JPH06325922A - 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料およびその製造方法 - Google Patents
高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料およびその製造方法Info
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- JPH06325922A JPH06325922A JP5112986A JP11298693A JPH06325922A JP H06325922 A JPH06325922 A JP H06325922A JP 5112986 A JP5112986 A JP 5112986A JP 11298693 A JP11298693 A JP 11298693A JP H06325922 A JPH06325922 A JP H06325922A
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Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【目的】 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェラ
イト磁性材料を提供する。 【構成】 MnO 20〜50mol %、ZnO 5〜4
0mol %、残部Fe2 O3 からなるMn−Znフェライ
ト磁性材料を使用する。高電気抵抗表面層を有する磁性
材料は、前記Mn−Znフェライト磁性材料に、Liの
化合物とTi、Cr、Co、Ni、Cu、Znの化合物
のうち一種または二種以上とを同時に塗布するか、その
混合粉末中にMn−Znフェライト磁性材料を埋め、6
00℃から1400℃の温度範囲での熱処理により得ら
れる。 【効果】 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェラ
イト磁性材料は、108Ω・m以上の抵抗率を有し、偏
向ヨークコアとして使用することを可能にした。また、
これによりボビンのない直巻線インダクタやトランスが
得られる。
イト磁性材料を提供する。 【構成】 MnO 20〜50mol %、ZnO 5〜4
0mol %、残部Fe2 O3 からなるMn−Znフェライ
ト磁性材料を使用する。高電気抵抗表面層を有する磁性
材料は、前記Mn−Znフェライト磁性材料に、Liの
化合物とTi、Cr、Co、Ni、Cu、Znの化合物
のうち一種または二種以上とを同時に塗布するか、その
混合粉末中にMn−Znフェライト磁性材料を埋め、6
00℃から1400℃の温度範囲での熱処理により得ら
れる。 【効果】 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェラ
イト磁性材料は、108Ω・m以上の抵抗率を有し、偏
向ヨークコアとして使用することを可能にした。また、
これによりボビンのない直巻線インダクタやトランスが
得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スイッチング電源に使
用されるメイントランスやチョークコイルおよびブラウ
ン管の走査線制御に使用される偏向ヨークコアなどに供
される高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト
磁芯と直巻線を施したインダクタやトランス並びに高電
気抵抗表面層を利用した導電端子または導線誘導孔を有
するエステルフェライトコアに関するものである。
用されるメイントランスやチョークコイルおよびブラウ
ン管の走査線制御に使用される偏向ヨークコアなどに供
される高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト
磁芯と直巻線を施したインダクタやトランス並びに高電
気抵抗表面層を利用した導電端子または導線誘導孔を有
するエステルフェライトコアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エレクトロニクス機器の小型化に
伴い磁性部品の小型化が要求されている。そのため、小
型化に貢献する電力損失低減などの磁気特性面での研究
開発や表面実装用偏平コアなどの形状面でのアプローチ
がなされており、実際の電源に搭載されているトランス
もかなり小さくなってきている。
伴い磁性部品の小型化が要求されている。そのため、小
型化に貢献する電力損失低減などの磁気特性面での研究
開発や表面実装用偏平コアなどの形状面でのアプローチ
