JPH06303980A - 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNAおよび抗原ポリペプチド - Google Patents

非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNAおよび抗原ポリペプチド

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JPH06303980A
JPH06303980A JP3178925A JP17892591A JPH06303980A JP H06303980 A JPH06303980 A JP H06303980A JP 3178925 A JP3178925 A JP 3178925A JP 17892591 A JP17892591 A JP 17892591A JP H06303980 A JPH06303980 A JP H06303980A
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nanbv
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNA、お
よびその少くとも一部によってコードされる非A非B型
肝炎ウイルス抗原ペプチドを提供し、非A非B型肝炎の
診断剤およびワクチンの製造を可能にする。 【構成】 塩基配列第1番から第9416番の非A非B
型肝炎ウイルス遺伝子の塩基配列の全領域をカバーする
単離された該ウイルス遺伝子cDNA、およびそのコー
ディング領域である塩基番号第333番から第9362
番の塩基配列の少くとも一部によってコードされる非A
非B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチドが提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上利用の分野】本発明は、非A非B型肝炎ウイル
ス遺伝子cDNAおよび非A非B型肝炎ウイルス抗原ポ
リペプチドに関するものである。更に詳しくは、本発明
は非A非B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチドの産生に有
用な非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNAおよびその
発現産物である非A非B型肝炎抗原ポリペプチドに関す
るものである。本発明の非A非B型肝炎ウイルス遺伝子
cDNAは、また、非A非B型肝炎の遺伝子診断剤とし
て有用である。更に本発明の非A非B型肝炎抗原ポリペ
プチドは非A非B型肝炎ワクチンや免疫グロブリン、ポ
リクローナル又はモノクローナル抗体、免疫学的診断
剤、輸血用血液のスクリーニング剤およびアフィニティ
ーカラムクロマトグラフィーによる輸血用血液中のNA
NBV除去剤等の製造に有用である。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
〔非A非B型肝炎ウイルスの定義〕:周知の通り、ウイ
ルス性肝炎は肝炎ウイルスの感染に因り生じる肝疾患で
あり、該病原ウイルスとしては現在、A型、B型、およ
びD型(デルタ)の各肝炎ウイルスが分離同定されてい
る。尚、D型肝炎ウイルス(デルタ肝炎ウイルス)は、
単独では増殖不能の欠損ウイルスであり、その増殖には
常にヘルパーウイルスとしてB型肝炎ウイルスを要する
ため、B型肝炎患者においてのみ存在する。ところが、
1974年にA型並びにB型各肝炎ウイルスの両感染に
因らないウイルス性肝炎例の多数存在することが初めて
報告された。これらの肝炎は「非A非B型肝炎」と命名
され、これに関する研究が世界各地で精力的に進められ
るに至った。現在、非A非B型肝炎の病原ウイルスは数
種類存在することが認められている。今日までの報告に
よれば、非A非B型ウイルスはその感染経路により2つ
の型に大別される。すなわちそれらは、流行性肝炎ウイ
ルス即ち水や食物を介して伝染する経口感染型非A非B
型肝炎ウイルス(enterically−trans
mitted non−A,non−B);および輸血
等により血液を介して伝染する血液伝播型非A非B型肝
炎ウイルス〔blood−transmitted n
on−A,non−B〕である。該非A非B型肝炎に関
しては、アフリカ、インド、東南アジアを侵淫地とする
既にウイルス学的に確定済みの経口性非A非B型肝炎ウ
イルスを除き血液伝播型非A非B型肝炎ウイルスは未だ
確定されていない。これより血液伝播型非A非B型肝炎
を「NANB型肝炎」と略し、血液伝播型非A非B型肝
炎ウイルスを「NANBV」と略する。
【0003】〔NANB型肝炎研究の現状と課題〕:N
ANB型肝炎の疫学、臨床、診断、治療、予防に関する
ウイルス学上の研究は、NANBVと他の肝炎ウイルス
との比較の下で、診断学、組織病理学、免疫学、分子生
物学等の知識に基づき、世界各地で進められてきた[日
本医事新報、No.3320、3−10、1987年;
医学のあゆみ、151(13),735−923,19
89;肝胆膵,21(1),5−113,1990;実
験医学,(3),201−233,1990]。NA
NB型肝炎に関しては、下記の通り報告されている。
【0004】(イ)疫学:日本のNANB型肝炎患者数
は厚生省の推計によれば、慢性肝炎患者の約60%(約
72万人)、肝硬変患者の約40%(約10万人)、お
よび肝癌患者の約40%(約7千人)であり、これによ
る死亡者数は毎年16,000人に達している。また、
米国では年間15万〜30万例の輸血後肝炎が発生し、
その90%が該NANB型肝炎であり、更に、供血者の
1〜6%がNANBVキャリアーだと考えられている。
その他の諸外国でも、米国および日本と同程度またはそ
れ以上の発症率並びにキャリアー率であると推定される
ため、NANB型肝炎の予防、早期診断および治療法の
確立は、世界的に極めて重要である。
【0005】(ロ)ウイルス学:現在までに既報のNA
NBVは、エンベロープを有する直径約50nmの球状
ウイルス粒子であり、ウイルス分類学上トガウイルス、
フラビウイルスに近似しているか、あるいは全く新しい
タイプのウイルスと考えられている。また、NANB型
肝炎患者血清を静脈内接種した複数のチンパンジー肝細
胞における細胞質内管状構造形成の有無や核内粒子出現
の病理学的所見、疫学的所見、クロロホルム感受性の有
無および、免疫学的診断等に基づき、複数のNANBV
の存在が示唆されている(例えば、Science,
05,197−200,1979;Journal o
f Infectious Disease,148
254−265,1983;微生物、(5)、463
−475、1989)。特に、A型肝炎患者の尿中に存
在するA型ウイルス量、あるいはB型肝炎患者の血中存
在するB型肝炎ウイルス量に比べ、NANB型肝炎患者
の血中NANBV量は極端に少ない。例えば、Chim
panzee infectious doses(C
ID)感染において、患者の血中B型肝炎ウイルス量は
108−109/mlであるが,同感染において患者の血
中NANBV量は104−105/mlである(Brad
ley D.W.:Research perspect
ives in post−transfusion
non−A,non−B hepatitis, in
“Infection,Immunity and
Blood Transfusion”edited
byDodd R.Y.& Barker,L.F;A
lan R.Liss,Inc.New York,
81−97,1985)。更にヒト以外の感染実験系に
関し、NANBV感染により肝細胞質内に典型的な細胞
質内管状構造を形成するチンパンジーのみが感受性動物
として知られている現状では、研究には多数頭のチンパ
ンジーを要することになる。しかしチンパンジーは希少
かつ高価であるため、必然的にNANBVに係る感染実
験、同定、有用なマーカーの発見が制限および遅延され
ている。それゆえ、かかる問題を打開するため、NAN
BV研究に係る様々な戦略が試みられている。例えば、
NANB型肝炎発症チンパンジーの血漿からC型肝炎ウ
イルス(HCV)と称するNANBV遺伝子cDNAを
クローン化し(Science,244,359−36
2,1989)、更に、該遺伝子を発現させて得たC−
100と称する抗原がNANB型肝炎患者の血中抗体と
抗原抗体反応することを確認し(Science,24
,362−364,1989)、上例のようにチンパ
ンジーを用いることなく、NANB型肝炎患者血漿から
直接NANBV遺伝子cDNAをクローン化し、斯かる
遺伝子を発現させて得た抗原がNANB型肝炎患者血清
の抗体と抗原抗体反応を生じることを確認した(Gas
troenterologia Japonica,
,1120−1124,および1130−1133,
1989)。
【0006】(ハ)臨床:一般に肝炎は、発生の集団と
頻度により流行性肝炎や散発性肝炎、また、重症度や病
期に基づき、急性肝炎、劇症肝炎、亜急性肝炎、持続性
肝炎、慢性肝炎等に分類されている。NANB型肝炎の
潜伏期は2〜26週であり、その初期症状はB型肝炎に
比し発熱、倦怠感などを伴う程度で軽く、70%が無黄
疸であるため、見過ごす確率が高い。しかし、NANB
型肝炎の特徴とその恐ろしさは慢性化し易く更に、肝硬
変へと移行することにある。例えば、血清中のアミノト
ランスフェラーゼ活性の上昇が観察されたNANB型肝
炎例のうち、40〜50%の率で慢性化が起こり、慢性
化した症例のうち10〜20%が肝硬変である。また、
受血者の年間0.5〜1%が自覚症状なしに肝硬変へと
進展する。不幸にも、更に進めば、肝細胞癌ないしは肝
癌に陥ると考えられている。従って、輸血のみならず出
血に係るバイオハザード防止のため、NANB型肝炎の
根絶は公衆衛生上の観点から世界的に極めて重要であ
る。
【0007】(ニ)診断:上述の通り、NANBV(血
液伝播型)は未だ同定されておらず、診断用のNANB
V抗原のようなウイルスマーカーが知られていないの
で、NANB型肝炎の診断はA型とB型両肝炎、サイト
メガロ、EB、水痘、単純ヘルペス等の起炎性の各既知
ウイルスに特定な患者の血清中の抗体価の検査に基づく
除外診断、および肝生検による組織病理学的診断に頼ら
ざるを得ない(S.Shenlock,Disease
of the liver and filiary
system,,326−333,Blackwe
ll Scientific Publication
s.1989)。そして、これ等と平行して例えば血清
酵素、GPT〔グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナ
ーゼ;別名:ALT(アラニンアミノトランスフェラー
ゼ)〕、GOT〔(グルタミン酸オキザロ酢酸トランス
アミナーゼ;別名:AST(アスパラギン酸アミノトラ
ンスフェラーゼ)〕、グアニンデアミナーゼ(別名:グ
アナーゼ)等の活性の測定(肝胆膵、第14巻、519
−522、1987年);上記の血清中のGPTないし
はGOT活性の経時的異常高値の継続に基づくNANB
型肝炎の診断基準(日本輸血学会誌、31(4)、31
6−320、1985;日本臨壯、46、2635、1
988)等が日本で採用されている。また、免疫学的診
断に関しては、上述の通りNANBVの分離と同定が困
難な現状では、遺伝子工学的技術や免疫学的知識を駆使
して分離したNANBVcDNAのクローンを発現させ
ることにより得られる抗原とNANB型肝炎患者血清と
の間の抗原抗体反応が基準として採用されている。例え
ば、抗原として、NANB型肝炎患者血漿に由来のNA
NBVcDNA発現産物(欧州公開特許公報第3630
25号)、NANB型肝炎発症チンパンジー血漿に由来
のHCVcDNA発現産物(欧州公開特許公報第318
216号、又は特開平2−500880)、NANBV
感染チンパンジー肝に由来のNANBVcDNA発現産
物(欧州公開特許公報第293274号、又は特開昭6
4−2576および特開平1−124387)等が公知
であり、また、抗原抗体反応測定方法として、RIA
(ラジオイムノアッセイ)、EIA(エンザイムイムノ
アッセイ)が常用されている。しかし、かかる発現産物
の抗原性は互いに共通性に乏しく、また、例えば、前述
HCVcDNAの発現産物即ち前述C−100抗原は、
HCV感染による慢性肝炎診断の一応の指標と目安には
なるが、抗原性を呈する反応領域が狭いため(微生物、
、463−475、1989;肝胆膵、20、47−
51、1990;医学のあゆみ、151、871、19
89)、治療に要するNANB型肝炎ないしはNANB
V感染の確定診断、慢性肝炎および急性肝炎の経過の確
定には不十分であると考えられる。従って、NANB型
肝炎の確実な診断および予知方法の獲得が望まれてい
る。
【0008】(ホ)治療と予防:最近、慢性NANB型
肝炎の治療におけるαおよびβインターフェロンの有用
性が報告されている(肝胆膵、20、59−64、19
90;医学のあゆみ、151、871−876、198
9)。しかし、適切な投与量、投与期間等に関しては未
だ確定されていない。一方、NANB型肝炎の予防剤、
例えば、ワクチンについては、前述の従来のNANBV
cDNAの発現産物(欧州公開特許公報第363025
号)およびHCVcDNAの発現産物(欧州公開特許公
報第318216号)等が抗原として用いられている。
しかし、NANBVそれ自体が本発明完成以前には未だ
に単離同定されていない事から明らかのように、多様な
抗原決定基(エピトープ)を有する上記発現産物からN
ANBVワクチン用抗原を特定すること、およびかかる
特定抗原を臨床的に用いるためにその有効性と安全性を
確定することは不可能であった。従って、NANBVワ
クチンは有利に実用されるには至っていない。
【0009】
【問題を解決するための手段】本発明者等は、新規NA
NBV遺伝子cDNAを開発することにより前述の課題
を克服するため鋭意研究を重ねた結果、公知のNANB
VcDNAに比し優れて信頼性が高く、しかも、現在の
NANBVcDNAでは最長鎖であり、該遺伝子のオー
プンリーディングフレーム全領域を有するNANBV遺
伝子cDNAをクローン化すると共に、かかるcDNA
クローンを発現させることにより、慢性のみならず急性
のNANB型肝炎患者血清とも確実に特異的に抗原抗体
反応を呈するNANBV抗原の獲得に成功した。かかる
成功は、真正な(authentic)NANBV遺伝
子を獲得するために、血中あるいは切除肝細胞片中のN
ANBV量が著しく低い、すなわちA型あるいはB型肝
炎のそれに比し約1万分の1であるにもかかわらず、N
ANBVの分離を困難にすると考えられている未知の迷
入因子を有するチンパンジーを用いてNANBVを増幅
することなく、NANB型肝炎患者の全血あるいはNA
NB型肝炎に合併の肝癌患者の切除肝細片に含まれるN
ANBV粒子から直接NANBVのRNAを抽出すると
いう本発明者らの独特な技術によるものであり、またこ
れは、新鮮な遺伝子分離材料の保存期間中にNANBV
とその遺伝子が体液や血中の酵素により開裂・分解され
ないような細心の操作を伴うことによるものである。こ
のようにしてヒト由来の新鮮材料から調整したRNAを
逆転写酵素を用いて二本鎖cDNAとし、cDNAライ
ブラリーを得、次いで、該cDNAライブラリーからN
ANBV遺伝子をスクリーニングするため、各cDNA
をそれぞれラムダgt11ファージベクターに挿入し、
ファージプラーク上に高濃度に発現させた後、かかる発
現産物と急性NANB型肝炎回復期患者血清および慢性
NANB型肝炎患者血清とを用いるエンザイムイムノア
ッセイ(EIA)を繰り返し行なうことにより、NAN
BV遺伝子cDNAをスクリーニングすることに成功し
た。このようにして、バイオハザードを生じることなく
大量かつ安価に精製されたNANBV抗原ポリペプチド
の着実な産生が、組換えDNA技術を用いた本発明cD
NAの発現により初めて認められた。本発明はこれ等の
知見に基づいて完成されたものである。
【0010】従って、本発明は、NANB型肝炎ウイル
ス遺伝子cDNAの提供を目的とする。さらに本発明
は、NANB型肝炎に対する診断剤およびワクチンの有
効成分として有用なNANB型肝炎ウイルス抗原ポリペ
プチドの提供を目的とする。さらに本発明は、NANB
V抗原ポリペプチドの産生方法の提供を目的とする。
また本発明は、NANB型肝炎に対する診断剤の提供を
目的とする。またさらに本発明は、NANB型肝炎に対
するワクチンの提供を目的とする。本発明の上記および
他の諸目的、諸特徴および諸利点は、添付の図面を参照
して行った以下の詳細な説明と特許請求の範囲の記載か
ら明らかになろう。
【0011】基本的に、本発明によれば、図2−1から
図2−16に示す塩基番号第1番から第9416番の非
A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の少なくとも一部を
含む第一の塩基配列および第一の塩基配列に相補的な塩
基配列からなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基配
列を包含するか、または第一の塩基配列の少なくとも1
つの塩基を遺伝子コドンの縮重により置換して得られる
少なくとも1つの塩基配列を包含する単離されたデオキ
シリボ核酸が提供される。
【0012】また本発明の他の態様によれば、図2−1
から図2−16に示される非A非B型肝炎ウイルスの全
塩基配列の塩基番号第333番から9362番のコーデ
ィング領域を含むデオキシリボ核酸によりコードされる
アミノ酸配列の少なくとも一部を含むアミノ酸配列を含
有する、単離された抗原ポリペプチドが提供される。
【0013】本発明において、特にことわらない限り、
デオキシリボヌクレオチドの配列の左端と右端は、それ
ぞれ5’末端と3’末端である。また、特にことわらな
い限り、ペプチドのアミノ酸配列の左端と右端は、それ
ぞれN末端とC末端である。本発明のNANBV遺伝子
cDNAおよびその発現産物としてのNANBV抗原ポ
リペプチドは、以下の工程(I)〜(VII)に従って調
製し同定することができる。
【0014】(I)NANBV遺伝子のRNA抽出材料
の選別と採取:NANBVのRNAの抽出材料として
は、NANBVのキャリアーあるいはこれに羅患したヒ
トまたはチンパンジーの血液、リンパ液、腹水、肝細
胞、およびNANB型肝炎に合併した肝細胞癌または肝
癌患者の肝細胞が使用できる。特に、チンパンジー由来
の材料中にはNANBVがヒトのそれに比し相対的に少
量であり、NANBVの分離を困難にすると見なされて
いる未知因子が含まれるため、ヒト由来材料の使用が望
ましい。血液、リンパ液、腹水および肝細胞の中では、
血液が最も容易に、大量に得ることができ、例えば、輸
血用血液として使用に耐えない血液を血液銀行から大量
に入手することができる。このような血液は、NANB
VのRNA抽出材料として、有利に使用することが可能
である。血液を材料として用いる場合は、まず血液を血
漿と赤血球に分別し、このようにして得られた血漿が、
B型肝炎ウイルスの表面抗原(WHO expert
committee on viral hepati
tis:Advances in viral hep
atitis,WHO Technical Repo
rt Series,602,28−33,1977)
およびB型肝炎ウイルスの遺伝子DNA(Brecho
t, C;Hadchouel,M;Scotto,
J;Degos,F;Charnay,P;Trep
o,C;Tiollais,P:Detection
of hepatitis B virus DNA
in liver and serum:a dire
ct appraisal of the chron
ic carrier state.Lancet,
,765−768,1981)に陰性であるか否かを
決定し、また該血漿を、NANB型肝炎の診断の目安と
して採用されている血清酵素、例えば、GPT(Wro
blewski,F.& LaDue,J.S.:Se
rum glutamic−pyruvic tran
saminase in cardiac andhe
patic disease,Proc.Soc.Ex
p.Biol.Med.,91,569,195
6.)、GOT、グアナーゼ等の活性に関して検査す
る。上記の血液を血漿と赤血球に分別しまた該血漿を検
査するという工程を、種々の血液について行い、B型肝
炎ウイルスの表面抗原および遺伝子cDNAの両方に陰
性で、かつ上記酵素の活性が異常高値、例えば、GPT
活性が35IU/l以上の血漿をプールする。
【0015】血中のNANB型肝炎ウイルス粒子数は、
前述のB型肝炎ウイルス粒子数に比し非常に少ない。感
染実験の結果から(Bradley,D.W.:Res
earch perspectives in pos
t−transfusionnon−A,non−B
hepatitis: “Infection,Imm
unity and Blood Transfusi
on”editedby Dodd,R.Y.& Ba
rker,L.F.,Alan R.Liss,In
c.,New York,81−97,1985)、N
ANB型肝炎ウイルス粒子数は、B型肝炎ウイルス粒子
数の約1万分の1であることが予想されるので、該RN
Aの抽出には大量の、例えば、約3〜10lの血液の使
用が望ましい。そしてこの新鮮全血は、ウイルス粒子か
らNANBVのRNAを抽出する材料として用い、NA
NBVとその遺伝子の変性および酵素による遺伝子の開
裂・分解を避けるため、1〜5℃に保存し、また、新鮮
全血採取後48〜72時間以内に下記工程(II)によ
りNANBVのRNAの調製を完了することが望まし
い。。また、肝細胞を材料として用いる場合は、NAN
B慢性肝炎に合併した肝細胞癌または肝癌患者から得ら
れる非癌部および癌部の切除肝組織片それぞれ約1〜3
gを有利に使用することができる。材料として用いる肝
細胞は、例えば−70℃に凍結保存する。
【0016】(II)NANBVのRNAの調製:上記
(I)で得られた材料から、公知の手段によりRNAを
抽出および精製することができる。例えば、新鮮全血を
材料として用いる場合は、血液約2〜10lを低速遠心
にかけ、上清の血漿画分を採取し、この血漿からウイル
ス画分を精製して得た後、下記のRNA抽出精製工程に
供する。
【0017】一方、肝細片をNANBVのRNA抽出材
料として用いる場合は、その体積の約5〜30倍容の下
記のRNA分解酵素阻害剤を含む希釈液を肝組織に添加
の後、公知の手段、例えば、ホモジナイザー等より、肝
組織を破砕ないし磨砕することにより、肝細胞のホモジ
ェネートを得る。尚、希釈液としては、10〜150m
Mの公知の緩衡液を使用することができる。次いで、こ
れを低速遠心にかけ、上清を採取した後該上清をRNA
抽出精製の原液として用いる。RNAの抽出精製には公
知の方法、例えば、ヘパリン、ジエチルピロカルボネー
ト、グアニジンチオシアネート等のRNA分解酵素阻害
剤と界面活性剤、キレート剤または蛋白変性を増強する
還元剤との混合液を用いる抽出法;蔗糖、セシウムクロ
ライド、セシウムトリクロロ酢酸、フィコール[Pha
rmacia Fine Chemicals AB社
(スウェーデン)]等を勾配の溶質として用いる密度勾
配遠心による分画法;mRNAが特異的に有する3’末
端のポリA鎖を利用するアフィニティーカラムによる分
離法;ポリソーム上で合成された蛋白に対し特定の抗体
を用いる免疫沈降によりmRNA結合ポリソームを得る
分別法;2相分配の原理に基づくフェノール抽出法;ポ
リエチレングリコール、デキストラン硫酸、アルコール
等による沈殿法を個別に、または組み合わせて使用する
ことができる。尚、上記のNANBVのRNAの抽出と
精製工程は、RNAの不可逆的変性を避けるためpH3
〜10での実施が望ましい。
【0018】(III)NANBVのRNAからの二本
鎖cDNAの調製:先に得られたNANBVのRNAを
使用し、常法によりcDNAを調製することができる。
即ち、プライマーとしてオリゴデオキシチミジンおよび
ランダムヘキサヌクレオチドプライマーと逆転写酵素を
用い、該NANBVのRNAを鋳型として用いてそれに
相補的なcDNAを合成し、互いに相補的に結合した該
cDNAと該NANBVのRNAからなる二本鎖を得、
次いで、これにリボヌクレアーゼHを作用させて該NA
NBVのRNAを分解し該cDNAから除去した後、こ
の一本鎖cDNAを鋳型としてDNA合成酵素により二
本鎖cDNAを合成する。二本鎖cDNA合成は、市販
のcDNA合成キット、例えば、cDNA Synth
esisSystem Plus(登録商標)〔Ame
rsham社(英国)製〕、cDNA System
Kit(登録商標)〔Pharmacia LKB社
(スウェーデン)製〕、cDNA Synthesis
Kit(登録商標)〔Boehringer Man
nheim GmbH社(独)製〕等を用いて容易に実
施することができる。合成したcDNAが少量の場合に
は、常法のPCR(Polymerase Chain
Reaction)法(Erlich,H.A.:
“PCR Technology,Stockton
Press,1989)により、PCR用キットのAm
pliTaq〔Perkin Elmer Cetus
社(米国)製〕)を用いて増幅することができる。
【0019】(IV)cDNAライブラリーの作成:
(III)で調製したcDNAを使用し、常法によりc
DNAライブラリーを作成する。すなわち、(III)
で調製したcDNAを種々の長さを有する断片に切断
し、得られた様々の各cDNA断片を組換え可能なクロ
ーニングベクターに連結することによりcDNAライブ
ラリーを得る。組換え可能なクローニングベクターとし
ては、例えば、ファージ遺伝子、コスミド、プラスミド
および動物ウイルス遺伝子等の公知または市販のベクタ
ーを使用することができる。組換え可能なベクターとし
てファージ遺伝子またはコスミドを使用する場合には、
夫々のcDNA断片を個別に挿入した該ベクターの高度
の安定化および形質転換体の出現率を達成するため、常
法により試験管内パッケージングを行い、各cDNAが
挿入ベクターを組換えファージ粒子の形で得た後、これ
等のファージ粒子cDNAライブラリーとしてcDNA
のクローニングに供する。一方、組み換え可能なベクタ
ーとしてプラスミドを使用する場合には、上述の各cD
NA断片をプラスミドベクターに挿入し、これ等のcD
NA挿入ベクターを常法に従って夫々大腸菌、枯草菌、
酵母等の宿主細胞に移入して得た形質転換体をcDNA
ライブラリーとしてcDNAのクローニングに供する。
また、組換え可能なベクターとして動物ウイルス遺伝子
を使用する場合には、上述のcDNA断片を各々ウイル
ス遺伝子ベクターに挿入し、これ等の各組換えウイルス
を標準の方法に従って感受性動物細胞にトランスフェク
