JPH06290766A - 円筒型アルカリ電池 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ガスケットに集電子を圧入した封口体を有す
る円筒型アルカリ電池において、高温保存、ヒートサイ
クルおよび長期常温保存でのガスケットクラックを防止
することにより、耐漏液性能に優れた製品を提供するこ
とを目的とする。 【構成】 ガスケット７の中央孔７ａ下部の盲蓋部７ｂ
を集電子６圧入前に、集電子６外径よりも大きく加熱、
拡口（７ｃ）することにより、ガスケット７のストレス
クラックを助長するガスケット中央孔下部の微細な亀裂
の発生を防止した、耐漏液性能の優れたアルカリ電池。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は円筒型アルカリ電池のガ
スケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、アルカリ電池の封口体はポリエチ
レン、ポリプロピレン、ナイロンなどの合成樹脂、また
はゴム製のガスケットを使用している。

【０００３】ガスケットの射出成型においては、クラッ
クの起点となるウエルドラインの発生するサイドゲート
方式からウエルドラインが発生しないセンターゲート方
式へ改良し、現在のガスケットの射出成型製造法に至っ
ている（例えば特公昭６２−２４９０４号公報）。ま
た、集電子とガスケット間の密着性をよくするため、集
電子とガスケット間の接触部へ封止剤を塗布し、更に集
電子とガスケットの緊縛度を増すために、ガスケット中
央孔に対して集電子圧入時のストレスによりガスケット
クラックが生じない程度の集電子外径をもって耐漏液性
能を確保していた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】アルカリ電池では耐漏
液性能、高温安定性等の観点から、一般的にガスケット
の材質としてナイロン樹脂が広く使用されている。ナイ
ロン樹脂はポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂に比
べ寸法安定性、弾性強度の面で優れている。

【０００５】反面、脱水性が大きいため電池として保存
中にナイロン樹脂からの脱水による脆化等の劣化によ
り、クラックが発生することが知られている。

【０００６】本発明者等はこのガスケットクラックに着
目し、観察、解析の結果、クラックの発生メカニズムを
確認した。即ち、クラックの発生はガスケットの盲蓋部
を集電子で圧入、貫通する際に破られた盲蓋の端部に微
細な亀裂が発生し、更に電池封口におけるガスケットの
圧縮による応力歪みが、この微細な亀裂部に集中する。

【０００７】加えてナイロン樹脂からの脱水、強アルカ
リ性電解液による脆化とあいまって、微細な亀裂は成長
し、ついにはクラックとなる。

【０００８】このようなメカニズムで発生するクラック
はナイロン樹脂の脱水、強アルカリ性電解液による脆化
及び、応力歪みの集中又は、減衰、分散が常温保存と加
速の高温試験とでは異なるため、精度の高い加速評価試
験が困難である。

【０００９】例えば、通常の１つの目安とされていた６
０℃１ヶ月の高温保存試験においては、ガスケットクラ
ックによる漏液は全く確認されないが、常温の長期保存
においてはガスケットクラックにより漏液に至る事が経
験的に知られている。

【００１０】また、ガスケットと集電子間の電解液のク
リーピングによる漏液を防止するためにガスケットと集
電子間の緊縛度を増す目的でガスケットの中央孔内径に
対する集電子の外径を大きくするとガスケットと集電子
間の密着性は良くなるものの、集電子のガスケット圧入
時及び、電池封口時における正極ケースの締め付けによ
るガスケットの弾性変形時に大きなストレスが生じ、電
池での高温、低温〜高温のヒートショック及び、長期の
常温保存においてガスケットに生じた応力歪みによりク
ラックが発生し、漏液に至ってしまうため緊縛度を更に
高めた、より大きな集電子外径を使用することができな
かった。

【００１１】本発明は従来のガスケット形状の改良によ
り、クラックの発生源であるところの微細な亀裂の発生
を防止することにより従来の課題を解消するもので、長
期の常温保存及び、苛酷な温度条件下での耐クラック性
能を向上し、耐漏液性能に優れたアルカリ電池を提供す
るものである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明者等はこの目的に
沿って、ガスケット形状を鋭意検討した結果、ガスケッ
ト中央孔の底部の盲蓋部を集電子外径よりも大きく加
熱、拡口することにより、集電子の圧入、貫通時に発生
する盲蓋部の端部における微細な亀裂の発生を防止し、
併せてガスケットの中央孔径と集電子外径の最適比率を
選択して緊縛度を高めた、極めて優れたガスケットを見
い出した。

