JPH0630766A - 弱毒化された安全性の高い赤痢生ワクチン - Google Patents

弱毒化された安全性の高い赤痢生ワクチン

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JPH0630766A
JPH0630766A JP4210772A JP21077292A JPH0630766A JP H0630766 A JPH0630766 A JP H0630766A JP 4210772 A JP4210772 A JP 4210772A JP 21077292 A JP21077292 A JP 21077292A JP H0630766 A JPH0630766 A JP H0630766A
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JP
Japan
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shigella
virk
strain
gene
thya
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JP4210772A
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English (en)
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Masanosuke Yoshikawa
昌之介 吉川
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Research Development Corp of Japan
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/30Against vector-borne diseases, e.g. mosquito-borne, fly-borne, tick-borne or waterborne diseases whose impact is exacerbated by climate change

Abstract

(57)【要約】 【目的】 赤痢菌において、virK遺伝子を変異また
は欠失させた赤痢ワクチン株、thyA遺伝子を変異ま
たは欠失させた赤痢ワクチン株、virKおよびthy
Aの量遺伝子を変異または欠失させた赤痢ワクチン株を
得るものである。 【構成】 virK、thyA遺伝子を変異、欠失させ
た赤痢ワクチン株および赤痢ワクチン。 【効果】 安全性が高い弱毒赤痢ワクチンが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は安全性の高い弱毒化され
た赤痢菌生ワクチンを製造するための赤痢ワクチン株に
関する。さらに詳しくは本発明は赤痢菌のO抗原は野生
型のままに保持されているが、病原性を弱毒化させるた
めにその発現に必要な遺伝子VirKを変異させたもの、ま
たはさらに安全性を高めるために栄養要求性遺伝子thyA
をも変異させた赤痢生ワクチン株に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤痢などの細菌性下痢症は、公衆衛生状
態の悪い開発途上国などにおいては特に深刻な感染症で
あり、我が国において伝染病予防法による法定伝染病に
指定されているように伝染性と致命率の極めて高い感染
症である。公衆衛生の向上に伴って先進国における赤痢
の罹患率は減少しているものの最近では輸入感染症とし
て再び重要性が増している。今後は人および物の世界レ
ベルでの交流が一層盛んになることが予想されており、
安全で有効な赤痢ワクチンの開発が強く望まれている。
【0003】細菌性赤痢の感染防御抗原として赤痢菌
(Shigella dysenteriae, S. flexneri, S. boydii, S.
sonneiEIECを含む) の種に特的な菌体抗原(リポ多
糖体、O抗原)が知られている。死菌赤痢菌を用いたワ
クチンが多く開発されてきたが、このような死菌ワクチ
ンで誘導される抗O抗体の力価は低いために満足な感染
防御効果は得られていない。このことは、赤痢の感染防
御には生体の細胞性免疫の関与が必要であることを示唆
するものであった。そこで、赤痢菌のO抗原遺伝子で形
質転換した大腸菌や病原性が弱毒化されたチフス菌によ
る生菌ワクチンが開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、依然と
して感染防御効果や安全性(下痢)の観点から、その効
果は満足されるものではなかった。赤痢菌はヒトならび
にサルにおいて細菌性赤痢をおこす。赤痢発症に至る必
須の初期段階は結腸上皮細胞への侵入性(LaBrecet a
l.,1964)で、次いで細胞内における菌の増殖と侵入した
菌が隣接細胞に拡散する。即ち、赤痢菌は結腸上皮細胞
に侵入して増殖し(1次侵入)、増殖した赤痢菌は細胞
間伝播により隣接する上皮細胞に再侵入(2次侵入)し
て、そこで再び増殖する。このような増殖と侵入とが繰
り返されるために大腸上皮細胞は破壊され、赤痢病変を
おこすことが知られている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者はこのような赤
痢菌の赤痢惹起因子が巨大プラスミド(230キロベー
ス)並びに染色体上に多数存在することを明らかにし
た。詳細な遺伝子の解析の結果、図1に示したように赤
痢菌の病原性またはその発現と調節に関与する多数の遺
伝子または領域を同定した。この内で、virGと命名
した遺伝子は赤痢菌の2次侵入をつかさどることを明ら
かにした。即ち、virG遺伝子が変異すると結腸上皮
細胞のモデルとして用いた培養細胞(MK2細胞)への
1次侵入は起こるものの2次侵入は不可能であった。
【0006】また、赤痢の動物モデルであるモルモット
の眼ヘの感染(Sereny試験)が起こらなかった。すなわ
ち、virG変異菌は赤痢を起こさないものと考えられ
る。virG遺伝子は116kDの免疫原性のある、外
膜表面に露出した外膜蛋白をコードしており、細胞内に
ある菌が細胞質内および隣接する細胞に拡散する能力に
必須である。virG蛋白を発現している菌は感染した
上皮細胞の細胞質内にある菌体の周りにF−アクチン
(filamentous actin )の極性沈着をひきおこす性質を