トし、細胞内で増殖させる。組換えウイルスの場合は、
得られた組換えウイルスそのものをcDNAライブラリ
ーとして用いる。
【0020】該cDNAライブラリーの作成は、市販の
キット、例えば、cDNAクローニングシステム ラム
ダgt10およびラムダgt11〔Amersham社
(英国),BRL社(米国),Stratagene社
(米国)製販〕、インビトロパッケージングシステム
〔Amersham社(英国),BRL社(米国),S
tratagene社(米国)製販〕等を用いて容易に
実施することができる。
【0021】(V)cDNAライブラリーからのNAN
BV遺伝子を含むcDNAのクローニング:この工程に
おいて、NANBV遺伝子を含むcDNAクローンが得
られる。cDNAライブラリーが形質転換体を含む場合
には、これ等の形質転換体を標準寒天培地において培養
しコロニーを形成させる。一方、cDNAライブラリー
が組換えファージ粒子または組換えウイルスを含む場合
には、これ等の組換えファージ粒子または組換えウイル
スを公知の大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞培養物等の
感受性宿主細胞に感染後、培養することによりプラーク
を形成させるか、または感染細胞を増殖させる。そし
て、公知のイムノアッセイの下で、急性NANB型肝炎
患者回復期血清、慢性NANB型肝炎患者血清、肝細胞
質内管状構造形成型あるいは非形成型に関わりなくNA
NBVに感染のチンパンジー血清を用い、NANBV抗
原を特定に産生したコロニー、プラークまたは感染細胞
を、上述の血清中の少なくとも1つと反応させることに
より、選別単離する。コロニーの厳密な選別のため、前
の工程を繰り返し、選別単離した各コロニー、プラーク
または感染細胞から、T.Maniatis等によるM
olecular Cloning, A Labor
atory Manual(Cold Spring
Laboratory[U.S.A],309−43
3,1982)に従って、NANBV遺伝子を含むcD
NAクローンを分離する。上記イムノアッセイは、例え
ば、酵素のパーオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファ
ターゼで標識した抗体を用いる酵素標識抗体技術、フル
オレセインイソチオシアネートまたはユーロピウムで標
識した抗体を用いる蛍光抗体技術により実施することが
できる。上述の技術によるイムノアッセイでは、微量の
患者血清を使用しても、高感度のイムノアッセイを達成
することができる間接法による実施が望ましい。この間
接法においては、一次抗体としてはNANBVに特異的
な抗体の含有量が比較的多いNANB型肝炎患者やNA
NB型肝炎チンパンジーの血清の採用が望ましく、二次
抗体としては酵素または蛍光物質等で標識した市販の抗
ヒトIg(Immunoglobulin)抗体の使用
が可能である。
【0022】また、イムノアッセイ用の検体は、常法、
例えば、フィルター膜にコロニー、プラークまたは感染
細胞の核酸および蛋白を吸着させるブロッティング法、
マイクロプレートまたは検鏡用スライドガラスを用いる
方法等に従って調製することができる。ブロッティング
法を間接酵素抗体技術と合わせて用いると、著量のもと
のコロニー、プラークまたは感染細胞からの目的とする
コロニー、プラークまたは感染細胞の選別を、容易にし
かも迅速に実施することができる。この場合は、材質が
ニトロセルロース、セルロースアセテート、ナイロン等
の市販のフィルターをこれらのコロニー、プラークまた
は感染細胞に密着させ、ブロッティングを行う。
【0023】この様にして得たcDNAクローンは、N
ANBV遺伝子の一部であるので、該NANBV遺伝子
の全領域をカバーするcDNAクローンを得るため、、
該cDNAクローンに近傍のcDNA断片を,該cDN
Aクローンの3’および5’末端部をプローブとして用
いて単離する方法により、cDNAクローンを伸長させ
る必要がある。この場合には、ジーンウォーキング(別
称、genomicwalkingまたはchromo
some walking)を採用することができる
(“DNA Cloning Volume II
I”、D.M.Glover編、37−39、IRL
Press,1987;T.Maniatis et
al.,“Molecular Cloning −
a laboratory manual”、3.2
1−3.23、1989)。クローニング操作とジーン
ウォーキングとを繰り返し行うことにより、NANBV
遺伝子全領域をcDNAクローンの形で得ることが出来
る。
【0024】この段階では、得られた各cDNAクロー
ンについての塩基配列の決定が望ましい。該cDNAク
ローンのかかる塩基配列の決定は、常法、例えば、マキ
サム−ギルバート法、ジデオキシチェーンターミネータ
ー法(AnalyticalBiochemistr
y、152、232−238,1986)等により一般
に行うことができる。
【0025】また、決定した塩基配列に基づき、アミノ
酸配列を決定することができる。該アミノ酸のシーケン
シングは、開始コドン(cDNAのATGまたはmRN
A上のAUG)から行なう。かかるアミノ酸配列の重要
部分、例えば、エピトープを構成すると考えられる親水
性部位は、夫々の親水性部位に対応するペプチドを合成
し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製の
後、これ等のペプチドをエンザイムイムノアッセイ(E
IA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)に供する
ことにより特定することができる。
【0026】また、該cDNAクローンについては、各
クローンを相互に区別するため、これ等のクローンにコ
ードされるNANBV抗原ポリペプチドの夫々の特性に
従い、いくつかの群に分類することが望ましい。これに
関連して、NANBV遺伝子の制限酵素地図上におけ
る、各cDNAクローンの位置付けを分類のための指標
として使用することができる(図1−1および図1−
2)。また、NANBVにはチンパンジー肝細胞質内に
管状構造形成能を有するものと、有しないものが知られ
ているため(Science、205、197−20
0、1979)、各cDNAクローンと、チンパンジー
肝細胞質内に管状構造を形成する型のNANBVに感染
したチンパンジー血清と、管状構造を形成しない型のチ
ンパンジー血清との血清学的反応性を検査することによ
り、これ等のクローンを識別し分類することができる。
この血清学的反応性の検査は、上述のイムノアッセイに
より行うことができる。
【0027】本発明において図1−1および図1−2に
示される、本発明NANBV遺伝子のcDNAクローン
には、接頭辞“BK”を付ける。図1−1は、該NAN
BV遺伝子の全領域に対する本発明NANBV遺伝子の
cDNA間の関係を示す図である。また図1−2は、該
NANBV遺伝子の全領域に対するジーンウォーキング
により得られたcDNAクローン間の関係を示す図であ
る。
【0028】NANBVcDNAクローンは、例えば、
Escherichia coliBK108(微工研
条寄第2971号)、BK129(微工研条寄第297
2号)、BK138(微工研条寄第2973号)、BK1
53(微工研条寄第2974号)、BK157(微工研
条寄第3243号)、BK166(微工研条寄第297
5号)およびBK172(微工研条寄第2976号)を
含むものである。これらの7つのBK NANBVcD
NAクローンは、少なくともNANBV遺伝子のオープ
ンリーディングフレーム全領域、ないしは、おそらくN
ANBV遺伝子全領域をカバーしていると考えられる。
更に上記クローンに加え、BKシリーズの代表例とし
て、次の5クローンが微工研に寄託されている:BK1
02(微工研条寄第3384号)、BK106(微工研
条寄第3385号)、BK112(微工研条寄第338
6号)、BK146(微工研条寄第3387号)、BK
147(微工研条寄第3388号)。
【0029】上述のBK NANBVcDNAクローン
によってカバーされるNANBV遺伝子全領域の塩基配
列と、これらがコードするアミノ酸配列は、図2−1か
ら図2−16に示される。図2−1から図2−16に開
示の全NANBV塩基配列と全NANBVアミノ酸配列
に基づき、該NANBV遺伝子の塩基配列およびアミノ
酸配列と他のウイルス遺伝子のそれらの配列とのホモロ
ジー、アミノ酸配列の疎水性指標(疎水性/親水性プロ
フィール)、NANBV遺伝子の構造、エピトープ(抗
原決定基)領域等に関して種々の研究および観察を行う
ことができる。
【0030】ホモロジーについては、NANBV遺伝子
の塩基配列およびアミノ酸配列と既知の種々のウイルス
遺伝子(特開昭62−286930;Virolog
y、第161巻、497−510ページ、1987年)
および他のウイルスで牛ウイルス性下痢症ウイルス(V
irology、第165巻、497−510ページ、
1988年)、豚コレラウイルス(Virology、
第171巻、555−567ページ、1989年)、タ
バコ葉脈斑紋ウイルス(Nucleic Acid R
esearch、第165巻、5417−5430ペー
ジ、1986年)等のウイルス遺伝子とを比較すること
により研究することができる。
【0031】また、疎水性指標の解析については、例え
ば、遺伝子情報処理ソフトウェアのSDC−Genet
yx〔(株)SDCソフトウェア社(日本)製〕)、D
oolittleが作成のプログラム(Journal
of MolecularBiology、第157
巻、105−132ページ、1982年)等を用いる技
術により研究することができる。
【0032】図3は、本発明NANBVおよび日本脳炎
ウイルス(JEV)の疎水性プロフィールを示す図であ
り、両ウイルスの夫々の疎水性指標を相互に比較したも
のである。この図から、NANBV遺伝子の遺伝子構造
とJEV遺伝子の遺伝子構造との間に有意な類似性のあ
ることが判明している。図3に示されるように、本発明
NANBVのポリペプチドは3種の構造蛋白、即ち、コ
ア蛋白(C)、プレマトリックス蛋白(PreM)がさ
らに進行したマトリックス蛋白(M)、エンベロープ蛋
白(E)と7種の非構造蛋白のNS1,NS2a,NS
2b,NS3,NS4a,NS4bおよびNS5を含有
する。これらの蛋白は夫々、以下の塩基配列によりコー
ドされる:
【0033】C蛋白は塩基番号第333番から第677
番まで、M蛋白は第678番から第905番、E蛋白は
第906番から第1499番、NS1は第1500番か
ら第2519番、NS2は第2520番から第3350
番、NS3は第3351番から第5177番、NS4a
は第5178番から第5918番、NS4bは第591
9番から第6371番、およびNS5は第6372番か
ら第9362番まで。これ等の塩基配列は、NANB型
肝炎の診断に有用であり、これ等にコードされるポリペ
プチドは夫々、NANBV型肝炎のワクチンのみならず
診断剤用の抗原として有用である。
【0034】上述の3種の構造蛋白は、図2−1から図
2−3に示されるアミノ酸番号第1番(Met)から第
389番により表されるものであり、第1番のメチオニ
ン残基は開始コドンによりコードされるものである。
【0035】本発明者の引続く研究により、以下の塩基
配列が抗NANBV抗体に対し反応するエピトープを含
有することが判明した:塩基配列が、夫々塩基番号第3
33番から422番、第333番から1499番、第3
33番から第6371番、第474番から563番、第
906番から953番、第1020番から第1046
番、第1020番から第1121番、第1194番から
第1232番、第1209番から第1322番、第44
85番から第4574番および第5544番から第56
33番まで。
【0036】以下に述べるように、上述の塩基配列また
はその全配列の部分としての塩基配列を含有する塩基配
列は、組換えDNA技術または化学合成によるNANB
V抗原ポリペプチドの産生のみならず、ハイブリダイゼ
ーションまたはポリメラーゼチェインリアクション(P
CR)によるNANB型肝炎の診断に対しても、効果的
に使用することができる。
【0037】また、図2−1から図2−16に示される
塩基番号第1番から第9416番の全領域の少なくとも
6個の塩基を含有する塩基配列が、NANB型肝炎の診
断におけるハイブリダイゼーション用のプローブとし
て、またはポリメラーゼチェインリアクション用のプラ
イマーとして有用であり、塩基番号第333番から第9
362番の塩基配列の少なくとも12個の塩基の塩基配
列によりコードされる少なくとも4つのアミノ酸を含有
するポリペプチドが、NANB型肝炎のワクチンのみな
らず診断剤用の抗原としても効果的であることが判明し
た。さらに、当業者間では既知のことであるが、該塩基
配列に相補的な塩基配列もまた、NANB型肝炎の診断
におけるハイブリダイゼーション用のプローブとして、
またはポリメラーゼチェインリアクション用のプライマ
ーとして有用であることが分かった。遺伝コドンの縮重
に従って該NANBVの塩基配列の少なくとも一部のコ
ーディング領域の少なくとも1つの塩基を置換すること
により得られる塩基配列もまた、組換えDNA技術によ
り本発明抗原ポリペプチドの産生に使用することができ
る。
【0038】従って、本発明の単離されたデオキシリボ
核酸は、図2−1から図2−16に示される塩基番号第
1番から第9416番の非A非B型肝炎ウイルスの全塩
基配列の少なくとも一部を含む第一の塩基配列および第
一の塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選ばれ
る少なくとも1つの塩基配列、あるいは遺伝子コドンの
縮重に従って第一の塩基配列の少なくとも1つの塩基を
置換することにより得られる塩基配列を含む。
【0039】更に特定すれば、本発明の該デオキシリボ
核酸は、図2−1から図2−16に示される塩基番号第
1番から第9416番の非A非B型肝炎ウイルスの全塩
基配列の少なくとも6個の塩基を包含する。
【0040】また更に特定すれば、本発明の該デオキシ
リボ核酸は、塩基番号第333番から第422番、第3
33番から第677番、第333番から第1499番、
第333番から第6371番、第474番から第563
番、第678番から第905番、第906番から第95
3番、第906番から第1499番、第1020番から
第1046番、第1020番から第1121番、第11
94番から第1232番、第1209番から第1322
番、第1500番から第2519番、第2520番から
第3350番、第3351番から第5177番、第44
85番から第4574番、第5178番から第5918
番、第5544番から第5633番、第5919番から
第6371番、第6372番から第9362番、および
第1番から第9416番の塩基配列からなる群から選ば
れる少なくとも1つの塩基配列を含有する。
【0041】また、本発明の単離された抗原ポリペプチ
ドは、図2−1から図2−16に示される非A非B型肝
炎ウイルスの塩基配列の塩基番号第333番から936
2番のコーディング領域を含むデオキシリボ核酸により
コードされるアミノ酸配列の少なくとも一部を包含す
る。なお、本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、N
ANBV粒子やNANBV表面抗原集合体などのアセン
ブリーを構成しない状態のポリペプチドを意味する。
【0042】更に特定すれば、本発明の該抗原ポリペプ
チドは、塩基番号第333番から第9362番の該塩基
配列の少なくとも12個の塩基の塩基配列によりコード
される少なくとも4つのアミノ酸の少なくとも1アミノ
酸を包含する。
【0043】また更に特定すれば、本発明の該抗原ポリ
ペプチドは、塩基番号第333番から第422番、第3
33番から第677番、第333番から第1499番、
第333番から第6371番、第474番から第563
番、第678番から第905番、第906番から第95
3番、第906番から第1499番、第1020番から
第1046番、第1020番から第1121番、第11
94番から第1232番、第1209番から第1322
番、第1500番から第2519番、第2520番から
第3350番、第3351番から第5177番、第44
85番から第4574番、第5178番から第5918
番、第5544番から第5633番、第5919番から
第6371番、第6372番から第9362番、および
第333番から第9362番の塩基配列からなる群から
選ばれる塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含
有する。
【0044】さらに、図2−1から図2−16に示され
る該NANBVの全コーディング領域によりコードされ
るポリペプチドは、幅広い抗原抗体反応スペクトルを有
するため、このようなポリペプチドは、単一エピトープ
を含む抗原に比べNANB型肝炎感染により生産された
多種多様の抗体と反応することができ、NANB型肝炎
診断剤として高感度である。
【0045】(VI)NANBV遺伝子cDNAクロー
ンの発現、およびNANBV抗原の大量生産:NANB
V抗原ポリペプチドを商業的規模で産生するNANBV
抗原遺伝子のクローンcDNAを発現させるために、c
DNAクローン内に存在する該クローンcDNAの一部
または全体を複製可能な発現クローニングベクターから
取り出し、複製可能な発現ベクターに結合する。実例と
して、各cDNAクローンの該cDNAの一部または全
領域を制限酵素を用いて切り出すことによりNANBV
抗原遺伝子を含むDNA断片(以後「NANBVのDN
A断片」とする)を得、これを常法により組換え可能な
発現ベクターに挿入する。DNA断片1種を発現ベクタ
ーに挿入する場合は、遺伝子発現によりペプチドを1
種、産生することができる。また、2種以上のDNA断
片を発現ベクターの配列に挿入する場合は、遺伝子発現
により、挿入したDNA断片にコードされているポリペ
プチドを含む融合ペプチドとして抗原ポリペプチドを産
生することができる。
【0046】この操作において使用し得る複製可能な発
現ベクターとしては公知又は市販のもの、例えば、腸内
細菌科のプラスミドベクターpSN508(米国特許第
4,703,005号)、酵母のプラスミドベクターpB
H103およびその系列(特開昭63−22098)と
pJM105(特開昭62−286930)、弱毒水痘
ウイルス遺伝子(特開昭53−41202)、弱毒マレ
ック病ウイルス(日本獣医学会誌、第27巻、20〜2
4ページ、1984年;およびTGan Monogr
aph on Cancer Research、第1
0卷、91〜107ページ、1971年)、pTTQ系
列〔Amersham社(英国)製販〕、pSLV系列
〔Pharmacia LKB社(スェーデン)製販〕
等を含む発現ベクターから使用することができる。
【0047】次いで、NANBVのDNAを挿入した発
現ベクターを、常套手段により該ベクターに感受性の宿
主細胞に個別に移入、またはトランスフェクションし、
形質転換体を得、これらからNANBV抗原ポリペプチ
ドまたはNANBV粒子を産生した形質転換体を選別す
る。尚、NANBV抗原ポリペプチド(またはNANB
V粒子)の産生は、前述(V)に記載のイムノアッセイ
により検出することができる。その結果、発現ベクター
として動物ウイルス遺伝子を使用した場合には、その表
面にNANBV抗原ポリペプチドを有する組換えウイル
スを得ることができ、該ウイルスベクターに固有の抗原
性のみならずNANBVの抗原性をも有する多機能ワク
チンの原料として、そのような組換えウイルスを有利に
用いることが可能である。
【0048】前に得た該形質転換体または組換えウイル
スを常法に従い培養することにより、NANBV抗原ポ
リペプチドをその培地内に商業的規模で産生することが
できる。動物ウイルス遺伝子を発現ベクターとして用い
る方法の詳細については、欧州公開特許公報第3345
30号を参考にするとよい。
【0049】従って、本発明は更に、以下の工程を包含
する非A非B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチドの産生方
法の提供を目的とする: (a)デオキシリボ核酸をプラスミドおよび動物ウイル
ス遺伝子から選ばれた複製可能な発現ベクターに挿入し
た後、該複製可能な発現ベクターがプラスミドの場合は
そのプラスミドおよびそれに挿入したデオキシリボ核酸
を、また該複製可能な発現ベクターが動物ウイルス遺伝
子の場合はその動物ウイルス遺伝子およびそれに挿入し
たデオキシリボ核酸を得、該デオキシリボ核酸は、図2
−1から図2−16で示される非A非B型肝炎ウイルス
の塩基配列の塩基番号第333番から第9362番のコ
ーディング領域の少なくとも一部を含む塩基配列および
該塩基配列の少なくとも1つの塩基を遺伝子コドンの縮
重により置換して得られる塩基配列からなる群から選ば
れる少なくとも1つの塩基配列を含有しており、(b)
上記(a)で用いた複製可能な発現ベクターがプラスミ
ドの場合は、微生物細胞または真核細胞培養物に該組換
えDNAをトランスフェクトし形質転換体を形成した
後、その微生物または真核細胞培養物の親細胞から形質
転換体を選別し、(c)上記(b)で得られた形質転換
体を培養することにより該デオキシリボ核酸を発現さ
せ、非A非B型肝炎ウイルス抗原ペプチドを単一形で産
生するか、あるいは上記(a)で得られた組換えウイル
スを培養することにより該デオキシリボ核酸および動物
ウイルス遺伝子を発現させ、動物ウイルス遺伝子および
非A非B型肝炎ウイルス抗原ペプチドをその表面に含む
増殖した組換えウイルスの形で非A非B型肝炎ルイルス
抗原ペプチドを産生させ、そして(d)かかる非A非B
型肝炎ウイルス抗原ペプチドまたは増殖した組換えウイ
ルスを単離する。
【0050】このようにして得た抗原ペプチドはNAN
B型肝炎の診断剤またはワクチンの有効成分として有利
に用いることができ、組換えウイルスもワクチンの有効
成分として用いられる。
【0051】また、図2−1から図2−16の該cDN
Aの一部または全体を鋳型として用いて、標準的な方法
に従いin vitroで転写させて対応するRNAま
たはmRNAを合成することができる。例えば、図2−
1から図2−16の該cDNAの全領域に対応するRN
AまたはmRNAは、プラスミドpDM−18(実施例
2で構築する)を制限酵素HindIIIで処理して調製
したcDNAの全領域を鋳型として用い、T7RNAポ
リメラーゼおよび相似のキャップを用いてinvitr
oで転写する。このようにして合成されたRNAまたは
mRNAは、NANBV遺伝子の全領域を包含してお
り、即ち、実質的に剥き出しのNANBVゲノムである
ため、mRNAを動物細胞にトランスフェクトすること
により、感染性NANBV粒子を得ることができる。上
述のmRNAは、例えば市販のmRNAキャッピングキ
ット〔Stratagene社(米国)製販〕を用い
て、従来の手段により合成することができる。かかる合
成の操作工程の詳細については、“Current P
totocols in Molecular Bio
logy”(10.17.1−10.17.5,Wil
ey & Sons発行,1989年)を参考にすると
よい。図2−1から図2−16の該cDNAの一部また
は全体を用いて得られた該RNAは、NANBVゲノム
の一部または全体であるため、NANBV抗原の産生の
みならず、NANBVおよびそれに起因する感染症の研
究に有用である。
【0052】(VII)NANBV抗原ポリペプチドの精
製:該形質転換体または組換えウイルスの培養物中に産
生されたNANBV抗原は、通常の技術、例えば、塩
析、シリカゲルや活性炭等を用いる吸脱着法、有機溶媒
による沈殿法、超遠心による分画法、イオン交換または
アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる分離
法、高速液体クロマトグラフィー、または電気泳動によ
る分画法等を適宜、組み合わせることにより精製するこ
とができる。大腸菌または酵母の形質転換体の培養物か
ら、NANBV抗原ペプチドを精製する場合には、NA
NBV抗原ポリペプチドの最終産生物の品質を著しく低
下させる大腸菌および酵母に由来のアレルゲンの効果的
な除去の見地から、例えば、(1)シリカゲルによる吸
脱着処理、活性炭による不純物の吸脱除法、および
(2)密度勾配遠心分離による分画を順次行う(特開昭
63−297)ことによる精製が望ましい。また、組換
えウイルス培養物、例えば、ウイルス感染組換え細胞培
養液からNANBV抗原ポリペプチドを精製する場合に
は、超遠心分離や密度勾配遠心分離を反復して行い該抗
原を含む原液を精製することにより、高純度のNANB
V抗原ポリペプチドを得ることができる。
【0053】このようにして、本発明の精製NANBV
抗原ポリペプチドを含む溶液が得られる。必要があれ
ば、該溶液を凍結乾燥し、かかるNANBV抗原ポリペ
プチドを乾燥した形で得ることが可能である。また、本
発明の混合抗原ポリペプチドは、異なる塩基配列を有す
る少なくとも2種のcDNAの遺伝子発現により得られ
る少なくとも2種のNANBV抗原ポリペプチドの混合
により得ることができる。
【0054】前述の通り、該NANBVのコア蛋白(C
蛋白)、マトリックス蛋白(M蛋白)、およびエンベロー
プ蛋白(E蛋白)は、図2−1から図2−3に示される
アミノ酸番号第1番(Met)から第389番(Gl
y)の領域に含まれる。この領域に含まれる上述のエピ
トープ、特に塩基番号第906番から第953番、第1
020番から第1046番、第1194番から第123
2番の塩基配列によりそれぞれコードされるエピトープ
は抗原として非常に有用である。かかるエピトープはポ
リペプチド合成により得ることができ、市販のペプチド
合成機、例えば、ポリペプチド合成機COUPLER
2100〔DU PONT社(米国)製販〕を使用して
実施することができる。かかる合成抗原ポリペプチド
は、例えばワクチン、診断剤、および抗体の製造に用い
ることができる。
【0055】本発明は更に、プラスミドおよび動物ウイ
ルス遺伝子、そしてデオキシリボ核酸にして図2−1か
ら図2−16に示される非A非B型肝炎ウイルスの全塩
基配列の塩基番号第1番から第9416番のコーディン
グ領域の少なくとも一部を含む塩基配列および該塩基配
列を遺伝子コドンの縮重に基づき少なくとも1つの塩基
を置換して得られる塩基配列からなる群から選ばれる少
なくとも1つの塩基配列を含有するものから選ばれる、
複製可能な発現ベクターを有する複製可能な組換えDN
Aの提供を目的とするものである。かかる組換えDNA
は、本発明のNANBV抗原ポリペプチドの産生のみな
らず、複製による本発明のNANBV遺伝子cDNAの
増幅に用いることができる。
【0056】この複製による本発明のNANBV遺伝子
cDNAの増幅のための複製可能な組換えDNAに関す
