JPH06205843A - レート応答型ペースメーカ - Google Patents

レート応答型ペースメーカ

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JPH06205843A
JPH06205843A JP33945692A JP33945692A JPH06205843A JP H06205843 A JPH06205843 A JP H06205843A JP 33945692 A JP33945692 A JP 33945692A JP 33945692 A JP33945692 A JP 33945692A JP H06205843 A JPH06205843 A JP H06205843A
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JP
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learning
rate
input
rate control
signal
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JP33945692A
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English (en)
Inventor
Norihito Kashiwagi
法仁 柏木
Toshikazu En
敏和 鳶
Hiroshi Nakajima
中島  博
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Dai Dan Co Ltd
Original Assignee
Dai Dan Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 実際には非線形的な応答特性を示す身体的活
動と心拍応答との関係を実体に則して精度良く表現し、
且つ、制御パラメータの自動的な調整を可能とするレー
ト制御アルゴリズムを用いてレート制御を行い、医師の
プログラミングが軽減され、しかも実体に則して個人差
を反映したレート制御が可能な心臓ペースメーカを得る
ことにある。 【構成】 身体的活動と心拍応答との非線形的な関係を
同定し、患者の生理的需要に対して心臓のペースメーカ
が適切な調整レートを出力するためのレート制御規則を
学習により自律的に獲得する特徴を有するニューラルネ
ットワークの手法を適用する。これにより、現実の生体
に於ける身体的活動に相応した心拍応答特性を持つレー
ト制御アルゴリズムが利用可能となることが明らかであ
ると共に、心臓ペースメーカの制御パラメータの調整が
自動的に行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、患者の身体的活動に
伴って変化する生理的パラメータを検出してニューラル
ネットワーク手法による制御アルゴリズムを用いて植え
込み可能なマイクロプロセッサによりレートを制御する
レート応答型心臓ペースメーカに関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在の心臓ペースメーカのレート制御方
式は、特開昭62−292171号公報、特開昭63−
11174号公報等の明細書記載の如く、患者の身体の
身体的活動に伴う体動(振動)や呼吸パラメータ(呼吸
数、換気量)から心拍数を決定する方式が主流となって
いる。この形式の心臓ペースメーカは、レートの応答型
ペースメーカと呼ばれている。
【0003】この従来の応答型ペースメーカは、マイク
ロプロセッサを利用してプログラミングにより、身体的
活動による生理的需要に応じて要求されるレートを、検
出された生理的パラメータの関数として自動的に変更す
るものである。
【0004】また、特表平3−503502号公報に記
載の「自動調節レート応答しきい値を有するマイクロプ
ロセッサ制御レート応答形ペースメーカ」は、種々の異
なるセンサからのセンサ出力を自動調節可能なレート応
