JPH06105091B2

JPH06105091B2 - 平軸受

Info

Publication number: JPH06105091B2
Application number: JP60159719A
Authority: JP
Inventors: 清今井
Original assignee: エヌデ−シ−株式会社
Priority date: 1985-07-18
Filing date: 1985-07-18
Publication date: 1994-12-21
Anticipated expiration: 2009-12-21
Also published as: JPS6220916A

Description

【発明の詳細な説明】＜発明の目的＞産業上の利用分野本発明は平軸受に係り、詳しくは、近年の内燃機関の出
力増大による潤滑油の温度上昇および高温における潤滑
油の酸化等によって生成する有機酸の増大等の条件下で
十分に性能を発揮でき、とくに、オーバレイ層が２つの
層から成って、埋収性ならびになじみ性に優れるととも
に、耐摩耗性ならびに耐疲労性を向上した平軸受に係
る。

従来の技術内燃機関の回転部分や摺動部分に供される平軸受は半割
状若しくは円筒状から成って、その構造は、鋼板の裏金
の上に銅系若しくはアルミニウム系の軸受合金層を被着
して複層化したものである。これら平軸受のうち軸受合
金層が銅−鉛軸受合金、ブロンズ軸受合金、アルミニウ
ム軸受合金から成るものは高荷重用軸受として知られて
いる。しかし、この軸受は耐荷重性に優れているが、軸
受として必要な特性、例えば、耐焼付性、埋収性、なじ
み性が劣っている。この点から埋収性や、なじみ性を与
える金属成分を軸受合金層の上にメッキ等の手段でオー
バレイ層を形成することが行なわれている。すなわち、
鋼板の裏金上に銅またはアルミニウム合金の焼結合金層
又は鋳造層を軸受合金層として被着させ、この軸受合金
層上に厚さ10〜30μのオーバレイ層を形成した３層軸受
が自動車用のものとして用いられている。

このオーバレイ層は耐荷重性、耐摩耗性、耐焼付性、な
じみ性および異物の埋収性向上の効果があり、このオー
バレイ層として、Pb-Sn系、Pb-Sn-Sb系、Pb-Sn-Cu系、P
b-Sn-In系等が知られ、特に、米国特許2605149号明細書
によってPb85〜90％、Sn8〜12％、Cu2〜３％のPb-Sn-Cu
系オーバレイ層が開示されている。すなわち、このオー
バレイ層の主成分はPbから成るため、回転軸やジャーナ
ル部とのなじみ性が向上すると共に、潤滑油中の異物の
埋収性が向上し、含まれるSnは耐食性を良くし、Cuは耐
疲労性を向上させている。

しかしながら、近年、内燃機関の出力が大きくなり、潤
滑油の温度が上昇している。これにつれてオーバレイ層
が軟化し易くなり、耐摩耗性が悪化する。また、高温に
よって潤滑油が酸化して有機酸等の腐食性生成物が生成
し、これによってオーバレイ層は腐食するという問題が
ある。

発明が解決しようとする問題点本発明はこれらの問題点を解決することを目的とし、具
体的には、Al又はCu系の軸受合金層上のオーバレイ層
を、Pb-Sn-Cu系合金の組成を相違させて２層のメッキ層
として形成し、耐疲労性および耐摩耗性を大巾に向上さ
せた平軸受を提案する。

＜発明の構成＞問題点を解決するための手段ならびにその作用すなわち、本発明に係る平軸受は、鋼板の裏金上にAl又
はCu合金の軸受合金層が被着形成され、この軸受合金層
上にPb-Sn-Cu系オーバレイ層が形成される平軸受におい
て、このオーバレイ層を上オーバレイ層を下オーバレイ
層との２層に分けて構成し、この上オーバレイ層はPb85
〜90％、Sn8〜12％ならびにCu2〜３％からなるととも
に、下オーバレイ層はPb63〜82％、Sn15〜30％ならびに
Cu3〜７％からなることを特徴とする。

