JPH0628707A - 同一性を判定できる情報識別シートおよびその情報識別方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 偽造或は改竄防止に優れた情報識別シート及
びその情報識別方法を提供する。 【構成】 情報識別シートに特定の異種繊維を混入し、
主成分繊維又は特定の異種繊維のいずれか一方に反応す
るエネルギーを与えることにより、異種繊維のランダム
パターン情報を読み取り又は記録し、ランダムパターン
の記録を繰り返して同定することができる情報識別シー
ト又はその情報識別方法。 【効果】 ランダムパターン情報を情報識別シート１枚
毎に、恰も人間の持つ指紋のように“紙紋”として符号
化でき、偽造或は改竄防止の優れた効果を有するもので
ある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、情報識別シートおよび
その情報識別方法に関するものであり、詳しくはシート
状体上に特定のエネルギーを作用させる情報識別手段に
より、その情報を読み取り及び記録し、その情報で同一
性を確認する情報識別シートおよびその情報識別方法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、シート状体上に文字、絵、色など
の目視情報を記録したり、磁気記録層に磁気情報の形で
記録して、同一性を確認することが広く利用されてい
る。

【０００３】しかしながら、この様な方法で記録されて
いる情報は支持体上に人為的に記録を施すことから、そ
の結果人為的に類似券の作成、つまり偽造を完全に防止
することは不可能である。そこで、蛍光を発する物質で
情報を記入し、磁気情報とともに蛍光情報を読み取る方
法が提案されている。これらの蛍光情報の記入方法を見
ると、蛍光インクを用いて文字・数字情報を記入する、
シート全面に蛍光染料を含浸させる、バーコード記号情
報との組合せで記入する、などの方法であり、ブラック
ライト蛍光ランプを使用することによりどの部分に蛍光
材料が存在しているかさえ判れば、蛍光インクを用いた
印刷あるいはシート全体を蛍光染料液に含浸させる等の
方法により、比較的容易に同じ物を作ることは可能であ
る。

【発明が解決しようとする課題】

【０００４】そこで、本発明の技術的課題は記録シート
一枚毎に異なった情報を付与し、しかも仮にその情報が
読み取られたとしても同一の情報パターンを作ることが
極めて困難な記録シートを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの
課題を解決すべく鋭意検討した結果、繊維を主成分とす
る紙、不織布の製造時に特定の異種の繊維を混入し、そ
の繊維をランダムパターンとなるように存在させた情報
識別シートとし、該シートに主成分繊維または特定の異
種繊維のいずれか一方に反応するエネルギーを外部から
与えることにより、シート内の該特定の異種繊維のラン
ダムパターンを情報化して読み取り及び記録するもので
あり、該ランダムパターンの情報を繰り返して同定でき
ることを特徴とする情報識別シートを用いることによ
り、目的の該シートが得られることを見い出すととも
に、該シートを用いることによる情報識別方法を確立す
ることにより、本発明を達成した。

【０００６】また、本発明によって提供される情報識別
シートは、本発明の情報識別方法以外の情報記録方法を
同時に使用することにより、更に実用性を発揮すること
ができるものであり、その利用が限定されることはな
い。具体的には、文字、絵、色などの印刷・印字、更に
はそれの光学的な読み取り、磁気記録層を加え磁気記
録、パンチのようなものによる穴あけなどの情報記録方
法である。

【０００７】本発明に用いられる主成分繊維と特定の異
種繊維の組合せとしては、その両者の繊維の間で特定エ
ネルギーに反応する性質が顕著に差があればよく、その
反応性の差を肉眼読み取り、センサーによる読み取りな
どでアナログまたはデジタル信号として捕らえることが
できればよい。具体的な主成分繊維と異種繊維の組合せ
は以下のようなものが挙げられるが、あくまでも特定の
エネルギーへの反応性の差を例示するものであって、本
発明はこれらに限定されるものではない。