る本発明の好ましい具体化において、該塩基配列は塩基
番号第1番から第9416番の塩基配列の少なくとも6
個の塩基を含有する。該NANBV抗原ポリペプチドの
産生のための複製可能な組換えDNAに関する本発明の
好ましい具体化において、該塩基配列は塩基番号第33
3番から第9362番の塩基配列の少なくとも12個の
塩基を含有する。
【0057】更に、該NANBV抗原ポリペプチドの産
生に必要な複製可能な組換えDNAは、該塩基配列は、
塩基番号第333番から第422番、第333番から第
677番、第333番から第1499番、第474番か
ら第563番、第678番から第905番、第906番
から第953番、第906番から第1499番、第10
20番から第1046番、第1020番から第1121
番、第1194番から第1232番、第1209番から
第1322番、第1500番から第2519番、第25
20番から第3350番、第3351番から第5177
番、第4485番から第4574番、第5178番から
第5918番、第5544番から第5633番、第59
19番から第6371番、および第6372番から第9
362番の塩基配列からなる群から選ばれる。
【0058】また、本発明の精製NANBV抗原ポリペ
プチドは、NANB型肝炎の診断剤として有用である。
また、本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、以下の
ようにして診断剤に調剤することができる。上記(VI
I)で得られた精製NANBV抗原ポリペプチド溶液
を、バイアル瓶またはアンプル等の容器に分注の後、密
封する。注入した該抗原ポリペプチドは、密封する前に
上述と同様の手段で凍結乾燥することができ、容器内の
NANBV抗原ポリペプチドの量は、一般に約1μg〜
約10mgである。代わりに、該NANBV抗原ポリペ
プチドを、また、常用されている支持体、例えば、マイ
クロプレート、ポリエチレンビーズ、濾紙または膜の表
面に吸着させることができる。
【0059】血清と該NANBV抗原ポリペプチドとの
反応性の決定は、上述(V)に示したのと同様の手段で
個別に実施することができる。即ち、かかる反応性の決
定は、従来のイムノアッセイの方法、例えば、radi
oimmunoassey(RIA),enzyme−
linked immunosorbent asse
y(ELISA)、蛍光抗体法(FA)、受身赤血球疑
集反応(PHA)、逆受身赤血球疑集反応(rPHA)
等により実施することが可能である。上記のイムノアッ
セイに用いる該NANBV抗原ポリペプチドの量は、血
清中に一般に約0.1〜約100mg/mlであり、特
にRIA、ELISA、FA、PHAおよびrPHAに
用いる量は、それぞれ0.1〜1mg/ml、0.1〜
1mg/ml、1〜100mg/ml、1〜50mg/
mlおよび1〜50mg/mlとなる。
【0060】また、本発明のNANBV抗原ポリペプチ
ドは、輸血用血液のスクリーニングにも使用することが
できる。かかるスクリーニング法が包括しているのは: (a)全血液から血清を分離し、(b)未知血液の血清
と図2−1から図2−16に示すNANBVの全塩基配
列の塩基番号第333番から第9362番のコーディン
グ領域を含むデオキシリボ核酸によりコードされるアミ
ノ酸配列の少なくとも一部を含む少なくとも1つのアミ
ノ酸を含有する単離されたNANBV抗原ポリペプチド
とを接触させ、(c)その血清と該NANBV抗原ポリ
ペプチドとの反応の有無を決定し、(d)その反応性に
基づき非A非B型肝炎に対し陽性か陰性かを分類し、そ
して、(e)その同定に従いかかる血液の分別をするも
のである。
【0061】未知血液の血清と本発明のNANBV抗原
ポリペプチドとの接触およびその反応性の決定は、NA
NB型肝炎の診断方法に関する上述と同様の手段で実施
することが可能である。この方法により、NANBVに
感染していない輸血用血液を選別することができる。ま
た、本発明のNANBV抗原ポリペプチドに特定のポリ
クローナル抗体およびモノクローナル抗体を、輸血用血
液のNANBV除去剤として用いることができる。即
ち、血中に存在するNANBVを、抗原抗体反応により
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用い
て、効果的に除去し得る。
【0062】また、本発明のNANBV抗原ポリペプチ
ドは、NANB型肝炎ワクチンの活性要因として有利に
用いることが可能である。かかるNANB型肝炎ワクチ
ンは、以下のようにして調製することができる。該NA
NBV抗原ポリペプチドをコードするcDNAの担体で
ある組換えファージまたはプラスミドを含む形質転換体
の培養、あるいは該cDNAの担体である組換えウイル
スを感染させた細胞の培養を、上述と同じ方法にて実施
し、培養物内に該NANBV抗原ポリペプチドを産生さ
せる。これの毒性を除去し安全性を確実にするため、ま
たこれを固定しその免疫原性および抗原性を安定にする
ために、形質転換細胞または組換えウイルス感染細胞の
培養物あるいはこれらを除去することにより得られる培
地に、従来の不活化剤を加えることが望ましい。例え
ば、不活化剤として、フォルマリンを0.0001〜
0.001v/v%の量で加えた後、4〜30℃にて5
〜90日間培養することにより、かかる培養物または培
地を上述と同じ方法にて精製し、精製されたNANBV
抗原ポリペプチドを含むNANB型肝炎ワクチン原液を
得ることが可能である。
【0063】また、NANBVワクチン原液を、マイク
ロフィルターを用い標準的な方法で濾過し、溶液を除菌
した後、濾液を生理的塩溶液にてLowry法による蛋
白濃度の測定値が約1〜約500μg/mlとなるよう
希釈し、アジュバントとして水酸化アルミニウムゲル
を、添加したゲルの最終濃度が約0.1〜約1mg/m
lとなるよう添加する。アジュバントとしては、沈降ア
ジュバントのリン酸カルシウムゲル、リン酸アルミニウ
ムゲル、硫酸アルミニウム、アルミナおよびベントナイ
ト、また抗原産生を誘起するアジュバントのムラミルペ
プチド誘導体、ポリヌクレオチド、Krestin〔登
録商標、呉羽化学工業株式会社(日本)製販〕およびピ
シバニール(共に抗腫瘍剤)も使用することができる。
更に、かかる混合物に少なくとも1種の安定剤を添加す
ることができ、安定剤としては市販のいかなる安定剤も
用いることが可能であるが、それらには、例えばゼラチ
ン、それらの加水分解物、アルブミン、糖類のグルコー
ス、フルクトース、ガラクトース、スクロースおよびラ
クトース、またアミノ酸のグリシン、アラニン、リジ
ン、アルギニンおよびグルタミンが含まれる。
【0064】そして、ゲル吸着したNANBV抗原ポリ
ペプチドを含むNANB型肝炎ワクチン液をアンプルま
たはバイアル瓶等の小容器に分注し密封することによ
り、吸着したNANBV抗原ポリペプチドを含む精製さ
れた沈降NANB型肝炎ワクチンが得られる。
【0065】かくして得られたNANB型肝炎ワクチン
液を凍結乾燥し、乾燥NANB型肝炎ワクチンとするこ
とにより、過酷な環境、例えば熱帯での該生成物の輸送
と保存が可能となる。かかる凍結乾燥は一般に、液体沈
降NANB型肝炎ワクチンをバイアル瓶およびアンプル
等の容器に分注した後、標準的な方法に従って実施する
ことができ、凍結乾燥後に乾燥ワクチンを含む容器に窒
素ガスを注入し、密封する。尚、生成ワクチンの品質に
ついては、日本国厚生省告示第159号「生物学的製剤
基準」に規定の「沈降B型肝炎ワクチン」、「乾燥日本
脳炎ワクチン」および「沈降百日せきワクチン」に準拠
して試験する。
【0066】また、該NANB型肝炎ワクチンは、上述
の吸着NANBV抗原ポリペプチドおよび本NANBV
抗原ポリペプチド以外の少なくとも1つの抗原を含む混
合ワクチンの形で調製することが可能である。本NAN
BV抗原ポリペプチド以外の抗原としては、該NANB
V抗原ポリペプチドおよびこの他の抗原を組み合わせて
用いることに起因する副作用及び不都合な反応が付加的
または共同的に増加せず、またこれらの抗原性および免
疫原性がそれら相互の干渉により減少しない限り、対応
するワクチンの活性要因として従来用いられているいか
なる抗原も使用することが可能である。該NANBV抗
原ポリペプチドに混合することができる抗原の数と種類
は、上述のようにそれらの副作用および不都合な反応が
付加的または共同的に増加せず、またそれらの抗原性お
よび免疫原性が減少しない限り、制限されるものではな
い。一般に、2〜6種の抗原を該NANBV抗原ポリペ
プチドに混合することが可能であり、例として、日本脳
炎ウイルス、HFRS(腎症候性出血熱)ウイルス、イ
ンフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、
B型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、エイズウイル
ス、百日咳菌、ジフテリア菌、破傷風菌、髄膜炎菌、肺
炎双球菌等に由来の無毒化抗原、不活化抗原または変性
毒素が含まれる。
【0067】一般に、本発明のNANBV抗原ポリペプ
チドを含むワクチンは、アンプル等のバイアル瓶に注入
し密封の後、液体または懸濁液の形で投与することがで
きる。乾燥ワクチンを用いる場合は、投与前に凍結乾燥
前の元の体積となるよう滅菌蒸留水に溶解または懸濁す
る。一般に、このワクチンは皮下投与にて使用し、その
投与量は、被投与者当たり約0.5mlであるが、子供
に対しては成人の半量のワクチンを投与する。また、か
かるワクチンは、通常約1週間〜1ヵ月の間隔にて2回
接種した後、約半年後にさらに1回投与する。
【0068】更に、該NANBV抗原ポリペプチドは、
それに特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナ
ル抗体等の抗体の調製に用いることも可能である。例え
ば、該NANBV抗原ポリペプチドに特異的なポリクロ
ーナル抗体は、以下の常法により調製することができ
る。まず本発明の精製されたNANBV抗原ポリペプチ
ドを、マウス、モルモット、ウサギ等の動物の皮下、筋
肉内、腹腔内または静脈内に、通常1〜4週間の間隔に
て数回接種し、かかる動物を完全に免疫する。免疫効果
を高めるために、従来の市販のアジュバントを使用する
ことができる。次いで、免疫した動物から血清を採取し
た後、標準的な方法に従って血清から抗NANBV抗原
ポリペプチドポリクローナル抗体を単離精製する。
【0069】一方、該NANBVに特異的なモノクロー
ナル抗体は、例えば「細胞光学」第1巻の23〜29ペ
ージ(1982年)に述べられている常法により調製す
ることができる。例えば、精製されたNANBV抗原に
て免疫したマウスから得られた脾細胞と市販のマウスミ
エローマ細胞を細胞融合技術により融合し、ハイブリド
ーマを得た後、これらのハイブリドーマをふるい分けて
該NANBV抗原ポリペプチドに反応する抗体を産生す
る能力を有するハイブリドーマを得る。これを標準的な
方法にて培養し、培地の上清から抗NANBV抗原ポリ
ペプチドモノクローナル抗体を単離精製する。
【0070】また、上述のポリクローナル抗体およびモ
ノクローナル抗体は、NANB型肝炎の診断剤としても
用いることが可能である。かかる抗体を用いるNANB
型肝炎の診断は、該NANBV抗原ポリペプチドを用い
るNANB型肝炎の診断に関する上述の方法と実質的に
同様にして実施することができる。ポリクローナル抗体
またはモノクローナル抗体を用いることにより、肝組織
および血中に存在する該NANBV抗原ポリペプチドの
同定および定量が可能となる。
【0071】更に、本発明のNANBV遺伝子cDNA
は、本発明に規定されたNANBV遺伝子cDNAを適
切な制限酵素にて消化することにより調製することがで
きる。また、本発明の遺伝子cDNAは、本明細書の図
2−1から図2−16に示す塩基配列に従ってDNA合
成技術により調製することができる。DNA合成による
該NANBV遺伝子cDNAの調製は、DNA合成機モ
デル380B〔Applied Biosystem社
(米国)製販〕、DNA Synthesizerモデ
ル8700〔Biosearch社(米国)製販〕等の
従来のDNA合成機を使用して実施することが可能であ
る。本発明のNANBV遺伝子cDNAは、NANBV
感染の遺伝子診断の実施に、即ち、本発明のNANBV
遺伝子cDNAをポリメラーゼチェインリアクション
(PCR)のプライマーとして、患者の体液または細胞
内のNANBV遺伝子の検出に使用することができる。
ポリメラーゼチェインリアクションによる診断には、該
NANBV遺伝子cDNAを10〜100ng用いる。
【0072】また、本発明のNANBV遺伝子cDNA
は、ハイブリダイゼーション技術によってもNANB型
肝炎の診断に用いることが可能である。即ち、該NAN
BV遺伝子cDNAを、例えばビオチン、アルカリ性ホ
スファターゼ、放射性同位元素32P等にて標識し、標準
的な方法、例えば以下の方法により調製してハイブリダ
イゼーション技術による診断に供することができる。ま
ず、上述(V)で得られた該NANBVcDNAを含む
組換えファージを適切な制限酵素にて処理し、該NAN
BVcDNAを含むDNA断片を切り出した後、市販の
複製可能な組換えクローニングプラスミドに連結し、こ
のDNA断片を含む組換えプラスミドを得る。この組換
えプラスミドを宿主細胞内に導入して形質転換体を形成
させ、これを培養して組換えプラスミドを増殖させた
後、形質転換体より単離して制限酵素にて消化し、低融
点アガロースゲル電気泳動にかけ、該NANBV抗原ポ
リペプチドをコードするcDNAを単離精製する。この
ようにして得られたcDNAを、ビオチン、アルカリ性
ホスファターゼ、放射性同位元素32P等で標識する。
尚、かかる標識には市販のニックトランスレーションキ
ットまたはマルチプライムDNA標識システム〔Ame
rsham社(英国)、ニッポンジーン(日本)社等製
販〕を用いて実施することができる。標識されたcDN
Aは、約5〜20mlのアンプル等の容器に入れ、密封
する。このcDNAの量は、1つの容器につき一般に1
〜100ugであり、液体または凍結乾燥状態で、容器
に注入することができる。この標識されたcDNAを用
いるNANB型肝炎の診断は、標準的なハイブリダイゼ
ーション法により実施される。即ち、患者から得られた
血漿、血清または白血球を標識されたcDNAに接触さ
せ、この標識されたcDNAとハイブリダイズしたRN
Aを標準的な方法により検出する。このcDNAが酵素
で標識されているときはエンザイムイムノアッセイによ
り、放射性同位体で標識されているときは例えばシンチ
レーション計測により検出を行う。
【0073】
【実施例】以下、本発明について実施例を挙げて説明す
る。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されるもの
ではない。 実施例1 (1)NANBVゲノムRNAに相補的なcDNAを作
製するための血漿由来RNAの調製:血漿よりNANB
Vを得るため、グルタミック−ピルビック トランスア
ミナーゼ(GPT)活性(Wroblewsiki,F
& J.S.LaDue:Serum glutam
ic pyruvic transaminasein
cardiac and hepatic dise
ase.Proc.Soc.Exp.Biol.Me
d.,91:569,1956に従い測定)が、35I
U/lまたはそれ以上を示す4.8lのヒト血漿を蔗糖
30%(W/W)溶液に重層後、遠心(48,000×
g、13時間、4℃)し、沈殿を50mM Tris・
HCl pH 8.0−1mM EDTA溶液に懸濁し
て、再び遠心(250,000×g、3時間、4℃)
後、得られた沈殿を75mlの5.5M GTC溶液
(5.5M グアニジンチオシアネート、20mM ク
エン酸ソーダ pH7.0、0.05% サルコシール
(ラウリルサルコシン酸ナトリウム)、0.1M 2−
メルカプトエタノール)に溶解し、16mlのCsTF
A−0.1M EDTA溶液(ρ=1.51)上に重層
の後、遠心(140,000×g、20時間、15℃)
してRNAを沈殿させる。上清中のたん白質やDNAを
吸引して除き、沈殿を200μlのTE(10mM T
ris・HClpH8.0,1mM EDTA)溶液に
溶解し、20μlの3M 塩化ナトリウムとエタノール
を加え、−70℃に90分間静置する。遠心(12,0
00×g、30分、4℃)し、沈殿をTEに溶解し、上
記と同様に、塩化ナトリウムとエタノールを加え、−7
0℃で静置し、生じた沈殿を10μlのTEに溶解し精
製RNAを得た。
【0074】(2)NANBVゲノムRNAに相補的な
cDNAの作製の為の肝臓由来RNAの調製:NANB
型肝炎患者の切除肝より岡山等の方法(H.Okaya
ma,M.Kawaichi,M.Brownstei
n,F.Lee,T.Yokota,and K.Ar
ai:High−Efficiency Clonin
g of Full−Length cDNA;Con
struction andScreening of
cDNA Expression Librarie
s for Mammalian Cells.Met
hods in Enzymology 154.3−
28,1987)でNANBVゲノムRNAを調製し
た。
【0075】即ち、切除肝1gを細片化し、上記(1)
の100mlの5.5M GTC溶液に懸濁し、テフロ
ン−ガラスホモジナイザーを用いてホモジナイズした。
次いで、♯18注射針付注射器を挿入して、ホモジネー
トを出し入れして、DNAを機械的に切断する。低速遠
心(1,500×g、15分、4℃)して得られた上清
を、上記(1)に記載したと実質的に同様の方法でCs
TFA溶液上に重層し、遠心後、得られた沈殿のRNA
画分を、0.4mlの4M GTC溶液に懸濁し、10
μlの1M酢酸および300μlのエタノールを加え、
−20℃で少なくとも3時間静置しRNAを沈殿させ
る。遠心(12,000×g、10分、4℃)して、沈
殿をTE溶液に溶解し、100μlの2M 塩化ナトリ
ウム溶液および3mlのエタノールを加え、−20℃に
3時間静置し、生じた沈殿を遠心にて回収し、10μl
のTEに溶解して肝臓由来のRNAを精製した。
【0076】(3)cDNA合成キットを用いた二本鎖
cDNAの調製:市販のcDNA合成キット〔Amer
sham社(英国)製販〕を用いて二本鎖cDNAを調
製した。即ち、上記(1)で得られた精製RNA0.7
5μgをキットに添付の試薬類、2μlのランダムヘキ
サヌクレオチドプライマー、2μlの逆転写酵素液を加
え、蒸留水で全量を20μlとして、反応液を以下のよ
うに42℃にて40分間インキュベートし、cDNAの
ファーストストランドを合成し、次いで、氷水中にて冷
やしながら、セカンドストランドの合成を行った。先ず
反応液20μlにキット添付のセカンドストランド合成
反応用緩衝液37.5μlと大腸菌リボヌクレアーゼH
を1μl、DNAポリメラーゼI 6.6μlを加え、
更に、34.9μlの蒸留水を加えた。12℃で60分
間、次いで、22℃で60分間反応後、更に70℃で1
0分間インキュベートし、氷水にて再度冷やし、T4D
NAポリメラーゼを1μl加え、37℃で10分間イン
キュベート後、4μlの0.25M EDTA(pH
8.0)を加え、反応を停止させ、フェノール/クロロ
ホルムをよく混和後、遠心(12,000×g、1分
間)し、水層を分離した。水層は更に上述の抽出操作を
1回繰り返した後、クロロホルムを等量加え、よく撹拌
の後、遠心して水層を分離し、次いで等量の4M酢酸ア
ンモニウムと2倍量のエタノールを加え、−70℃にて
冷やし、精製した二本鎖cDNAを沈殿させた。沈殿は
50μlの2M酢酸アンモニウムに溶解後、100μl
のエタノールを加え、−70℃にて再び沈殿させ、遠心
(12,000×g、10分)により沈殿を回収し、乾
燥した後、20μlのTEに溶解した。
【0077】(4)ポリメラーゼチェインリアクション
(PCR)法による二本鎖cDNAの調製:上記(1)
および(2)で調製したRNAを鋳型として、逆転写酵
素を用いて調製したcDNAを、夫々PCR法(Sai
ki,R.K;Gelfand,D.H;Stoffe
r,S;Scharf,S.J;Higuchi,R;
Horn,G.T;Mullis,K.B;and E
rlich,H.A.:Primer−directe
d enzymatic amplification
of DNA with a thermostab
le DNA polymerase. Scienc
239:487−491,1988)により増幅し
た。即ち、RNA5〜1,000ngを20μlの逆転
写酵素液{50mM Tris・HCl pH 8.
3,40mM KCl,6mM MgCl2、1μM
3’−プライマーG(図2−14の塩基番号第7949
番から第7973番の25個の塩基を含む合成オリゴヌ
クレオチド)、10mMのdNTPおよび0.5単位の
逆転写酵素〔New England Bio La
b.,(米国)〕}中で37℃、30分間インキュベー
トする。次いで、80μlのPCR反応液{18mM
Tris・HCl pH 8.3、48mM KCl、
1.5mM MgCl2、0.6μMずつの5’−プラ
イマー(図2−13の塩基番号第7612番から第76
36番の25個の塩基を含む合成オリゴヌクレオチド)
および上記の3’−プライマー、10mMのdNTPお
よび2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ〔Per
kin Elmer Cetus社(米国)製販〕を加
え、94℃で1分間、50℃で2分間、72℃で3分間
のインキュベーションを40回繰り返し、アガロースゲ
ル電気泳動にて、増幅されたcDNAを回収した。フェ
ノール処理および、エタノール沈殿させた後乾燥させ、
10μlのTEに溶解した。
【0078】(5)ラムダgt11を用いたcDNAラ
イブラリーの作製:市販のcDNAクローニングキット
〔Amersham社(英国)製販〕を用いて、cDN
Aライブラリーを作製した。即ち、上記(3)で調製し
た130ngのcDNAにクローニングキットに添付の
L/K緩衝液2μl、EcoRIアダプター2μl、T
4DNAリガーゼ2μlを加え、更に蒸留水にて全量を
20μlとし、15℃にて16〜20時間インキュベー
ト後、0.25M EDTAを2μl加え、反応を停止
させた。次いで、キットに添付されているサイズ分画カ
ラムを通し、cDNAに連結されなかったEcoRIア
ダプターを除去した後、EcoRIアダプター連結cD
NA700μlにL/K緩衝液83μlとT4ポリヌク
レオチドキナーゼ8μlを加えて37℃にて30分間イ
ンキュベートする。次いで、フェノール抽出を2回し、
ブタノールにて350〜400μlに濃縮し、エタノー
ル沈殿させたものを5μlのTEに溶解した。
【0079】次に、クローニングベクターラムダgt1
1のEcoRI部位にEcoRIアダプター付加cDN
Aを挿入するために、上記のEcoRIアダプター連結
cDNA1μl(10ng)にL/K緩衝液1μl、ラ
ムダgt11アームDNA2μl(1μg)およびT4
DNAリガーゼ2μlを加え、蒸留水にて混合液の全量
を10μlとして、15℃で16〜20時間インキュベ
ートして組換えラムダgt11DNA液を作製した。更
に、in vitroパッケージングを行い、組換えラ
ムダファージを得るため、市販のin vitroパッ
ケージングキット〔Stratagene社(米国)製
販〕のGigapackII GoldのA液10μl
とB液15μlを上記の組換えラムダgt11DNA液
4μlに加え、22℃にて2時間インキュベート後、添
付のSM緩衝液470μlとクロロホルム10μlを加
え、組換えファージを4℃に保存した。
【0080】(6)大腸菌プラスミドpUC19を用い
たcDNAクローニング:市販のDNAライゲーション
キット〔宝酒造社(日本)製販〕を用いて、cDNAを
大腸菌プラスミドpUC19(C.Yanishi−P
erron,J.Vieira,J.Messing,
Gene 33,103,1985)に挿入し、大腸菌
にてクローニングした。即ち、上記(4)でポリメラー
ゼチェインリアクション(PCR)法にて調製したcD
NA5μlと制限酵素SmaIで切断後、脱リン酸化し
たプラスミドpUC19DNA 5μl(50ng)に
キット添付のA液40μlとB液10μlを加え、15
℃にて16時間インキュベートする。この様にして得ら
れたプラスミドDNAで大腸菌JM109株(Mess
ing,J;Crea,R.and Seeburg,
P.H.,Nucleic Acids Res.9,
309,1981)を塩化カルシウム法(Mande
l,M.and A.Higa,J.Mol.Bio
l.,53,154,1970)により形質転換し、c
DNAを連結したプラスミドを含む形質転換大腸菌を得
た。
【0081】(7)cDNAライブラリーからのNAN
BV遺伝子を有するクローンのスクリーニング:大腸菌
Y1090株(Richard A.Young an
d Ronald W.Davis,Science,
222,778,1983)を50mlのLBM培地
(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナト
リウム、50μg/mlアンピシリンおよび0.4%マ
ルトース)にて37℃で培養し、対数増殖期の大腸菌細
胞を氷冷した15mlの10mM硫酸マグネシウムに懸
濁した。上記(5)で得られたファージ液をSM緩衝液
(0.1M塩化ナトリウム、8mM硫酸マグネシウム、
50mM Tris・HCl pH7.5、0.01%
ゲラチン)にて希釈し、この希釈ファージ液0.1ml
と上記大腸菌細胞懸濁液を等量混合して、37℃にて1
5分間インキュベート後、45℃に加温した4mlの軟
寒天培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.
5%塩化ナトリウム、0.25%硫酸マグネシウムおよ
び0.7%寒天 pH7.0)を加え、L−寒天培地
(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナト
リウム、100μg/mlアンピシリン pH7.0)
のプレートにまき、42℃で3時間インキュベートし
た。次いで、10mM IPTG(Isopropyl
β−D−thiogalactopyranosid
e)を浸み込ませ、乾燥させたニトロセルロースフィル
ターをプレート上に密着させ、更に37℃にて3時間イ
ンキュベートした。分離したフィルターをTBS緩衝液
で3回洗浄し、2%ウシ血清アルブミン液に浸し、室温
にて1時間インキュベートした。市販のイムノスクリー
ニングキット〔Amersham社(英国)製販〕に添
付の大腸菌溶解液をNANB型肝炎患者血清に1/20
容量加えて、室温に30分インキュベートした後、0.
