JPH06194095A - 飛翔体発射装置の逆火安全機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 逆火現象発生時における爆轟を抑制し、安全
を確保する。 【構成】 逆火安全機構１１は、噴射ピストン８に設け
られた複数の逆止歯１２及び係合爪用逃げ溝１３と、逆
止歯１２と対向して砲尾４に設けられた係合爪１４を備
えている。係合爪１４は、爪部１４ａが前後方向に所定
範囲揺動可能に砲尾４に枢着され、弾性付勢部材１６に
より前方端に弾性付勢されている。噴射ピストン８が後
退する際には、係合爪の爪部１４ａが逆止歯１２に係合
しないように当接し、噴射ピストン８の後退を許容す
る。逆火現象発生時には、燃料室７の圧力上昇により噴
射ピストン８を前進させようとするが、係合爪の爪部１
４ａが逆止歯１２に係合し、噴射ピストン８の前進を阻
止する。これにより、噴射ノズル１０が開放状態に維持
され、燃料室７の燃焼ガス、液体燃料等が噴射ノズル１
０から燃焼室６に噴出し、燃料室７の圧力を開放して爆
轟を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、液体燃料を使用して飛
翔体を発射する飛翔体発射装置に関し、詳細には、逆火
現象による燃料室内での液体燃料の瞬間的燃焼（爆轟）
を抑制し飛翔体発射装置の安全を確保する逆火安全機構
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、液体燃料を使用して飛翔体を発射
する飛翔体発射装置において、砲尾の内部に形成された
燃焼室の燃焼ガス圧により後退して燃料室の液体燃料を
噴射する噴射ピストンが、始動位置において燃焼室と密
閉状に係合し、後退することにより燃料室の壁面との間
に噴射ノズルを形成するようになつた燃焼機構を備えた
ものが各種提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の飛翔体発射
装置については、燃焼時に燃焼室の火炎が燃料室に入り
込む逆火現象が発生し易く、燃料室で爆轟して装置を破
損するという問題点がある。すなわち、燃焼時には、噴
射ピストンが後退して燃焼室と燃料室とが噴射ノズルに
より連通しているため、噴射される液体燃料を介して燃
焼室の火炎が燃料室に入り込み、逆火現象を発生する。
逆火現象の発生により燃料室の液体燃料が燃焼し、その
燃焼ガス圧により噴射ピストンが前進する。噴射ピスト
ンが前進して始動位置に達し、燃焼室に密閉状に係合す
る。これにより、燃料室が密閉空間となり、燃料室の圧
力が急激に上昇する。液体燃料は作用する圧力が高くな
る程燃焼し易いため、燃料室の圧力上昇により爆轟する
ことがある。その結果、燃料室が極めて高圧になり、噴
射ピストン等が破損される恐れがある。

【０００４】そこで、噴射ピストンの動作制御、噴射ノ
ズルの構造等を検討し、逆火現象を抑制することが種々
試みられている。ところが、燃焼時に燃焼室に燃料噴射
するために燃焼室と燃料室とを遮断することは不可能で
あり、また燃料室の液体燃料を噴射ピストンの後退によ
り加圧する必要があるため、逆火現象を確実に抑制する
ことが困難な状況である。

【０００５】本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされ
たものであり、その課題は、逆火現象による燃料室での
爆轟を抑制し、安全を確保し得る飛翔体発射装置の逆火
安全機構を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明では、逆火現象発生時における噴射ピストン
の前進を逆止歯と係合爪とによつて阻止し、噴射ピスト
ンが始動位置に前進して燃焼室に密着係合することを防
止することにより、噴射ノズルの開放状態を維持し、燃
料室と燃焼室とを噴射ノズルにより連通するようになつ
ている。これにより、噴射ノズルから燃料室の燃焼ガ
ス、液体燃料等が噴出し、燃料室の圧力を解放し、爆轟
を抑制するようになつている。

