JPH06113865A - 組換えアデノウイルスベクターおよび形質転換動 物細胞 - Google Patents

組換えアデノウイルスベクターおよび形質転換動 物細胞

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JPH06113865A
JPH06113865A JP3130726A JP13072691A JPH06113865A JP H06113865 A JPH06113865 A JP H06113865A JP 3130726 A JP3130726 A JP 3130726A JP 13072691 A JP13072691 A JP 13072691A JP H06113865 A JPH06113865 A JP H06113865A
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cell
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宏 半田
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 温度感受性,低温感受性,条件誘導性などの
条件変異性のSV40初期遺伝子を動物細胞中に効率的
に組み込ませるための組換えアデノウイルスベクターお
よび該ベクターを用いて形質転換した動物細胞および該
細胞の製造法。 【効果】 産業上有用な動物細胞を効率よく不死身化で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、組換えアデノウイルス
ベクターおよびその導入により形質転換して得られる動
物細胞および該動物細胞の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒトを含む動物の初代培養細胞は、元
来、無限に増殖できるものではなく有限分裂回数(通常
50−60PDL)を有しているものであるから、これ
ら特異機能を有した細胞を長期にわたり培養し、産業的
に大量に培養する場合、大きな障害となる。従って、動
物細胞を産業上役立てるためには,特異機能を有した状
態のまま細胞分裂回数が著しく増大されたか,理想的に
は事実上無限増殖能が付与(不死化)された形質転換動
物細胞を得る事が必要となる。近年、いくつかの癌遺伝
子が、初代培養細胞にその固有の機能を部分的に保持し
たままで無限増殖能を付与するのに役立つ機能を有して
いることが明らかになった。そこで該癌遺伝子発現ベク
ターDNAを初代培養細胞に導入する試みが多くなされ
ているが、従来のプラスミドDNAを用いる場合,DN
Aの細胞への導入効率は通常5−20%であり,また導
入による不死化効率も通常0.01%以下の低いレベル
に止まっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ある機能を
有する動物細胞を大量に、長期間培養する場合および機
能の異なった種種の細胞をできるだけ多く不死化する場
合にみられる問題点を解決しようとするもので、動物細
胞にSV40初期遺伝子等の癌遺伝子を含むアデノウイ
ルスベクターを導入することにより得られる機能の異な
る、数多くの不死化細胞を培地中で培養し、それら細胞
の特異的機能を利用することに特徴がある。しかも温度
感受性変異株等の条件変異性癌遺伝子を用いることによ
り、非許容条件下にして、癌遺伝子の機能をを失活し、
細胞本来の持つ機能を活用できるところにも特徴があ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に於て利用する癌
遺伝子または条件変異性癌遺伝子を組み込んだアデノウ
イルスベクターおよびそのベクターにより形質転換した
細胞は、以下に述べるようにようにして、調製し得る。
【0006】癌遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイル
スベクターの調製:動物細胞を形質転換するのに用いら
れる組換えアデノウイルスベクターはY.Gluzma
n等よって作成された△E1/X(J.Virol.5
0,606−614,1984)を改変したものであ
る。△E1/X はアデノウイルス5型の初期遺伝子で
あるE1AおよびE1Bを含むE1領域の大部分を欠損
したもので、正確にはアデノウイルス遺伝子の左端から
455番目から3330番目までの塩基配列を欠失して
いる。この欠失した領域に細胞やウィルス由来の野生ま
たは条件変異性癌遺伝子を含んだDNA断片を挿入した
