JPH06225691A - 包装容器入りホウレンソウおよびその製造方法 - Google Patents

包装容器入りホウレンソウおよびその製造方法

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JPH06225691A
JPH06225691A JP4195493A JP4195493A JPH06225691A JP H06225691 A JPH06225691 A JP H06225691A JP 4195493 A JP4195493 A JP 4195493A JP 4195493 A JP4195493 A JP 4195493A JP H06225691 A JPH06225691 A JP H06225691A
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Masakazu Oku
正和 奥
Masanori Miyazaki
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温による加熱殺菌後においてもホウレンソ
ウが有する緑色を良好に維持する包装容器入りホウレン
ソウおよびその製造方法を提供する。 【構成】 カリウムおよび亜鉛の濃度を標準培養液組成
のそれぞれ2.5〜10倍および1〜70倍とした水耕
液中において水耕栽培したホウレンソウを包装容器に充
填密封した後加熱殺菌する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温殺菌後においても
生のホウレンソウが有する緑色をそのまま維持する包装
容器入りホウレンソウおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ホウレンソウは缶詰にすると、高温殺菌
工程後その緑色が著るしく退色して褐色となるためその
加工利用の範囲は限られていた。缶詰野菜の緑色を保持
する一方法として、特開昭59−120046号公報に
開示された方法がある。この方法は、野菜を、亜鉛また
は銅イオンを含有する水中で約150〜212°Fの温
度でブランチした後常法により缶詰にするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の方法は野菜
の缶詰工程中の加工処理によっていったん失われた緑色
を回復するものであるが、その回復の程度は生の野菜の
緑色を一部とどめる程度であって、生の野菜の緑色には
戻らず、あるいは食品衛生上問題があるなど、消費者の
野菜の色に対する要求を充分満足させるものではない。
【0004】本発明の目的は、高温による加熱殺菌後に
おいても生のホウレンソウが有する緑色をほぼそのまゝ
維持する包装容器入りホウレンソウおよびその製造方法
を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、種々実験と研究を重ねた結果、水耕
液中のカリウムと亜鉛の濃度を標準組成よりも高い一定
範囲の濃度で組合せてホウレンソウを水耕栽培すると、
加熱殺菌処理後のホウレンソウの緑色が極めて良好であ
ることを発見し、本発明に到達した。
【0006】上記目的を達成する本発明の包装容器入り
ホウレンソウは、水耕液中のカリウムの濃度を標準培養
液組成の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度を標準培養液
組成の1〜70倍とした水耕液中において水耕栽培した
ホウレンソウを包装容器に充填密封した後常法により加
熱殺菌してなるものである。
【0007】また上記目的を達成する本発明の包装容器
入りホウレンソウの製造方法は、水耕液中のカリウム濃
度を標準培養液組成の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度
を標準培養液組成の1〜70倍とした水耕液中において
ホウレンソウを水耕栽培し、得られたホウレンソウを包
装容器に充填密封した後常法により加熱殺菌することを
特徴とするものである。
【0008】本発明は、従来の方法のように通常の方法
により育成栽培した野菜を缶詰にする処理工程において
緑色保持のための特殊処理を施すものと異り、ホウレン
ソウの育成栽培の過程において緑色保持のための処理を
施すものであって、収穫されたホウレンソウそのものが
高温殺菌処理によっても緑色を失わない性質を備えてい
ることを特徴とするものである。
【0009】本発明において、水耕栽培は野菜の種類に
