JPH06192069A - 糖応答性マイクロカプセルおよび製造方法 - Google Patents

糖応答性マイクロカプセルおよび製造方法

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JPH06192069A
JPH06192069A JP4344650A JP34465092A JPH06192069A JP H06192069 A JPH06192069 A JP H06192069A JP 4344650 A JP4344650 A JP 4344650A JP 34465092 A JP34465092 A JP 34465092A JP H06192069 A JPH06192069 A JP H06192069A
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JP
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polymer
sugar
group
microcapsule
microcapsules
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JP4344650A
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English (en)
Inventor
Yasuhisa Sakurai
靖久 櫻井
Mitsuo Okano
光夫 岡野
Tamotsu Kondo
保 近藤
Kimiko Makino
公子 牧野
Shigeko Aoyanagi
薫子 青柳
Kazunori Kataoka
一則 片岡
Masayuki Yokoyama
昌幸 横山
Kazunori Waki
一徳 脇
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NOF Corp
Original Assignee
Nippon Oil and Fats Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 マイクロカプセルを構成する膜自体がグルコ
ース等の糖濃度の変化に直接応答して短時間に状態を変
化させ、これによりマイクロカプセル内の薬物の放出を
容易にコントロールでき、繰返し使用可能な糖応答性マ
イクロカプセルを得る。 【構成】 フェニルボロン酸基および一級アミノ基を有
する第一のポリマーと、多価水酸基および一級アミノ基
を有する第二のポリマーとが、前記一級アミノ基と反応
する多官能性架橋剤により架橋された膜を有する粒子か
らなる糖応答性のマイクロカプセル中に、インスリンな
どの水溶性薬物が内包された糖応答性マイクロカプセ
ル。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は糖濃度に応じて、薬物の
放出を制御できる糖尿病治療システム、糖センサーなど
として利用できる糖応答性マイクロカプセル、およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロカプセルは酸化され易い物質な
どを保護したり、高分子物質の漏れを防止したり、反応
性の高い物質同士を隔離したりするような目的で用いら
れている。具体的には、酵素を内包するマイクロカプセ
ル(特開昭50−148584号)、菌体を被覆したマ
イクロカプセル(特開昭52−120185号)、生き
ている細胞または個々の細胞を封入したマイクロカプセ
ル(特開昭61−44823号)などが公知である。
【0003】またマイクロカプセルを人工膵臓として利
用しようとした試みとして、膵臓の生きたままのランゲ
ルハンス小島細胞をマイクロカプセル化したハイブリッ
ド型のものが知られている(F.Lim et al,
Science,210(21),908−910(1
980)、人工臓器,17(1),208−211(1
988))。さらにインスリンとグルコースオキシダー
ゼをマイクロカプセル化してpHに応答してインスリン
の放出について検討した報告もある。しかし、これらは
いずれも細胞や酵素の保護の目的で用いているものであ
り、マイクロカプセルを構成する膜自体が糖濃度の変化
により状態変化することはない。このように、これまで
マイクロカプセルを構成する膜自体が糖の刺激に応答し
て内部の薬物の放出制御を行うことができるマイクロカ
プセルについては報告されていない。
【0004】一方、特開平4−124144号には、ボ
ロン酸基および多価水酸基を有する架橋ポリマーからな
る糖応答型ポリマーおよびポリマー複合体が開示されて
おり、ボロン酸基を糖に対する応答部位として利用し、
糖尿病治療システムに利用できることが記載されてい
る。
【0005】しかし上記の糖応答型ポリマーは、ボロン
酸基と水酸基とがコンプレックスを形成しやすいよう
に、架橋ポリマー中に配置するのは困難であり、このた
めボロン酸基と水酸基とがコンプレックスを形成した
り、解離することによる糖応答性が必ずしも満足のいく
ものではない。そしてこの公報には、糖応答型ポリマー
複合体を用いてマイクロカプセルを形成することの可能
性および手段については開示されていない。
【0006】また特開平4−124145号には、ボロ
ン酸基含有ポリマーと多価水酸基含有ポリマーとからな
る糖応答性ポリマー複合体が記載されている。
【0007】しかしこの糖応答性ポリマー複合体は全体
がゲル状になっており、糖が外部から浸透して始めて応
答するので、応答に時間がかかる。またこの複合体は一
度糖に応答して反応すると、複合体が解離して元の状態
に復帰せず、糖応答性は失われ、再使用ができなくな
る。この公報にはマイクロカプセル化に関する記載があ
るが、この場合ポリマー複合体自体をマイクロカプセル
化するのではなく、ポリマー複合体を透析膜や半透膜で
包んでマイクロカプセル化するので、膜が糖や薬物の浸
透、放出の障害物となり、糖応答性は必ずしも満足のい
くものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、マイ