答しきい値でセンサモードが選択してプログラム可能な
ペースメーカに変換することができるものである。
【0005】身体的活動(体動)による生理的需要を知
る手掛かりとなる検出可能な生理的パラメータには、身
体活動度、呼吸数、QT間隔、中心静脈温度、静脈血酸
素飽和度、分時換気量等がある。
【0006】これ等の生理的パラメータの変化を総合的
に分析して、最適な調整レートを出力する心臓ペースメ
ーカほど、理想的な装置であるといえる。
【0007】しかし現実には、生理的パラメータの検出
技術の相違や生体への実装上の問題などから、全てのパ
ラメータ検出を総合的に分析し網羅した心臓ペースメー
カは、現時点の技術水準に於いて当分の間は実現不可能
である。
【0008】そのため、一つ或いは二つの非生理的或い
は生理的パラメータを検出して、レート制御アルゴリズ
ムに基づいて、心臓ペースメーカに内蔵されたマイクロ
プロセッサを用いてレート制御を実施する方式が採られ
ている。
【0009】この方式では、信号入力部には非生理セン
サとして圧電素子等のアクセラメータと呼ばれるセンサ
が、生理センサとしてはサーミスタ(血液温)等が用い
られるが、必ずしも特別なセンサを必要とせず、例えば
刺激電極より連続測定された心内心電図、胸郭の一部を
回路に用いた胸郭インピダンス等も制御パラメータとし
て入力される。圧電素子に代表される体動センサでは、
身体的活動によって心臓ペースメーカに加わる加速度の
強度と頻度を感知し、生じた機械的な変位を電気信号に
変換して、信号処理部に伝達している。
【0010】信号処理部に搭載されているマイクロプロ
セッサによるレート制御アルゴリズムは、生体に於ける
身体的活動と心拍数の間の関係を線形であると仮定して
構築されており、検出された身体活動度を身体活動−心
拍応答曲線に照合することにより、適切なレートを導出
している。
【0011】そして、信号出力部では、信号処理部で設
定されたレート値に相当する整調パルスを発生させ、こ
れを心臓に伝達する。しかし実験によって、走行状態か
ら歩行、安静状態への移行のような漸減負荷或いは反復
負荷を身体活動時の運動負荷として与えた場合に、心臓
ペースメーカが健常者で観察される心拍変化と同様の整
調レートを出力することができない事実が明らかにされ
ている。
【0012】従って、身体的活動と心拍数との間の関係
は、線形的なものではなく非線形的な応答特性を持って
いる。そのため身体活動時には、患者に不快感や不安感
を与えるという欠点がある。
【0013】また、従来の心臓ペースメーカは、全て身
体活動度−心拍応答曲線に基づいてプログラミングされ
てレート値を算出し制御しているが、このプログラミン
グによるレート値算出は心臓ペースメーカの制御パラメ
ータを操作して決定される。
【0014】従ってプログラミング時には、医師の制御
パラメータの調整が不可欠であり、患者の年齢や性別を
考慮したり運動負荷試験を実施して、患者の身体的特性
を把握した後に、最適な制御パラメータを医師が決定し
なければならないという欠点がある。
【0015】更に、従来の心臓ペースメーカは、レート
制御系の制御パラメータの調整が自動化されておらず、
個々の患者に適した制御パラメータの設定は、試行錯誤
や医師の経験と勘に頼らざるを得ないという欠点があ
る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上述した
従来の発明の欠点を解決するため、実際には非線形的な
応答特性を示す身体的活動と心拍応答との関係を実体に
則して精度良く表現し、且つ、制御パラメータの自動的
な調整を可能とするレート制御アルゴリズムを用いてレ
ート制御を行い、医師のプログラミングが軽減され、し
かも実体に則して個人差を反映したレート制御が可能な
心臓ペースメーカを得ることを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の従来の心臓ペース
メーカの欠点を解決するために、身体的活動と心拍応答
との非線形的な関係を同定し、患者の血液需要に対して