2%ウシ血清アルブミン加TBS緩衝液にて50倍希釈
したものにこのフィルターを浸し、室温にて1時間反応
させた。
【0082】得られたフィルターは0.05%Twee
n20を含むTBS緩衝液にて4回洗浄し、パーオキシ
ダーゼ標識抗ヒトIgG〔Cappel社(独)製販〕
を1000倍希釈した抗体液に1時間浸し、上述のTw
een−TBS緩衝液にて洗浄し、50mlのTBS緩
衝液に0.4mlのDAB(3,3’−diamino
benzidine tetrahydrochlor
ide)と30%過酸化水素液15μlを加えた液に浸
し、5〜30分間、室温にてインキュベートし発色さ
せ、フィルターを蒸留水で完全に水洗し反応を停止し
た。
【0083】上記の操作により、得られたプラークの純
化を行い、9個の陽性クローンを単離した。これらのク
ローンを夫々、BK102、BK103、BK105、
BK106、BK108、BK109、BK110、B
K111およびBK112と命名した。これ等のクロー
ンはいずれも正常人血清とは反応せず、NANB型肝炎
患者血清と特異的に反応した(第1表)。
【0084】 第1表 NANBV型肝炎患者血清と組換えラムダgt11ファージクローンの 反応性 正常人 クローン 血 清 NANB型肝炎患者血清 BK102 0/10* 10/11 BK103 0/10 9/11 BK105 0/10 11/11 BK106 0/10 11/11 BK108 0/10 9/11 BK109 0/10 9/11 BK110 0/10 9/11 BK111 0/10 9/11BK112 0/10 10/11 *:陽性数/検体数
【0085】(8)得られたクローンの塩基配列の決
定:クローンBK102〜BK112の組換え体ファー
ジDNAを回収し、制限酵素EcoRIで消化後、NA
NBVのcDNA断片を単離し、個別にプラスミドpU
C19のEcoRIサイトに組込み、プラスミドを用い
て大腸菌JM109株を上記(7)と実質的に同様の方
法で形質転換した。これ等の形質転換大腸菌よりプラス
ミドDNAを精製し、7−DEAZAシークエンスキッ
ト〔宝酒造社(日本)製販、Mizusawa,S.,
Nishimura,S.and Seela,F.,
Nucleic Acids Res.,14,131
9,1986〕を用いて夫々のNANBVcDNAの塩
基配列の決定を行った。得られたcDNAクローンの塩
基配列の相互関係を図1−1に示した。
【0086】(9)ジーンウォーキングによるcDNA
ライブラリからのNANBVcDNAクローンのクロー
ニング:上記(8)で得たクローンBK102、BK1
06およびクローンBK112のcDNA断片を32P−
dCTPでラベルしたプローブを調製し、上記(5)で
得たクローニングベクターラムダgt11のcDNAラ
イブラリーからハイブリダイゼーションによりNANB
VcDNAを含有するファージクローンを得た。即ち、
上記(8)で得たクローンBK102、BK106およ
びBK112の形質転換大腸菌よりアルカリ法(Man
iatis T.,Fritsch E.F.,and
Sambrook J.:Isolation of
Bacteriophage and Plasmi
d DNA:“MolecularCloning”C
old Spring Harbor Lab.,pp
75−96.)にてプラスミドDNAを調製した。
【0087】クローンBK102のプラスミドDNAは
制限酵素NcoIとHincIIにより消化し、生じた
該DNAの5’末端側の0.7Kbの断片をアガロース
ゲル電気泳動後、回収した。クローンBK106および
クローンBK112のプラスミドDNAは制限酵素Nc
oIで消化し、上述と同様にして、クローンBK106
からは1.1KbのDNA断片を、また、クローンBK
112からは3’末端側の0.7Kbの断片をそれぞれ
回収した。25ng〜1μgのDNA断片を、市販のD
NAラベリングキット(ニッポンジーン社製)を用い
〔α−32P〕dCTP〔3000Ci/mmol、Am
ersham社(英国)製〕で、37℃にて3〜5時間
インキュベートすることにより、ハイブリダイゼーショ
ン用のプローブを調製した。
【0088】次に、上記(5)で得られたcDNAライ
ブラリーのファージを、上記(7)に記載のごとくL−
寒天培地にて42℃で3時間、次いで、37℃で3時間
インキュベート後、冷却し、ニトロセルロースフィルタ
ーをのせ30〜60秒放置して、ファージをフィルター
に吸着させた。0.5N水酸化ナトリウム−1.5M塩
化ナトリウム液で1〜5分アルカリ変性し、0.5M
Tris・HCl pH8.0−1.5M塩化ナトリウ
ム液で1〜5分中和後、2×SSC液(0.3M塩化ナ
トリウム−0.03Mクエン酸ナトリウム)で洗浄し、
風乾後80℃で2時間焼付けを行った。
【0089】このフィルターをハイブリダイゼーション
液(50%ホルムアミド、5×SSC、5×Denha
rt液、50mMリン酸クエン酸緩衝液 pH6.5、
100μg/ml鮭精子DNAおよび0.1%SDS)
にて42℃、6時間インキュベートした後、上記の約4
×108cpm/mlのプローブを1ml加えた上記の
ハイブリダイゼーション液300mlに再び浸し、42
℃にて16〜20時間インキュベートし、0.1% 2
×SSCを含むSDS液で4回、0.1% 0.1×S
SCを含むSDS液で2回洗浄後、乾燥し、オートラジ
オグラフィーを行い、ハイブリダイゼーション陽性を示
すクローンを単離した。この結果、クローンBK102
由来のプローブと反応する27クローン、クローンBK
106由来のプローブと反応する14クローンおよび、
クローンBK112由来のプローブと反応する13クロ
ーンを得、夫々のクローンはBK114〜BK169と
順次命名した。
【0090】更に、上記(8)に記載のごとくクローン
BK114〜BK169夫々の塩基配列の決定を行い、
各クローンのマッピングを行ったところ、NANBVゲ
ノムのほぼ全長と考えられる約9.5Kbの長さを有す
る塩基配列がマップされた(図1−2)。この内、5’
末端側に位置するクローンBK157の制限酵素Kpn
I消化により5’末端側0.55Kbの断片を回収し、
また3’の最末端側に位置するクローンBK116の制
限酵素HpaIとEcoRIの消化により3’末端側
0.55Kbの断片を回収し、上記のごとく32Pで標識
したプローブを調製し、上記(5)で得られたcDNA
ライブラリーのファージをプラークハイブリダイゼーシ
ョンした結果、クローンBK157由来のプローブによ
り新たに3個のクローンを分離し、夫々クローンBK1
70、BK171およびBK172と命名した。
【0091】(10)cDNAの塩基配列の解析:上記
(8)および(9)により得られたクローンの塩基配列
からNANBV遺伝子の全塩基配列を決定し、図2−1
から図2−16に示した。これらの図より、クローニン
グされたNANBV遺伝子cDNAは9416塩基より
成り、この内に9030塩基から成るオープンリーディ
ングフレームが存在し、3010個のアミノ酸残基のポ
リプロテインがコードされていると推定された。このプ
ロテインの親水性/疎水性のパターンは、既に報告され
ているフラビウイルスのパターン(Sumiyoshi
H.,MoriC.,Fuke I. et a
l.,Complete Nucleotide Se
quence of the Japanese En
cephalitis Virus Genome R
NA. Virology,161,497−510,
1987)に類似していた。代表的クローンとしてBK
157(塩基番号第1番から第1962番)、クローン
BK172(第5番から第366番)、クローンBK1
53(第338番から第1802番)、クローンBK1
38(第1755番から第5124番)、クローンBK
129(第4104番から第6973番)、クローンB
K108(第6886番から第8344番)、およびク
ローンBK166(第8082番から第9416番)挙
げることができる。これ等のクローンは、夫々、Esc
herichia coli BK108(微工研条寄
第2971号)、BK129(微工研条寄第2972
号)、BK138(微工研条寄第2973号)、BK1
53(微工研条寄第2974号)、BK157(微工研
条寄第3243号)、BK166(微工研条寄第297
5号)およびBK172(微工研条寄第2976号)と
して保存した。更に上記クローンに加え、BKシリーズ
の代表例として、次の5クローンが微工研に寄託されて
いる:BK102(微工研条寄第3384号)、BK1
06(微工研条寄第3385号)、BK112(微工研
条寄第3386号)、BK146(微工研条寄第338
7号)、BK147(微工研条寄第3388号)。
【0092】(11)NANBV感染に併う抗体応答に
関連したNANBV関連抗原の大腸菌における産生:上
記(8)で得られたクローンBK106、BK111、
およびBK112と上記(9)で得られたクローンBK
147の夫々のcDNAが個別に挿入されたプラスミド
DNAを従来のアルカリ法にて回収した。次いで、クロ
ーンBK106の回収されたDNAは制限酵素EcoR
IおよびClaIで消化し、0.34KbのDNA断片
0.5μgを得、T4DNAポリメラーゼ反応液(67
mMTris・HCl pH8.8,6.7mM塩化マ
グネシウム、16.6mM硫酸アンモニウム、10mM
2−メルカプトエタノール、6.7μM EDTA、
0.02%ウシ血清アルブミン、0.3mM dNTP
および2〜5単位のT4DNAポリメラーゼ)中で、3
7℃にて60分、インキュベートし、両末端を平滑にし
た。クローンBK102のDNAは制限酵素BamHI
で消化し、0.7KbのDNA断片0.5μgを上記と
同様にしてT4DNAポリメラーゼを用いて末端を平滑
にした。クローンBK147のDNAは制限酵素Sau
3AIで消化し、1KbのDNA断片0.5μgを上記
と同様にして末端を平滑にした。また、クローンBK1
11のDNAは制限酵素EcoRIで消化し、1Kbの
DNA断片0.5μgを実質的に上記と同様にして末端
を平滑にした。次に、発現ベクターpKK233−2
(Amann,E.and Brosius,J.AT
G vector for regulated hi
gh−level expression of cl
oned genes in Escherichia
coli.Gene, 40,183,1985)の
DNAを制限酵素HindIIIで消化後、このDNA
2μgをS1ヌクレアーゼ液(0.3M塩化ナトリウ
ム、50mM酢酸ナトリウム pH4.5、1mM硫酸
亜鉛および100〜200単位のS1ヌクレアーゼ)中
で、37℃にて20分間インキュベートし、0.12M
EDTAおよび1M Tris・HCl(pH9.
0)液を1/10容量加えて反応を停止し、フェノール
抽出を行った後、平滑末端となったベクターDNAをエ
タノールで沈殿させ回収した。一方、ベクターpKK2
33−2のDNAは制限酵素PstIで消化後、フェノ
ール抽出とエタノール沈殿により精製した後、このDN
A2μgを上記のT4ポリメラーゼ反応により末端を平
滑にした。この様にして得たクローンBK106および
BK111由来のDNA断片は0.5μg夫々制限酵素
HindIIIで開裂後、また、クローンBK102お
よびBK147由来のDNA断片0.5μgは夫々制限
酵素PstIで開裂後、平滑末端としたベクターDNA
0.5μgと混合し、2μlの10×ライゲーション液
(500mM Tris・HCl pH7.5、100
mM塩化マグネシウム、100mM DTT、10mM
ATP、300〜400単位のT4DNAリガーゼお
よび蒸留水)を加えて夫々20μlに調整して、14℃
にて12〜18時間インキュベートし、得られたプラス
ミドを夫々、pCE−06、pE−11、pB−02、
およびpS−09と命名した。次に、これらのプラスミ
ドDNAを用い、実質的に上記(6)に記載のごとく大
腸菌JM109株を形質転換し、形質転換大腸菌を得、
LB培地(1% W/Vトリプトン、0.5% W/V
イーストエキストラクト、および1% W/V塩化ナト
リウム、pH7.5)で37℃にて培養し、対数増殖期
に1mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラ
クトピラノシド)を添加し、更に3時間培養した。更に
大腸菌細胞を遠心(10,000×g、15分間)によ
り回収し、50mM Tris・HCl(pH8.0)
に溶解し、超音波処理(20KHz、600W,5分
間)後、遠心(10,000×g、15分間)により上
清と沈殿に分画し、夫々をサンプル緩衝液(20% V
/Vグリセロール、0.1M Tris・HClpH
6.8、2% W/V SDS、2% V/V 2−メ
ルカプトエタノール、および0.02% BPB)に溶
解し、100℃で30分間加熱後、0.1% SDS−
7.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、蛋白を分
離し、トランス・ブロットセル〔BIO・RAD社(米
国)製販〕にてニトロセルロースフィルターに転写し
た。次いで、フィルターを3%ゲラチン液に浸し、60
分放置後、100倍希釈したNANB型肝炎患者血清と
室温にて2〜3時間インキュベートし、まず蒸留水で、
次にTTBS液(0.02M Tris・HCl pH
7.5、0.5M塩化ナトリウムおよび0.05% V
/V Tween20)で洗浄した。次いで、2000
倍希釈したパーオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体液に
浸し、室温にて90分間インキュベートした。そして、
蒸留水およびTTBSで洗浄した後、上記(7)に記載
のごとく発色剤DABおよび基質の30%過酸化水素液
をくわえた緩衝液に5〜30分間浸し、水洗して反応を
停止した。
【0093】この結果、第2表に示すごとくいずれのプ
ラスミドの産生する抗原もNANB型肝炎患者の血清と
特異的に反応し、これらのプラスミドに挿入されたcD
NAの産生する蛋白が臨床的に重要であることが示され
た。 第2表 各種プラスミドの産生する蛋白とNANB型肝炎患者血清のウエスタン ブロット法による反応性 cDNA NANB型肝炎 健常人 プラスミド の由来 抽出物 患者血清 血清 pCE−066 BK106 S ± − P + − pE−11−89 BK111 S ± − P + − pB−02−10 BK102 S + − P − − pS−09−7 BK109 S ± − P + − pKK233−3 − S − − P − − S:遠心上清 P:遠心沈渣 +:陽性 ±:弱陽性 −:陰性
【0094】(12)大腸菌の産生したNANBV関連
抗原の精製および肝疾患患者血清との反応性: 発現ベ
クターに挿入されたcDNAの産生する蛋白の有用性
は、これらの蛋白を精製し、ELISAまたはラジオイ
ムノアッセイ用抗原として用いる事によって示された。
即ち、上記(11)で得た形質転換大腸菌の菌体破砕液
を遠心(10,000×g、15分間)により上清と沈
殿に分画した。例えば、形質転換体JM109/pCE
066より得られた沈殿を100mM Tris・HC
l(pH8.0)−0.1% Triton X−10
0溶液に懸濁し、超音波処理(20KHz、600W、
1分間)後、遠心(21,000×g、15分間)し
て、沈殿を100mM Tris・HCl(pH8.
0)−6M尿素に再懸濁後、超音波処理を行った。
【0095】得られた上清は、10mMリン酸緩衝液
(pH7.5)−6M尿素に対し透析し、抗原液を20
ml、上述の緩衝液にて平衡化したヒドロキシアパタイ
ト充填カラム(21.5×250mm)に通し抗原を充
填物に吸着させ、高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)により上述緩衝液中で塩化ナトリウムの0〜2M直
線濃度勾配溶出を行い、抗原を含む画分を得、50mM
炭酸緩衝液(pH9.6)−0.05%ドデシル硫酸ナ
トリウム(SDS)に透析した。
【0096】また、形質転換体JM109/pB−02
−10の菌体破砕液の遠心上清(10,000×g、1
5分間)を35%飽和硫酸アンモニウム処理し、得られ
た沈殿を50mM Tris・HCl(pH8.5)−
100mM 2−メルカプトエタノールに溶解して、同
緩衝液に透析した。次いで、同緩衝液にて平衡化したD
EAE−セルロースカラム(22.0×200mm)に
透析済の試料100mlを通し抗原を充填物に吸着さ
せ、高速液体クロマトグラフィーにより50mMTri
s・HCl(pH8.5)−100mM 2−メルカプ
トエタノール中で塩化ナトリウムの0〜2M直線濃度勾
配溶出を行い、抗原を含む画分をプールした。
【0097】この画分は10mMリン酸緩衝液(pH
6.8)−100mM 2−メルカプトエタノールに透
析し、同緩衝液にて平衡化したHPLC用ハイドロキシ
アパタイトカラムを通し抗原を充填物に吸着させた後、
高速液体クロマトグラフィーによりリン酸の10〜40
0mM直線濃度勾配溶出を行い、抗原を含む画分をプー
ルし、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)−0.05%
SDS液に透析した。更に、形質転換体JM109/p
E−11−89の菌体破砕液の遠心沈殿は、10mMリ
ン酸緩衝液(pH5.5)に懸濁し、超音波処理を1分
間行い、遠心(21,000×g、15分間)した。得
られた沈殿は100mM炭酸緩衝液(pH10.5)−
500mM塩化ナトリウム−10mM EDTA溶液に
懸濁し、再び超音波処理を1分間行い、遠心上清を30
mMリン酸緩衝液−6M尿素に対し透析した。次いで、
透析に用いたと同様の緩衝液で平衡化した高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)用CM−セルロースカラム
(22×200mm)に20mlの透析液を通し抗原を
充填物に吸着させ、同緩衝液中で塩化ナトリウムの0〜
1.5M直線濃度勾配溶出を行い、抗原を含む画分を
得、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)−0.05%S
DSに透析し、抗原液を得た。
【0098】上記のごとく調製した抗原は、ELISA
用抗原として、NANB型肝炎ウイルス感染の臨床的診
断に用いることができた。夫々の上記の精製抗原を蛋白
濃度1μg/mlに調製し、ELISA用マイクロプレ
ート・イムロン600〔IMMULON(登録商標)、
Greiner社(独)製販〕の各ウェルに分注し、4
℃にて一夜静置する。各ウェルはPBS−T緩衝液(1
0mMリン酸緩衝液pH7.2、0.8%塩化ナトリウ
ムおよび0.05% Tween20)で3回よく洗浄
し、PBS−T緩衝液で希釈した被検血清を100μl
/ウェル加え、37℃にて1時間反応させた。PBS−
T緩衝液で3回洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトI
gG抗体〔Cappel社(独)製販〕を10%牛胎児
血清を含むPBS−T緩衝液にて8,000倍希釈した
ものを各ウェルに100μlづつ加え、37℃にて1時
間反応後、再び、PBS−T緩衝液で4回洗浄し、基質
発色剤溶液(9mlの0.05Mクエン酸−リン酸緩衝
液に0.5μgのo−フェニレンジアミンと過酸化水素
水20μlを含む)を各ウェルに100μlづつ加え、
プレートを遮光して室温で60分静置した。4N硫酸を
各ウェルに75μlづつ加え、490nmの吸光度を測
定した。第3表に示した結果から明らかなように、いず
れの形質転換体由来抗原もNANB型肝炎患者血清と特
異的に反応することから、これらの形質転換体の産生す
る抗原の臨床診断における有用性が実証された。
【0099】 第3表 各種形質転換大腸菌より精製した抗原とNANB型肝炎患者血清とのE LISAによる反応性 抗原の由来 輸血後肝炎患者血清 健常人 (形質転換大腸菌) 急性 慢性 肝硬変 肝癌 血清 JM109/pCE−066 2/3* 7/8 3/4 3/3 0/10 JM109/pB−02−10 2/3 8/8 4/4 3/3 0/10 JM109/pE−11−89 2/3 8/8 2/4 3/3 0/10 *:陽性数/検体数
【0100】第3表に示した結果は、上記の抗原を用い
たラジオイムノアッセイによっても得ることが出来た。
即ち、1μg/mlの濃度の上記精製抗原液0.2ml
づつに、直径1/4インチのポリスチレンボール〔ペー
ゼル社(独)製販〕を加え、4℃にて一夜静置する。次
いで、上記ELISAに用いたPBS−T緩衝液にてポ
リスチレンボールを5回洗浄し、被検血清をPBS−T
緩衝液で20〜2500倍希釈したものを200μlづ
つ加え、37℃にて60分間反応させる。PBS−T緩
衝液で5回洗浄し、125I−標識抗ヒトIgG抗体を2
00μlづつ加えて37℃にて1時間反応させた後、P
BS−T緩衝液で5回洗浄し、スチレンボールに結合し
ている125Iのcpmを測定する事により、第3表に示
したと同様の結果が得られ、先に得られた精製抗原のN
ANB型肝炎ウイルス感染の臨床診断における有用性が
示された。
【0101】応用例1 合成ポリペプチドの反応性に関する試験:抗体分子は抗
原分子上に存在する“エピトープ”として知られる特定
の領域の構造と反応するが、これらの特定な領域は抗原
分子上の親水性領域に見られる。この様な特定領域を有
する抗原ポリペプチドは、高い反応特異性を持つ有用な
臨床診断剤を容易に調製し得るものと考えられる。NA
NBVのエピトープは、図2−1から図2−16に示さ
れたNANBV遺伝子cDNAがコードするアミノ酸配
列の親水性/疎水性パターンより推定される。即ち、図
2−1に示される塩基番号第333番から第422番、
図2−1および図2−2に示される塩基番号第474番
から第563番、図2−8に示される塩基番号第448
5番から第4574番、および図2−10に示される塩
基番号第5544番から第5633番にコードされるア
ミノ酸残基を夫々含有するポリペプチドBKP−106
−1、BKP−106−2、BKP−102−1、およ
びBKP−147−1を合成した。夫々のポリペプチド
は1μg/mlの濃度に調製し、実施例1の(12)に
記載と同様の方法により、ELISA用マイクロプレー
トに固相化し、ELISA法にて、NANB型肝炎患者
血清との反応性を試験した。第4表に示した結果から明
らかなように、いずれの合成ペプチドもNANB型肝炎
患者の血清と特異的に反応することから、上記の塩基配
列の特定領域の臨床診断における重要性が示された。
【0102】 第4表 合成ポリペプチドとNANB型肝炎患者血清との反応性 NANB型肝炎患者血清 合成ポリペプチド 急性 慢性 健常人 BKP−106−1 2/5 5/5 0/5 BKP−106−2 2/5 5/5 0/5 BKP−102−1 3/5 5/5 0/5 BKP−147−1 2/5 5/5 0/5 更に、NANBVのエンベロープ蛋白上のエピトープを
推定し、3種の蛋白を合成した。即ち、図2−2に示さ
れる塩基番号第906番から第953番および第102
0番から第1046番と、図2−2および図2−3に示
される塩基番号第1194番から第1232番にコ−ド
される蛋白を合成した。これ等のポリペプチドはいずれ
も、NANBVの株により抗原変異が生じると考えられ
るエンベロープ領域に対応するものであり、かつ、EL
ISA法により、NANB型肝炎患者血清との間での反
応が確認されたため、上述の蛋白は疫学調査、臨床診断
および予防接種において重要かつ有用である。
【0103】応用例2 PCR(Polymerase Chain Reac
tion)法によるNANBV核酸の検出:輸血後NA
NB型肝炎発症予防には、輸血に供される血液中のNA
NBVの感染の有無を検定することが重要であり、ま
た、肝疾患の診断のため、肝組織のNANBV感染の有
無について検討することは、臨床的に極めて重要である
が、本発明のNANBVcDNAよりポリメラーゼチェ
インリアクション(PCR)用プライマーを有利に調製
し、NANB型肝炎診断に用いることができる。即ち、
実施例1の(1)に記載のごとく、1mlの血清につい
てRNAの精製およびcDNAの調製を行った。同様に
実施例1の(2)に記載のごとく、肝臓細胞よりcDN
Aを調製した。次いで、実施例1の(4)に記載のごと
く、PCRおよび電気泳動を行い、常法に従い、サザー
ンハイブリダイゼーションによる増幅されたcDNAが
NANBV由来のものであるかの同定を、NANBVc
DNAクローンBK108由来のcDNAより作成した
32P−標識プローブを用いて行った。 第5表に示した
結果から明らかなように、本発明により得られたNAN
BVcDNAの塩基配列より調製したプライマーおよび
クローニングされたNANBVcDNAの断片をプロー
ブとして用いる事により、血清中のNANBV核酸の検
出を行い、血清のNANBV感染を診断することができ
る。
【0104】 第5表 PCRによるNANBV核酸の検出 検 体 NANBVに対する抗体 PCR 慢性肝炎患者血清 NANB型 1 + + 2 + + HBVキャリアー1 − − 2 − − 健常人 1 − − 2 − − NANB型肝癌の 切除肝−1 + 癌部 + 非癌部 + NANB型肝癌の 切除肝−2 + 癌部 + 非癌部 +
【0105】
【発明の作用と効果】
(1)本発明のNANBV遺伝子cDNAは信頼性が非
常に高く、NANBV遺伝子のオープンリーディングフ
レームの全領域を包含するものである。 (2)本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、NAN
BVと特異的に反応するため、該NANBV抗原ポリペ
プチドを診断剤として用いた場合と、NANB型肝炎の
診断を高い信頼性をもって容易に実施することができ
る。 (3)本発明のNANBV抗原ポリペプチドを輸血用血
液のスクリーニングに用いた場合と、NANBV感染の
血液を高い信頼性をもって容易に選別し、非感染の血液
から除去することができるため、血液伝播型のNANB
型肝炎の予防が可能となる。 (4)本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、NAN
B型肝炎を予防するワクチンの活性要因として有利に用
いることが可能である。 (5)本発明のNANBV抗原ポリペプチドにより、N
ANBVに特異的な抗体、特にモノクローナル抗体を、
容易に調製することができ、このNANBVに特異的な
抗体は、NANB型肝炎検出の診断剤のみならず輸血用
血液からのNANBVの除去剤としても有利に使用する
ことができる。 (6)更にまた、本発明のNANBV抗原ポリペプチド
が動物のウイルス感染ではなく宿主細胞内に存在する抗
原ポリペプチドをコードするDNAの遺伝子発現により
産生されることに注目すべきであるため、この抗原ポリ
ペプチドの産生段階中の感染の可能性は、実質的に排除
され、且つ産生コストも減少させることができ、産生工
程において用いられる全ての物質、例えば培養系に用い
る培地はその組成に関してはよく知られているため、精
製がたやすく、高純度の抗原ポリペプチド生成物を得る
ことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1−1および図1−2は、NANBVの全領
域に対する本発明のNANBV遺伝子のcDNAクロー
ン間の関係を示す。
【図2】図2−1から図2−16は、本発明のNANB
V遺伝子cDNA全領域の塩基配列および該塩基配列に
コードされるアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【図3】図3は、本発明のNANBV遺伝子cDNAお
よび日本脳炎ウイルス(JEV)遺伝子がコードする両
蛋白の間の疎水性指標(疎水性/親水性パターン)の比
較を示す。横軸はアミノ酸No.、縦軸は疎水性指標、
白三角は糖鎖結合可能部位、アステリスクはRNAポリ
メラーゼ共通のアミノ酸配列(Gly−Asp−As
p)部位、C、M、EおよびNSはそれぞれ、コア蛋
白、マトリックス蛋白、エンベロープ蛋白、および非構
造蛋白を意味する。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成3年9月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
Aおよび抗原ポリペプチド
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上利用の分野】本発明は、非A非B型肝炎ウイル
ス遺伝子cDNAおよび非A非B型肝炎ウイルス抗原ポ
リペプチドに関するものである。更に詳しくは、非A非
B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチドの産生に有用な非A
非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNAおよびその発現産物
である非A非B型肝炎抗原ポリペプチドに関するもので
ある。本発明の非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDNA
は、非A非B型肝炎のウイルス抗原をコードする遺伝子
及び遺伝子診断剤として有用である。特に、本発明の非
A非B型肝炎抗原ポリペプチドは非A非B型肝炎ワクチ
ンや免疫グロブリン、ポリクローナル又はモノクローナ
ル抗体、免疫学的診断剤、輸血用血液のスクリーニング
剤およびアフィニティーカラムクロマトグラフィーによ
る輸血用血液中のNANBV除去剤等の製造に有用であ
る。
【0002】
【従来の技術とその問題点】 〔非A非B型肝炎ウイルスの定義〕:周知の通り、ウイ
ルス性肝炎は肝炎ウイルスの感染に因り生じる肝疾患で
あり、該病原ウイルスとしては現在、A型、B型、およ
びD型(デルタ)の各肝炎ウイルスが分離同定されてい
る。尚、D型肝炎ウイルス(デルタ肝炎ウイルス)は、
単独では増殖不能の欠損ウイルスであり、その増殖には
常にヘルパーウイルスとしてB型肝炎ウイルスを要する
ため、B型肝炎患者においてのみ存在する。ところが、
1974年にA型並びにB型各肝炎ウイルスの両感染に
因らないウイルス性肝炎例の多数存在することが初めて
報告された。爾来、これに関する研究が世界各地で精力
的に進められ、斯かる肝炎例の総称として、非A非B
(non−A,non−B)型肝炎なる用語が使用され
るに至った。現在、非A非B肝炎の病原ウイルスは数種
類、存在すると考えられている。非A非B型肝炎ウイル
スは、その感染経路により、次の2つに大別される:水
や食物を介して水系伝染する流行性肝炎型ないしは経口
感染型(enterically−trasmitte
d non−A,non−B);および主として血液を
介して伝播し輸血後などに多発する血液伝播型(blo
od−transmitted non−A,non−
B)。そして、斯かるウイルスの分離・同定に関して
は、アフリカ、インド、東南アジアを侵淫地とする既に
ウイルス学的に確定済みの経口感染性非A非B型肝炎ウ
イルスを除き、ウイルス学上の一般承認を得たウイルス
は未だ知られていない。以下、特に断りのない限り、用
語「NANB型肝炎」は血液伝播型非A非B型肝炎を、
また、用語「NANBV」は血液伝播型非A非B型肝炎
ウイルスをそれぞれ意味する。
【0003】〔NANB型肝炎研究の現状と課題〕:N
ANB型肝炎の疫学、臨床、診断、治療、予防に関する
研究は、NANBV型肝炎と他の肝炎との比較の下で、
ウイルス学、診断学、組織病理学、免疫学、分子生物学
等の知識と技術を駆使し、世界各地で進められている
[日本医事新報、No.3320、3−10、1987
年;医学のあゆみ、151(13),735−923,
1989;肝胆膵,21(1),5−113,199
0;実験医学,(3),201−233,199
0]。例えば、NANB型肝炎に関しては、下記の通り
報告されている。
【0004】(イ)疫学:日本のNANB型肝炎患者数
は厚生省の推計によれば、慢性肝炎患者の約60%(約