もっている。
【0007】従って、virG蛋白質の発現に関与し菌
の2次侵入が減弱したようなvirG遺伝子に変異がお
こり、virG蛋白が産生されなくなると赤痢菌は1次
細胞侵入性は示すが、2次細胞侵入性は起こさなくなる
ので、赤痢菌の拡散は限定され、免疫状態を惹起するこ
とはできるが、下痢を惹起することはできないと考えら
れる。即ち、virG変異菌は赤痢弱毒ワクチンになる
と考えた。そこで、トランスポソンTn10挿入変異法
(以下、Tn10という)によってこのような変異菌を
検索したところ、virKと命名した遺伝子がvirG
蛋白質の発現を調節する遺伝子であることが明らかとな
った。
【0008】即ち、Tn10を用いてYSH6000T
株(この菌株については後記する実験方法を参照)の挿
入変異株の採取を試みた結果、同定された領域の一つは
巨大プラスミド上にその存在が位置づけられた。この新
しいビルレンス関連領域は本発明者によりvirKと命
名されたが、その分子生物学的ならびに機能的性質決定
を行った結果、virG蛋白の発現を転写後のレベルで
正調節し、完全に発現させることに関与することによ
り、結果として菌が隣接上皮細胞に拡散するのに関与し
ていることが解明された。
【0009】従って、赤痢菌の2次侵入をつかさどるv
irG遺伝子を調節しているvirK遺伝子を変異また
は欠失させることにより、virG遺伝子の発現に基づ
く赤痢病変は抑制または消失した。そのような赤痢菌株
を用いて作製された赤痢ワクチンは極めて安全であると
推定した。そして、virK遺伝子の塩基配列を決定
し、それが36.7kDの蛋白をコードしていることを
見出し、そのvirK遺伝子を変異または欠失させるこ
とにより本発明を完成した。
【0010】更に又、本発明者は赤痢菌の染色体上にも
多数の病原性因子を同定した。図1にその詳細を示し
た。この内でthyA遺伝子の変異(巨大プラスミドは
正常)はMK2細胞への侵入は正常に起こるが、隣接細
胞への拡散はおきにくい。thyAはチミンの生合成に
係わる遺伝子であることからこの変異は菌の生体内での
増殖が減弱した結果の現象であろう。このthyA変異
菌はスムース型のコロニー形状を示しリポ多糖(LP
S)の長さも親株と同程度であった。すなわち、感染防
御に必須であるO抗原は維持されている。
【0011】従って、thyA遺伝子を変異または欠失
させた赤痢菌、thyA変異菌は赤痢菌の結腸上皮細胞
への侵入とそこでの増殖が減弱することになり、また感
染防御に必須である菌体O抗原は維持されているため、
弱毒化された赤痢菌である。したがって、このような性
質を有する赤痢菌からなる赤痢ワクチン株は安全性の高
い赤痢ワクチンを製造するために極めて有用である。こ
のように、赤痢菌の染色体中に存在するthyA遺伝子
を同定し、その作用を見出し、それを変異または欠失さ
せた赤痢菌を得ることにより本発明を更に完成させた。
【0012】本発明者は、また更に、前記したvirK
とthyA遺伝子に関する知見に基づいて、より安全で
有効な赤痢ワクチンを調製するための赤痢ワクチン株を
得るために赤痢菌のvirKとthyAとの2重変異株
を作出することに成功し、本発明を完成した。この場合
ワクチン株の野生型への復帰(すなわち、強毒菌への復
帰)をなくするためにvirKとthyAとの両遺伝子
が欠失した変異株を作出した。サルにこのワクチン株を
投与した後に赤痢強毒菌で攻撃した結果、このワクチン
株を投与した群は非投与群に比して赤痢の臨床症状が軽
減されたことが見出され、本2重変異株の有用性が確認
された。
【0013】以上述べたとおり、本発明は赤痢菌におい
て、virK遺伝子を変異または欠失させた赤痢ワクチ
ン株、thyA遺伝子を変更または欠失させた赤痢ワク
チン株、virKおよびthyAの両遺伝子を変更また
は欠失させた赤痢ワクチン株を包含し、これらを提供す
ることを目的とする。また、本発明はこれらの遺伝子が
変異または欠失した赤痢菌からなる赤痢ワクチン株より
製造された赤痢ワクチンを包含し、それを提供すること
を目的とする。更にまた本発明は、上記した赤痢ワクチ
ン株を用いて赤痢ワクチンを製造する方法を包含し、提
供することを目的とする。更に、本発明は請求項4に記
載したvirK遺伝子を包含し、提供することを目的と
する。
【0014】本発明においては、赤痢菌(野生型赤痢
菌)のvirKおよび/またはthyA遺伝子を変異ま
たは欠失させた菌株が調製される。遺伝子の変異または
欠失は、通常の方法、遺伝子工学的手法により行うこと
が効率的であるが、その他の古典的な変異方法も応用可
能である。変異または欠失方法(以下、遺伝子の一部変
化および欠失を含めて変異ということがある)は、挿入
変異による方法が一般的である。特に抗生物質耐性トラ
ンスポゾン、例えば本発明者によるテトラサイクリン耐
性トランスポゾン(Tn)挿入変異法が、特にTn10
挿入変異法が本発明においては好ましい結果を与える。
【0015】virKおよびthyA遺伝子の特性を考
慮したとき、両方の遺伝子が変異している赤痢菌株いわ
ゆるvirK、thyA2重変異菌株、特に強毒菌株へ
の復帰をなくするために、virK、thyA両遺伝子
欠損株が本発明において特に好ましい。このようにして
得られたvirK、thyA遺伝子欠損株から、通常の
赤痢ワクチンを製造する方法により、本発明の安全性の
高い弱毒化された赤痢生ワクチンが製造される。使用さ
れる赤痢菌はワクチン製造の目的に応じて選択され、そ
れは通常の赤痢菌、例えばShigella boydii 、Shigella
dysenteriae、Shigella flexneri またはShigella son
nei 等である。
【0016】以下に、本発明の赤痢菌病原性喪失変異株
の作成、病原性発現に関連する遺伝子virKの配列決
定等について説明する。赤痢菌体巨大プラスミドへのT
n10挿入法によるS. flexneri 2a YSH6000T株の病原
性喪失変異株の分離複製が温度感受性になったプラスミ
ドR388株の変異体、pCHR71(このプラスミド
については実験方法を参照のこと)の上にTn10が挿
入したものを使用してYSH6000T株のTn10挿
入変異株を遺伝的に独立に2000株分離し、単層組織
培養においてfocus/プラーク形態能(Fp−te
st)(この方法については実施例を参照)を使ってス
クリーニングする。
【0017】このようにして22株のビルレンス喪失変