以下、図面により更に具体的に説明する。

まず、第１図（ａ）および（ｂ）は本発明の平軸受の一
例を示す斜視図および矢視A-A方向の断面図であり、第
１図（ｂ）において符号１は裏金、２は銅またはアルミ
ニウム合金の軸受合金層、３はニッケルメッキ層、４は
下オーバレイ層で、５は上オーバレイ層である。すなわ
ち、本発明においては、軸受合金層上のオーバレイ層は
後記の如くメッキによって形成するが、上下のオーバレ
イ層５、４から成って、後記の如く、これら各層によっ
て特性を互いに補充し合って優れた軸受性能を発揮す
る。

従来のオーバレイ層は単層からできており、なじみ性と
埋収性は比較的良好に保持すると、硬度が低下し、現在
の高出力の内燃機関では耐摩耗性が不充分であるという
欠点がある。すなわち、耐摩耗性が悪いと内燃機関の運
転中にオーバレイが摩耗し、内燃機関の効率を低下する
原因となり、更に、軸受とジャーナル又はクランクピン
との隙間が増大し、内燃機関の打音の発生の原因にもな
っている。

これに対し、本発明はオーバレイ層を二層に分けて構成
するとともに、これに各層はPb-Sn-Cu系のものとして構
成し、とくに、上オーバレイ層５は厚さ約３〜10μの比
較的軟らかく、なじみ性及び埋収性の良好なものとして
構成する。これに対し、下オーバレイ層４は上オーバレ
イ層に較べてSnとCuの含有量を多くして耐摩耗性を向上
させる。つまり、下オーバレイ層４は、後記の実施例に
示す如く、Pb63〜82％、Sn15〜30％、Cu3〜７％から成
って、SnならびにCuの含有量を高めている。これに反
し、上オーバレイ層５はPb85〜90％、Sn8〜12％、cu2〜
３％から成っている。SnならびにCuは少なくし、とく
に、耐疲労性の上からCuの上限を３％とする。

すなわち、単層から成るオーバレイで、Pb-Sn-Cu組成中
のSn量を増加することは耐疲労性を低下させるため、Sn
量を増加させることができない。しかし、本発明では、
オーバレイ層を２層に構成し、とくに下オーバレイ層の
厚さを減少させて耐疲労性を向上させるため、Sn含有量
を増加させることができる。換言すると、オーバレイ層
は上下２つのオーバレイ層５、４から成って、これら各
層では単層から成る従来例に比べると厚さはいずれも薄
く構成し、とくに、下オーバレイ層４は、後記の実施例
に示す如く５〜15μ程度にする。このため、この程度に
薄くすると、Sn量を多くしても、それにともなって耐疲
労性が低下することがない。このように下オーバレイ層
中のSn含有量の増加は最近の内燃機関の出力増大に伴な
う潤滑油による腐食防止に効果があり、更に、Snは下オ
ーバレイ層４のPb-Snマトリックスの強化に役立つ。

また、下オーバレイ層４においてSn量とともにCu量を増
加させ、これによって耐摩耗性と耐疲労性とを向上させ
る。

すなわち、下オーバレイ層中でCuはSnと金属間化合物を
形成する。この際の下オーバレイ層の耐摩耗性はSn量が
ふえるとともに増加するが、第３図に示すように、Cu含
有量も３％から５％までは次第に増加し、５％以上では
急激に増加するため、Cu量をなるべく多くするのが好ま
しい。しかしながら、耐疲労性は第２図に示すようにCu
含有量３％付近で最大となり、それ以上では急激に低下
し、Cu量は耐疲労性の上ではあまり多くすることは好ま
しくない。このため、本発明では、このCu量の下限は３
％とするが、Cu量の増加による耐疲労性の低下を下オー
バレイの厚みを５〜15μの如くきわめて薄く構成するこ
とによっておさえられ、この限界が７％であるため、Cu
量の上限は７％とした。

なお、第２図はアンダーウッド軸受試験機を使用し、荷
重500kg/cm²、回転数3500rpm、潤滑油温度150℃におけ
るオーバレイの耐疲労性を示す曲線であり、第３図は上
記試験条件でCu1％、Sn10％、Pb89％のオーバレイ層の
摩耗量を100とした時のCu含有量の変化と摩耗比を示す
グラフである。