心臓のペースメーカが適切な調整レートを出力するため
のレート制御規則を学習により自律的に獲得する特徴を
有するニューラルネットワークの手法を適用する。
【0018】
【作用】この発明の心臓ペースメーカは、ニューラルネ
ットワークを用いて入力信号を学習則に基づいて学習し
た結果から逐次出力信号として最適なレートを出力する
ので、現実の生体に於ける身体的活動に相応した心拍応
答特性を持つレート制御アルゴリズムが利用可能となる
ことが明らかであると共に、心臓ペースメーカの制御パ
ラメータの調整が自動的に行われるため、医師の手によ
るプログラミング作業が軽減される。
【0019】ニューラルネットワークモデルは、神経回
路網といわれる人工知能としての工学モデルである。生
理学からの知見では、神経細胞は樹状突起にあるシナプ
スという結合部から信号を受信し、細胞体で処理した信
号を軸索に出力するという多入力−出力の構造となって
いる。
【0020】工学モデルであるニューラルネットワーク
モデルとしてこの入出力過程を定式化するのは簡単で、
例えば、他の神経細胞からの出力信号をシナプス荷重値
で重み付き加算し、その総和を単調増加型関数によって
非線形しきい値処理を行なった後、出力する方法が一般
的である。
【0021】
【実施例】以下に、ニューラルネットワークモデルのi
番目の神経細胞の入出力特性を示す。
【0022】
【数1】
【0023】ここで、Wi はシナプス結合に対応する結
合強度を示す荷重ベクトル、Xは樹神経位置信号である
入力ベクトル、θi はしきい値、Pi は膜電位、Zi
出力値、fは例えばシグモイド関数である。尚、fは線
形関数とすることも可能である。
【0024】ネットワークモデルの動作や形状を大きく
特徴付ける要素には、上式で表したような神経細胞の応
答性や神経細胞の組合せ方法、神経細胞の荷重の更新規
則などがある。工学的な応用研究の立場からは、これ等
の要素に関する研究が盛んに行なわれており、認識や記
憶のような生体の高次機能の解明と実現を目指してい
る。これまで提案されたネットワークモデルは、パーセ
プトロン、ホップフィールドモデルを始めとして数多く
ある。
【0025】〔実施例1〕本発明の実施例1で適用した
ネットワークモデルの基礎モデルとなっているのは、自
己組織化特徴マップモデルで、その学習アルゴリズムは
学習ベクトル量子化(LVQ:learning vector quanti
zation)である。
【0026】その学習アルゴリズムの長所は二つある。
一つは、他の学習アルゴリズムと比較して学習を速く実
行することが可能な点にある。もう一つは、他の学習ア
ルゴリズムでは入出力関係を同定する際に、ある入力に
よって得られた出力と望ましい出力との誤差信号を外部
から与えてネットワーク構造を修正する操作が必要とな
るが、LVQでは、この操作が不要である。
【0027】所謂教師なし学習(unsupervised learnin
g )を行なうことが可能な点である。以下に、離散時間
モデルの学習規則を示す。
【0028】
【数2】
【0029】ここで、Wi はi番目の神経細胞の荷重ベ
クトル、Wc は学習領域内の中心に位置する神経細胞の
荷重ベクトル、Xは入力ベクトル、αは学習係数、Rは
円形型の学習領域の半径、Di,c は神経細胞iと神経細
胞cとの距離、‖・‖はベクトル空間に於ける距離(ノ
ルム)、tは離散時間を表す。
【0030】このモデルの学習動作は、神経細胞cを発
見することから始まる。時刻t=t1 に於いて、ある入
力X(t1 )に最も類似した荷重分布を持つ神経細胞を
(5)式から求める。ネットワーク上ではこの神経細胞
を中心とする円形の学習領域が形成され、学習領域内に
位置する神経細胞は(3)式の学習規則に基いて荷重ベ
クトルが修正される。これにより、学習対象となる神経
細胞の荷重ベクトルは、入力に接近する方向に変化す
る。また、学習領域外にある神経細胞には修正が施され
ない。
【0031】学習の進行に伴って学習半径Rは減少し、
入力パターンは特定の神経細胞に対応するように分類さ
れていく。最終的には(1)、(2)式を用いて入力に