異株を得、それら変異株においてTn10がどこに挿入
しているかを決定した。11株は巨大プラスミド、pM
YSH6000、上にTn10をもち、残り11株は染
色体上に持っていた。プラスミドpMYSH6000上
にTn10をもつ11株につきAからTまで名前をつけ
た23個のSal I断片のどの上にあるかを決定した。
その結果、11株中3株において7.8kbのSal I
断片Kに挿入されていることが判明した。本発明者は断
片KにTn10が挿入されている3株の変異株、V83
6、V956およびV1060の性質を更に調べた。
【0018】pMYSH6000のSal I断片Kにあ
る病原性関連DNA領域の性質決定V836、V956
およびV1060の3株に病原性が喪失したという表現
型がTn10の挿入に関連しているかを確認するためP
1フアージによってYSH6000T株に形質導入を行
い、テトラサイクリン耐性(Tc−r)選択により導入
体を得た。これら3株の変異株から得られたTc−rの
形質導入体はFp−testにおいて元の3株のTn1
0挿入変異株と同じ表現型を示した。即ち、いずれもf
ocusを形成し、プラークは作らなかった。このこと
から、これら変異株は細胞侵入性は示す(Inv+)が
細胞間伝播は起こせないことが示された。
【0019】次いで、この病原性表現型に関与するDN
A配列が7.8kbのSal I断片K上にコードされて
いることを確認するために、それぞれSal I断片K、
O−KまたはK−Qをもつ3株のpBR322誘導体
(図2)を各Tn10挿入変異体に導入し、Fp−te
stによりこれらの導入体の病原性表現型が回復するか
どうかを調べた。その結果、これら3種のpBR322
誘導体はすべて3株のTn10挿入変異体にプラークを
形成する能力を付与すること、すなわち、この病原性表
現型に関連するDNA配列はSal I−K断片上にある
ことが分かった。
【0020】V836、V956およびV1060にお
けるTn10挿入位置を正確に決定した(下記実施例参
照)。図2に示すように、3株のTn10挿入はSal
I−KのSal I−0側の末端近くにある1.0kbS
al I−EcoRI断片内に位置づけられた。次いで、
病原性関連DNA配列を位置づけるためSal I−Kの
種々の制限酵素によってできるDNA断片をpBR32
2にクローン化し、3株のTn10挿入変異体に病原性
を回復させる能力があるかどうかを調べた結果、Sal
I−K断片の左端から1.4kbDNA断片(図2)が
これら変異体に病原性を回復させるには必要であること
が示された。この病原性関連領域をvirKと命名し
た。
【0021】virK変異体の細胞内表現型について 上述のように、3株のTn10挿入変異体、V836、
V956およびV1060の病原性関連表現型は、とも
にInv+で、Fp−testでプラーク形成能が陰
性、フオーカス形成能は陽性である点で、いずれもvi
rG変異体M94(virG:Tn5)と同じクラスに
属する。virK変異体の細胞内の挙動を明らかにする
ため細胞内伝播および細胞間伝播をする能力の有無を調
べた。菌を感染させてから1時間までは細胞侵入したV
956とM94の両株は病原性を有するYSH6000
T原株と本質的に変わりが見られない。3時間後、YS
H6000T原株は細胞質内で自由にかつ活発に運動
し、隣接する上皮細胞に再感染した(図3A参照)。
【0022】それに対し、細胞侵入したV956とM9
4の両株においては当初は正常の増殖を示したが、細胞
質内で局在化した。3時間後、みたところV956株は
M94株よりも有意に強く細胞内伝播をおこした。MK
2細胞の細胞質部分はV956株では大部分菌で一杯に
なったが、M94株ではならなかった(図3Bおよび図
3C参照)。それでもなお、大部分のV956菌は細胞
から細胞に拡散することはできなかった(図3B参
照)。菌の感染8時間後になると細胞内にいるV956
株の菌体はM94株と同様に球形に変化した。Fp−t
estにおいてもV956とM94の差異は明白である
(図4A参照)。V956株の感染72時間後(図4B
参照)ではフオーカスの大きさは常にM94株より大き
かった(図4C参照)。
【0023】さらに細胞内の挙動を解明するためにV9
56、M94およびYSH6000T株が細胞内に侵入
したときのF−アクチンの極性沈着を形成する能力、す
なわちvirG蛋白によって媒介されることが知られて
いる特徴的な性質で、菌が細胞内および細胞間伝播をす
るのに必須の性質について調べた(図5A及びB、図6
C及びD、図7E及びF参照)。その結果、virG陰
性変異体はフアロイジンにより染色されなかった(図7
F参照)。V956株の場合は菌を取り囲んで少しはF
アクチンの沈着が見られたが(図6D参照)、その程度
は原株YSH6000Tで見られた沈着に比較して明ら
かに軽度であった(図5B参照)。
【0024】Tn10挿入変異体における116kDの
virG蛋白の発現 上述の結果よりV956変異株においてvirG産物が
十分に発現しているかどうか疑問である。それ故、V8
36、V956およびV1060変異体において発現し
ているvirG蛋白量を原株YSH6000Tおよびv
irG陰性変異体(M94)におけるvirG蛋白量と
比較した。Tn10挿入変異体および原株の全菌体溶解
液についてvirG特異抗血清、VRG−Cを用いた免
疫ブロツト法で検出されるvirG蛋白量を測定した。
図8に示すように3株のTn10変異体が発現している
virG蛋白量は原株YSH6000Tに比較して明ら
かに減量はしていたが、完全に発現できなくなっている
訳けではない。
【0025】これらのTn10挿入変異体におけるvi
rG蛋白量の低下がvirG遺伝子の転写の低下のため
であるか否かを検討するため、virG遺伝子配列内の
1.4kbEcoRI−HindIII を32Pラベルし
たものをプローブとして用いたノザンドットブロット法
を行った。その結果、3株のTn10変異体、V83
6、V956およびV1060は原株YSH6000T
と本質的には変わりのないvirGmRNA量を発現し
ていた(図9参照)。従って、virK領域はvirG
遺伝子の転写に何も影響を与えていなことが確認され
た。
【0026】virK領域の産物の解析と塩基配列 3株のTn10挿入変異体において病原性が喪失した表
現型の原因となる遺伝子領域を解明するため、Sal I
−K断片内の1642bpからなるSal I−SphI