クロカプセルを構成する膜自体が直接糖濃度に応答し、
しかも糖に対する応答時間が短く、マイクロカプセル内
部の薬物の放出を容易にコントロールでき、繰返し使用
可能な糖応答性マイクロカプセルを提供することであ
る。本発明の他の目的は、上記糖応答性マイクロカプセ
ルを簡単に製造できる糖応答性マイクロカプセルの製造
方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は次の糖応答性マ
イクロカプセルおよびその製造方法である。 (1)フェニルボロン酸基および官能基を有する第一の
ポリマーと、多価水酸基および官能基を有する第二のポ
リマーとが、前記官能基と反応する多官能性架橋剤によ
り架橋された膜を有する粒子からなることを特徴とする
糖応答性マイクロカプセル。 (2)第一および第二のポリマーが、それぞれフェニル
ボロン酸基、多価水酸基および官能基を有することを特
徴とする上記(1)記載の糖応答性マイクロカプセル。 (3)第一および第二のポリマーの官能基が一級アミノ
基であることを特徴とする上記(1)または(2)記載
の糖応答性マイクロカプセル。 (4)第一および/または第二のポリマーが、さらに三
級アミノ基を有することを特徴とする上記(1)ないし
(3)のいずれかに記載の糖応答性マイクロカプセル。 (5)第一のポリマーと第二のポリマーとの混合溶液
を、これらのポリマーを溶解しない媒体中に分散させて
粒子を形成し、粒子を構成するそれぞれのポリマー中の
官能基を多官能性架橋剤により架橋することを特徴とす
る上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の糖応答性
マイクロカプセルの製造方法。 (6)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の糖応
答性マイクロカプセル中に、水溶性薬物が内包されたこ
とを特徴とする糖応答性マイクロカプセル。
【0010】本発明の糖応答性マイクロカプセルを構成
する第一のポリマーとしては、例えばフェニルボロン酸
基および官能基を有するポリマー(A1)、フェニルボ
ロン酸基、多価水酸基および官能基を有するポリマー
(A2)、フェニルボロン酸基、三級アミノ基および官
能基を有するポリマー(A3)、フェニルボロン酸基、
多価水酸基、三級アミノ基および官能基を有するポリマ
ー(A4)などがあげられる。
【0011】本発明の糖応答性マイクロカプセルを構成
する第二のポリマーとしては、多価水酸基および官能基
を有するポリマー(B1)、フェニルボロン酸基、多価
水酸基および官能基を有するポリマー(B2)、多価水
酸基、三級アミノ基および官能基を有するポリマー(B
3)、フェニルボロン酸基、多価水酸基、三級アミノ基
および官能基を有するポリマー(B4)などがあげられ
る。
【0012】第一のポリマーと第二のポリマーは、それ
ぞれフェニルボロン酸基および多価水酸基を有する場
合、例えば上記ポリマー(A2)とポリマー(B2)と
を用いる場合、両者は同一のものであってもよい。第一
のポリマーと第二のポリマーとの組合せは任意である
が、ポリマー(A1)とポリマー(B1)、ポリマー
(A3)とポリマー(B1)、ポリマー(A3)とポリ
マー(B3)、ポリマー(A1)とポリマー(B3)、
ポリマー(A2)とポリマー(B2)(この組合せはポ
リマー(A2)同士またはポリマー(B2)同士の組合
せと考えることもできる)、ポリマー(A4)とポリマ
ー(B4)の組合せが好ましく、特にポリマー(A3)
とポリマー(B1)、ポリマー(A3)とポリマー(B
3)の組合せが好ましい。
【0013】第一および第二のポリマー中に存在する官
能基は多官能性架橋剤によりポリマー間を架橋するため
の基であり、例えば一級アミノ基、二級アミノ基、水酸
基、カルボン酸基などがあげられる。
【0014】第一のポリマーはフェニルボロン酸基含有
モノマーと官能基含有モノマーとの、またはさらにこれ
らのモノマーと共重合可能な他のモノマーとのランダム
共重合体が使用できる。ポリマー中に多価水酸基または
三級アミノ基が含まれる場合は、上記モノマーの他にさ
らに多価水酸基含有モノマーまたは三級アミノ基含有モ
ノマーが共重合したランダム共重合体が使用できる。
【0015】第二のポリマーは多価水酸基含有モノマー
と官能基含有モノマーとの、またはさらにこれらのモノ
マーと共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体
が使用できる。ポリマー中にフェニルボロン酸基または
三級アミノ基が含まれる場合は、上記モノマーの他にさ
らにフェニルボロン酸基含有モノマーまたは三級アミノ
基含有モノマーが共重合したランダム共重合体が使用で
きる。
【0016】第一および第二のポリマーとも、他のポリ
マー、例えばアミノ基含有ポリマーなどをカルボキシル
基含有フェニルボロン酸基化合物またはカルボキシル基
含有多価水酸基化合物で変性して、フェニルボロン酸
基、多価水酸基を導入した変性ポリマーを使用すること
もできる。
【0017】前記フェニルボロン酸基含有モノマーとし
ては、例えばN−アクリルアミドフェニルボロン酸、N
−メタクリルアミドフェニルボロン酸、4−ビニルフェ
ニルボロン酸などがあげられる。
【0018】前記官能基含有モノマーとしては、例えば
ビニルベンジルアミン、アミノスチレン、2−アミノエ
チルメタクリレート塩酸塩、N−(3−アミノプロピ
ル)−メタクリルアミド塩酸塩等の一級アミノ基含有モ
ノマーなどがあげられる。
【0019】前記多価水酸基含有モノマーとしては、N
−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕アクリルアミ
ド、グリセロールモノメタクリレートなどの2〜10価
の多価水酸基、好ましくは2〜4価の多価水酸基を有す
る化合物があげられる。
【0020】多価水酸基は、ポリマーの主鎖上に存在す
る一級アミノ基とカルボキシル基含有多価水酸基化合物
のカルボキシル基とがアミド結合によりポリマー中に導
入されていてもよい。この場合、一級アミノ基を有する
ポリマーにカルボキシル基含有多価水酸基化合物をアミ
