JPH06228011A - リン酸カルシウム系薬物徐放体及びその製造方法 - Google Patents

リン酸カルシウム系薬物徐放体及びその製造方法

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JPH06228011A
JPH06228011A JP24877492A JP24877492A JPH06228011A JP H06228011 A JPH06228011 A JP H06228011A JP 24877492 A JP24877492 A JP 24877492A JP 24877492 A JP24877492 A JP 24877492A JP H06228011 A JPH06228011 A JP H06228011A
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KYORITSU YOGYO GENRYO KK
S T K CERAMICS KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生体硬組織内に、より強固に結合、維持さ
れ、更には薬物の放出速度を容易に制御せしめて、より
有効な徐放性効果を得ることのできる薬物徐放体及びそ
の製造方法を提供すること。 【構成】 リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウム
若しくはその二水和物とを、Ca/Pモル比がハイドロ
キシアパタイト組成となるように、配合してなる自己硬
化性リン酸カルシウム系セメント組成物を、薬物を保持
する基材として用い、またそのようなリン酸カルシウム
系セメント組成物に対して、0.1〜0.3ミリモル/
lの濃度のリン酸水溶液を、25〜70重量%の範囲内
にて、添加、練合して、硬化せしめることによって、得
られる硬化体の空隙率を20〜60%に制御し、該硬化
体に保持される薬物の放出速度を制御するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、生体内で、硬組織医療用薬物
を、長期間に亘って持続的に放出するリン酸カルシウム
系薬物徐放体及びその製造方法に関するもので、特に、
生体硬組織内に対して、強固に接合、維持せしめられる
と共に、薬物の放出速度を制御することのできるリン酸
カルシウム系薬物徐放体及びその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【背景技術】従来から、患部に対する、長期間の持続的
な薬剤投与のための効果的な手段として、薬物徐放体が
用いられてきている。そして、この薬物徐放体は、よく
知られているように、所定の薬物とそれを保持する基材
とから構成されてなるものであり、生体内の骨等の硬組
織中に埋設され、基材から、長期に亘って、薬物を徐々
に放出せしめて、患部に対して、有効な治療効果を上げ
るようになっている。
【0003】それ故、かかる薬物徐放体としては、薬物
の保持能力に富み、徐放性効果に優れたものが要求され
ており、そのような要求を満足させるために、従来か
ら、種々の提案が為されている。
【0004】例えば、特開昭59−101145号公報
には、外部に連通する気孔内に所定の薬物を含浸せしめ
た、薬液含浸多孔質セラミックスが明らかにされ、ま
た、特開平3−161429号公報には、セラミックス
微粉末と薬剤粉末とを混和した後、常温で加圧成形した
ものが開示され、更に特開平3−294221号公報に
おいては、緻密質セラミック体に穴を開け、この穴内
に、内部に薬物を含有したリポソームを形成せしめたも
のが提案されている。そして、それら公報にあっては、
何れも、そこに開示される薬物徐放体が、薬物の徐放性
に優れ、長期に亘って投薬効果が得られることが、示さ
れている。
【0005】しかしながら、それらの薬物徐放体は、何
れも、所定の形に成形せしめられてなるものであるた
め、そのような薬物徐放体を複雑な形状の生体硬組織内
に埋設するに際しては、かかる生体硬組織内から、脱落
したりすることのないように、埋設される部位に即した
形状に、精密に加工する必要があり、その加工作業が、
非常に面倒なものであった。
【0006】しかも、前述の如く、それらは、生体内に
おいて、薬物を長期的に放出せしめるようにのみ構成さ
れており、それ故、生体内の適用部位や疾病の種類等に