【０００８】１．主成分繊維または異種繊維のいずれか
一方が紫外光に反応する：主成分繊維に木材パルプを使
用し、異種繊維に芳香族アラミド繊維を使用したシート
に紫外光を照射すると、異種繊維が紫外光を吸収して該
シートに異種繊維の存在が確認できる。 ２．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が可視光
に反応する：主成分繊維に木材パルプを使用し、異種繊
維に有色染料で染色した木材パルプを使用した該シート
に可視光を照射すると、異種繊維が可視光を吸収して該
シートに異種繊維の存在が見える。 ３．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が赤外光
に反応する：主成分繊維に木材パルプを使用し、異種繊
維に近赤外部に吸収がある染料を染色した木材パルプを
使用した該シートに近赤外光を照射すると、異種繊維が
近赤外光を吸収して該シートに異種繊維の存在が確認で
きる。 ４．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が静電気
を帯電する： ・主成分繊維に木材パルプを使用し、異種繊維にポリプ
ロピレンパルプを使用した該シートにコロナ放電する
と、異種パルプだけが静電気帯電をし、その存在が確認
できる。 ・主成分繊維にポリプロピレンパルプを使用し、異種繊
維にステンレス繊維を使用した該シートにコロナ放電す
ると、主成分パルプだけが静電気帯電をし、帯電してい
ない異種繊維の存在が確認できる。 ５．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が帯磁す
る：主成分繊維に木材パルプを使用し、異種繊維に木材
パルプのルーメン内に強磁性体粒子を封入したものを使
用し該シートに磁場をかけると、異種繊維だけが帯磁し
該シートに異種繊維の存在が確認できる。 ６．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方がＸ線を
吸収する：主成分繊維に木材パルプを使用し、異種繊維
にステンレス繊維を使用した該シートにＸ線を照射する
と、異種繊維だけがＸ線を吸収して該シートに異種繊維
の存在が確認できる。 ７．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が温度変
化で可視光に反応する：主成分繊維に木材パルプを使用
し、異種繊維に示温材料をコーティングしたパルプを使
用した該シートの温度を変えると、異種繊維だけが着色
して該シートに異種繊維の存在が見える。 ８．主成分繊維または異種繊維のいずれか一方が塩基性
雰囲気にすると可視光に反応する：主成分繊維に木材パ
ルプを使用し、異種繊維にフェノールフタレンを含浸し
たパルプを使用した該シートをアンモニアガスが存在す
る雰囲気にすると、異種繊維だけが赤色に着色して異種
繊維の存在が見える。そして該シートを酢酸溶液が入っ
た密閉容器の空間に放置すると異種繊維も無色になる。

【０００９】この様な異種繊維をシート内に保持させる
方法としては、異種繊維を主成分繊維原料に混合して、
又は異種繊維を塗工してなるものであるが、本発明でい
うところのランダムパターンを描くという点から、シー
ト製造時に該異種繊維を主成分繊維原料と混合し、一体
化して使用する方法がよい。この理由は、製造されたシ
ート中に異種繊維がランダムに分布することになり、元
来繊維より構成される紙、不織布の繊維の大きさ、直曲
度、配列などが不均一になることを利用したものであ
る。よって、どの部分をとっても異種繊維が同じパター
ンで存在せず、いわば記録シート一枚毎につけられた指
紋の様なものである。つまり、このランダムな異種繊維
の存在を主成分繊維と反応性が異なるエネルギーを反応
させ情報として読み取ることにより、他のシートとの判
別をすることが可能となる。

【００１０】なお、主成分繊維と異種繊維を混合し、一
体化した原料としてシートを製造するが、そのシートが
その製造工程で多層構成でつくられる場合、全ての層に
主成分繊維と異種繊維の比率を一定にすることはない。
それは情報の読み取りが反射方式である場合、読み取る
シートの表層にだけ主成分繊維と異種繊維の比率を目的
のものにすればよいとか、表裏で作意的に異なる情報パ
ターンにするとかの使い方があるからである。シートの
製造方法としては紙製造で広く使用されている湿式法、
不織布で使用されている乾式法が一般的である。そして
作製された該シートを他のシート・支持体と組み合わせ
て一体化することもできる。

