JPH0670249B2 - 靭性に優れた調質型高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

靭性に優れた調質型高張力鋼板の製造方法

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JPH0670249B2 JP63287084A JP28708488A JPH0670249B2 JP H0670249 B2 JPH0670249 B2 JP H0670249B2 JP 63287084 A JP63287084 A JP 63287084A JP 28708488 A JP28708488 A JP 28708488A JP H0670249 B2 JPH0670249 B2 JP H0670249B2
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【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> この発明は、降伏強度:90kgf/mm2,引張強度:97kgf/mm2
以上並びに衝撃遷移温度:−60℃以下の性能を有する高
張力鋼板の製造方法に係り、特に、上記性能を有する板
厚:40mm以上の厚肉高張力鋼板を安定して量産するのに
好適な調質型高張力鋼板の製造方法に関するものであ
る。
<従来技術とその課題> 近年、溶接構造物の大型化傾向は益々著しくなってお
り、これらに使用される構造用鋼板はより一層のハイテ
ン化並びに厚肉化の一途をたどっている。例えば、揚水
発電所の水圧鉄管に180mm厚の80kgf/mm2級高張力鋼板が
使用されたりジャキアップリグ型石油掘削リグのラック
材に100〜150mmの厚さの80kgf/mm2級高張力鋼板が使用
されたりするに至っている。
しかしながら、現在のところ一般的に使用されている高
張力鋼板は60kgf/mm2級材及び80kgf/mm2級材に留まって
おり、大型化が著しい近年の溶接構造物に対してより強
度の高い高張力鋼板の適用が望まれているにも係わらず
未だ100kgf/mm2級材の使用に至っていない。これは、厚
肉鋼板において a)降伏強度:90kgf/mm2以上,引張強度:97kgf/mm2以上
と言う100kgf/mm2級材の要求強度を工業的に安定して確
保することが困難である, b)例えこのような高強度を付与し得たとしても、同時
に十分な低温靭性をも確保することはより一層困難であ
る。
c)更に、該鋼板に溶接施工上問題とならないだけの良
好な溶接性を付与することも極めて困難である, 等の問題点が克服できなかったことによるものである。
つまり、40mm厚を超える板厚の100kgf/mm2級高張力鋼板
を製造するに当っては、板厚中心部に強度確保を図るた
めに焼入れ性の高い成分設計を行う必要があるが、厚肉
材のため焼入れに際しての表層部と中心部との冷却速度
に大きな差が生じ、中心部の強度を確保しようとすると
表層部の強度が高くなり過ぎて低温靭性が中心部より著
しく劣化する結果となる。更に、上記方針の下で設計さ
れた成分系の鋼では炭素当量〔Ceq〕が高くなってしま
うので溶接性にも問題が生じてしまう。そのため、40mm
厚を超える肉厚の100kgf/mm2級高強度高靭性厚肉鋼板を
溶接性の問題なしに安定製造し得る手段を見出すこと
が、この分野における最大の課題の一つとなっていた。
<課題を解決するための手段> そこで、本発明者等は上述のような観点から、降伏強
度:90kgf/mm2,引張強度:97kgf/mm2以上及び衝撃遷移温
度:−60℃以下の性能を有し、特に板厚が40mmを超える
場合にも前記性能を安定して付与することができる厚肉
高張力鋼板の製造手段を提供すべく鋭意研究を重ねた結
果、次に示す如き知見を得るに至った。即ち、 (a)所望の溶接性を確保した上でコスト的にも実用的
な100kgf/mm2級の高張力鋼を得るには強化元素の多量添
加手段等は不適当であり、溶接割れ感受性指数〔PCM
を0.31以下に抑えた成分系の素材鋼を用い、焼入れによ
り鋼材組織をマルテンサイト組織化することが欠かせな
いこと, (b)しかし、厚肉鋼板を焼入れする場合には板厚中心
部と表面部とで冷却速度にどうしても差が生じてしまう
ため、中心部での十分な強度確保を図ると表面部では焼