断片の塩基配列を決定した(配列番号:1参照)。塩基
3から塩基366まで(ORF−1)と塩基373から
塩基1321まで(ORF−2)の2個のORF(翻訳
枠)が見つかった。各ORFの5’端はSphI断端
(図2参照)の方を向いていた。ORF−2がコードす
る318個の推定アミノ酸配列から36.7kDの蛋白
ができるはずであるが、この数字は後述のSDS−ポリ
アクリルアミド ゲル電気泳動法(SDS−PAGE)
(図10参照)に示される36kDという見掛け上の分
子量に近い。
【0027】他方、病原性変化を伴わないTn5挿入変
異体のうち一番左のS62がORF−1の5’端から塩
基297のところでORF−1を分断していることから
判断して、ORF−2のすぐ上流に位置するORF−1
は病原性に関係ない。さらにORF−2内で、塩基44
3、塩基634および塩基949の位置にある3箇所の
SmaIサイトにリンカーを挿入して作製した3株の変
異体は3株のTn10変異体、V836、V956およ
びV1060の何れにおいてもFp−testで病原性
表現型を回復させることができた。GenBankとE
MBLの塩基配列データベースで検索の結果有意の相同
性を示すものはなかった。
【0028】ORF−2から翻訳される蛋白産物を同定
するため、virK遺伝子を含む1.6kbのSal I
−SphI断片内にある1379bpからなるBal I
断片の(配列番号:1参照)をT7 RNAポリメラー
ゼ依存プロモータphi10の下流に両方向に位置づけ
たものを作成し、発現されたポリペプチドをSDS−P
AGEにより解析した(図10参照)。1379bpか
らなるBal I断片の、図2で転写が右から左に起こっ
ている方向(方向Iとよぶ)から36、19、11およ
び9kDの少なくとも4ポリペプチドが発現していた
が、逆の方向IIではペプチドが発現していなかった。こ
れらの結果とvirK遺伝子の塩基配列やvirK領域
の相補性試験の結果とを総合して判断すると36kD蛋
白がvirK機能に関与することになる。
【0029】virK遺伝子の塩基配列は全ての赤痢菌
および腸管組織侵入性大腸菌の巨大プラスミド上に保存
されている。YSH6000T株のSal I−K断片内
にある1.6kbのSal I−SphI断片を32Pで
ラベルしたプローブとして用い、S. dysenteriae10
株、S.flexneri14株、S. bodyii 9株、S. sonnei 4
株および腸管組織侵入性大腸菌9株から分離したプラス
ミドDNAについてDNAドット ハイブリダイゼーシ
ョンを行った。
【0030】その結果、すべてのプラスミドがDNAプ
ローブに対して陽性反応を示した。赤痢菌の各血清群お
よび腸管組織侵入性大腸菌から2株づつ代表株を選び、
それらについてプラスミドDNAをSal Iで消化し、
0.7%アガロースゲルで電気泳動し、virK遺伝子
内の0.3kbのEcoRV−HindIII 断片を32
Pでラベルしたものを用いてハイブリダイゼーションを
行った。Sal I断片の大きさは赤痢菌の各血清群およ
び腸管組織侵入性大腸菌で異なっていたが、virKの
ホモログが検査した全てのプラスミドに保存れていた。
【0031】本発明者は上記した本発明において、Tn
10挿入法を用いてS. flexneri 2a YSH6000
株の巨大プラスミド、pMYSH6000上のSal I
断片Kに新しい病原性関連領域(virK)を同定し
た。virKの位置はvirG遺伝子の5’末端からお
よそ50kbと決定した(図2)。Tn10の挿入によ
って得られた3株の病原性喪失変異体、V836、V9
56およびV1060においてはTn10の挿入はSa
l I−K断片に起こっていた。Tn10の挿入部位の位
置づけ(図2)およびvirK領域の塩基配列の決定
(配列番号:1)によって、問題の遺伝因子はSal I
−O断片に隣接するSal I−K断片の1.0kb配列
内にあることが判明した。
【0032】病原性喪失変異体V956株を感染したM
K2細胞をギームザ染色すると菌は細胞質の全体を占め
ていた(図3B)が、virG変異体M94株は細胞質
のごく一部を占めるだけであった(図3C)。V956
株はみたところ細胞内運動はできるが、細胞間の伝播は
原株に比較して非常に減弱している(図3A)。M94
株、M956株および病原性YSH6000T原株の間
の侵入した細菌の挙動の違いを分子レベルで明らかにす
るためフアロイジンと抗LPS抗体による染色を行っ
た。その結果、得られたデータは侵入した細菌の挙動の
違いが侵入菌の周りと一極に沈着するF−アクチンの沈
着程度(図5AとB)および菌が発現しているvirG
蛋白の量(図8)に一致していた。したがって、V95
6株の細胞内挙動はvirGの発現レベルが低いことに
あり、その結果として侵入した菌は細胞内で運動できる
が細胞間ではできないことになる。
【0033】virG遺伝子の完全な発現のための分子
機構はまだ明確ではないが、virK蛋白は116kD
virG蛋白の発現に関与することにより細胞に侵入し
た菌が隣接上皮細胞に伝播するのに必要となる。事実、
3株のTn10挿入変異体ではvirG特異抗体VRG
−Cによる免疫ブロツトにより測定したvirGの量
は、原株に比較して低レベルである(図8参照)。しか
しこれら3変異体においてvirGmRNAの量はYS
H6000T原株と同じレベルである(図7)。従っ
て、virK蛋白はvirG遺伝子の形質発現に転写後
のレベルで作用すると結論される。
【0034】virK領域の塩基配列からみて単一のO
RF(翻訳枠)の存在が示された(配列番号:1)。こ
れはT7RNAポリメラーゼプロモータ依存性の遺伝子
発現系で見られた36kDの蛋白(図10)をコードす
るのには十分の大きさである。塩基配列から推定したv
irK蛋白のアミノ酸配列の親水性プロフイルによれば
virK蛋白はわずかに親水性であつて、N末端に典型
的なシグナルペプチドはもつていない。このようにvi
rK蛋白はvirG蛋白量を増加させるのに関与する細
胞質性のポリペウチドである。従って、virK遺伝子
を変異させることにより病原性発現に関与するvirG
遺伝子の発現を抑制または無くすることができ、そのよ
うな性質を有する赤痢菌は、菌の細胞侵入後の増殖と2
次細胞侵入性に関連するthyA遺伝子をも変異させる
ことにより、安全性に優れた弱毒性赤痢生ワクチンを製
造するために有効である。
