JPH06287570A - 石炭液化方法 - Google Patents

石炭液化方法

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JPH06287570A
JPH06287570A JP7978993A JP7978993A JPH06287570A JP H06287570 A JPH06287570 A JP H06287570A JP 7978993 A JP7978993 A JP 7978993A JP 7978993 A JP7978993 A JP 7978993A JP H06287570 A JPH06287570 A JP H06287570A
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coal
oil
solvent
coal liquefaction
liquefaction
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JP7978993A
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Mutsumaro Kawabata
睦麿 川端
Yasushi Terashita
靖司 寺下
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 石炭液化用溶剤として、水素供与能力を有
し、かつ安価に安定して供給できる成分を用いること
で、反応効率を向上でき、かつ該液化油コストの低減を
図ることのできる石炭液化方法を提供する。 【構成】 原料石炭、石炭液化用溶剤および触媒を混合
した石炭スラリーを還元性ガス雰囲気の高温高圧条件下
で石炭液化反応させた際に生じる液化油のうち、水素化
しない留分の一部または全部と、該液化油のうち、水素
化する留分を水素化反応させた際に生じる石炭系溶剤と
を混合し、これを石炭液化用溶剤として循環使用するこ
とを特徴とする。 【効果】 反応効率を高め、液化油収率および軽質油収
率をより増大させることができ、所望の液化油、特に軽
質油留分のコストを低減して、石炭液化時の反応条件を
マイルド化できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な石炭液化方法に
関するものである。さらに詳述すれば、石炭液化反応さ
せた際に生じる液化油の水素化しない留分の少なくとも
一部を該石炭液化用溶剤として循環使用してなる石炭の
液化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、石油資源の枯渇および石油価格の
高騰に伴って代替エネルギーの必要性が認識されるよう
になり、その代替エネルギーの1つとして石炭の液化反
応についても数多くの研究がなされている。
【0003】こうした石炭液化方法に関しては、現在ま
でに、石炭、石炭液化用溶剤および触媒を混合して調製
したスラリーを高温、高圧で触媒の存在下、水素添加に
より液化反応させ、得られた液化油を軽質油、中質油お
よび重質油(残渣を含む)に分離精製し、得られた該液
化油の内、軽質油、中質油については製品として、また
得られた該液化油の内、重質油(残渣を含む)に対して
は、減圧蒸留により重質油と残渣成分とを分離した後、
得られた重質油(260〜538℃沸騰留分)を水素化
反応塔で水素化反応を行い、得られた水素供与性能力を
有する石炭系溶剤としたものを戻して、再び石炭液化用
溶剤として循環使用する石炭液化方法などが良く知られ
ている。こうした石炭の液化においては、石炭液化用溶
剤に石炭液化生成重質油を水素化した油を用いることに
より、該石炭液化用溶剤の水素供与能力の増大による液
化反応時の水素移動の円滑化が図れ、液化反応を促進す
ることができるものである。
【0004】図2は、従来技術として知られている石炭
液化方法における石炭液化装置の一実施態様を示す概略
図である。
【0005】図2より、従来法における石炭液化装置5
1の構成としては、石炭貯蔵槽2、溶剤貯蔵槽3および
触媒貯蔵槽4が設けられ、これらはすべて配管5、6お
よび7により攪拌機8を備えてなる石炭スラリー調製槽
9の上頭部にそれぞれ連結されらている。また該石炭ス
ラリー調製槽9の底槽部は、石炭液化反応塔10の底塔
部に配管11で連結されており、該配管11の経路上に
は、高圧ポンプ12が設けれている。さらに水素貯蔵槽
13が配管14により連結され、該配管14の他端は高
圧水素ガスが供給できるように該高圧ポンプ12より該
反応塔10側の該上記配管11経路上に連結されてい
る。また、該反応塔10側の該配管11の外周部には加
熱器16が設けられている。次に該石炭液化反応塔10
の頭塔部は分離器17の上部に配管18により連結され
ている。さらに該分離器17の上部が減圧弁を経て常圧
蒸留塔19に、分離器17の下部が減圧弁を経て減圧蒸
留塔20にそれぞれ配管21、22により連結され、該
常圧蒸留塔19の頭塔部および底塔部が生成ガス捕集器
23、軽中質油捕集器24および水捕集器25にそれぞ
れ配管26、27および28により連結されている。一
方、上記減圧蒸留塔20の底塔部が残渣捕集器29に、
減圧蒸留塔20の頭塔部が、一旦常圧に戻った後、昇圧
ポンプを経て水素化反応塔30の頭塔部にそれぞれ配管
31および32で連結され、該水素化反応塔30の底塔
部が上記溶剤貯蔵槽3と配管33で連結されている。
【0006】上記構成を有する石炭液化装置51を用い
て石炭液化を行う方法について詳述する。
【0007】まず、石炭貯蔵槽2から原料石炭、溶剤貯
蔵槽3から石炭液化用溶剤がそれぞれ配管5、6を通じ
て石炭スラリー調製槽9に送られ、さらに触媒貯蔵槽4
より、液化油収率を上げるために、触媒が同時に配管7