きが入りすぎて低温靭性の劣化を招くが、この際、焼入
れ時のγ粒径を極力小さくすることによって細粒のマル
テンサイト組織が得られるような手立てを講じると、焼
きが過度になりがちな鋼材表面部においても十分に満足
できる低温靭性が維持され、厚肉高張力鋼板に必要な
“板厚方向全体に亘っての良好な強度−靭性バランス”
が確保されること, (c)そして、焼入れ時に所望の細粒γ粒を実現するた
めには、Nb添加によって鋼材加熱時におけるγ粒の成長
を抑制すると同時に、事前に一旦焼入れ処理を施して加
熱前組織(γ化前の組織)の微細化を図っておくのが極
めて有効であり、このNb添加と二回焼入れによる相乗効
果を活用すれば、細粒のγ粒を経て極めて微細なマルテ
ンサイト組織の確保が安定して可能となること, (d)ただ、この場合、第一回目焼入れは熱間圧延に引
き続いてそのまま実施する直接焼入れによることが工業
的に有利であること, (e)また、第二回目焼入れ前のγ粒を微細に保つには
第二回目焼入れを比較的低温のγ域から行うのが良い
上、溶接性の観点から鋼のPCMを0.31以下に抑える必要
があるため、焼入れの効果が不十分となって100kgf/mm2
級の強度が確保できなくなる懸念もあるが、この問題は
焼入れ性向上元素であるBの添加により極めて効果的に
解消されること。
本発明は、「100kgf/mm2級の厚肉高張力鋼板にて優れた
低温靭性を実現するためには細粒なオーステナイト
(γ)粒から変態したマルテンサイト組織を得ることが
重要であり、また溶接性の低下を伴うことなく高強度を
得るための焼入れ性向上を図るにはBが有する焼入れ性
改善効果の活用が欠かせない」との認識を強めた上記知
見等に基づく更なる研究によって完成されたものであ
り、 「C:0.08〜020%(以降、成分割合を表わす%は重量%
とする), Si:0.30%以下、 Mn:0.40〜1.20%, Cu:0.5%以下, Ni:0.40〜3.50%, Cr:0.10〜1.20%, Mo:0.05〜0.8%, V:0.005〜0.1%, Nb:0.005〜0.03%, sol.Al:0.01〜0.10%, B:0.0003〜0.0030%, P:0.01%以下、 S:0.005%以下, N:0.004%以下 で残部が実質的にFeから成り、かつ式 PCM=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+Cu(%)/20+
Ni(%)/60+Cr(%)/20+Mo(%)/15+V(%)/10+5
×B(%) にて表わされるPCMが0.31%以下である鋼を、第1図で
示すように1000℃以上に加熱して熱間圧延し、900℃以
上の温度域において30%以上の累積圧下を与えると共に
800℃以上の温度域から所定板厚に仕上圧延した後、そ
のまま板厚中心部の冷却速度:3℃/sec以上で600℃以下
にまで冷却し、次いでAc3点〜950℃の温度域に再加熱し
て水焼入れを行い、引き続いてAc1点以下の温度で焼戻
しすることにより、板厚が40mm厚を超えるものであって
も降伏強度:90kgf/mm2以上,引張強度:97kgf/mm2並びに
衝撃遷移温度:−60℃以下の性能を安定して示す上、良
好な溶接性をも有する高張力鋼板を工業的規模で量産し
得るようにした点」に特徴を有している。
次に、本発明において高張力鋼板の製造条件を前記の如
くに限定した理由を、その裏付けとなった作用と共に説
明する。
<作用> A)素材綱の成分組成 a)C Cは鋼板の強度を確保する上で必要な元素であるが、そ
の含有量が0.08%未満では100kgf/mm2級高張力鋼として
の必要強度を確保することができず、一方、0.20%を超
えて含有させると溶接低温割れを生じるようになること
から、C含有量は0.08〜0.20%と定めた。
b)Si 通常、Siは鋼の脱酸と強度確保のために添加される元素
であるが、脱酸の効果は含有量が0.30%を超えると飽和
傾向を示す。一方、強度については含有量が0.30%を超
えても上昇するが、このような多量の添加は比較的冷却
速度の速い溶接継手部において島状マルテンサイトを生
成させ、溶接継手部靭性を低下させる。このため、Si含
有量は0.30%以下と定めた。
c)Mn Mn成分には鋼の脱酸剤としての作用のほか、焼入性を確
保する作用があるが、その含有量が0.40%未満では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、1.20%を超え
