JPH0646044B2 - 非対称形状のねじ山成形用ねじと、その製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は塑性変形によつてワークピースにねじ山を成形
するねじ山成形用ねじに関する。このねじは種々なワー
クピースの材料に適用性を有しているが、特に軟質金属
と硬質樹脂における使用に適合する。多くのねじは、締
付トルクを設定可能なクラッチ付のドライバで締め付け
るため、ねじ山成形用ねじは比較的低い駆動トルクで大
きい切削トルクを有することが望ましい。ねじの使用範
囲は最大駆動トルクと最小の切削トルクとの差として設
定される。このトルク範囲を大きくすると締付不能なね
じを少なくすると共に小さい切削トルクで選択的にクラ
ッチ付きドライバの締付トルクを設定することができ
る。ねじ業界では上記のトルク範囲を大きく設定した場
合、できるだけ小さい駆動トルクで切れ味のよいねじ山
成形用ねじを製作するという試みがなされた。

ねじ山成形用ねじの例は米国特許第3,180,126号、同第
3,195,156号に示される様な三角形のおむすび形ねじを
含む。その他の例は僅かに変形された断面形状の対称的
なチツプを有するブランクから作られるねじに関する米
国特許第3,218,905号、同第3,878,759号に示される。

本発明の目的は塑性変形によつて素材にねじを切るため
のねじ山成形用ねじを提供することである。

他の目的は容易に製造可能なねじ山成形用ねじを提供す
ることである。

更に他の目的は締付トルク範囲の大きいねじ山成形用ね
じを提供することである。

別の目的は上述の特徴を有するねじを製造する方法を提
供することである。

ねじ切りする素材のねじ孔全長に亙って材料を削り取ら
ずに塑性変形によってねじを切る特別の形状のチップを
形成するためにチップの断面は非対称になっている。本
発明によるねじのチツプを成形することによりねじとワ
ークとの間の摩擦接触は低減され、ねじのねじ山の先導
端縁とワークとの間の干渉は最小限になり、チツプの部
分はねじの保持力に寄与する。

第１、第２、第３図は本発明による頭付け、鍛造、転造
の製造段階の製品を夫々示す。第１図は頭11と勾配付き
チツプ12を有する頭付きブランク10を示す。このブラン
ク10は断面形状が円形の円筒形シヤンク14を備えてい
る。チツプ12は上下２つの勾配部分15、16を有する。上
側勾配部分15は下側勾配部分16よりも幾分小さい円錐角
を有する。これはチツプが第２図に示す形状に鍛造され
るとき、上下勾配部分15のテーパはなくなって第２図の
符号17で示す外側部分となりシャンク14にほゞ平行にな
るように形成される。側部の勾配付外側面18の部分はそ
のまま残す。第２図のブランクを作る鍛造作業は鍛造さ
れたチツプ12の側部の勾配付き外側面18を残す。しか
し、鍛造作業の基本的な目的は転造の際にねじ山成形可
能な形状を有するチツプ12を形成することである。第３
図は最終の転造されたねじ20を示す。

第４、第５、第６図はチツプ12の形状を示す。第４図の
立面図はチツプ12の減少した横寸法を示す。外側面17、
18は内側面21、22、23に滑らかに一致するように形成さ
れる。内側面の形状は断面図の第５、第６図に明瞭に示
される。長い内側面23は２つのほゞ平坦面25、26から成
り、平坦面26は平坦面25よりも横方向の寸法がかなり小
さい。平坦面25、26は曲面27で結合され、平坦面26およ
び外側面17は曲面（リード面）24で結合される。これと
同様に、下方の内側面22は外側面17の直径よりもかなり
小さい寸法から完全な直径へ漸進的に遷移するリード面
28を有する。しかし、下方の内側面22は長い内側面（2
3）とは異なり、ほゞ非平坦でＳ形である。上方の内側
面21はほゞ半楕円形で、この領域ではブランク材と寸法
的に大きな変化はない。尚、勾配のある小さい遷移面3
1、32、33、18のみが軸心と角度をなしている。チツプ1
2の大部分の表面領域、即ち面17、21、22、23はねじの
軸心および相互に対してほゞ平行である。

尚、この明細書で「先導端縁」と、「リード面」とはね
じがねじ込まれる際にワークの孔壁に最初のねじ山を成
形するねじの部分と、ブランク材におけるリード面に相
当する部分を意味する。また、図中の種々な符号がない
矢印はねじ切りするときの回転方向を示す。

第７図〜第１１図は最終的に成形された本発明のねじを
種々な角度から見た図である。チツプ12は内側面22、23
および頂部の欠如したねじ山38の部分ならびに勾配付外
側面18にはねじが形成されない。