がなされており、実際の電源に搭載されているトランス
もかなり小さくなってきている。
【0003】しかし、このようなコアの小型化がさらに
進むと、磁芯へ巻線を施すのに必要な窓面積や巻線の占
める空間の確保が難しくなる。逆の観点から見れば、巻
線の占める空間を確保する必要のために小型化が阻害さ
れていることになる。この巻線の占める空間は、一部を
占有しているコアと巻線との電気的絶縁を保証するため
に用いられている絶縁樹脂からなるボビンをなくすこと
により広くできるが、Mn−Znフェライトは電気抵抗
が数〜数十Ω・mと低いため、安全上直接に巻線を施す
ことができない。例えば、国際規格であるIEC950
に定めるコアと巻線の間の電気的絶縁の規格をクリアす
ることが難しいなどの問題が生じる。
進むと、磁芯へ巻線を施すのに必要な窓面積や巻線の占
める空間の確保が難しくなる。逆の観点から見れば、巻
線の占める空間を確保する必要のために小型化が阻害さ
れていることになる。この巻線の占める空間は、一部を
占有しているコアと巻線との電気的絶縁を保証するため
に用いられている絶縁樹脂からなるボビンをなくすこと
により広くできるが、Mn−Znフェライトは電気抵抗
が数〜数十Ω・mと低いため、安全上直接に巻線を施す
ことができない。例えば、国際規格であるIEC950
に定めるコアと巻線の間の電気的絶縁の規格をクリアす
ることが難しいなどの問題が生じる。
【0004】ところで、Mn−Znフェライトは、他の
フェライト磁性材料と比較して、飽和磁束密度、透磁率
ともに大きく、電力損失が小さいなど磁気特性に優れて
いる。このため、様々なエレクトロニクス機器における
磁性部品として数多く使用され、さらにその用途拡大が
望まれている。例えば、ブラウン管用偏向ヨークコアに
おいては、テレビの高精度大型化に伴い、現在使用され
ているMg−Znフェライトでは磁気特性面で不十分な
点があり、Mn−Znフェライトの使用が考えられてい
る。しかし、電気抵抗が低いため高電圧のかかる偏向ヨ
ークコアでは使用が困難である。
フェライト磁性材料と比較して、飽和磁束密度、透磁率
ともに大きく、電力損失が小さいなど磁気特性に優れて
いる。このため、様々なエレクトロニクス機器における
磁性部品として数多く使用され、さらにその用途拡大が
望まれている。例えば、ブラウン管用偏向ヨークコアに
おいては、テレビの高精度大型化に伴い、現在使用され
ているMg−Znフェライトでは磁気特性面で不十分な
点があり、Mn−Znフェライトの使用が考えられてい
る。しかし、電気抵抗が低いため高電圧のかかる偏向ヨ
ークコアでは使用が困難である。
【0005】また、Mn−Znフェライトは価格も安価
であり、原料コストの高いNi−Znフェライトなど
は、磁気特性面でも優れているMn−Znフェライトへ
の置き換えが望まれている。しかし、Ni−Znフェラ
イトは電気抵抗が高いため直接巻線が可能であるが、M
n−Znフェライトでは電気的絶縁のための樹脂ボビン
が必要となるので、コストメリットが得られない。さら
に、電気抵抗の高いNi−Znフェライトなどでは、導
電端子を直接コアに取り付けたり、導線誘導用の孔を穿
つことにより小型化が容易であるが、Mn−Znフェラ
イトは電気抵抗が低いので、樹脂などによる絶縁なしに
はこれらを実現できない。
であり、原料コストの高いNi−Znフェライトなど
は、磁気特性面でも優れているMn−Znフェライトへ
の置き換えが望まれている。しかし、Ni−Znフェラ
イトは電気抵抗が高いため直接巻線が可能であるが、M
n−Znフェライトでは電気的絶縁のための樹脂ボビン
が必要となるので、コストメリットが得られない。さら
に、電気抵抗の高いNi−Znフェライトなどでは、導
電端子を直接コアに取り付けたり、導線誘導用の孔を穿
つことにより小型化が容易であるが、Mn−Znフェラ
イトは電気抵抗が低いので、樹脂などによる絶縁なしに
はこれらを実現できない。
【0006】このような状況のもと、Mn−Znフェラ
イトの電気抵抗を高くするための様々な方法が試みられ
てきた。例えば、特開昭62−133704号公報、特
公平2−60073号公報、特開昭59−219981
号公報などには、Mn−Znフェライトに酸化処理を施
して電気的絶縁層を形成する方法が開示されている。し
かし、これらの酸化による高電気抵抗表面層を形成する
方法では、酸化によって生じる高電気抵抗層、すなわち
ヘマタイトからなる層が、結晶粒内および結晶粒界に板
状に形成されるので電気抵抗を実用レベルまで上げるに
はMn−Znフェライトコアの内部まで酸化しなければ
ならない。このため、磁気特性の劣化という問題が生じ
る。
イトの電気抵抗を高くするための様々な方法が試みられ
