JPH064229Y2 - 熱の移動装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、熱を効率よく移動させる熱の移動装置に関す
るものである。

〔従来の技術〕

各種ＯＡ、ＦＡ機器の心臓部や各種制御盤の内部には、
ほとんどの場合発熱する基板等があり、この基板等を保
護するために、装置全体を一定の温度以下に保つ必要が
ある。

この一定温度以下に保つための冷却方向として、通常は
冷却用のフィンを取り付けたり、ファンによる空気冷却
や更に大容量の場合には液冷却等が行われている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、冷却用のフィンだけの場合は、フィンに
よる放熱面積の増大が図られているが、自然の放熱によ
る温度低下だけであり、冷却効果がよいとは言えない。
また、強制空冷の場合は、電動扇により発熱部に空気を
吹きつけて冷却するが、空気中に含まれる微小な塵埃や
腐食性ガス、湿気等により発熱部のある装置内を汚染さ
せる等の弊害がある。また、水冷却や油冷却の場合に
は、ポンプや貯液槽さらには配管等部品点数が多くな
り、容積の増大やコストが上昇する等の欠点を有する。

本考案は上記点に鑑みてなされたもので、熱を効率よく
移動させて冷却効果が優れ、コンパクトにでき、しかも
冷却室内等が汚染することもないようにできる熱の移動
装置を提供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するための本考案の構成は、モータによ
り駆動される回転軸を配設したケーシング内を前記回転
軸に貫通固定された仕切りプレートで２つの隔室に仕切
り、ケーシングの２つの隔室にそれぞれ吸入口と放出口
とを設け、前記仕切りプレートを貫通して前記２つの隔
室間に跨がる伝熱ベーンを前記回転軸の周りに複数枚配
設して羽根車を構成し、この羽根車を形成する前記伝熱
ベーンは前記回転軸の軸方向に沿った細長い板からな
り、周方向における両面には複数個の凸部を長手方向に
沿って互い違いに有しており、これらの凸部は周方向に
おいて隣接している伝熱ベーンにおいて一方の伝熱ベー
ンの凸部が他方の伝熱ベーンの凸部と凸部の間に配置さ
れていることを特徴とする。

〔作用〕

モータによって回転する羽根車の伝熱ベーンによって流
体が２つの隔室の吸入口からそれぞれの隔室内に取り入
れられて、それぞれの放出口から放出される。そして、
２つの隔室内をそれぞれ移動する流体に温度差がある
と、一方の流体の熱が伝熱ベーンを通じて他方の流体中
に移動する。この場合、伝熱ベーンを流体との熱交換部
材として利用する構成としたため、熱伝達面が回転する
ことになり、そのため熱伝達効率が高く、熱の移動が効
率よく行われるものである。そして、羽根車を形成する
伝熱ベーンは回転軸の軸方向に沿った細長い板からな
り、周方向における両面には複数個の凸部を長手方向に
沿って互い違いに有しており、これらの凸部は周方向に
おいて隣接している伝熱ベーンにおいて一方の伝熱ベー
ンの凸部が他方の伝熱ベーンの凸部と凸部の間に配置さ
れていることによって、小型で熱伝達面積を非常に大き
くすることができる。

〔実施例〕

第１図は本装置の縦断面図、第２図は本装置の一部破断
右側面部分図である。

ケーシング１は密閉状のケースで、大径円筒部１ａと小
径円筒部１ｂとからなる。このケーシング１の中心線上
に回転軸２が回転自在に支持されている。この回転軸２
にはカラー３を介してインレットボス４が固定され、大
径円筒部１ａの中央部に当たるインレットボス４の外周
に環状溝５が設けられている。そしてこの環状溝５に一
対の円形のセンターベーンガイドプレート６が嵌装して
ケーシング１内を２つの隔室７，８に仕切り、センター
ベーンガイドプレート６の外周とケーシング１の内周と
の間にラビリンスリング９を装着して２つの隔室７，８
のシールをなす。そして、ケーシング１の両底部の回転
軸２の周りに吸入口１０，１１が形成され、大径円筒部
１ａの２つの隔室７，８に面する円周部に放出口１２，
１３が形成されている。なお、１４は吸入口１１に設け
られたフィルターである。