転造ねじのチツプ12は外側面17に形成されるかなり鋭い
頂のねじ山37を有する。

第１０、第１１図はねじ山転造後に存在するリード面2
4、29を示す。リード面24、29の断面が真円に滑らかに
移行する形状になっているのでねじ切りするときの駆動
トルクを最小にすることができる。その上、ねじ山37は
ほゞ完全な直径の部分17から成形されているため鋭い。
鋭い頂のねじ山でワークにねじ山を成形することによ
り、一層効果的な塑性変形が可能である。

タッピングを行うときねじ山37の鋭い山がねじ山成形作
用を開始した後、部分的に成形されたねじ山、即ち頂部
の欠如したねじ山38はワークに形成されるねじ山の部分
を滑かにするバニシ加工を行う。また、ねじ山38が頂部
が欠如しているため、摩擦抵抗は完全に成形されたねじ
山の摩擦抵抗よりも小さい。しかし、ねじ山38の作用
は、ねじ山37の作用が充分に始まつた後に開始する。点
線の円40と41はシヤンク14のねじの山と谷の直径を夫々
示す。

本発明の重要な特徴はねじ20のチップ12と素材のタップ
穴との間にかなりの隙間を設けるようにしたことであ
る。この隙間は第11の符号Ａ、Ｂの範囲内に含まれる点
線で示した部分によって表わされる。即ち、ブランク材
のチップの部分を大幅に削り取ってあるので、ねじ山37
がタッピングを行うとき、上記の符号Ａ、Ｂの範囲内で
円周方向の上記の点線で示した部分がタッピングする下
孔の壁面と接触しない。

本発明の他の重要な利点はチツプ12の殆んど全長に延び
る完全またはほゞ完全に成形されたねじ山37の形成であ
る。これはタッピングされた雌ねじの締付け有効長さと
締結力とを増大することを意味する。このことは、チッ
プの外側面17をそれに隣接する面に対して異なる直径と
したこと即ち、シャンク14の直径と同一としたことによ
りシャンク上に形成される完全なねじ37と同じねじを外
側面17上に形成するようにした結果である。なお、チッ
プ12の転造は第14図に示した様にチツプなねじ山に僅か
な勾配を形成する転造ダイを使用してもよい。

第12〜15図は本発明の第２実施例を示す。この実施例で
はチツプ42は相互に対応する内側面52、53を有し、この
内側面は第４、第５、第６図の面23に対応する。この実
施例では各内側面52、53は２つのほゞ平らな横方向に大
きな面45と横方向に小さい面46を有する。これ等の面4
4、45、46は作用、構造で前述の第４、第５、第６図の
面24、25、26に相当する。

同様に、面43、47、48は構造と作用において第４、第
５、第６図の面33、17、18に夫々相当する。面47は完全
なねじ57を形成するようにシャンクの直径と同一であっ
て他の面43、48とは別個の面である。

第１６〜１８図は本発明の他の一実施例を示す。第１
６、第１７図はほゞ平行で軸方向に位置し連続的に彎曲
する螺旋面72を有する鍛造されたチツプ62を示す。これ
等の面の形状と作用は第１実施例の面22に相当する。螺
旋面72は一端において面73と交わり、他端においてシャ
ンク外周面に滑らかに交わる。また、この実施例では第
１、第２実施例の様に、鍛造されたチツプはねじの軸心
を含む任意の平面に対して非対称的である。

第１８図は鍛造されたチツプ62のねじ山転造の結果を示
す。部分的に成形されたねじ山78は螺旋面72の中間部分
に形成され、一方、完全に成形されたねじ山75はその中
間部分の外側部分に形成される。初めの２つの実施例の
様に、第３実施例のねじは一対のねじ山が無い部分76
と、完全に成形された鋭いねじ山を有する２つの部分と
を備えている。この実施例ではチツプは転造された際に
ねじ山73の頂に勾配を生じる勾配付き端部端縁74を有す
る。これは、孔へのねじの挿入を容易にするためであ
る。尚、この勾配はチップの上端部分のねじ山がシャン
クの完全なねじ山75と等しい。

尚、上述の実施例では素材を大きく削り取るためには鍛
造工程を分けることが好ましいが、その一つに本発明に
よるねじの構成を得るために頭付けの工程が考えられ
る。場合によっては削り取る個所を少なくし、適用範囲
を狭くして複数の鍛造工程とせず製作費を削減すること
が望ましい場合もある。

