したがって、単に圧延や引張りによる変形を与え
た後の伸びや,曲げ試験,衝撃試験では二次加工性を評
価できない。この落重試験のように,一次加工として深
絞り成形で縮みフランジ変形を与え,二次加工としてこ
の絞り品に衝撃を与えることが,二次加工性を正当に評
価する必須の条件となり,この意味において,この落重
試験法は前記の定義に従う二次加工性の評価法として好
ましいものである。
第3図は,この落重試験から「たて割れ遷移温度T0.2
を決定する一例を示している。横軸に試験温度,縦軸に
衝撃エネルギー(kgf・m)をとって,これらの条件を
変えて試験したときの各条件でのたて割れ発生率を調べ
(このたて割れ発生率を第3図中における円の中に黒く
塗った部分の面積比で示す),たて割れ発生率が50%と
なるところの「たて割れ遷移曲線」を求める。この「た
て割れ遷移曲線」において,衝撃エネルギーが0.2kgf・
mとなる温度を「たて割れ遷移温度T0.2」とし,このよ
うにして求めた「たて割れ遷移温度T0.2」を二次加工性
の指標とする。この「たて割れ遷移温度T0.2」は実機プ
レスでのたて割れ発生率と良く対応し,このT0.2が−10
℃以下であれば,たて割れが発生することはマイナス20
℃以下では冒頭に述べた割れの問題が解決され二次加工
性は十分であると言える。
さて,第1図は,極めて興味深い結果を示している。す
なわち,Tiおよび/またはNbの添加量が(C+N)量に
対して比較的少ない場合には二次加工性に優れる(たて
割れ遷移温度T0.2が低い)のに対して,Tiおよび/また
はNbの添加量が(C+N)量に対して増加するとT0.2
増加する傾向にあり,二次加工性は劣下してくるのであ
る。これは従来のフェライト系ステンレス鋼の成形性を
高めるために採られたTi,Nbの添加による通常の加工性
改善のための一般的傾向とは逆のような傾向であると言
える。
また,Ti添加とNb添加を比較した場合にはNb添加鋼の場
合の方がT0.2がより低くなる傾向にあり,特に(C+
N)量に対する比で見た場合にはこの傾向が顕著であ
る。更にAlはT0.2を上昇させるように作用していること
もわかる。
このような結果が得られた理由については現時点では必
ずしも明らかではないが,一つの可能性として,鋼中の
固溶Cもしくは固溶Nの存在が良好な二次加工性を得る
うえで重要であると考えることができる。すなわち,Ti,
Nbは炭窒化物形成元素であり,これらは鋼中のCおよび
Nと結合してTiC,NbC,TiN,NbNなどを形成し,鋼中に固
溶するC,Nを減少させる。したがって,Ti,Nb量が(C+
N)量との比において或る程度以上となると二次加工性
が劣るようになるという第1図の関係は,この比が或る
程度以上となると固溶C,Nが零になるからである,と推
定することができる。
また,Nbの方がTiよりも二次加工性をより向上させる傾
向にある点については,(1)Tiの原子量47.2に対して
Nbの原子量は92.9であるから,同じ量のC,Nと炭窒化物
を形成するためにはTiに比べて重量%では約2倍のNbが
必要である,したがって,所要の固溶C,Nを存在させる
場合にはNbの方が少なくてよい,(2)Tiに比べるとNb
はC,Nとの結合力が若干弱く,より過剰にNbを添加しな
いとC,Nが完全に固定されない,したがって,Nbの方がTi
よりも固溶Cもしくは固溶Nが存在し易くなる,という
ような理由から,Nbの方がTiよりもより二次加工性向上
に寄与するのであろう。
しかし,二次加工性に影響を及ぼす要因としては,その
他にも,酸化物系や硫化物系の介在物の存在,Ti,Nbの炭
・窒化物の量,その大きさ,形態の差異,さらには過剰
のTi,Nbの悪影響なども考えられ,第1図の結果が得ら
れた理由の詳細を現時点では特定することはできない。
このようにその理由の詳細は必ずしも明確ではないが,
いずれにしても,第1図の結果は,実用上問題のない良
好な二次加工性,すなわち「たて割れ遷移温度T0.2」が
マイナス20℃以下,を得るには, Ti添加については,Ti/(C+N)で5以下, Nb添加については,Nb/(C+N)で15以下, Ti+Nb添加については,(Ti+Nb)/(C+N)で5以下
とする必要があることがわかる。
本発明者らが見出したこのような二次加工性に及ぼすT
i,Nb量と(C+N)量との関係,つまり二次加工性を向
上させるには,C,Nを低減することが重要なのではなく,
またこのC,Nを固定するに十分多量のTi,Nbを添加するこ
とが重要なのでもなく,逆に,Ti/(C+N),Nb/(C+
N)を多くしてはならないと言う知見は,従来よりフェ
ライト系ステンレス鋼の成形性(深絞り性)を改善する
ために採られてきたC,Nを低減し且つこのC,Nを固定する