実施例以下、実施例によって更に説明する。

実施例1. まず、常法によって鋼板の裏金上に形成されたCu系軸受
合金層の表面を通常の電気メッキと同様に脱脂及び酸洗
してから、1.0〜2.0μ厚のニッケルメッキを行なった。
このニッケルメッキ層は、Cu系軸受合金層中に、内燃機
関などの運転時に、下オーバレイ層中のSnが拡散し、下
オーバレイ層の耐食性が低下するのを防止する役目を果
たしている。

次に、このニッケルメッキ層の上に浴組成（Ａ）のメッ
キ浴および電流密度で厚さ５〜15μの電気メッキをし、
下オーバレイ層を形成した。

硼弗化鉛（金属鉛として）60〜120g/l 〃錫（金属錫として）15〜40 〃浴組成（Ａ）〃銅（金属銅として）３〜７〃硼弗化水素酸 40〜50 〃レゾルシン 1.0〜5.0 〃ゼラチン 0.1〜0.5 〃電流密度 1.0〜3.0A/dm² この下オーバレイ層の組成は次の通りで、耐摩耗性を向
上するため、SnとCuの含有量が多くなっている。

Pb 63〜82％ Sn 15〜30〃 Cu 3〜７〃次に、この下オーバレイ層の上に浴組成（Ｂ）のメッキ
浴及び電流密度で厚さ３〜10μの上オーバレイ層を形成
した。

硼弗化鉛（金属鉛として）90〜110g/l 〃錫（金属錫として）８〜12 〃浴組成（Ｂ）〃銅（金属銅として）２〜３〃硼弗化水素酸 40〜50 〃レゾルシン 1.0〜5.0 〃ゼラチン 0.1〜0.5 〃電流密度 1.0〜3.0A/dm² この上オーバレイ層の成分範囲は次の通りであった。

Pb 85〜90％ Sn 8〜12〃 Cu 2〜３〃このようにして得られた本発明に係る軸受は従来品より
も耐摩耗性、耐疲労性および耐食性が良好であった。

実施例2. 実施例１の上オーバレイ層の上に浴組成（Ｃ）のメッキ
浴および電流密度で厚さ0.5〜2.0μのインジウムメッキ
を行なった。

硼弗化インジウム 90〜110g/l 浴組成（Ｃ）硼酸 20〜30 〃硼弗化アンモニウム 40〜60 〃 pH 1.0〜2.0 〃電流密度 1.0〜3.0A/dm² 次に、このインジウム層を二層の上下オーバレイ層中に
拡散させるため、約150℃で２時間保持した。この結
果、インジウムは上下オーバレイ層中に均一に拡散し、
実施例１の上下オーバレイ層よりも更に耐摩耗性、耐疲
労性及び耐食性の良好なオーバレイを得ることができ
た。

＜発明の効果＞以上詳しく説明したように、本発明はPb-Sn-Cu系オーバ
レイ層を二層に構成し、上オーバレイ層はSnならびにCu
が少ないため、比較的軟らかく下オーバレイ層はSnなら
びにCuが多いため、比較的硬い。このため、この構造の
平軸受であると、耐食性、耐摩耗性および疲労強度が大
巾に改良され、近年の内燃機関の出力増大、潤滑油の温
度上昇ならびに高温における潤滑油の酸化により生成す
る有機酸等の増大等に十分に対応できる新しいオーバレ
イ層を具える平軸受が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ）および（ｂ）は本発明による平軸受の一例
を示す斜視図および矢視A-A方向の断面図、第２図は従
来のオーバレイの銅含有量と耐久時間の関係を示すグラ
フ、第３図は銅含有量と摩耗比の関係を示すグラフであ
る。符号１……裏金２……CuまたはAl合金の軸受合金層３……ニッケルメッキ層４……下オーバレイ層５……上オーバレイ層

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】鋼板の裏金上にAl又はCu合金の軸受合金層
が被着形成され、この軸受合金層上にPb-Sn-Cu系オーバ
レイ層が形成される平軸受において、このオーバレイ層
を上オーバレイ層と下オーバレイ層との２層に分けて構
成し、この上オーバレイ層はPb85〜90％、Sn8〜12％な
らびにCu2〜３％から構成する一方、下オーバレイ層はP
b63〜82％、Sn15〜30％ならびにCu3〜７％からなって、
厚さを５〜15μにすることを特徴とするなじみ性ならび
に埋収性に優れる平軸受。