てきた。例えば、特開昭62−133704号公報、特
公平2−60073号公報、特開昭59−219981
号公報などには、Mn−Znフェライトに酸化処理を施
して電気的絶縁層を形成する方法が開示されている。し
かし、これらの酸化による高電気抵抗表面層を形成する
方法では、酸化によって生じる高電気抵抗層、すなわち
ヘマタイトからなる層が、結晶粒内および結晶粒界に板
状に形成されるので電気抵抗を実用レベルまで上げるに
はMn−Znフェライトコアの内部まで酸化しなければ
ならない。このため、磁気特性の劣化という問題が生じ
る。
【0007】また、Mn−Znフェライトとは異なった
成分の電気的絶縁表面層を形成する方法が考えられてい
る。例えば、特開平3−242907号公報、特開平3
−71603号公報、特開昭63−260883号公報
などがある。しかし、異なる材質の絶縁層を表面に形成
する方法では、絶縁層が巻線の際の機械的な力により剥
がれたり、製造過程でピンホールが出来たり、均質な層
を形成することが困難で特性のばらつきや寸法誤差が生
じたり、複雑な形状には向かなかったり、拡散の制御が
微妙で磁気特性を損なうなどの問題が生じ易い。
成分の電気的絶縁表面層を形成する方法が考えられてい
る。例えば、特開平3−242907号公報、特開平3
−71603号公報、特開昭63−260883号公報
などがある。しかし、異なる材質の絶縁層を表面に形成
する方法では、絶縁層が巻線の際の機械的な力により剥
がれたり、製造過程でピンホールが出来たり、均質な層
を形成することが困難で特性のばらつきや寸法誤差が生
じたり、複雑な形状には向かなかったり、拡散の制御が
微妙で磁気特性を損なうなどの問題が生じ易い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の技術
には、製造の安定性の面と磁気特性の劣化の点に改良の
必要があった。本発明は、磁気特性の劣化のない、ピン
ポールのない、高電気抵抗表面層を有するMn−Znフ
ェライト磁性材料とその製法を提供することを目的とし
ている。
には、製造の安定性の面と磁気特性の劣化の点に改良の
必要があった。本発明は、磁気特性の劣化のない、ピン
ポールのない、高電気抵抗表面層を有するMn−Znフ
ェライト磁性材料とその製法を提供することを目的とし
ている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、主成分
として、MnO 20〜50mol %、ZnO 5〜40
mol %、残部Fe2 O3 からなる組成のMn−Znフェ
ライト磁性材料の全表面またはその一部に、LiとT
i、Cr、Co、Ni、Cu、Znのうち一種または二
種以上がフェライト磁性材料中に濃化した高電気抵抗表
面層を有するMn−Znフェライト磁性材料とその製造
方法、にある。
として、MnO 20〜50mol %、ZnO 5〜40
mol %、残部Fe2 O3 からなる組成のMn−Znフェ
ライト磁性材料の全表面またはその一部に、LiとT
i、Cr、Co、Ni、Cu、Znのうち一種または二
種以上がフェライト磁性材料中に濃化した高電気抵抗表
面層を有するMn−Znフェライト磁性材料とその製造
方法、にある。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。まず、S
IMS(二次イオン質量分析法)によって調べた結果で
は、LiとTi、Cr、Co、Ni、Cu、Znはフェ
ライト磁性材料中に濃化し、表面に付着したものではな
い。また、高電気抵抗表面層に濃化したLiとTi、C
r、Co、Ni、Cu、Znの量は、Liが軽元素のた
め定量測定は難しいが、それぞれLiO、TiO2 、C
r2 O3 、CoO、NiO、CuOとして高電気抵抗表
面層中の主成分組成MnO、ZnO、Fe2 O3 に対し
ておよそ1mol %〜50mol %の範囲にある。また、Z
nOは、もとの組成に対して1mol %〜50mol%ほど
増加している。
IMS(二次イオン質量分析法)によって調べた結果で
は、LiとTi、Cr、Co、Ni、Cu、Znはフェ
ライト磁性材料中に濃化し、表面に付着したものではな
い。また、高電気抵抗表面層に濃化したLiとTi、C
r、Co、Ni、Cu、Znの量は、Liが軽元素のた
め定量測定は難しいが、それぞれLiO、TiO2 、C
r2 O3 、CoO、NiO、CuOとして高電気抵抗表
面層中の主成分組成MnO、ZnO、Fe2 O3 に対し
ておよそ1mol %〜50mol %の範囲にある。また、Z
nOは、もとの組成に対して1mol %〜50mol%ほど
増加している。
【0011】ここで、Mn−Znフェライト磁性材料の