て含有させると溶接性及び母材靭性の劣化を招くことか
ら、Mn含有量を0.40〜1.20%と定めた。
d)Cu Cuは靭性を損なうことなく強度を高めるのに有効な元素
であり、微量の添加によっても該効果が確認できるが、
0.5%を超えて添加してもコストアップに見合うだけの
強度上昇効果が得られないばかりか、高温延性に悪影響
を及ぼし、連鋳スラブの表面割れを生じて鋼材の歩留を
低下させるようになることから、Cu含有量は0.5%以下
と定めた。
e)Ni Ni成分には鋼の焼入れ性確保と低温靭性の改善作用があ
るが、その含有量が0.40%未満では40mm厚以上の100kgf
/mm2級高張力鋼板に必要強度を確保することができず、
一方、3.50%を超えて添加してもコストアップに見合う
だけの強度上昇と靭性改善の効果が得られないため、Ni
含有量は0.40〜3.50%と定めた。
f)Cr Cr成分には鋼の焼入性と強度を確保する作用があるが、
その含有量が0.10%未満では前記作用による所望の効果
が得られず、一方、1.20%を超えて含有させると溶接性
に悪影響を及ぼすようになることから、Cr含有量は0.10
〜1.20%と定めた。
g)Mo Moは鋼の焼入性を増加させると共に、焼戻し軟化抵抗を
高めて所望強度を確保する上で有効な元素であるが、そ
の含有量が0.05%未満では十分な前記効果が得られず、
一方、0.8%を超えて含有させても強度上昇の効果が飽
和傾向を示すだけでなく溶接性を著しく劣化させること
から、Mo含有量は0.05〜0.8%と定めた。
h)V Vは鋼に強度を確保のために添加される元素であるが、
その含有量が0.005%未満では所望強度の確保が困難で
あり、一方、0.1%を超えて含有させると母材靭性及び
溶接性を著しく劣化させることから、V含有量は0.005
〜0.1%と定めた。
i)Nb Nb成分には、微細析出物としてオーステナイト(γ)領
域に存在することにより、そのピン止め効果によってオ
ーステナイト粒の成長を抑制しオーステナイト粒を細粒
化する作用があるが、Nb含有量が0.005%未満では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、0.03%を超え
て含有させると溶接性を著しく損なうようになることか
ら、Nb含有量は0.005〜0.03%と定めた。
j)sol.Al Al成分には鋼の脱酸作用と共にオーステナイト粒を微細
化して靭性を向上させる作用があるが、その含有量が0.
01%未満では前記作用による所望の効果が得られず、一
方、0.10%を超えて含有させると逆のアルミナ等の脱酸
生成物増加により靭性が損なわれるようになることか
ら、sol.Al含有量を0.01〜0.10%と定めた。
k)B Bは微量添加で大幅に鋼の焼入性を向上させる元素であ
り、鋼の強度・靭性を向上させるのに非常に有効な成分
であるが、その含有量が0.0003%未満では鋼に所望の強
度・靭性を確保することができず、一方、0.003%を超
えて含有させてもその効果が飽和することから、Bは含
有量は0.0003〜0.003%と定めた。
1)P Pは鋼の焼戻し脆性を促進して靭性を劣化させる不純物
元素である。特に高強度鋼ではその影響を受けやすい。
ただ、P含有量を0.01%以下に抑えてことによって前記
悪影響が容認し得る程度に抑制されることから、P含有
量は0.01%以下と限定した。
m)S Sは、通常、鋼中においてMnSの形態で存在し、圧延に
より展伸されて靭性の異方性を生じる不純物元素であ
る。そして、高強度鋼においては特に展伸した介在物が
著しい靭性劣化の原因となるが、S含有量を0.005%以
下に抑えることによって該悪影響を容認し得る程度に抑
制されることから、S含有量は0.005%以下と限定し
た。
n)N Nを0.004%以下にすることは、鋼の焼入性を高め母材
の強度と靭性向上に極めて有効な手段である。即ち、N
含有量を0.004%以下にすると共にsol.Al含有量を0.01
〜0.10%に調整することによって固溶B量を0.0003%以
上とすることができ、焼入性の著しい向上が達成され
る。また、N量を0.004%以下に低減するとAlNの粗大化
が抑制されて靭性も向上する。更に、低N化によってVN
の生成が抑制されるので通常のオーステナイト化温度で
