JPH06269926A - 掘削用ビットの製造方法 - Google Patents
掘削用ビットの製造方法Info
- Publication number
- JPH06269926A JPH06269926A JP8692693A JP8692693A JPH06269926A JP H06269926 A JPH06269926 A JP H06269926A JP 8692693 A JP8692693 A JP 8692693A JP 8692693 A JP8692693 A JP 8692693A JP H06269926 A JPH06269926 A JP H06269926A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mold
- chip
- tip
- shank
- cast iron
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- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
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- Earth Drilling (AREA)
- Excavating Of Shafts Or Tunnels (AREA)
- Percussive Tools And Related Accessories (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 製造工程数を減少させ、チップ1の保持強度
を向上させ、掘削時の耐摩耗性及び機械的強度に優れた
掘削用ビットを製造する。 【構成】 鋳型13内にチップ1を配置してその先端を
鋳型13の底部の凹部13aに嵌合し、鋳型13の底部
の周囲に鋳鉄溶湯を予備注湯してチップ1を予熱し、十
分にチップ1が予熱されてから鋳型13内に鋳鉄溶湯を
本注湯し、急冷する。
を向上させ、掘削時の耐摩耗性及び機械的強度に優れた
掘削用ビットを製造する。 【構成】 鋳型13内にチップ1を配置してその先端を
鋳型13の底部の凹部13aに嵌合し、鋳型13の底部
の周囲に鋳鉄溶湯を予備注湯してチップ1を予熱し、十
分にチップ1が予熱されてから鋳型13内に鋳鉄溶湯を
本注湯し、急冷する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば掘削装置の先端
に設けられて岩石あるいは地盤等を掘削するのに用いら
れるビットの製造方法に関する。
に設けられて岩石あるいは地盤等を掘削するのに用いら
れるビットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の掘削用ビットは、典型的には図
4に示すように、歯先としてのチップ1と、これを保持
するシャンク2とからなる。チップ1は岩石等の結合組
織の破壊を行う主体であって、硬度及び靭性が非常に優
れたものである必要があるため超硬材が使用され、シャ
ンク2には炭素鋼あるいは工具鋼が使用されている。
4に示すように、歯先としてのチップ1と、これを保持
するシャンク2とからなる。チップ1は岩石等の結合組
織の破壊を行う主体であって、硬度及び靭性が非常に優
れたものである必要があるため超硬材が使用され、シャ
ンク2には炭素鋼あるいは工具鋼が使用されている。
【0003】上述の掘削用ビットは、従来、以下のよう
な工程を経て製造される。 (1) まず、炭素鋼あるいは工具鋼(SK材)からなる素材
丸棒を切削加工することによってシャンク2を切り出
し、その全体の硬度及び靭性を高めるために熱処理(焼
き入れ及び焼き戻し)を行う。 (2) 次に、別に準備した超硬材(例えばJIS G1〜3 )か
らなるチップ1に溶融した銀ロウ材あるいは黄銅ロウ材
を塗布し、これをシャンク2の先端に形成された孔部2
aに嵌合する。 (3) この工程による嵌合物を再度 700〜900 ℃に加熱す