対する神経細胞の出力値の分布を調べることによって、
学習した情報に基づくパターンの認識を実行する。
【0032】しかし、通常の学習ベクトル量子化(LV
Q)を用いたネットワークモデルでは、入力のパターン
認識に対する結果の意味の与え方についての方法論がま
だ確立されていない。そこで人工知能(AI(artificial
intelligence ))的な手法である意味ネットワークを導
入し、その学習アルゴリズムを意味を含めた認識が可能
なものに拡張した。
【0033】図1は、一つの神経細胞(ニューロン)に
おける拡張されたネットワークモデルの一層ネットワー
クの記憶構造を表している。図1に於いて、符号1は神
経細胞(ニューロン)で、符号2はネットワークであ
り、符号3は意味ネットワークであり、符号4は入力パ
ターンである。
【0034】図1に示した拡張されたネットワークモデ
ルでは、神経細胞に付属する意味ネットワークは意味実
体と、神経細胞と意味実体との間の荷重から構成されて
いる。ある入出力関係をこのネットワークモデルを用い
て同定しようとする場合、その手順は以下のようにな
る。
【0035】〔1〕(5)式を用いて入力パターンに最
も近い荷重分布を持つ神経細胞cを発見する。
【0036】〔2〕学習領域径Rを求め、学習領域内に
存在する神経細胞の荷重分布を(3)式を用いて修正す
る。
【0037】〔3〕学習が実施された全ての神経細胞に
意味ネットワークを作成し、出力パターンを意味実体と
して割り当てる。
【0038】〔4〕既に同じ出力パターンを割り当てら
れた意味実体が作成されているときは、神経細胞と意味
実体間の荷重を強める。また、異なる出力パターンを割
り当てられた意味実体が作成されているときは、その神
経細胞と意味実体間の荷重を弱める。
【0039】〔5〕神経細胞と意味実体間の荷重が一定
の値以下になるときは、意味実体を神経細胞から除去す
る。 〔6〕手順〔1〕に戻る。
【0040】学習を進めていくと、一個の神経細胞に対
してn個の意味実体が割り当てられるようになる。ここ
でn=1の場合は、入力パターンが認識できれば、その
意味するところが必然的に決定する。
【0041】しかし、n>1の場合は、入力パターンの
多義性を示唆しており、そのままでは認識結果に対する
意味が一意に定まらない。これを避けるために、神経細
胞と意味実体との間に荷重を設け、その値が最大となる
意味実体を入力パターンの意味とする。
【0042】更に学習が進み、nの値が非常に大きくな
った場合は、図2に示すごとくパターンの分類を細分化
するという観点から、新たにネットワークを階層的に構
築する。
【0043】図2は、二層ネットワークの記憶構造を表
しており、このネットワークは神経細胞に接続され、こ
れまであった意味実体の集合は、新しいネットワーク上
の神経細胞に移行して割り当てられる。これが多層ネッ
トワークモデルである。
【0044】多層モデルでは、神経細胞と意味実体間の
荷重以外に、神経細胞と階層形式のネットワーク間にも
荷重が存在する。この荷重の操作は、神経細胞と意味実
体間の荷重の操作と同様、ある入力パターンとそれに対
する出力パターンの組合せがある場合は、荷重値を増加
し、そうでない場合は荷重値を減少させる。多層ネット
ワークでは、下位のネットワークが補助的或いは分散的
処理を行なってパターンの分類をより精密にする。
【0045】上記した如く、学習ベクトル量子化(LV
Q)のニューラルネットワークにより入出力関係の同定
が可能となることが明らかとなり、本発明の心臓ペース
メーカが実現できる。
【0046】そこで、本発明の心臓ペースメーカの実施
例1についてより具体的に説明する。まず、運動負荷と
心拍応答の関係を調べるために、多数の健常な被験者を
対象とした二種類の運動負荷試験(プロコトルI、プロ
コトルII)を行ない、その心拍数の変化を測定した。
【0047】運動試験は、三種類の運動種(安静座位、
歩行、ジョギング)から構成されており、10分間連続
して実施した。計測のインターバルは5秒である。この
運動負荷試験は、日常生活で起こり得る運動負荷の様式
