JPH06220597A - モリブデン又はモリブデン合金冷延板の製造方法 - Google Patents

モリブデン又はモリブデン合金冷延板の製造方法

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JPH06220597A
JPH06220597A JP14886192A JP14886192A JPH06220597A JP H06220597 A JPH06220597 A JP H06220597A JP 14886192 A JP14886192 A JP 14886192A JP 14886192 A JP14886192 A JP 14886192A JP H06220597 A JPH06220597 A JP H06220597A
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molybdenum
cold
ingot
molybdenum alloy
rolled sheet
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Yasushi Umemoto
靖 梅本
Fumiyuki Shimizu
史幸 清水
Seiichi Suzuki
誠一 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶接性や成形性等の加工性,表面性状に優れ
ると共に、高温・高真空下で使用しても不純物ガスを発
生することのないモリブデン又はモリブデン合金冷延板
を歩留良く工業的規模で安定生産できる手段を確立す
る。 【構成】 モリブデン又はモリブデン合金鋳造インゴッ
ト(鋳造方向とは垂直の断面における平均結晶粒径が3
0mm以下のものが好ましい)を用い、これをシ−ス材で
キャニングして鍛造した後、該鍛造材を圧下率30%以
上で冷間圧延(クロス圧延が好ましい)するか、或い
は、この冷間圧延の後、得られた冷延板に800〜12
00℃で 0.5〜4時間の真空熱処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、加工性(塑性加工
性,溶接性等)が良好な上に高温・高真空下で使用する
場合にも不純物ガスを殆ど発生することのないモリブデ
ン又はモリブデン合金冷延板の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来技術とその課題】モリブデンは比較的古くから工
業的生産がなされてきた高融点金属の1つであり、これ
まで耐熱材料,真空管材料,電気抵抗体等としての貴重
な用途を担ってきた。特に、高温でのモリブデン及びモ
リブデン合金の強度は実用金属材料中でも群を抜いてお
り、1000℃前後で信頼できる唯一の耐熱材料として
航空宇宙機器関連部材等への適用を目指した研究は膨大
な数に上っている。
【0003】ところが、モリブデンは融点が2600℃
を超える高い値であることに加えて酸化物の蒸気圧が著
しく低いという物性を有しているため、通常の金属に適
用される手段では所要の板材等を生産することが困難
で、モリブデン又はモリブデン合金から成る金属部材の
製造には格別な手立てを必要としていた。
【0004】即ち、モリブデン又はモリブデン合金から
成る金属部材の工業的な生産手段としてこれまで採用さ
れてきたのは、「モリブデン又はモリブデン合金のパウ
ダ−を加圧成型した後、 これを焼結してインゴットと
し、 このインゴットに鍛造,圧延等の塑性加工を施して
所要形状に仕上げる」という粉末冶金の手法である。
【0005】しかしながら、このようにして製造された
モリブデン又はモリブデン合金材に対して、最近、「高
温・高真空下で使用すると、 使用中に該部材から不純物
ガスが放出されて設備性能に悪影響を及ぼす」との問題
が指摘されるようになってきた。これは、パウダ−原料
を焼結して作成した“焼結インゴット”の場合には不純
物(特にO,N,C,S,H等のガス成分)の混入が多
いという現象に起因したもので、前記不純物が加工後の
製品部材にまで持ち来たされて上記不都合を招くものと
考えられる。しかも、前記方法にて製造されたモリブデ
ン又はモリブデン合金材は溶融するとガスが発生しがち
であるため、部部的な溶融を伴う溶接の際にブロ−ホ−