を通じて、通常常圧で約60℃程度に加温された石炭ス
ラリー調製槽9に添加され、攪拌機8を用いて混合さ
れ、石炭スラリーが調製される。
【0008】ここで、石炭貯蔵槽2に貯蔵される原料石
炭としては、石炭液化反応で水素化分解反応を行わせる
ために、石炭中に含まれる5〜30重量%の水分を通常
1〜2重量%まで乾燥した後、150μm以下の粒度の
石炭粒子の収率が80%以上となるように粉砕された石
炭である。該石炭の粉砕には、ロッドミル、ボールミ
ル、振動ミルまたはディスクミルなどの粉砕機が用いら
れている。
【0009】上記石炭スラリーの濃度は、前記原料石炭
の乾燥重量に対する前記石炭液化用溶剤の重量比(石炭
液化用溶剤/原料石炭)で通常、1.0〜3.0程度の
範囲であり、触媒の添加量は、無水、無灰ベースの原料
石炭に対して通常1〜5%程度の範囲となるように調製
される。
【0010】また、触媒としては、主に比較的安価で入
手の容易な鉄系触媒が用いられており、具体的には、合
成硫化鉄触媒または天然鉄鉱石触媒などが使用されてい
る。
【0011】こうして得られた石炭スラリーは、高圧ポ
ンプ12で150〜190kg/cm2 の圧力に昇圧し
て系内に装入する。その際、水素貯蔵槽13の水素をコ
ンプレッサーなどにて同じ圧力に昇圧し、得られた高圧
水素ガスを供給して、水素雰囲気とする。さらに加熱器
16により380〜450℃に加熱した後、石炭液化反
応塔10で該水素ガスと反応させて水素化分解させる。
【0012】この際の水素化分解は、通常、反応温度が
430〜470℃、圧力が150〜190kg/cm2
で行われ、かかる分解反応によって原料石炭の液化反応
が進行する。
【0013】石炭液化反応後の生成物は、配管18を通
じて該分離器17に送られ、該分離器17によって、生
成ガス、水および軽中質油(通常C5 〜260℃未満の
沸点留分)からなる成分と重質油(通常260℃以上の
沸点留分)および残渣からなる成分とに分離される。こ
のうち生成ガス、水および軽中質油からなる成分は、配
管21を通じ、減圧弁を経て常圧蒸留塔19に送られ、
生成ガス、水および軽中質油成分に分離され生成ガス捕
集器23、軽中質油捕集器24および水捕集器25に分
離捕集される。
【0014】さらに軽中質成分は必要に応じて軽質油
(通常C5 〜200℃未満の沸点留分)と中質油(通常
200〜260℃未満の沸点留分)に蒸留操作により分
離され、それぞれ所定の製品油として回収されている。
【0015】一方、重質油および残渣からなる成分は、
配管22を通じ、減圧弁を経て減圧蒸留塔20に送ら
れ、該減圧蒸留塔20で減圧蒸留(10〜50torr
まで減圧)され、538℃以上の沸点留分のものは液化
残渣として配管31を通じて残渣捕集器29に排出され
除去される。
【0016】他方、260〜538℃未満の沸点留分の
重質油は、一旦常圧に戻した後、配管32経路上に設け
られた高圧ポンプ(図示せず)および加熱器(図示せ
ず)により高温高圧下に保持され、Ni−Mo等の触媒
を充填した固定床の水素化反応塔30に送られ、水素雰
囲気下、通常300〜380℃、80〜120気圧で該
水素化反応塔30で通常LHSVが1〜2時間、水素ガ
スと反応させて水素化反応を行うことにより水素供与性
を高めてなるテトラリンなどの成分からなる水素化溶剤
を生成する。得られた該水素化溶剤は、配管33を通じ
て溶剤貯蔵槽3に戻すことにより石炭液化用溶剤として
循環使用されるものである。
【0017】しかしながら、上述の従来法による石炭液
化方法では、こうした水素化反応により得られる水素供
与能力を有する石炭系溶剤を循環使用して石炭液化用溶
剤に用いることにより、水素移動の円滑化を図り、液化
油収率を向上することができる反面、水素化なくても水
素供与能力を有する溶剤を有効利用していないため、水
素供与性溶剤として十分に能力を活用していない。この
ため、液化油収率のさらなる向上や、コスト低減が計れ
ていない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】上記問題点に鑑み、本
発明の目的は、新規な石炭の液化反応を提供するもので
ある。
【0019】また、本発明の目的は、石炭液化用溶剤と
して、水素供与能力を有し、かつ水素化処理することな
く、安価に安定して供給できる成分を用いることで、反
応効率を向上でき、かつ該液化油コストの低減を図るこ
とのできる石炭液化方法を提供する。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記諸目
的を達成するために、新規な石炭液化方法について鋭意
研究した結果、石炭液化用溶剤に利用できる水素供与能
力を有する成分として、石炭液化反応させた際に生じる
液化油の水素化しない中質油留分の少なくとも一部、特
に200〜260℃の沸点留分中に水素供与能力を有す
る成分が含まれていることに着目し、従来より用いられ
ている石炭液化反応させた際に生じる液化油の水素化す
る重質油留分を水素化反応させた際に生じる石炭系溶剤
と上記中質油留分とを循環して石炭液化用溶剤に用いる
ことで、該中質油留分に含まれるテトラリン類、メチル
テトラリン類などの水素供与能力を有する成分が石炭の
液化反応において水素移動の円滑化を図ることができ反
応性を向上させることができ、その結果、液化油収率の
向上、液化油コストの低減が図れることを見出だしたも
のであり、こうした知見に基づき本発明を完成するに至
ったものである。
【0021】すなわち、本発明の目的は、(1)原料石
炭、石炭液化用溶剤および触媒を混合した石炭スラリー
を還元性ガス雰囲気の高温高圧条件下で石炭液化反応さ
せた際に生じる液化油のうち、水素化しない留分の一部
または全部と、該液化油のうち、水素化する留分を水素
化反応させた際に生じる石炭系溶剤とを混合し、これを