ド結合させてもよいし、前記一級アミノ基含有モノマー
とカルボキシル基含有多価水酸基化合物をアミド結合さ
せた反応物をモノマーとして用い、ランダム共重合させ
てもよい。
【0021】上記カルボキシル基含有多価水酸基化合物
としては、例えばプロトカテキュ酸、ガリック酸、N−
トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン、2,2−
(ジヒドロキシメチル)プロピオン酸などがあげられ
る。
【0022】前記三級アミノ基含有モノマーとしては、
例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−
ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル
−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,
N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N
−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチ
ルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミ
ノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル
メタクリレートなどがあげられる。
【0023】任意の成分として用いられるその他のモノ
マーとしては、例えばアクリルアミド、N−メチルアク
リルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エ
チルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミ
ド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモル
ホリン、アクリル酸、各種アルキルアクリレート、メタ
クリル酸、各種アルキルメタクリレート、2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、アク
リロニトリル、スチレン、N,N−ジメチルアミノプロ
ピルアクリルアミド各種四級塩、N,N−ジメチルアミ
ノプロピルメタクリルアミド各種四級塩、N,N−ジメ
チルアミノエチルアクリレート各種四級塩、ジメチルア
ミノエチルメタクリレート各種四級塩、N,N−ジエチ
ルアミノエチルアクリレート各種四級塩、N,N−ジエ
チルアミノエチルメタクリレート各種四級塩、各種マク
ロモノマーなどがあげられる。
【0024】第一および第二のポリマー中の各モノマー
単位の含有割合は、次の範囲にあるのが望ましい。前記
ポリマー(A1)の場合、フェニルボロン酸基含有モノ
マーは0.1〜90モル%、好ましくは0.5〜30モ
ル%、官能基含有モノマーは0.1〜90モル%、好ま
しくは0.5〜30モル%、他のモノマーは0〜99モ
ル%、好ましくは50〜99モル%。
【0025】前記ポリマー(A2)の場合、フェニルボ
ロン酸基含有モノマーは0.1〜90モル%、好ましく
は0.5〜30モル%、多価水酸基含有モノマーは0.
1〜90モル%、好ましくは0.5〜30モル%、官能
基含有モノマーは0.1〜90モル%、好ましくは0.
5〜30モル%、他のモノマーは0〜99モル%、好ま
しくは50〜99モル%。
【0026】前記ポリマー(A3)の場合は、フェニル
ボロン酸基含有モノマーは0.1〜90モル%、好まし
くは0.5〜30モル%、三級アミノ基含有モノマーは
0.1〜90モル%、好ましくは0.5〜30モル%、
官能基含有モノマーは0.1〜90モル%、好ましくは
0.5〜30モル%、他のモノマーは0〜99モル%、
好ましくは50〜99モル%。
【0027】前記ポリマー(A4)の場合は、フェニル
ボロン酸基含有モノマーは0.1〜90モル%、好まし
くは0.5〜30モル%、多価水酸基含有モノマーは
0.1〜90モル%、好ましくは0.5〜30モル%、
三級アミノ基含有モノマーは0.1〜90モル%、好ま
しくは0.5〜30モル%、官能基含有モノマーは0.
1〜90モル%、好ましくは0.5〜30モル%、他の
モノマーは0〜99モル%、好ましくは50〜99モル
%。
【0028】前記ポリマー(B1)の場合、多価水酸基
含有モノマーは0.1〜90モル%、好ましくは0.5
〜30モル%、官能基含有モノマーは0.1〜90モル
%、好ましくは0.5〜30モル%、他のモノマーは0
〜99モル%、好ましくは50〜99モル%。
【0029】前記ポリマー(B3)の場合、多価水酸基
含有モノマーは0.1〜90モル%、好ましくは0.5
〜30モル%、三級アミノ基含有モノマーは0.1〜9
0モル%、好ましくは0.5〜30モル%、官能基含有
モノマーは0.1〜90モル%、好ましくは0.5〜3
0モル%、他のモノマーは0〜99モル%、好ましくは
50〜99モル%。
【0030】前記ポリマー(B2)および(B4)の場
合は、それぞれ前記ポリマー(A2)および(A4)の
場合と同じである。ただし、カルボキシル基含有水酸基
化合物により変性したポリマーの場合は、カルボキシル
基含有水酸基化合物の割合がカルボキシル基を含むポリ
マー中に含まれる一級アミノ基に対して5〜95モル
%、好ましくは10〜60モル%となるようにする。
【0031】第一および第二のポリマーは分子量が1,
000〜1,000,000、好ましくは10,000
〜500,000、さらに好ましくは10,000〜3
00,000であるものが望ましい。1000より小さ
い分子量ではコンプレックス形成による粒子がゲル状態
とならず、糖に対する応答性が低下する。また分子量が
1,000,000より大きくなると水溶性が低くなる
ものもあり、水溶液としても粘性が高過ぎて、マイクロ
カプセル化には不適切で、しかも糖に対する応答性が低
く、マイクロカプセルの状態変化が小さくなり、使用に
適さない。
【0032】本発明のマイクロカプセル化に用いる第一
および第二のポリマーは、ラジカル重合法による公知の