【0035】本発明における理解を更に助けるために以
下に図面についての説明を加える。図1はプラスミドお
よび染色体上の病原性因子関連遺伝子領域を示す。図2
はvirKのマッピングであり、白ぬき横棒線の上にあ
る黒ぬり部分は巨大プラスミド、pMYSH6000上
のビルレンス関連遺伝領域を示し、白ぬき横棒線はpM
YSH6000のSal I制限酵素地図である。白ぬき
丸印と黒ぬり丸印はそれぞれTn10とTn5の挿入位
置を示す。中段の太い横棒線は、pMYSH6000の
Sal I−K断片の物理的地図である。
【0036】また、下半分にある9本の横棒線は、Sa
l I−K断片に由来し、クローン化したDNA断片を示
す。左側に示した「+」と「−」はFp−testによ
って3株のTn10挿入変異体とクローン化された各断
片との間で相補性があるかどうかを調べた結果を示す。
省略印の説明は以下のとおりである。 B;BamHI Bg;Bgl II E;EcoRI Ev;EcRV H;HindIII N;NcoI S;Sal I Sp;SphI
【0037】図3はS.flexneri YSH60
00由来の3菌株を接種後3時間におけるMK2細胞の
光学顕微鏡写真であり、試料はメタノールで固定しギー
ザム液で染色した。図3におけるAは原株YSH600
0T、BはV956(vir::Tn10)、CはM9
4(virG::Tn5)である。図4は菌接種後72
時間におけるMK2細胞のフオーカス−プラーク形成
(Fp−test)の位相差顕微鏡写真であり、AはY
SH6000T、BはV956、CはM94で倍率はそ
れぞれ×40である。
【0038】図5、図6および図7はMK2細胞におけ
るF−アクチンと菌とのかかわりであり、図5のA、図
6のBおよび図7のEは、抗S.flexneri 2
aLPSウサギ血清と蛍光ラベルした抗ウサギIgGヤ
ギ血清を用いて免疫蛍光体法を行うことにより菌を可視
化した。また、図5のB、図6のDおよび図7のEはF
−アクチンをフアロイジンによりラベルした。図5にお
けるA、BはYSH6000T、図6におけるCおよび
(D)はV956、図7におけるE、FはM94であ
る。
【0039】図8はvirG蛋白の免疫ブロツト法によ
る解析であり、virG特異抗血清で免疫ブロツト法を
行うため全菌体溶液を用いた(実験方法を参照)。レー
ン1;V836、2;V956、3;V1060、4;
M94、5;YSH6000T、116kD virG
蛋白は矢印で示した。図9はvirGmRNAの産生量
であり、全RNAを抽出し、種々の量をブロツトし、3
2PでラベルしたvirG遺伝子の1.4kbEcoR
V−HindIII 断片によりハイブリダイゼーションを
行った。レーン1;V836、レーン2;V956、レ
ーン3;V1060、レーン4;M94、レーン5;Y
SH6000Tである。
【0040】図10はT7RNAポリメラーゼ依存性プ
ロモータ系によりvirK領域から発現した蛋白産物で
あり、レーン1;Bal I断片を方向Iに連結した、レ
ーン2;Bal 断片を方向IIに連結した、レーン3;ベ
クターに何も挿入しなかった。矢印は36kDのvir
K蛋白を示す。
【0041】
【実施例】以下に、本発明の実施例を挙げて本発明を説
明するが、本発明はこれらに限定するものはない。 実施例1 菌株とプラスミド S.flexneri 2a YSH6000株(以下
に記す薬剤すべてに耐性)はサル糞便由来株で、YSH
6000T株はYSH6000株に由来する(特別の変
異処理をすることなく)自然に発生したテトラサイクリ
ン(Tc)、クロラムフェニコール、アンピシリンおよ
びストレプトマイシン感受性誘導体である。V836、
V956およびV1060株はvirK遺伝子にTn1
0を挿入させて作製したYSH6000T株の病原性喪
失変異体である。M94株はvirG遺伝子にTn5を
挿入させて作製したYSH6000株の病原性喪失変異
体である。プラスミドpBR322は230kbプラス
ミド、pMYSH6000のDNA断片をクローニング
するのに常にベクターとして用いた。
【0042】挿入変異法 pCHR71::Tn10は30℃でトリメトプリム
(Tp)耐性によって選択することによりYSH600
0T株に接合により導入した。10mcg/mlのチミ
ンを加えたLN寒天平板にTc耐性で、かつTp耐性に
なった接合体のコロニーが30℃で平板あたり約200
0個生ずるように塗布した。これらのコロニー1個1個
を別々にTcを12.5mcg/ml、チミンを10m
cg/ml含有したLNブロスに30℃で培養し、Tc
含有寒天に塗布し、次いで42℃で培養した。その後、
一平板あたり1個のTc耐性で、かつTp耐性のコロニ
ーを分離し、同じ選択平板で再度純化した後50%グリ
セロール加LNブロスに浮遊して−70℃で保存した。
【0043】病原性表現型の検査 アカゲザル上皮細胞(MK2)への細胞侵入性は既に報
告した方法によった(Infect.Immun.5
4:32−36(1986))。フオーカス−プラーク
形成試験(Fp−test)はもともと組織培養細胞プ
ラーク形成法を改良したものである。MK2細胞は96
穴マイクロタイタープレート(Nunc)に37℃にお
いて、5%CO2 を含む加湿環境下に融合状(conf
luent)になるまで培養した。各穴の培養液をMK
2細胞単層から取り除き、5mMのグルタミンミンと5
%のウシ胎児血清を加えた新鮮な、抗生物質を含まない
イーグルMEM(日水製薬)培養液250mcl に入れ
替えた。37℃で増殖させた菌は生理食塩水でおよそ5
×108 /mlの濃度になるまで希釈した。
【0044】この菌液を各穴に50mcl ずつ加えた
後、このマイクロタイタープレートを5%CO2 存在下
に37℃において2時間保温した。各穴をHanksバ
ランス塩溶液で2度洗い、100mcg/mlのゲンタミ
シンを含むイーグル培養液300mclを加え、5%C
2 存在下に37℃にオイテさらに1時間保温した。培
養液を変えた後、マイクロタイタープレートを5%CO
2 存在下に37℃において72時間保温した。各菌株に
ついてプラーク形成能とフオーカス形成能は低倍率下に
24時間毎に観察した。
【0045】細胞内増殖および感染上皮細胞の割合は
〔J.Bacteriol.,171:353−359
(1989)〕による記載の通りに行った。菌の細胞内
伝播の検出とFアクチンの沈着はClercとSans
onetti(1987)〔Infct.Immun.