石炭液化用溶剤として循環使用することを特徴とする石
炭液化方法により達成される。
【0022】また、本発明においては、(2)液化油の
うち、水素化しない留分が200〜260℃の範囲の沸
点留分であり、(3)液化油のうち、水素化する留分が
220〜538℃の範囲の沸点留分であることが好まし
い。
【0023】さらに、本発明においては、(4)石炭ス
ラリーの濃度が、原料石炭の乾燥重量に対する石炭液化
用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤/原料石炭)で1.0
〜4.0の範囲であり、(5)触媒が、16μm以下の
収率90%以上の微粒子であることが好ましい。
【0024】本発明においては、(6)石炭スラリーに
対する触媒の配合量が、原料石炭の乾燥重量に対して1
〜5重量%であり、(7)石炭液化反応させる際の高温
高圧条件が、温度400〜500℃で、圧力100〜2
00気圧であることが好ましい。
【0025】なお、本発明では、(8)水素化反応させ
る際の条件が、水素ガス含有雰囲気下で、温度300〜
380℃、圧力80〜120気圧であることが好まし
い。
【0026】
【作用】本発明は、原料石炭、石炭液化用溶剤および触
媒を混合した石炭スラリーを還元性ガス雰囲気下、高温
高圧条件で石炭液化反応を行うことにより燃料油(軽中
質油)を製造する石炭液化方法において、石炭液化反応
により生じる液化油の重質油留分を水素化反応させた際
に生じる石炭系溶剤と石炭液化反応により生じる液化油
の水素化反応に用いない中質油留分の少なくとも一部と
を混合し、循環して石炭液化用溶剤として用いること
で、該中質油留分に含まれる水素供与性能力を有する成
分が石炭液化反応時の水素移動の円滑化を図ることがで
き反応性を向上させ、所望の液化油のコストを低減する
ことができる石炭液化方法である。
【0027】以下、本発明を実施態様に基づき、より詳
細に説明する。
【0028】図1は、本発明に係る石炭液化方法に用い
られる石炭液化装置の一実施態様の構成を模式的に表わ
す使用状態図である。
【0029】図1に示すように本発明に係わる石炭液化
装置1としては、蒸留塔19に配管27により連結され
る軽中質油捕集器24を用いる代わりに、第1の蒸留塔
19の下側部に第2の蒸留塔41が配管42により連結
され、該第2の蒸留塔41の上塔部に軽質油捕集器43
が配管44で連結され、該第2の蒸留塔41の下塔部に
中質油貯蔵槽45が配管46で連結され、該中質油貯蔵
槽45は、配管33により配管47に接続され、該配管
47経路上に流量調整用開閉弁48が設けられている以
外の構成は、上述した図2に示す従来法による石炭液化
装置51と同様の構成を有するものである。なお、図1
において、図2に示す石炭液化装置51における構成部
材と同一の構成部材には同一の符号を付してある。
【0030】上記構成を有する石炭液化装置1を使用し
て、本発明の方法に基づいて石炭を液化して所望の燃料
油を得るには、まず一定の粒度以下に粉砕された石炭粒
子が石炭貯蔵槽2より配管5を通じて、また水素移動の
円滑化を図るために石炭液化用溶剤が溶剤貯蔵槽3より
配管6を通じて、さらに液化油収率を上げるために触媒
が触媒貯蔵槽4より配管7を通じて石炭スラリー調製槽
9に送られ、一定の槽内雰囲気、圧力および温度条件に
保持されながら攪拌機8により混合され一定濃度の石炭
スラリーが造られる。
【0031】ここで、石炭貯蔵槽2に貯蔵される本発明
の石炭液化方法に使用される原料石炭としては、特に限
定されるものでなく、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭等のすべ
てに利用できる。好ましくは、含酸素量の少ない瀝青
炭、亜瀝青炭等である。
【0032】該原料石炭としては、液化反応工程で水素
化分解反応を行わせるために、石炭中に含まれる5〜3
0重量%の水分を通常1〜2重量%まで乾燥した後、通
常150μm以下の粒度の石炭粒子の収率が90%以
上、好ましくは150μm以下の粒度の石炭粒子の収率
が80%以上、より好ましくは150μm以下の粒度の
石炭粒子の収率が100%となるように粉砕された石炭
である。該原料石炭が150μm以下の粒度の石炭粒子
の収率80%未満である場合には、操業上トラブルが発
生し易く、また液化反応が十分でないなど好ましくな
い。該石炭の粉砕には、ロッドミル、ボールミル、振動
ミル、ディスクミルなどのいずれの粉砕機をも用いるこ
とができる。
【0033】また、本発明に用いられる石炭液化用溶剤
としては、本発明の方法により、石炭液化反応させた際
に生じる液化油の水素化する留分である重質油留分を水
素化反応させた際に生じる石炭系溶剤と該液化油の水素
化しない留分である中質油留分の少なくとも一部として
水素供与能力を有する沸点留分のもの(詳しくは後述す
る)とを循環して石炭液化用溶剤として使用するもので
ある。該石炭系溶剤を循環使用することにより該石炭系
溶剤を別途用意する必要もなくコストの低減が図れるも
のである。
【0034】また、触媒としては、特に限定されるもの
ではないが、触媒能を有する金属種としては、例えば、
鉄、ニッケル、モリブデン、チタン、バナジウムおよび
ランタンなどが挙げられ、好ましくは、比較的安価で入
手しやすく、石炭液化反応で触媒作用の大きい鉄、ニッ
ケルなどであることから、通常、鉄系触媒、ニッケル系
触媒、コバルト系触媒、チタン系触媒、ゼオライト系触
媒、モリブデン触媒、バナジウム触媒、コバルト−モリ
ブデン系触媒およびランタン触媒などを用いることがで
き、好ましくは比較的安価で入手の容易な鉄系触媒が望
ましく、具体的には、合成硫化鉄触媒、水酸化鉄または
天然鉄鉱石触媒などが挙げられる。
【0035】次に、石炭スラリー調製槽9での該石炭ス
ラリーの濃度は、原料石炭の乾燥重量に対する石炭液化