上述の実施例な何れも軸心に平行な複数個の凹みを有し
ているが、少なくともチップ表面の一部にはテーパを付
けるのがよい。そしてチップの外側面にはシャンク表面
に平行な部分を残し、その部分に完全なねじ山を形成す
るのが好ましい。

以上、本発明を特定の実施例に付いて説明したが、多く
の代替、変更、置換は当業者にとつて容易であり、これ
らの代替、変更、置換は特許請求の範囲の技術思想に含
まれることに留意されたい。

【図面の簡単な説明】

第１〜１１図は本発明の第１実施例を示すもので、第１
図は頭付け後のブランクの立面図、第２図は更に鍛造後
のブランクの立面図、第３図は転造の後のねじの立面
図、第４図は第２図のブランクのチツプの拡大立面図、
第５図は第４図の５−５線に沿う断面図、第６図は第４
図の線６−６に沿う断面図、第７、第８、第９図は第３
図のねじのチツプを種々な角度から見た立面図、第１０
図は第７図の１０−１０線に沿う断面図、第１１図は第
９図の１１−１１線に沿う断面図、第１２図は本発明の
第２実施例のブランクのチツプの拡大立面図、第１３図
は第１２図のチツプの拡大端面図、第１４、第１５図は
第１２、第１３図に示したブランクから鍛造して作つた
ねじのチツプの別々な角度から見た拡大立面図、第１６
図は本発明の更に他の一実施例の鍛造されたブランクの
チツプの拡大立面図、第１７図は第１６図のチツプの端
面図、第１８図は第１６、第１７図のブランクから作つ
たねじのチツプの拡大立面図で、図中、11は頭、12はチ
ツプ、14はシヤンク、20はねじ、21、22、23、52、53は
内側面、24、29はリード面、25、26は平らな面、37、75
はねじ山、38は部分的なねじ山、72は螺旋面を示す。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】一端に頭（11）を連らね、他端にチップ
   （12）を有する円筒計のシャンク（14）の前記チップ
   （12）が、軸心に平行で、上端の傾斜面（33）を介して
   シャンク（14）の外周面に結合された内側面（23）と、
   該内側面（23）の反対側に位置し、軸心に平行で、上端
   の傾斜面（31）を介して前記シャンク（14）の外周面に
   結合された内側面（21）と、該内側面（21）の下に位置
   し、軸心と平行で、上端が傾斜面（32）を介して前記内
   側面（21）に結合する内側面（22）とから成り、 前記内側面（23）はリード面（24）を介して前記シャン
   ク（14）の外周面に滑らかに結合され、 前記内側面（21）は前記シャンク（14）の外周面に滑ら
   かに結合されると共に軸心に垂直な方向における断面が
   ほゞ楕円形であり、 前記内側面（22）はリード面（29）を介して前記シャン
   ク（14）の外周面に滑らかに結合されると共に軸心に垂
   直な方向における断面がＳ字形であり、前記チップ（1
   2）の前記傾斜面（31，32，33）、内側面（23，21，2
   2）及び該チップ（12）の先端部の勾配付外側面（18）
   を除く外周面は前記シャンク（14）と外径が等しく、且
   つ該チップの外周面を含みシャンク（14）の外周面には
   転造によるねじ山（37）が形成されていることを特徴と
   するねじ山成形用ねじ。
2. 【請求項２】一端に頭（11）を連らね、他端にチップ
   （12）を有する円筒計のシャンク（14）の前記チップ
   （12）に、鍛造により、上端が傾斜面（33）を介してシ
   ャンク（14）の外周面に結合すると共に、リード面（2
   4）を介して前記シャンクの外周面に滑らかに結合する
   軸心に平行な内側面（23）と、該内側面（23）の反対側
   に位置し、上端が傾斜面（32）を介して前記シャンク
   （14）の外周面に結合すると共に、両側部が前記シャン
   クの外周面に滑らかに結合し、且つ軸心に平行で、軸心
   に垂直な方向における断面がほゞ楕円形の内側面（21）
   と、該内側面（21）の下に位置し、上端が傾斜面（32）
   を介して前記内側面（21）に結合すると共に、リード面
   （29）を介してシャンク（14）の外周面に滑らかに結合
   し、且つ軸心に平行で、軸心に垂直な方向における断面
   がＳ字形の内側面（23）とを形成し、同時に前記チップ
   （12）の先端部に勾配付き外周面（18）を残して前記チ
   ップ（12）の傾斜面（31，32，33）及び前記内側面（2
   3，21，22）を除く外周面を前記シャンク（14）に等し
   い外径にし、次いで該外周面を含みシャンクの外周面に
   転造によってねじ山を形成することを特徴とするねじ山
   成形用ねじの製造方法。