55:2681−2688)によって記載された方法〕
を少し修正して行った。Fアクチンはローダミンフアロ
イジン(Molecular probes In
c.)の5U/ml溶液でラベルし、細胞内の菌は抗フレ
キシナー2a赤痢菌ウサギ抗血清(デンカ生研)と、抗
ウサギ免疫グロブリンヤギ血清を用いて間接免疫蛍光抗
体法により染色した。
【0046】pMYSH6000株のSal I−K断片
内のTn5およびTn10の挿入位置の決定 pMYSH6000上のTn10の挿入位置はプラスミ
ドDNAをSal I/BamHIで消化したものについ
て以下の3種のDNAプローブのいずれかを用いてサザ
ンブロツト法を行い直接決定した。すなわち、Tn10
の2.7kbのBglII 断片、SalI断片K内の左のS
alI断片と一番左のEcoRIの間の1.0kbの断片
およびSal Iと一番左のEcoRIの間の1.0kb
の断片およびSal I断片K内の左のBamHIの間の
0.8kbの断片の3種である。
【0047】抗体作成と免疫ブロツト法 virG蛋白のC末端23アミノ酸残基に相当する10
80残基1102残基までのペプチド(VSQQLGN
NSYRDTQGGILGVKYTF)を合成し、それ
をベンチジンを用いてkeyhole Limpetへ
モシアニンの結合したものによつてウサギを免疫し、こ
のオリゴペプチドに特異的な抗血清(VRG−C)を作
った。SDS−PAGEから溶出した抗原に対する免疫
ブロツト法はMol.Microbiol.,3:62
7−635(1989)により行った。一本のレーンに
のせた全菌体溶解液試料は37°培養新鮮菌体3×10
9をSDS−サンプル緩衝液で溶解したものである。
【0048】Mol.Microbiol.,5:88
7−893(1991)によりRNAを分離しドツトブ
ロツト法を行った。RNAドツトハイブリダイゼーショ
ンに際しては32PラベルしたDNAドツトをAMBI
S放射能解析イメージングシステム(AMBIS)によ
り計測した。
【0049】T7プロモーターポリメラーゼ発現系 virK遺伝子をもつDNA断片をpPD1のような少
数コピー数T7発現ベクターを用いて、pPD1のSm
aIサイトにvirK遺伝子をコードしている1379
bpからなるBal I断片を両方向にクローン化した。
出来上がったpPD1誘導体はラムダブロアージ上にあ
る1acPOにより制御されるようにしたT7ポリメラ
ーゼ構造遺伝子をもったBL21株に導入した。菌はグ
ルコースを0.5%、チミンを10mcg/mlおよびメ
チオニンとシステインを除く18種のアミノ酸を各々
0.01%(重量/容量)を含有したM9培地で37°
で培養した。
【0050】菌培養がA600値で約0.3になったと
きイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを最
終濃度が1mMになるように加えてT7RNAポリメラ
ーゼ遺伝子の形質発現を誘導した。37℃にて30分後
リフアンピシンを最終濃度が400mcg/mlになるよ
うに加え、さらに37℃にて30分保温した。つぎに、
0.3ml分の菌液に10mcCiの(L−メチオニン
〔35S〕:L−システイン〔35S〕)(ICN R
adiochemicals)を加えて10分保温し
た。菌を集菌し、SDS2%(重量/容積)、β−メル
カプトエタノール1%(容積/容積)、Tris−HC
l60mMおよびグリセロール10%(重量/容積)を
含有した電気泳動サンプル緩衝液に溶解した。SDS−
PAGEによる蛋白の解析はMol.Microbio
l.,2:589−597(1988)の方法により行
った。
【0051】実施例2 virK、thyA変異株の作
出 前記で得られたvirK::Tn10 3株(V83
6、V956、V1060)の1つ、例えばV956よ
りMaloy&Nunnが開発した培地を多少改変した
ものを用いてテトラサイクリン感受性株を分離した。こ
れにより得られた菌株はTn10の脱落に伴ってvir
K遺伝子の欠失がおこったものであった。このようにし
て赤痢菌〔S.flexneri 2a YSH600
0T株(Mol.Microbiol、6巻、in p
ress(1922)、Nakata et a
l.)〕のvirK欠失変異株を作出した。
【0052】Tn10が野生型赤痢菌(S.flexn
eri 2a 2457T株)のthyA遺伝子に挿入
された(thyA::Tn10)CS2191−1株を
作出した。このCS2191−1株を供与菌、前記で作
出したYSH6000TvirK欠失変異株を受容菌と
してP1フアージによる形質導入を行った。得られたテ
トラサイクリン耐性導入株は供与菌のthyA::Tn
10と受容菌のthyA遺伝子との間で相同的な組替え
を起こし、受容菌がthyA- となったものである。本
thyA::Tn10、virK欠失変異株より、Ma
loy&Nunnの方法に準じて再びテトラサイクリン
感受性株を分離した。これによって、thyA、vir
Kの二重欠失変異株が作出された。
【0053】実施例3 virK、thyA変異株の赤
痢感染防御効果 virK、thyA2重欠失赤痢ワクチン株による安全
性ならびに有効性の予備的検査はカニクイザルをワクチ
ン投与群と対照群各5頭を用いて行った。ワクチン投与
菌数は一回あたり約4×1010で、1週間隔で合計3回
投与し、3回目投与4週後、強毒菌約4×1010を投与
した。ワクチン投与前24時間は絶食させ、麻酔して経
鼻カテーテルにより胃内に投与した。直腸採便によるワ
クチン株の検出はほぼ4日までみられた。
【0054】ワクチン投与群では麻酔を伴う投与操作を
合計4回行い、投与中1頭ずつ拘束飼育し、便中のワク
チン株排菌検査のため直腸採便するなどの不安状態にさ
せたため、ストレスが激しく、剖検時胃内出血や潰瘍が
みられた。それに対し、対照群は解放飼育し、麻酔を伴
う投与操作は1回のみで、直腸採便も行っていないため
ストレス性障害は発生しなかった。以上のようにワクチ
ン投与群の方が対照群よりも明らかに一般状態が不良に
なる条件下における実験結果であるが、ワクチン投与群
5頭中、強毒菌投与後2日における便性は3頭は臨床的
に正常(その内1頭はその後事故死し、剖検により胃潰
瘍を認め、腸には全く病的所見を認めなかった)、2頭
は臨床的に発症、うち1頭は4日目までに死亡した(剖
検によれば胃出血を認めた)。
【0055】対照群では5頭中、強毒投与後2日には全
例臨床的に発症し、うち2頭は4日目までに死亡した。
同じ発症例でも肉眼的観察によれば一般に便性は対照群
の方が悪かった。その結果は表1に示す。以上、前述の
実施例2で得た赤痢菌virK、thyA2重変異株を
ワクチン株としてサルに投与した後に強毒菌で攻撃した
結果、ワクチン株投与群は非投与群に比して赤痢の臨床
症状が軽減された。
【0056】
【表1】
【配列表】
