JPH06237764A - 肝細胞の分離方法 - Google Patents

肝細胞の分離方法

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JPH06237764A
JPH06237764A JP50A JP2907993A JPH06237764A JP H06237764 A JPH06237764 A JP H06237764A JP 50 A JP50 A JP 50A JP 2907993 A JP2907993 A JP 2907993A JP H06237764 A JPH06237764 A JP H06237764A
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liver
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滋章 平尾
Ryohei Yamamoto
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Kurabo Industries Ltd
Kurashiki Spinning Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生存率の高い細胞を得ることのできる肝細胞
の分離方法を提供する。 【構成】 動物の肝臓に前灌流液をイン・サイチュで灌
流させたのち、少なくともコラゲナーゼおよびチオール
プロテアーゼ阻害剤を含有する灌流液をイン・サイチュ
で灌流することを特徴とする肝細胞の分離方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動物の肝細胞を分離する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】哺乳類の肝臓の持つ多種多様な特異機能
の研究において、肝実質細胞の初代培養細胞を用いる手
段が注目されている。細胞培養のためには肝細胞を分離
することがが必須である。
【0003】肝細胞は主に、細胞間の金属イオンに依存
する接着因子と細胞間基質によって接着して肝臓を構成
している。肝細胞の分離法としてはコラゲナーゼのイン
・サイチュ灌流により細胞間基質の消化を行う方法が主
流である。この方法は、動物肝臓をまず緩衝液で前灌流
したのちにコラゲナーゼを灌流させ、肝細胞を穏やかに
分離させる方法である。前灌流時に金属イオン依存性の
接着因子を除くためにEGTA等を含む灌流液を用い、
化学的な分離を組み合わせることも行われている。
【0004】しかしながら、上記のごとき灌流法で肝細
胞を分離した場合、得られる細胞の生存率が一定せず、
高収率で安定な細胞の分離が困難である。これは分離細
胞を用いた実験の信頼性にも影響する。市販のコラゲナ
ーゼのロット差によるものであると考えられるが、その
原因は明らかでない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、生存率の高
い肝細胞を得るための肝細胞の分離方法を提供すること
を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、動物
の肝臓に前灌流液をイン・サイチュで灌流させたのち、
少なくともコラゲナーゼおよびチオールプロテアーゼ阻
害剤を含有する灌流液をイン・サイチュで灌流すること
を特徴とする肝細胞の分離方法に関する。
【0007】前灌流液としては従来用いられているもの
を使用すればよく、例えばラットの場合にはEGTA
(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテ
ル)四酢酸およびHEPESを添加し、カルシウムイオ
ンとマグネシウムイオンを除いたハンクス緩衝液が好適
に用いられるが、これに限定されるものではなく、動物
の種類等によって添加物の種類、濃度等を適宜選択すれ
ばよい。
【0008】本発明の方法において、肝臓のイン・サイ
チュ灌流の手法は限定的ではなく、既知の方法を使用す
る動物に合わせて用いればよい。例えばラットの肝臓を