溶液、塊状、乳化、懸濁重合などにより、重合温度0〜
100℃、重合時間10分〜48時間で、モノマーを重
合させて製造することができる。重合反応は過酸化ベン
ゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t
−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−
ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジ
イソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチ
ロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバ
レロニトリル)および各種レドックス開始剤系などから
選ばれる一種または二種類以上の重合開始剤を用いて行
うのが好ましい。重合開始剤は溶媒を含む全モノマーに
対して0.01〜5.0重量%の割合で使用するのが好
ましい。
【0033】また他のポリマーを変性して第一または第
二のポリマーを製造する場合、例えば一級アミノ基を有
するポリマーを前記カルボキシル基含有多価水酸基化合
物で変性する場合は、一級アミノ基含有モノマーと他の
モノマーとを共重合して得られた共重合体の一級アミノ
基の一部を、カルボキシル基含有多価水酸基化合物とア
ミド化反応させることにより製造することができる。
【0034】本発明で用いられる第一のポリマーおよび
第二のポリマーは生理的条件下でコンプレックスゲルを
形成し、糖の添加によりそのコンプレックスが瞬時に解
離する。本発明の糖応答性マイクロカプセルは、このよ
うな第一のポリマーと第二のポリマーとが、多官能性架
橋剤により架橋された膜を有する粒子からなる。マイク
ロカプセルの構造は、全外周面を架橋膜が覆い、内部が
中空あるいは水溶性薬物を含んだ状態に形成されるのが
一般的であるが、全体が三次元の格子状に形成されてい
てもよく、また多孔状となっていてもよい。全体の形状
は球状が好ましいが、不定形その他の形状でもよい。
【0035】第一および/または第二のポリマーが三級
アミノ基を有している場合は、マイクロカプセルを構成
する膜内部の環境がアルカリ性となるため、用いる系の
pHに関係なく優れた糖応答性が得られ、生理的pH領
域(6.5〜8.5)においても糖応答性の優れたマイ
クロカプセルが得られる。また第一および第二のポリマ
ーとして、それぞれフェニルボロン酸基と多価水酸基を
有するポリマーを用いる場合は、第一および第二のポリ
マーとして同一のポリマーを用いて架橋を行うことがで
きる。マイクロカプセルの粒径は0.1〜1000μ
m、好ましくは1〜600μmであるのが望ましい。
【0036】次に本発明のマイクロカプセルの製造方法
について説明する。本発明のマイクロカプセルは、第一
および第二のポリマーの混合溶液を、これらのポリマー
を溶解しない媒体中に分散させて粒子を形成し、粒子を
構成するそれぞれのポリマー中の官能基を、上記媒体側
から多官能性架橋剤により架橋して、架橋膜を形成する
ことにより製造される。
【0037】好ましい製造方法は、第一のポリマーおよ
び第二のポリマーとして水溶性のものを用い、これらを
水に溶解した混合水溶液を、これらのポリマーを溶解し
ない非水系の分散媒に加え、油中水滴型(W/O型)の
分散系を調製して粒子を形成した後、多官能性架橋剤を
加えた分散液を添加することにより縮合反応させ、粒子
中の官能基を多官能性架橋剤により架橋する。架橋反応
は界面重縮合法により、ポリマー混合液と分散媒の界面
で架橋を行って、界面付近に架橋による膜を形成し、マ
イクロカプセル化するのが好ましいが、その他の方法に
より行うこともできる。
【0038】ポリマーの混合水溶液は、第一のポリマー
水溶液および第二のポリマー水溶液を別々に調製した
後、これらの水溶液を混合して調製してもよいし、第一
のポリマーおよび第二のポリマーを同時にまたは順次水
に加えて調製してもよいが、第一のポリマー水溶液およ
び第二のポリマー水溶液を別々に調製した後、これらの
水溶液を混合して調製するのが好ましい。
【0039】別々にポリマー水溶液を調製する場合、第
一のポリマー水溶液中の第一のポリマーの濃度は0.0
1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、第二
のポリマー水溶液中の第二のポリマーの濃度は0.01
〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%とするの
が好ましい。
【0040】第一のポリマー水溶液と第二のポリマー水
溶液との混合比は、分子量、濃度等により異なるが、一
般的には第一ポリマー:第二ポリマーの重量比で、通常
1:50〜50:1、好ましくは1:10〜10:1、
さらに好ましくは1:3〜3:1とするのが好ましい。
この場合フェニルボロン酸基:多価水酸基のモル比で
1:20〜20:1、好ましくは1:10〜10:1と
する。
【0041】第一および第二のポリマーを水溶液の状態
で混合すると、フェニルボロン酸基と多価水酸基とがコ
ンプレックスを形成してゲル化するので、糖その他のゲ
ル化防止剤を添加するのが好ましい。ゲル化防止剤はフ
ェニルボロン酸基または多価水酸基と反応して、フェニ
ルボロン酸基と多価水酸基のコンプレックス形成を封鎖
できるものであればよく、糖が好ましいが、トリスヒド
ロキシメチルメタン、1,3−プロパンジオールなどの
多価水酸基化合物でもよい。ゲル化防止剤の添加量はフ
ェニルボロン酸基または多価水酸基を封鎖できる量であ
ればよい。これらのゲル化防止剤はマイクロカプセル形
成後除去される。
【0042】前記多官能性架橋剤としては、例えばマロ
ン酸ジクロリド、コハク酸ジクロリド、グルタル酸ジク
ロリド、アジピン酸ジクロリド、ピメリン酸ジクロリ
ド、スベリン酸ジクロリド、アゼライン酸ジクロリド、
セバシン酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、イソ
フタル酸ジクロリド等の酸ジクロリド;ジイソシアン酸
m−キシリレン、ジイソシアン酸トリメチルヘキサメチ