組換えアデノウイルスベクターを作成した。それらDN
A断片には導入遺伝子を発現させるための遺伝子上のシ
グナル(プロモーター,ポリ(A)付加シグナル、RN
Aスプライシング部位等)を全て含んでいる。
【0007】動物細胞の形質転換: 1) 組換えアデノウイルスベクターによる癌遺伝子の
細胞への導入:細胞の形質転換には、細胞およびウイル
ス由来の癌遺伝子の野生株または条件変異株を組み込ん
だ組換えアデノウイルスベクターを用いる。導入には以
下に述べるいくつかの方法を用いた。1つは通常のウイ
ルス感染によるもので、これには細胞膜上にあるアデノ
ウイルスレセプターが主に関与するが、細胞の食作用も
若干関与すると思われる。この方法だと導入細胞種が限
られる場合が生じるので、他の方法として、ウイルス粒
子をエレクトロポレーション法により細胞内に導入する
方法を用いた。
【0008】2) 組換えアデノウイルスベクター導入
により不死化した動物細胞の樹立とそのクローニング:
上記の方法で組換えアデノウイルスベクターが導入され
た初代培養動物細胞を増殖培地(10%FCSを含む培
地)にて培養し、導入後3−4日目に、EDTA−トリ
プシンを用いて細胞を分散させて、10cmシャーレに
5x10個の細胞を植え込み、増殖培地で培養する。
4−5日毎に増殖培地を交換し、2−3週間でクローニ
ングするのに充分な大きさになってからコロニーを個別
に培養し、少なくとも60回以上の継代培養を行なう。
この有限分裂回数をはるかに越えた継代培養期間中に分
裂増殖を続けたコロニーを選別し、常法の希釈法により
更にクローニングを繰り返す。以下、実施例を示して本
発明とその効果を具体的に説明する。
【0009】
【実施例】
1) 条件変異性癌遺伝子を組み込んだ組換えアデノウ
イルスベクターの調製 アデノウイルス5型のE1領域を欠失した△E1/Xの
DNAを調製するには、アデノウイルスE1AおよびE
1Bで形質転換したヒト胎児腎臓細胞由来の293細胞
を用いる。293細胞はE1AおよびE1B遺伝子を発
現しているので、それら領域を欠損している△E1/X
が感染増殖できる。常法に従い、293細胞を用いて、
△E1/Xウイルス粒子を量産し、CsCl平衡密度遠
心勾配法により精製する。精製した△E1/Xウイルス
粒子を4M塩酸グアニジンにて、ウイルス外殻を壊し、
遺伝子DNAの両5’末端塩基に末端タンパク質が共有
結合している複合体をゲル濾過にて分離する。分離した
複合体を10mM Tris.HCl(pH8.5)−
1mM EDTA−150mM NaClから成る緩衝
液にて透析後、XbaIで切断し、上記のXbaI切断
後、分離した温度感受性SV40初期遺伝子を含むDN
A断片をT4リガーゼにて接合し、293細胞にリン酸
カルシウム法によりトランスフェクションし常法により
軟寒天培地に交換した後、10−14日後にプラーク分
離を行なう。
【0010】温度感受性SV40初期遺伝子を含むDN
A断片は東京大学医科学研究所の山口宣夫らによって分
離されたSV40A1株(J.Virol.15、12
97−1301、1975)に由来する。SV40A1
DNAをEcoRIで完全切断し、PvuIIで部分切
断し、SV40初期遺伝子を含むDNA断片をpBR3
22のEcoRIとPvuIIとの間に挿入する(図
1,ステツプ 1)。次にBglIで部分切断し、切断
部位の単鎖DNA部分を常法(Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 77、3898−3902,
1980)に従いS1ヌクレアーゼで削った後にT4リ
ガーゼで接合する。SV40複製開始点のBgl1切断
部分の欠損したものを選別する(図1,ステツプ
2)。この処理によりlargeT抗原に依存したSV
40DNA複製能は完全に失われ、細胞染色体内に一旦
組み込まれた組換えアデノウイルスベクターがSV40
複製開始点からのDNA複製により染色体外へ切り出さ
れることを防いでいる。次にEcoRIとPvuIIで
切断後、Klenowフラグメントにて両末端を平滑末
端にして、XbaIリンカーを両末端に接合後,Xba
Iにより切断し、SV40初期遺伝子を含むDNA断片
をpUC19のXbaI切断部位に挿入する(図1,ス
テップ 3)。こうして得られたプラスミドDNAを
baIで切断し、アガロースゲル電気泳動にて温度感受
性SV40初期遺伝子を含むDNA断片を分離し、上記
の△E1/XのXbaI切断部位に挿入する(図2,ス
テツプ4)。
【0011】以上の操作により、各々のプラークを形成
した組換えアデノウイルスDNAをサザーン法にて解析