用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤/原料石炭)で通常
1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0、より好ま
しくは1.0〜1.5の範囲である。該石炭スラリー濃
度が原料石炭の乾燥重量に対する石炭液化用溶剤の重量
比(石炭液化用溶剤/原料石炭)で4.0を越える場合
には、経済性が悪くなり過ぎ、また原料石炭の乾燥重量
に対する石炭液化用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤/原
料石炭)で1.0未満では、該スラリーの粘度が大きく
なり、撹拌による混合が均一でなり難く長時間を要し、
また配管内での流動性が低下するため配管詰まりが発生
するなど好ましくない。
【0036】また、石炭スラリー調製槽9の石炭スラリ
ーへの触媒の添加量は、前記原料石炭の乾燥重量に対し
て、通常0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%、
より好ましくは2〜3重量%の範囲である。該添加量が
0.5重量%未満の場合には、添加による充分な効果が
得られず、また5重量%を越える場合には、添加量に見
合っただけの効果の増加が得られず、また経済性も悪く
なる。
【0037】一方、該触媒の大きさは、用いる種類など
によって異なるが、通常16μm以下の収率が90%以
上、好ましくは10μm以下の収率が90%以上、より
好ましくは1μm以下の収率が90%以上である。該触
媒が16μm以下の収率90%未満の場合には、触媒能
が低下するなど好ましくない。
【0038】また、石炭スラリー調製槽9の槽内雰囲
気、圧力および温度条件は、槽内雰囲気としては、通常
は不活性ガス雰囲気、好ましくは還元性ガス雰囲気、よ
り好ましくは水素ガス含有雰囲気であり、温度は通常4
0〜100℃、好ましくは50〜80℃、より好ましく
は50〜70℃で、圧力は通常1〜10気圧、好ましく
は1〜5気圧、より好ましくは1〜2気圧である。
【0039】該温度が40℃未満の場合には、撹拌する
のに充分な石炭スラリーの粘度が得られず、また100
℃を越える場合には、石炭の膨潤現象により石炭粒子の
体積分率が増加し、見掛けのスラリー濃度が上昇して、
スラリー粘度が上昇すること、および溶剤が蒸発して石
炭や触媒の投入口が湿り、投入時に閉塞するなど好まし
くない。
【0040】また上記圧力が1気圧未満では、圧力変動
により負圧となって空気を混入し、石炭を酸化させる可
能性があるなど好ましくなく、また、10気圧を越える
場合には、これに見合うだけの充分な効果が得られず好
ましくない。
【0041】次に、石炭スラリー調製槽9で得られた石
炭スラリーは、高圧ポンプ12で一定の圧力に昇圧して
系内に装入される。その際、水素貯蔵槽13の水素をコ
ンプレッサーなどにより昇圧し、得られた高圧還元性ガ
スを系内に供給して還元性ガス雰囲気とする。さらに加
熱器16により一定の温度に加熱した後、石炭液化反応
塔10に一定のスラリー装入速度で装入され、還元性ガ
ス雰囲気下、高温高圧条件下で、該水素ガスと反応させ
て水素化分解させるものである。
【0042】ここで、高圧ポンプ12による昇圧は、通
常100〜200気圧、好ましくは130〜190気
圧、より好ましくは160〜180気圧である。該高圧
ポンプ12としては、例えば、プランジャータイプのス
ラリーポンプを用いることができ、該プランジャーによ
ってスラリーが吸引および圧縮され、ピストンフローと
なって石炭液化反応塔10に供給されるものである。
【0043】また、上記石炭スラリーに供給される高圧
還元性ガス量としては、上記石炭スラリーの圧力と同じ
ガス圧力となるように調整して供給されるものである
が、この高圧還元性ガスに対する石炭スラリーの比(ガ
ス液比)は、通常500〜1500ノルマルリッター/
kg、好ましくは500〜1100ノルマルリッター/
kg、より好ましくは500〜900ノルマルリッター
/kgの範囲である。
【0044】該還元性ガスとしては、水素ガスあるいは
水素ガスに本発明の液化反応後に回収される水素ガスを
混合したもの(この場合、水素ガス純度80%以上で
可)などを用いることができる。
【0045】さらに上記加熱器16としては、特に限定
されるものでなく、誘導式ヘリカルコイル等を用いるこ
とができる。該加熱器16により、石炭スラリーは、通
常350〜450℃、好ましくは380〜430℃、よ
り好ましくは、390〜400℃に加熱される。該加熱
温度が350℃未満の場合には、石炭液化反応塔10に
装入後、水素化分解に適した温度に達するまで時間を要
するため好ましくなく、450℃を越える場合には、配
管11内で水素化分解を生じ、配管11に損傷を招く恐
れがあるため好ましくない。
【0046】また、石炭液化反応塔10での、反応温度
は、通常400〜500℃、好ましくは400〜460
℃、より好ましくは、440〜460℃であり、また圧
力は、上述の高圧ポンプ12による昇圧により得られた
圧力と同じであり、反応時間(反応塔滞留時間)は、通
常40〜80分、好ましくは50〜70分、より好まし
くは50〜60分(またはスラリー装入速度が、100
〜130kg/hr、好ましくは100〜120kg/
hr、より好ましくは100〜110kg/hr)であ
る。かかる分解反応条件によって、原料石炭の液化反応
が進行するものである。上記反応温度が400℃未満で
は、石炭液化反応が不十分となり未反応の石炭スラリー
が多くなり液化油の収率が低下し、また500℃を越え
る場合には、水素化分解反応により生成した液化油がさ
らに分解を受けガス化するなど液化油の収率が低下する
ため好ましくない。また、ガス圧力が、100気圧未満