ることによって、前記ロウ材を再溶融し、前記孔部2a
とチップ1との間の隙間を埋める。 (4) 次いで、前記孔部2aからの溢出ロウ材等によって
チップ1及びシャンク2の表面に付着した物質を、鋼粒
の高速吹き付け(ショットピーニング)によって除去す
る。 (5) さらに、シャンク2におけるチップ1の近傍部分を
高周波焼き入れによって部分硬化させ、前記(3) の加熱
工程でロウ材を再溶融させた際の熱履歴によって低下し
た硬度を回復させ、ロックウェル硬さでHRC 40〜45とす
る。
な工程を経て製造される。 (1) まず、炭素鋼あるいは工具鋼(SK材)からなる素材
丸棒を切削加工することによってシャンク2を切り出
し、その全体の硬度及び靭性を高めるために熱処理(焼
き入れ及び焼き戻し)を行う。 (2) 次に、別に準備した超硬材(例えばJIS G1〜3 )か
らなるチップ1に溶融した銀ロウ材あるいは黄銅ロウ材
を塗布し、これをシャンク2の先端に形成された孔部2
aに嵌合する。 (3) この工程による嵌合物を再度 700〜900 ℃に加熱す
ることによって、前記ロウ材を再溶融し、前記孔部2a
とチップ1との間の隙間を埋める。 (4) 次いで、前記孔部2aからの溢出ロウ材等によって
チップ1及びシャンク2の表面に付着した物質を、鋼粒
の高速吹き付け(ショットピーニング)によって除去す
る。 (5) さらに、シャンク2におけるチップ1の近傍部分を
高周波焼き入れによって部分硬化させ、前記(3) の加熱
工程でロウ材を再溶融させた際の熱履歴によって低下し
た硬度を回復させ、ロックウェル硬さでHRC 40〜45とす
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術による掘削用ビットの製造方法によれば、以下に
列挙するような問題がある。 a.上述のような多くの工程を必要とするので作業が煩
雑であり、とくに(2)(3)の工程によるロウ付けは熟練を
要する作業であるため、品質のばらつきが大きくなるこ
とは避けられない。 b.チップ1とシャンク2の孔部2aとの間の隙間に
は、ロウ材が完全に充填される必要があるが、ロウ材の
塗布不足や、(3) の加熱工程におけるロウ材の多量の溢
出や、チップ1の圧入嵌合の際に閉じ込められた空気等
によって、チップ1と前記孔部2aとの間に空隙が発生
していることがあり、実際に製品を切断してその断面を
観察してみると、ロウ材は70〜80%程度しか充填されて
おらず、従って接合強度のバラツキが大きく、掘削時
に、チップ1に対する保持強度の不足によって破損され
る恐れがある。 c.チップ1を空気中で加熱するので、これを構成する
超硬材の組織に熱劣化を起こし、耐摩耗性の低下を招来
する。
来技術による掘削用ビットの製造方法によれば、以下に
列挙するような問題がある。 a.上述のような多くの工程を必要とするので作業が煩
雑であり、とくに(2)(3)の工程によるロウ付けは熟練を
要する作業であるため、品質のばらつきが大きくなるこ
とは避けられない。 b.チップ1とシャンク2の孔部2aとの間の隙間に
は、ロウ材が完全に充填される必要があるが、ロウ材の
塗布不足や、(3) の加熱工程におけるロウ材の多量の溢
出や、チップ1の圧入嵌合の際に閉じ込められた空気等
によって、チップ1と前記孔部2aとの間に空隙が発生
していることがあり、実際に製品を切断してその断面を
観察してみると、ロウ材は70〜80%程度しか充填されて
おらず、従って接合強度のバラツキが大きく、掘削時
に、チップ1に対する保持強度の不足によって破損され
る恐れがある。 c.チップ1を空気中で加熱するので、これを構成する
超硬材の組織に熱劣化を起こし、耐摩耗性の低下を招来
する。
【0005】これらの問題を解決し得る方法としては、
真空ロウ付け法等を採用することが考えられるが、この
真空ロウ付け法は、工業生産方式としてはまだ確立され
ていない。また、ロウ付けによってチップを保持した構
