JPH06194280A - 採血管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 頭部の天面に窪みが設けられた栓体を有する
採血管であって、高速遠心時あるいはサンプリング用ノ
ズル針等を貫通挿入した場合に、栓体の管状容器内への
落下が生じ難い採血管を得る。 【構成】 管状容器１２と、管状容器１２の一端に形成
された開口を閉栓するための栓体１３とを備え、栓体１
３の天面に設けられた凹状の窪み１３ｃ内に該栓体１３
の頭部１３ａが中心軸方向に変形するのを防止するため
に剛性を有する変形抑制部材１４を挿入してなる採血管
１１。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、臨床検査等において用
いられる採血管に関し、特に、栓体の採血管内への落下
もしくは侵入を防止する構造が備えられた栓体を有する
採血管に関する。

【０００２】

【従来の技術】採血管は、血液を検査材料とする臨床検
査分野において、血液の採取、前処理あるいは保存のた
めに用いられている。上記血液の採取は、採血管内部を
減圧にしておき、専用の採血針およびホルダーを用いた
真空採血法により行われている。また、上記前処理は検
査目的によっても様々であるが、例えば、採血後に血
液が凝固するまで静置した後、遠心分離によって血清を
分取するもの、あるいは抗凝固剤等の前処理用試薬と
血液とを採血管内で混和するもの等が挙げられる。前者
においては、採血管は遠心分離管として、後者において
は検体調製容器としての役割を兼ねる。

【０００３】さらに、上記保存は採血管に血液を採取し
た後、栓体により採血管を閉塞し、該採血管を冷蔵庫あ
るいは冷凍庫内において保存することにより行われる。
この場合、採血管は、外部からの汚染あるいは血液検体
の流出を防止するための保存容器として機能する。上記
のような採血管は、通常、一端が開口されたガラスもし
くは合成樹脂等からなる管状容器と、ゴム弾性を有する
栓体とを有する。

【０００４】近年、臨床検査分野等において、血液を介
した感染を予防するために、採血管の管状容器から栓体
の抜き差しに際して血液検体が手指に付着しないことが
要望されている。このような要望を満たすものとして、
ＥＰ０４４５７０７号および特公平２−２５６１１号に
は、それぞれ、栓体の周囲にキャップを装着した構造を
有する採血管が提案されている。これらの先行技術の構
造を、図５および図６を参照して説明する。

【０００５】図５に示す採血管１は、一端に開口を有す
る管状容器２と、管状容器２の開口を閉塞するように装
着された栓体３とを有する。栓体３は、ゴム弾性を有す
る材料よりなり、天面３ａの中央に凹状の窪み３ｂを有
する。採血管１では、栓体３の周囲にキャップ４が取り
付けられている。キャップ４は、栓体３の側方の周囲か
ら管状容器２の上方部分の周囲に至るように配置された
筒状部４ａと、筒状部４ａの上方に取り付けられてお
り、かつ天面３ａを覆い、但し窪み３ｂを露出するため
の貫通孔が設けられた天板部４ｂとを有する。

【０００６】また、図６に示す採血管５では、管状容器
２に嵌入された栓体３の周囲に同じくキャップ６が取り
付けられている。ここでは、キャップ６は、合成樹脂よ
りなり、栓体３の側方の周囲および管状容器１の上方部
分の周囲だけでなく、栓体３の上方部分をも覆うように
一体に形成されている。もっとも、キャップ６において
も、上方には貫通孔６ａが形成されており、該貫通孔６
ａにより窪み３ｂが露出されている。

【０００７】図５および図６に示した採血管１，５で
は、それぞれ、キヤップ４，６に設けられた係止部４
ｃ，６ｂが栓体３の周縁部の下縁を係止しているため、
キャップ４，６が栓体３と一体化されている。このよう
に栓体３がキャップ４，６で覆われているため、栓体３
の管状容器２からの抜き差しに際し、血液の周囲への飛
散が防止される。よって、血液を介した感染を効果的に
防止することができるため、上記のようなキャップ４，
６を有する採血管が急速に普及している。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図５お
よび図６に示したキャップ付きの採血管１，５では、採
血管内に血液を採取した後に、例えば血清を採取するた
めに遠心分離した場合、栓体３がキャップ４，６から外
れ、管状容器２内に落下し、血液検体を損なうという事
故が起こりがちであった。特に、急を要する検査の場合
には、血清もしくは血漿の分離を急ぐため、通常の５倍
以上の遠心力で遠心分離を行うことが多く、栓体の採血
管内部への落下が頻発しがちであった。