大径円筒部１ａ内の両端には一対の円形の押えプレート
１５（第３図参照）が配設され、この押えプレート１５
は回転軸２に貫通固定されている。そしてこの押えプレ
ート１５の内側に隣接して円形のサイドベーンガイドプ
レート１６（第４図参照）が配設される。押えプレート
１５及びサイドベーンガイドプレート１６は吸入口１
０，１１に対応した部分が開口されている（第３図及び
第４図参照）。このサイドベーンガイドプレート１６は
３枚の大、中、小のリングプレート１６ａ，１６ｂ，１
６ｃで構成される。小リングプレート１６ｃに中リング
プレート１６ｂが嵌装し、中リングプレート１６ｂに大
リングプレート１６ａが嵌装してなる。そして、大、
中、小のリングプレート１６ａ，１６ｂ，１６ｃには外
周から中心に向かうベーン溝１７，１８，１９が周方向
に等間隔に全周にわたって多数設けられ、ベーン溝１
７，１８，１９の数は大リングプレート１６ａが最も多
く、次いで中リングプレート１６ｂ、そして小リングプ
レート１６ｃが最も少ない。前記センターベーンガイド
プレート６もサイドベーンガイドプレート１６と同様に
構成されており、大、中、小のリングプレート６ａ，６
ｂ，６ｃで構成され、それぞれにベーン溝が設けられて
いる。センターベーンガイドプレート６とサイドベーン
ガイドプレート１６の大リングプレート６ａ，１６ａの
大きさは同一で、ベーン溝の大きさと位置と数は同一に
設けられている。同様に、中リングプレート６ｂ，１６
ｂ、及び小リングプレート６ｃ，１６ｃについても大き
さは同一で、ベーン溝の大きさと位置と数は同一に設け
られている。そして、両サイドベーンガイドプレート１
６の大リングプレート１６ａ間に伝熱ベーン２０（第５
図参照）が前記ベーン溝に挿入して架設される。同様に
して中リングプレート１６ｂ間及び小リングプレート１
６ｃ間にも伝熱ベーン２１，２２がそれぞれのベーン溝
に挿入して架設される。伝熱ベーン２０は第５図に示す
ように、細長い矩形板の両面に凸部２０ａを長手方向に
互い違いに形成してなる。そして大リングプレート１６
ａ，６ａ上で周方向に配列する伝熱ベーン２０は第５図
に二点鎖線で示すように、長手方向に凸部２０ａが同一
の配列をなす状態でベーン溝に組み込まれており、周方
向に隣接する伝熱ベーン２０の一方の凸部２０ａが互い
に対向する他方の凸部２０ａ間に入り込んだ状態になっ
て、隣接する伝熱ベーン２０間に長手方向に沿ってジグ
ザグ状の空間が形成されてなる。中リングプレート１６
ｂ，６ｂ、小リングプレート１６ｃ，６ｃ上で周方向に
配列する伝熱ベーン２１，２２も上記伝熱ベーン２０と
同一の構造をなして同様に配列されている。

前記伝熱ベーン２０，２１，２２、センターベーンガイ
ドプレート６、サイドベーンガイドプレート１６、及び
押えプレート１５の材質は、熱伝達率の良い銀、銅、ア
ルミニウムもしくはこれらの金属の組合せよりなる複合
材等が良いが、銀は高価であるため、銅、銅合金、アル
ミニウム、アルミニウム合金のうちの一つから構成する
のが好適である。

そして、サイドベーンガイドプレート１６とセンターベ
ーンガイドプレート６との大リングプレート１６ａ，６
ａ間、及び一対のセンターベーンガイドプレート６の大
リングプレート６ａ間にカラー２３，２４を介装して、
両押えプレート１５間に固定バー２５が貫通して端部を
かしめて固定され、両押えプレート１５間に伝熱ベーン
２０及び大リングプレート６ａ，１６ａが固定される。
同様にしてサイドベーンガイドプレート１６とセンター
ベーンガイドプレート６との中リングプレート１６ｂ，
６ｂ間及びセンターベーンガイドプレート６の中リング
プレート６ｂ間、並びにサイドベーンガイドプレート１
６とセンターベーンガイドプレート６との小リングプレ
ート１６ｃ，６ｃ間及びセンターベーンガイドプレート
６の小リングプレート６ｃ間にもカラー２６，２７，２
８，２９を介装して固定バー３０，３１が両押えプレー
ト１５間に貫通固定される。大リングプレート１６ａ，
６ａ部には更に両押えプレート１５間に固定ボルト３２
が貫通し、ナット３３が締結される。また押えプレート
１５とサイドベーンガイドプレート１６の外周には押え
リング３４が嵌装されて伝熱ベーン２０を径方向に押さ
えている。このようにして羽根車が構成される。

なお、インレットボス４の外周には複数枚のインレット
ベーン３５が放射状に固定されているが、これは省略し
てもよい。

そしてケーシング１の小径円筒部１ｂ内の吸入口１１の
周りにはコイルユニット３６がケーシング１に固定さ
れ、これに対向するマグネットユニット３７が押えプレ
ート１５に固定されて、モータ３８を構成する。なお、
モーター３８はケーシング１の内部に設けたが、ケーシ
ング１の外部に設けるようにすることもできる。