ルが出やすく、溶接性が悪いという問題も有していた。
【0006】一方、これらの問題とは別に、モリブデン
又はモリブデン合金材の製造には次のような不都合を余
儀無くされていた。つまり、モリブデン又はモリブデン
合金材(インゴット等)は大気中では非常に活性であ
り、特に高温に加熱すると大気中の酸素や窒素等のガス
成分と激しく反応して表面及び表面近傍が汚染されてし
まう。そして、このようにガス成分に汚染されたモリブ
デン又はモリブデン合金材は加工性に乏しく、鍛造や圧
延等の加工を行った場合には低い加工度でも割れ等の欠
陥を生じることが多かった。また、無事に加工を終えた
場合でも汚染された表面層を相当量除去しなければなら
ず、従ってこの点での加工歩留低下も大きかった。
【0007】もっとも、前記ガス成分の汚染がない雰囲
気中(例えば真空中やアルゴンガス中)において加工を
行うことは可能であるが、この場合には高価な装置・設
備を必要とし、またバッチ式の作業とせざるを得ないた
めに生産効率も非常に悪くなり、そのため特に低廉・多
量供給の要望が強くなってきた板材等の量産手段として
満足できるものとは言えなかった。
【0008】このようなことから、本発明が目的とした
のは、溶接性や成形性等の加工性,表面性状に優れると
共に、高温・高真空下で使用しても不純物ガスを発生す
ることのないモリブデン又はモリブデン合金冷延板を歩
留良く工業的規模で安定生産し得る手段を確立すること
であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は上
記目的を達成すべく様々な観点に立って鋭意研究を重ね
たところ、以下に示すような新しい知見を得ることがで
きた。
【0010】a) モリブデン又はモリブデン合金板を製
造するための素材として、モリブデン又はモリブデン合
金を電子ビ−ム溶解法,真空ア−ク溶解法或いは電子ビ
−ムコ−ルドハ−スリメルト法等により溶解・鋳造した
“鋳造インゴット”を用い、これを不純物ガス汚染の少
ない状態(環境)下で熱間加工した場合には、高温・高
真空下での発生ガス量が非常に少なく、溶接性にも優れ
た部材を得ることが可能となる。
【0011】b) また、モリブデン又はモリブデン合金
製の鋳造インゴットに熱間鍛造を施す際、この鋳造イン
ゴットに対して、従来は粉末材等の成型加工に用いられ
ていた“キャニング”を特に適用し、別材で鋳造インゴ
ットの全面をシ−ルしてから鍛造を実施すると、大気中
においてもガス成分による汚染の懸念なく鍛練が行われ
るようになると同時に、欠陥(割れ等)発生が極力抑え
られて健全な鍛造を安定して実施できるようになる。
【0012】c) 更に、加工素材たる“鋳造インゴッ
ト”として、「電子ビ−ムコ−ルドハ−スリメルト法に
て溶解された溶湯の鋳造時に、 (1) 振動を加える, (2)
結晶核となる物質を加える,(3) モ−ルドから引き抜か
れる凝固材を二次冷却する,或いはこれらの手段を組合
わせてして結晶粒成長の抑制を図る方法」等により結晶
粒径(鋳造方向とは垂直の断面における平均結晶粒径)
が“30mm以下(特に好ましくは10mm以下)”に抑え
られたモリブデン又はモリブデン合金鋳造インゴットを
用いた場合には、その加工が一層容易となる上、高温・
高真空下使用時の発生ガス量,加工性(成形加工性,溶
接性)等の面でより優れた部材が得られるようになる。
【0013】d) なお、キャニングしたモリブデン又は
モリブデン合金の鋳造インゴットを鍛造した場合には、
得られる鍛造材は健全な組織及び高変形能を有したもの
となり、この鍛造材に対してはそのまま冷間圧延が可能
となるため、これを素材とすれば表面性状の良好な所望
寸法のモリブデン又はモリブデン合金冷延板を工業的規
模で生産性良く量産することが可能となる。
【0014】e) しかも、上述の工程で得られた冷延板
に特定条件の熱処理を施すと安定な焼鈍組織となって歪
等が除去され、材料特性の安定性が一層向上する。
【0015】本発明は、上記知見事項等に基づいて完成
されたものであり、「モリブデン又はモリブデン合金鋳
造インゴット(鋳造方向と垂直の断面における平均結晶
粒径が30mm以下のものが好ましい)を用い、 これをシ
−ス材でキャニングして鍛造した後、 該鍛造材を圧下率
30%以上で冷間圧延(クロス圧延が好ましい)する