応じて、比較的短期間にて、或いはより長期間に亘って
薬物を放出せしめ得るように、薬物の放出速度を選択的
に制御せしめて、より有効な投薬効果を得るようにする
ことが困難であるといった問題をも、内在するものであ
った。
【0007】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情
に鑑みて為されたものであって、その解決課題とすると
ころは、複雑な形状の生体硬組織内に対して、加工等の
手間を要することなく、より強固に接合、維持せしめら
れ得る薬物徐放体を提供することにあり、また別の課題
とするところは、薬物の放出速度を容易に制御せしめ
て、生体内の適用部位や疾病の種類等に応じた、より有
効な徐放性効果を得ることのできる薬物徐放体の製造手
法を提供することにある。
【0008】
【解決手段】そして、かかる課題を解決するために、本
発明は、薬物を保持する基材として、リン酸四カルシウ
ムとリン酸水素カルシウム若しくはその二水和物とを、
Ca/Pモル比がハイドロキシアパタイト組成となるよ
うに、配合してなる自己硬化性リン酸カルシウム系セメ
ント組成物を用いたリン酸カルシウム系薬物徐放体を、
その要旨とするものである。
【0009】また、本発明は、リン酸四カルシウムとリ
ン酸水素カルシウム若しくはその二水和物とを、Ca/
Pモル比がハイドロキシアパタイト組成となるように、
配合してなる自己硬化性リン酸カルシウム系セメント組
成物に対して、リン酸水溶液を添加して硬化せしめ、薬
物徐放体の基材を形成するに際し、かかる添加するリン
酸水溶液の濃度を0.1〜0.3ミリモル/lとし、且
つその添加量を25〜70重量%として、練合、硬化せ
しめることによって、得られる硬化体の空隙率を20〜
60%に制御し、該硬化体に保持される薬物の放出速度
を制御するようにしたリン酸カルシウム系薬物徐放体の
製造方法をも、その要旨とするものである。
【0010】
【具体的構成】ところで、本発明に従うリン酸カルシウ
ム系薬物徐放体において、薬物を保持する基材として用
いられる自己硬化性リン酸カルシウム系セメント組成物
は、リン酸四カルシウム(TeCP)とリン酸水素カル
シウム(DCPA)若しくはその二水和物(DCPD)
とを、その主成分組成物とするものであり、しかも、そ
のCa/Pモル比がハイドロキシアパタイト組成となる
ように、それら主成分組成物が、配合せしめられてなる
ものである。即ち、かかる自己硬化性リン酸カルシウム
系セメント組成物においては、Ca/Pモル比が1.6
7となるような量にて、それらTeCPとDCPA若し
くはDCPDとが配合せしめられているのであり、それ
によって、硬化後、かかる組成物は、迅速に、ハイドロ
キシアパタイト結晶に転移することとなる。
【0011】ここにおいて、ハイドロキシアパタイト
は、よく知られているように、生体親和性に優れてお
り、生体内において、骨の一部として取り込まれるか、
或いは吸収され得るものである。
【0012】従って、本発明に係るリン酸カルシウム系
薬物徐放体においては、薬物の放出完了後に、取り出さ
れる必要が全くなく、骨に欠損部や空隙部等がある場合
等には、寧ろ、生体内に残置されることによって、代替
骨としての役割を果たすといった利点が得られるのであ
る。
【0013】また、かかるリン酸カルシウム系薬物徐放
体にあっては、有利には、上記の如き組成を有するリン
酸カルシウム系セメント組成物に対して、硬化を促進せ
しめるための種晶として、ハイドロキシアパタイト粉末
が添加せしめられることとなる。なお、このハイドロキ
シアパタイト粉末の添加量としては、好ましくは60重
量%以下である。
【0014】そして、本発明に従うリン酸カルシウム系
薬物徐放体は、かくの如き組成を有するリン酸カルシウ
ム系セメント組成物に対して、後述するように、リン酸
水溶液が添加され、練合され、更に所定の薬物が混和乃
至は混入せしめられて構成されているのである。
【0015】すなわち、かかるリン酸カルシウム系薬物
徐放体は、特別な組成を有するリン酸カルシウム系セメ
ント組成物に対して、リン酸水溶液が添加せしめられ、
それらを練合して、硬化を進行せしめる一方、スラリー
若しくは粘土状の状態時に、所定の薬物を、単独の粉末
若しくは顆粒の状態で、または生体に為害性のない高分
子化合物等との混合粉体、若しくは薬物を含有させた多
孔質顆粒として、添加し、更にそれらを練合して得られ