レン、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン
酸m−フェニレン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、
4,4′−ジイソシアン酸メチレンジフェニル等のジイ
ソシアネートなどの二官能性架橋剤、あるいは三官能性
架橋剤などがあげられ、これらを一種または二種以上組
合せて用いることができる。多官能性架橋剤の使用量
は、両ポリマーに含まれる官能基の合計モル数に対し
て、0.1〜100モル倍、好ましくは0.5〜30モ
ル倍とするのが望ましい。多官能性架橋剤は一度にまた
は数回に分けて添加することができる。
【0043】前記ポリマーを溶解しない非水系の分散媒
としては、例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベン
ゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホル
ム、ジクロロメタン、エチルエーテル、酢酸エチルな
ど、水と混和しない有機溶媒があげられ、これらを一種
または二種類以上組合せて用いることができる。これら
の非水系有機溶媒中に、エマルジョンの安定化のために
乳化剤を添加したものを、マイクロカプセル化させるポ
リマー水溶液の3〜20倍体積用いると、良好な結果を
与える。
【0044】上記乳化剤としては、例えば界面活性剤ソ
ルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレー
ト、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリス
テアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセ
スキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタ
ンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステア
レート、ソルビタンモノトール油脂肪酸エステル、ソル
ビタンセスキトール油脂肪酸エステル、ソルビタントリ
トール油脂肪酸エステルなどがあげられる。これらの乳
化剤は非水系有機溶媒中に0〜20重量%、好ましくは
0.5〜5重量%となるように添加するのが望ましい。
【0045】架橋反応に際して、有機層中に親水性有機
溶媒であるエタノール、イソプロピルアルコール、ノル
マルプロピルアルコールなどを少量、具体的には0.1
〜10重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%添加す
ると、マイクロカプセルの膜厚を制御することができ
る。
【0046】多官能性架橋剤として酸ジクロリドを用い
て重縮合させる際、生成する塩酸を中和するために、三
級アミン等の脱塩酸剤を用いるのが好ましい。重縮合時
の温度は0〜60℃、好ましくは反応に伴う発熱または
架橋点となる官能基以外の官能基の反応を抑えるため、
0〜30℃の範囲で冷却しながら反応させるのが望まし
い。重縮合に要する時間は1〜60分の範囲でよく、3
0分以内にはほとんど反応が終了する。重縮合の際の攪
拌速度は50〜10000rpmが望ましい。なお得ら
れるマイクロカプセルの平均粒径は、乳化剤の種類、濃
度、乳化時の機械的攪拌速度などにより影響を受ける
が、より小さくする時は高速攪拌装置で2000rpm
以上にするとよい。
【0047】上記の製造方法では、まず第一のポリマー
と第二のポリマーとの混合水溶液を、ゲル化防止剤によ
りフェニルボロン酸基と多価水酸基とがコンプレックス
を形成しない状態で多官能性架橋剤により架橋すること
により、架橋構造の膜が粒子界面に形成される。その後
ゲル化防止剤を除去すると、フェニルボロン酸基と多価
水酸基がコンプレックスを形成して、糖応答性のマイク
ロカプセルが形成される。このマイクロカプセルは内部
が中空となっているため、薬物が保持され、架橋点を支
点とし、糖濃度に応じてフェニルボロン酸基と多価水酸
基とが可逆的に結合、解離を繰返すことができ、糖応答
性に優れたマイクロカプセルが得られる。
【0048】本発明のマイクロカプセルは糖尿病治療シ
ステム、糖センサーなどとして利用できる。例えば、糖
応答性マイクロカプセル中に水溶性薬物を内包すること
により、糖応答性のマイクロカプセルが得られる。
【0049】上記水溶性薬物としては、水に可溶な全て
の薬物が使用可能であり、例えばインスリン、化学修飾
したインスリン、グルカゴンなどがあげられる。またこ
れらの水溶性薬物の二種類以上を組合せて用いることも
できる。
【0050】本発明の水溶性薬物を内包する糖応答性マ
イクロカプセルは、マイクロカプセルを製造する際のポ
リマー水溶液中に水溶性薬物を溶解して製造することが
できる。この場合薬物を含む粒子の外周面で架橋膜が形
成され、薬物水溶液を内包するマイクロカプセルが形成
される。また薬物を溶解することなくマイクロカプセル
を製造した後、水溶性薬物を含浸させることもできる。
このときマイクロカプセル製造に際してゲル化防止剤を
使用した場合はそのままの状態で、またゲル化防止剤を
使用しない場合またはゲル化防止剤を除去した場合はマ
イクロカプセルを糖溶液と接触させて、フェニルボロン
酸基と多価水酸基を解離した状態で、高濃度の薬物水溶
液と接触させると、薬物水溶液がマイクロカプセル内に
浸入する。平衡に達した後、マイクロカプセルを糖を含
まない溶液と接触させると、フェニルボロン酸基と結合
していたゲル化防止剤や糖が解離して、フェニルボロン
酸基と多価水酸基が結合し、マイクロカプセルは内部に
薬物水溶液を内包した状態で、架橋膜が収縮し、薬物を
保持する。
【0051】本発明の糖応答性マイクロカプセルは、水
系の媒体中または50重量%以下の有機溶媒を含む水系
の媒体中、好ましくはリン酸緩衝液、リン酸生理緩衝
液、グッド緩衝液(ヘペス緩衝液、モプス緩衝液等)な
どの緩衝液中で使用するのが望ましい。この際のpHは
ポリマー中に3級アミノ基を含まない場合は、pH8.