Vが均一固溶するようになり、従ってVの添加量を削減
できる効果も確保できる。このようなことから、N含有
量は0.004%以下と限定した。
o)溶接割れ感受性指数〔PCM〕 PCM=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+Cu(%)/20 +Ni(%)/60+Cr(%)/20+Mo(%)/15 +V(%)/10+5×B(%) に表わされるPCMが0.31%を超えた場合には溶接性が著
しく劣化し、実用上問題となることから、上記PCMを0.3
1%以下と定めた。B)圧延・熱処理条件 a)圧延加熱温度 圧延に際してはV炭窒化物やBN等の固溶を図るために高
温加熱することが望まれるが、該加熱温度が1000℃未満
では上記析出物の十分な固溶がなされないことから、圧
延加熱温度は1000℃以上と定めた。
b)圧延圧下量 良好な溶接性を有する40mm厚以上の厚肉高靱性高張力鋼
板をも安定して製造できるようにするのが本発明の狙い
であるが、肉厚鋼板の場合には所定厚までの加工では鍛
練比不足となって十分な細粒化を図れないことがある。
そして、本発明においては細粒のマルテンサイト組織を
得ることが重要なポイントであるため、先にも述べたよ
うにその前組織をできるだけ均一微細にしておく必要が
ある。このためには900℃以上の温度域で30%以上の圧
下を加える必要があり、従って直接焼入れを適用する場
合はγ粒の再結晶を促進すべく900℃以上の温度域で30
%以上の累積圧下を与えることと定めた。
c)圧延仕上温度及び急冷条件 本発明は、特定成分組成鋼を800℃以上の温度域で所定
の板厚に仕上圧延し、圧延後600℃以下の温度にまで急
冷(例えば水冷)することを特徴としているが、これ
は、引き続く再加熱焼入れの際に該再加熱の前の組織が
マルテンサイト或いはベイナイトと言う焼入れ組織にな
っていると再加熱時におけるα→γ逆変態でのγの核生
成サイトの数がフェライト+パーライト組織の場合に比
較して多く生じるので、γ化後の粒成長時にそれらが互
いに衝突して成長が阻害され、結局得られる粒径が小さ
くなるとの事実に基づいた条件である。つまり、最終組
織を細粒のマルテンサイト組織とするのに必要な「再加
熱時のγ粒を細粒化する」との条件を達成するために
は、再加熱前の状態ではフェライトの生成を抑制してお
くことが重要である。そこで、圧延中にフェライトの生
成を起こさせないためγ域である800℃以上の温度で圧
延を仕上げる必要があり、圧延後の冷却中におけるフェ
ライトの生成を抑制してマルテンサイト或いはベイナイ
ト組織にするためには圧延終了後そのまま600℃以下の
温度にまで急冷(水冷等)することを要する。この場
合、仕上圧延温度が800℃未満であったり、圧延後の冷
却速度が板厚中心部で3℃/secよりも遅かったり、或い
は急冷停止温度が600℃よりも高かったりすると所望の
マルテンサイト又はベイナイト組織が得られず、続く再
加熱において生成するγ粒が微細とはならない。
d)再加熱焼入れ条件 再加熱焼入れは、細粒γからの焼入れで細粒のマルテン
サイト変態組織を得ることを狙いとしてしている。通
常、焼入れはγ域に加熱して水焼入れ或いは油焼入れを
するが、そのためにはAc3点以上の温度に加熱する必要
があり、また1000℃を超える温度に加熱するとγ粒が粗
大化して焼入れ後に得られるマルテンサイト組織が粗く
なり、低温靭性を損なうことになる。従って、再加熱時
の温度をAc3点〜1000℃と定めた。
e)焼戻し温度 焼戻し処理は、焼入れによって導入された歪を除去し、
かつ炭化物を微細に析出させることにより強度−靭性バ
ランスを改善するために実施される。そして、この焼戻
しは一般にAc1点以下の温度域で行われるのが常であ
り、この温度を上回った場合には前記バランスに支障を
来たすようになることから、本発明においても焼戻し温
度をAc1点以下の温度と定めた。
続いて、本発明を実施例によって更に具体的に説明す
る。
<実施例> まず、常法に従って第1表に示される成分組成のスラブ
を得た後、これらを第2表に示す条件で処理して厚肉鋼
板を製造した。
次に、得られた各鋼板から試験片を切り出して機械的性
質の測定及び溶接性の評価を行い、その結果を第2表に
併せて示した。
なお、溶接性の評価はy開先拘束割れ試験によって行っ
たが、y開先拘束割れ試験は、各鋼板より採取した斜め