【０００９】また、検体を採取するために、サンプリン
グ用ノズル針を栓体３に穿刺し、栓体３を貫通させる場
合にも、栓体３とノズル針との摩擦抵抗が比較的大き
く、栓体３が管状容器２内に落下もしくはずれ落ちるこ
とがあった。従って、上記のようなキャップ４，６を設
けることにより、検査従事者の安全性を高めた採血管
１，５といえども、その真価が充分に発揮されていなか
った。

【００１０】なお、上記のような栓体３の管状容器２内
への落下は、栓体３の天面３ａの中央に凹状の窪み３ｂ
が設けられているために生じているものである。すなわ
ち、窪み３ｂが形成されているため、遠心分離中に管状
容器２の開口から底部方向に作用する遠心力またはノズ
ル針の挿入摩擦抵抗により、栓体３が採血管の中心軸方
向に湾曲変形しやすくなっており、該変形によりキャッ
プ４，６から栓体３が外れて落下するものと考えられ
る。

【００１１】他方、窪み３ｂは、採血針あるいはサンプ
リング用ノズル針による血液検体の採取もしくは分取の
際に起こる血液の滲み出しによって検査従事者が汚染さ
れるのを防止するために必須不可欠なものである。従っ
て、窪み３ｂは、上記のような検体３の管状容器２内へ
の落下を引き起こすものではあるが、除くことはできな
い。

【００１２】上記のような問題は、キャップ４，６を有
しない採血管、すなわち、管状容器２の開口を閉塞する
ようにゴム弾性を有する栓体３が嵌入された採血管にお
いても同様に生じていた。

【００１３】本発明の目的は、遠心分離操作時あるいは
サンプリング用ノズル針等の挿入時に栓体が管状容器内
に落下することを効果的に防止することができ、従っ
て、血液検体を損なうおそれがない採血管を提供するこ
とにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明の採血管は、一端
が開口された管状容器と、前記開口を閉塞する栓体とを
備える。栓体は、栓体を保持するための頭部と、頭部よ
りも小径であり、管状容器内に嵌入される足部とを有す
る。栓体の頭部の天面には、凹状の窪みが形成されてお
り、該頭部の窪みに、頭部の周縁部分の窪み側への変形
を抑制するために剛性を有する変形抑制部材が挿入され
ている。

【００１５】

【作用】剛性を有する変形抑制部材が、栓体の頭部天面
に設けられた窪みに挿入されているため、管状容器に栓
体が装着された状態において、栓体側から管状容器の底
部側に向かって大きな遠心力が作用した場合、あるいは
サンプリング用ノズル針を栓体に穿刺した場合に大きな
挿入摩擦抵抗が発生した場合等の何れにおいても、窪み
の周囲の栓体部分の窪み側への変形が上記変形抑制部材
により効果的に抑制される。従って、栓体の頭部の外径
が小さくなり難いため、栓体の管状容器内への落下が効
果的に防止される。

【００１６】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
することにより、本発明を明らかにする。図１は、本発
明の第１の実施例に係る採血管を示す縦断面図である。
採血管１１は一端が開口された管状容器１２と、管状容
器１２の開口を閉塞するように装着された栓体１３とを
有する。

【００１７】管状容器１２の材質は特に限定されず、例
えばガラスあるいは合成樹脂により構成される。管状容
器１２内には、検査目的に応じて、血液凝固促進剤、抗
凝固剤または血清分離剤等の試薬が収納され得る。ま
た、真空採血法に用いるために管状容器１２内を採血量
に応じた減圧度にすることも可能である。