るのであり、また、そのような薬物粉末若しくは薬物顆
粒、或いは高分子化合物との混合粉体若しくは薬物含有
多孔質顆粒等の薬物等を錠剤等の所定の形状に成形した
成形体を得、リン酸水溶液が添加、練合せしめられ、粘
土状とされたリン酸カルシウム系セメント組成物にて、
かかる成形体の周囲を覆うように被覆しても、得ること
ができる。
【0016】なお、特に、そのような薬物等を所定の形
状に成形し、それをリン酸カルシウム系セメント組成物
にて被覆する場合にあっては、種類や濃度の異なる薬物
等を、2種或いはそれ以上用いて、それらが、それぞ
れ、段階的に投与されるようにすることも可能である。
つまり、それら種類や濃度が異なる薬物等を、それぞ
れ、同心的に位置せしめ、内側の層の表面の全体を、外
側の層にて被覆するように積層せしめると共に、その最
外層を、かかるリン酸カルシウム系セメント組成物にて
被覆して、リン酸カルシウム系薬物徐放体を構成するこ
とによって、かかるセメント組成物からなる被覆層の直
下の薬物等の層から、順次、薬物が溶出せしめられるよ
うにするのである。ここにおいて、かかる薬物徐放体に
含有される薬物としては、一般に、骨成長刺激ホルモ
ン、抗生物質、抗炎症薬、抗癌剤等の硬組織の医療用薬
物等が用いられることとなる。
【0017】そして、かくして得られるリン酸カルシウ
ム系薬物徐放体にあっては、何れもが、自己硬化性リン
酸カルシウム系セメント組成物の硬化が完了する前のス
ラリー若しくは粘土状の状態時に、例えば骨の欠損部等
の生体の硬組織内に充填されるのであり、それによっ
て、面倒な加工等を一切要することなく、生体硬組織内
の複雑な形状に即して埋設され得、更に硬化の完了によ
り、かかる埋設された生体硬組織部位に対して、より強
固に接合され得て、該生体硬組織内から脱落したりする
こともなく、安定的な投薬効果が、保障され得るのであ
る。
【0018】また、リン酸カルシウム系セメント組成物
は、強酸性であるものの、リン酸水溶液を添加し、練合
することによって、直ちに中性付近(pH7.0〜7.
4)に達するため、かかる薬物徐放体は、略中性を呈し
ており、従って生体刺激性が少なく、また添加薬物の安
定性が、有利に確保され得るのである。
【0019】ところで、本発明にあっては、そのような
リン酸カルシウム系薬物徐放体を製造する上において、
特に、上記した如き自己硬化性リン酸カルシウム系セメ
ント組成物に対してリン酸水溶液を添加して硬化せし
め、薬物を保持する基材を形成するに際し、かかるリン
酸水溶液が0.1〜0.3ミリモル/lの濃度で、且つ
25〜70重量%の添加量にて添加せしめられることと
なる。けだし、リン酸水溶液の濃度が0.1ミリモル/
lよりも低いと、リン酸濃度が低過ぎて、リン酸カルシ
ウム系セメント組成物の水和硬化が進行しないからであ
り、また0.3ミリモル/lよりも高いと、酸性度が高
過ぎて、かかるセメント組成物が溶解し、生体に対する
刺激性を高めることとなるからであって、更にその添加
量が、25重量%よりも少ないと、リン酸水溶液の添加
量が少な過ぎて、充分な硬化反応が進行せず、更にまた
リン酸水溶液が70重量%を越えて添加せしめられる
と、得られる硬化物の硬度が不充分であるばかりか、薬
剤の溶出速度が速くなり過ぎて、有効な徐放性効果が得
られなくなってしまうからである。
【0020】そして、かくして、リン酸水溶液が添加せ
しめられたリン酸カルシウム系セメント組成物が、練合
されることにより、硬化せしめられるのであるが、本発
明においては、それにより得られる硬化体の空隙率が、
20〜60%に制御されている。この空隙率が20%を
下回る場合にあっては、硬化体が緻密化して、かかる硬
化体の空隙を通じての薬物の放出が阻害される虞があ
り、また60%を上回る場合にあっては、薬物の保持能
力が低下し、その徐放性効果が、著しく減少してしまう
問題がある。
【0021】すなわち、このように、本発明に従って製
造されるリン酸カルシウム系薬物徐放体にあっては、薬
物を保持する基材として用いられる自己硬化性リン酸カ
ルシウム系セメント組成物が、その硬化後、所定の空隙
を有し、またその空隙を通じて、薬物が放出せしめられ
るようになっていると共に、保持される薬物の放出速度
が、その空隙率に大きく依存しているのである。
【0022】また、本発明にあっては、リン酸カルシウ
ム系セメント組成物に対して添加せしめられるリン酸水