5付近が好ましいが、3級アミノ基を含む場合は、生理
的pH領域(pH6.5〜8.5)の全領域とすること
ができる。アルカリ条件下でフェニルボロン酸基は4価
構造となるため、フェニルボロン酸−多価水酸基間コン
プレックスが安定に形成される。ポリマー中に3級アミ
ノ基が含まれる場合は、3級アミノ基の電子対がボロン
の空軌道に配位するので、生理的pHでも安定なコンプ
レックスを形成するものと推定される。また使用温度は
1〜60℃、好ましくは15〜40℃が望ましい。
【0052】上記のような条件において糖が存在しない
場合、本発明の糖応答性マイクロカプセルを構成する膜
は、ポリマー中のフェニルボロン酸基とポリマー中の多
価水酸基とが配位結合し、コンプレックスを形成した状
態で、架橋により網目構造の膜となっているので、マイ
クロカプセル中の薬物はマイクロカプセル外には放出さ
れない。
【0053】このような状態において糖濃度が上昇する
と、ポリマー中のフェニルボロン酸基と糖の水酸基とが
配位結合するようになり、ポリマー間のコンプレックス
は瞬時に解離し、ポリマーの網目構造がゆるくなり、マ
イクロカプセルは膨潤する。この膨潤の程度は糖濃度の
上昇に従って大きくなる。このためマイクロカプセル中
の水溶性薬物の放出は、糖濃度が上昇するに従って上昇
する。
【0054】さらにこのような状態において糖濃度が低
下すると、ポリマー間の解離が低下して再びコンプレッ
クスを形成するようになり、マイクロカプセルは収縮す
る。これに伴い内包している薬物の放出は減少する。薬
物を放出した後は、前記マイクロカプセル製造後に薬物
を内包させた場合と同様の操作で、薬物を再充填して、
繰返し使用することができる。
【0055】糖濃度としては、0.1mg/dl以上で
応答性を示すが、好ましくは1〜10000mg/dl
の糖濃度で使用するのが望ましい。本発明の糖応答性マ
イクロカプセルが応答性を示す糖としては、例えばグル
コース、ガラクトース、フルクトース、マンノースおよ
びソルビトールなどがあげられる。
【0056】このように本発明のマイクロカプセルは、
糖濃度の変化に応じて状態が可逆的に変化するので、こ
れにより薬物の放出を制御できる。この場合、ポリマー
中のフェニルボロン酸基および多価水酸基の含有量およ
びモル比、ならびに架橋度などを調整することにより、
糖応答速度、薬物の放出量、放出速度などを制御するこ
とができる。また本発明では、マイクロカプセル化する
ことにより、全体をゲル状で用いる場合に比べて表面積
が広くなり、糖濃度に対してより鋭敏な応答性を示すこ
とができる。
【0057】このようなマイクロカプセルは、生体適合
性材料で包んで、体内埋込式、体外循環式またはDDS
として治療用に用いることができるほか、糖センサーと
しても使用することができる。
【0058】こうして水溶性薬物としてインスリンを用
いたマイクロカプセルは、血糖値の増加に伴ってインス
リンを放出し、血糖値が低下するとインスリンの放出が
止まるようなオートフィードバック機構を有する糖尿病
治療用の製剤、または人工腎臓として利用できる。これ
により、長期投与を必要とする患者に対して毎回注射な
どを繰返す必要がなくなり、医師および患者に対して煩
雑さと苦痛を軽減することができる。
【0059】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、フェニル
ボロン酸基および官能基を有する第一のポリマーと、多
価水酸基および官能基を有する第二のポリマーとが、官
能基と反応する多官能性架橋剤により架橋された膜を有
する粒子からマイクロカプセルを構成するようにしたの
で、マイクロカプセルを構成する膜自体が直接糖濃度に
応答し、しかも糖に対する応答時間が短く、マイクロカ
プセル内の薬物の放出を容易にコントロールできる糖応
答性のマイクロカプセルが得られる。また本発明の製造
方法によれば、上記マイクロカプセルを容易に製造でき
る。
【0060】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。以下、参考例によりマイクロカプセルの原料とな
るポリマーの製造方法、実施例によりマイクロカプセル
を具体的に説明する。各例中、%は重量%を示す。
【0061】参考例1(フェニルボロン酸基と一級アミ
ノ基とを有するポリマーの合成例) 表1の参考例1−1,2に示した配合量でボロン酸基含
有モノマー、一級アミノ基含有モノマーおよびこれらと
共重合可能な他のモノマーならびに開始剤を溶媒に溶解
し、脱気封管中で45℃、1時間重合させた。重合後、
得られたポリマーを貧溶媒で3回沈澱し、透析した後、
凍結乾燥した。
【0062】得られたポリマーの分子量は水系の静的光
散乱法により測定した。またポリマーに含まれるボロン
(原子)含有量(B/P)の定量は原子吸光により、一
級アミノ基含有量の定量は酸塩基滴定法、1H−NM
R、元素分析により行った。表1に、使用した各種モノ
マーの配合量、得られたポリマーの分子量、B/P、一
級アミノ基ユニットの含有量を示した。表中、モノマー
の配合量において、例えば「B1−5.0」という記載
はB1のモノマーを5.0mol%配合したことを示