72万人)、肝硬変患者の約40%(約10万人)、お
よび肝癌患者の約40%(約7千人)であり、これによ
る死亡者数は毎年16,000人に達している。また、
米国では年間15万〜30万例の輸血後肝炎が発生し、
その90%が該NANB型肝炎であり、更に、供血者の
1〜6%がNANBVキャリアーだと考えられている。
その他の諸外国でも、米国および日本と同程度またはそ
れ以上の発症率並びにキャリアー率であると推定される
ため、NANB型肝炎の予防、早期診断および治療法の
確立は、世界的に極めて重要である。
【0005】(ロ)ウイルス学:現在までに既報のNA
NBVは、エンベロープを有する直径約50nmの球状
であり、ウイルス分類学上トガウイルスやフラビウイル
スに近似しているか、あるいは全く新しいタイプのウイ
ルスと考えられている。また、NANB型肝炎患者血清
を静脈内接種したチンパンジー肝細胞における細胞質内
管状構造形成の有無や核内粒子出現の病理学的所見、疫
学的所見、クロロホルム感受性の有無および、免疫学的
診断等に基づき、2種以上のNANBVの存在が推定さ
れている(例えば、Science,205,197−
200,1979;Journal of Infec
tious Disease,148,254−26
5,1983;微生物、(5)、463−475、1
989)。特に、A型及びB型両肝炎に比べ、患者の血
中NANBV量は極端に少なく、例えば、Chimpa
nzee Infectious Dose(CID)
は、B型では10−10CID/mlであるのに対
し,NANB型では10−10CID/mlである
(Bradley D.W.:Research Pe
rspectives in Post−transf
usion non−A,non−B hepatit
is, in “Infection,Immunit
yand Blood Transfusion”ed
ited byDodd R.Y.& Barker,
L.F;Alan R.Liss,Inc.New Y
ork, 81−97,1985)。更にヒト以外の感
染実験系に関し、NANBV感染により肝細胞質内に典
型的な細胞質内管状構造を形成するチンパンジーのみが
感受性動物として知られている現状では、この基礎研究
に希少かつ高価なチンパンジーを多数頭要することにな
り、その入手に係る供給制限と経済的制約が、NANB
Vに関する決定的な感染実験、同定、マーカーの発見等
を困難にし、遅延させている。それゆえ、かかる問題を
打開するため、NANBV研究に係る様々な戦略が試み
られている。例えば、NANB型肝炎発症チンパンジー
の血漿からC型肝炎ウイルス(HCV)と称するNAN
BV遺伝子cDNAをクローン化し(Science,
244,359−362,1989)、更に、該遺伝子
を発現させて得たC−100と称する抗原がNANB型
肝炎患者の血中抗体と抗原抗体反応することを確認(S
cience,244,362−364,1989);
上例のようにチンパンジーを用いることなく、NANB
型肝炎患者血漿から直接NANBV遺伝子cDNAをク
ローン化し、斯かる遺伝子を発現させて得た抗原がNA
NB型肝炎患者血清の抗体と抗原抗体反応を生じること
を確認(Gastroenterologia Jap
onica,24,540−544,および545−5
48,1989等が公知である。
【0006】(ハ)臨床:一般に肝炎は、発生の集団と
頻度により流行性肝炎や散発性肝炎、また、重症度や病
期に基づき、急性肝炎、劇症肝炎、亜急性肝炎、持続性
肝炎、慢性肝炎等に分類されている。NANB型肝炎の
潜伏期は2〜26週であり、その初期症状はB型肝炎に
比し発熱、倦怠感などを伴う程度で軽く、70%が無黄
疸であるため、見過ごす確率が高い。しかし、NANB
型肝炎の特徴とその恐ろしさは慢性化し易く更に、肝硬
変へと移行することにある。例えば、血清中のアミノト
ランスフェラーゼ活性の上昇が観察されたNANB型肝
炎例のうち、40〜50%の率で慢性化が起こり、慢性
化した症例のうち10〜20%が肝硬変に陥っている。
また、受血者の年間0.5〜1%が自覚症状なしに肝硬
変へと進展する。不幸にも、更に進めば、肝細胞癌ない
しは肝癌に陥ると考えられている。従って、輸血のみな
らず出血に係るバイオハザード防止のため、NANB型
肝炎の根絶は公衆衛生上の観点から世界的に極めて重要
である。
【0007】(ニ)診断:上述の通り、NANBV(血
液伝播型)は未だ同定されておらず、診断用の確実なマ
ーカーが知られていないので、NANB型肝炎の診断は
A型とB型両肝炎、サイトメガロ、EB、水痘、単純ヘ
ルペス等の起炎性の各既知ウイルスに特定な患者の血清
中の抗体価の検査に基づく除外診断、および肝生検によ
る組織病理学的診断に頼らざるを得ない(S.Shen
lock,Disease of the liver
and filiary system,,326
−333,Blackwell Scientific
Publications 1989)。そして、こ
れ等と平行して例えば血清酵素、GPT〔グルタミン酸
ピルビン酸トランスアミナーゼ;別名:ALT(アラニ
ンアミノトランスフェラーゼ)〕、GOT〔(グルタミ
ン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ;別名:AST
(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)〕、グア
ニンデアミナーゼ(別名:グアナーゼ)等の活性の測定
(肝胆膵、第14巻、519−522、1987年);
上記の血清中のGPTないしはGOT活性の経時的異常
高値の継続に基づく診断基準(日本輸血学会誌、31
(4)、316−320、1985;日本臨牀、46
2635−2638、1988)等が採用されている。
また、免疫学的診断に関しては、上述の通りNANBV
の分離と同定が困難な現状では、遺伝子工学的技術や免
疫学的知識を駆使して分離したNANBVcDNAのク
ローンを発現させることにより得られる抗原とNANB
型肝炎患者血清との間の抗原抗体反応が採用されてい
る。例えば、抗原として、NANB型肝炎患者血漿に由
来のNANBVcDNA発現産物(欧州公開特許公報第
363025号)、NANB型肝炎発症チンパンジー血
漿に由来のHCVcDNA発現産物(欧州公開特許公報
第318216号、又は特開平2−500880)、N
ANBV感染チンパンジー肝に由来のNANBVcDN
A発現産物(欧州公開特許公報第293274号、又は
特開昭64−2576および特開平1−124387)
等が公知であり、また、抗原抗体反応による測定方法と
して、RIA(ラジオイムノアッセイ)、EIA(エン
ザイムイムノアッセイ)が常用されている。しかし、か
かる発現産物の抗原性は互いに共通性に乏しく、また、
例えば、前述HCVcDNAの発現産物即ち前述のC−
100抗原は、HCV感染による漫性肝炎診断の一応の
指標と目安にはなるが、抗原性を呈する反応領域が狭い
ため(微生物、、463−475、1989;肝胆
膵、20、47−51、1990;医学のあゆみ、15
、871、1989)、治療に要するNANB型肝炎
ないしはNANBV感染の確定診断、慢性肝炎および急
性肝炎の経過の判定には不十分であると考えられる。従
って、NANB型肝炎の診断、及び経過と治療の判定を
確実にするため、更に詳細なウイルス学的及び免疫学的
究明の展開が期待されている。
【0008】(ホ)治療と予防:最近、慢性NANB型
肝炎の治療におけるαおよびβインターフェロンの有用
性が報告されている(肝胆膵、20、59−64、19
90;医学のあゆみ、151、871−876、198
9)。しかし、適切な投与量、投与期間等に関しては未
だ確定されていない。−方、NANB型肝炎の予防剤、
例えば、ワクチンについては、前述のNANBVcDN
Aの発現産物(欧州公開特許公報第363025号)お
よびHCVcDNAの発現産物(欧州公開特許公報第3
18216号)等をワクチン用抗原として用いる技術が
公知である。しかし、NANBVそれ自体が未確定の現
状では、多様な抗原決定基(エピトープ)を有する上記
発現産物からNANBVワクチン用抗原を特定し、斯か
る特定抗原の安全性と有効性を臨床的に確定するには、
更に詳細な試験研究と長時間を要するため、NANBV
ワクチンは未だ市販の域には達していない。
【0009】
【問題を解決するための手段】本発明者等は、前述の課
題を克服するため鋭意研究を重ねた結果、公知のNAN
BVcDNAに比し優れて信頼性が高く、しかも、公知
のNANBVcDNAに比べ最長鎖であり、遺伝子のオ
ープンリーディングフレーム全領域とノンコーディング
領域とを有するNANBV遺伝子cDNAをクローン化
すると共に、かかるcDNAクローンを発現させること
により、慢性のみならず急性のNANB型肝炎患者血清
とも優れて特異的に抗原抗体反応を呈するNANBV抗
原の生産と取得に成功した。かかる成功は、真正な(a
uthentic)NANBV遺伝子を得るために、血
中あるいは切除肝細胞片中のNANBV量が著しく低く
A型あるいはB型肝炎のそれに比し約1万分の1である
にもかかわらず、NANBVの分離を困難にすると考え
られている未知の迷入因子を有するチンパンジーを用い
てNANBVを増幅することなく、真正なNANBV含
有の信頼性が最も高いヒト由来の新鮮材料、すなわち、
NANB型肝炎患者の全血あるいはNANB型肝炎に合
併の肝癌患者の切除肝細片に含まれるNANBV粒子か
ら直接、無傷または可能な限り長鎖のRNAを抽出する
という本発明者らの独特な技術によるものであり、また
これは、新鮮な遺伝子分離材料の取扱いと保存下でNA
NBVとその遺伝子が体液や血中の酵素により開裂・分
解されないよう細心の操作を行ったことによるものであ
る。このようにしてヒト由来の新鮮材料から調製したR
NAを逆転写酵素やDNAポリメラーゼI等を用いて二
本鎖cDNAとし、cDNAライブラリーを得、次い
で、該cDNAライブラリーからNANBV遺伝子をス
クリーニングするため、各cDNAをそれぞれラムダg
t11ファージベクターに挿入し、ファージプラーク上
に高濃度に発現させた後、かかる発現産物と急性NAN
B型肝炎回復期患者血清および慢性NANB型肝炎患者
血清を用いるエンザイムイムノアッセイ(EIA)を繰
り返し行なうことにより、NANBV遺伝子cDNAを
スクリーニングすることに成功した。このようにして、
バイオハザードを生じることなく大量かつ安価に精製さ
れたNANBV抗原ポリペプチドの着実な産生が、組換
えDNA技術を用いた本発明cDNAの発現により初め
て認められた。本発明はこれ等の知見に基づいて完成さ
れたものである。
【0010】従って、本発明は、NANB型肝炎ウイル
ス遺伝子cDNAの提供を目的とする。さらに本発明
は、NANB型肝炎に対する診断剤およびワクチンの有
効成分として有用なNANB型肝炎ウイルス抗原ポリペ
プチドの提供を目的とする。さらに本発明は、NANB
V抗原ポリペプチドの産生方法の提供を目的とする。ま
た本発明は、NANB型肝炎に対する診断剤の提供を目
的とする。またさらに本発明は、NANB型肝炎に対す
るワクチンの提供を目的とする。本発明の上記および他
の諸目的、諸特徴および諸利点は、添付の図面を参照し
て行った以下の詳細な説明と特許請求の範囲の記載から
明らかになろう。
【0011】基本的に、本発明によれば、図2−1から
図2−16に示す塩基番号第1番から第9416番の非
A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の少なくとも一部を
含む第一の塩基配列および第一の塩基配列に相補的な塩
基配列からなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基配
列を包含するか、または第一の塩基配列の少なくとも1
つの塩基を遺伝子コドンの縮重により置換して得られる
少なくとも1つの塩基配列を包含する単離されたデオキ
シリボ核酸が提供される。
【0012】また本発明の他の態様によれば、図2−1
から図2−16に示される非A非B型肝炎ウイルスの全
塩基配列の塩基番号第333番から9362番のコーデ
ィング領域を含むデオキシリボ核酸によりコードされる
アミノ酸配列の少なくとも一部を含むアミノ酸配列を含
有する、単離された抗原ポリペプチドが提供される。
【0013】本発明において、特にことわらない限り、
デオキシリボヌクレオチドの配列の左端と右端は、それ
ぞれ5’末端と3’末端である。また、特にことわらな
い限り、ペプチドのアミノ酸配列の左端と右端は、それ
ぞれN末端とC末端である。本発明のNANBV遺伝子
cDNAおよびその発現産物としてのNANBV抗原ポ
リペプチドは、以下の工程(I)〜(VII)に従って
調製し同定することができる。
【0014】(I)NANBV遺伝子のRNA抽出材料
の選別と採取:NANBVのRNAの抽出材料として
は、NANBVのキャリアーあるいはこれに罹患したヒ
トまたはチンパンジーの血液、リンパ液、腹水、肝細
胞、およびNANB型肝炎に合併した肝細胞癌または肝
癌患者の肝細胞が使用できる。特に、チンパンジー由来
の材料中にはNANBV量がヒトのそれに比し少なく、
NANBVの分離を困難にする迷入因子の混入の可能性
が高いため、ヒト由来材料の使用が望ましい。血液、リ
ンパ液、腹水および肝細胞のうち、血液が最も容易に、
大量に得ることができ、例えば、輸血用血液として使用
に耐えない血液を血液銀行から大量に入手することがで
きる。このような血液は、NANBV遺伝子RNAの抽
出材料として、有利に使用することが可能である。血液
を材料として用いる場合は、まず血液を血漿と赤血球に
分別し、このようにして得られた血漿が、B型肝炎ウイ
ルスの表面抗原(WHO expert commit
tee on viral hepatitis:Ad
vances in viral hepatiti
s,WHO Technical Report Se
ries,602,28−33,1977)およびB型
肝炎ウイルスの遺伝子DNA(Brechot,C;H
adchouel,M;Scotto,J;Dego
s,F;Charnay,P;Trepo,C;Tio
llais,P:Detection ofhepat
itis B virus DNA in liver
andserum:a direct apprai
sal of the chronic carrie
r state.Lancet,,765−768,
1981)に陰性であるか否かを決定し、また該血漿
を、NANB型肝炎の診断の目安として採用されている
血清酵素、例えば、GPT(Wroblewski,
F.&LaDue,J.S.:Serum gluta
mic−pyruvictransaminase i
n cardiac and hepaticdise
ase,Proc.Soc.Exp.Biol.Me
d.,91,569,1956.)、GOT、グアナー
ゼ等の活性に関して検査する。上記の血液を血漿と赤血
球に分別しまた該血漿を検査するという工程を、種々の
血液について行い、B型肝炎ウイルスの表面抗原および
遺伝子cDNAの両方に陰性で、かつ上記酵素の活性が
異常高値、例えば、GPT活性が35IU/l以上の血
漿をプールする。
【0015】血中のNANB型肝炎ウイルス粒子数は、
前述のB型肝炎ウイルス粒子数に比し非常に少ない。感
染実験の結果から(Bradley,D.W.:Res
earch perspectives in pos
t−transfusionnon−A,non−B
heratitis: “Infection,Imm
unity and Blood Transfusi
on”editedby Dodd,R.Y.& Ba
rker,L.F.,Alan R.Liss,In
c.,New York,81−97,1985)、N
ANB型肝炎ウイルス粒子数は、B型肝炎ウイルス粒子
数の約1万分の1であることが予想されるので、該RN
Aの抽出には大量の、例えば、約3〜101の血液の使
用が望ましい。そしてこの新鮮全血は、ウイルス粒子か
らNANBVのRNAを抽出する材料として用い、NA
NBVとその遺伝子の変性および酵素による遺伝子の開
裂・分解を避けるため、1〜5℃に保存し、また、新鮮
全血採取後48〜72時間以内に下記工程(II)によ
りNANBVのRNAの調製を完了することが望まし
い。また、肝細胞を材料として用いる場合は、NANB
慢性肝炎に合併した肝細胞癌または肝癌患者から得られ
る非癌部および癌部の切除肝組織片それぞれ約1〜3g
を使用することができる。材料として用いる肝細胞は、
例えば−70℃に凍結保存する。
【0016】(II)NANBVのRNAの調製:上記
(1)で得られた材料から、公知の手段によりRNAを
抽出および精製することができる。例えば、新鮮全血を
材料として用いる場合は、血液約2〜101を低速遠心
にかけ、上清の血漿画分を採取し、この血漿からウイル
ス画分を精製して得た後、下記のRNA抽出精製工程に
供する。
【0017】一方、肝細片をNANBVのRNA抽出材
料として用いる場合は、その体積の約5〜30倍容の下
記のRNA分解酵素阻害剤を含む希釈液を肝組織に添加
の後、公知の手段、例えば、ホモジナイザー等より、肝
組織を破砕ないし磨砕することにより、肝細胞のホモジ
ェネートを得る。尚、希釈液としては、10〜150m
Mの公知の緩衡液を使用することができる。次いで、こ
れを低速遠心にかけ、上清を採取した後、該上清をRN
A抽出精製の原液として用いる。RNAの抽出精製には
公知の方法、例えば、ヘパリン、ジエチルピロカルボネ
ート、グアニジンチオシアネート等のRNA分解酵素阻
害剤と界面活性剤、キレート剤または蛋白変性を増強す
る還元剤との混合液を用いる抽出法;蔗糖、セシウムク
ロライド、セシウムトリクロロ酢酸、フイコール[Ph
armacia Fine Chemicals AB
社(スウェーデン)]等を溶質として用いる密度勾配遠
心による分画法;mRNAが特異的に有する3’末端の
ポリA鎖を利用するアフィニティーカラムによる分離
法;ポリソーム上で合成された蛋白に対する特異的抗体
を用いる免疫沈降によりmRNA結合ポリソームを得る
分別法;2相分配の原理に基づくフェノール抽出法;ポ
リエチレングリコール、デキストラン硫酸、アルコール
等による沈殿法を個別に、または組み合わせて使用する
ことができる。尚、上記のNANBVのRNAの抽出と
精製工程は、RNAの不可逆的変性を避けるためpH3
〜10での実施が望ましい。
【0018】(III)NANBVのRNAからの二本
鎖cDNAの調製:先に得られたNANBVのRNAを
使用し、常法によりcDNAを調製することができる。
即ち、プライマーとしてオリゴデオキシチミジンおよび
ランダムヘキサヌクレオチドプライマーと逆転写酵素を
用い、該NANBVのRNAを鋳型として用いてそれに
相補的なcDNAを合成し、互いに相補的に結合した該
cDNAと該NANBVのRNAからなる二本鎖を得、
次いで、これにリボヌクレアーゼHを作用させて該NA
NBVのRNAを分解し該cDNAから除去した後、こ
の一本鎖cDNAを鋳型としてDNA合成酵素により二
本鎖cDNAを合成する。二本鎖cDNA合成は、市販
のcDNA合成キット、例えば、cDNA Synth
esisSystem Plus(登録商標)〔Ame
rsham社(英国)製〕、cDNA System
Kit(登録商標)〔Pharmacia LKB社
(スウェーデン)製〕、cDNA Synthesis
Kit(登録商標)〔Boehringer Man
nheim GmbH社(独)製〕等を用いて容易に実
施することができる。合成したcDNAが少量の場合に
は、常法のPCR(Polymerase Chain
Reaction)法(Erlich,H.A :
“PCR Technology,Stockton
Press,1989)により、PCR用キットのAm
pliTaq〔Perkin Elmer Cetus
社(米国)製〕)を用いて増幅することができる。
【0019】(IV)cDNAライブラリーの作成:
(III)で調製したcDNAを使用し、常法によりc
DNAライブラリーを作成する。すなわち、(III)
で調製した種々の長さのcDNAをクローニングベクタ
ーに連結することによりcDNAライブラリーを得る。
クローニングベクターとしては、例えば、ファージ遺伝
子、コスミド、プラスミドおよび動物ウイルス遺伝子等
の公知または市販のベクターを使用することができる。
組換え可能なベクターとしてファージ遺伝子またはコス
ミドを使用する場合には、夫々のcDNA断片を個別に
挿入した該ベクターの高度の安定化および形質転換体の
出現率を達成するため、常法により試験管内パッケージ
ングを行い、各cDNAが挿入されたベクターを組換え
ファージ粒子の形で得た後、これ等のファージ粒子の集
団をcDNAライブラリーとしてcDNAのクローニン
グに供する。一方、組み換え可能なベクターとしてプラ
スミドを使用する場合には、上述の各cDNA断片をプ
ラスミドベクターに挿入し、これ等のcDNA挿入ベク
ターを常法に従って夫々大腸菌、枯草菌、酵母等の宿主
細胞に移入して得た形質転換体をcDNAライブラリー
としてcDNAのクローニングに供する。また、組換え
可能なベクターとして動物ウイルス遺伝子を使用する場
合には、上述のcDNA断片を各々ウイルス遺伝子ベク
ターに挿入し、これ等の各組換えウイルスを常法に従っ
て感受性動物細胞にトランスフェクトし、細胞内で増殖
させる。このようにして、得られた組換えウイルスその
ものをcDNAライブラリーとして用いる。
【0020】該cDNAライブラリー作成の簡便法とし
て、市販のキット、例えば、cDNAクローニングシス
テム ラムダgt10およびラムダgt11〔Amer
sham社(英国),BRL社(米国),Strata
gene社(米国)製販〕、インビトロ パッケージン
グシステム〔Amersham社(英国),BRL社
(米国),Stratagene社(米国)製販〕等を
用いて実施することができる。
【0021】(V)cDNAライブラリーからのNAN
BV遺伝子cDNAのクローニング:この工程におい
て、NANBV遺伝子を含むcDNAクローンが得られ
る。cDNAライブラリーが形質転換体の場合には、こ
れ等の形質転換体を寒天培地において培養しコロニーを
形成させる。一方、cDNAライブラリーが組換えファ
ージ粒子または組換えウイルスの場合には、これ等の組
換えファージ粒子または組換えウイルスを公知の大腸
菌、枯草菌、酵母、動物細胞培養物等の感受性宿主細胞
に感染後、培養することによりプラークを形成させる
か、または感染細胞を増殖させる。そして、公知のイム
ノアッセイの下で、急性NANB型肝炎患者回復期血
清、慢性NANB型肝炎患者血清、肝細胞質内管状構造
形成型あるいは非形成型に関わりなくNANBVに感染
のチンパンジー血清を用い、NANBV抗原を特異的に
産生するコロニー、プラークまたは感染細胞を、上述の
血清中の少なくとも1つと反応させることにより、選別
単離する。コロニーの厳密な選別のため、前の工程を繰
り返し、選別単離した各コロニー、プラークまたは感染
細胞から、T.Maniatis等によるMolecu
lar Cloning,A Laboratory
Manual(Cold Spring Labora
tory[U.S.A],309−433,1982)
に従って、NANBV遺伝子cDNAクローンを分離す
る。上記イムノアッセイは、例えば、酵素のパーオキシ
ダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼで標識した抗体
を用いる酵素標識抗体技術、フルオレセインイソチオシ
アネートまたはユーロピウムで標識した抗体を用いる蛍
光抗体技術により実施することができる。上述の技術に
よるイムノアッセイでは、微量の患者血清を使用して
も、高感度のイムノアッセイを達成することができる間
接法による実施が望ましい。この間接法においては、一
次抗体としてはNANBVに特異的な抗体の含有量が比
較的多いNANB型肝炎患者やNANB型肝炎チンパン
ジーの血清の採用が望ましく、二次抗体としては酵素ま
たは蛍光物質等で標識した市販の抗ヒトIg(Immu
noglobulin)抗体の使用が可能である。
【0022】また、イムノアッセイ用の検体は、常法、
例えば、フィルター膜にコロニー、プラークまたは感染
細胞の核酸および蛋白を吸着させるブロッティング法、
マイクロプレートまたは検鏡用スライドガラスを用いる
方法等に従って調製することができる。ブロッティング
法を間接酵素抗体技術と合わせて用いると、多数のコロ
ニー、プラークまたは感染細胞からの所望のコロニー、
プラークまたは感染細胞の選別を、容易にしかも迅速に
実施することができる。この方法では、材質がニトロセ
ルロース、セルロースアセテート、ナイロン等である市
販のフィルターをこれらのコロニー、プラークまたは感
染細胞に密着させ、ブロッティングを行う。
【0023】この様にして得たcDNAクローンは、N
ANBV遺伝子cDNAの一部であるので、該NANB
V遺伝子の全領域をカバーするcDNAクローンを得る
ため、、、該cDNAクローンに近傍のcDNA断片
を、該cDNAクローンの5’または3’末端部をプロ
ーブとして用いて単離する方法により、cDNAを伸長
させる必要がある。この場合には、ジーンウォーキング
(別称、genomicwalkingまたはchro
mosome walking)を採用することができ
る(“DNA Cloning Volume II
I”、D.M.Glover編、37−39、IRL
Press,1987;T.Maniatis et
al.,“Molecular Cloning −
a laboratory manual”、3.2
1−3.23、1989)。クローニング操作とジーン
ウォーキングとを繰り返し行うことにより、NANBV
遺伝子全領域をcDNAクローンの形で得ることが出来
る。
【0024】この段階では、得られた各cDNAクロー
ンについての塩基配列の決定が望ましい。該cDNAク
ローンのかかる塩基配列の決定は、常法、例えば、マキ
サム−ギルバート法、ジデオキシチェーンターミネータ
ー法(AnalyticalBiochemistr
y、152、232−238,1986)等により行う
ことができる。
【0025】また、決定した塩基配列に基づき、アミノ
酸配列を決定することができる。該アミノ酸のシーケン
シングは、開始コドン(cDNAのATGまたはmRN
A上のAUG)の位置を確認することにより順次行な
う。かかるアミノ酸配列の重要部分、例えば、エピトー
プを構成すると考えられる親水性部位は、夫々の親水性
部位に対応するペプチドを合成し、高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)で精製の後、これ等のペプチドを
エンザイムイムノアッセイ(EIA)またはラジオイム
ノアッセイ(RIA)に供することにより確認すること
ができる。
【0026】また、該cDNAクローンについては、各
クローンを相互に区別するため、いくつかの群に分類す
ることが望ましい。例えば、NANBV遺伝子の制限酵
素地図上における、各cDNAクローンの位置付けを分
類のための指標として使用することができる(図1−1
および図1−2)。また、NANBVにはチンパンジー
肝細胞質内に管状構造形成能を有するものと、有しない
ものが知られているため(Science、205、1
97−200、1979)、各cDNAクローンの発現
産物と、チンパンジー肝細胞質内に管状構造を形成する
型のNANBVに感染したチンパンジー血清と、管状構
造を形成しない型のチンパンジー血清との血清学的反応
性を検査することにより、これ等のクローンを識別し分
類することができる。斯かる血清学的反応性の検査は、
上述のイムノアッセイにより行うことができる。
【0027】本発明において図1−1および図1−2に
示される本発明NANBV遺伝子のcDNAクローンに
は、接頭辞“BK”を付ける。図1−1は、該NANB
V遺伝子の全領域における本発明NANBV遺伝子の各
cDNAクローンが占める位置範囲を示す図である。ま
た図1−2は、該NANBV遺伝子の全領域におけるジ
ーンウォーキングにより得られた各cDNAクローンが
占める位置範囲を示す図である。
【0028】NANBVcDNAクローンは、例えば、
Escherichia coliBK108(微工研
条寄第2971号)、BK129(微工研条寄第297
2号)、BK138(微工研条寄第2973号)BK1
53(微工研条寄第2974号)、BK157(微工研
条寄第3243号),BK166(微工研条寄第297
5号)およびBK172(微工研条寄第2976号)を
含むものである。これらの7つのBK NANBVcD
NAクローンは、少なくともNANBV遺伝子のオープ
ンリーディングフレーム全領域、ないしは、おそらくN
ANBV遺伝子全領域をカバーしていると考えられる。
更に上記クローンに加え、BKシリーズの代表例とし
て、次の5クローンが微工研に寄託されている:BK1
02(微工研条寄第3384号)、BK106(微工研
条寄第3385号)、BK112(微工研条寄第338
6号)、BK146(微工研条寄第3387号)、BK
147(微工研条寄第3388号)。
【0029】上述のBK NANBVcDNAクローン
によってカバーされるNANBV遺伝子全領域の塩基配
列と、これらがコードするアミノ酸配列は、図2−1か
ら図2−16に示される。図2−1から図2−16に開
示の全NANBV塩基配列と全NANBVアミノ酸配列
に基づき、該NANBV遺伝子の塩基配列およびアミノ
酸配列と他のウイルス遺伝子のそれらの配列とのホモロ
ジー、アミノ酸配列の疎水性指標(疎水性/親水性プロ
フィール)、NANBV遺伝子の構造、エピトープ(抗
原決定基)領域等に関して種々の研究および観察を行う
ことができる。
【0030】ホモロジーについては、NANBV遺伝子
の塩基配列およびアミノ酸配列と既知の種々のウイルス
遺伝子(特開昭62−286930;Virolog
y、第161巻、497−510ページ、1987
年)、例えば、牛ウイルス性下痢症ウイルス(Viro
logy、第165巻、497−510ページ、198
8年)、豚コレラウイルス(Virology、第17
1巻、555−567ページ、1989年)、タバコ葉
脈斑紋ウイルス(Nucleic Acid Rese
arch、第165巻、5417−5430ページ、1
986年)等の遺伝子との間で比較研究することができ
る。
【0031】また、疎水性指標の解析については、例え
ば、遺伝子情報処理ソフトウェアのSDC−Genet
yx〔(株)SDCソフトウェア社(日本)製〕、Do
olittleが作成のプログラム(Journal
of MolecularBiology、第157
巻、105−132ページ、1982年)等を用いる技
術により研究することができる。
【0032】図3は、本発明NANBVおよび日本脳炎
ウイルス(JEV)の疎水性プロフィールを示す図であ
り、両ウイルスの夫々の疎水性指標を相互に比較したも
のである。この図から、NANBV遺伝子の遺伝子構造
とJEV遺伝子の遺伝子構造との間に有意な類似性のあ
ることが判明している。図3に示されるように、本発明
NANBVのポリペプチドは3種の構造蛋白、即ち、コ
ア蛋白(C)、プレマトリックス蛋白(PreM)のプ
ロセッシングにより生じるマトリックス蛋白(M)、エ
ンベロープ蛋白(E)と7種の非構造蛋白のNS1,N
S2a,NS2b,NS3,NS4a,NS4bおよび
NS5を含有する。これらの蛋白は夫々、以下の塩基配
列によりコードされる:
【0033】C蛋白は塩基番号第333番から第677
番まで、M蛋白は第678番から第905番、E蛋白は
第906番から第1499番、NS1は第1500番か
ら第2519番、NS2は第2520番から第3350
番、NS3は第3351番から第5177番、NS4a
は第5178番から第5918番、NS4bは第591
9番から第6371番、およびNS5は第6372番か
ら第9362番まで。これ等の塩基配列は、NANB型