【０００７】すなわち、本発明は、燃焼室の燃焼ガス圧
により後退して燃料室の液体燃料を噴射する噴射ピスト
ンが始動位置において燃焼室と密閉状に係合し、後退す
ることにより燃料室の壁面との間に噴射ノズルを形成す
るようになつた燃焼機構を備えた飛翔体発射装置の逆火
安全機構であつて、噴射ピストンの軸方向に沿つて対向
状に設けられ、逆火現象発生時に噴射ピストンの前進を
阻止するように互いに係合する複数の逆止歯と係合爪と
を備えている。

【０００８】複数の逆止歯が噴射ピストンの後部に軸方
向に沿つて設けられ、係合爪が爪部と操作部とを有し、
爪部が所定範囲前後方向に揺動するように砲尾に枢着さ
れるとともに、前方端に弾性付勢して設けられており、
噴射ピストンの後部に逆止歯の前方に隣接して係合爪用
逃げ溝が設けられていてもよい。その際、係合爪の操作
部には、噴射ピストンを始動位置に復帰させる時に係合
爪の爪部を後方に揺動させる解除手段が設けられている
ことが好ましい。

【０００９】

【実施例】本発明の実施例を図により説明する。図にお
いて、１は飛翔体発射装置、２は飛翔体Ｗを装填する砲
腔３を有する砲身、４は砲尾である。砲尾４には、砲腔
３に装填された飛翔体Ｗを発射させるための燃焼ガス圧
を発生する燃焼機構５が設けられている。燃焼機構５
は、砲尾４の内部に形成された燃焼室６と、燃焼室６の
後方に連通して形成された燃料室７と、燃焼室６と燃料
室７とを仕切るとともに、燃料室７の液体燃料を加圧す
るように後退可能に設けられた噴射ピストン８とを備
え、噴射ピストン８の後退によつて燃料室７から所定割
合で燃料噴射し、この燃料を燃焼室６で燃焼するように
なつている。

【００１０】燃焼室６には点火装置９が付設されてお
り、発射作動時に点火装置９を作動して点火燃焼ガスを
燃焼室６に供給するようになつている。燃料室７の壁面
は、図１に示すように所定の形状に形成されており、噴
射ピストン８の後退時にピストンヘツド部８ａの外周面
との間に間隙を生じ、燃料室７の液体燃料を所定割合で
噴射する噴射ノズル１０を形成するようになつている。
例えば、噴射ピストン８の後退に伴つて噴射ノズル１０
の断面積が除々に増大し、所定量後退した後に一定とな
るように形成されていることが好ましい。

【００１１】噴射ピストン８は、ピストンヘツド８ａが
始動位置において燃焼室６の壁面に密着係合し、ピスト
ン軸８ｂが砲尾４に進退可能に案内支持されている。ピ
ストン軸８ｂの後端にはピストン駐退機（図示せず）が
連結されており、燃焼開始前には図１に示すようにピス
トンヘツド８ａがピストン駐退機（図示せず）により始
動位置に保持され、燃焼時には燃焼室６の燃焼ガス圧に
より後方に押圧されピストン駐退機（図示せず）に抗し
て後退するようになつている。そして、噴射ピストン８
が後退する時に、ピストンヘツド８ａにより燃料室７の
液体燃料を加圧し、噴射ノズル１０から所定割合で燃料
噴射するようになつている。