では、水素分圧の低下により石炭液化反応が不十分とな
り液化油の収率が低下し、また、圧力が、200気圧を
越える場合には、液化油がさらに分解しやすくなり、か
つ設備費が高くなって経済的に好ましくない。さらに反
応時間(反応塔滞留時間)が、40分未満の場合には石
炭液化反応が不十分となり液化油の収率が低下し、80
分を越える場合には、生成した液化油がさらに分解を受
けガス化するなど液化油の収率が低下し、あるいは無駄
な設備費がかかるため好ましくない。
【0047】また、本発明では、触媒を図1に示すよう
に原料石炭、石炭液化用溶剤を混合した石炭スラリーに
添加し、混合した石炭スラリーの状態で、石炭液化反応
塔10に供給して石炭液化反応させる代わりに、原料石
炭、石炭液化用溶剤を混合した石炭スラリーとは別に直
接石炭液化反応塔10に供給して水素化分解に活用させ
ることもできる。この場合の添加条件や反応条件等につ
いては、上述の触媒を石炭スラリーの状態で石炭液化反
応塔10に供給する場合と同様に設定することができ
る。
【0048】続いて、上記石炭液化反応により得られた
液化油を含有する生成物は、配管18を通じて高温分離
器17に送られ、該高温分離器17において生成ガス
(高圧ガスを含む)、水および軽中質油からなる成分と
重質油および残渣からなる成分とに分離される。このう
ち生成ガス、水および軽中質油からなる成分は、配管2
1を通じ、減圧弁を経て第1の蒸留塔19に送られ、生
成ガス、水および軽中質油成分に分離され、このうち生
成ガスおよび水は、それぞれ生成ガス捕集器23および
水捕集器25に分離捕集され、軽中質油成分は、配管4
2を通じて第2の蒸留塔41に送られ、軽質油留分と中
質油留分に分離され、該軽質油留分はそのまま製品油と
して軽質油捕集器43に捕集され、他方、中質油留分は
配管46を通じて一旦は中質油貯蔵槽45に蓄えられ、
該中質油貯蔵槽45より少なくとも1部(最大限全量)
の中質油留分が配管47を通じて配管33中を循環され
ている重質油留分からの石炭系溶剤(詳しくは後述す
る)の不足分を補給する目的で供給され、溶剤貯蔵槽3
に戻され、共に石炭液化用溶剤として循環使用される。
【0049】ここで、生成ガスと共に回収される還元性
ガスは、さらに分離精製した後、リサイクル使用するこ
とができる。
【0050】また、本発明に用いられる石炭液化反応さ
せた際に生じる液化油の水素化しない留分のうち、石炭
液化用溶剤として循環使用される中質油留分としては、
通常200〜260℃、好ましくは200〜240℃、
より好ましくは200〜220℃の範囲の沸点留分であ
る。該中質油留分が200℃未満の沸点留分では、水素
供与能力を有する成分であるテトラリン類等が含まれ
ず、循環して石炭液化用溶剤に使用するには適していな
い。また260℃を越える沸点留分の場合には、水素供
与能力を有するテトラリン類なども含まれなくなり、こ
れより沸点の高い留分は水素化することなく循環使用す
るには適しておらず、またこうした高沸点留分は、石炭
スラリーの調製時の温度条件では、粘度が極めて大きく
なり配管詰まり等を生じる恐れがあるなど好ましくな
い。
【0051】さらに本発明により得られる石炭液化反応
させた際に生じる液化油の水素化しない留分のうち、そ
のまま製品油として利用される付加価値の高い軽質油留
分としては、通常C5 〜260℃、好ましくはC5 〜2
20℃、より好ましくはC5〜200℃の範囲の沸点留
分である。該軽質油留分が260℃を越える沸点留分の
場合には、沸点留分中に、3環の水素化合物が含まれる
ため、一般の燃料油としの品質が劣化するなど好ましく
ないためである。しかし本発明に用いられる軽質油留分
としては、上記範囲に制限されるものでなく、例えば、
ジェット燃料用等の製品油には、350℃沸点留分程度
まで使用することができるなど、幅広い範囲の軽質油留
分を利用することが可能である。
【0052】一方、上記重質油および残渣からなる成分
は、配管22を通じ、減圧弁を経て減圧蒸留塔20に送
られ、該減圧蒸留塔20で減圧蒸留(10〜80tor
rまで減圧)され、一定の温度以上の沸点留分のものは
液化残渣として配管31を通じて残渣捕集器29に捕集
される。
【0053】他方、上記液化残渣を分離除去した重質油
留分は、一旦常圧に戻した後、配管32経路上に設けら
れた高圧ポンプ(図示せず)および加熱器(図示せず)
により高温高圧下に保持され、アルミナ担体にNi−M
o触媒またはCo−Mo触媒などを担持させたものを充
填した固定床の水素化反応塔30に送られ、水素雰囲気
下、通常270〜380℃、80〜120気圧で該水素
化反応塔30にて通常LHSVが1〜2時間、水素ガス
と反応させて水素化反応を行うことにより水素供与能力
を有するテトラリンやメチルテトラリンなどの成分を含
有する石炭系溶剤を生成することができる。得られた該
石炭系溶剤は、通常、その全量が配管33を通じて溶剤
貯蔵槽3に戻すことにより石炭液化用溶剤として循環使
用されるものであるが、必要に応じて該石炭液化用溶剤
を蒸留し、その一部を製品油として回収することも可能
である。
【0054】ここで、本発明に用いられる石炭液化反応
させた際に生じる液化油の水素化する留分である上記液
化残渣を分離除去した重質油留分としては、通常220
〜538℃、好ましくは260〜538℃、より好まし
くは350〜538℃の範囲の沸点留分である。該液化
残渣を分離除去した重質油留分が220℃未満の沸点留
分では、こうした低沸点留分を重質油として分離して水
素化反応を行うだけの効果が少なく、また該低沸点留分
を水素化したとしても、水素供与能力を有する成分は得
られにくい。他方538℃(1000カ氏度)を越える
沸点留分の場合では、水素化反応しても水素供与能力を
有する成分はほとんど得られず、またこれらを水素化反
応させた際に生じる石炭系溶剤では粘度も高く循環して