肝炎の診断に有用であり、これ等にコードされるポリペ
プチドは夫々、NANBV型肝炎のワクチンのみならず
診断剤用の抗原として有用である。
【0034】上述の3種の構造蛋白は、図2−1から図
2−3に示されるアミノ酸番号第1番(Met)から第
389番により表されるものであり、第1番のメチオニ
ン残基は開始コドンによりコードされるものである。
【0035】本発明者らの絶え間ない研究により、以下
の塩基配列が抗NANBV抗体に対し反応するエピトー
プをコードしていることが判明した:塩基配列が、夫々
塩基番号第333番から422番、第333番から14
99番、第333番から第6371番、第474番から
563番、第906番から953番、第1020番から
第1046番、第1020番から第1121番、第11
94番から第1232番、第1209番から第1322
番、第4485番から第4574番および第5544番
から第5633番まで。
【0036】以下に述べるように、上述の塩基配列また
はその全配列の部分としての塩基配列を含有する塩基配
列は、組換えDNA技術または化学合成によるNANB
V抗原ポリペプチドの産生のみならず、ハイブリダイゼ
ーションまたはポリメラーゼチェインリアクション(P
CR)によるNANB型肝炎の診断に対しても、効果的
に使用することができる。
【0037】また、図2−1から図2−16に示される
塩基番号第1番から第9416番の全領域の少なくとも
6個の塩基を含有する第一の塩基配列が、NANB型肝
炎の診断におけるハイブリダイゼーション用のプローブ
として、またはポリメラーゼチェインリアクション用の
プライマーとして有用であり、塩基番号第333番から
第9362番の塩基配列の少なくとも12個の塩基の塩
基配列によりコードされる少なくとも4つのアミノ酸を
含有するポリペプチドが、NANB型肝炎のワクチンの
みならず診断剤用の抗原としても効果的であることが判
明した。さらに、当業者間では既知のことであるが、第
一の塩基配列に相補的な第二の塩基配列もまた、NAN
B型肝炎の診断におけるハイブリダイゼーション用のプ
ローブとして、またはポリメラーゼチェインリアクショ
ン用のプライマーとして有用であることが判明した。遺
伝コドンの縮重に従って該NANBVの第一の塩基配列
の少なくとも一部のコーディング領域の少なくとも1つ
の塩基を置換することにより得られる塩基配列もまた、
組換えDNA技術により本発明抗原ポリペプチドの産生
に使用することができる。
【0038】従って、本発明の単離されたデオキシリボ
核酸は、図2−1から図2−16に示される塩基番号第
1番から第9416番の非A非B型肝炎ウイルスの全塩
基配列の少なくとも一部を含む第一の塩基配列および第
一の塩基配列に相補的な第二の塩基配列からなる群から
選ばれる少なくとも1つの塩基配列、あるいは遺伝子コ
ドンの縮重に従って第一の塩基配列の少なくとも1つの
塩基を置換することにより得られる塩基配列を含む。
【0039】更に特定すれば、本発明の該デオキシリボ
核酸において、第一の塩基配列は図2−1から図2−1
6に示される塩基番号第1番から第9416番の非A非
B型肝炎ウイルスの全塩基配列の少なくとも6個の塩基
を包含する。
【0040】また更に特定すれば、本発明の該デオキシ
リボ核酸において、第一の塩基配列は塩基番号第333
番から第422番、第333番から第677番、第33
3番から第1499番、第333番から第6371番、
第474番から第563番、第678番から第905
番、第906番から第953番、第906番から第14
99番、第1020番から第1046番、第1020番
から第1121番、第1194番から第1232番、第
1209番から第1322番、第1500番から第25
19番、第2520番から第3350番、第3351番
から第5177番、第4485番から第4574番、第
5178番から第5918番、第5544番から第56
33番、第5919番から第6371番、第6372番
から第9362番、および第1番から第9416番の塩
基配列からなる群から選ばれる少なくとも1つの塩基配
列を含有する。
【0041】また、本発明の単離された抗原ポリペプチ
ドは、図2−1から図2−16に示される非A非B型肝
炎ウイルスの塩基配列の塩基番号第333番から936
2番のコーディング領域を含むデオキシリボ核酸により
コードされるアミノ酸配列の少なくとも一部を包含す
る。なお、本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、N
ANBV粒子やNANBV表面抗原集合体などのアセン
ブリーを構成しない状態のポリペプチドを意味する。
【0042】更に特定すれば、本発明の該抗原ポリペプ
チドは、塩基番号第333番から第9362番の該塩基
配列の少なくとも12個の塩基の塩基配列によりコード
される少なくとも4つのアミノ酸の少なくとも1アミノ
酸を包含する。
【0043】また更に特定すれば、本発明の該抗原ポリ
ペプチドは、塩基番号第333番から第422番、第3
33番から第677番、第333番から第1499番、
第333番から第6371番、第474番から第563
番、第678番から第905番、第906番から第95
3番、第906番から第1499番、第1020番から
第1046番、第1020番から第1121番、第11
94番から第1232番、第1209番から第1322
番、第1500番から第2519番、第2520番から
第3350番、第3351番から第5177番、第44
85番から第4574番、第5178番から第5918
番、第5544番から第5633番、第5919番から
第6371番、第6372番から第9362番、および
第333番から第9362番の塩基配列からなる群から
選ばれる塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を含
有する。
【0044】さらに、図2−1から図2−16に示され
る該NANBVの全コーディング領域によりコードされ
るポリペプチドは、幅広い抗原抗体反応スペクトルを有
するため、このようなポリペプチドは、単一エピトープ
を含む抗原に比べNANB型肝炎感染により生産された
多種多様の抗体と反応することができ、NANB型肝炎
診断剤として高感度である。
【0045】(VI)NANBV遺伝子cDNAクロー
ンの発現、およびNANBV抗原の大量生産:NANB
V抗原ポリペプチドを商業的規模で産生するNANBV
抗原遺伝子のクローンcDNAを発現させるために、c
DNAクローン内に存在する該クローンcDNAの一部
または全体をクローニングベクターから取り出し、発現
ベクターに結合する。例えば、各cDNAクローンの該
cDNAの一部または全領域を制限酵素を用いて切り出
すことによりNANBV抗原遺伝子を含むDNA断片
(以後「NANBVのDNA断片」とする)を得、これ
を常法により発現ベクターに挿入する。1種の遺伝子D
NA断片を発現ベクターに挿入する場合は、該DNA断
片にコードされているペプチドを1種、産生することが
できる。また、2種以上の遺伝子DNA断片を発現ベク
ターの配列に挿入する場合は、遺伝子発現により、挿入
したDNA断片にコードされているポリペプチドを融合
ペプチドとして産生することができる。
【0046】この操作において使用し得る複製可能な発
現ベクターとしては公知又は市販のもの、例えば、腸内
細菌科のプラスミドベクターpSN508(米国特許第
4,703,005号)、酵母のプラスミドベクターp
BH103およびその系列(特開昭63−22098)
とpJM105(特開昭62−286930)、弱毒水
痘ウイルス遺伝子(特開昭53−41202)、弱毒マ
レック病ウイルス(日本獣医学会誌、第27巻、20〜
24ページ、1974年;およびGan Monogr
aph on Cancer Research、第1
0巻、91〜107ページ、1971年)、pTTQ系
列〔Amersham社(英国)製販〕、pSLV系列
〔Pharmacia LKB社(スェーデン)製販〕
等を使用することができる。
【0047】次いで、NANBVのDNAを挿入した発
現ベクターを、常套手段により該ベクターに感受性の宿
主細胞に個別に移入、またはトランスフェクションし、
形質転換体を得、これらからNANBV抗原ポリペプチ
ドまたはNANBV粒子を産生する形質転換体を選別す
る。尚、NANBV抗原ポリペプチドの産生は、前述
(V)に記載のイムノアッセイにより検出することがで
きる。その結果、発現ベクターとして動物ウイルス遺伝
子を使用した場合には、NANBV抗原ポリペプチドを
産生する組換えウイルスを得ることができ、斯かる組み
替えウイルスは該ウイルスベクターに固有の抗原性のみ
ならずNANBVの抗原性をも有する多機能ワクチンの
原料として用いることが可能である。
【0048】前に得た該形質転換体または組換えウイル
スを常法に従い培養することにより、NANBV抗原ポ
リペプチドをその焙地内に商業的規模で産生することが
できる。動物ウイルス遺伝子を発現ベクターとして用い
る方法の詳細については、欧州公開特許公報第3345
30号を参考にするとよい。
【0049】更に本発明は、以下の工程を包含する非A
非B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチドの産生方法の提供
を目的とする: (a)デオキシリボ核酸をプラスミドおよび動物ウイル
ス遺伝子から選ばれた複製可能な発現ベクターに導入し
た後、該複製可能な発現ベクターがプラスミドの場合は
該プラスミドおよびそれに挿入されたデオキシリボ核酸
を含有する複製可能な組換えDNAを得、また該複製可
能な発現ベクターが動物ウイルス遺伝子の場合は該動物
ウイルス遺伝子およびそれに挿入されたデオキシリボ核
酸を得、該デオキシリボ核酸は、図2−1から図2−1
6で示される非A非B型肝炎ウイルスの塩基配列の塩基
番号第1番から第1499番の塩基配列の少なくとも一
部領域または第1500番から第9416番の塩基配列
の少なくとも一部領域を含む第一の塩基配列および第一
の塩基配列の少なくとも1つの塩基を遺伝子コドンの縮
重により置換して得られる少なくとも1つの塩基配列か
らなる群から選ばれる塩基配列を含有しており、(b)
上記(a)で用いた複製可能な発現ベクターがプラスミ
ドの場合は、微生物細胞または真核細胞培養物に該組換
えDNAをトランスフェクトし形質転換体を形成した
後、その微生物または真核細胞培養物の親細胞から該形
質転換体を選別し、(c)上記(b)で得られた形質転
換体を培養することにより該デオキシリボ核酸を発現さ
せ、非A非B型肝炎ウイルス抗原ペプチドを産生する
か、あるいは上記(a)で得られた組換えウイルスを培
養することにより該デオキシリボ核酸および動物ウイル
ス遺伝子を発現させ、動物ウイルス遺伝子および非A非
B型肝炎ウイルス抗原ペプチドを産生する組換えウイル
スの形で非A非B型肝炎ウイルス抗原ペプチドを産生さ
せ、そして(d)かかる非A非B型肝炎ウイルス抗原ペ
プチドを単独または増殖組換えウイルスの形で単離す
る。
【0050】このようにして得た抗原ペプチドはNAN
B型肝炎の診断剤またはワクチンの有効成分としてに用
いることができ、組換えウイルスもワクチンの有効成分
として用いられる。
【0051】また、図2−1から図2−16の該cDN
Aの一部または全体を鋳型として用いて、常法に従いi
n vitroで転写させて対応するRNAまたはmR
NAを合成することができる。例えば、図2−1から図
2−16のcDNAの全領域に対応するRNAまたはm
RNAは、該cDNAの全領域を鋳型として用い、T7
RNAポリメラーゼを用いてin vitroで転写す
る。このようにして合成されたRNAまたはmRNA
は、NANBV遺伝子の全領域を包含しており、即ち、
実質的に裸のNANBVゲノムであるため、mRNAを
動物細胞にトランスフェクトすることにより、NANB
V抗原または感染性NANBV粒子を得ることができ
る。尚、斯かるmRNAの合成には、例えば市販のmR
NAキャッピングキット〔Stratagene社(米
国)製販〕を用いることができる。その操作の詳細につ
いては、“Current Ptotocols in
Molecular Biology”(10.1
7.1−10.17.5,Wiley & Sons発
行,1989年)を参考にするとよい。図2−1から図
2−16の該cDNAの一部または全体を用いて得られ
た該RNAは、NANBVゲノムの一部または全体であ
るため、NANBV抗原の産生のみならず、NANBV
およびそれに起因する感染症の研究に有用である。
【0052】(VII) NANBV抗原ポリペプチド
の精製:該形質転換体または組換えウイルスの培養物中
に産生されたNANBV抗原は、通常の技術、例えば、
塩析、シリカゲルや活性炭等を用いる吸脱着法、有機溶
媒による沈殿法、超遠心による分画法、イオン交換また
はアフィニティーカラムクロマトグラフィーによる分離
法、高速液体クロマトグラフィー、または電気泳動によ
る分画法等を適宜、組み合わせることにより精製するこ
とができる。大腸菌または酵母の形質転換体の培養物か
ら、NANBV抗原ペプチドを精製する場合には、NA
NBV抗原ポリペプチドの最終製品の品質を著しく低下
させる大腸菌および酵母に由来のアレルゲンの効果的な
除去の見地から、例えば、(1)シリカゲルによる吸脱
着処理、活性炭による不純物の吸脱除法、および(2)
密度勾配遠心分離による分画を順次行う(特開昭63−
297)ことによる精製が望ましい。また、組換えウイ
ルス培養物、例えば、ウイルス感染組換え細胞培養液か
らNANBV抗原ポリペプチドを精製する場合には、超
遠心分離や密度勾配遠心分離を反復して行い該抗原を精
製することにより、高純度のNANBV抗原ポリペプチ
ドを得ることができる。
【0053】このようにして、本発明の精製NANBV
抗原ポリペプチドを含む原液が得られる。必要があれ
ば、該溶液を凍結乾燥し、かかるNANBV抗原ポリペ
プチドを乾燥した形で得ることが可能である。また、本
発明の混合抗原ポリペプチドは、異なる塩基配列を有す
る少なくとも2種のcDNAの遺伝子発現により得られ
る少なくとも2種のNANBV抗原ポリペプチドの混合
により得ることができる。
【0054】(VIII)NANB抗原の合成:前述の
通り、該NANBVのコア蛋白(C蛋白)、マトリック
ス蛋白 (M蛋白)、およびエンベロープ蛋白(E蛋
白)は、図2−1から図2−3に示されるアミノ酸番号
第1番(Met)から第389番(Gly)の領域に含
まれる。この領域に含まれる上述のエピトープ、特に塩
基番号第906番から第953番、第1020番から第
1046番、第1194番から第1232番の塩基配列
によりそれぞれコードされるエピトープは抗原として非
常に有用である。かかるエピトープはポリペプチド合成
により得ることができ、市販のペプチド合成機、例え
ば、ポリペプチド合成機COUPLER 2100〔D
U PONT社(米国)製販〕、ペプチド合成機430
A〔APPlied Biosystem社(米国)
製〕等を使用して実施することができる。かかる合成抗
原ポリペプチドは、例えばワクチン、診断剤、および抗
体の製造に用いることができる。
【0055】(IX)NANBVcDNAの重要領域:
本発明は更に、プラスミドおよび動物ウイルス遺伝子か
ら選ばれる複製可能な発現ベクターとデオキシリボ核酸
とからなり、該デオキシリボ核酸は図2−1から図2−
16に示される非A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の
塩基番号第1番から第1499番の少なくとも一部領域
または第1500番から第9416番の少なくとも一部
領域を含む第一の塩基配列および第一の塩基配列を遺伝
子コドンの縮重に基づき少なくとも1つの塩基を置換し
て得られる少なくとも1つの塩基配列からなる群から選
ばれる塩基配列を含有することを特徴とする複製可能な
組換え体の提供を目的とするものである。かかる組換え
体は、本発明のNANBV抗原ポリペプチドの産生のみ
ならず、複製による本発明のNANBV遺伝子cDNA
の増幅に用いることができる。
【0056】尚、本発明のNANBV遺伝子cDNAの
増幅のための上記組換え体に挿入連係される好ましい第
一の塩基配列は、塩基番号第1番から第1499番の塩
基配列の少なくとも6個の塩基または第1500番から
第9416番の塩基配列の少なくとも6個の塩基を含有
する。また、本発明のNANBV抗原ポリペプチドの生
産のための前述の組換え体に挿入連係される好ましい第
一の塩基配列は、塩基番号第333番から1499番の
塩基配列の少なくとも12個の塩基または第1500番
から第9362番の塩基配列の少なくとも12個の塩基
を含有する。
【0057】更に、本発明のNANBV抗原ポリペプチ
ドの生産のための前述の組換え体に挿入連係される第一
の塩基配列は、塩基番号第333番から第422番、第
333番から第677番、第333番から第1499
番、第474番から第563番、第678番から第90
5番、第906番から第953番、第906番から第1
499番、第1020番から第1046番、第1020
番から第1121番、第1194番から第1232番、
第1209番から第1322番、第1500番から第2
519番、第2520番から第3350番、第3351
番から第5177番、第4485番から第4574番、
第5178番から第5918番、第5544番から第5
633番、第5919番から第6371番、および第6
372番から第9362番の塩基配列からなる群から選
ばれる。
【0058】(X)診断用抗原の製造:また、本発明の
精製NANBV抗原ポリペプチドは、NANB型肝炎の
診断剤として有用である。本発明のNANBV抗原ポリ
ペプチドは、以下のようにして診断剤に調剤することが
できる。上記(VII)で得られた精製NANBV抗原
ポリペプチド溶液を、バイアル瓶またはアンプル等の容
器に分注の後、密封する。注入した該抗原ポリペプチド
は、密封する前に上述と同様の手段で凍結乾燥すること
ができ、容器内のNANBV抗原ポリペプチドの量は、
一般に約1μg〜約10mgである。代わりに、該NA
NBV抗原ポリペプチドを、また、常用されている支持
体、例えば、マイクロプレート、ポリスチレンビーズ、
濾紙または膜の表面に吸着させることができる。
【0059】血清と該NANBV抗原ポリペプチドとの
反応性の決定は、上述(V)に示したのと同様の手段で
個別に実施することができる。即ち、かかる反応性の決
定は、従来のイムノアッセイの方法、例えば、radi
oimmunoassay(RIA),enzyme−
linked immunosorbent assa
y(ELISA)、蛍光抗体法(FA)、受身赤血球疑
集反応(PHA)、逆受身赤血球疑集反応(rPHA)
等により実施することが可能である。上記のイムノアッ
セイに用いる該NANBV抗原ポリペプチドの量は、血
清中に一般に約0.1〜約100mg/mlであり、特
にRIA、ELISA、FA、PHAおよびrPHAに
用いる量は、それぞれ0.1〜1mg/ml、0.1〜
1mg/ml、1〜100mg/ml、1〜50mg/
mlおよび1〜50mg/mlとなる。
【0060】また、本発明のNANBV抗原ポリペプチ
ドは、輸血用血液のスクリーニングにも使用することが
できる。かかるスクリーニング法は、(a)全血液から
血清を分離し、(b)未知血液の血清と図2−1から図
2−16に示すNANBVの全塩基配列の塩基番号第3
33番から第9362番のコーディング領域を含むデオ
キシリボ核酸によりコードされるアミノ酸配列の少なく
とも一部を含む少なくとも1つのアミノ酸を含有する単
離されたNANBV抗原ポリぺプチドとを接触させ、
(c)その血清と該NANBV抗原ポリペプチドとの反
応の有無を決定し、(d)その反応性に基づき非A非B
型肝炎に対し陽性か陰性かを分類し、(e)その結果に
基づき、輸血用血液を選別するものである。
【0061】未知血液の血清と本発明のNANBV抗原
ポリペプチドとの接触およびその反応性の決定は、NA
NB型肝炎の診断方法に関する上記と同様の手段で実施
することが可能である。この方法により、NANBVに
感染していない輸血用血液を選別することができる。
【0062】(XI)ワクチンの製造:また、本発明の
NANBV抗原ポリペプチドは、NANB型肝炎ワクチ
ンの有効成分として用いることが可能である。かかるN
ANB型肝炎ワクチンは、以下のようにして調製するこ
とができる。該NANBV抗原ポリペプチドをコードす
るcDNAの担体である組換えファージまたはプラスミ
ドを含む形質転換体の培養、また、該cDNAの担体で
ある組換えウイルスを感染させた細胞を培養し、培養物
中に該NANBV抗原ポリペプチドを産生させる。尚、
斯かる培養物中のNANBV抗原を無毒化し安全性を確
保すると共に、該抗原の免疫原性ないしは抗原性を固定
化しその安定化を図るため、前述(VII)の精製を行
う前の培養物、または培養物中の細胞破片や培養菌体を
除去するための濾過や遠心後の培養濾液や遠心上清の段
階での不活化が望ましい。例えば、常用の不活化剤、ホ
ルマリンを最終濃度が0.0001〜0.001%(V
/V)になるよう上記培養調製物に添加混合の後、4〜
37℃にて5〜90日間保存することにより、NANB
V抗原を不活化できる。また、ワクチン原液は、前述
(VII)と同様にして調製できる。
【0063】更に、NANBVワクチン原液を、マイク
ロフィルターを用い常法で濾過し、溶液を除菌した後、
濾液を生理的塩溶液にてLowry法による蛋白濃度の
測定値が約1〜約500μg/mlとなるよう希釈し、
アジュバントとして水酸化アルミニウムゲルを、最終濃
度が約0.1〜約1mg/mlとなるよう添加する。更
に、かかる混合物に少なくとも1種の安定剤を添加する
ことができ、安定剤としては市販の公知の安定剤も用い
ることが可能であり、例えばゼラチン、それらの加水分
解物、アルブミン、糖類のグルコース、フルクトース、
ガラクトース、スクロースおよびラクトース、またアミ
ノ酸のグリシン、アラニン、リジン、アルギニン、グル
タミン等を使用することができる。アジュバントとして
は、沈降アジュバントのリン酸カルシウムゲル、リン酸
アルミニウムゲル、硫酸アルミニウム、アルミナおよび
ベントナイト、また抗原産生を誘起するアジュバントの
ムラミルペプチド誘導体、ポリヌクレオチド、Kres
tin〔登録商標、呉羽化学工業株式会社(日本)製
販〕およびピシバニール(共に抗腫瘍剤)等を使用する
ことができる。更に、かかる混合物に少なくとも1種の
安定化剤を添加することができ、安定化剤としては市販
かつ公知のも、例えば、ゼラチン、それらの加水分解
物、アルブミン、糖類のグルコース、フルクトース、ガ
ラクトース、スクロースおよびラクトース、またアミノ
酸のグリシン、アラニン、リジン、アルギニンおよびグ
ルタミン等を使用できる。
【0064】そして、ゲル吸着したNANBV抗原ポリ
ペプチドを含むNANB型肝炎ワクチン液をアンプルま
たはバイアル瓶等の小容器に分注し密封することによ
り、沈降NANB型肝炎ワクチンが得られる。
【0065】得られたNANB型肝炎ワクチン液を凍結
乾燥し、乾燥NANB型肝炎ワクチンとすることによ
り、過酷な環境、例えば熱帯での該製剤の輸送と保存が
可能となる。かかる凍結乾燥は一般に、液体沈降NAN
B型肝炎ワクチンをバイアル瓶およびアンプル等の容器
に分注した後、常法に従って行い、凍結乾燥後に乾燥ワ
クチンを含む容器に窒素ガスを注入し、密封する。尚、
ワクチン製剤の品質については、日本国厚生省告示第1
59号「生物学的製剤基準」に規定の「沈降B型肝炎ワ
クチン」、「乾燥日本脳炎ワクチン」および「沈降百日
せきワクチン」に準拠して試験する。
【0066】また、該NANB型肝炎ワクチンは、上述
の吸着NANBV抗原ポリペプチドおよび本NANBV
抗原ポリペプチド以外の少なくとも1つの抗原を含む混
合ワクチンの形で調製することが可能である。本NAN
BV抗原ポリペプチド以外の抗原としては、該NANB
V抗原ポリペプチドおよびこの他の抗原を組み合わせて
用いることに起因する副作用及び不都合な反応が相加的
または相乗的に増加せず、またこれらの抗原性および免
疫原性がそれら相互の干渉により減少しない限り、対応
するワクチンの活性要因として従来用いられているいか
なる抗原も使用することが可能である。該NANBV抗
原ポリペプチドに混合することができる抗原の数と種類
は、上述のようにそれらの副作用および不都合な反応が
相加的または相乗的に増加せず、またそれらの抗原性お
よび免疫原性が減少しない限り、制限されるものではな
い。一般に、2〜6種の抗原を該NANBV抗原ポリペ
プチドに混合することが可能であり、例えば、目本脳炎
ウイルス、HFRS(腎症候性出血熱)ウイルス、イン
フルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、B
型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、エイズウイルス、
百日咳菌、ジフテリア菌、破傷風菌、髄膜炎菌、肺炎双
球菌等に由来の不活化抗原または無毒化毒素またはトキ
ソイドが含まれる。
【0067】一般に、本発明のNANBV抗原ポリペプ
チドを含むワクチンは、アンプル等のバイアル瓶に注入
し密封の後、液体または懸濁液の形で提供することがで
きる。乾燥ワクチンを用いる場合は、使用前に凍結乾燥
前の元の体積となるよう滅菌蒸留水に溶解または懸濁す
る。一般に、このワクチンは皮下接種にて使用し、成人
へのその接種量は、約0.5mlであるが、子供に対し
ては成人の半量のワクチンを接種する。また、かかるワ
クチンは、通常約1週間〜1ヵ月の間隔にて2回接種し
た後、約半年後にさらに1追加接種する。
【0068】(XII)診断用抗体の作製:該NANB
V抗原ポリペプチドは、それに特異的なポリクローナル
抗体およびモノクローナル抗体等の抗体の作製に用いる
ことも可能である。例えば、該NANBV抗原ポリペプ
チドに特異的なポリクローナル抗体は、以下の常法によ
り作製することができる。まず本発明の精製されたNA
NBV抗原ポリペプチドを、マウス、モルモット、ウサ
ギ等の動物の皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内に、通
常1〜4週間の間隔にて数回接種し、かかる動物を完全
に免疫する。免疫効果を高めるために、従来の市販のア
ジュバントを使用することができる。次いで、免疫した
動物から血清を採取した後、常法に従って血清から抗N
ANBV抗原ポリペプチドポリクローナル抗体を単離精
製する。
【0069】一方、該NANBVに特異的なモノクロー
ナル抗体は、例えば「細胞工学」第1巻の23〜29ペ
ージ(1982年)に述べられている常法により調製す
ることができる。例えば、精製されたNANBV抗原に
て免疫したマウスから得られた脾細胞と市販のマウスミ
エローマ細胞を細胞融合技術により融合し、ハイブリド
ーマを作製の後、これらのハイブリドーマから該NAN
BV抗原ポリペプチドに反応する抗体を産生する能力を
有するハイブリドーマを選別し、更にクローニングす
る。斯かるクローンを常法にて培養し、培養上清から抗
NANBV抗原ポリペプチドモノクローナル抗体を単離
精製する。
【0070】また、上述のポリクローナル抗体およびモ
ノクローナル抗体は、NANB型肝炎の診断剤としても
用いることが可能である。かかる抗体を用いるNANB
型肝炎の診断は、該NANBV抗原ポリペプチドを用い
るNANB型肝炎の診断に関する上記の方法と実質的に
同様にして実施することができる。ポリクローナル抗体
またはモノクローナル抗体を用いることにより、肝組織
および血中に存在する該NANBV抗原ポリペプチドの
同定および定量が可能となる。また、上述のポリクロー
ナル抗体及びモノクローナル抗体は、輸出用血液中のN
ANBVの除去剤つぃて使用できる。例えば、斯かる抗
体を用いるアフィニティークロマトグラフィーの技術に
より、血中のNANBVを効果的に除去できる。
【0071】(XIII)遺伝子診断剤の製造:本発明
のNANBV遺伝子cDNAは、本発明のNANBV遺
伝子cDNAを適切な制限酵素にて消化することにより
調製することができる。また、本発明の遺伝子cDNA
は、本明細書の図2−1から図2−16に示す塩基配列
に従ってDNA合成技術により調製することができる。
DNA合成による該NANBV遺伝子cDNAの調製
は、DNA合成機モデル380B〔Applied B
iosystem社(米国)製販〕、DNA Synt
hesizerモデル8700〔Biosearch社
(米国)製販〕等の公知のDNA合成機を使用して実施
することが可能である。本発明のNANBV遺伝子cD
NAは、NANBV感染の遺伝子診断では、例えば、ポ
リメラーゼチェインリアクション(PCR)のプライマ
ーとして、患者の体液または細胞内のNANBV遺伝子
の検出に使用することができる。ポリメラーゼチェイン
リアクションによる診断には、該NANBV遺伝子cD
NAを10〜100ng用いる。
【0072】また、本発明のNANBV遺伝子cDNA
は、ハイブリダイゼーション技術によるNANB型肝炎
の診断に用いることも可能である。即ち、該NANBV
遺伝子cDNAを、例えばビオチン、アルカリ性ホスフ
ァターゼ、放射性同位元素32P等にて標識し、プロー
ブとしてハイブリダイゼーション技術による診断に供す
ることができる。この場合まず、上述(V)で得られた
該NANBVcDNAを含む組換えファージを適切な制
限酵素にて処理し、該NANBVcDNAを含むDNA
断片を切り出した後、市販の複製可能なクローニングベ
クターに連結し、このDNA断片を含む組換えプラスミ
ドを得る。この組換えプラスミドを宿主細胞内に導入し
て形質転換体を形成させ、これを培養して組換えプラス
ミドを増殖させた後、該形質転換体よりプラスミドDN
Aを単抽出して制限酵素にて消化し、これを低融点アガ
ロースゲル電気泳動にかけ、該NANBV抗原ポリペプ
チドをコードするcDNAを単離精製する。このように
して得られたcDNAを、ビオチン、アルカリ性ホスフ
ァターゼ、放射性同位元素32P等で標識する。尚、か
かる標識には市販のニックトランスレーションキットま
たはマルチプライムDNA標識システム〔Amersh
am社(英国)、ニッポンジーン(日本)社等製販〕を
用いることができる。標識されたcDNAは、約5〜2
0mlのアンプル等の容器に入れ、密封する。このcD
NA量は1容器当り1〜100ugであり、液状または
凍結乾燥状態で、提供することができる。この標識され
たcDNAを用いるNANB型肝炎の診断は、公知の標
準的なハイブリダイゼーション法により実施できる。即
ち、患者から得られた血漿、血清または白血球を標識さ
れたcDNAに接触させ、該cDNAとハイブリダイズ
した核酸を常法により検出する。かかるcDNAが酵素
で標識されているときはエンザイムイムノアッセイによ
り、放射性同位体で標識されているときは例えばシンチ
レーション計測により検出を行う。
【0073】
【実施例】以下、本発明について実施例を挙げて説明す
る。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されるもの
ではない。 実施例1 (1)NANBVゲノムRNAに相補的なcDNAを作
製するための血漿由来RNAの調製:血漿よりNANB
Vを得るため、血中グルタミックーピルビック トラン
スアミナーゼ(GPT)値(Wroblewsiki,
F & J.S.LaDue:Serum gluta
mic pyruvic transaminasei
n cardiac and hepatic dis
ease.Proc.Soc.Exp.Biol.Me
d.,91:569,1956)が、35IU/l以上
を示す4.81のヒト血漿を蔗糖30%(W/W)溶液
に重層後、遠心(48,000×g、13時間、4℃)
し、沈殿を50mM Tris.HCl pH 8.0
−1mM EDTA溶液に浮遊して、再び遠心(25
0,000×g、3時間、4℃)後、得られた沈殿を7
5mlの5.5M GTC溶液(5.5M グアニジン
チオシアネート、20mM クエン酸ソーダ pH7.