造ビットは、実際の使用において、過酷な条件で使用さ
れた場合、ビットの表面温度が摩擦熱によって 700〜80
0℃に上昇して、ロウ材の軟化温度域あるいは融点温度
に達してしまうことがあり、このためチップに対するシ
ャンクの保持能力が低下し、チップが脱落してしまうこ
とがある。また、熱処理によって高め得るシャンクの硬
度の上限は HRC45程度に過ぎず、過酷な掘削条件下での
シャンクの耐摩耗性の要求に応えることが困難であっ
た。
真空ロウ付け法等を採用することが考えられるが、この
真空ロウ付け法は、工業生産方式としてはまだ確立され
ていない。また、ロウ付けによってチップを保持した構
造ビットは、実際の使用において、過酷な条件で使用さ
れた場合、ビットの表面温度が摩擦熱によって 700〜80
0℃に上昇して、ロウ材の軟化温度域あるいは融点温度
に達してしまうことがあり、このためチップに対するシ
ャンクの保持能力が低下し、チップが脱落してしまうこ
とがある。また、熱処理によって高め得るシャンクの硬
度の上限は HRC45程度に過ぎず、過酷な掘削条件下での
シャンクの耐摩耗性の要求に応えることが困難であっ
た。
【0006】本発明は、上記のような事情のもとになさ
れたもので、その技術的課題とするところは、工程数を
減少させ、品質及びチップの保持強度のばらつきを解消
し、かつシャンクの耐摩耗性を向上させることにある。
れたもので、その技術的課題とするところは、工程数を
減少させ、品質及びチップの保持強度のばらつきを解消
し、かつシャンクの耐摩耗性を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した技術的課題は、
本発明によって有効に解決することができる。すなわち
本発明に係る掘削用ビットの製造方法は、鋳型内にチッ
プを配置してその先端を鋳型底部の凹部に嵌合し、前記
鋳型底部の周囲に鋳鉄溶湯を予備注湯して前記チップを
予熱し、十分に予熱されてから前記鋳型内に鋳鉄溶湯を
本注湯し急冷するものである。
本発明によって有効に解決することができる。すなわち
本発明に係る掘削用ビットの製造方法は、鋳型内にチッ
プを配置してその先端を鋳型底部の凹部に嵌合し、前記
鋳型底部の周囲に鋳鉄溶湯を予備注湯して前記チップを
予熱し、十分に予熱されてから前記鋳型内に鋳鉄溶湯を
本注湯し急冷するものである。
【0008】
【作用】本発明は、鋳造によってシャンクを成形し、同
時に、チップを前記シャンクに鋳くるむことによって一
体化するものである。一般に、鋳くるみにおける最大の
欠陥とされるのは、熱衝撃並びにチップとシャンクの熱
膨張差によるチップあるいはシャンクにクラックが発生
することである。例えばシャンク材として熱膨張係数が
1.3×10-5/℃の鋳鉄を用い、チップ材として熱膨張係
数が 4.7×10-6/℃の超硬合金を用いた場合、熱膨張や
熱収縮によるシャンクの寸法移動量がチップの2倍以上
になる。このため、クラックの発生を抑止するために
は、鋳込み後の冷却収縮に伴うチップとシャンクの寸法
移動差による残留応力を如何にして材料降伏応力以下に
抑えるかが重要な課題となる。
時に、チップを前記シャンクに鋳くるむことによって一
体化するものである。一般に、鋳くるみにおける最大の
欠陥とされるのは、熱衝撃並びにチップとシャンクの熱
膨張差によるチップあるいはシャンクにクラックが発生
することである。例えばシャンク材として熱膨張係数が
1.3×10-5/℃の鋳鉄を用い、チップ材として熱膨張係
数が 4.7×10-6/℃の超硬合金を用いた場合、熱膨張や
熱収縮によるシャンクの寸法移動量がチップの2倍以上
になる。このため、クラックの発生を抑止するために
は、鋳込み後の冷却収縮に伴うチップとシャンクの寸法
移動差による残留応力を如何にして材料降伏応力以下に
抑えるかが重要な課題となる。
【0009】図3は、超硬合金チップを 800℃に予熱し
て鋳鉄シャンクに鋳くるむ場合のシミュレーション結果
を示す説明図で、図中α1 は鋳鉄シャンクの線膨張、α