を包括しており、日常運動負荷モデルとみなせることが
必要である。
【0048】また、ニューラルネットワーク手法と臨床
使用されている心臓ペースメーカとの性能比較を行なう
ため、被験者の前胸壁に心臓ペースメーカを装着し、そ
の整調レート値も併せて測定した。
【0049】図3に実験結果を示す。左がプロコトルI
による運動試験結果、右側がプロコトルIIによる運動試
験結果である。また、図中の上側の曲線は心拍数の平均
値、下側の曲線は運動負荷曲線を表す。運動負荷曲線は
三段階のレベルで図示されており、安静座位、歩行、ジ
ョギングの各運動負荷レベルは、人体の代謝量に換算し
て夫々、0、3、8(METs)に相当する。
【0050】実験結果に基づき、運動負荷と心拍応答の
関係を、拡張した学習ベクトル量子化(LVQ)アルゴ
リズムを用いて学習した。学習方法を図4に示す。入出
力関係の学習のためのニューラルネットワーク構造を定
義するにあたり、先ず、時刻tに於ける心拍数HR
(t)はそれ運動負荷WL(t)の変動の影響を受ける
と考え、時系列X(t)=〔WL(t−I+1),…
…,(t)〕を入力パターン、心拍数の一階差分値δ
(t)=HR(t)−HR(t−1)を意味実体とする
神経細胞を構成した。ここで、Iは神経細胞の入力素子
数(荷重数)である。尚、学習にはプロコトルII、検証
にはプロコトルIを用い、一回の学習につき、t=0
(sec)からt=600(sec)までデータの反復学習を
行なった。
【0051】更に、学習では複雑化を避けるために、ネ
ットワークの全体構造は二層構造とし、三層以上の成長
は考慮しなかった。すなわち、ネットワークの第一層で
は、離散数値化した運動負荷曲線を神経細胞の入力情
報、心拍応答曲線を記憶情報とし、五個の入力要素を持
つ神経細胞を四百個使用した。第二層では、離散数値化
した運動負荷曲線の時間積分値を神経細胞の入力情報、
心拍応答曲線を記憶情報とし、八個の入力要素を持つ神
経細胞を六十四個使用した。表1に計算の諸条件を示
す。
【0052】
【表1】
【0053】ここで、学習領域径Rの算出は、ネットワ
ークを構成する神経細胞数や学習回数を反映させるため
に表中の式を用いた。尚、R=1は、格子状ネットワー
クに於いて隣合う神経細胞の距離に相当する。また、あ
る神経細胞に対する下位ネットワークの発生条件は、生
成した意味実体の数がn≧2で且つ学習領域径R=1と
なる時とした。
【0054】図5は、学習ベクトル量子化(LVQ)の
ニューラルネットワーク手法を用いたレート制御アルゴ
リズムのフローチャートを示す。図5に示すフローチャ
ートの手順にしたがって学習しレート制御が行なわれる
ため、本発明の心臓ペースメーカは、制御パラメータの
調整も自動的に行なっている結果となる。
【0055】現在臨床使用中の体動感知型レート応答ペ
ースメーカとの性能比較を行なうため、次式のような制
御精度評価式を定義した。
【0056】
【数3】
【0057】ここで、Eは制御精度、Dj は時刻jに於
ける実測心拍数、dj は時刻jに於ける想起された心拍
数、mはデータのサンプリング数である。本実験に於け
るサンプリング数は、m=121である。
【0058】表2に心臓ペースメーカとニューラルネッ
トワーク手法とによるレート制御の性能比較表を示す。
【0059】
【表2】
【0060】この結果から、ニューラルネットワーク手
法を用いたレート制御方式は、従来のレート制御方式と
比較して、同等或いはそれ以上の性能を有することが示
された。また、ニューラルネットワーク手法が、運動負
荷と心拍応答との間の関係を精度良く同定する能力に優
れていることも明らかとなった。
【0061】本発明の心臓ペースメーカのニューラルネ
ットワーク手法を用いたレート制御方式は、ネットワー
クがn層まで拡張することが可能である。また、制御精
度は、学習によって分類される入力パターンの質や量に
強く依存するため、良質な学習用入力パターンを収集或
いは解析することが望ましい。
【0062】〔実施例2〕この本発明にかかる他の実施
例で適用したニューラルネットワークは、誤差逆伝播学
