JPH0617208U - 磁界発生装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ＭＲＩ用磁界発生装置の磁気回路からの漏洩
磁束を設置室内に封じ込めることが可能な構成。 【構成】 磁界発生装置の設置室内の床面および壁面あ
るいは室内の所要空間位置に、磁気回路からの漏洩磁束
状況に応じて漏洩磁界の磁化方向と逆向きの磁化方向を
有する磁石を、その磁力、寸法、着設数や配置する空間
位置を適宜選定して配置することにより、磁気回路から
の設置室外への漏洩磁束を室内へ封じ込める磁気シール
ド効果を有する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、医療用核磁気共鳴断層撮影装置等に用いられる永久磁石を使用し 空隙に極めて強力な磁界を発生する磁界発生装置の改良に係り、磁気回路からの 漏洩磁束の磁化方向と逆向きの磁化方向を有する磁気シールド用磁石を該装置の 設置室内に配置することにより、漏洩磁束を磁気回路設置室内に封じ込め可能に した磁界発生装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

医療用核磁気共鳴断層撮影装置（以下ＭＲＩという）は、強力な磁界を形成す る磁界発生装置の空隙内に、被検者の一部または全部を挿入して、対象物の断層 イメージを得てその組織の性質まで描き出すことのできる装置である。

【０００３】 上記ＭＲＩ用の磁界発生装置において、空隙は被検者の一部または全部が挿入 できるだけの広さが必要であり、かつ鮮明な断層イメージを得るために、通常、 空隙内の撮像視野内には、０．０５〜０．５Ｔでかつ１×１０^-4以下の精度を有 する安定した強力な均一磁界を形成することが要求される。

【０００４】 ＭＲＩに用いる磁界発生装置として、図５に示す如く、Ｆｅ−Ｂ−Ｒ系磁石を 用いた一対の永久磁石構成体１，１の各々の一方端に環状突起３を設けた磁極片 ２，２を固着して対向させ、他方端を板状継鉄４，５、さらにこれらを４本の柱 状継鉄６にて連結し、磁極片２，２間の空隙７内に、静磁界を発生させる構成（ 実開昭６２−１０１２０６号公報）が知られている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上記の磁界発生装置には必ず漏洩磁界が存在し、その漏洩磁束は、空隙側面か らの漏洩磁束、継鉄面からの漏洩磁束、磁石からの直接の漏洩磁束などがあり、 設置条件によっては、磁気回路設置室外周辺の電子機器や医療機器に悪影響を及 ぼす恐れがある。

【０００６】 ＭＲＩの設置に際し、上記漏洩磁界の悪影響を磁気回路設置室外に与えるのを 防ぐため、従来より部屋全体にけい素鋼板、純鉄、パーマロイ等の高価な軟磁性 材料を用いて磁気シールドを施しているが、ＭＲＩ自体の漏洩磁束が大きいと、 上記磁気シールドの効果が低減するため、軟磁性材料厚みを増すなどの対策が必 要である。 しかし、設置室の壁面厚み等を考慮し軟磁性材料厚みを選定すると、シールド 効果に限界がある上、使用重量及びコストが大きくなる問題がある。

【０００７】 さらに、従来の磁気シールド材料では、飽和磁束密度の限界を有するため磁気 回路からの漏洩磁束によって、シールド板が磁気飽和を起こしている場合が多く あり、装置の設置室外部における送電線やトランス等からの悪影響や電車、自動 車、エレベータ等からの変動する外部環境磁場の影響を受け、撮像が困難になる 場合がある。

【０００８】 この考案は、ＭＲＩ用磁界発生装置を設置した設置室の壁面等に設けられた外 部磁界の影響を遮断するための磁気シールド材料が、磁界発生装置からの漏洩磁 束によって磁気飽和を起こすことがなく、本来の機能を果たすように、磁気回路 からの漏洩磁束を設置室内に封じ込めることが可能な構成からなる磁界発生装置 の提供を目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