か、 或いは、 この冷間圧延の後、 得られた冷延板に80
0〜1200℃で 0.5〜4時間の真空熱処理を施すこと
によって、 高温・高真空下での発生ガス量が少なく、 加
工性(成形加工性,溶接性)等にも優れたモリブデン又
はモリブデン合金冷延板を安定かつ低コストにて量産で
きるようにした点」に大きな特徴を有している。
【0016】なお、本発明において使用するモリブデン
又はモリブデン合金鋳造インゴットは、例えば次に示す
何れの手段にても得ることができる。 i) モリブデン又はモリブデン合金のバ−ジン材又はス
クラップ材を圧縮成形するか、或いはこれらの原料をこ
れと同じ材質からなる箱又は管に詰めて溶解電極を形成
し、該電極を電子ビ−ム溶解或いは真空ア−ク溶解して
インゴットとする“電子ビ−ム溶解法”又は“真空ア−
ク溶解法”。 ii) 電子ビ−ム溶解した原料溶湯を一旦水冷式のコ−ル
ドハ−ス内に保持して不純物を真空環境へ逸散させ、こ
れをモ−ルド内へオ−バ−フロ−させて連続的に凝固さ
せつつインゴットとして下方から引き抜く“電子ビ−ム
コ−ルドハ−スリメルト法”。
【0017】このように、粉末冶金法によるのではなく
溶解・鋳造したモリブデン又はモリブデン合金を素材と
した場合には、ガス成分を主とした揮発し易い不純物の
含有量が少ないので、加工性が良好な上に、溶接のため
に部分溶解したときや最終製品を高温・真空下で使用し
たときでもガスの発生が殆どなく、溶接欠陥や環境の汚
染を生じる恐れが極めて少なくなる。
【0018】しかし、望ましくは“電子ビ−ムコ−ルド
ハ−スリメルト法”で得られた不純物含有量がより少な
いインゴットを使用するのが良く、それによって本発明
の効果は一層顕著化する。なぜなら、“電子ビ−ム溶解
法”或いは“真空ア−ク溶解法”で得られたモリブデン
又はモリブデン合金インゴットは結晶粒界が多少脆弱で
ある上、1回の溶解操作では不純物の低減が“電子ビ−
ムコ−ルドハ−スリメルト法”の場合ほど十分でないか
らである。
【0019】そして、更に推奨されるのは、平均結晶粒
径(鋳造方向とは垂直の断面における平均結晶粒径)が
30mm以下、特に好ましくは10mm以下に抑えられた高
純度インゴットの使用である。モリブデン又はモリブデ
ン合金鋳造インゴットの平均結晶粒径が30mm以下にな
ると、結晶粒の微細化によって粒界の総面積が著しく増
大するので結晶粒界におけるガス成分等の偏析が小さく
なり、結晶粒界における粒界面積当りの不純物偏析量は
極めて少ない値となる。なお、この傾向は、前記平均結
晶粒径が10mm以下になると特に顕著となる。そして、
これが著しい加工性の向上に結び付いて鍛造や圧延等の
加工が一段と容易化する。また、最終製品中に存在する
不純物ガス量も少なくなるため、それを高温・真空中で
使用した時にもガスを殆ど発生しない。
【0020】ただ、このような微細結晶インゴットは、
既知の“電子ビ−ムコ−ルドハ−スリメルト法”をその
まま適用したとしても安定に得ることはできない。前記
インゴットは、モリブデン又はモリブデン合金材を電子
ビ−ムコ−ルドハ−スリメルト法にて溶製すると共に、
その際、(1) モ−ルド内の溶湯プ−ルに振動を加える,
(2) 溶湯プ−ルにモリブデン又はモリブデン合金の粒を
添加する,(3) モ−ルドから引き抜かれる凝固材を二次
冷却して冷却を促進する,(4) 上記手段を適宜組合わせ
る,等の手立てを講じて結晶粒の“微細化促進”及び
“成長・粗大化の防止”を図ることによって得ることが
できる。勿論、インゴットの結晶粒径は小さいほど好ま
しい。
【0021】モリブデン又はモリブデン合金鋳造インゴ
ットのキャニングは、加熱・鍛造中の表面汚染による割
れ等の欠陥を防止し、かつ鍛造を通じ静水圧効果による
3軸圧縮加工を可能にして変形能が改善された組織を実
現するために行われる。そして、この加工に有利な組織
を有したモリブデン又はモリブデン合金では、比較的容
易に冷間圧延を行うことができる。
【0022】なお、従来より粉末材等の成型加工に用い
られてきたキャニングを、特にモリブデン又はモリブデ
ン合金鋳造インゴットに適用して鍛造した場合の主な作
用効果をまとめると、次のようになる。
【0023】(A) 大気中においてもガス成分による汚染
を懸念することなく鍛造を行えるようになる。 (B) 比較的強度が高くて厚肉のキャニング材を用いる