習法即ちバックプロパゲーション法(Back propagatio
n)を学習則とするネットワークである。これは、出力
値と目標値との誤差信号をネットワークにフィードバッ
クし、神経細胞の荷重を修正することによって対象シス
テムの入出力関係を同定するアルゴリズムで、所謂教師
あり学習(supervised learning )の部類に属する。
【0063】この学習アルゴリズムを適用するためのネ
ットワークは、通常、入力層(in-put layer )、隠れ
層(hidden layer )、出力層(output layer )からな
る階層構造ネットワークである。隠れ層は、一つに限ら
ず、複数の層を用意することも可能である。
【0064】以下に、運動負荷試験で得られた、運動負
荷と心拍数のデータを基に誤差逆伝播学習法を用いて、
入出力関係を同定する方式を説明する。
【0065】使用したネットワークを図6に示す。その
構造は、四個の神経細胞からなる入力層10、四乃至十五
個の神経細胞からなる隠れ層11、12が二層、一個の神経
細胞からなる出力層13と、バイアス用神経細胞14の合計
四層二十二ユニットの階層ネットワークである。以下に
i番目の神経細胞の入出力特性を数式モデルによって示
す。
【0066】
【数4】
【0067】ここで、Wi は荷重ベクトル、Xは入力ベ
クトル、θi はしきい値、Pi は膜電位、Zi は出力
値、x0 はシグモイド関数或いはtanH(逆正接) 関数
の傾きを制御するパラメータである。また、離散時間モ
デルの学習規則を以下に示す。
【0068】
【数5】
【0069】ここで、Δは二乗誤差、yは目標値、εは
学習係数である。このネットワークモデルを用いて入出
力関係を同定しようとする場合、その手順は以下のよう
になる。
【0070】〔1〕入力層にパターンを入力する。 〔2〕(10)式を用いてネットワークの出力値と目標
値との二乗誤差を求める。二乗誤差が一定値以下のとき
は学習を終了する。 〔3〕(11)式を用いて各層の神経細胞の荷重分布を
修正する。 〔4〕手順〔1〕に戻る。
【0071】ここで、適用する実験データは、学習ベク
トル量子化(LVQ)ネットワークで用いたものと同一
である。この実験結果に基づき、運動負荷と心拍応答と
の関係を誤差逆伝播学習法を用いて学習した。学習方法
を図7に示す。
【0072】図7に於いて、ネットワークの入力層に
は、或る時刻に於ける5、15、30秒前の心拍数と現
在の運動負荷値を割り当てた。また、出力層には、現在
の心拍数を割り当て、出力には現在の心拍数を割り当て
た。従って教師信号は現在の心拍数として。学習は時系
列を無視してランダムに行なった。学習係数は0.3 に固
定して、伝達関数はtanH を用いた。即ち、計測インタ
ーバルが5秒であるところから、時刻tに於いて、 X(t)=〔HR(t−1),HR(t−3),HR
(t−6),WL(t)〕が入力パターン、y(t)=
HR(t)が出力値となるようにネットワークを学習し
たことに相当する。また、計算条件を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】図7、表3について説明を加えると、各層
間で神経細胞は全て結合されており、更にバイアス用神
経細胞にも結合している。従って、或る層の神経細胞の
入力素子数はその前段階の層にある神経細胞数である。
【0075】図8は、誤差逆伝播学習法(バックプロパ
ゲーション法)のニューラルネットワーク手法を用いた
レート制御アルゴリズムのフローチャートを示す。図8
に示すフローチャートの手順に従って学習し、レート制
御が行なわれるため、本発明の心臓ペースメーカは、制
御パラメータを自動的に調整しレート制御を行ない求め
られたレートで刺激パルスを心臓に伝達する。
【0076】以上のような学習方法及び計算条件に基づ
いて、与えられた学習データから心拍応答曲線を想起さ
せた。想起結果と、臨床使用中の体動感知型レート応答
ペースメーカとの性能比較のための制御精度評価式は
(6)を用いた。表4に心臓ペースメーカとニューラル
ネットワーク手法とによるレート制御の性能比較表を示