す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】表1および表2の脚注 B1;N−アクリルアミドフェニルボロン酸 B2;N−メタクリルアミドフェニルボロン酸 B3;4−ビニルフェニルボロン酸 tA1;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミ
ド tA2;N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルア
ミド A1;p−ビニルベンジルアミン A2;p−アミノスチレン H1;N−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕アク
リルアミド C1;N,N−ジメチルアクリルアミド C2;アクリルアミド C3;N−ビニルピロリドン DMF;N,N−ジメチルホルムアミド DMSO;ジメチルスルホキシド EtOEt;ジエチルエーテル MtOH;メタノール B/P;ポリマー中に含まれるボロン(原子)含有量
【0066】参考例2(フェニルボロン酸基と三級アミ
ノ基と一級アミノ基とを有するポリマーの合成例) 表1の参考例2−1〜参考例2−5に示した配合量でボ
ロン酸基含有モノマー、三級アミノ基含有モノマー、一
級アミノ基含有モノマーおよびこれらと共重合可能な他
のモノマーを用いて参考例1と同様な方法で重合し、精
製した。ポリマーに含まれるボロン(原子)含有量(B
/P)の定量は原子吸光により、三級アミノ基および一
級アミノ基含有量の定量は1H−NMR、元素分析、ア
セチル化したポリマーとそのままのポリマーの酸塩基滴
定により行った。表1に、使用した各種モノマーの配合
量、得られたポリマーの分子量、B/P、三級アミノ基
ユニットの含有量および一級アミノ基ユニットの含有量
を示した。
【0067】参考例3(フェニルボロン酸基と多価水酸
基と一級アミノ基とを有するポリマーの合成例) 表2の参考例3−1,2に示した配合量で多価水酸基含
有モノマー、一級アミノ基含有モノマーおよびこれらと
共重合可能な他のモノマーを用いて参考例1と同様な方
法で重合し、精製した。得られたポリマーの分子量、組
成は参考例1,2と同様にして調べた。分析結果を表2
に示す。
【0068】参考例4(多価水酸基と一級アミノ基とを
含有するポリマーの合成例) 表2の参考例4−1,2,3に示した配合量で多価水酸
基含有モノマー、一級アミノ基含有モノマーおよびこれ
らと共重合可能な他のモノマーを用いて参考例1と同様
な方法で重合し、精製した。得られたポリマーの分子
量、組成は参考例1,2と同様にして調べた。分析結果
を表2に示す。
【0069】参考例5(フェニルボロン酸基と多価水酸
基とを含まないポリマーの合成例) 表2の参考例5−1,2に示した配合量で一級アミノ基
含有モノマーおよび共重合可能な他のモノマーを用いて
参考例1と同様な方法で重合し、精製した。得られたポ
リマーの分子量、組成は参考例1,2と同様にして調べ
た。分析結果を表2に示す。
【0070】実施例1 フェニルボロン酸基と一級アミノ基とを有するポリマー
および多価水酸基と一級アミノ基とを有するポリマーを
二官能性架橋剤により架橋してなるマイクロカプセル
を、次のようにして調製した。参考例1のポリマーおよ
び参考例4のポリマーを、1%グルコースを含む蒸留水
中にそれぞれ溶解した後、両溶液を1:1(重量比)の
割合で混合し、5.0%のトリエチルアミンを加えてポ
リマー溶液とした。このポリマー溶液を、イソプロピル
アルコール1.5%と界面活性剤ソルビタントリオレエ
ート0.5%を含むその10倍容量のシクロヘキサン/
クロロホルム=3/1溶液に加えて分散系とした。この
分散系に、ポリマー溶液(分散系)に存在する一級アミ
ノ基の10モル倍量の二官能性架橋剤を加えて攪拌(4
00rpm)し、マイクロカプセルを調製した。二官能
性架橋剤はシクロヘキサン/クロロホルム=3/1溶液
として用いた。
【0071】ポリマーの濃度、混合比、用いた二官能性
架橋剤、得られたマイクロカプセルの糖応答性の結果を
表3の実施例1−1,2,3に示す。得られたマイクロ
カプセルの粒径を光散乱測定装置Malvern Sy
stem 3601−EC(Malvern社製)を用
いて測定した結果、10〜100μmの粒径分布であっ
た。また糖応答性については、マイクロカプセル中に水
溶性薬物として蛍光試薬フルオレセインイソチオシアナ
ートでラベル化したインスリン(FITC−インスリ
ン)を入れたものをカラムに詰めて緩衝液を流し、ベー
スラインが安定化した後、糖を添加した緩衝液を流した
時、蛍光検出器で測定して強度が上昇したものを○、上
昇しなかったものを×として評価した。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】表3および表4の脚注 *1については、光学顕微鏡でカプセル化が確認された
ものを○、確認されなかったものを×とした。 *2については、マイクロカプセルに蛍光ラベル化した
インスリン(FITC−インスリン)をローディングし
たものをカラムに詰めたものに緩衝液を流し、ベースラ