この考案は、空隙を形成して対向する一対の永久磁石構成体を一対の板状継鉄 に設け、さらに板状の継鉄間の柱状継鉄で磁気的結合し、該空隙に磁界を発生さ せる磁界発生装置において、当該磁気回路からの漏洩磁束の磁化方向と逆向きの 磁化方向を有する磁気シールド用磁石を該装置の設置空間内に配置することを特 徴とする磁界発生装置である。

【００１０】 また、この発明は、上記の構成において、 磁気シールド材料表面に磁気シールド用磁石を配置することを特徴とする磁界発 生装置である。

【００１１】 この考案において、磁気回路は、円柱状や角柱状の柱状継鉄を間隔部材として 空隙を形成し、これに磁気的に接続し空隙を介して対向する一対の板状継鉄の対 向面に、同じ向きの磁化方向を有する一対の永久磁石構成体を着設し、あるいは さらに各永久磁石構成体の対向面に磁極片を設けた構成であれば、いかなる構成 であってもよく、永久磁石構成体の磁気特性、形状寸法、継鉄の形状寸法等を、 所要空隙の大きさ等に応じて適宜選定することが望ましい。

【００１２】 かかる磁気回路に用いる磁石構成体の永久磁石は、フェライト磁石、アルニコ 系磁石、希土類コバルト系磁石が使用できるが、特に、ＲとしてＮｄやＰｒを中 心とする資源的に豊富な軽希土類を用い、Ｂ、Ｆｅを主成分として３０ＭＧＯｅ 以上の極めて高いエネルギー積を示す、Ｆｅ−Ｂ−Ｒ系永久磁石を使用すること により、著しく小型化することができる。

【００１３】 この考案において、対向する永久磁石構成体の空隙対向面に磁極片を設置すれ ば、磁気回路外部への漏洩磁束をより少なくすることが可能である。磁極片は任 意の形状、形態を取り得るが、磁界の均一度向上を目的に、円板状磁性体の外周 部に環状突起を形成したもの、さらに、磁極片中央部に断面台形状の凸状突起を 設けたもの等が適宜採用でき、また、磁極片の材質も種々の磁性体のバルクから なるもの、磁性粉を固めたもの、同心円状にラミネートしたもの、異材質等を複 合したもの等、適宜選定できる。

【００１４】 この考案の特徴である磁気シールド用磁石は、磁界発生装置の漏洩磁束を所要 空間内、例えば、設置室内へ封じ込めるため、磁界発生装置の設置室内の床面お よび壁面あるいは室内の所要空間位置に適宜配置されるが、漏洩磁界の磁化方向 と逆向きの磁化方向を有する複数の磁石からなり、磁気回路からの漏洩磁束状況 に応じて磁石の磁力、寸法、着設数や配置する空間位置を適宜選定することによ り、磁気回路からの設置室外への漏洩磁束を室内へ封じ込める磁気シールド効果 を有する。

【００１５】 なお、通常、磁界発生装置の設置室の床面には磁気回路の磁束に影響を及ぼす 鉄骨等の磁性材料が多く使用されるため、床面への磁束漏洩の防止を目的として 、磁気回路下側の床面に、同じ磁化方向を有する一対の永久磁石構成体とは逆向 きの磁化方向を有する磁気シールド用磁石を設置することが好ましい。

【００１６】 上記磁気シールド用磁石は、磁界発生装置の設置室内の床面および壁面又は所 要空間に配置され、設置室内の壁面又は空間のある地点における磁気回路からの 漏洩磁束と同程度で逆向きの磁化方向を有するものであれば、磁石材質や形態、 着設方法は任意であるが、永久磁石構成体の磁気特性、磁極片寸法、空隙寸法な どに応じて、磁気シールド用磁石の磁力、寸法、着設数や位置を適宜選定する必 要がある。 例えば、磁気回路上方又は下方からの漏洩磁束に対応して磁界発生装置の設置 室内の床面や天井、さらに磁気回路側面からの漏洩磁束に対応して室内壁面に配 置すればよく、また広い室内であれば、衝立て等を利用して磁気回路近傍に配置 すれば良い。また、衝立て等も磁気シールド材パネル等にて構成することができ る。