【００１２】噴射ピストンのピストン軸８ｂの後部に
は、軸方向に沿つて複数の逆止歯１２と係合爪用逃げ溝
１３が設けられ、砲尾４の逆止歯１２と対向する位置に
は係合爪１４が設けられており、これらにより逆火現象
発生時における噴射ピストン８の前進を阻止する逆火安
全機構１１が構成されている。逆止歯１２は、後面が噴
射ピストン８の軸線と交差するように後方下がりの傾斜
面で、前面が上記軸線と直交する垂直面であり、噴射ピ
ストン８の後退時には後面が係合爪１４と係合しないよ
うに当接し、噴射ピストン８の前進時には前面が係合爪
１４と係合するように当接するようになつている。逃げ
溝１３は、噴射ピストン８を後退端から始動位置に復帰
させる時に係合爪１４を非作動状態に移動するためのも
のであり、係合爪１４を作動状態から非作動状態に移動
するに必要な長さと深さを有している。係合爪１４は、
爪部１４ａと操作部１４ｂとからなり、砲尾４に前後方
向に揺動するように枢着されている。また、操作部１４
ｂが砲尾４に設けられた案内溝４ａに装着され、案内溝
４ａの後端面により後方への移動が規制されている。操
作部１４ｂの一端には把手１５ａを有する解除ロツド１
５が連結され、解除ロツド１５の中間には圧縮バネ１６
ａを有する弾性付勢部材１６が設けられている。この弾
性付勢部材１６は、操作部１４ｂを解除ロツド１５を介
して後方に弾性付勢し、案内溝４ａの後面に当接するよ
うに保持している。すなわち、係合爪１４は、爪部１４
ａが弾性付勢部材１６によつて前方端に弾性付勢して保
持されており、爪部１４ａに後方への力が作用する時に
は弾性力に抗して爪部１４ａが後方に揺動し、前方への
力が作用する時には爪部１４ａが前方に移動しないよう
に保持されている。なお、爪部１４ａは、後面が垂直面
で、前面が前方上がりの傾斜面であり、噴射ピストン８
が始動位置にある時には図１に示すように逆止歯１２の
後面に当接するように配置されている。また、逆止歯１
２の前面及び係合爪の爪部１４ａの後面の形状は、両者
が当接して係合するようになつていればよく、垂直面以
外であつてもよい。

【００１３】本実施例は上記のように構成されており、
その作用を次に説明する。飛翔体発射装置１は、発射準
備完了状態においては図１に示すように、噴射ピストン
８が始動位置にあつて燃焼室６に密着係合し、燃焼室６
と燃料室７とをそれぞれ密閉空間に仕切つている。点火
装置９を作動して発射作動すると、点火装置９から燃焼
室６に供給された点火燃焼ガスにより噴射ピストン８が
ピストン駐退機（図示せず）に抗して後退する。噴射ピ
ストン８の後退により燃料室７の液体燃料が加圧され、
噴射ノズル１０から所定割合で燃料噴射する。噴射され
た液体燃料は燃焼室６で燃焼し、燃焼室６の燃焼ガス圧
を上昇させ、噴射ピストン８を後退して燃料噴射させ
る。逆火現象を発生しない場合には、噴射ピストン８が
順次後退して燃料噴射を継続し、燃焼室６の燃焼ガス圧
を所定割合で上昇させ、飛翔体Ｗを所定の飛翔特性で発
射させることになる。ところで、逆火安全機構１１は、
図１に示す発射準備完了状態においては係合爪の爪部１
４ａの前面が逆止歯１２の後面に弾性的に当接してお
り、発射作動による噴射ピストン８の後退に伴なつて逆
止歯１２により後方に跳ね上げられるとともに弾性付勢
部材１６により前方に復帰される。すなわち、係合爪の
爪部１４ａは、噴射ピストン８の後退時には逆止歯１２
に係合しないように前後方向に揺動される。従つて、逆
火安全機構１１は、噴射ピストン８の後退を許容するよ
うに作用することになる。噴射ピストン８が後退端に達
した時には、図２に示すように係合爪の爪部１４ａに対
向する位置に係合爪用逃げ溝１３が位置しており、噴射
ピストン８を始動位置に復帰させる時には解除ロツド１
５を前方に引いて係合爪１４をその爪部１４ａが逆止歯
１２と当接しない位置まで後方に移動させる。そして、
噴射ピストン８を前進させ、始動位置に復帰させる。