インが安定化した後、糖を添加した緩衝液を流したと
き、蛍光強度が上昇したものを○、上昇しなかったもの
を×とした。 *3 参考例5No.1のボロン酸基を含まないポリマ
ー2.0wt% *4 参考例5No.2のボロン酸基を含まないポリマ
ー4.0wt% *5 参考例4No.3のボロン酸基を含まないポリマ
ー4.0wt% TPC;テレフタル酸ジクロリド SEC;セバシン酸ジクロリド MDI;4,4′−ジイソシアン酸メチレンジフェニル
【0075】実施例2 フェニルボロン酸基と三級アミノ基と一級アミノ基とを
有するポリマーおよび多価水酸基と一級アミノ基とを有
するポリマーを二官能性試薬により架橋してなるマイク
ロカプセルを、参考例2のポリマーおよび参考例4のポ
リマーを用いて実施例1と同様な方法で調製、評価し
た。調製条件および糖応答性の結果を表3または表4の
実施例2−1〜実施例2−8に示す。
【0076】実施例3 フェニルボロン酸基と多価水酸基と一級アミノ基とを有
するポリマー同士を二官能性試薬により架橋してなるマ
イクロカプセルを、参考例3のポリマーを用いて実施例
1と同様な方法で調製、評価した。調製条件および糖応
答性の結果を表4の実施例3−1,2に示す。
【0077】比較例1 参考例5のポリマーおよび参考例4のポリマーを用いて
実施例1と同様な方法でマイクロカプセルを調製、評価
した。調製条件および糖応答性の結果を表4の比較例1
−1,2,3に示す。
【0078】比較例2 3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸0.82g
(4mmol)とN,N−ジメチルアクリルアミド3.
569g(36mmol)をジメチルホルムアミド1
4.355g中に加え、架橋剤としてエチレングリコー
ルジメタクリレート0.396g(2mmol)を加
え、開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘ
キサノエート0.096gを加えて、20分間窒素置換
して反応させ、糖応答型高分子複合体を製造した。この
複合体を用いて実施例1と同様にしてカプセル化の確認
および糖応答性を評価した。結果を表4に示す。
【0079】実施例4、比較例3 実施例1〜3、比較例1、2のFITC−インスリンを
内包するマイクロカプセルまたは糖応答型高分子複合体
を、糖500mg/dlを添加したpH7.4〜8.5
の緩衝液に浸し、内包されているFITC−インスリン
の半分の量が放出されるのに要する時間を調べ、応答時
間を評価した。結果を表5に示す。評価はFITC−イ
ンスリンの半分の量が放出されるのに要する時間が2分
未満のものをA、2分以上20分未満のものをB、20
分以上のものをC、1時間後にも放出が認められないも
のをDとした。
【0080】
【表5】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // A61K 37/26 ADP 8314−4C (72)発明者 青柳 薫子 茨城県牛久市田宮町576−124 (72)発明者 片岡 一則 千葉県柏市大室1083−4 (72)発明者 横山 昌幸 千葉県松戸市新松戸3−170−B−201 (72)発明者 脇 一徳 千葉県柏市明原2−9−19

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェニルボロン酸基および官能基を有す
    る第一のポリマーと、多価水酸基および官能基を有する
    第二のポリマーとが、前記官能基と反応する多官能性架
    橋剤により架橋された膜を有する粒子からなることを特
    徴とする糖応答性マイクロカプセル。
  2. 【請求項2】 第一および第二のポリマーが、それぞれ
    フェニルボロン酸基、多価水酸基および官能基を有する
    ことを特徴とする請求項1記載の糖応答性マイクロカプ
    セル。
  3. 【請求項3】 第一および第二のポリマーの官能基が一
    級アミノ基であることを特徴とする請求項1または2記
    載の糖応答性マイクロカプセル。
  4. 【請求項4】 第一および/または第二のポリマーが、
    さらに三級アミノ基を有することを特徴とする請求項1
    ないし3のいずれかに記載の糖応答性マイクロカプセ
    ル。
  5. 【請求項5】 第一のポリマーと第二のポリマーとの混
    合溶液を、これらのポリマーを溶解しない媒体中に分散
    させて粒子を形成し、粒子を構成するそれぞれのポリマ
    ー中の官能基を多官能性架橋剤により架橋することを特
    徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の糖応答性
    マイクロカプセルの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれかに記載の糖
    応答性マイクロカプセル中に、水溶性薬物が内包された
    ことを特徴とする糖応答性マイクロカプセル。
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