【００１３】

【作用】ガスケット中央孔下部の盲蓋部を加熱、拡口す
ることにより、集電子の圧入、貫通時に発生する盲蓋端
部の微細な亀裂の発生を防止し、高温、低温〜高温のヒ
ートショック及び、常温における長期保存でのガスケッ
トクラックを解消するものである。又、盲蓋端部の微細
な亀裂の発生がないため、集電子外径を大きくすること
が可能であり、従来よりもガスケット、集電子間の緊縛
度が高められる。従って、ガスケットと集電子間の電解
液のクリーピングに対する耐漏液性能に優れたものであ
る。

【００１４】

【実施例】以下、本発明の一実施例のアルカリ電池につ
いて説明する。図１は本発明に用いた単３サイズのアル
カリ電池の半断面図である。

【００１５】１はラベル外装、２は正極ケース、３は正
極合剤、４はセパレーター、５はゲル負極、６は集電
子、７はガスケット、８は絶縁ワッシャー、９は絶縁樹
脂、１０は底板である。

【００１６】図１において、集電子外径／ガスケット中
央孔の内径比率が１００〜１２１％のものについて、各
６０個の漏液試験を実施した。その結果を（表１）に示
す。

【００１７】

【表１】

【００１８】なお、常温常湿及び、６０℃常湿の環境下
において保存し、定期的に漏液の有無を確認した。（表
１）に示す通り、集電子外径／ガスケット中央孔の内径
比率が１００％の場合、テストの全ての条件下では従来
法、本発明法ともにガスケットクラックは発生しない
が、ガスケットと集電子間からのクリーピング現象によ
り漏液が発生した。ここで従来法とは、負極集電子の圧
入時にガスケットの盲蓋部を破って貫通する方法で、本
発明法とは図２（ａ）（ｂ）で示すようにガスケットの
盲蓋部７ｂを加熱した棒状治具を用いてガスケットの中
央孔７ａの底部の盲蓋部７ｂを集電子外径よりも大きく
加熱、拡口（７ｃ）して、負極集電子６を圧入し図３に
示す封口体を作製してなるものである。従来法であれ
ば、常温２４ヶ月の保存期間では１１２％を越えるとガ
スケットクラックによる漏液が発生するため、集電子外
径／ガスケット中央孔の内径比率は１０３％〜１０９％
に規制される。

【００１９】ところが本発明法では、１１５％迄はガス
ケットクラックによる漏液は発生しなく１１８％を越え
ると漏液が発生する。従って、集電子外径／ガスケット
中央孔の内径比率は１０３％〜１１５％が使用可能であ
り、さらに好ましくは１０４％〜１０８％であった。

【００２０】本発明法では、ガスケットの中央孔内径に
対する集電子外径の比率を１１５％まで大きくすること
ができ、従来法に比べてガスケット、集電子間の緊縛力
を更に増加させ、加えてガスケットに生じた応力歪を分
散、減少させることにより、耐漏液性能の向上を可能と
したものである。

【００２１】

【発明の効果】以上の実施例の説明より明らかなよう
に、本発明のアルカリ電池によればガスケット中央孔下
部の盲蓋部を集電子外径より大きく加熱、拡口すること
により、クラックを引き起こす微小な亀裂の発生を防止
できるため、集電子の外径を更に大きくして緊縛度を高
めることにより、長期の常温保存や苛酷な温度条件下
で、耐漏液性能に優れた製品を提供することができるも
のである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例によるアルカリ電池の断面図

【図２】本発明の一実施例によるガスケットの断面図

【図３】本発明の一実施例による封口体の断面図

【符号の説明】

１ ラベル外装 ２ 正極ケース ３ 正極合剤 ４ セパレーター ５ ゲル負極 ６ 集電子 ７ ガスケット ７ａ ガスケットの中央孔 ７ｂ ガスケットの盲蓋部 ７ｃ ガスケットの加熱、拡口部 ８ 絶縁ワッシャー ９ 絶縁樹脂 １０ 底板

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大窪 威 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒型アルカリ電池のケース開口部を封
   口するガスケットが負極集電子の圧入される中央孔の底
   部に射出成型からの樹脂流入ゲート用盲蓋部を有するナ
   イロンからなるガスケットであり、負極集電子の圧入前
   に前記盲蓋部を集電子の外径より大きく拡口してなるガ
   スケットを用いた円筒型アルカリ電池。
2. 【請求項２】 前記盲蓋部を加熱、拡口した請求項１記
   載の円筒型アルカリ電池。
3. 【請求項３】 ガスケット中央孔の内径に対する集電子
   外径の比率を１０３％〜１１５％に規制した請求項１記
   載の円筒型アルカリ電池。