し、目的とする組換えSV40−アデノウイルスベクタ
ーを選別し(図2,ステップ 5)、再度、プラーク分
離およびウイルスDNAを解析し、組換えSV40−ア
デノウイルスベクターの純化を完全にした後、こうして
得られたウイルスベクターを常法に従って293細胞に
感染させた。アデノウイルス特有の細胞変性効果が殆ど
すべての細胞に出現する感染後5−7日目に、その感染
細胞を含む培養液(DMEM+2%FCS)を3回凍結
融解し、3000rpm、10分間遠心後、上清をウィ
ルス原液として用いる。通常、上記の方法により感染価
が2x10PFU/mlのウイルス原液が得られる。
こうして得られたウイルスは図2ステツプ 5に見られ
るように挿入方向の違いにより、2つの異なるタイプの
ウイルスベクターが得られるが、感染により発現される
SV40初期遺伝子mRNA量には殆ど差がみられなか
ったので、以下タイプ1の組換えSV40−アデノウイ
ルスベクターを使用する。
【0012】2) ヒト骨髄支持初代培養細胞への組換
えアデノウイルスベクターの導入:ヒトの骨髄穿刺によ
り1mlの骨髄サンプルを採取し、Ficollを用い
て常法により骨髄単核細胞(MNC)を分離する。5x
104個のMNCを5mlの増殖培地(α−MEM、
10%FCS、100u/ml penicilli
n,50 μg/ml streptomycin)に
懸濁し、60mm シャーレに植え込む。シャーレに付
着した細胞を増殖培地で1−3週間培養し、この付着細
胞をヒト骨髄支持初代培養細胞として用いる。組換えア
デノウイルスベクターの細胞ヘの導入は、従来から用い
られている感染法またはエレクトロポレーション法を採
用して行なった。
【0013】感染法の場合、ヒト骨髄初代培養細胞がサ
フ゛コンフルエントになった状態で吸引し、血清無添加
α−MEM培地で洗浄後、上記1)により調製した組換
えSV40アデノウイルスベクター原液をmultic
ity of infection(m.o.i.)=
200PFU/−cellで感染し、1.5時間の吸着
時間の後に、洗浄後、10%FCSを含む増殖培地に交
換して培養を続ける。細胞がコンフルーエント(通常2
−3日後)になるまで培養する。
【0014】エレクトロポレーション法の場合、ヒト骨
髄初代培養細胞がサブコンフルーエントになってから、
EDTA−トリプシンを用いて分散し、増殖培地で1回
洗浄し、血清無添加α−MEM培地で更に1回洗浄し,
上記1)により調製したウイルスベクター原液で、1−
5x10 cell/mlになるように懸濁する。ウ
イルスベクター原液の感染価は2x10PFU/ml
であるので40−200 PFU/cellで導入する
ことになる。上記細胞懸濁液を電気パルス用のキュベッ
トの中に入れ、それを氷水の入ったセルーポレーターの
チャンバー内に設置し、電気強度500V/cm、キャ
パシター 1,180μFの設定条件でパルスを1回発
生させる。パルス後、10分間氷水中に静置し、次に、
増殖培地を加えて10cmシャーレに植え込む。12時
間後に増殖培地を交換し、接着細胞がコンフルエントに
なるまで培養する。
【0015】3) 形質転換細胞のクロニーング:上記
2)でウイルス感染またはエレクトロポレーション法に
てウイルスベクターを導入された細胞がコンフルーエン
トになった後、EDTA−トリプシンにて細胞を分散さ
せ、細胞数を算定し、増殖培地を用いて500個の細胞
を10cmデイッシュに植え込み、以後5日毎に増殖培
地で全量交換を行なう。培養を開始してから1週間後に
コロニーが出現し、2−3週間を過ぎた時点でクロニー
ングするのに十分の細胞集落になってから約20個のコ
ロニーを無差別に選択し、個別に培養する。クローニン
グを行なうに際しては、滅菌濾紙(0.5x3x3m
m)と滅菌ピンセットを用意しておき、まず培地を除去
し、PBSで2回洗浄後、上記ピンセットを用いて濾紙
にEDTA−トリプシンをしみ込ませたものをコロニー
の上に注意深くのせる。この場合、コロニーを取り扱う
毎にピンセットをガスバーナーでよく焼いて汚染を避け
る。上記濾紙をコロニーの上にのせてから数分後に、そ
れを増殖培地を1mlづつ入れてある24穴プレートに
移し、プレートを軽くたたいて細胞を濾紙から離れるよ
うにし、濾紙はそのままウェルの中に沈めておく。5日
後に、増殖培地を全量交換する際に、滅菌ピンセットで
上記濾紙をウェルから除去する。上記細胞を1回目の培
養細胞とし、コンフルエントになった時に常法に従って
4−6倍に希釈し、一部を継代培養し、残りは常法に従
い凍結保存しておく。通常4−6日毎に継代培養を続
け、少なくとも30回以上行なった。正常初代培養細胞