応じた公知の水耕栽培法にしたがい常法により行われる
が、本明細書において、標準培養液組成とはホーグラン
ド溶液を若干修正した次の組成を意味する。なお、カッ
コ内は要素源とその濃度である。
【0010】 N 84ppm (NH4 NO3 3mM) P 31ppm (NaH2 PO4 ・2H2 O 1m
M) K 156ppm(K2 SO4 2mM) Ca 160ppm(CaCl2 ・2H2 O 4mM) Mg 48ppm(MgSO4 ・7H2 O 2mM) Fe 3ppm(Fe−EDTA) B 0.5ppm(H3 BO3 ) Mn 0.5ppm(MnCl2 ・4H2 O) Zn 0.05ppm(ZnSO4 ・7H2 O) Cu 0.02ppm(CuSO4 ・5H2 O) Mo 0.01ppm(Na2 MoO4 ・2H2 O) pH 5.8
【0011】本発明は、上記標準培養液組成中のカリウ
ムの濃度を上記濃度の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度
を上記濃度の1〜70倍とした水耕液中でホウレンソウ
を育成栽培するものである。水耕液のカリウムおよび亜
鉛以外の成分の種類および濃度は原則として上記標準培
養液組成のものを使用するが、これに厳密に限定される
ものではなく、カリウムおよび亜鉛以外の成分の種類お
よび濃度を1/3倍から3倍程度変更して使用しても加
熱後のホウレンソウの緑色保持の目的は阻害されないこ
とが実験の結果判明している。したがってカリウムおよ
び亜鉛以外の成分の種類および濃度が上記標準培養液組
成と多少異る水耕液であっても、その変更が緑色保持を
阻害しない程度のものであり、かつカリウムおよび亜鉛
の濃度が本明細書の特許請求の範囲に記載された範囲に
含まれるものは本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】カリウムと亜鉛の濃度は重要であり、これ
らの濃度が上記範囲未満であるか上記範囲を超えると、
いずれの場合も加熱後のホウレンソウの葉色は暗緑色と
なり、良好な緑色を得ることができない。
【0013】本発明はホウレンソウの缶詰のほかレトル
トパウチ等の包装容器入りホウレンソウにも適用するこ
とができる。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、水耕液中のカリウムお
よび亜鉛の濃度を標準培養液組成よりも高い一定範囲の
濃度とした水耕液中においてホウレンソウを水耕栽培す
ることにより、得られたホウレンソウは120℃、4分
の加熱殺菌直後の緑色が極めて良好であり、かつその良
好な緑色は冷蔵庫内貯蔵で実用上充分な期間保持するこ
とができる。
【0015】
【実施例】ホウレンソウの葉についてカリウムおよび亜
鉛を数レベルの濃度で組合せた試験区を設けて水耕栽培
し、加熱後の葉の緑色を観察した。
【0016】1.実験材料および方法 (1)供試材料 品種「オーライ」を供試した。種子をパーライトを詰め
た小型ポリポット(直径6cm、深さ5.5cm)に1
粒づつ播き、発芽後は標準の1/3倍濃度の水耕液で育
苗した。本葉4枚程度になった時に、水耕ポット(1/
2,000aワグナーポット、12L入り)に2株づつ
移植し、20日間程度標準の1/3倍濃度の水耕液で馴
化栽培した後、1か月間下記の水耕液で栽培し、収穫し
て、加熱処理した。
【0017】(2)水耕液 上記標準培養液組成のうち、カリウム(以下Kと表示)
を標準の1/5倍、1倍(標準)、5倍、10倍濃度と
し、それぞれに亜鉛(以下Znと表示)の1倍(標
準)、25倍、50倍濃度を組み合わせて水耕栽培し
た。例えば、K濃度を標準の5倍とZn濃度を標準の5
0倍に組み合わせた場合、以下にK5+Zn50で表
す。この際、他の要素は標準濃度のままである。また、
Mg、K、Zn濃度を組み合わせた処理区も設けた。
【0018】(3)加熱方法 成葉1葉を皺ができないように広げて透明レトルトパウ
チに詰め、バキュームパックした後、レトルト中で12
0℃、4分間蒸気加熱した。
【0019】(4)緑色の測定 加熱後、葉がレトルトパウチにパックされたままの状態
で、色差計によるa値の測定および視覚評価を行った。
視覚評価は5点法で評価し、5点:生葉の緑色、4点:
鮮やかな緑色、3点:比較的良好な緑色で、商品として
の限界の緑色、2点:褐緑色(不良)、1点:褐色(不
良)で表した。
【0020】(5)貯蔵方法 加熱後、冷蔵庫で貯蔵し、4日毎に緑色を測定した。
【0021】2.実験結果 KとZnを組み合わせた水耕液で栽培したホウレンソウ