y開先拘束割れ試験片を125℃に予熱後、入熱量:17KJ/c
mで手溶接し(電流:170A,電圧:25V,速度:15cm/min)、
この際の表面割れ、ルート割れ及び断面割れの有無を調
べる条件の下で実施した。
第2表に示される結果からも明らかなように、本発明で
規定する条件通りに製造された厚肉鋼板の溶接割れが認
められず、かつ所望の強度(降伏強度:90kgf/mm2以上,
引張強度:97kgf/mm2以上)及び靭性(衝撃遷移温度:−
60℃以下)を満足しており、母材性能及び溶接性が共に
良好な結果を示していることが分かる。
これに対して、同様成分組成鋼を用いたとしても処理方
法が本発明の規定から外れると目標性能が達成できなく
なる。
例えば、試験番号5のように圧延後の冷却を空冷(板厚
中心部の冷却速度が3℃/minを超える)にすると、再加
熱焼入れの前組織が焼入れ組織でないため再加熱時のγ
粒の細粒化が図れず、再加熱焼入れによっても細粒のマ
ルテンサイト組織が得られないので強度を満足しても所
望靭性が確保できない。また、試験番号6では圧延後の
冷却が空冷(板厚中心部の冷却速度が3℃/minを超え
る)である上、冷却が825℃から行われたため焼入れ不
足となり、所望強度そのものが得られない。更に、試験
番号7では圧延後水冷されて所定の冷却速度の急冷がな
されているが、再加熱焼入れ後の焼戻し温度が780℃とA
c1点よりも高いので十分な強度も確保されていない。そ
して、試験番号8では、900℃以上の圧下量が25%と低
いために圧延によるγ粒の細粒化が図れなかったことに
加え、圧延仕上温度が725℃とAr3点よりも低かったため
に圧延途中にフェライトが生じてしまって圧延後直ちに
水冷を実施したにも係わらず所望の焼入れ組織を得られ
ず、従って再加熱焼入れ時にγ粒の細粒化が図れないで
細粒のマルテンサイト組織が得られなかったため、強度
は満足できても所望靭性が確保できていない。
一方、試験番号9〜12は素材鋼の成分組成が本発明で規
定する範囲を外れている場合の例であるが、これらの結
果からも分かるように、素材鋼の成分組成が本発明で規
定する範囲を外れると所望靭性を満足できないばかり
か、所望強度の達成を主眼とした成分設計をしてPCM
を制限しなかったために溶接性の点でも満足できないこ
とが分かる。
<効果の総括> 以上に説明した如く、この発明に係る高張力鋼板の製造
方法によれば、降伏強度:90kgf/mm2以上,引張強度:97k
gf/mm2以上並びに衝撃遷移温度:−60℃以下の優れた性
能を有し、かつ良好な溶接性を示す厚肉(例えば板厚:4
0mm以上)高張力鋼板をも安定して製造することが可能
となるなど、産業上極めて有用な効果をもたらされる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る高張力鋼板製造条件の説明図で
ある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合にて C:0.08〜0.20%, Si:0.30%以下, Mn:0.40〜1.20%, Cu:0.5%以下, Ni:0.40〜3.50%, Cr:0.10〜1.20%, Mo:0.05〜0.8%, V:0.005〜0.1%, Nb:0.005〜0.03%, so1.Al:0.01〜0.10%, B:0.0003〜0.0030%, P:0.01%以下, S:0.005%以下, N:0.004%以下 で残部が実質的にFeから成り、かつ式 PCM=C(%)+Si(%)/30+Mn(%)/20+Cu(%)/20 +Ni(%)/60+Cr(%)/20+Mo(%)/15 +V(%)/10+5×B(%) にて表わされるPCMが0.31%以下である鋼を、1000℃以
    上に加熱して熱間圧延し、900℃以上の温度域において3
    0%以上の累積圧下を与えると共に800℃以上の温度域か
    ら所定板厚に仕上圧延した後、そのまま板厚中心部の冷
    却速度:3℃/sec以上で600℃以下にまで冷却し、次いでA
    c3点〜950℃の温度域に再加熱して水焼入れを行い、引
    き続いてAc1点以下の温度で焼戻しすることを特徴とす
    る、靭性に優れた調質型高張力鋼板の製造方法。
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