2 は超硬合金チップの線膨張、α3 は鋳鉄シャンクのマ
ルテンサイト変態による線膨張、Msはマルテンサイト
変態開始点を示す。このシミュレーションにおいて、チ
ップの外径をφ25mmとすると、チップの熱膨張量は25×
800℃× 4.7×10-6=0.094mmであるのに対し、シャン
クは25× 800℃× 1.3×10-5=0.26mmであり、約0.16mm
の寸法収縮差ΔLが発生する。熱応力を過大化させない
ためには、ΔLをできるだけ小さくして、ΔL1 /Lα
1 からΔL2 /L2 α1 までの変化を小さくし、クラッ
ク発生応力を材料の降伏応力以下に保ちながら冷却させ
ることである。
て鋳鉄シャンクに鋳くるむ場合のシミュレーション結果
を示す説明図で、図中α1 は鋳鉄シャンクの線膨張、α
2 は超硬合金チップの線膨張、α3 は鋳鉄シャンクのマ
ルテンサイト変態による線膨張、Msはマルテンサイト
変態開始点を示す。このシミュレーションにおいて、チ
ップの外径をφ25mmとすると、チップの熱膨張量は25×
800℃× 4.7×10-6=0.094mmであるのに対し、シャン
クは25× 800℃× 1.3×10-5=0.26mmであり、約0.16mm
の寸法収縮差ΔLが発生する。熱応力を過大化させない
ためには、ΔLをできるだけ小さくして、ΔL1 /Lα
1 からΔL2 /L2 α1 までの変化を小さくし、クラッ
ク発生応力を材料の降伏応力以下に保ちながら冷却させ
ることである。
【0010】このシミュレーションで使用している鋳鉄
は、 300℃前後まで冷却された時点でマルテンサイト変
態を開始し、図中α3 で示すように膨張する。マルテン
サイト変態による体積変化は約 1.3%であり、これを線
膨張に換算すると 1.1%程度となる。したがって、φ25
mmのチップでは25× 1.1×10-2= 0.275mmの膨張を起こ
し、寸法収縮差ΔLを完全に吸収する。
は、 300℃前後まで冷却された時点でマルテンサイト変
態を開始し、図中α3 で示すように膨張する。マルテン
サイト変態による体積変化は約 1.3%であり、これを線
膨張に換算すると 1.1%程度となる。したがって、φ25
mmのチップでは25× 1.1×10-2= 0.275mmの膨張を起こ
し、寸法収縮差ΔLを完全に吸収する。
【0011】
【実施例】図1は、本発明に係る製造方法によって図4
に示すような掘削用コニカルビットを製造するのに使用
する鋳造装置の一部断面を表わす概略的な斜視図で、参
照符号10で総括的に示す本体は、軸心を通る平面上で
分割可能な二つ割り構造であって、予熱帯注湯口11a
が一体に延在された外殻11と、この外殻11の上端部
に設けられた支持板12と、外殻11内に配置され上端
開口縁部が支持板12の内周孔に嵌合支持されるカップ
状鋳型13と、このカップ状鋳型13の上端開口縁部に
組み合わされた筒状鋳型14とからなり、鉄枠15によ
って型締め拘束される。外殻11、支持板12及び筒状
鋳型14は、炭酸ガスプロセスによって砂型造形された
不良熱伝導体のシャモット質材料(Al2O3 ,SiO2混合
物)からなり、カップ状鋳型13は良熱伝導体のカーボ
ンからなる。カップ状鋳型13の内面における底部中央
には、チップ1の先端を嵌合するための凹部13aが形
成されている。また、図示の型締め状態において、カッ
プ状鋳型13と外殻11の間には予熱室16が画成さ
れ、カップ状鋳型13と筒状鋳型14の内周に連続した
鋳込み空間17が画成される。
に示すような掘削用コニカルビットを製造するのに使用
する鋳造装置の一部断面を表わす概略的な斜視図で、参
照符号10で総括的に示す本体は、軸心を通る平面上で
分割可能な二つ割り構造であって、予熱帯注湯口11a
が一体に延在された外殻11と、この外殻11の上端部
に設けられた支持板12と、外殻11内に配置され上端
開口縁部が支持板12の内周孔に嵌合支持されるカップ
状鋳型13と、このカップ状鋳型13の上端開口縁部に