灌流する場合には、小平らの方法(実験医学第6巻第1
1号第1105〜1113頁(1988年))で行えば
よい。すなわち、腹部を切開し、門脈からカニューレを
挿入して灌流液を灌流させる。前灌流時には同時に下部
大静脈を切断して脱血させればよい。その後心臓にもカ
ニューレを挿入し、コラゲナーゼを含有する灌流液は循
環させて用いる。灌流させる液体は、全て動物の体温程
度に加温するのが好ましい。
【0009】前灌流により肝臓内の血液を全て下大静脈
より脱血させ、さらにEGTAによってカルシウム依存
性の接着因子を除き、細胞を分離しやすくする。前灌流
は動物の種類、大きさによっても異なるが、例えば体重
150g程度のラットである場合には、1分間につき3
0mlの流速で5分から15分間行い、合計で100〜
500mlの前灌流液を流す。前灌流が順調であれば肝
臓は一様に白くなる。
【0010】前灌流の終了後、灌流液をコラゲナーゼ液
に変えて肝臓を酵素的に消化する。本発明の肝細胞の分
離法において用いられるコラゲナーゼ液は従来使用され
ている処方のコラゲナーゼ液にチオールプロテアーゼ阻
害剤を添加したものである。現在主に使用されているコ
ラゲナーゼ液は、ハンクス液にトリプシンインヒビター
とカルシウムイオンを添加し、さらに0.05%となる
ようにコラゲナーゼを添加した溶液である。コラゲナー
ゼは市販のものを用いればよいが、ロットによって多少
活性が異なるので適宜希釈して用いればよい。
【0011】コラゲナーゼ溶液に添加するチオールプロ
テアーゼ阻害剤としては、ハロゲン化低級カルボン酸、
例えばヨード酢酸等、NEM(N−エチルマレイミ
ド)、アンチパイン、ロイペプチン等が知られている。
特にヨード酢酸が好適に用いられる。チオールプロテア
ーゼ阻害剤の添加量は、各阻害剤の活性によって異なる
が、例えばヨード酢酸の場合は1〜500ppm、好ま
しくは10〜100ppmである。チオールプロテアー
ゼ阻害剤の添加量が多すぎると肝細胞分離後の育成に支
障をきたし、また少なすぎると本発明の効果を得ること
ができない。
【0012】灌流は前灌流と同じ速度、すなわち体重1
50g程度のラットであれば毎分30mlで行う。灌流
を8〜15分間続け、コラゲナーゼによる消化が進む
と、肝臓は弾力を失いピンセットで軽く押しても元に戻
らなくなる。この時点で灌流を終了し、肝臓を取り出し
てシャーレに移す。コラゲナーゼによる消化が不十分で
あっても、あるいは時間をかけすぎて消化が進み過ぎて
も得られる細胞の生存率は低下する。シャーレに移した
肝臓の皮膜を切り裂くと、肝細胞はとろけるように分離
する。さらに氷冷した細胞洗浄液を添加して先太の駒込
ピペットで軽くピペッティングすると大部分の肝細胞が
単細胞として遊離するので、これをガーゼ等で濾過した
濾液を粗分散細胞浮遊液とする。
【0013】得られた粗細胞浮遊液は常套の方法で実質
細胞と非実質細胞に分離し、必要に応じて精製して用い
れば良い。
【0014】本発明によれば肝実質細胞を、従来の方法
によるものと比べて高い生存率で安定して得ることがで
きる。また、実質細胞のみならず、常套法によりクッパ
ー細胞や内皮細胞等の非実質細胞を分取するのに本発明
の方法を用いることもできる。
【0015】本発明によって得られた肝実質細胞は従来
の方法で初代培養あるいは継代培養されて、様々な試
験、研究に応用することができる。また試験、研究のみ
ならず、株化細胞とハイブリドーマを形成させ、有用物
質、例えばワクチン等の大量生産に用いたり、薬物の毒
性試験に用いたりすることも可能である。本発明の方法
は条件を選べばラットのみならず、マウス、モルモッ
ト、ウサギ、イヌ等他の動物にも応用することができ
る。
【0016】以下実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。実施例は本発明の一例にすぎず、本発明はこれ
に限定されるものではない。
【0017】
【実施例】動物および試薬 実験は全てラット雄性ウィスター種、週令4〜7、体重
100〜250g)を用いて行った。前灌流液、実施例