す。
【0077】
【表4】
【0078】ニューラルネットワークの学習アルゴリズ
ムに誤差逆伝播学習法を用い、体動感知型レート応答ペ
ースメーカのレート制御への適用をした。その結果、本
アルゴリズムによる手法がレート制御の一手法として有
効であることが明らかとなった。
【0079】図9は、本発明にかかるニューラルネット
ワーク手法を用いた心臓ペースメーカの構成図である。
ペースメーカは、センサ21、マイクロプロセッサ22、記
憶素子23、24、パルス発生器25を備えている。
【0080】信号入力部を構成するセンサは、身体的活
動又は精神的活動を検出する。このセンサは、身体的活
動の検出方法の違いにより多くの種類があり、また、そ
の取付け位置も生理的反応を適切に検出できる身体の内
外を問わず最適な箇所に取り付ける。この実施例では、
センサ21は圧電素子である。センサ21により発生した信
号は、アナログ−ディジタル変換された後、マイクロプ
ロセッサ22を含む信号処理部に伝達される。
【0081】信号処理部では、入力信号に相応する身体
的活動の程度を判断した後、搭載されたレート制御アル
ゴリズムに基づき、レート制御量を求める。このレート
制御アルゴリズムは、ROM23の中にプログラムとして
格納されている。必要となるROM23の容量は、ニュー
ラルネットワークに与える入力パターンの数に依存す
る。
【0082】例えば、バックプロパゲーションを学習則
とするネットワークを適用した場合、一個の標本値に対
して分解能が四ビット、出力信号の分解能が八ビットで
あるならば、一メガビットROM23で充分対応可能であ
る。ROM23には、この他にマイクロプロセッサを駆動
させるための制御プログラムも格納されている。
【0083】また、RAM24にはROM23に格納された
プログラムが利用する記憶空間を提供する。例えば、学
習過程の神経細胞の荷重値を記憶するために利用され
る。このとき、荷重値を八ビットで表現すると、バック
プロパゲーションを学習則とするネットワークでは高々
一キロビット、学習ベクトル量子化法を学習則とするネ
ットワークでは二十キロビット程度必要となる。
【0084】信号出力部を構成するパルス発生器25は、
信号処理部で求められたレートで心臓への刺激パルスを
発生させる。発生したパルスは、刺激リード線26を経て
刺激電極27により心臓28に伝達される。センサは測定す
るパラメータにより留置部位が異なり、パルス発生器25
内或いはセンサリード線を経て心体内の適切な部位に留
置される。
【0085】また、図10の本発明にかかる心臓ペース
メーカに示す如く、構成要素に遠隔測定回路29を設ける
ことも可能である。遠隔測定回路29は、心臓ペースメー
カが発生するレート値を非侵襲的に体外より計測し、伝
達される刺激パルスの数を監視する。
【0086】図11は、本発明の学習ベクトル量子化法
による心臓ペースメーカの心拍応答の実験結果のグラフ
である。太線は被験者の実際に計測された運動負荷試験
による心拍数の変化であり、細線は、本発明の心臓ペー
スメーカを装着したとき、本発明の心臓ペースメーカが
出力した心拍数である。図11から明らかなように、本
発明の心臓ペースメーカは、運動負荷変動に伴う心拍数
の変動に非常に良好に追従していることがわかる。
【0087】
【発明の効果】従来の心臓ペースメーカでは、身体的活
動と心拍応答との関係は線形であるとしてレート制御を
実施しているが(特表平3−503502号公報)、実
験からはその非線形性が明らかにされている。このた
め、従来型手法の機能的な限界が指摘されている。本発
明にかかる心臓ペースメーカは、ニューラルネットワー
ク手法では非線形な入出力関係を表現することが可能な
ため、実際の生体の応答に近い高精度な身体的活動と心
拍応答との関係を同定することができるという効果を奏
する。
【0088】また、従来型の心臓ペースメーカのレート
制御アルゴリズムとニューラルネットワーク手法による
レート制御アルゴリズムは、どちらも生理センサの種類
に依存することはない。しかし、従来型の場合は実際の
信号処理以前の問題として、生理センサが異なる毎に身