組み合わされた筒状鋳型14とからなり、鉄枠15によ
って型締め拘束される。外殻11、支持板12及び筒状
鋳型14は、炭酸ガスプロセスによって砂型造形された
不良熱伝導体のシャモット質材料(Al2O3 ,SiO2混合
物)からなり、カップ状鋳型13は良熱伝導体のカーボ
ンからなる。カップ状鋳型13の内面における底部中央
には、チップ1の先端を嵌合するための凹部13aが形
成されている。また、図示の型締め状態において、カッ
プ状鋳型13と外殻11の間には予熱室16が画成さ
れ、カップ状鋳型13と筒状鋳型14の内周に連続した
鋳込み空間17が画成される。
【0012】図2は工程の流れ図であり、すなわちビッ
トの製造に際しては、まず図示しない高周波炉において
鋳鉄を溶融しておき(S1)、本体10を組み立てて鉄
枠15で拘束することにより型セッティングを行い(S
2)、カップ状鋳型13内にチップ1を配置してその先
端を凹部13aに嵌合させることによりこのチップ1を
セッティングする。(S3)。チップ1は、極めて高い
硬度と耐熱衝撃性を兼ね備えた超硬超粗大 WC-Co合金か
らなり、予めその表面には、酸化による WC-Co合金の超
硬組織の劣化防止及び鋳鉄との密着性を向上させるため
の表面被覆が施されている。被覆材料としては溶射材料
が好適であり、例えばCrの添加量が 5.0〜18.0、B の添
加量が 2.0〜3.0 、Siの添加量が 3.4〜4.5 (各重量
%)、残部Niの成分からなるNi合金が 0.2〜1.0mm 程度
の膜厚でコーティングされる。
トの製造に際しては、まず図示しない高周波炉において
鋳鉄を溶融しておき(S1)、本体10を組み立てて鉄
枠15で拘束することにより型セッティングを行い(S
2)、カップ状鋳型13内にチップ1を配置してその先
端を凹部13aに嵌合させることによりこのチップ1を
セッティングする。(S3)。チップ1は、極めて高い
硬度と耐熱衝撃性を兼ね備えた超硬超粗大 WC-Co合金か
らなり、予めその表面には、酸化による WC-Co合金の超
硬組織の劣化防止及び鋳鉄との密着性を向上させるため
の表面被覆が施されている。被覆材料としては溶射材料
が好適であり、例えばCrの添加量が 5.0〜18.0、B の添
加量が 2.0〜3.0 、Siの添加量が 3.4〜4.5 (各重量
%)、残部Niの成分からなるNi合金が 0.2〜1.0mm 程度
の膜厚でコーティングされる。
【0013】セッティングが完了したら、S1において
溶融した鋳鉄溶湯を予熱帯注湯口11aを介して予熱室
16へ予備注湯してカップ状鋳型13の底部周囲に鋳鉄
溶湯による予熱帯Aを形成する(S4)。カップ状鋳型
13内のチップ1は、予熱帯Aの予備注湯後数分で 800
〜 900℃に予熱される。なお、予備注湯の際の湯量は、
予熱帯Aの凝固後取り出しやすいようにカップ状鋳型1
3に対する浸漬深さ等を考慮して一定に秤量される。次
に、チップ1が十分に予熱されたら、S1において溶融
した鋳鉄溶湯を、鋳込み空間17内に、図4に示す製品
の 1.5〜 2倍の高さで本注湯してチップを鋳くるみ(S
5)、鋳込み後空冷して鋳鉄を凝固させる(S6)。
溶融した鋳鉄溶湯を予熱帯注湯口11aを介して予熱室
16へ予備注湯してカップ状鋳型13の底部周囲に鋳鉄
溶湯による予熱帯Aを形成する(S4)。カップ状鋳型
13内のチップ1は、予熱帯Aの予備注湯後数分で 800
〜 900℃に予熱される。なお、予備注湯の際の湯量は、
予熱帯Aの凝固後取り出しやすいようにカップ状鋳型1
3に対する浸漬深さ等を考慮して一定に秤量される。次
に、チップ1が十分に予熱されたら、S1において溶融
した鋳鉄溶湯を、鋳込み空間17内に、図4に示す製品
の 1.5〜 2倍の高さで本注湯してチップを鋳くるみ(S
5)、鋳込み後空冷して鋳鉄を凝固させる(S6)。
【0014】予備注湯及び本注湯に使用する鋳鉄として
は、耐摩耗性及び靭性の双方に対して優れた特性を示す
Ni−Cr系の鋳鉄材料、好ましくはNiの添加量が 3.3〜5.