【００１７】 また、磁気シールド用磁石は必ずしも一体化する必要はなく、磁気回路のＸ， Ｙ，Ｚ軸方向それぞれの漏洩磁束に対応するため、さらに設置室内の壁面又は室 内のある地点によって漏洩磁束の大きさが異なることから、シールド用磁石を小 型の永久磁石ブロックの構成体とし、複数の磁化方向の異なる磁石ブロックを組 み合せ配置したり、複数の磁石ブロック間にスペーサーを介在させたり、厚みの 異なる磁石ブロックを配置する等、種々の構成が採用できる。

【００１８】 この考案において、磁気シールド用磁石が内壁面に配置される磁界発生装置の 設置室は、磁気回路からの漏洩磁束を設置室内に封じ込めるよう、鉄等の磁性材 料であればいかなる材料でもよいが、従来から使用されているパーマロイ、けい 素鋼板等の軟質磁性材料を、磁気シールド用磁石と共に採用すれば、一層大きな 設置室内へのシールド効果が得られる

【００１９】

【作用】

この考案は、磁界発生装置の設置室内に漏洩磁束を所要空間内へ封じ込めるた めの磁気シールド用磁石を所要配置することを要旨とし、空隙に極めて強力な磁 界を発生するＭＲＩ用磁界発生装置において、磁気回路の漏洩磁束のＸ，Ｙ，Ｚ 軸のどの磁化方向においても、設置室外へ漏洩磁束を著しく低減することができ る。 例えば、空隙中心から２ｍ以上の位置での漏洩磁束を５Ｇ以下に低減でき、周 囲の電子機器等への悪影響を防ぐことが可能であり、また他の磁気シールド材料 と組み合せて使用する場合であれば、部屋全体の磁気シールド材料を少なくでき る。 さらに、磁気回路の漏洩磁束を設置室内に封じ込めることが可能となり、電車 、エレベーター等によって起こる外部環境磁界の変動に対処するために設けるパ ーマロイ等の磁気シールド板のシールド効果を有効に利用できる利点がある。

【００２０】 図面にもとづく考案の開示 図１はこの考案の一実施例を示す磁界発生装置の説明図である。磁気回路は、 主面が長方形からなる一対の板状継鉄４，５を、各板状継鉄４，５の四隅に配設 した４本の円柱状継鉄６で磁気的に連結して対向配置し、該対向面に同じ磁化方 向を有する一対の永久磁石構成体１，１を配設してある。 さらに、磁気回路はＦｅ−Ｂ−Ｒ系磁石からなる一対の永久磁石構成体１，１ の対向面に、周縁部に環状突起３を設けた磁極片２，２を固着して対向させ、磁 極片２，２間の空隙７内に、静磁界を発生させる構成からなる。

【００２１】 上記磁気回路からなる磁界発生装置において、装置の設置室８の床面及び室内 壁面に種々形状、寸法からなる磁気シールド用磁石９ａ〜９ｆが着設してある。 図中のＭは磁化方向を示し、実線１０ａ，１０ｂ，１０ｃは磁気回路からの漏洩 磁束の磁力等高線を表す。 各種の磁気シールド用磁石９ａ〜９ｆは、着設位置における磁気回路からの漏 洩磁束と同程度で逆向きの磁化方向を有した磁石であり、これにより磁気回路の 漏洩磁束を設置室内に封じ込め、例えば、空隙中心から２ｍ以上の位置での漏洩 磁束を５Ｇ以下に低減できる。 また、この磁気シールド用磁石９ａ〜９ｆの設置にともない、磁気回路の空隙 ７内に発生させた静磁界の強度及び均一度に影響を及ぼさないように考慮するか 、あるいは該影響を考慮して空隙７内に所要の静磁界を発生させるように永久磁 石構成体１、磁極片２の構成などが設定される。