溶液の濃度及び添加量を、上記の如き範囲内において、
適宜、変更することによって、得られる自己硬化性リン
酸カルシウム系セメント組成物の硬化物の空隙率を制御
することが可能である。
【0023】それ故、かかる本発明においては、添加せ
しめられるリン酸水溶液の濃度及び添加量を制御するだ
けで、リン酸カルシウム系セメント組成物の硬化体に保
持される薬物の放出速度の制御が、極めて簡単に為され
得るのである。
【0024】従って、このような本発明によれば、生体
内の適用される部位や疾病の種類等に応じた、より有効
な徐放性効果を享受することのできるリン酸カルシウム
系薬物徐放体が、極めて容易に得られることとなる。
【0025】なお、本発明においては、自己硬化性リン
酸カルシウム系セメント組成物を構成するTeCPやD
CPA、或いはDCPDの粒子径を調節することによっ
ても、得られる硬化体の空隙率を変化させることができ
るのであり、またそれによって、硬化体からの薬物放出
速度を、更に広範に制御し得るのである。更にまた、混
和乃至は混入せしめられる薬物において、粒子径の異な
る薬物粉末や薬物の表面を種々の高分子膜でコーティン
グした顆粒等を用いることによって、薬物の溶出速度を
制御することも、硬化体からの薬物放出速度を制御する
上においては、有効である。
【0026】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本
発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明
が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも
受けるものでないことは、言うまでもないところであ
る。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には
上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨に逸脱しない
限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変
更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解さ
れるべきである。
【0027】実施例 1 先ず、リン酸四カルシウム(TeCP)粉末を1.83
g、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)粉末を
0.86g、更に合成ハイドロキシアパタイト(HA
p)粉末を1.794g、それぞれ、秤量し、そしてそ
れらを混合して、自己硬化性リン酸カルシウム系セメン
ト組成物を与える混合粉末を得た。次いで、この混合粉
末を0.95g秤量し、これに、0.25ミリモル/l
のリン酸水溶液0.36mlを添加した後、迅速に練合
して、セメントスラリーを調製した。その後、この得ら
れたセメントスラリーに、0.05gのインドメタシン
粉末を添加し、練合した後、直径2cmの型に流し込
み、生体内と略同一条件となる温度37℃、相対湿度1
00%に24時間保持し、これを硬化せしめて、インド
メタシン含有リン酸カルシウム系薬物徐放体である試料
1を得た。
【0028】そして、かくして得られた試料1につい
て、そのX線粉末回折(CuKα,30kv,15m
A)を、合成HApと共に、それぞれ、行なった。各々
のX線粉末回折図を、図1及び図2に示す。
【0029】それら図1及び図2から明らかなように、
合成HApと試料1とが、同一のピーク位置を示してお
り、試料1が、合成HApと同一の結晶構造を有するも
のであり、また合成HApのピーク強度に対して、試料
1のピーク強度が低く、試料1が、合成HApよりも、
やや結晶化度が低い、より生体を構成するHApに近い
構造を有するものであることが示される結果となってい
る。
【0030】次に、上記の如くして得られるリン酸カル
シウム系薬物徐放体の薬物の放出速度を調べるために、
試料1において、一定時間毎のインドメタシンの溶出量
(放出量)を測定した。その測定結果を、抜粋して、表
1に示す。なお、かかる試料1からのインドメタシンの
溶出量の測定に際しては、回転円盤法を採用し、第11
改正日本薬局方の溶出試験器を用いて、以下のようにし
て行なった。先ず、試料1の一つの面のみを露呈せしめ