0、0.05% サルコシール(ラウリルサルコシン酸
ナトリウム)、0.1M2−メルカプトエタノール)に
溶解し、16mlのCsTFA−0.1M EDTA溶
液(p=1.51)上に重層の後、遠心(140,00
0×g、20時間、15℃)してRNAを沈殿させる。
上清中のたん白質やDNAを吸引して除き、沈殿を20
0μlのTE(10mM Tris・HCl pH8.
0,1mMEDTA)溶液に溶解し、20μlの3M
塩化ナトリウムとエタノールを加え、−70℃に90分
間静置する。遠心(12,000×g、30分、4℃)
し、沈殿をTEに溶解し、上記と同様に再度、塩化ナト
リウムとエタノールを加え、−70℃で静置し、生じた
沈殿を回収し、10μlのTEに溶解し精製RNAとし
た。
【0074】(2)NANBVゲノムRNAに相補的な
cDNAの作製の為の肝臓由来RNAの調製:NANB
型肝炎患者の切除肝より岡山等の方法(H.Okaya
ma,M.Kawaichi,M.Brownstei
n,F.Lee,T.Yokota,and K.Ar
ai:High−Efficiency Clonin
g of Full−Length cDNA;Con
struction andScreening of
cDNA Expression Librarie
s for Mammalian Cells.Met
hods in Enzymology 154.3−
28,1987)でNANBVゲノムRNAを調製し
た。
【0075】即ち、切除肝1gを細片化し、上記(1)
の100mlの5.5M GTC溶液に浮遊し、テフロ
ン−ガラスホモジナイザーを用いてホモジナイズした。
次いで、#18注射針付注射器を用いて、ホモジネート
を出し入れして、DNAを機械的に切断した。低速遠心
(1,500×g、15分、4℃)して得られた上清
を、上記(1)に記載したと実質的に同様の方法でCs
TFA溶液上に重層し、遠心後、得られた沈殿のRNA
画分を、0.4mlの4M GTC溶液に浮遊し、10
μlの1M酢酸および300μlのエタノールを加え、
−20℃で少なくとも3時間静置しRNAを沈殿させ
る。遠心(12,000×g、10分、4℃)して、沈
殿をTE溶液1mlに溶解し、100μlの2M 塩化
ナトリウム溶液および3mlのエタノールを加え、−2
0℃に3時間静置し、生じた沈殿を遠心にて回収し、1
0μlのTEに溶解して肝臓由来のRNAを精製した。
【0076】(3)cDNA合成キットを用いた二本鎖
cDNAの調製:市販のcDNA合成キット〔Amer
sham社(英国)製販〕を用いて二本鎖cDNAを調
製した。即ち、上記(1)で得られた精製RNA0.7
5μgをキットに添付の試薬類、2μlのランダムヘキ
サヌクレオチドプライマー、2μlの逆転写酵素液を加
え、蒸留水で全量を20μlとして、反応液を42℃に
て40分間インキューベートし、cDNAのファースト
ストランドを合成し、次いで、氷水中にて冷やしなが
ら、セカンドストランドの合成を行った。先ず反応液2
0μlにキット添付のセカンドストランド合成反応用緩
衝液37.5μlと大腸菌リボヌクレアーゼHを1μ
l、DNAポリメラーゼI6.6μlを加え、更に、3
4.9μlの蒸留水を混和した。12℃で60分間、次
いで、22℃で60分間反応後、更に70℃で10分間
インキュベートし、氷水にて再度冷やし、T4DNAポ
リメラーゼを1μl加え、37℃で10分間インキュベ
ート後、4μlの0.25M EDTA(pH8.0)
を加え、反応を停止させ、フェノール/クロロホルムを
よく混和後、遠心(12,000×g、1分間)し、水
層を分離した。水層は更に上述の抽出操作を1回繰り返
した後、クロロホルムを等量加え、よく攪拌の後、遠心
して水層を分離し、次いで等量の4M酢酸アンモニウム
と2倍量のエタノールを加え、−70℃にて精製した二
本鎖cDNAを沈殿させた。沈殿は50μlの2M酢酸
アンモニウムに溶解後、100μlのエタノールを加
え、−70℃にて再び沈殿させ、遠心(12,000×
g、10分)により沈殿を回収し、乾燥した後、20μ
lのTEに溶解した。
【0077】(4)ポリメラーゼチェインリアクション
(PCR)法による二本鎖cDNAの調製:上記(1)
および(2)で調製したRNAを鋳型として、逆転写酵
素を用いて調製したcDNAを、夫々PCR法(Sai
ki,R.K;Gelfand,D.H;Stoffe
r,S;Scharf,S.J;Higuchi,R;
Horn,G.T;Mullis.K・B;and E
rlich,H.A.:Primer−directe
d enzymatic amplification
of DNA with a thermostab
le DNA polymerase. Scienc
239:487−491,1988)により増幅し
た。即ち、RNA5〜1,000ngを20μlの逆転
写酵素液{50mM Tris・HCl pH 8.
3,40mM KCl,6mM MgCl1μM
3’−プライマーG(図2−14の塩基番号第7949
番から第7973番の25個の塩基からなるオリゴヌク
レオチド)、10mMのdNTPおよび0.5単位の逆
転写酵素〔New England Bio La
b.,(米国)〕}中で37℃、30分間インキュベー
トする。次いで、80μlのPCR反応液{18mM
Tris・HCl pH 8.3、48mM KCl、
1.5mM MgCl、0.6μMずつの5’−プラ
イマー(図2−13の塩基番号第7612番から第76
36番の25個の塩基を含む合成オリゴヌクレオチド)
および上記の3’−プライマー、10mMのdNTPお
よび2.5単位のTaqDNAポリメラーゼ〔Perk
in Elmer Cetus社(米国)製販〕を加
え、94℃で1分間、50℃で2分間、72℃で3分間
のインキュベーションを40回繰り返し、アガロースゲ
ル電気泳動にて、増幅されたcDNAを回収した。フェ
ノール処理および、エタノール沈殿させた後乾燥させ、
10μlのTEに溶解した。
【0078】(5)ラムダgt11を用いたcDNAラ
イブラリーの作製:市販のcDNAクローニングキット
〔Amersham社(英国)製販〕を用いて、cDN
Aライブラリーを作製した。即ち、上記(3)で調製し
た130ngのcDNAにクローニングキットに添付の
L/K緩衝液2μl、EcoRIアダプター2μl、T
4DNAリガーゼ2μlを加え、更に蒸留水にて全量を
20μlとし、15℃にて16〜20時間インキュベー
ト後、0.25M EDTAを2μl加え、反応を停止
させた。次いで、キットに添付されているサイズ分画カ
ラムを通し、cDNAに連結されなかったEcoRIア
ダプターを除去した後、EcoRIアダプター連結cD
NA700μlにL/K緩衝液83μlとT4ポリヌク
レオチドキナーゼ8μlを加えて37℃にて30分間イ
ンキュベートする。次いで、フェノール抽出を2回し、
ブタノールにて350〜400μlに濃縮し、エタノー
ル沈殿させたものを5μlのTEに溶解した。
【0079】次に、クローニングベクターラムダgt1
1のEcoRI部位にEcoRIアダプター付加cDN
Aを挿入するために、上記のEcoRIアダプター連結
cDNA1μl(10ng)にL/K緩衝液1μl、ラ
ムダgt11アームDNA2μl(1μg)およびT4
DNAリガーゼ2μlを加え、蒸留水にて混合液の全量
を10μlとして、15℃で16〜20時間インキュベ
ートして組換えラムダgt11DNA液を作製した。更
に、in vitroパッケージングを行い、組換えラ
ムダファージを得るため、市販のin vitroパッ
ケージングキット〔Stratagene社(米国)製
販〕のGigapackII GoldのA液10μl
とB液15μlを上記の組換えラムダgt11DNA液
4μlに加え、22℃にて2時間インキュベート後、添
付のSM緩衝液470μlとクロロホルム10μlを加
え、組換えファージを4℃に保存した。
【0080】(6)大腸菌プラスミドpUC19を用い
たcDNAクローニング:市販のDNAライゲーション
キット〔宝酒造社(日本)製販〕を用いて、cDNAを
大腸菌プラスミドpUC19(C.Yanishi−P
erron,J.Vieira,J.Messing,
Gene 33,103,1985)に挿入し、大腸菌
にてクローニングした。即ち、上記(4)でポリメラー
ゼチェインリアクション(PCR)法にて調製したcD
NA5μlと制限酵素SmaIで切断後、脱リン酸化し
たプラスミドpUC19DNA 5μl(50ng)に
キット添付のA液40μlとB液10μlを加え、15
℃にて16時間インキュベートする。この様にして得ら
れたプラスミドDNAで大腸菌JM109株(Mess
ing,J;Crea,R.and Seeburg,
P.H.,Nucleic Acids Res 9,
309,1981)を塩化カルシウム法(Mande
l,M.and A.Higa,J.Mol.Bio
l.,53,154,1970)により形質転換し、c
DNAを組み込んだプラスミドを含む形質転換大腸菌を
得た。
【0081】(7)cDNAライブラリーからのNAN
BV遺伝子を有するクローンのスクリーニング:大腸菌
Y1090株(Richard A.Young an
d Ronald W.Davis,Science,
222,778,1983)を50mlのLBM培地
(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナト
リウム、50μg/mlアンピシリンおよび0.4%マ
ルトース)にて37℃で培養し、対数増殖期の大腸菌細
胞を氷冷した15mlの10mM硫酸マグネシウムに浮
遊した。上記(5)で得られたファージ液をSM緩衝液
(0.1M塩化ナトリウム、8mM硫酸マグネシウム、
50mM Tris.HCl pH7.5、0.01%
ゲラチン)にて希釈し、この希釈ファージ液0.1ml
と上記菌液を等量混合して、37℃にて15分間インキ
ュベート後、45℃に加温した4mlの軟寒天培地(1
%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナト
リウム、0.25%硫酸マグネシウムおよび0.7%寒
天 PH7.0)を加え、L−寒天培地(1%トリプト
ン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、100
μg/mlアンピシリン PH7.0,1.5%寒天)
のプレートにまき、42℃で3時間インキュベートし
た。次いで、10mM IPTG(Isopropyl
β−D−thiogalactopyranosid
e)をニトロセルロースフィルターに浸み込ませ、それ
を乾燥させたものをプレート上に密着させ、更に37℃
にて3時間インキュベートした。分離したフィルターを
TBS緩衝液で3回洗浄し、2%ウシ血清アルブミン液
に浸し、室温にて1時間インキュベートした。市販のイ
ムノスクリーニングキット〔Amersham社(英
国)製販〕に添付の大腸菌溶解液を1/20容量加え
て、室温に30分インキュベートした後、0.2%ウシ
血清アルブミン加TBS緩衝液にて50倍希釈したNA
NB型肝炎患者血清にこのフィルターを浸し、室温にて
1時間反応させた。
【0082】得られたフィルターは0.05%Twee
n20加TBS緩衝液にて4回洗浄し、パーオキシダー
ゼ標識抗ヒトIgG〔Cappel社(独)製販〕を1
000倍希釈した抗体液に1時間浸し、上述のTwee
n−TBS液にて洗浄し、50mlのTBS緩衝液に
0.4mlのDAB(3,3’−diaminoben
zidine tetrahydrochlorid
e)と30%過酸化水素液15μlを加えた液に浸し、
5〜30分間、室温にてインキュベートし発色させ、フ
ィルターを蒸留水で完全に水洗し反応を停止した。
【0083】上記の操作により得られたプラークの純化
を行い、9個の陽性クローンを単離した。これらのクロ
ーンを夫々、BK102、BK103、BK105、B
K106、BK108、BK109、BK110、BK
111およびBK112と命名した。これ等のクローン
はいずれも正常人血清とは反応せず、NANB型肝炎患
者血清と特異的に反応した(第1表)。
【0084】
【0085】(8)得られたクローンの塩基配列の決
定:クローンBK102〜BK112の組換え体ファー
ジDNAを回収し、制限酵素EcoRIで消化後、NA
NBVのcDNA断片を単離し、個別にプラスミドpU
C19のEcoRIサイトに組込み、得られたプラスミ
ドを用いて大腸菌JM109株を上記(6)と実質的に
同様の方法で形質転換した。これ等の形質転換大腸菌よ
りプラスミドDNAを精製し、7−DEAZAシークエ
ンスキット〔宝酒造社(日本)製販、Mizusaw
a,S.,Nishimura,S.and Seel
a,F.,Nucleic Acids Res.,1
4,1319,1986〕を用いて夫々のNANBVc
DNAの塩基配列の決定を行った。得られたcDNAク
ローンの塩基配列の相互関係を図1−1に示した。
【0086】(9)ジーンウォーキングによるcDNA
ライブラリからのNANBVcDNAクローンのクロー
ニング:上記(8)で得たクローンBK102、BK1
06およびクローンBK112のcDNA断片を32
−dCTPでラベルしたプローブを調製し、上記(5)
で得たクローニングベクターラムダgt11のcDNA
ライブラリーからハイブリダイゼーションによりNAN
BVcDNAを含有するファージクローンを得た。即
ち、上記(8)で得たクローンBK102、BK106
およびBK112の形質転換大腸菌よりアルカリ法(M
aniatis T.,Fritsch E.F.,a
nd Sambrook J.:Isolation
of Bacteriophage and Plas
mid DNA:“Molecular Clonin
g”Cold Spring Harbor La
b.,pp75−96.)にてプラスミドDNAを調製
した。
【0087】クローンBK102のプラスミドDNAは
制限酵素NcoIとHincIIにより消化し、生じた
該DNAの5’末端側の0.7Kbの断片をアガロース
ゲル電気泳動後、回収した。クローンBK106および
クローンBK112のプラスミドDNAは制限酵素Nc
oIで消化し、上述と同様にして、クローンBK106
からは1.1KbのDNA断片を、また、クローンBK
112からは3’末端側の0.7Kbの断片をそれぞれ
回収した。25ng〜1μgのDNA断片を、市販のD
NAラベリングキット(ニッポンジーン社製)を用い
〔α−32P〕dCTP〔3000Ci/mmol、A
mersham社(英国)製〕で、37℃にて3〜5時
間インキュベートすることにより、ハイブリダイゼーシ
ョン用のプローブを調製した。
【0088】次に、上記(5)で得られたcDNAライ
ブラリーのファージを、上記(7)に記載のごとくL−
寒天培地にて42℃で3時間、次いで、37℃で3時間
インキュベート後、冷却し、ニトロセルロースフィルタ
ーをのせ30〜60秒放置して、ファージをフィルター
に吸着させた。0.5N水酸化ナトリウム−1.5M塩
化ナトリウム液で1〜5分アルカリ変性し、0.5M
Tris・HCl pH8.0−1.5M塩化ナトリウ
ム液で1〜5分中和後、2×SSC液(0.3M塩化ナ
トリウム−0.03Mクエン酸ナトリウム)で洗浄し、
風乾後80℃で2時間焼付けを行った。
【0089】このフィルターをハイブリダイゼーション
液(50%ホルムアミド、5×SSC、5×Denha
rt液、50mMリン酸クエン酸緩衝液 pH6.5、
100μg/ml鮭精子DNAおよび0.1%SDS)
にて42℃、6時間インキュベートした後、上記の約4
×10cpm/mlのプローブを1ml加えた上記の
ハイブリダイゼーション液300mlに再び浸し、42
℃にて16〜20時間インキュベートし、0.1% 2
×SSCを含むSDS液で4回、0.1% 0.1×S
SCを含むSDS液で2回洗浄後、乾燥し、オートラジ
オグラフィーを行い、ハイブリダイゼーション陽性を示
すクローンを単離した。この結果、クローンBK102
由来のプローブと反応する27クローン、クローンBK
106由来のプローブと反応する14クローンおよび、
クローンBK112由来のプローブと反応する13クロ
ーンを得、夫々のクローンはBK114〜BK169と
順次命名した。
【0090】更に、上記(8)に記載のごとくクローン
BK114〜BK169夫々の塩基配列の決定を行い、
各クローンのマッピングを行ったところ、NANBVゲ
ノムのほぼ全長と考えられる約9.5Kbの長さを有す
る塩基配列がマップされた(図1−2)。この内、5’
末端側に位置するクローンBK157から制限酵素Kp
nI消化により5’末端側0.55Kbの断片を回収
し、また3’の最末端側に位置するクローンBK116
から制限酵素HpaIとEcoRIの消化により3’末
端側0.55Kbの断片を回収し、上記のごとく32
で標識したプローブを調製し、上記(5)で得られたc
DNAライブラリーのファージをプラークハイブリダイ
ゼーションした結果、クローンBK157由来のプロー
ブにより新たに3個のクローンを分離し、夫々クローン
BK170、BK171およびBK172と命名した。
【0091】(10)cDNAの塩基配列の解析:上記
(8)および(9)により得られたクローンの塩基配列
からNANBV遺伝子の全塩基配列を決定し、図2−1
から図2−16に示した。この結果、クローニングされ
たNANBV遺伝子cDNAは9416塩基より成り、
この内に9030塩基から成るオープンリーディングフ
レームが存在し、3010個のアミノ酸残基のプロテイ
ンがコードされていると推定された。このプロテインの
親水性/疎水性のパターンは、既に報告されているフラ
ビウイルスのパターン(Sumiyoshi H.,M
ori C.,Fuke I. et al.,Com
plete Nucleotide Sequence
of the Japanese Encephal
itisVirus Genome RNA. Vir
ology,161,497−510,1987)に類
似していた。代表的クローンとしてBK157(塩基番
号第1番から第1962番)、クローンBK172(第
5番から第366番)、クローンBK153(第338
番から第1802番)、クローンBK138(第175
5番から第5124番)、クローンBK129(第41
04番から第6973番)、クローンBK108(第6
886番から第8344番)、およびクローンBK16
6(第8082番から第9416番)挙げることができ
る。これ等のクローンは、夫々、Escherichi
coli BK108(微工研条寄第2971
号)、BK129(微工研条寄第2972号)、BK1
38(微工研条寄第2973号)、BK153(微工研
条寄第2974号)、BK157(微工研条寄第324
3号)、BK166(微工研条寄第2975号)および
BK172(微工研条寄第2976号)として保存し
た。更に上記クローンに加え、BKシリーズの代表例と
して、次の5クローンが微工研に寄託されている:BK
102(微工研条寄第3384号)、BK106(微工
研条寄第3385号)、BK112(微工研条寄第33
86号)、BK146(微工研条寄第3387号)、B
K147(微工研条寄第3388号)。
【0092】(11)NANBV感染に併う抗体応答に
関連したNANBV関連抗原の大腸菌における産生:上
記(8)で得られたクローンBK106、BK111、
およびBK112と上記(9)で得られたクローンBK
147の夫々のcDNAが個別に挿入されたプラスミド
DNAを従来のアルカリ法にて回収した。次いで、クロ
ーンBK106の回収されたDNAは制限酵素EcoR
IおよびClaIで消化し、0.34KbのDNA断片
0.5μgを得、T4DNAポリメラーゼ反応液(67
mMTris・HCl pH8.8,6.7mM塩化マ
グネシウム、16.6mM硫酸アンモニウム、10mM
2−メルカプトエタノール、6.7μM EDTA、
0.02%ウシ血清アルブミン、0.3mM dNTP
および2〜5単位のT4DNAポリメラーゼ)中で、3
7℃にて60分、インキュベートし、両末端を平滑にし
た。クローンBK102のDNAは制限酵素BamHI
で消化し、回収した0.7KbのDNA断片0.5μg
を上記と同様にしてT4DNAポリメラーゼを用いて末
端を平滑にした。クローンBK147のDNAは制限酵
素Sau3AIで消化し、回収した1KbのDNA断片
0.5μgを上記と同様にして末端を平滑にした。ま
た、クローンBK111のDNAは制限酵素EcoRI
で消化し、回収した1KbのDNA断片0.5μgを実
質的に上記と同様にして末端を平滑にした。次に、発現
ベクターpKK233−2(Amann,E.andB
rosius,J.ATG vector for r
egulated high−level expre
ssion of cloned genesin
scherichia coli.Gene, 40,
183,1985)のDNAを制限酵素HindIII
で消化後、このDNA2μgをS1ヌクレアーゼ液
(0.3M塩化ナトリウム、50mM酢酸ナトリウム
pH4.5、1mM硫酸亜鉛および100〜200単位
のS1ヌクレアーゼ)中で、37℃にて20分間インキ
ュベートし、0.12M EDTAおよび1M Tri
s・HCl(pH9.0)液を1/10容量加えて反応
を停止し、フェノール抽出を行った後、平滑末端となっ
たベクターDNAをエタノールで沈殿させ回収した。一
方、ベクターpKK233−2のDNAは制限酵素Ps
tIで消化後、フェノール抽出とエタノール沈殿により
精製した後、このDNA2μgを上記のT4DNAポリ
メラーゼ反応により末端を平滑にした。この様にして得
たクローンBK106およびBK111由来のDNA断
片0.5μgは夫々制限酵素HindIIIで開裂後、
また、クローンBK102およびBK147由来のDN
A断片0.5μgは夫々制限酵素PstIで開裂後、平
滑末端としたベクターDNA0.5μgと混合し、2μ
lの10×ライゲーション液(500mM Tris・
HCl pH7.5、100mM塩化マグネシウム、1
00mM DTT、10mM ATP)、300〜40
0単位のT4DNAリガーゼおよび蒸留水を加えて全量
を20μlとして、14℃にて12〜18時間インキュ
ベートし、得られたプラスミドを夫々、pCE−06、
pE−11、pB−02、およびpS−09と命名し
た。次に、これらのプラスミドDNAを用い、実質的に
上記(6)に記載のごとく大腸菌JM109株を形質転
換し、形質転換大腸菌を得、LB培地(1% W/Vト
リプトン、0.5% W/Vイーストエキストラクト、
および1% W/V塩化ナトリウム、pH7.5)で3
7℃にて培養し、対数増殖期に1mM IPTG(イソ
プロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加
し、更に3時間培養した。更に大腸菌細胞を遠心(1
0,000×g、15分間)により回収し、50mM
Tris・HCl(pH8.0)に溶解し、超音波処理
(20KHz、600W,5分間)後、遠心(10,0
00×g、15分間)により上清と沈殿に分画し、夫々
をサンプル緩衝液(20% V/Vグリセロール、0.