本装置３９は以上のような構成からなり、第６図に示す
ように０Ａ、ＦＡ機器などの内部に発熱体４０を備えた
筐体４１の側壁に設けた貫通孔に本装置３９を取り付け
（この場合、一方の吸入口１０と放出口１２が筐体４１
内に配置し、他方の吸入口１１と放出口１３が筐体４１
外に配置する）、コイルユニット３６に通電すると、マ
グネットユニット３７が回転し、それに伴って回転軸２
が回転する。そして回転するインレットベーン３５及び
伝熱ベーン２０，２１，２２によってケーシング１の一
方の吸入口１０から内気が取り込まれ、一方の放出口１
２から放出されるとともに、他方の吸入口１１から外気
が取り込まれ、他方の放出口１３から放出される。この
とき、一方の隔室７内に取り込まれた内気の熱は、回転
する熱伝達面を構成する一方の隔室７内の伝熱ベーン２
０，２１，２２部分に効率よく伝達され、その熱は伝熱
ベーン２０，２１，２２を通して他方の隔室８内の伝熱
ベーン２０，２１，２２部分に効率よく移動する。そし
てこの移動した熱は回転する熱伝達面を達成する他方の
隔室８内の伝熱ベーン２０，２１，２２部分から隔室８
内に取り込まれた外気に効率よく伝達される。このよう
にして、熱が効率よく移動するものである。

なお、伝熱ベーン２０，２１，２２を装着したサイドベ
ーンガイドプレート１６及びセンターベーンガイドプレ
ート６はともに３枚のリングプレートで構成したが、勿
論１枚のリングプレートで構成してもよい。また、伝熱
ベーンは３段のものを示したが、１段あるいは４段以上
に構成しても勿論よい。また、伝熱ベーン２０，２１，
２２は外周から中心に向かって設けたが、この方向に対
して角度をなす方向に設けるようにしてもよい。また、
伝熱ベーン２０，２１，２２の凸部の形状、個数などは
上記のものに限定されるものではない。なお、伝熱ベー
ン２０，２１，２２の形状は上記のものに限定されるも
のではない。

以下、本考案に係る装置の試験結果を説明する。上記実
施例では伝熱ベーンを３段に設けたものを示したが、本
装置は伝熱ベーンが１段のものである。

羽根車の内径：１５０ｍｍφ 羽根車の外径：１８０ｍｍφ 伝熱ベーンの数 ：１０２ 回転数 ：２０００ｒｐｍ 冷却側風量 ：３１８５／ｍｉｎ 冷却側静圧 ：8.５ｍｍＡｑ 放熱側風量 ：４１９１／ｍｉｎ 放熱側静圧 ：１0.１ｍｍＡｑ 熱伝達表面積：２１５７ｃｍ_２ 能力 ：２1.８Ｗ／℃ モーター入力：９7.２Ｗ 〔考案の効果〕 以上説明したように本考案によれば、回転し且つ熱伝達
面積の大きな伝熱ベーンを通じて効率良く熱移動を行わ
せることができる。また、装置構成が簡単で、且つコン
パクトにできる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示し、第１図は本装置の縦断
面図、第２図は本装置の一部破断右側面部分図、第３図
は押えプレートの平面図、第４図はサイドベーンガイド
プレートの平面図、第５図は伝熱ベーンの平面図、第６
図は本装置を取り付けた筐体の断面図である。 １はケーシング、２は回転軸、６はセンターベーンガイ
ドプレート、６ａ，６ｂ，６ｃ、１６ａ，１６ｂ，１６
ｃはリングプレート、７，８は隔室、９はラビリンスリ
ング、１０，１１は吸入口、１２，１３は放出口、１５
は押えプレート、１６はサイドベーンガイドプレート、
１７，１８，１９はベーン溝、２０，２１，２２は伝熱
ベーン、２０ａは凸部、２３，２４，２６，２７，２
８，２９はカラー、２５，３０，３１は固定バー、３２
は固定ボルト、３３はナット、３４は押えリング、３６
はコイルユニット、３７はマグネットユニット、３８は
モーター。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】モータにより駆動される回転軸を配設した
   ケーシング内を前記回転軸に貫通固定された仕切りプレ
   ートで２つの隔室に仕切り、ケーシングの２つの隔室に
   それぞれ吸入口と放出口とを設け、前記仕切りプレート
   を貫通して前記２つの隔室間に跨がる伝熱ベーンを前記
   回転軸の周りに複数枚配設して羽根車を構成し、この羽
   根車を形成する前記伝熱ベーンは前記回転軸の軸方向に
   沿った細長い板からなり、周方向における両面には複数
   個の凸部を長手方向に沿って互い違いに有しており、こ
   れらの凸部は周方向において隣接している伝熱ベーンに
   おいて一方の伝熱ベーンの凸部が他方の伝熱ベーンの凸
   部と凸部の間に配置されていることを特徴とする熱の移
   動装置。
2. 【請求項２】前記伝熱ベーンが銅、銅合金、アルミニウ
   ム、アルミニウム合金の中の一つからなることを特徴と
   する実用新案登録請求の範囲第１項記載の熱の移動装
   置。