一部に高電気抵抗表面層を形成する場合とは、ビーズコ
アやマルチホールコアなどの単に導線を貫通させるだけ
の磁気材料において、導線とMn−Znフェライト磁性
材料が接触する部分だけに高電気抵抗表面層を形成する
場合や、Mn−Znフェライト磁性材料と金属の放熱板
を接触させるときに、接触面の部分だけに高電気抵抗表
面層を形成する場合、また、チップインダクタなどを形
成する際、導体パターンとMn−Znフェライト磁性材
料の間の部分に高電気抵抗表面層を形成する場合などを
指す。
一部に高電気抵抗表面層を形成する場合とは、ビーズコ
アやマルチホールコアなどの単に導線を貫通させるだけ
の磁気材料において、導線とMn−Znフェライト磁性
材料が接触する部分だけに高電気抵抗表面層を形成する
場合や、Mn−Znフェライト磁性材料と金属の放熱板
を接触させるときに、接触面の部分だけに高電気抵抗表
面層を形成する場合、また、チップインダクタなどを形
成する際、導体パターンとMn−Znフェライト磁性材
料の間の部分に高電気抵抗表面層を形成する場合などを
指す。
【0012】この高電気抵抗表面層を有するMn−Zn
フェライト磁性材料は、Mn−Znフェライト磁性材料
の表面に、Liの化合物とTi、Cr、Co、Ni、C
u、Znの化合物のうち一種または二種以上とを同時に
塗布するか、あるいはその混合粉末の中にMn−Znフ
ェライト磁性材料を埋め、窒素雰囲気から大気までの酸
素分圧下で、指定元素の拡散が高電気抵抗表面層を形成
する上で有効となる600℃から通常のMn−Znフェ
ライト磁性材料の焼成温度の上限である1400℃の温
度範囲で熱処理することにより得られる。もちろん、4
00℃においても拡散に要する熱処理時間を10時間以
上にすれば、高電気抵抗表面層は形成できる。また、処
理前のMn−Znフェライトは、ポリビニールアルコー
ルなどのバインダーを加えてプレスした成形体でも良
く、焼成途中でLiの化合物とTi、Cr、Co、N
i、Cu、Znの化合物を吹き付けて塗布してもよい。
フェライト磁性材料は、Mn−Znフェライト磁性材料
の表面に、Liの化合物とTi、Cr、Co、Ni、C
u、Znの化合物のうち一種または二種以上とを同時に
塗布するか、あるいはその混合粉末の中にMn−Znフ
ェライト磁性材料を埋め、窒素雰囲気から大気までの酸
素分圧下で、指定元素の拡散が高電気抵抗表面層を形成
する上で有効となる600℃から通常のMn−Znフェ
ライト磁性材料の焼成温度の上限である1400℃の温
度範囲で熱処理することにより得られる。もちろん、4
00℃においても拡散に要する熱処理時間を10時間以
上にすれば、高電気抵抗表面層は形成できる。また、処
理前のMn−Znフェライトは、ポリビニールアルコー
ルなどのバインダーを加えてプレスした成形体でも良
く、焼成途中でLiの化合物とTi、Cr、Co、N
i、Cu、Znの化合物を吹き付けて塗布してもよい。
【0013】Liを用いたのは、Ti、Cr、Co、N
i、Cu、ZnがLiと共に濃化した場合の方が電気抵
抗が高くなるためである。また、Cr、Co、Ni、C
u、Znのみ塗布した場合は、十分な厚さの高電気抵抗
表面層が1000℃以下の熱処理では得られ難い。さら
に、高電気抵抗表面層は、窒素雰囲気中、大気中どちら
でも形成されるが、酸素濃度が高い場合には、通常のM
n−Znフェライト磁性材料の焼成でも考えられている
磁気特性を劣化させるヘマタイト相の析出を考慮する必
要がある。
i、Cu、ZnがLiと共に濃化した場合の方が電気抵
抗が高くなるためである。また、Cr、Co、Ni、C
u、Znのみ塗布した場合は、十分な厚さの高電気抵抗
表面層が1000℃以下の熱処理では得られ難い。さら
に、高電気抵抗表面層は、窒素雰囲気中、大気中どちら
でも形成されるが、酸素濃度が高い場合には、通常のM
n−Znフェライト磁性材料の焼成でも考えられている
磁気特性を劣化させるヘマタイト相の析出を考慮する必
要がある。
【0014】高電気抵抗表面層として必要なLiとT
i、Cr、Co、Ni、Cu、Znの濃度およびその厚
さは、必要とされる電気抵抗の大きさによって異なる。
このため、塗布するLiの化合物およびTi、Cr、C
o、Ni、Cu、Znの化合物の量、熱処理温度、熱処
理時間を変えることにより、濃度および厚さを制御する
方法が考えられた。この塗布量、熱処理温度、熱処理時
間を変える方法では、SIMSによって調べた表面から
のLiOの濃度分布において、最大濃度の80%以上の
濃度を持つ部分の厚さで高電気抵抗表面層の厚さを定義
すると、およそ数μm〜数mmの範囲で厚さを変えるこ
とができる。したがって、必要とされる電気抵抗を任意
に得ることができる。