石炭液化用溶剤として使用する場合に配管詰まりなどの
トラブルが起こるなど好ましくない。
【0055】また上記液化残渣として捕集されるもの
は、通常538℃以上、好ましくは550℃以上の沸点
留分のピッチや固形残渣などである。
【0056】
【実施例】以下、本発明の実施例について述べる。
【0057】実施例1 図1に示す本発明に係る石炭液化方法に用いられる石炭
液化装置1を用いて、石炭液化反応を行った。
【0058】本実施例1では、ロッドミル粉砕機を用い
て瀝青炭を150μm以下の粒度(収率80%)に粉砕
した3種類(A炭、B炭およびC炭、各石炭種の性状を
表1に示す)の原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ
石炭液化を行った。いずれの液化反応も、まず石炭貯蔵
槽2より上記原料石炭が配管5を通じて、また溶剤貯蔵
槽3より石炭液化反応させた際に生じる液化油の水素化
しない留分のうち、200〜260℃未満の沸点留分の
中質油留分(A)と該液化油の水素化する留分である2
60〜538℃の沸点留分の重質油留分を水素化反応さ
せた際に生じる石炭系溶剤(B)とを、(A):(B)
=1:6(体積比)の割合で混合してなる石炭液化用溶
剤が配管6を通じて、さらに触媒貯蔵槽4より16μm
以下の収率が90%の合成硫化鉄触媒の粒子が配管7を
通じて石炭スラリー調製槽9(槽内;還元性ガス雰囲
気、60℃、1気圧)に送られ、攪拌機8により混合さ
れ、石炭スラリー濃度が前記原料石炭の乾燥重量に対す
る前記石炭液化用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤/原料
石炭)1.5で、石炭スラリーへの触媒の添加量が、前
記原料石炭粒子の乾燥重量に対して3重量%とする石炭
スラリーを作製した。
【0059】続いて、石炭スラリー調製槽9で得られた
石炭スラリーは、プランジャータイプのスラリーポンプ
である高圧ポンプ12に送られ、該高圧ポンプ12のプ
ランジャーによって石炭スラリーは吸引および圧縮され
て170気圧まで昇圧されピストンフローとなって石炭
液化反応塔10に供給される。その際、水素貯蔵槽13
の水素をコンプレッサーなどにより昇圧し、得られた同
じ圧力の高圧水素ガス(水素ガス純度99%以上)を該
水素ガスに対する石炭スラリーの比(ガス液比)が70
0ノルマルリッター/kgとなるように供給して水素雰
囲気とする。さらに加熱器16により400℃まで加熱
した後、石炭液化反応塔10(塔内;450℃、170
気圧)に水素雰囲気下で、スラリー装入速度100〜1
10kg/hr(反応塔滞留時間60分)にて装入し、
該水素雰囲気ガスと反応させて水素化分解を行った。
【0060】続いて、上記石炭液化反応により得られた
液化油を含有する生成物は、配管18を通じて高温分離
器17に送られ、該高温分離器17において生成ガス
(高圧ガスを含む)、水および軽中質油からなる成分と
重質油および残渣からなる成分とに分離された。このう
ち生成ガス、水および軽中質油からなる成分は、配管2
1を通じて減圧した後、第1の蒸留塔19に送られ、生
成ガス、水および軽中質油成分(C5 〜260℃未満の
沸点留分)に分離された。このうち生成ガスおよび水
は、それぞれ生成ガス捕集器23および水捕集器25に
分離捕集された。また軽中質油成分は、配管42を通じ
て第2の蒸留塔41に送られ、軽質油留分(C5 〜20
0℃未満の沸点留分)と中質油留分(200〜260℃
未満の沸点留分)とに分離され、このうち軽質油留分は
そのまま製品油として軽質油捕集器43に捕集され、他
方、中質油留分は配管46を通じて一旦は中質油貯蔵槽
45に蓄えられた。続いて中質油貯蔵槽45より中質油
留分が配管47を通じて配管33中を循環されている重
質油留分からの石炭系溶剤に対し体積比にして1/6の
分量だけが溶剤貯蔵槽3に戻され、共に石炭液化用溶剤
として循環使用された。なお、生成ガスと共に回収され
る還元性ガスは、さらに分離精製した後、リサイクル水
素ガスとして循環使用された。
【0061】一方、上記重質油(260℃以上の沸点留
分)および残渣からなる成分は、配管22を通じて減圧
した後、減圧蒸留塔20に送られ、該減圧蒸留塔20で
減圧蒸留(10〜50torrまで減圧)され、538
℃以上の沸点留分のものは液化残渣として配管31を通
じて残渣捕集器29に捕集された。
【0062】他方、上記液化残渣を分離除去した重質油
留分(260〜538℃未満の沸点留分)は、一旦常圧
に戻した後、配管32経路上に設けられた高圧ポンプ
(図示せず)および加熱器(図示せず)により高温高圧
下に保持され、Ni−Mo触媒を充填した固定床の水素
化反応塔30に送られ、水素雰囲気下、300〜380
℃、80〜120気圧で該水素化反応塔30にて通常L
HSVが1〜2時間、水素ガスと反応させて水素化反応
を行うことにより水素供与能力を有するテトラリンやメ
チルテトラリンなどの成分を含有する石炭系溶剤を生成
した。得られた該石炭系溶剤は、配管33を通じて溶剤
貯蔵槽3に戻され、石炭液化用溶剤として循環使用され
た。ただし本実施例1では該石炭系溶剤は、上記中質油
留分のうち循環される量との関係において、該石炭系溶
剤(A):中質油留分(B)=1:6となる分量だけを
溶剤貯蔵槽3に戻して循環使用した。
【0063】以上、3種類(A炭、B炭およびC炭)の
原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ石炭液化を行っ
て得られた液化油(軽質油および中質油)収率および軽
質油収率をそれぞれ算出した。得られた結果より図3お
よび図4に各石炭種に対する液化油収率および軽質油収
率を表すグラフを示す。
【0064】実施例2 実施例1において、石炭液化反応させた際に生じる液化