0 、Crの添加量が 1.4〜3.5 、C の添加量が 2.5〜3.7
(各重量%)であるNi−Cr系白銑鋳鉄が用いられる。こ
のNi−Cr系白銑鋳鉄は、鋳放し急冷することによって30
0℃付近からマルテンサイト変態を開始し、同時に、そ
のマルテンサイト相のマトリクスにセメンタイト(Fe
3C)を晶出する。このため、表面硬度がHRC 60〜64に達
し、内部ほど硬度が低くなる( HRC45〜40)といった硬
度勾配が生じて、表面においては耐摩耗性が非常に優
れ、内部において靭性に優れたシャンクが鋳造される。
また、先に述べた図3に示すように、シャンク部鋳鉄の
マルテンサイト変態に伴う体積増加によって、冷却過程
におけるチップ1との寸法収縮差が吸収されるので、こ
の寸法収縮差による過大な残留応力が発生しない。
は、耐摩耗性及び靭性の双方に対して優れた特性を示す
Ni−Cr系の鋳鉄材料、好ましくはNiの添加量が 3.3〜5.
0 、Crの添加量が 1.4〜3.5 、C の添加量が 2.5〜3.7
(各重量%)であるNi−Cr系白銑鋳鉄が用いられる。こ
のNi−Cr系白銑鋳鉄は、鋳放し急冷することによって30
0℃付近からマルテンサイト変態を開始し、同時に、そ
のマルテンサイト相のマトリクスにセメンタイト(Fe
3C)を晶出する。このため、表面硬度がHRC 60〜64に達
し、内部ほど硬度が低くなる( HRC45〜40)といった硬
度勾配が生じて、表面においては耐摩耗性が非常に優
れ、内部において靭性に優れたシャンクが鋳造される。
また、先に述べた図3に示すように、シャンク部鋳鉄の
マルテンサイト変態に伴う体積増加によって、冷却過程
におけるチップ1との寸法収縮差が吸収されるので、こ
の寸法収縮差による過大な残留応力が発生しない。
【0015】本注湯後 200〜 300℃まで冷却されたら、
離型してシャンクとチップが一体化されたビットを取り
出し(S7)、このビットに切断やショットブラスト等
の後加工を施して最終製品として仕上げる(S8)。ま
た、S7の離型に際しては、予熱室16内で凝固した予
熱帯Aをカップ状鋳型13及び外殻11から分離して取
り出し(S9)、これを高周波炉における溶融工程S1
に戻して再溶融させ、再使用に供する。
離型してシャンクとチップが一体化されたビットを取り
出し(S7)、このビットに切断やショットブラスト等
の後加工を施して最終製品として仕上げる(S8)。ま
た、S7の離型に際しては、予熱室16内で凝固した予
熱帯Aをカップ状鋳型13及び外殻11から分離して取
り出し(S9)、これを高周波炉における溶融工程S1
に戻して再溶融させ、再使用に供する。
【0016】
【発明の効果】本発明に係る掘削用ビットの製造方法に
よると、次のような効果を奏することができる。 (1) 鋳造によってシャンクを成形すると同時にチップを
シャンクに鋳くるんで一体化することから、工程数が減
少し、しかもロウ付けのような人手による熟練作業を必
要としないので、品質を均一化することができる。 (2) チップとシャンクの間に空隙が発生しないので、チ
ップとシャンクの固定強度が向上する。また、ロウ材を
使用しないので、掘削時の摩擦熱によってチップとシャ
ンクの接合部が軟化又は溶融してチップが脱落したりす
ることがない。 (3) 鋳込み後の冷却収縮に伴うチップとシャンクの寸法
収縮差による残留応力が解消されるので、クラックの発
生や、掘削時の摩擦熱によるチップの拘束力低下が防止
される。 (4) 鋳鉄溶湯は、鋳込み後急冷されることによってその
表面の硬度が高まり、冷却速度の遅い内部においては硬
度が低い反面、靭性が高くなるので、シャンクの耐摩耗
性及び機械的強度を向上し、したがって、掘削対象の地
盤が砂泥岩からなる場合のように、従来シャンクが損耗
を受けやすかった掘削条件下でも、その損耗を低減する
ことができる。
よると、次のような効果を奏することができる。 (1) 鋳造によってシャンクを成形すると同時にチップを
シャンクに鋳くるんで一体化することから、工程数が減
少し、しかもロウ付けのような人手による熟練作業を必
要としないので、品質を均一化することができる。 (2) チップとシャンクの間に空隙が発生しないので、チ
ップとシャンクの固定強度が向上する。また、ロウ材を
使用しないので、掘削時の摩擦熱によってチップとシャ
ンクの接合部が軟化又は溶融してチップが脱落したりす
ることがない。 (3) 鋳込み後の冷却収縮に伴うチップとシャンクの寸法
収縮差による残留応力が解消されるので、クラックの発
生や、掘削時の摩擦熱によるチップの拘束力低下が防止
される。 (4) 鋳鉄溶湯は、鋳込み後急冷されることによってその
表面の硬度が高まり、冷却速度の遅い内部においては硬
度が低い反面、靭性が高くなるので、シャンクの耐摩耗