i、Cr、Co、Ni、Cu、Znの濃度およびその厚
さは、必要とされる電気抵抗の大きさによって異なる。
このため、塗布するLiの化合物およびTi、Cr、C
o、Ni、Cu、Znの化合物の量、熱処理温度、熱処
理時間を変えることにより、濃度および厚さを制御する
方法が考えられた。この塗布量、熱処理温度、熱処理時
間を変える方法では、SIMSによって調べた表面から
のLiOの濃度分布において、最大濃度の80%以上の
濃度を持つ部分の厚さで高電気抵抗表面層の厚さを定義
すると、およそ数μm〜数mmの範囲で厚さを変えるこ
とができる。したがって、必要とされる電気抵抗を任意
に得ることができる。
【0015】本発明の高電気抵抗表面層を有するMn−
Znフェライト磁性材料により偏向ヨークとして十分使
用に耐える108 Ω・m以上の電気抵抗が得られる。ま
た、本発明は、LiとTi、Cr、Co、Ni、Cu、
ZnをMn−Znフェライト磁性材料内部へ拡散させる
ことにより高電気抵抗表面層を形成するので、外部に絶
縁層を形成する方法や成形時に異なる成分の表面層を付
加する方法などと較べ寸法安定性に優れている。すなわ
ち、高い寸法精度が要求されている高細精度用偏向ヨー
クコアにおいても、十分使用に耐えるものである。ま
た、拡散により高電気抵抗表面層を形成するためピンホ
ールなどがない。
Znフェライト磁性材料により偏向ヨークとして十分使
用に耐える108 Ω・m以上の電気抵抗が得られる。ま
た、本発明は、LiとTi、Cr、Co、Ni、Cu、
ZnをMn−Znフェライト磁性材料内部へ拡散させる
ことにより高電気抵抗表面層を形成するので、外部に絶
縁層を形成する方法や成形時に異なる成分の表面層を付
加する方法などと較べ寸法安定性に優れている。すなわ
ち、高い寸法精度が要求されている高細精度用偏向ヨー
クコアにおいても、十分使用に耐えるものである。ま
た、拡散により高電気抵抗表面層を形成するためピンホ
ールなどがない。
【0016】また、スイッチング電源等に用いられてい
るインダクタやトランスの磁心として本発明の高電気抵
抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料を応用
すれば、コアと巻線との電気的絶縁の安全規格、例えば
IEC950に述べられている安全性能試験等を満足す
るボビンの無い磁心に直に巻線を施したインダクタやト
ランスを提供することができ、その結果、インダクタや
トランスの更なる小型化に貢献する。
るインダクタやトランスの磁心として本発明の高電気抵
抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料を応用
すれば、コアと巻線との電気的絶縁の安全規格、例えば
IEC950に述べられている安全性能試験等を満足す
るボビンの無い磁心に直に巻線を施したインダクタやト
ランスを提供することができ、その結果、インダクタや
トランスの更なる小型化に貢献する。
【0017】さらに、巻線に印加される電圧や電流など
の大きさによって安全規格が要求する電気的絶縁度が異
なるが、本発明では高電気抵抗表面層の厚さを制御する
方法により、任意の抵抗値を変えられるので、抵抗値の
大きさを必要最低限に制御することが可能である。これ
により、Mn−Znフェライトの磁気特性を最大限に発
揮することができる。このことは、酸化によって絶縁層
を形成する方法と比較すると良く分る。
の大きさによって安全規格が要求する電気的絶縁度が異
なるが、本発明では高電気抵抗表面層の厚さを制御する
方法により、任意の抵抗値を変えられるので、抵抗値の
大きさを必要最低限に制御することが可能である。これ
により、Mn−Znフェライトの磁気特性を最大限に発
揮することができる。このことは、酸化によって絶縁層
を形成する方法と比較すると良く分る。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明
する。実施例1〜18 LiCO3 とTiO2 、Cr2 O3 、CoO、NiO、
CuO、ZnOのそれぞれをエタノール2mlに溶きス
ラリー状にしたものを、主成分がMnO 35mol %、
ZnO 12mol %、Fe2 O3 53mol %の組成を
有する外形10mm、高さ5mmの円柱状Mn−Znフ
ェライト試料の片面に塗布し乾燥した。この試料を酸素
濃度130ppmの窒素雰囲気中、1000℃×2時
間、1000℃×5時間、600℃×7時間、1200
℃×1時間で熱処理することにより高電気抵抗表面層を
有するMn−Znフェライト磁性材料を得た。LiCO
3 とTiO2 、Cr2 O3 、CoO、NiO、CuO、
ZnOの配合比を変えた実施例1〜実施例18の結果
を、表1〜表6に示す。