【００１１】主成分繊維の中の異種繊維の存在パターン
情報の読み取り及び記録方法としては、例えば券紙全面
に両者繊維の間で反応性が異なる特定エネルギーを照射
して、そのパターンを写真に撮るなどのアナログ情報と
して記録する方法、あるいは一定位置にエネルギーを照
射して有無を確認する方法、あるいはある一定の場所を
走査させながらエネルギー照射、情報読み取りをして一
定強度以上のピーク情報をデジタル記録する方法などが
ある。これらの異種繊維の存在パターン情報を記録する
方法として、磁気層を更に設けパターン情報を磁気記録
して、その磁気情報と実際の異種繊維の存在パターンが
一致しなければ受け付けない様なシステムを構築するこ
とも可能である。

【００１２】異種繊維の含有量に関しては、その読み取
り方式の違いに関わらず、いずれの場合でもその読み取
り範囲内に少なくとも一個以上の該異種繊維が存在して
いれば他のシートとの同一性の識別は可能である。これ
は前述した様に情報識別シート内の異種繊維の存在する
位置あるいはその繊維の大きさなどはまったく不確定な
理由により、仮に読み取り範囲内に該異種繊維が一個し
か存在していなくても、走査線或は面上のどの位置に該
異種繊維があるかなどの情報を読み取ることで、他のシ
ートとの同一性の識別は十分可能となる。

【００１３】本発明に使用される主成分繊維としては、
シートを主たる構成できるものであれば特に制約され
ず、紙であれば通常使用される植物繊維が一般的であ
る。不織布においては合成、半合成の有機・無機繊維が
一般的である。

【００１４】

【作用】本発明の情報識別シートは、主成分繊維の中に
特定の異種繊維が、ランダムパターンとなるように内添
された情報識別シートであり、該情報識別シートに主成
分繊維と異種繊維との間で反応性が異なるエネルギーを
照射することにより、該シート内の該異種繊維のランダ
ムパターンを情報として記録するものであり、該ランダ
ムパターンの記録を繰り返して同定できるものであり、
該ランダムパターンの記録を繰り返し同定することによ
り、極めて偽造困難な情報識別シートおよび情報識別方
法を提供するものである。以上の理由から、本発明の情
報識別シートは、従来の技術に見られない作用を持つも
のである。

【００１５】

【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の％は重量％を示す。

【００１６】実施例１ カナディアン・フリーネス４００ｍｌに叩解した広葉樹
漂白パルプ１００ｇを２％濃度分散液に調整した。この
分散液を攪拌しながら、これへ蛍光染料（ジアミノスチ
ルベンジスルホン系化合物）により染着された広葉樹漂
白パルプ１ｇを加え、更に攪拌を続けた。このパルプを
用いて、常法通り坪量１５０ｇ／ｍ²となるように抄紙
し、１０５℃で乾燥すると、蛍光染料で染着されたパル
プを１％含有した情報識別シートを得た。この情報識別
シートは、通常の太陽光下では該シート自体の地肌であ
る白色として認識されるだけであったが、ブラックライ
トによる紫外線照射下では、染着された該パルプからな
るランダムパターンの蛍光模様を識別できた。更に、同
様にして得られた２枚の情報識別シートＡ、Ｂのランダ
ムパターンについて、蛍光強度、分布状態を測定するた
めに、島津製作所（株）製のクロマトスキャナーＣＳ−
９０００を用いて、各シートの同一部分について、３５
０ｎｍの紫外線照射下で４００ｎｍ以上の波長での吸収
を測定した。それぞれの測定結果について、図１及び図
２に示す。

【００１７】各図におけるピーク位置は、蛍光を発する
該パルプの分布状態を表すものであり、ピークの高さは
蛍光強度を表す。この結果から、各情報識別シートの該
パルプのランダムパターンは、全く異なっていることが
明瞭である。

【００１８】実施例２ カナディアン・フリーネス４００ｍｌに叩解した広葉樹
漂白パルプ１００ｇを２％濃度分散液に調整した。この
分散液を攪拌しながら、これにステンレス・スチール繊
維０．５ｇを加え、更に攪拌を続けた。このパルプを用
いて、常法通り坪量１００ｇ／ｍ²となるように抄紙
し、１０５℃で乾燥することにより、蛍光染料で染着さ
れたパルプを０．５％含有したシートが得られた。この
シートは、通常の雰囲気下では均一であるが、Ｘ線写真
を取るとステンレス・スチール繊維のランダムなパター
ンが確認できた。