と、1軸方向の圧縮荷重のみではなく3軸方向の圧縮荷
重を被加工材(鋳造インゴット)に効果的に負荷できる
静水圧効果も加わって、鍛造時における欠陥(割れ等)
発生が効果的に抑えられる(モリブデン又はモリブデン
合金のような難加工性材料に対して前記の如き静水圧効
果は特に有効である)。
【0024】(C) 更に、高温に加熱した被加工材をハン
マ−又はプレス等の如き鍛造装置で加工する場合には、
冷えた金敷等の工具で支持して圧縮荷重を被加工材に負
荷するため被加工材の熱が工具に奪われ、被加工材の表
面温度が低下して欠陥発生の原因となるが、キャニング
を施しておくことでこのような温度低下も効果的に防止
され健全な加工を行うことが可能になる。なお、高温加
工中の温度低下を防止し、一定温度でしかも歪速度(加
工速度)を低く保ちつつ加工を行う方法として“恒温鍛
造法”が知られているが、この恒温鍛造法ではやはり高
価な装置を必要とする上、品質面からは好ましい加工法
ではあるが歪速度を低く保たなければならないことから
生産能率面で実際的な方法とは言えない。
【0025】(D) つまり、上述した 「ガス成分の汚染防
止」, 「静水圧効果による3軸圧縮」及び 「表面温度の低
下防止」 の3つの効果を醸し出す“キャニング法”の採
用により、モリブデン又はモリブデン合金鋳造インゴッ
トを工業的に極めて有利な手段で冷延板へ容易に加工す
ることが可能になる。
【0026】キャニングは、例えば図1で示すように、
円柱状の被加工材たるモリブデン又はモリブデン合金イ
ンゴット1を被覆するため、市販の耐熱鋼(SUS31
6,SUS310等)製のチュ−ブを適当な長さに切断
したシ−ス2とその両端面を被覆する2枚の円板3(シ
−スと同材質が好ましい)とを用いて行えば良い。な
お、円筒状のシ−ス2と円板3とはTIG等の適当な溶
接方法で接合・密封される。図1における符号4は、こ
の溶接部を示す。
【0027】シ−ス2内径とモリブデン又はモリブデン
合金インゴット1との隙間(クリアランス)は小さいほ
ど良いが、このクリアランスが大きい場合でも残留する
ガス成分を除去するための脱気処理を行う必要はない。
ただ、クリアランスの容積が5%を超えると、モリブデ
ン又はモリブデン合金インゴット1の表面と接触するガ
ス成分量が多くなる結果となり、そのため加熱,鍛造が
終了した後に余分な皮剥きを必要とするので加工歩留が
低下することになる。
【0028】キャニング後の被加工材においてシ−ス材
が占める断面積は全体の10〜40%が適切であり、材
質に応じてこの範囲でシ−スの肉厚を調整するのが良
い。即ち、シ−ス断面積が10%未満であると、前述し
たキャニングの3つの効果のうち「静水圧効果による3
軸圧縮」及び「表面温度の低下防止」が十分でなく、一
方、シ−ス断面積が40%を超えると溶接等による接合
が困難となる上、キャニング材質によっては材料代が嵩
むことになる。
【0029】なお、シ−スの寸法及び材質は鍛造前の加
熱温度やインゴットの材質により決定されるが、静水圧
効果をより期待する場合には肉厚は厚い方が良く、材質
は被加工材であるモリブデン又はモリブデン合金インゴ
ットの変形抵抗に近い特性を持つものが望ましい。一般
的には、先に例示した市販の316ステンレス鋼や31
0ステンレス鋼といった耐熱鋼がキャニング材として望
ましいが、より安価な炭素鋼でも厚肉とすることでキャ
ニング材として用いることができる。
【0030】以上のキャニングを行ったモリブデン又は
モリブデン合金鋳造インゴットは、既に述べたように大
気中でも容易に熱間鍛造することが可能となり、これに
より健全な組織及び変形能を持った鍛造材を容易に得る
ことができる。鍛造に際し、インゴットの加熱温度は5
00〜1200℃、そして加熱保持時間は 0.5〜4時間
の範囲とするのが適当である。即ち、加熱温度が500
℃未満ではモリブデン又はモリブデン合金の変形能が不
足し、所定の寸法を得るための鍛造回数が増えるために
好ましくなく、一方、加熱温度が1200℃を超えると
キャニング材(例えば耐熱鋼)が軟化し過ぎたり表面酸
化を起こしたりし、キャニング材としての役割を維持で
きなくなる恐れがある。また、加熱保持時間は被加熱材
の寸法及び重量で決まるが、それが 0.5時間を下回ると
中心部まで均熱されることがなく、逆に4時間を超える