する。実施例1〜18 LiCO3 とTiO2 、Cr2 O3 、CoO、NiO、
CuO、ZnOのそれぞれをエタノール2mlに溶きス
ラリー状にしたものを、主成分がMnO 35mol %、
ZnO 12mol %、Fe2 O3 53mol %の組成を
有する外形10mm、高さ5mmの円柱状Mn−Znフ
ェライト試料の片面に塗布し乾燥した。この試料を酸素
濃度130ppmの窒素雰囲気中、1000℃×2時
間、1000℃×5時間、600℃×7時間、1200
℃×1時間で熱処理することにより高電気抵抗表面層を
有するMn−Znフェライト磁性材料を得た。LiCO
3 とTiO2 、Cr2 O3 、CoO、NiO、CuO、
ZnOの配合比を変えた実施例1〜実施例18の結果
を、表1〜表6に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】表中の抵抗値は、上下面に銀ペーストを塗
り、抵抗を測定することにより求めた値である。実施例
1〜実施例18の抵抗値は、いずれも1×108 Ω・m
以上の値である。また、表7において、比較例1〜比較
例6は、それぞれLiCO3を除いた単独添加の場合の
1000℃×5時間の処理で得られた結果である。比較
例7は、全く塗布しなかった場合の結果であるが、抵抗
値は101 〜104 Ω・m程度である。ただし、TiO
2 を塗布したものは、他のものと比べ高い抵抗値となっ
ている。
り、抵抗を測定することにより求めた値である。実施例
1〜実施例18の抵抗値は、いずれも1×108 Ω・m
以上の値である。また、表7において、比較例1〜比較
例6は、それぞれLiCO3を除いた単独添加の場合の
1000℃×5時間の処理で得られた結果である。比較
例7は、全く塗布しなかった場合の結果であるが、抵抗
値は101 〜104 Ω・m程度である。ただし、TiO
2 を塗布したものは、他のものと比べ高い抵抗値となっ
ている。
【0026】
【表7】
【0027】実施例2、実施例5、実施例8、実施例1
1、実施例14および実施例17の試料について、SI
MSにより高電気抵抗表面層を調べた結果、フェライト
磁性材料中にLiと共にTi、Cr、Co、Ni、C
u、Znがそれぞれ濃化していることが分った。また、
焼成時間を長く、焼成温度を高くすると濃化層の厚さは
増加する。
1、実施例14および実施例17の試料について、SI
MSにより高電気抵抗表面層を調べた結果、フェライト
磁性材料中にLiと共にTi、Cr、Co、Ni、C
u、Znがそれぞれ濃化していることが分った。また、
焼成時間を長く、焼成温度を高くすると濃化層の厚さは
増加する。
【0028】TiO2 とLiCO3 で処理を行った実施
例2では、濃化層の厚さは、600℃×7時間の場合は
50μmであり、1000℃×2時間の場合は0.1m
m、1000℃×5時間の場合は0.3mmとなり、ま
た1200℃×1時間の場合は1.5mmであった。C
r2 OとLiCO3 の実施例5、NiOとLiCO3 の
実施例11、CuOとLiCO3 の実施例14およびZ
nOとLiCO3 の実施例17もほぼ同じであった。ま
た、CuOとLiCO3 で処理を行った実施例8での濃
化層の厚さは、600℃×7時間の場合は200μmで
あり、1000℃×2時間の場合は0.8mm、100
0℃×5時間の場合は2.2mmとなり、また1200
℃×1時間の場合は3.2mmであった。
例2では、濃化層の厚さは、600℃×7時間の場合は
50μmであり、1000℃×2時間の場合は0.1m
m、1000℃×5時間の場合は0.3mmとなり、ま
た1200℃×1時間の場合は1.5mmであった。C
r2 OとLiCO3 の実施例5、NiOとLiCO3 の
実施例11、CuOとLiCO3 の実施例14およびZ
nOとLiCO3 の実施例17もほぼ同じであった。ま
た、CuOとLiCO3 で処理を行った実施例8での濃
化層の厚さは、600℃×7時間の場合は200μmで
あり、1000℃×2時間の場合は0.8mm、100
0℃×5時間の場合は2.2mmとなり、また1200
℃×1時間の場合は3.2mmであった。
【0031】
【発明の効果】本発明の高電気抵抗表面層を有するMn
−Znフェライトを使用すると、直巻線が可能となりボ
ビンが不要となるためトランスの小型化に貢献する。ま
た、Ni−ZnフェライトなどのMn−Znフェライト
への置き換えが可能となるため、偏向ヨークコアなどで
のMn−Znフェライトの使用が可能となる。
−Znフェライトを使用すると、直巻線が可能となりボ
ビンが不要となるためトランスの小型化に貢献する。ま
た、Ni−ZnフェライトなどのMn−Znフェライト