【００１９】

【発明の効果】本発明の情報識別シートは、ブラックラ
イトのような特定の励起波長の光を照射したとき、支持
体内に内添された蛍光性染顔料で染着又は含浸した天然
或は合成パルプに基づくランダムパターンの蛍光色を読
み取り、初期に読み取ったランダムパターンと同一であ
るかどうかを同定できるものである。即ち、１枚毎の情
報識別シートに特徴付けられた“紙紋”は、偽造が極め
て困難であり、偽造防止効果に優れている。又、その情
報識別方法は、偽造防止の方法として従来にない有効な
方法であり、その実用的価値は極めて高いものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１で得られた１枚目のシートＡの蛍光強
度、分布状態を表した蛍光スペクトルである。

【図２】実施例１で得られた２枚目のシートＢの蛍光強
度、分布状態を表した蛍光スペクトルである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森下 貞男 東京都千代田区丸の内３丁目４番２号三菱 製紙株式会社内

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 繊維を主成分とする紙、不織布の製造時
   に特定の異種の繊維を混入し、該異種繊維がランダムパ
   ターンとなるよう存在させた情報識別シートであり、該
   シートに主成分繊維または特定の異種繊維のいずれか一
   方に反応するエネルギーを外部から与えることにより、
   シート内の該特定の異種繊維のランダムパターンを情報
   化して読み取り及び記録するものであり、該ランダムパ
   ターンの情報を繰り返して同定できることを特徴とする
   情報識別シート。
2. 【請求項２】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   が紫外部光、可視部光、赤外部光のいずれかの特定の波
   長に反応するものであり、該特定の波長を使用して異種
   繊維のランダムパターンを情報化して読み取り及び記録
   することを特徴とする請求項１記載の情報識別シート。
3. 【請求項３】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   がコロナ放電、摩擦などにより靜電気を帯電するもので
   あり、情報識別シートにコロナ放電、摩擦などの処理を
   した時発生する帯電パターンを情報化して読み取り及び
   記録することを特徴とする請求項１記載の情報識別シー
   ト。
4. 【請求項４】 特定の異種繊維が反応せず、主成分繊維
   がコロナ放電、摩擦などにより靜電気を帯電するもので
   あり、情報識別シートにコロナ放電、摩擦などの処理を
   した時発生する帯電パターンを情報化して読み取り及び
   記録することを特徴とする請求項１記載の情報識別シー
   ト。
5. 【請求項５】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   が磁界をかけたときに磁性を帯びるものであり、情報識
   別シートに磁界をかけた時に発生する磁気パターンを情
   報化して読み取り及び記録することを特徴とする請求項
   １記載の情報識別シート。
6. 【請求項６】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   がＸ線を吸収するものであり、情報識別シートにＸ線を
   照射した時に発生するＸ線吸収パターンを情報化して読
   み取り及び記録することを特徴とする請求項１記載の情
   報識別シート。
7. 【請求項７】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   が熱変化させることにより紫外部光、可視部光、赤外部
   光のいずれかの特定の波長を吸収をするようになるもの
   であり、情報識別シートに熱変化を与えた時に該特定の
   波長の吸収パターンを情報化して読み取り及び記録する
   ことを特徴とする請求項１記載の情報識別シート。
8. 【請求項８】 主成分繊維が反応せず、特定の異種繊維
   が酸性雰囲気、塩基性雰囲気、酸化性雰囲気、還元性雰
   囲気のいずれかの条件に曝されることにより紫外部光、
   可視部光、赤外部光のいずれかの特定の波長を吸収をす
   るようになるものであり、情報識別シートを該雰囲気な
   どに曝したときに時に該特定の波長の吸収パターンを情
   報化して読み取り及び記録することを特徴とする請求項
   １記載の情報識別シート。
9. 【請求項９】 繊維を主成分とする紙、不織布の製造時
   に特定の異種の繊維を混入し、該異種繊維がランダムパ
   ターンとなるよう存在させた情報識別シートであり、該
   シートに主成分繊維または特定の異種繊維のいずれか一
   方に反応するエネルギーを外部から与えることにより、
   該シート内の該特定の異種繊維のランダムパターンを情
   報化して読み取り及び記録するものであり、該ランダム
   パターンの情報を繰り返して同定できることを特徴とす
   る該シートを使用した情報識別方法。