体的活動と心拍応答との関係を応答曲線として表現する
必要があるが、ニューラルネットワーク手法では学習を
行なってレート制御規則を生成するので、その関係を予
め規定する必要はない。本発明の心臓ペースメーカは、
生理センサの種類による特性の相違に無関係に使用でき
るという効果を奏する。
【0089】また、患者に同じ運動負荷を与えた場合、
その心拍応答は年齢や性別や体質によって異なる。この
ような心機能の個人差を反映させるために、従来の心臓
ペースメーカでは、プログラミングという作業を通して
身体活動度に対する心拍応答曲線を規定する可変パラメ
ータを調節する仕組みとなっている。これは、医師に対
してプログラミングの負担を強いることになる。本発明
の心臓ペースメーカは、ニューラルネットワーク手法を
用い、学習によってレート制御規則を生成するので、身
体活動度と心拍応答とを関係付けるようなパラメータの
調節が不要或いはごく少数であるから、医師がレート制
御規則をプログラミングする作業も減り、医師及び患者
の負担を軽減し、且つ極めて生理的応答に近似した結果
が得られるという大なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】学習ベクトル量子化法の一層ネットワークモデ
ル。
【図2】学習ベクトル量子化法の二層ネットワークモデ
ル。
【図3】生体運動負荷と心拍応答数の関係を示すグラ
フ。
【図4】学習ベクトル量子化法の学習方法の説明図。
【図5】学習ベクトル量子化法によるレート制御アルゴ
リズムのフローチャート。
【図6】誤差逆伝播学習法(バックプロパゲーション
法)のネットワークモデル。
【図7】誤差逆伝播学習法(バックプロパゲーション
法)の学習方法の説明図。
【図8】誤差逆伝播学習法(バックプロパゲーション
法)によるレート制御アルゴリズムのフローチャート。
【図9】本発明にかかる心臓ペースメーカの構成図。
【図10】本発明にかかる他の実施例の心臓ペースメー
カの構成図。
【図11】学習ベクトル量子化法による、心臓ペースメ
ーカの心拍応答の実験結果のグラフ。
【符号の説明】
1;神経細胞(ニューロン)、2;ネットワーク、3;
意味ネットワーク、4;入力パターン、10;入力層、
11、12;隠れ層、13;出力層、14;バイアス、
21;センサ、22;マイクロプロセッサ、23;RO
M、24;RAM、25;整調パルス発生器、26;リ
ード線、27;電極、28;心臓、29;遠隔測定回
路。
フロントページの続き (72)発明者 中島 博 東京都目黒区柿の木坂2−15−18号

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 患者の身体的活動を検出する生理センサ
    から成る信号入力部と、信号入力部からの入力信号を演
    算処理して心臓に伝達するレート制御量を決定するマイ
    クロプロセッサとメモリ素子とから成る信号処理部と、
    信号処理部で定められたレート制御量の制御信号を発生
    する整調パルス発生器から成る信号出力部とから構成さ
    れる心臓ペースメーカに於いて、信号処理部にニューラ
    ルネットワークを用いて身体的活動と心拍応答の関係を
    実体に則して同定し、整調レートを出力するためのレー
    ト制御規則を学習により自律的に獲得し、前記入力信号
    部からの入力信号をこの学習規則に基づいた学習結果か
    ら逐次最適なレート制御量として算出し、最適整調レー
    トの出力を可能にしたことを特徴とするレート応答型ペ
    ースメーカ。
  2. 【請求項2】 ニューラルネットワークとして、学習ベ
    クトル量子化ネットワークを用いたことを特徴とする請
    求項1記載のレート応答型ペースメーカ。
  3. 【請求項3】 ニューラルネットワークとして、バック
    プロパゲーションを用いたことを特徴とする請求項1記
    載のレート応答型ペースメーカ。
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