油の水素化しない留分のうち、200〜260℃未満の
沸点留分の中質油留分(A)と該液化油の水素化する留
分である260〜538℃の沸点留分の重質油留分を水
素化反応させた際に生じる石炭系溶剤(B)とを、
(A):(B)=1:6(体積比)の割合で混合してな
る石炭液化用溶剤を用いる代わりに、該(A):(B)
=2:6(体積比)の割合で混合してなる石炭液化用溶
剤を用いた以外は、実施例1と同様にして石炭液化を行
った。
【0065】次に、3種類(A炭、B炭およびC炭)の
原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ石炭液化を行っ
て得られた液化油(軽質油および中質油)収率および軽
質油収率をそれぞれ算出した。得られた結果より図5お
よび図6に各石炭種に対する液化油収率および軽質油収
率を表すグラフを示す。
【0066】実施例3 実施例1において、石炭液化反応させた際に生じる液化
油の水素化しない留分のうち、200〜260℃未満の
沸点留分の中質油留分(A)と該液化油の水素化する留
分である260〜538℃の沸点留分の重質油留分を水
素化反応させた際に生じる石炭系溶剤(B)とを、
(A):(B)=1:6(体積比)の割合で混合してな
る石炭液化用溶剤を用いる代わりに、該(A):(B)
=3:6(体積比)の割合で混合してなる石炭液化用溶
剤を用いた以外は、実施例1と同様にして石炭液化を行
った。
【0067】次に、3種類(A炭、B炭およびC炭)の
原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ石炭液化を行っ
て得られた液化油(軽質油および中質油)収率および軽
質油収率をそれぞれ算出した。得られた結果より図7お
よび図8に各石炭種に対する液化油収率および軽質油収
率を表すグラフを示す。
【0068】比較例1 図2に示す従来の石炭液化方法に用いられる石炭液化装
置51を用いて、石炭液化反応を行った。
【0069】本比較例1では、ロッドミル粉砕機を用い
て瀝青炭を150μm以下の粒度(収率80%)に粉砕
した3種類(A炭、B炭およびC炭、各石炭種の性状を
表1に示す)の原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ
石炭液化を行った。いずれの液化反応も、まず石炭貯蔵
槽2より上記原料石炭が配管5を通じて、また溶剤貯蔵
槽3より石炭液化反応させた際に生じる液化油の水素化
する留分である260〜538℃の沸点留分の重質油留
分を水素化反応させた際に生じる石炭系溶剤(B)が配
管6を通じて、さらに触媒貯蔵槽4より16μm以下の
収率が90%の合成硫化鉄触媒の粒子が配管7を通じて
石炭スラリー調製槽9(槽内;還元性雰囲気、60℃、
1気圧)に送られ、攪拌機8により混合され、石炭スラ
リー濃度が前記原料石炭の乾燥重量に対する前記石炭液
化用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤/原料石炭)1.5
で、石炭スラリーへの触媒の添加量が、前記原料石炭粒
子の乾燥重量に対して3重量%とする石炭スラリーを作
製した。
【0070】次に、上記石炭スラリー調製槽9で得られ
た石炭スラリーは、プランジャータイプのスラリーポン
プである高圧ポンプ12に送られ、該高圧ポンプ12の
プランジャーによって該石炭スラリーは吸引および圧縮
されて170気圧まで昇圧され、ピストンフローとなっ
て石炭液化反応塔10に供給される、このとき、水素貯
蔵槽13の水素をコンプレッサーにより170気圧の高
圧水素ガス(水素ガス純度99%以上)とし、該水素ガ
スに対する石炭スラリーの比(ガス液比)が700ノル
マルリッター/kgとなるように供給して水素雰囲気と
する。さらに加熱器16により400℃まで加熱した
後、石炭液化反応塔10(塔内;450℃、170気
圧)に水素雰囲気下で、スラリー装入速度100〜11
0kg/hr(反応塔滞留時間60分)として装入さ
れ、該水素ガスと反応させて水素化分解を行った。
【0071】続いて、上記石炭液化反応により得られた
生成物は、配管18を通じて高温分離器17に送られ、
該高温分離器17において生成ガス、水および軽中質油
(C5 〜260℃未満の沸点留分)からなる成分と重質
油および残渣からなる成分とに分離された。このうち生
成ガス、水および軽中質油からなる成分は、配管21を
通じて減圧した後に常圧蒸留塔19に送られ、生成ガ
ス、水および軽中質油(液化油)成分に分離され生成ガ
ス捕集器23、軽中質油捕集器24および水捕集器25
に分離捕集された。ここで、生成ガスと共に回収される
含水素ガスは、さらに分離精製した後、リサイクル水素
ガスとして循環使用した。
【0072】一方、重質油(260℃以上の沸点留分)
および残渣からなる成分は、減圧した後、配管22を通
じて減圧蒸留塔20に送られ、該減圧蒸留塔20で減圧
蒸留(10〜50torrまで減圧)され、538℃以
上の沸点留分のものは液化残渣として配管31を通じて
残渣捕集器29に排出され除去された。
【0073】他方、上記液化残渣を分離除去した重質油
留分(260〜538℃未満の沸点留分)は、一旦常圧
に戻した後、配管32経路上に設けられた高圧ポンプ
(図示せず)および加熱器(図示せず)により高温高圧
下に保持され、Ni−Mo触媒を充填した固定床の水素
化反応塔30に送られ、水素雰囲気下、300〜380
℃、80〜120気圧で該水素化反応塔30にてLHS
Vが1時間、水素ガスと反応させて水素化反応を行うこ
とにより水素供与能力を有するテトラリンやメチルテト
ラリンなどの成分を含有する石炭系溶剤を生成した。得
られた該石炭系溶剤は、配管33を通じて溶剤貯蔵槽3
に戻すことにより石炭液化用溶剤として循環使用され
た。
【0074】以上、3種類(A炭、B炭およびC炭)の