の加熱直後と冷蔵貯蔵中の緑色について、視覚評価を表
1に、色差計a値を表2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】全般的にみると、Kが低濃度の場合(K1
/5、K1)、Znが高濃度であっても、加熱直後の葉
は暗緑色を呈し、視覚評価は低かった。一方、K5倍ま
たはK10倍にZn25倍またはZn50倍を組合せた
区の緑色は良好で、加熱直後の視覚評価は3となった。
特に、K5+Zn50区は加熱直後の良好な緑色が冷蔵
8日間保持された。その他に、K5+Zn25区、K1
0+Zn1区、K10+Zn25区、K10+Zn50
区も加熱直後の緑色は良好で、その良好さは冷蔵4日間
保持された。ただし、ホウレンソウは冷蔵保存期間は短
く、K5+Zn50区の葉でも冷蔵16日後にはオリー
ブ色に変わった。K2.5+Zn50区は加熱直後は良
好であった。
【0025】なお、以前の実験から、K5倍とZn10
0倍の組合せ、K10倍とZn100倍の組合せでは加
熱後の葉は暗緑色となり、良好な緑色を得ることができ
なかった。全般的にみて、Znが70倍を越えるとホウ
レンソウは本来の生育をせず、収量が半減する。
【0026】色差計a値は、Kが低濃度の場合、Zn濃
度が高くなると−a値が大きくなったが(緑色が多いこ
とを示す)、Kが標準濃度以上の場合は−a値は高くな
るものの、Zn濃度の影響は見られなくなった。このこ
とから、一般的には、KもZnも加熱後の葉の−a値を
高め、緑色を保持する作用があると推察された。ところ
で、視覚評価の低いK1/5+Zn50区やK1+Zn
25区、K1+Zn50区の−a値は、視覚評価の高い
K5+Zn50区に比べて、大きく、より緑色を呈する
はずであり、視覚評価とa値の間に矛盾が生じている。
この要因として、測定上の問題もあり得るが、視覚評価
の低い区の葉が呈する暗緑色が影響したと考えられる。
緑色は残存するものの暗緑色のため視覚評価の評価点が
下がったものと考えられる。
【0027】また、マグネシウム(以下Mgと表示)は
クロロフィルの構成成分であることから、Mgを多量施
把すれば緑色保持に効果があるのではないかと考えられ
た。そこでMgとK、Znを組み合わせた水耕液でホウ
レンソウを栽培し、加熱後の緑色を調べた。その結果を
参考例として表3(視覚評価)と表4(色差計a値)に
示す。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】上記MgとK、Znを組合せた実験では、
Mg高濃度の有効性は認められなかった。むしろ逆に、
Mg高濃度によりホウレンソウのpHは若干低下し、−
a値も小さくなった。これは、おそらく、MgとKとの
拮抗作用によるもので、高濃度のMgが根によるKの吸
収を抑制し、その結果、Kの緑色保持作用が抑制された
と思われる。
【0031】以上の実験の結果、水耕液のKを標準培養
液組成の2.5〜10倍濃度とし、Znを標準培養液組
成の1〜70倍濃度でホウレンソウを栽培すれば、ホウ
レンソウの加熱後の緑色を保持することが可能であるこ
とが判った。また加熱後の緑色を特に良好に保つために
は、Kを標準の5〜10倍濃度、Znを標準の25〜5
0倍濃度に栽培することが望ましいことも判った。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水耕液中のカリウムの濃度を標準培養液
    組成の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度を標準培養液組
    成の1〜70倍とした水耕液中において水耕栽培したホ
    ウレンソウを包装容器に充填密封した後常法により加熱
    殺菌してなる包装容器入りホウレンソウ。
  2. 【請求項2】 水耕液中のカリウム濃度を標準培養液組
    成の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度を標準培養液組成
    の1〜70倍とした水耕液中においてホウレンソウを水
    耕栽培し、得られたホウレンソウを包装容器に充填密封
    した後常法により加熱殺菌する包装容器入りホウレンソ
    ウの製造方法。
  3. 【請求項3】 水耕液中のカリウム濃度を標準培養液組
    成の2.5〜10倍とし、亜鉛の濃度を標準培養液組成
    の1〜70倍とした水耕液中において水耕栽培したホウ
    レンソウ。
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