とキャニング材の表面酸化が著しくなるため好ましくな
い。実際には、初期加熱では1時間以上程度の加熱とす
ることが望ましく、鍛造途中の再加熱の場合には 0.5時
間程度でも構わない。
【0031】上述した如く、このような処理によって得
られた鍛造材は良好な変形能を有していてそのまま(勿
論、 キャニング材やスケ−ル層を除去するための皮剥き
や切削加工は必要)冷間圧延に供することが可能で、比
較的容易に優れた特性(成形性,溶接性,低ガス放出
性)を持ったモリブデン又はモリブデン合金冷延板にま
で加工することができる。
【0032】ただ、鍛造後にキャニング材やスケ−ル層
を除去してから実施される冷間圧延は、圧下率(加工
率)30%以上の条件で行う必要がある。なぜなら、圧
下率が30%未満であると均一な断面組織を得ることが
困難な上に、美麗な冷間加工肌とすることができないか
らである。なお、冷間圧延に供する鍛造後の材料には、
必要に応じて歪取り熱処理(真空熱処理)を施しても良
い。
【0033】また、冷間圧延において、圧延方向を途中
で変更しクロスさせて圧延することにより、面内異方性
の小さな組織及び機械的特性を持ったモリブデン又はモ
リブデン合金板を得ることができる。このような面内異
方性の小さい板は、張り出し加工や深絞り加工等の塑性
加工に有利である。
【0034】冷間圧延を施して得られたモリブデン又は
モリブデン合金板は、更に800〜1200℃で 0.5〜
4時間の真空熱処理を行うことでより安定な組織の焼鈍
材とすることができる。この場合、800℃未満の加熱
温度では加工歪の除去が不十分であり、溶接等の加熱で
変形することがある。また、1200℃を超える加熱温
度では、結晶粒が成長粗大化して脆化を引き起こすこと
がある。加熱時間については、 0.5時間よりも短いと歪
の除去が不十分となり易く、一方、4時間を超える長時
間加熱では結晶粒の粗大化を起こすことがあるため、加
熱温度と相関した加熱時間が選ばれる。なお、上記真空
熱処理は10-4torr以上の真空度で実施するのが良い。つ
まり、真空度が10-4torrよりも低いとガス汚染(O,N
との反応)により表面が着色するきらいがある。
【0035】続いて、本発明を実施例により更に具体的
に説明する。
【実施例】まず、電子ビ−ムコ−ルドハ−スリメルト法
を適用した溶解・鋳造により、何れも鋳造方向と垂直の
断面における平均結晶粒径が10mm以下で、直径が12
0mmの“純モリブデンインゴット”及び“TZM(Mo−
Zr−Ti合金)インゴット”を製造した。
【0036】なお、“純モリブデンインゴット”及び
“TZMインゴット”の化学分析値は次の通りであっ
た。純モリブデンインゴット Al:0.0003wt%,Fe: 0.001wt%,Ti:0.01wt%以下,
W:0.02wt%,O:4ppm, N:1ppm以下,C:25ppm
,S:1ppm以下,H:1ppm以下,Mo: 99.95wt%以
上。TZMインゴット Al:0.0004wt%,Fe: 0.002wt%,Ti:0.48wt%,Zr:
0.08wt%,W:0.01wt%以下,O:5ppm, N:1ppm以
下,C:30ppm ,S:1ppm以下,H:1ppm以下,Mo:ba
l.。
【0037】次に、これら純モリブデン及びモリブデン
合金インゴットを、SUS316鋼製のチュ−ブ(肉厚
20mm)と厚さ30mmの円板とを使用して図1で示す如
くにキャニングした後(キャニング材は外径D:150
mm,長さL:450mm)、これらを1200℃に加熱し
加工率90%で熱間鍛造し、厚さ15mmのスラブを作成
した。なお、この高い加工率の熱間鍛造を施しても、両
インゴットに割れが発生することはなかった。
【0038】続いて、得られた上記鍛造スラブを皮剥き
(切削加工)してキャニング材とスケ−ル層を除いた
後、圧下率80%で冷間圧延したところ、エッジ等の割
れを発生することなく3mm厚の冷延板を得ることができ
た。なお、図2には、代表例として、得られた純モリブ
デン冷延板の断面組織写真図を示したが、この図2から
も明らかなように、板厚全体にわたって均一な冷間加工
組織となっていることが分かる。
【0039】そして、これらの各冷延板を真空中で高温
加熱してガス発生状況を調査したところ、何れも高真空
装置用耐熱内装材として十分に満足できるほどガス発生