に十分なTi,Nbを添加するという処方とは一見逆行する
ようであるが,C,N量を低減せずとも素材の成形性を十分
に保持したままで且つ二次加工性を向上させ得る点で,
工業的には非常に有益な知見であると思われる。
このC,NとTi,Nbの関係を規制する点に本発明鋼の基本的
な特徴があるが,それ以外についても本発明鋼は各種の
理由により各成分の含有量を制限している。以下に,本
発明鋼の各成分の含有量を限定した理由を個別に概説す
る。
Cは,Nと共にTi,Nb添加量の比において二次加工性に対
して重要な作用を示す成分である。後記の実施例中の比
較鋼No.10や11のように,C量を0.03%以下としてこのC
量に対して十分のTi,Nbを添加すれば値が向上して成
形性がよくなるのであるが,実施例鋼No.1〜7のよう
に,本発明ではCを0.03%を越える量で添加しても高い
値を得ることがで且つ良好な二次加工性が得られる。
このC量を0.03以下とすることは,製鋼段階での脱炭に
長時間を要してコスト上昇を招くことになり,また,リ
ジング性が劣下することにもなる。一方,C量が0.08%を
越えると硬質となり延性の低下を招くなど,成形性が劣
下するので,C含有量は本発明において0.03%超え0.08%
以下とする。
Siは,あまりその含有量が高いと材料が硬化し,成形性
に悪影響を与えるようになるので0.75%以下とする。
Mnは,熱間加工性や溶接部の靱性を改善する元素である
が,0.40%を越えて含有させてもそれらの効果が飽和す
るとともに,MnSの生成による二次加工性の劣下を招くよ
うになるので,0.40%以下とする。
Pは二次加工性に悪影響を与えるために低い方が好まし
いので0.04%以下とする。
Sは二次加工性に対して有害な元素であると共に,耐食
性および熱間加工性に悪影響を与えるために低い方が好
ましく,このために0.01%以下とする。
Crの下限11.0%は,フェライト系ステンレス鋼としての
十分な耐食性を確保するうえでの必要最低量である。一
方,18.0%を越えると,本発明鋼のようにC量が0.03%
を越える鋼では,素材の靱性や成形性の低下が著しくな
る。このためにCrは11.0%〜18.0%とする。
Niは,あまり高いと材質が硬化し,成形性が低下すると
共に,コスト上昇を招くので0.50%未満とする。
Nは,Cと共に,Ti,Nb量との比において二次加工性に影響
を与えるが,0.04%を越えると成形性に悪影響を与える
ので0.04%以下とする Oは,あまり高いと鋼中の酸化物系介在物が増加し,成
形性および二次加工性を劣下させるので0.01%以下とす
る。
sol.Alの規制は本発明の重要な点である。アルミニウム
は,鋼中のNをAlNとして固定する窒化物形成元素であ
り,第1図からも明らかなように,二次加工性に対して
は有害に作用するので出来るだけ低い方が望ましい。し
かし,一方において,Alは製鋼時の脱酸剤として使用さ
れ,O量を低減すると共に,本発明鋼のようにTi,Nbを含
有する鋼ではTi,Nbの歩留りの安定化に有効な元素であ
り,微量の残存は免れ得ない。このような理由により,s
ol.Alとして0.03%以下とし,また鋼中のNが完全に固
定されないような量すなわちAlとNの原子量比(27.0/1
4.0=1.9)以下とし,sol.Alで0.03%もしくはAl/Nで1.9
のいずれか低い方を上限とする。
Ti,Nbの規制は二次加工性の問題から本発明鋼の最も重
要な点である。先に説明した第1図の結果から,また後
記の第2表の結果から実証されるように,これらの元素
を単独添加の場合には,(C+N)との関連において,T
i/(C+N)で5以下,Nb/(C+N)で15以下とする必要
がある。しかし,Ti,Nbの絶対量を過剰に添加することは
鋼の表面性状の劣下やコスト上昇を招くので,Tiについ
ては0.50%,Nbについては0.80%を上限とする。Ti,Nb複
合添加の場合には,Ti単独添加の場合に準じて(Ti+Nb)
/(C+N)で5以下でTi+Nbが0.50%以下とする。
しかし,Ti,Nbの添加量があまり低いと成形性が劣るよう
になるので,単独添加の場合には,Ti,Nbをそれぞれ0.03
%以上,複合添加の場合にも,Ti+Nbで0.03%以上とす
る。
〔実施例〕
第1表に示した化学成分の鋼を溶製し,熱間圧延により
3.6mm厚さの熱延板とした。熱延板焼鈍の後,中間焼鈍
を挟んだ2回冷延(3.6mm→2.0mm→0.9mm)および仕上
焼鈍により,0.9mm厚さの冷延焼鈍板を製造した。
各冷延焼鈍板の機械的性質,成形性特に深絞り性の指標
である値,そして本文に説明した二次加工性の指標で
ある「たて割れ遷移温度T0.2」を求めた。それらの結果
を第2表に示した。