【0057】配列番号:1 配列の長さ:1642 起源:サル糞便に由来 生物名:Shigella flexneri 2a 株名:YSH6000 配列 GCATGCATGA TGATGTTTTT ATTGCTGACA ATGTTTTTCC TGCCGCCCCC GTATATCGGG 60 TTGCCAGTCT GGTGGTTCTG CCTTCAGAAA ACGAATCGTT TGGTATGGTA CTGGCAGAAG 120 CATCGGCATT TTCTGTGCCT GTACTGGCCA GTCAGATTGG TGGAATCCCT GATGTTATTC 180 AGAATAACCA GACCGGGACA TTGTTACCAG CAGGTAATAA GCACGCATGG ATGTGCGCCC 240 TGAATGATTT TTTTAATGAC CCTGGGCGTT TTTATCAGAT GGCTCGCCAG GCAAAACAGG 300 ATATAGAAGA GCGGTTTGAT ATTAATAAAA CTGCGTTAAA AATACTCACA TTAGCGAAGC 360 ACAAGTAACA ATATGTTTTC TGTAAGTAAC TTATCATTT ATCGGTTTCC TTAAAAGGAT 419 M F S V S N L S F I G F L K R I 5 10 15 TGTTTTTTCC TCAGATTCAC TCCCGGGGAA GTGGGAACAC AGAAAATTCC GGTTCATG 477 V F S S D S L P G K W E H R K F R F M 20 25 30 35 TACATTTTGC GATGTGCTAT AAATCCGGTT GCCAGTATTC GATATTATTA CGAACTGCGT 537 Y I L R C A I N P V A S I R Y Y Y E L R 40 45 50 60 TCCTTGCAGT GCATTGAG GATATTCTGG CAATACAACC CACGTTGCCA GCAAGAATTC 595 S L Q C I E D I L A I Q P T L P A R L 65 70 75 ATCGACCTTA TTTGCATAAA GGGGGGCGAG CCTGGTCC CGGGGGCAAT ATATTCTTGA 653 H R P Y L H K G G R A W S R G Q Y I L E 80 85 90 95 GCATTATCGC TTTGTGCAAA ATTTGCCAGA AAAATATTCT GAATTTTTGT TTCCACAA 711 H Y R F V Q N L P E K Y S E F L F P Q 100 105 110 AAATCGGTAT CATTAGTCCA ATTCATCGGG AAAGATGGAG AGGATTTTGA TATCCAGTGT 771 K S V S L V Q F I G K D G E D F D I Q C 115 120 125 130 TCTCCCAGTG GTTTTGAC CGGGAAGGAG AGTTGATGTT GTCATTGTTT TTCAATAAAA 829 S P S G F D R E G E L M L S L F F N K 135 140 145 150 TAGTGATTGC CCGGTTAACA TTTTCAGTCA TTCTGACT CAAAATGGAC ACACCGCTTT 887 I V I A R L T F S V I L T Q N G H T A F 155 160 165 170 TATTGGCGGA TTACAGGGAG CCCCCAAAAA TACCGGACCT GATATTATTC GGTGCGCA 945 I G G L Q G A P K N T G P D I I R C A 175 180 185 190 ACCCGGGCCT GTTATGGGCT TTTCCCAAAA CGGATTATTT TTGAAGCATT TTGTGCGTTG 1005 T R A C Y G L F P K R I I F E A F C A L 195 200 205 210 ATGAAAGCTT GTAATGTC TCTGAGTGTC TGGCAGTCAG TGAGCACAGT CATGTTTTCC 1063 M K A C N V S E C L A V S E H S H V F 215 220 225 230 GGCAATTGAG ATACTGGTAT CAGAAACGCA AAACCTTT GTTGCTGTCT ACAGTGATTT 1121 R Q L R Y W Y Q K R K T F V A V Y S D F 235 240 245 250 CTGGGAGTCT GTAGCAGGGA AAACCTGTGG TGACTGGTAC AAATTACCAA CACAGGTG 1179 W E S V A G K T C G D W Y K L P T Q V 255 260 265 270 GTTCGAAAGC CGCTAAGCAA TATAGCTAGT AAAAAACGCT CTGAGTATCG AAAACGATAC 1239 V R K P L S N I A S K K R S E Y R K R Y 275 280 285 290 GCTTTGCTGG ATTATATC CATGAAACTG CTATCCGCTC TTTGGATGCA TATCCTGTAA 1297 A L L D Y I H E T A I R S L D A Y P V 295 300 305 ACTCAGAACA TCAGGACTTA AATTAAGGTT TGATGTATTC TCTGAATAAA ATATTAATGA 1357 N S E H Q D L N 310 315 TGATTTTGGT AGGGGCATTC GCACTAAATA ATGAAAAAAT ACAAATCCGA GTTTATTCCT 1417 GAATTTAAGA AAAATTATCT TTCCCCTGTT TACTGGTTTA CATGGTTCGT TTTGGGAATG 1477 ATTGCAGGTA TTTCAATGTT TCCCCCTTCA TTCAGAGATC CTGTCTTGGC CAAAATAGGG 1537 CGTTGGGTGG GCAGATTGAG CAGAAAAGCT CGTCGCAGGG CGACGATTAA TTTATCGCTT 1597 TGTTTCCCGG AAAAGAGTGA TACAGAACGG GAAATAATTG TCGAC 1642
【図面の簡単な説明】
【図1】virKおよびthyAのプラスミド及び染色
体上の位置を示すものである。
【図2】virKのマッピングである。
【図3】S.flexneriYSH6000由来の3
菌株を接種後3時間におけるMK2の光学顕微鏡写真で
ある。
【図4】菌接種後72時間におけるMK2細胞のFp−
testの位相差顕微鏡写真である。
【図5】MK2細胞におけるF−アクチンと菌とのかか
わりである。
【図6】MK2細胞におけるF−アクチンと菌とのかか
わりである。
【図7】MK2細胞におけるF−アクチンと菌とのかか
わりである。
【図8】virG蛋白の免疫ブロツト法による解析結果
である。
【図9】virGmRNAの産生量である。
【図10】virK領域から発現した蛋白である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 39/112 ADZ 9284−4C C12N 15/31 ZNA C12P 21/02 C 8214−4B //(C12N 1/21 C12R 1:01) (C12P 21/02 C12R 1:01)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 virKおよび/またはthyA遺伝子
    を変異または欠失させた赤痢菌。
  2. 【請求項2】 virKおよび/またはthyA遺伝子
    を変異または欠失させた赤痢ワクチン株。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の赤痢菌または赤痢ワ
    クチン株より製造された赤痢ワクチン。