【００２２】

【実施例】

常温時の（ＢＨ）ｍａｘが３５ＭＧＯｅを示すＦｅ−Ｂ−Ｒ系永久磁石を用い 、直径３００ｍｍ、高さ１．０ｍｍの凸状突起と、外径１１００ｍｍ、内径９０ ０ｍｍ、高さ４５ｍｍの環状突起を有する磁極片を配置し、磁極片の対向距離を ５００ｍｍに設定した図１に示す従来の磁界発生装置において、空隙中心部から Ｚ軸方向に５０ｍｍの空間でのＸ軸方向の所定位置における磁界強度を測定した ところ、図２に実線●でプロットしたような漏洩磁束が認められた。 また、上記構成の磁界発生装置を設置する、幅３０００ｍｍ、幅３０００ｍｍ 、高さ３０００ｍｍの直方体からなる設置室を、厚さ５ｍｍの鉄板及びパーマロ イで構成し、その中央部に上記磁界発生装置を設置するとともに、上記と同様位 置の磁界強度を測定したところ、実線○でプロットしたような漏洩磁束がみられ た。

【００２３】 そこで、上記の設置室壁面に、Ｂｒ＝４ｋＧのフェライト磁石ブロックからな る横１０００ｍｍ、縦８００ｍｍの磁気シールド用磁石を配置し、外部漏洩磁束 を測定したところ、一点鎖線（□）で示すように、漏洩磁束が著しく低減された 。

【００２４】 さらに、上記構成の従来の磁界発生装置のみの場合と、図４に示す如く、磁界 発生装置の設置室壁面１１をシールド板としかつ磁気シールド用磁石１２を配し た場合とのＺ軸上でのＹ軸成分の磁界強度を測定した。 図３のグラフに示すように、従来の磁界発生装置のみの場合（×でプロット） の磁束が大きく漏洩しているのに対し、シールド鉄板を使用した場合（○でプロ ット）では、漏洩がかなり減少しており、さらに磁気シールド用磁石を配した（ △でプロット）は、漏洩磁束が半減していることが分かる。

【００２５】

【考案の効果】

この考案による磁界発生装置は、装置の設置室内に磁気シールド用磁石を配置 することにより、空隙に極めて強力な磁界を発生する磁気回路であっても、設置 室外への漏洩磁束を室内に封じ込めることが可能である。例えば、空隙中心から ２ｍ以上の位置での漏洩磁束を５Ｇ以下に低減でき、ＭＲＩ設置室周辺の電子機 器等に与える悪影響が少なく、ＭＲＩ設置用の部屋全体に設ける磁気シールド用 軟磁性材料を少なくできる利点がある。 また、例えば磁気シールド用磁石を配置する箇所に応じて磁化方向及び／又は 厚みを調整することにより、漏洩磁束の磁化方向及び磁力に対してＸ，Ｙ，Ｚ軸 のどの漏洩磁束にも対応できる。 さらに、高精度の画像を得ることを目的として、パーマロイ等のシールド材と 併用することにより、シールド材が磁気飽和しても外部の変動的磁場からＭＲＩ 装置を保護し、均一な静磁場を保つことが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案による磁気シールド用磁石を配置した
磁界発生装置とその設置室の説明図である。

【図２】磁界発生装置の空隙中心部からＺ軸方向に５０
ｍｍの空間でのＸ軸方向の磁界強度を示すグラフであ
る。

【図３】磁界発生装置のＺ軸上でのＹ軸成分の磁界強度
を示すグラフである。

【図４】磁界強度の測定方法を示す磁界発生装置と設置
室の説明図である。

【図５】磁界発生装置の縦断説明図である。

【符号の説明】

１ 永久磁石構成体 ２ 磁極片 ３ 環状突起 ４，５ 板状継鉄 ６ 柱状継鉄 ７ 空隙 ８ 設置室 ９ａ〜９ｆ 磁気シールド用磁石 １０ａ，１０ｂ，１０ｃ 磁力等高線 １１ 設置室壁面 １２ 磁気シールド用磁石

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 空隙を形成して対向する一対の永久磁石
   構成体を一対の板状継鉄に設け、さらに板状の継鉄間の
   柱状継鉄で磁気的結合し、該空隙に磁界を発生させる磁
   界発生装置において、当該磁気回路の漏洩磁束の磁化方
   向と逆向きの磁化方向を有する磁気シールド用磁石を該
   装置の設置空間内に配置することを特徴とする磁界発生
   装置。
2. 【請求項２】 磁気シールド材料表面に磁気シールド用
   磁石を配置することを特徴とする請求項１記載の磁界発
   生装置。