原料石炭を10tずつ用いて、それぞれ石炭液化を行っ
て得られた液化油(軽質油および中質油)収率および軽
質油収率をそれぞれ算出した。得られた結果より、上記
実施例1〜3との比較のため図3〜図8に各石炭種に対
する液化油収率および軽質油収率を表すグラフを示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】本発明の石炭液化反応では、石炭液化用
溶剤として、石炭液化反応系内で調達できる石炭液化反
応させた際に生じる液化油の水素化しない留分の少なく
とも一部と該液化油の水素化する留分を水素化反応させ
た際に生じる石炭系溶剤を用いることで、軽中質油の液
化油収率の向上により重質油留分を水素化して得られる
石炭系溶剤の減少により不足する石炭液化用溶剤の補填
源として、上記液化油の水素化しない留分を水素供与能
力を有する成分として安価に安定して確保できると同時
に石炭の液化反応系での反応効率を高め、液化油収率お
よび軽質油収率をより増大させることができ、所望の液
化油、特に軽質油留分のコストを低減できるものであ
る。
【0077】また本発明では、石炭液化時の反応条件を
マイルド化できる(低温低圧下での反応が達成でき
る)。
【0078】さらに本発明では、石炭液化反応させた際
に生じる液化油の水素化しない留分のうち、石炭液化用
溶剤として循環使用に供される200〜260℃の沸点
留分は、循環使用時に再度液化反応工程で水素化分解
し、そのまま製品油として使用される260℃以下の沸
点留分である軽質油留分が生成されるものであり、燃料
油として好ましい高付加価値の該軽質油留分が多く得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る石炭液化方法に用いられる石炭
液化装置の一実施態様の構成を模式的に表わす使用状態
図である。
【図2】 従来技術として開示されている石炭液化方法
における石炭液化装置の一実施態様を示す概略図であ
る。
【図3】 本発明の実施例1および比較例1における各
石炭種に対する液化油収率を表すグラフを示す。
【図4】 本発明の実施例1および比較例1における各
石炭種に対する軽質油収率を表すグラフを示す。
【図5】 本発明の実施例2および比較例1における各
石炭種に対する液化油収率を表すグラフを示す。
【図6】 本発明の実施例2および比較例1における各
石炭種に対する軽質油収率を表すグラフを示す。
【図7】 本発明の実施例3および比較例1における各
石炭種に対する液化油収率を表すグラフを示す。
【図8】 本発明の実施例3および比較例1における各
石炭種に対する軽質油収率を表すグラフを示す。
【符号の説明】
1、51…石炭液化装置、 2…石炭貯蔵槽、3
…溶剤貯蔵槽、 4…触媒貯蔵槽、5〜
7、11、14、18、21、22、26、28、31
〜33、42、44、46、47…配管、8…攪拌機、
9…石炭スラリー調製槽、10…
石炭液化反応塔、 12…高圧ポンプ、13…
水素貯蔵槽、 15…自動弁、16…加熱
器、 17…分離器、19…第1の蒸
留塔、 20…減圧蒸留塔、23…生成ガス
捕集器、 25…水捕集器、29…残渣捕集
器、 30…水素化反応塔、41…第2の
蒸留塔、 43…軽質油捕集器、45…中質
油貯蔵槽、 48…流量調整用開閉弁。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料石炭、石炭液化用溶剤および触媒を
    混合した石炭スラリーを還元性ガス雰囲気の高温高圧条
    件下で石炭液化反応させた際に生じる液化油のうち、水
    素化しない留分の一部または全部と、該液化油のうち、
    水素化する留分を水素化反応させた際に生じる石炭系溶
    剤とを混合し、これを石炭液化用溶剤として循環使用す
    ることを特徴とする石炭液化方法。
  2. 【請求項2】 液化油のうち、水素化しない留分が20
    0〜260℃の範囲の沸点留分である請求項1に記載の
    石炭液化方法。
  3. 【請求項3】 液化油のうち、水素化する留分が220
    〜538℃の範囲の沸点留分である請求項1または2に
    記載の石炭液化方法。
  4. 【請求項4】 石炭スラリーの濃度が、原料石炭の乾燥
    重量に対する石炭液化用溶剤の重量比(石炭液化用溶剤
    /原料石炭)で1.0〜4.0の範囲である請求項1な
    いし3のいずれかに記載の石炭液化方法。
  5. 【請求項5】 触媒が、16μm以下の収率90%以上
    の微粒子である請求項1ないし4のいずれかに記載の石
    炭液化方法。
  6. 【請求項6】 石炭スラリーに対する触媒の配合量が、
    原料石炭の乾燥重量に対して1〜5重量%である請求項
    1ないし5のいずれかに記載の石炭液化方法。
  7. 【請求項7】 石炭液化反応させる際の高温高圧条件
    が、温度400〜500℃で、圧力100〜200気圧
    である請求項1ないし6のいずれかに記載の石炭液化方
    法。
  8. 【請求項8】 水素化反応させる際の条件が、還元性ガ
    ス含有雰囲気下で、温度300〜380℃、圧力80〜
    120気圧である請求項1ないし7のいずれかに記載の
    石炭液化方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1054392C (zh) * 1995-03-31 2000-07-12 工业技术院 煤液化的方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN1054392C (zh) * 1995-03-31 2000-07-12 工业技术院 煤液化的方法

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