つつ、全体をワックスで固めて、試料固定器に装着し
た。次いで、前記溶出試験器を使用して、1000ml
の丸底フラスコにpH7.4のリン酸緩衝液を50ml
入れ、37℃の温度で、試料1を150rpm で回転さ
せ、インドメタシンを溶出せしめた。溶出せしめられた
インドメタシンの採取は、一定の時間毎に行ない、その
都度、溶媒の全量を交換した。そして、採取されたイン
ドメタシンの量を分光光度計を用いて、264nmの波
長にて測定した。
【0031】
【表1】
【0032】かかる表1からも明らかなように、試料1
においては、インドメタシンが、約2週間をかけて、略
全量溶出せしめられており、かかるリン酸カルシウム系
薬物徐放体が、約2週間に亘って、投薬効果が得られ、
優れた徐放性効果が発揮されることが示される結果とな
っている。
【0033】実施例 2 実施例1と同様にして得られた自己硬化性リン酸カルシ
ウム系セメント組成物の混合粉末1.0gに、0.25
ミリモル/lのリン酸水溶液0.36mlを添加した
後、迅速に練合して、セメントスラリーを調製した。か
くして得られたセンメントスラリーに、インスリン粉末
を5mg加えて、練合した後、直径2cmの型に流し込
み、生体内条件と略同一の温度37℃、相対湿度100
%にて24時間保持し、硬化せしめて、インスリン含有
リン酸カルシウム系薬物徐放体である試料2を得た。そ
して、この試料2に対して、実施例1と同様にして、イ
ンスリンの溶出試験を行なった。その結果を、表2に示
す。なお、インスリンの定量には、タンパク質測定キッ
ト:バイオラッドを用い、分光光度計により、595n
mの波長で測定した。
【0034】
【表2】
【0035】この表2からも明らかなように、試料2に
おいては、インスリンが、約3週間の間に、約28%溶
出しており、更にこの後においても、インスリンの溶出
が期待できるのであって、かかるリン酸カルシウム系薬
物徐放体が、インスリン保持能力に一段と富み、より優
れた徐放性効果が得られることが示されている。
【0036】実施例 3 実施例1と同様にして、TeCP粉末とDCPD粉末を
秤量し、更にこれらに対して、下記表3に示す如き配合
割合となるように合成HApを秤量し、それらを、それ
ぞれ、混合して、合成HApの含有量が異なる、各種リ
ン酸カルシウム系セメント組成物の混合粉末を得た。次
いで、かくして得られた、各混合粉末に対して、下記表
3の如き粉液比となるように、0.25ミリモル/lの
リン酸水溶液を、種々の量にて、それぞれ、添加した
後、迅速に練合して、各種セメントスラリーを調製し
た。その後、この得られたセメントスラリーを、それぞ
れ、直径13mmの型に流し込み、生体内と略同一条件
である温度37℃、相対湿度100%にて24時間保持
し、これを硬化せしめて、各種リン酸カルシウム系セメ
ントを得た。
【0037】一方、アスピリン粉末と、50%の合成H
Ap粉末とを混合し、得られた混合粉末に対して、2t
の圧力にて加圧し、それらアスピリンと50%の合成H
Apとからなる、直径13mmの錠剤を成形した。そし
て、かかる錠剤と、上記の如くして、それぞれ、硬化せ
しめたリン酸カルシウム系セメントとを積層して、2層
錠とし、更にそれら2層錠を、各々、表面を覆うよう
に、ワックスで固めると共に、リン酸カルシウム系セメ
ントの表面だけを露出せしめて、アスピリン含有リン酸
カルシウム系薬物徐放体である試料3〜8を得た。
【0038】そして、このようにして得られた試料3〜
8における、それぞれの空隙率を求めた。その結果を、
次の表3に併せて示す。
【0039】
【表3】
【0040】かかる表3からも明らかなように、リン酸
カルシウム系セメント組成物に対して、濃度が0.25
ミリモル/lのリン酸水溶液の添加量が増加せしめられ
るに従って、得られる硬化体の空隙率が増加することが
認められ、これによって、得られる硬化体の空隙率がリ
ン酸水溶液の添加量に依存していることが、示される結
果となっている。
【0041】次に、それら試料3〜8における、それぞ
れの薬物放出速度を調べるために、アスピリンの溶出試
験を行なった。かかる試験の結果をグラフに表したもの
を、図3に示した。なお、この溶出試験は、静止円盤法
を採用して行ない、pH7.4で、温度37℃に保持さ
れた0.1モルリン酸緩衝液50ml中に、試料3〜8
を、それぞれ、浸漬せしめ、かかる溶液中において、マ
グネティックスターラーを200rpm にて回転せしめる