の継代可能回数(20−30回)をはるかに越えて、分
裂増殖をつづけたコロニーを選別し、再び500個の細
胞を10cmシャーレに植え込み、クロニーングを行
い、上記2回のクロニーングを経た細胞を不死化かつク
ローン化したヒト骨髄支持細胞として維持ないしは凍結
保存した。
【0016】4) ウイルスベクター導入による骨髄支
持細胞不死化効率の算定:上記3)のクローニング1回
目で形成したコロニーを約20個無差別に選定し,30
回以上継代培養可能なコロニー数を算定した結果を表1
に示す。
【0017】
【表1】
【0018】上記表において,「コロニー数/500細
胞」の値は,ベクターを導入した500個の細胞を10
0mmシャーレに植え込み培養した時に出現したコロニ
ー数を数えたものである。「不死化したコロニー数」は
選択したコロニーのうち30回以上継代して生き残った
コロニー数を数えた。「不死化効率」は植え込んだ50
0細胞に対して30代以上継代できたコロニー数を計算
し不死化効率を計算した。なおC)の場合の実験3は5
00細胞のかわりに10細胞植え込んだ。
【0019】不死化効率を比較するのに20μgのSV
40初期遺伝子をpUC19に挿入したプラスミドDN
A(図1,ステツプ 3に記載)を常法の燐酸カルシウ
ム法または上記エレクトロポレーションにて導入した。
またコントロールとして、SV40初期遺伝子を含まな
いアデノウイルスベクター△E1/Xを感染法またはエ
レクトロポレーション法にて導入した。その結果、組換
えウイルスベクターの場合、格段的に高い効率でヒト骨
髄支持細胞を形質転換し、不死化することが可能であっ
た。ちなみに燐酸カルシウム法およびエレクトロポレー
ション法により組換えプラスミドDNAを導入した場合
の通常の不死化効率は0.001−0.05%である。
このことから、組換えウイルスベクターの導入による不
死化効率はDNA導入する場合に比して100倍以上も
高いことがわかった。
【0020】5) 不死化されたヒト骨髄支持細胞の多
種多様性:ヒト骨髄支持組織はいくつかの異なった細胞
種により構成されている。それらはマクロファージ、繊
維芽細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞が主なものである。
今日まで、DNA導入によりヒト骨髄支持組織から、い
くつかの細胞株が樹立されているが、それらは全て繊維
芽様細胞である。そこで、ウイルスベクターにより不死
化された細胞株の3つをランダムに選択し、それらの形
態学的所見を図3に示し、細胞化学的所見を表2に示
す。
【0021】
【表2】
【0022】HAS−301細胞株は繊維芽様細胞で、
HAS−303株はファクターVIII陽性であること
から内皮細胞由来、HAS−304株はアルカリフォス
ターセ゛陰性であることからマクロファージ由来である
と思われる。これらの結果は、組換えウィルスベクター
を用いて不死化された細胞は、単一細胞種ではなく、多
種多様の細胞種を不死化できることを示すものである。
更に、HAS303株はGM−CSFやIL−6を検出
感度以上に産生しているが、HAS−301、304株
ではそれら因子の産生は確認できなかった。
【0023】6) 組換えウイルスベクターによるヒト
ケラチノサイトの不死化:ヒトケラチノサイト初代培養
細胞を常法により、ヒト皮膚組織から作製する。この場
合、ケラチノサイト培養用のCa++濃度の低い特殊培
地KGM−LCを用いる。血清を培地に添加すると分化
誘導が起こり、角化が始まるので血清は添加しない。K
GM−LC培地でケラチノサイトがサブコンフルエント
になった時に、上記2)と同様に、感染およびエレクト
ロポレーション法にて組換えウイルスベクターを細胞内
に導入する。その導入効率を導入後48時間で調べた結
果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】上記表において,トランジエント エクス
プレションは導入48時間後,SV40T抗原陽性細胞
の%を計算した。各実験少なくとも200細胞調べた。
「血清およびカルシウム抵抗性コロニー数」の測定に際
し導入された細胞(1x10細胞)は,Sheleg
elらの方法(1988)により,3週間血清および高
濃度カルシウム存在下で培養された。なお表中「m.
o.i.」とはmultiplicities of
infection(感染の多重度)のことである。
【0026】組換えプラスミドに比して組換えウイルス
ベクターの方がはるかに導入効率は良いことがわかっ
た。またウイルスベクター導入の際に,異なるm.o.