  4. 【請求項4】 下記の配列を有するvirK遺伝子。 GCATGCATGA TGATGTTTTT ATTGCTGACA ATGTTTTTCC TGCCGCCCCC GTATATCGGG 60 TTGCCAGTCT GGTGGTTCTG CCTTCAGAAA ACGAATCGTT TGGTATGGTA CTGGCAGAAG 120 CATCGGCATT TTCTGTGCCT GTACTGGCCA GTCAGATTGG TGGAATCCCT GATGTTATTC 180 AGAATAACCA GACCGGGACA TTGTTACCAG CAGGTAATAA GCACGCATGG ATGTGCGCCC 240 TGAATGATTT TTTTAATGAC CCTGGGCGTT TTTATCAGAT GGCTCGCCAG GCAAAACAGG 300 ATATAGAAGA GCGGTTTGAT ATTAATAAAA CTGCGTTAAA AATACTCACA TTAGCGAAGC 360 ACAAGTAACA ATATGTTTTC TGTAAGTAAC TTATCATTT ATCGGTTTCC TTAAAAGGAT 419 M F S V S N L S F I G F L K R I 5 10 15 TGTTTTTTCC TCAGATTCAC TCCCGGGGAA GTGGGAACAC AGAAAATTCC GGTTCATG 477 V F S S D S L P G K W E H R K F R F M 20 25 30 35 TACATTTTGC GATGTGCTAT AAATCCGGTT GCCAGTATTC GATATTATTA CGAACTGCGT 537 Y I L R C A I N P V A S I R Y Y Y E L R 40 45 50 60 TCCTTGCAGT GCATTGAG GATATTCTGG CAATACAACC CACGTTGCCA GCAAGAATTC 595 S L Q C I E D I L A I Q P T L P A R L 65 70 75 ATCGACCTTA TTTGCATAAA GGGGGGCGAG CCTGGTCC CGGGGGCAAT ATATTCTTGA 653 H R P Y L H K G G R A W S R G Q Y I L E 80 85 90 95 GCATTATCGC TTTGTGCAAA ATTTGCCAGA AAAATATTCT GAATTTTTGT TTCCACAA 711 H Y R F V Q N L P E K Y S E F L F P Q 100 105 110 AAATCGGTAT CATTAGTCCA ATTCATCGGG AAAGATGGAG AGGATTTTGA TATCCAGTGT 771 K S V S L V Q F I G K D G E D F D I Q C 115 120 125 130 TCTCCCAGTG GTTTTGAC CGCGAAGGAG AGTTGATGTT GTCATTGTTT TTCAATAAAA 829 S P S G F D R E G E L M L S L F F N K 135 140 145 150 TAGTGATTGC CCGGTTAACA TTTTCAGTCA TTCTGACT CAAAATGGAC ACACCGCTTT 887 I V I A R L T F S V I L T Q N G H T A F 155 160 165 170 TATTGGCGGA TTACAGGGAG CCCCCAAAAA TACCGGACCT GATATTATTC GGTGCGCA 945 I G G L Q G A P K N T G P D I I R C A 175 180 185 190 ACCCGGGCCT GTTATGGGCT TTTCCCAAAA CGGATTATTT TTGAAGCATT TTGTGCGTTG 1005 T R A C Y G L F P K R I I F E A F C A L 195 200 205 210 ATGAAAGCTT GTAATGTC TCTGAGTGTC TGGCAGTCAG TGAGCACAGT CATGTTTTCC 1063 M K A C N V S E C L A V S E H S H V F 215 220 225 230 GGCAATTGAG ATACTGGTAT CAGAAACGCA AAACCTTT GTTGCTGTCT ACAGTGATTT 1121 R Q L R Y W Y Q K R K T F V A V Y S D F 235 240 245 250 CTGGGAGTCT GTAGCAGGGA AAACCTGTGG TGACTGGTAC AAATTACCAA CACAGGTG 1179 W E S V A G K T C G D W Y K L P T Q V 255 260 265 270 GTTCGAAAGC CGCTAAGCAA TATAGCTAGT AAAAAACGCT CTGAGTATCG AAAACGATAC 1239 V R K P L S N I A S K K R S E Y R K R Y 275 280 285 290 GCTTTGCTGG ATTATATC CATGAAACTG CTATCCGCTC TTTGGATGCA TATCCTGTAA 1297 A L L D Y I H E T A I R S L D A Y P V 295 300 305 ACTCAGAACA TCAGGACTTA AATTAAGGTT TGATGTATTC TCTGAATAAA ATATTAATGA 1357 N S E H Q D L N 310 315 TGATTTTGGT AGGGGCATTC GCACTAAATA ATGAAAAAAT ACAAATCCGA GTTTATTCCT 1417 GAATTTAAGA AAAATTATCT TTCCCCTGTT TACTGGTTTA CATGGTTCGT TTTGGGAATG 1477 ATTGCAGGTA TTTCAATGTT TCCCCCTTCA TTCAGAGATC CTGTCTTGGC CAAAATAGGG 1537 CGTTGGGTGG GCAGATTGAG CAGAAAAGCT CGTCGCAGGG CGACGATTAA TTTATCGCTT 1597 TGTTTCCCGG AAAAGAGTGA TACAGAACGG GAAATAATTG TCGAC 1642
  5. 【請求項5】 virKが請求項4の配列である請求項
    1、2または3の赤痢菌または赤痢ワクチン株。
  6. 【請求項6】 赤痢菌がShigella boydii 、Shigella d
    esenteriae、Shigella flexneri またはShigella sonne
    i である請求項1、または3の赤痢菌。
  7. 【請求項7】 virKおよび/またはthyA遺伝子
    を変異または欠失させることを特徴とする赤痢ワクチン
    株の製造法。
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JP (1) JPH0630766A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002500047A (ja) * 1997-12-30 2002-01-08 セントロ ナシオナル デ インベスチガシオネス シエンテイフイカス 新規なコレラ菌ワクチン候補と構築方法
US8372965B2 (en) 1998-04-28 2013-02-12 Bio-Rad Innovations Nucleotide sequences for the detection of enterohaemorrhagic Escherichia coli (EHEC)

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002500047A (ja) * 1997-12-30 2002-01-08 セントロ ナシオナル デ インベスチガシオネス シエンテイフイカス 新規なコレラ菌ワクチン候補と構築方法
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