ことにより、該溶液を攪拌して、アスピリンを溶出せし
めた。また、溶出せしめられたアスピリンの採取は、一
定の時間毎に行ない、その都度、溶液の全量を交換し
た。
【0042】かかる図3からも明らかなように、空隙率
の増加に伴って、アスピリンの溶出速度が増加してお
り、これにより、本実施例のアスピリン含有リン酸カル
シウム系薬物徐放体においては、リン酸カルシウム系セ
メント組成物に添加せしめられるリン酸水溶液の添加量
を増減せしめることによって、アスピリンの放出速度
が、容易に制御されることが、示される結果となってい
る。なお、試料3〜8に対して、それぞれ、X線粉末回
折を行なったところ、それらのX線粉末回折図より、生
体親和性に優れたハイドロキシアパタイトへの転移が、
確認された。
【0043】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従うリン酸カルシウム系薬物徐放体にあっては、薬物
を保持する基材として、それぞれ、所定の組成比を有す
るリン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウム若しくは
その二水和物とからなる自己硬化性リン酸カルシウム系
セメント組成物を用いたものであることから、硬化が完
了する前のスラリー若しくは粘土状の状態時に、生体の
硬組織内に充填されることによって、かかる硬組織に即
した形状にて自己硬化せしめられるのであり、それ故、
従来の薬物徐放体の如く、生体硬組織内に埋設するに際
して、埋設される部位に即した形状に、精密に加工する
必要が全くなくなり、そのような加工の手間を、何等要
することなく、複雑な形状の生体硬組織内に、強固に接
合、維持せしめられ得て、より安定的な投薬効果が確保
され得ることとなったのである。
【0044】また、本発明手法によれば、かかるリン酸
カルシウム系セメント組成物を硬化するために添加せし
められるリン酸水溶液の濃度及び添加量を、所定の範囲
内において、適宜、変更するだけで、得られる硬化体の
空隙率を、極めて容易に制御し得るのであり、しかもそ
れによって、かかる硬化体に保持される薬物の放出速度
が、効率的に制御され得、以て、生体内の適用される部
位や疾病の種類等に応じた、より有効な徐放性効果を享
受することのできるリン酸カルシウム系薬物徐放体が、
極めて容易に得られることとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において得られたインドメタシン含有
リン酸カルシウム系薬物徐放体:試料1のX線粉末回折
図である。
【図2】合成ハイドロキシアパタイトのX線粉末回折図
である。
【図3】実施例3において得られた、それぞれ、空隙率
の異なる、各種アスピリン含有リン酸カルシウム系薬物
徐放体における、一定時間毎のアスピリンの溶出量の測
定結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松田 芳久 京都府京都市北区紫野上柳町10

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薬物を保持する基材として、リン酸四カ
    ルシウムとリン酸水素カルシウム若しくはその二水和物
    とを、Ca/Pモル比がハイドロキシアパタイト組成と
    なるように、配合してなる自己硬化性リン酸カルシウム
    系セメント組成物を用いたことを特徴とするリン酸カル
    シウム系薬物徐放体。
  2. 【請求項2】 リン酸四カルシウムとリン酸水素カルシ
    ウム若しくはその二水和物とを、Ca/Pモル比がハイ
    ドロキシアパタイト組成となるように、配合してなる自
    己硬化性リン酸カルシウム系セメント組成物に対して、
    リン酸水溶液を添加して硬化せしめ、薬物徐放体の基材
    を形成するに際し、 かかる添加するリン酸水溶液の濃度を0.1〜0.3ミ
    リモル/lとし、且つその添加量を25〜70重量%と
    して、練合、硬化せしめることによって、得られる硬化
    体の空隙率を20〜60%に制御し、該硬化体に保持さ
    れる薬物の放出速度を制御するようにしたことを特徴と
    するリン酸カルシウム系薬物徐放体の製造方法。
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