【００１４】逆火現象が発生した時には、燃料室７の液
体燃料が燃焼することにより燃料室７の圧力が上昇し、
噴射ピストン８には燃焼室６の燃焼ガス圧に抗して前進
させる力が作用する。その際、係合爪の爪部１４ａに
は、その後面に逆止歯１２の前面が当接し、前方への力
が作用しており、爪部１４ａを前方に移動させようとす
る。ところが、操作部１４ｂが砲尾４に形成された案内
溝４ａの後端面により移動規制されていることから、爪
部１４ａが前方に移動しないように保持されているた
め、噴射ピストン８は図３に示すように逆火現象を発生
した時点の位置に保持されることになる。従つて、逆火
現象によつて燃料室７の圧力が急激に上昇したとして
も、燃料室７の壁面と噴射ピストン８の外周面との間に
形成される噴射ノズル１０が開放状態であるため、この
噴射ノズル１０によつて燃料室７と燃焼室６とが連通さ
れている。これにより、噴射ノズル１０から燃料室７の
燃焼ガス、液体燃料等が燃焼室６に噴出し、燃料室７の
圧力が解放される。その結果、逆火現象が発生したとし
ても、燃料室７での爆轟が防止される。

【００１５】なお、本実施例の逆火安全機構１１は、係
合爪１４が揺動可能に設けられているが、上下動可能に
設けられていてもよい。その際、噴射ピストン８には逃
げ溝１３を設ける必要がない。また、逆止歯１２と係合
爪１４とは、一方が噴射ピストン８に設けられ、他方が
砲尾４に設けられていればよい。

【００１６】

【発明の効果】本発明によれば、噴射ピストンが前進す
る時に逆止歯と係合爪とが係合し、噴射ピストンの前進
を阻止するようになつていることから、逆火現象発生時
においても燃料室の壁面と噴射ピストンの外周面間に噴
射ノズルが形成されているため、この噴射ノズルにより
燃料室が燃焼室に連通されている。これにより、噴射ノ
ズルから燃料室の燃焼ガス、液体燃料等が燃焼室に噴出
し、燃料室の圧力を解放して低減する。従つて、逆火現
象発生時における燃料室での爆轟が抑制され、仮に爆轟
したとしても即座に燃料室の圧力が低減されるため、大
規模な爆轟が抑制される。その結果、逆火現象による噴
射ピストン等の装置の破損を防止し、安全を確保するこ
とが可能になつた。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を説明する縦断面図で、発射準
備完了時の状態を示す。

【図２】同じく、発射終了時の状態を示す。

【図３】同じく、逆火現象発生時の状態を示す。

【符号の説明】

１ 飛翔体発射装置 ４ 砲尾 ５ 燃焼機構 ６ 燃焼室 ７ 燃料室 ８ 噴射ピス
トン １０ 噴射ノズル １１ 逆火安
全機構 １２ 逆止歯 １３ 係合爪
用逃げ溝 １４ 係合爪 １４ａ係合爪
の爪部 １４ｂ 係合爪の操作部 １５ 解除ロ
ツド １６ 弾性付勢部材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃焼室の燃焼ガス圧により後退して燃料
   室の液体燃料を噴射する噴射ピストンが始動位置におい
   て燃焼室と密閉状に係合し、後退することにより燃料室
   の壁面との間に噴射ノズルを形成するようになつた燃焼
   機構を備えた飛翔体発射装置の逆火安全機構であつて、
   噴射ピストンの軸方向に沿つて対向状に設けられ、逆火
   現象発生時に噴射ピストンの前進を阻止するように互い
   に係合する複数の逆止歯と係合爪とを備えてなることを
   特徴とする飛翔体発射装置の逆火安全機構。
2. 【請求項２】 複数の逆止歯は、噴射ピストンの後部に
   軸方向に沿つて設けられ、係合爪は、爪部と操作部とを
   有し、爪部が所定範囲前後方向に揺動するように砲尾に
   枢着されるとともに、前方端に弾性付勢して設けられて
   おり、噴射ピストンの後部に逆止歯の前方に隣接して係
   合爪用逃げ溝が設けられている請求項１記載の飛翔体発
   射装置の逆火安全機構。
3. 【請求項３】 係合爪の操作部には、噴射ピストンを始
   動位置に復帰させる時に係合爪の爪部を後方に揺動させ
   る解除手段が設けられている請求項２記載の飛翔体発射
   装置の逆火安全機構。