1M Tris.HCl pH6.8、2% W/V
SDS、2% V/V 2−メルカプトエタノール、お
よび0.02% BPB)に溶解し、100℃で3分間
加熱後、0.1% SDS−7.5%ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動後、蛋白を分離し、トランス・ブロット
セル〔BIO・RAD社(米国)製販〕にてニトロセル
ロースフィルターに転写した。次いで、フィルターを3
%ゲラチン液に浸し、60分放置後、100倍希釈した
NANB型肝炎患者血清と室温にて2〜3時間インキュ
ベートし、まず蒸留水で、次にTTBS液(0.02M
Tris・HCl pH7.5、0.5M塩化ナトリウ
ムおよび0.05% V/V Tween20)で洗浄
した。次いで、2000倍希釈したパーオキシダーゼ標
識抗ヒトIgG抗体液に浸し、室温にて90分間インキ
ュベートした。そして、蒸留水およびTTBSで洗浄し
た後、上記(7)に記載のごとく発色剤DABおよび基
質の30%過酸化水素液をくわえた緩衝液に5〜30分
間浸し、水洗して反応を停止した
【0093】この結果、第2表に示すごとくいずれのプ
ラスミドの産生する抗原もNANB型肝炎患者の血清と
特異的に反応し、これらのプラスミドに挿入されたcD
NAの産生する蛋白が臨床的に重要であることが示され
た。
【0094】(12)大腸菌の産生したNANBV関連
抗原の精製および肝疾患患者血清との反応性: 発現ベ
クターに挿入されたcDNAの産生する蛋白の有用性
は、これらの蛋白を精製し、ELISAまたはラジオイ
ムノアッセイ用抗原として用いる事によって示された。
即ち、上記(11)で得た形質転換大腸菌の菌体破砕液
を遠心(10,000×g、15分間)により上清と沈
殿に分画する。例えば、形質転換体JM109/pCE
066より得られた沈殿を100mM Tris・HC
l(pH8.0)−0.1% Triton X−10
0溶液に浮遊し、超音波処理(20KHz、600W、
1分間)後、遠心(21,000×g、15分間)し
て、沈殿を100mM Tris・HCl(pH8.
0)−6M尿素に再浮遊後、超音波処理を行った。
【0095】得られた上清は、10mMリン酸緩衝液
(pH7.5)−6M尿素に対し透析し、抗原液を20
ml、高速液体クロマトグラフイー(HPLC)により
上述の緩衝液にて平衡化したヒドロキシアパタイト充填
カラム(21.5×250mm)に吸着させ、上述緩衝
液中で塩化ナトリウムの0〜2M直線濃度勾配溶出を行
い、抗原を含む画分をプールし、50mM炭酸緩衝液
(pH9.6)−0.05%ドデシル硫酸ナトリウム
(SDS)に透析した。
【0096】また、形質転換体JM109/pB−02
−10の菌体破砕液の遠心上清(10,000×g、1
5分間)を35%飽和硫酸アンモニウム処理し、得られ
た沈殿を50mM Tris・HCl(pH8.5)−
100mM 2−メルカプトエタノールに溶解して、同
緩衝液に透析した。次いで、高速液体クロマトグラフィ
ーにより同緩衝液にて平衡化したDEAE−セルロース
カラム(22.0×200mm)に透析済の試料100
mlを吸着させ、50mM Tris・HCl(pH
8.5)−100mM 2−メルカプトエタノール中で
塩化ナトリウムの0〜2M直線濃度勾配溶出を行い、抗
原を含む画分をプールした。
【0097】この画分は10mMリン酸緩衝液(pH
6.8)−100mM 2−メルカプトエタノールに透
析し、同緩衝液にて平衡化したHPLC用ハイドロキシ
アパタイトカラムに吸着させた後、リン酸の10〜40
0mM直線濃度勾配溶出を行い、抗原を含む画分をプー
ルし、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)−0.05%
SDS液に透析した。更に、形質転換体JM109/p
E−11−89の菌体破砕液の遠心沈殿は、10mMリ
ン酸緩衝液(pH5.5)に浮遊し、超音波処理を1分
間行い、遠心(21,000×g、15分間)した。得
られた沈殿は100mM炭酸緩衝液(pH10.5)−
500mM塩化ナトリウム−10mM EDTA溶液に
浮遊し、再び超音波処理を1分間行い、遠心上清を30
mMリン酸緩衝液−6M尿素に対し透析した。次いで、
透析に用いたと同様の緩衝液で平衡化した(HPLC)
用CM−セルロースカラム(22×200mm)に20
mlの透析液を吸着させ、同緩衝液中で塩化ナトリウム
の0〜1.5M直線濃度勾配溶出を行い、抗原を含む画
分をプールし、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)−
0.05%SDSに透析し、抗原液を得た。
【0098】上記のごとく調製した抗原は、ELISA
用抗原として、NANB型肝炎ウイルス感染の臨床的診
断に用いることができた。即ち、上記の精製抗原を蛋白
濃度1μg/mlに調製し、ELISA用マイクロプレ
ート・イムロン600〔IMMULON(登録商標)、
Greiner社(独)製販〕の各ウェルに100μl
ずつ分注し、4℃にて一夜静置する。各ウェルはPBS
−T緩衝液(10mMリン酸緩衝液 pH7.2、0.
8%塩化ナトリウムおよび0.05% Tween2
0)で3回よく洗浄し、PBS−T緩衝液で希釈した被
検血清を100μl/ウェル加え、37℃にて1時間反
応させた。PBS−T緩衝液で3回洗浄後、ペルオキシ
ダーゼ標識抗ヒトIgG抗体〔Cappel社(独)製
販〕を10%牛胎児血清を含むPBS−T緩衝液にて
8,000倍希釈したものを各ウェルに100μlづつ
加え、37℃にて1時間反応後、再び、PBS−T緩衝
液で4回洗浄し、基質発色剤溶液(9mlの0.05M
クエン酸−リン酸緩衝液に0.5μgのo−フェニレン
ジアミンと過酸化水素水20μlを含む)を各ウェルに
100μlづつ加え、プレートを遮光して室温で60分
静置した。4N硫酸を各ウェルに75μlづつ加え、4
90nmの吸光度を測定した。第3表に示した結果から
明らかなように、いずれの形質転換体由来抗原もNAN
B型肝炎患者血清と特異的に反応することから、これら
の形質転換体の産生する抗原の臨床診断における有用性
が実証された。
【0099】
【0100】第3表に示した結果は、上記の抗原を用い
たラジオイムノアッセイによっても得ることが出来た。
即ち、1μg/mlの濃度の上記精製抗原液0.2ml
づつに、直径1/4インチのポリスチレンボール〔ペー
ゼル社(独)製販〕を加え、4℃にて一夜静置する。次
いで、上記ELISAに用いたPBS−T緩衝液にてポ
リスチレンボールを5回洗浄し、被検血清をPBS−T
緩衝液で20〜2500倍希釈したものを200μlづ
つ加え、37℃にて60分間反応させる。PBS−T緩
衛液で5回洗浄し、125I−標識抗ヒトIgG抗体を
200μlづつ加えて37℃にて1時間反応させた後、
PBS−T緩衝液で5回洗浄し、スチレンボールに結合
している。125Iのcpmを測定する事により、第3
表に示したと同様の結果が得られ、先に得られた精製抗
原のNANB型肝炎ウイルス感染の臨床診断における有
用性が示された。
【0101】応用例1 合成ポリペプチドの反応性に関する試験:抗体分子は抗
原分子上に存在する“エピトープ”として知られる特定
の領域の構造と結合するが、これらの特定な領域は抗原
分子上の親水性領域に見られる。この様な特定領域を有
する抗原ポリペプチドは、高い反応特異性を持つ有用な
臨床診断剤を容易に調製し得るものと考えられる。NA
NBVのエピトープは、図2−1から図2−16に示さ
れたNANBV遺伝子cDNAがコードするアミノ酸配
列の親水性/疎水性パターンより推定される。即ち、図
2−1に示される塩基番号第333番から第422番、
図2−1および図2−2に示される塩基番号第474番
から第563番、図2−8に示される塩基番号第448
5番から第4574番、および図2−10に示される塩
基番号第5544番から第5633番にコードされるア
ミノ酸残基を夫々含有するポリペプチドBKP−106
−1、BKP−106−2、BKP−102−1、およ
びBKP−147−1を合成した。夫々のポリペプチド
は1μg/mlの濃度に調製し、実施例1の(12)に
記載と同様の方法により、ELISA用マイクロプレー
トに固相化し、ELISA法にて、NANB型肝炎患者
血清との反応性を試験した。第4表に示した結果から明
らかなように、いずれの合成ペプチドもNANB型肝炎
患者の血清と特異的に反応することから、上記の塩基配
列の特定領域の臨床診断における重要性が示された。
【0102】 更に、NANBVのエンベロープ蛋白上のエピトープを
推定し、3種のポリペプチドを合成した。即ち、図2−
2に示される塩基番号第906番から第953番および
第1020番から第1046番と、図2−2および図2
−3に示される塩基番号第1194番から第1232番
にコードされるポリペプチドを合成した。これ等のポリ
ペプチドはいずれも、NANBVの株により抗原変異が
生じると考えられるエンベロープ領域に対応するもので
あり、かつ、ELlSA法により、NANB型肝炎患者
血清との間での反応が確認されたため、上述の蛋白は疫
学調査、臨床診断において、ワクチン等の抗原として重
要かつ有用である。
【0103】応用例2 PCR(Polymerase Chain Reac
tion)法によるNANBV核酸の検出:輸血後NA
NB型肝炎発症予防には、輸血に供される血液中のNA
NBVの感染の有無を検定することが重要であり、ま
た、肝疾患の診断のため、肝組織のNANBV感染の有
無について検討することは、臨床的に極めて重要である
が、本発明のNANBVcDNAよりポリメラーゼチェ
インリアクション(PCR)用プライマーを調製し、N
ANB型肝炎診断に用いることができる。即ち、実施例
1の(1)に記載のごとく、1mlの患者や健常人に由
来の種々の血清についてRNAの精製を行った。同様に
実施例1の(2)に記載のごとく、肝臓細胞よりRNA
を調製した。次いで、実施例1の(4)に記載のごと
く、PCRおよび電気泳動を行い、常法に従い、サザー
ンハイブリダイゼーションによる増幅されたcDNAが
NANBV由来のものであるかの同定を、NANBVc
DNAクローンBK108由来のcDNAより作成した
32P−標識プローブを用いて行った。第5表に示した
結果から明らかなように、本発明により得られたNAN
BVcDNAの塩基配列より調製したプライマーおよび
クローニングされたNANBVcDNAの断片をプロー
ブとして用いる事により、血清中のNANBV核酸の検
出を行い、血清のNANBV感染を診断することができ
る。
【0104】
【0105】
【発明の作用と効果】 (1)本発明のNANBV遺伝子cDNAは信頼性が非
常に高く、NANBV遺伝子のオープンリーデイングフ
レームの全領域を包含するものである。 (2)本発明のNANBV抗原ポリベプチドは、NAN
BVと特異的に反応するため、該NANBV抗原ポリペ
プチドを診断剤として用いた場合と、NANB型肝炎の
診断を高い信頼性をもって容易に実施することができ
る。 (3)本発明のNANBV抗原ポリペプチドを輸血用血
液のスクリーニングに用いた場合と、NANBV感染の
血液を高い信頼性をもって容易に選別し、非感染の血液
から除去することができるため、血液伝播型のNANB
型肝炎の予防が可能となる。 (4)本発明のNANBV抗原ポリペプチドは、NAN
B型肝炎を予防するワクチンの活性要因として有利に用
いることが可能である。 (5)本発明のNANBV抗原ポリペプチドにより、N
ANBVに特異的な抗体、特にモノクローナル抗体を、
容易に調製することができ、このNANBVに特異的な
抗体は、NANB型肝炎検出の診断剤のみならず輸血用
血液からのNANBVの除去剤としても有利に使用する
ことができる。 (6)更にまた、本発明のNANBV抗原ポリペプチド
が動物のウイルス感染ではなく宿主細胞内に存在する抗
原ポリペプチドをコードするDNAの遺伝子発現により
産生されることに注目すべきであるため、この抗原ポリ
ペプチドの産生段階中の感染の可能性は、実質的に排除
され、且つ産生コストも減少させることができ、産生工
程において用いられる全ての物質、例えば培養系に用い
る培地はその組成に関してはよく知られているため、精
製がたやすく、高純度の抗原ポリペプチド生成物を得る
ことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1−1および図1−2は、NANBVの全領
域に対する本発明のNANBV遺伝子のcDNAクロー
ン間の関係を示す。
【図2】図2−1から図2−16は、本発明のNANB
V遺伝子cDNA全領域の塩基配列および該塩基配列に
コードされるアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【図3】図3は、本発明のNANBV遺伝子cDNAお
よび日本脳炎ウイルス(JEV)遺伝子がコードする両
蛋白の間の疎水性指標(疎水性/親水性パターン)の比
較を示す。横軸はアミノ酸No.、縦軸は疎水性指標、
白三角は糖鎖結合可能部位、アステリスクはRNAポリ
メラーゼ共通のアミノ酸配列(Gly−Asp−As
p)部位、C、M、EおよびNSはそれぞれ、コア蛋
白、マトリックス蛋白、エンベロープ蛋白、および非構
造蛋白を意味する。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/02 C 8214−4B G01N 33/569 L 8310−2J 33/576 Z 8310−2J //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 森 千里 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財 団法人阪大微生物病研究会 観音寺研究所 内 (72)発明者 高見沢 昭久 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財 団法人阪大微生物病研究会 観音寺研究所 内 (72)発明者 吉田 巌 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財 団法人阪大微生物病研究会 観音寺研究所 内

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 図2−1から図2−16に示す塩基番号
    第1番から第9416番の非A非B型肝炎ウイルスの全
    塩基配列の少なくとも一部を含む第一の塩基配列および
    第一の塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から選ば
    れる少なくとも1つの塩基配列を包含するか、または第
    一の塩基配列の少なくとも1つの塩基を遺伝子コドンの
    縮重により置換して得られる少なくとも1つの塩基配列
    を包含する単離されたデオキシリボ核酸。
  2. 【請求項2】 該塩基配列が図2−1から図2−16に
    示す塩基番号第1番から第9416番の非A非B型肝炎
    ウイルスの全塩基配列の少なくとも6個の塩基を包含す
    ることを特徴とする請求項1に記載のデオキシリボ核
    酸。
  3. 【請求項3】 第一の塩基配列が塩基番号第333番か
    ら第422番、第333番から第677番、第333番
    から第1499番、第333番から第6371番、第4
    74番から第563番、第678番から第905番、第
    906番から第953番、第906番から第1499
    番、第1020番から第1046番、第1020番から
    第1121番、第1194番から第1232番、第12
    09番から第1322番、第1500番から第2519
    番、第2520番から第3350番、第3351番から
    第5177番、第4485番から第4574番、第51
    78番から第5918番、第5544番から第5633
    番、第5919番から第6371番、第6372番から
    第9362番、および第1番から第9416番の塩基配
    列からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に
    記載のデオキシリボ核酸。
  4. 【請求項4】 図2−1から図2−16に示す非A非B
    型肝炎ウイルスの全塩基配列の塩基番号第333番から
    第9362番のコーディング領域からなるデオキシリボ
    核酸によりコードされるアミノ酸配列の少なくとも一部
    からなるアミノ酸配列を含有する単離された抗原ポリペ
    プチド。
  5. 【請求項5】 上記のアミノ酸配列が塩基番号第333
    番から第9362番の塩基配列の少なくとも12個の塩
    基の塩基配列によりコードされる少なくとも4個のアミ
    ノ酸のアミノ酸配列を含有することを特徴とする請求項
    4に記載の抗原ポリペプチド。
  6. 【請求項6】 上記のアミノ酸配列が塩基番号第333
    番から第422番、第333番から第677番、第33
    3番から第1499番、第333番から第6371番、
    第474番から第563番、第678番から第905
    番、第906番から第953番、第906番から第14
    99番、第1020番から第1046番、第1020番
    から第1121番、第1194番から第1232番、第
    1209番から第1322番、第1500番から第25
    19番、第2520番から第3350番、第3351番
    から第5177番、第4485番から第4574番、第
    5178番から第5918番、第5544番から第56
    33番、第5919番から第6371番、第6372番
    から第9362番、および第333番から第9362番
    の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列によりコー
    ドされるアミノ酸配列を含有することを特徴とする請求
    項4に記載の抗原ポリペプチド。
  7. 【請求項7】 非A非B型肝炎ウイルス抗原ポリペプチ
    ドの産生方法にして、(a)デオキシリボ核酸をプラス
    ミドおよび動物ウイルス遺伝子から選ばれる複製可能な
    発現ベクターに導入して、該複製可能な発現ベクターが
    プラスミドの場合は該プラスミドとそれに挿入された該
    デオキシリボ核酸を含有する複製可能な組換えDNAを
    得、または該発現ベクターが動物ウイルス遺伝子の場合
    は該動物ウイルス遺伝子とそれに挿入された該デオキシ
    リボ核酸を含有する組換えウイルスを得、 該デオキシリボ核酸は図2−1から図2−16に示す非
    A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の塩基番号第1番か
    ら第1499番の領域の少なくとも一部または第150
    0番から第9416番の領域の少なくとも一部を含む第
    一の塩基配列および第一の塩基配列の少なくとも1つの
    塩基を遺伝子コドンの縮重により置換して得られる少な
    くとも1つの塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列
    を含有しており、(b)ステップ(a)で用いた複製可
    能な発現ベクターがプラスミドの場合は、該組換えDN
    Aを微生物または真核細胞培養物にトランスフェクトし
    て形質転換体を形成し、続いて該形質転換体を微生物あ
    るいは真核細胞培養物の親細胞から選別し、(c)ステ
    ップ(b)で得た該形質転換体を培養して、該デオキシ
    リボ核酸を発現させることにより、非A非B型肝炎ウイ
    ルス抗原ペプチドを産生し、またはステップ(a)で得
    た該組換ウイルスを培養して該デオキシリボ核酸と該動
    物ウイルス遺伝子を発現させることにより非A非B型肝
    炎ウイルス抗原ペプチドを動物ウイルスおよびそれと共
    に発現された非A非B型肝炎ウイルス抗原ペプチドを含
    む増殖組換えウイルスの形で産生し、そして(d)該非
    A非Bウイルス抗原ペプチドを単独または該増殖組換え
    ウイルスの形で単離することを包含することを特徴とす
    る産生方法。
  8. 【請求項8】 第一の塩基配列が塩基番号第333番か
    ら第9362番の塩基配列の少なくとも12個の塩基を
    含有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 第一の塩基配列が塩基番号第333番か
    ら第422番、第333番から第677番、第333番
    から第1499番、第474番から第563番、第67
    8番から第905番、第906番から第953番、第9
    06番から第1499番、第1020番から第1046
    番、第1020番から第1121番、第1194番から
    第1232番、第1209番から第1322番、第15
    00番から第2519番、第2520番から第3350
    番、第3351番から第5177番、第4485番から
    第4574番、第5178番から第5918番、第55
    44番から第5633番、第5919番から第6371
    番、および第6372番から第9362番の塩基配列か
    らなる群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載
    の方法。
  10. 【請求項10】 プラスミドおよび動物ウイルス遺伝子
    から選ばれる複製可能な発現ベクターとデオキシリボ核
    酸とからなり、該デオキシリボ核酸は図2−1から図2
    −16に示す非A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の塩
    基番号第1番から第1499番の領域の少なくとも一部
    または第1500番から第9416番の領域の少なくと
    も一部を含む第一の塩基配列および第一の塩基配列の少
    なくとも1つの塩基を遺伝子コドンの縮重により置換し
    て得られる少なくとも1つの塩基配列からなる群から選
    ばれる塩基配列を含有することを特徴とする複製可能な
    組換え体。
  11. 【請求項11】 該塩基配列が塩基番号第1番から第9
    416番の塩基配列の少なくとも6個の塩基を含有する
    ことを特徴とする請求項10に記載の複製可能な組換え
    体。
  12. 【請求項12】 該塩基配列が塩基番号第333番から
    第1499番の塩基配列の少なくとも12個の塩基また
    は第1500番から第9362番の塩基配列の少なくと
    も12個の塩基を含有することを特徴とする請求項10
    に記載の複製可能な組換え体。
  13. 【請求項13】 該塩基配列が塩基番号第333番から
    第422番、第333番から第677番、第333番か
    ら第1499番、第474番から第563番、第678
    番から第905番、第906番から第953番、第90
    6番から第1499番、第1020番から第1046
    番、第1020番から第1121番、第1194番から
    第1232番、第1209番から第1322番、第15
    00番から第2519番、第2520番から第3350
    番、第3351番から第5177番、第4485番から
    第4574番、第5178番から第5918番、第55
    44番から第5633番、第5919番から第6371
    番、および第6372番から第9362番の塩基配列か
    らなる群から選ばれることを特徴とする請求項12に記
    載の複製可能な組換え体。
  14. 【請求項14】 ハイブリダイゼーションまたはポリメ
    ラーゼチェインリアクションによって非A非B型肝炎を
    検知するための診断剤にして、図2−1から図2−16
    に示す塩基番号第1番から第9416番の非A非B型肝
    炎ウイルスの全塩基配列の少なくとも一部を含む塩基配
    列および該塩基配列に相補的な塩基配列からなる群から
    選ばれる少なくとも1つの塩基配列を含有する単離され
    たデオキシリボ核酸を、ハイブリダイゼーションまたは
    ポリメラーゼチェインリアクションに十分の量含有する
    ことを特徴とする診断剤。
  15. 【請求項15】 該塩基配列が図2−1から図2−16
    に示される塩基番号第1番から第9416番の非A非B
    型肝炎ウイルスの全塩基配列の少なくとも6個の塩基を
    含有することを特徴とする請求項14に記載の診断剤。
  16. 【請求項16】 抗原抗体反応によって非A非B型肝炎
    を検知するための診断剤にして、図2−1から図2−1
    6に示す非A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の塩基番
    号第333番から第9362番のコーディング領域を含
    むデオキシリボ核酸によりコードされるアミノ酸配列の
    少なくとも一部を含有するアミノ酸配列を有する単離さ
    れた抗原ポリペプチドを、抗原抗体反応を呈するに十分
    の量含有することを特徴とする診断剤。
  17. 【請求項17】 該抗原ポリペプチドが塩基番号第33
    3番から第9362番の塩基配列の少なくとも12個の
    塩基の塩基配列によりコードされる少なくとも4個のア
    ミノ酸のアミノ酸配列を含有することを特徴とする請求
    項16に記載の診断剤。
  18. 【請求項18】 該抗原ポリペプチドが塩基番号第33
    3番から第422番、第333番から第677番、第3
    33番から第1499番、第333番から第6371
    番、第474番から第563番、第678番から第90
    5番、第906番から第953番、第905番から第1
    499番、第1020番から第1046番、第1020
    番から第1121番、第1194番から第1232番、
    第1209番から第1322番、第1500番から第2
    519番、第2520番から第3359番、第3351
    番から第5177番、第4485番から第4574番、
    第5178番から第5918番、第5544番から第5
    633番、第5919番から第6371番、第6372
    番から第9362番、および第333番から第9362
    番の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列によりコ
    ードされるアミノ酸配列を含有することを特徴とする請
    求項16に記載の診断剤。
  19. 【請求項19】 図2−1から図2−16で示される非
    A非B型肝炎ウイルスの全塩基配列の塩基番号第333
    番から第9362番のコーディング領域を含むデオキシ
    リボ核酸によりコードされるアミノ酸配列の少なくとも
    一部を含むアミノ酸配列を含有する単離された抗原ポリ
    ペプチドを免疫原性を奏するのに十分の量含有し、かつ
    少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤また
    は賦形剤を含有することを特徴とする非A非B型肝炎ワ
    クチン。
  20. 【請求項20】 該抗原ポリペプチドが塩基番号第33
    3番から第9362番の塩基配列の少なくとも12個の
    塩基の塩基配列によりコードされる少なくとも4個のア
    ミノ酸のアミノ酸配列を含有することを特徴とする請求
    項19に記載のワクチン。
  21. 【請求項21】 該抗原ポリペプチドが塩基番号第33
    3番から第422番、第333番から第677番、第3
    33番から第1499番、第333番から第6371
    番、第474番から第563番、第678番から第90
    5番、第906番から第953番、第906番から第1
    499番、第1020番から第1046番、第1020
    番から第1121番、第1194番から第1232番、
    第1209番から第1322番、第1500番から第2
    519番、第2520番から第3350番、第3351
    番から第5177番、第4485番から第4574番、
    第5178番から第5918番、第5544番から第5
    633番、第5919番から第6371番、第6372
    番から第9362番および第333番から第9362番
    の塩基配列からなる群から選ばれる塩基配列によりコー
    ドされるアミノ酸配列を含有することを特徴とする請求
    項19に記載のワクチン。
  22. 【請求項22】 図2−1から図2−16に示される塩
    基番号第1番から第9416番の非A非B型肝炎ウイル
    ス全塩基配列の少なくとも一部または全領域を鋳型とし
    て用いることにより合成されるRNA。
  23. 【請求項23】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK108(微工研条寄第2971
    号)。
  24. 【請求項24】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK129(微工研条寄第2972
    号)。
  25. 【請求項25】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK138(微工研条寄第2973
    号)。
  26. 【請求項26】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK153(微工研条寄第2974
    号)。
  27. 【請求項27】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK157(微工研条寄第3243
    号)。
  28. 【請求項28】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK166(微工研条寄第2975
    号)。
  29. 【請求項29】 非A非B型肝炎ウイルス遺伝子cDN
    Aを保有する大腸菌BK172(微工研条寄第2976
    号)。
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