およびコラゲナーゼ溶液の組成は表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】コラゲナーゼは和光純薬社製、トリプシン
インヒビターはシグマ社製のものを用いた。前灌流液は
全ての試薬を溶解し、NaOHにてpH7.2に調整し
た後100mlずつ分注し、オートクレーブ滅菌して用
いた。コラゲナーゼ溶液は、コラゲナーゼ以外の試薬を
溶解し、NaOHでpH7.2〜7.4に調整した後、
コラゲナーゼ粉末を撹拌しながら少しづつ添加して溶解
させ、さらに1時間撹拌して十分に溶解させた後pHを
性格に7.5に調整して濾過滅菌後100mlずつ分注
して冷蔵保存したものを用いた。
【0020】イン・サイチュ灌流 灌流は、上述の小平らの方法にて行った。実験は各3連
で行った。ネンブタール液にて麻酔したラットを開腹
し、門脈より、ペリスタリックポンプにセットした灌流
用チューブの先端に付けたカニューレを挿入して固定し
た。直ちに下大静脈を切断して脱血させながら、38℃
に加温した前灌流液を流入させ、30ml/minにて前灌流
を行った。前灌流は10分間行った。
【0021】灌流すると肝臓は一様に白く脱血される。
この間に胸腔を大きく切開し、心臓を露出させ、その後
肝臓下の下大静脈を鉗子で止め、ただちに右心房に入る
下大静脈にカニューレを挿入して固定した。その後、ポ
ンプを一旦止め、灌流液を38℃に加温したコラゲナー
ゼ液に変えて同じ流速で灌流を行った。約1分後、肝臓
および灌流チューブから前灌流液が排出されたら心臓よ
り出て来る液をコラゲナーゼ液に戻してさらに灌流を続
けた。
【0022】コラゲナーゼ液による灌流は約10分間続
け、肝臓が消化され、肝小葉が浮き上がったような外観
を呈し、表面の弾力がなくなりピンセットで軽く押して
も元に戻らなくなった時点で灌流を終了し、肝臓をピン
セットでつまみあげてハサミで切り離し、氷上に保持し
たシャーレに移した。
【0023】シャーレに移した肝臓はメスで肝臓皮膜を
切り裂き、氷冷MEM(動物細胞培養用基礎培地(大日
本製薬社製)を20ml添加し、先太の駒込ピペットに
てゆっくりとピペッティングして十分に分散させた。こ
の細胞分散液を二重にしたガーゼを通した後、濾液を4
本のガラス製スピッツ型遠沈管に移しMEMで1本当た
り40mlとして先太の駒込ピペットで分散させた後、
冷却下で50×g、1分間遠心分離した。この条件では
無傷の肝実質細胞がパックされ、損傷肝細胞、非実質細
胞、赤血球および細胞の破片は上清に残る。上清を除
き、新たにMEMを添加してピペッティングを行い、同
様の遠心分離を繰り返す。このようにして、細胞を集め
ながら4回遠心分離を行い、最終的に96〜98%の純
度で肝実質細胞が得られた。
【0024】最終的に1個の肝臓当たり40mlのME
Mに懸濁した細胞懸濁液とし、その一部を取ってこれに
0.3%のトリパンブルーを添加した後に軽く混合して
生細胞および死細胞数を血球計算板を用いて計数し、生
存率を計算した。死細胞はトリパンブルーによって青く
染色される。
【0025】得られた肝実質細胞の生存率は、比較例に
おいては79±3.1%であったのに対して実施例のチ
オールプロテアーゼを含有するコラゲナーゼ液にて灌流
した肝臓においては85±1.0%であった。
【0026】
【発明の効果】本発明の方法で分離した肝細胞は生存率
が高く、収率が一定している。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物の肝臓に前灌流液をイン・サイチュ
    で灌流させたのち、少なくともコラゲナーゼおよびチオ
    ールプロテアーゼ阻害剤を含有するコラゲナーゼ液をイ
    ン・サイチュで灌流させて肝臓を消化することを特徴と
    する肝細胞の分離方法。
  2. 【請求項2】 チオールプロテアーゼ阻害剤がハロゲン
    化低級カルボン酸である請求項1記載の肝細胞の分離方
    法。
  3. 【請求項3】 動物がラットである請求項1記載の肝細
    胞の分離方法。
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