性及び機械的強度を向上し、したがって、掘削対象の地
盤が砂泥岩からなる場合のように、従来シャンクが損耗
を受けやすかった掘削条件下でも、その損耗を低減する
ことができる。
【図1】本発明に係る製造方法によるビット製造に使用
する鋳造装置の一部断面を表わす概略的な斜視図であ
る。
する鋳造装置の一部断面を表わす概略的な斜視図であ
る。
【図2】本発明の一実施例方法を示す工程の流れ図であ
る。
る。
【図3】本発明のシミュレーション結果を示す説明図で
ある。
ある。
【図4】掘削用ビット構造の一例を示す説明図である。
1 チップ 10 本体 11 外殻 13 カップ状鋳型(鋳型) 14 筒状鋳型 16 予熱室 17 鋳込み空間 A 予熱帯
Claims (1)
- 【請求項1】 鋳型内にチップを配置してその先端を鋳
型底部の凹部に嵌合する工程と、 前記鋳型底部の周囲に鋳鉄溶湯を予備注湯して前記チッ
プを予熱する工程と、 前記チップが十分に予熱されてから前記鋳型内に鋳鉄溶
湯を本注湯して急冷する工程と、を含むことを特徴とす
る掘削用ビットの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8692693A JPH06269926A (ja) | 1993-03-23 | 1993-03-23 | 掘削用ビットの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8692693A JPH06269926A (ja) | 1993-03-23 | 1993-03-23 | 掘削用ビットの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06269926A true JPH06269926A (ja) | 1994-09-27 |
Family
ID=13900472
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8692693A Withdrawn JPH06269926A (ja) | 1993-03-23 | 1993-03-23 | 掘削用ビットの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06269926A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH11207657A (ja) * | 1998-01-29 | 1999-08-03 | Komatsu Ltd | 振動発生装置のボディ |
US6110084A (en) * | 1997-06-27 | 2000-08-29 | Mitsubishi Materials Corporation | Combined roll having excellent resistance to thermal shock |
JP2005273439A (ja) * | 2004-02-26 | 2005-10-06 | Kubota Corp | 掘削用のビット |
KR100768775B1 (ko) * | 2006-05-18 | 2007-11-05 | 주식회사 티엠시 | 유압 브레이커용 치즐과 그 제조방법 |
JP2009285761A (ja) * | 2008-05-28 | 2009-12-10 | Ryobi Ltd | 打撃工具 |
-
1993
- 1993-03-23 JP JP8692693A patent/JPH06269926A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6110084A (en) * | 1997-06-27 | 2000-08-29 | Mitsubishi Materials Corporation | Combined roll having excellent resistance to thermal shock |
JPH11207657A (ja) * | 1998-01-29 | 1999-08-03 | Komatsu Ltd | 振動発生装置のボディ |
JP2005273439A (ja) * | 2004-02-26 | 2005-10-06 | Kubota Corp | 掘削用のビット |
KR100768775B1 (ko) * | 2006-05-18 | 2007-11-05 | 주식회사 티엠시 | 유압 브레이커용 치즐과 그 제조방법 |
JP2009285761A (ja) * | 2008-05-28 | 2009-12-10 | Ryobi Ltd | 打撃工具 |
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