への置き換えが可能となるため、偏向ヨークコアなどで
のMn−Znフェライトの使用が可能となる。
Claims (2)
- 【請求項1】主成分が、MnO 20〜50mol %、Z
nO 5〜40mol %、残部Fe2O3 からなる組成の
Mn−Znフェライト磁性材料の全表面またはその一部
に、LiとTi、Cr、Co、Ni、Cu、Znのうち
一種または二種以上がフェライト磁性材料中に濃化した
高電気抵抗表面層を有することを特徴とするMn−Zn
フェライト磁性材料。 - 【請求項2】主成分として、MnO 20〜50mol
%、ZnO 5〜40mol %、残部Fe2 O3 からなる
組成のMn−Znフェライト磁性材料の全表面またはそ
の一部に、Liの化合物とTi、Cr、Co、Ni、C
u、Znの化合物のうち一種または二種以上とを同時に
塗布するか、あるいはその混合粉末の中にMn−Znフ
ェライト磁性材料を埋め、600℃から1400℃の温
度範囲で熱処理することにより、LiとTi、Cr、C
o、Ni、Cu、Znのうち一種または二種以上がフェ
ライト磁性材料中に濃化した高電気抵抗表面層を有する
Mn−Znフェライト磁性材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11298693A JP3242748B2 (ja) | 1993-05-14 | 1993-05-14 | 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11298693A JP3242748B2 (ja) | 1993-05-14 | 1993-05-14 | 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06325922A true JPH06325922A (ja) | 1994-11-25 |
JP3242748B2 JP3242748B2 (ja) | 2001-12-25 |
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ID=14600557
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11298693A Expired - Fee Related JP3242748B2 (ja) | 1993-05-14 | 1993-05-14 | 高電気抵抗表面層を有するMn−Znフェライト磁性材料およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3242748B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0859397A2 (en) * | 1997-02-17 | 1998-08-19 | Victor Company Of Japan Limited | Deflection yoke and yoke core used for the deflection yoke |
WO2022110626A1 (zh) * | 2020-11-30 | 2022-06-02 | 横店集团东磁股份有限公司 | 一种电磁吸收与屏蔽的铁氧体材料、电磁波吸收体及其制备方法 |
-
1993
- 1993-05-14 JP JP11298693A patent/JP3242748B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0859397A2 (en) * | 1997-02-17 | 1998-08-19 | Victor Company Of Japan Limited | Deflection yoke and yoke core used for the deflection yoke |
EP0859397A3 (en) * | 1997-02-17 | 1998-11-25 | Victor Company Of Japan Limited | Deflection yoke and yoke core used for the deflection yoke |
WO2022110626A1 (zh) * | 2020-11-30 | 2022-06-02 | 横店集团东磁股份有限公司 | 一种电磁吸收与屏蔽的铁氧体材料、电磁波吸收体及其制备方法 |
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JP3242748B2 (ja) | 2001-12-25 |
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