【００１８】栓体１３は、採血針が穿刺可能な弾性材料
により構成されており、好ましくは加硫ゴムあるいは熱
可塑性エラストマーのようなゴム弾性を有するゴム弾性
体により構成される。

【００１９】栓体１３は、相対的に径の大きな頭部１３
ａと、相対的に径の小さな足部１３ｂとを有する。足部
１３ｂは、管状容器１２内を密封するために管状容器１
２の内径よりも若干大きな径を有するように構成されて
おり、圧入することにより、図示のように管状容器１２
内に嵌入されている。

【００２０】頭部１３ａの天面には、凹状の窪み１３ｃ
が形成されている。窪み１３ｃは、従来の採血管におけ
る栓体３の窪み３ｂ（図５，６参照）と同様に採血針や
サンプリング用ノズル針の穿刺を容易とするために、な
らびに血液の滲み出しによる検査従事者における汚染を
防止するために設けられている。

【００２１】本実施例では、窪み１３ｃ内に変形抑制部
材１４として、筒状の部材が挿入され、窪み１３ｃの周
壁に貼り付けられている。変形抑制部材１４ｂは、金
属、熱可塑性合成樹脂、熱硬化性合成樹脂等の任意の材
料から構成され得るが、ある程度の剛性を有するように
構成されていることが必要である。この剛性の程度は、
大きな遠心力が管状容器１２の底部方向に加えられた場
合、あるいはサンプリング用ノズル針もしくは採血針を
栓体１３に穿刺・挿入した場合に摩擦抵抗が加わった場
合、栓体１３の頭部１３ａの周縁部が中心軸方向に変形
することを効果的に抑制し得るように定められる。

【００２２】上記変形抑制部材１４は、それ自体公知で
ある、切削加工、射出成形またはキャスト成形等の任意
の方法により作製することができる。変形抑制部材１４
は、本実施例では剛性を有する筒状部材により構成され
ており、窪み１３ｃの周壁に貼り付けられているが、変
形抑制部材１４は溶剤型ホットメルト接着剤により接着
することにより貼り付けられてもよく、あるいは加熱融
着により窪み１３ｃの周壁に貼り付けられてもよい。さ
らに、窪み１３ｃの内径よりも僅かに大きめに作製した
変形抑制部材１４を、窪み１３ｃの内部に圧入すること
により固定してもよい。

【００２３】また、変形抑制部材１４は、図２に示す第
２の実施例のように、半球状の窪み１３ｃの形状に併せ
て、半球状の形状に形成してもよい。もっとも、この場
合においても、窪み１３ｃの底部を露出させるために、
変形抑制部材１４の下端には開口を形成しておくことが
必要であり、それによって採血針やサンプリング用ノズ
ル針の穿刺を行うことが可能とされる。

【００２４】なお、第２の実施例では、変形抑制部材１
４は、窪み１３ｃ内において窪み１３ｃの内壁に貼り付
けられている部分だけでなく、栓体１３の天面上にも至
る形状とされている。このように、本発明の採血管にお
ける変形抑制部材１４は、少なくとも窪み１３ｃ内に挿
入される部分を有すればよく、他の部分に至るように形
成されていてもよい。

【００２５】図３は、本発明の第３の実施例の採血管を
示す縦断面図である。第３の実施例では、管状容器１２
の開口を閉塞するように取り付けられた栓体１３に、キ
ャップ１５が固定されている。キャップ１５は、図６に
示した従来例と同様に、栓体１３の抜き差しに際し、内
部の血液試料等が飛散するのを防止するために設けられ
ている。キャップ１５は、栓体１３の側方および管状容
器１２の上方端近傍部分の周囲を囲む筒状部１５ａと、
栓体１３の天面を覆う天板部１５ｂと、さらに、天板部
１５ｂの中央において窪み１３ｃ内に延ばされており、
かつ窪み１３ｃの周壁に貼り付けられた変形抑制部１５
ｃとを有する。すなわち、本実施例の採血管では、キャ
ップ１５の変形抑制部１５ｃが、本発明の変形抑制部材
に相当するように機能する。よって、キャップ１５が、
内部の血液試料の飛散を防止する機能だけでなく、変形
抑制部材としても機能する。