量の少ないことが確認された。更に、成形試験によって
も、比較的良好な成形性を示すことが分かった。
【0040】また、図3は、上記 0.3mm厚の冷延板に1
200℃で1hrの真空熱処理を施した後の断面組織写真
図を示しているが、真空熱処理によって均一な再結晶組
織となっていることが確認できる。
【0041】ところで、図4及び図5は、それぞれ従来
の純モリブデン焼結材の圧延板と上記本発明法に従って
製造された純モリブデン冷延板について溶接性を比較し
たものであるが、焼結材圧延板の電子ビ−ム溶接部には
図4に示すようなガスホ−ル(ピンホ−ル)や割れが発
生したのに対して、図5に示されるように、本発明に従
って得られた冷延板では極めて健全な溶接部を得られる
ことが確認できる。
【0042】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、加工性(成形加工性や溶接性等)に優れ、しかも高
温・高真空下で使用した場合にも不純物ガスを殆ど発生
することのないモリブデン又はモリブデン合金冷延板を
コスト安く量産することができ、航空宇宙機器部材,電
子管部材,電気抵抗体部材,原子炉部材,耐食性機器部
材等に適用してその性能を一段と向上させることが可能
となるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インゴットのキャニング手法例を説明した概念
図である。
【図2】本発明法に従って得られたモリブデン冷延板の
断面組織写真図である。
【図3】本発明法に従って冷間圧延され真空熱処理され
たモリブデン冷延板の断面組織写真図である。
【図4】従来のモリブデン焼結材から得た圧延板の電子
ビ−ム溶接部に関する断面組織写真図である。
【図5】本発明法に従って製造されたモリブデン冷延板
の電子ビ−ム溶接部に関する断面組織写真図である。
【符号の説明】
1 モリブデン又はモリブデン合金インゴット 2 シ−ス(円筒状) 3 円板 4 溶接部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】本発明法に従って得られたモリブデン冷延板の
断面に係る金属組織写真図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】本発明法に従って冷間圧延され真空熱処理され
たモリブデン冷延板の断面に係る金属組織写真図であ
る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】従来のモリブデン焼結材から得た圧延板の電子
ビ−ム溶接部に関する断面の金属組織写真図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】本発明法に従って製造されたモリブデン冷延板
の電子ビ−ム溶接部に関する断面の金属組織写真図であ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モリブデン又はモリブデン合金の鋳造イ
    ンゴットを用い、これをシ−ス材でキャニングして鍛造
    した後、該鍛造材を圧下率30%以上で冷間圧延するこ
    とを特徴とする、モリブデン又はモリブデン合金冷延板
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 平均結晶粒径が30mm以下のモリブデン
    又はモリブデン合金の鋳造インゴットを用い、これをシ
    −ス材でキャニングして鍛造した後、該鍛造材を圧下率
    30%以上で冷間圧延することを特徴とする、モリブデ
    ン又はモリブデン合金冷延板の製造方法。
  3. 【請求項3】 冷間圧延としてクロス圧延を施すことを
    特徴とする、請求項1又は2に記載のモリブデン又はモ
    リブデン合金冷延板の製造方法。
  4. 【請求項4】 冷間圧延を終了した後、得られた冷延板
    に800〜1200℃で 0.5〜4時間の真空熱処理を施
    すことを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の
    モリブデン又はモリブデン合金冷延板の製造方法。
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