i.で導入するとm.o.i.が5の方が500よりも
導入効率が良いことから、導入細胞には最適m.o.
i.があることがわかる。
【0027】さらに、細胞染色体内への組み込み効率の
実験として、血清およびCa++抵抗性コロニーの出現
頻度を調べた。この実験は、正常ケラチノサイトは血清
および1.5mMCa++添加DMEM培地では細胞分
化して増殖しないが癌遺伝子が細胞染色体内に組み込ま
れ癌化したケラチノサイトは増殖し、コロニーを形成す
ることを利用したものである。Schlegelらの報
告した常法(EMBO,J.,7,3181−318
7,1988)に従い血清およびCa++抵抗性コロニ
ーの出現頻度を比較した結果を表3に示す。組換えウイ
ルスベクターの方がDNAに比して、血清およびCa
++抵抗性コロニー出現率が高い。3x10細胞の初
代培養ケラチノサイトに上記1)で調製した組換えウイ
ルスベクターと組換えプラスミドDNAを導入して、導
入後、血清無添加のKGM−LC培地で継代培養を行な
う。DNAを導入したケラチノサイトは数代継代培養を
繰り返すと増殖が全く止まった。しかし、組換えウイル
スベクターを導入したケラチノサイトは30代以上継培
養しても細胞増殖が続き、不死化したものと思われる。
【0028】これら不死化したケラチノサイトは正常ケ
ラチノサイトと同様の形態学的所見を呈し、培地である
KGM−LCに1.5mMCa++を添加することによ
り、図4に示すようにケラチノサイトの分化に特有の細
胞重層化(stratification)や細胞の偏
平化が起こる。しかし分化程度は正常のケラチノサイト
に比べると若干弱い。
【0029】以上の結果から、本発明に従って、複製開
始能の欠損したSV40初期遺伝子の条件変異株を含む
アデノウイルスベクターを感染法またはエレクトロポレ
ーション法により細胞内に導入する手段は、従来のDN
Aによる導入法に比して、格段的に高い効率でヒト骨髄
支持細胞とヒトケラチノサイトを形質転換し、不死化す
ることを可能にした。
【0030】SV40以外のウイルス由来の癌遺伝子や
C−fosやC−myc等の細胞由来の癌遺伝子をアデ
ノウイルスベクターに組み込むことは可能である。
【0031】
【発明の効果】本発明の新規組換えウイルスベクターに
よる動物細胞の不死化効率は,プラスミドDNAによる
場合に比べて100倍以上である。また,本発明のベク
ターは,多種多様の動物細胞を不死化することができ
る。従って,本発明は,産業上有用な動物細胞を安価且
つ効率よく提供する上で価値の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】SV40−アデノウイルスベクターの構築模式
図のステップ1−3までを示す。
【図2】SV40−アデノウイルスベクターの構築模式
図のステップ4−5を示す。
【図3】SV40−アデノウイルスベクターにより不死
化された動物細胞の形態を示す図面代用写真である。
(a)は,HAS−301の顕微鏡写真,(b)は,H
AS−303の顕微鏡写真,(c)はS−304の顕微
鏡写真である。
【図4】SV40−アデノウイルスベクターにより不死
化されたケラチノサイトと,Ca++により分化誘導さ
れた不死化したケラチノサイトの形態を示す図面代用写
真である。(a)および(c)は不死化ケラチノサイト
の形態を示す顕微鏡写真,(b)および(d)はCa
++により分化誘導した不死化ケラチノサイトの形態を
示す顕微鏡写真である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウイルスまたは細胞由来の癌遺伝子およ
    び条件変異性癌遺伝子を動物細胞染色体に効率よく組み
    込むための新規組換えアデノウイルスベクター。
  2. 【請求項2】 条件変異性のSV40初期遺伝子を動物
    細胞染色体に効率よく組み込むための新規組換えアデノ
    ウイルスベクター。
  3. 【請求項3】 条件変異性のSV40初期遺伝子が温度
    感受性のSV40初期遺伝子である請求項2記載のベク
    ター。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の組換えウイルス
    ベクターを用いて形質転換した動物細胞。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の組換えアデノウ
    イルスベクターを用いて感染法またはエレクトロポレー
    ション法により形質転換細胞を製造する方法。
JP3130726A 1991-03-18 1991-03-18 組換えアデノウイルスベクターおよび形質転換動 物細胞 Pending JPH06113865A (ja)

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