第2表の結果から明らかなように,本発明で規定する化
学成分範囲の鋼はいずれも「たて割れ遷移温度T0.2」が
−20℃以下と低く,優れた二次加工性を有している。ま
た値が高く成形性も良好である。
これに対し,Ti,Nbを添加しないNo.8およびNo.9のSUS430
は値が低く成形性が劣っている。また二次加工性につ
いては、No.8のSUS430はやや良好であるが本発明鋼には
及ばず,No.9のSUS430ではMnおよびsol.Al量が多く,No.8
よりも更に二次加工性に劣っている。
C量が低く且つ(C+N)に対して十分な量のTi,Nbが
添加されたNo.10およびNo.11のSUS430LXは,値が高く
て成形性は良好である。しかし,T0.2値が+13℃,−2
℃といずれも高く,二次加工性が良くないので本文に述
べたように実用上問題がある。
No.12の比較鋼は,C量が本発明範囲であり且つTiを添加
した鋼であるが,Ti/(C+N)が8.5と高く,このために
二次加工性が非常に劣っている。
No.13の比較鋼は,C量が本発明範囲であり且つNbを添加
した鋼であるが,Nb/(C+N)が17.1と高く且つMnおよ
びsol.Alが多いので,二次加工性が劣っている。
なお,上記実施例では熱延板焼鈍−2回冷延・2回焼鈍
法により冷延焼鈍板を製造した例を挙げたが,熱延板焼
鈍の有無にかかわらず,また中間焼鈍を行わない1回冷
延,1回焼鈍法によって製造しても,同様に二次加工性に
優れた鋼を得ることができる。
以上,詳述したように,本発明によれば二次加工性に優
れ且つ成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得ら
れる。したがって,従来の成形性には優れるが二次加工
性が劣るためにやむなくオーステナイト系ステンレス鋼
が適用されていた用途に対してもフェライト系ステンレ
ス鋼の適用が可能となり,多大の貢献ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は,フェライト系ステンレス鋼について,二次加
工性の指標である「たて割れ遷移温度T0.2」とTi/(C+
N),Nb/(C+N),(Ti+Nb)/(C+N)との関係を
示す図, 第2図は,二次加工性の評価試験として行った落重試験
の試験カップと重錘の関係を示す図, 第3図は,落重試験によって「たて割れ遷移温度T0.2
を決定するために,たて割れ遷移曲線を求めるための試
験温度と衝撃エネルギー値との関係図である。 1……試験カップ,2……重錘。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮楠 克久 山口県新南陽市大字富田4976番地 日新製 鋼株式会社周南研究所内 (72)発明者 清水 勇 山口県新南陽市大字富田4976番地 日新製 鋼株式会社周南研究所内 (72)発明者 山崎 浩一 山口県新南陽市大字富田4976番地 日新製 鋼株式会社周南研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−226150(JP,A) 特開 昭51−98616(JP,A) 特公 昭47−13730(JP,B2)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で, C:0.03%超え0.08%以下, Si:0.75%以下, Mn:0.40%以下, P:0.04%以下, S:0.01%以下, Cr:11.0〜18.0%, Ni:0.50%未満, N:0.04%以下, O:0.01%以下, sol.Al:0.03%以下で且つAl/Nが1.9以下,を含有し,さ
    らに, Ti:0.03%〜0.50%で且つTi/(C+N)が5以下または Nb:0.03%〜0.80%で且つNb/(C+N)が15以下の一種
    または二種を含有し, ただし,TiとNbを複合で含有する場合には Ti+Nb:0.03〜0.50%で且つ(Ti+Nb)/(C+N)が
    5以下であり, 残部が鉄および不可避の不純物からなり,本文および図
    面に記載の試験法に従ったときのたて割れ遷移温度T0.2
    がマイナス20℃以下である二次加工時の耐たて割れ性に
    優れたフェライト系ステンレス鋼。
JP60168626A 1985-08-01 1985-08-01 二次加工時の耐たて割れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼 Expired - Lifetime JPH0670266B2 (ja)

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