【００２６】キャップ１５は、合成樹脂あるいは金属等
の任意の材料により構成されるが、好ましくは、種々の
着色が容易であるため、熱可塑性合成樹脂からなるもの
が用いられる。また、キャップ１５の中間高さ位置に
は、内側に突出された環状リブ１５ｄが形成されている
が、この環状リブ１５は、栓体１３の頭部１３ａの下縁
を係止するために設けられている。

【００２７】図３に示した実施例では、キャップ１５の
下方から栓体１３を圧入することにより、栓体１３とキ
ャップ１５とが一体化される。第３の実施例では、筒状
部１５ａ、天板部１５ｂおよび変形抑制部１５ｃが一体
に構成されていたが、図４に示す第４の実施例のよう
に、筒状部１５ａと、天板部１５ｂと別体に形成し、天
板部１５ｂに連なるように変形抑制部１５ｃを構成して
もよい。

【００２８】第４の実施例では、キャップ１５の環状リ
ブ１５ｄを間に介在させて栓体１３を管状容器１２に圧
入した後、蓋材となる天板部１５ｂを上方から嵌め合せ
ることにより、天板部１５ｂおよび天板部１５ｂと一体
に形成された変形抑制部１５ｃが図示のように装着され
る。

【００２９】次に、具体的な実験結果について説明す
る。キャップを有しない天面に窪みを有する従来の栓体
を用いて１０ｍｌの採血管を閉栓し、従来例とした。栓
体の寸法および材質は下記の表１に示すとおりである。
また、実施例品Ａとして、上記従来例と同一寸法および
同一材質の栓体の窪みに、直径７．１ｍｍ、長さ（窪み
に挿入される方向の長さ）５．０ｍｍのポリプロピレン
チューブを窪みの内層に沿うように圧入した後、同じく
１０ｍｌの採血管を閉栓した。さらに、実施例品Ｂとし
て、実施例品Ａで用いたのと同一の栓体に図４に示した
キャップ１５を固定し、同じく１０ｍｌの採血管を閉栓
した。

【００３０】なお、実施例品Ｂにおいて用いたキャップ
１５には、実施例品Ａと同一寸法の変形抑制部が構成さ
れている。上述した従来例および実施例品Ａ，Ｂについ
て、各１０本を用意し、１００００Ｇの高速遠心条件下
で遠心し、栓体の落下を観察した。その結果、表１に示
すように、従来例では１００％の採血管において栓体が
管状容器内に落下していたのに対し、実施例品Ａ，Ｂの
何れにおいても栓体の落下は皆無であった。

【００３１】

【表１】

【００３２】

【発明の効果】本発明によれば、栓体の天面に設けられ
た窪み内に上記変形抑制部材が挿入されているため、遠
心分離時の遠心力や検体サンプリング用ノズル針等の挿
入時に栓体が管状容器内に落下したり、ずれ落ちたりす
ることが確実に防止される。従って、採血管内の血液検
体を損なうおそれを確実に低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例の採血管の縦断面図。

【図２】第２の実施例の採血管の縦断面図。

【図３】第３の実施例の採血管の縦断面図。

【図４】第４の実施例の採血管の縦断面図。

【図５】従来の採血管の一例を示す縦断面図。

【図６】従来の採血管の他の例を示す縦断面図。

【符号の簡単な説明】

１１…採血管 １２…管状容器 １３…栓体 １３ａ…頭部 １３ｂ…足部 １３ｃ…窪み １４…変形抑制部材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端が開口された管状容器と、前記開口
   を閉塞する栓体とを備え、 前記栓体が、天面に凹状の窪みが形成されておりかつ抜
   き差しに際して該栓体を保持するための頭部と、前記頭
   部より小径でありかつ前記管状容器内に嵌入される足部
   とを有し、 前記頭部の周縁部分の窪み側への変形を抑制するため
   に、前記窪み内に剛性を有する変形抑制部材が挿入され
   ていることを特徴とする採血管。