JPH0576668U - 溶接ワイヤ支持電極構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶接ワイヤの走行によって生じたワイヤ繰出
孔の磨耗を適宜補正でき、長期間安定した溶接を行うこ
とができる溶接ワイヤ支持電極構造を提供すること。 【構成】 溶接ワイヤ４が挿通されワイヤ４の側面を支
持して給電する溶接ワイヤ支持電極において、中心に溶
接ワイヤ４の繰出孔１１を有すると共に先端部１５が先
細に形成され且つ先端部１５に軸方向にスリット１６が
形成されたコンタクトチップ１３と、該コンタクトチッ
プ１３の先端部１５を囲繞して設けられその先端部１５
を径方向内方に押圧するためのテーパ状の内周面１９を
有するワイヤガイドチップ１４と、を備えたことを特徴
とする溶接ワイヤ支持電極構造。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、消耗電極式溶接における溶接ワイヤの支持電極構造に係り、特に、 溶接ワイヤの走行により生じる支持電極の磨耗を適宜補正できる新規な溶接ワイ ヤ支持電極構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

図２に示すように消耗電極式溶接装置１は、ノズル２から母材３へ向けて溶接 ワイヤ４を所定の速度で送り出すと共にアルゴン，ＣＯ₂ 等のシールドガス５を 吹き出し、ワイヤ４と母材３との間に形成されるアーク６をシールドガス５で包 みながら溶接するものである。

【０００３】 上記シールドガス５は、図示しないガスボンベからケーブル７を介してノズル ２へ導かれ、ケーブル先端８に設けられた孔９からノズル２内に吹き出されるよ うになっている。他方、上記溶接ワイヤ４は、図示しないワイヤフィーダから上 記ケーブル７を介してノズル２へ導かれ、ノズル２内に設けられた支持電極１０ を挿通し、この電極１０により給電されつつ送り出されるようになっている。

【０００４】 上記支持電極１０は、図３に示すように、導電性を有する銅合金等からロッド 状に成形されており、その軸芯部に溶接ワイヤ４を挿通させるためのワイヤ繰出 孔１１が形成されている。この支持電極１０には、図示しない電源から上記ケー ブル７を介して所定の電流・電圧が供給されるようになっている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上記支持電極１０は、そのワイヤ繰出孔１１に送給される溶接ワイヤ４の側面 を支持し、溶接ワイヤ４に電流・電圧を給電するものである。ここで、消耗電極 式溶接では上記溶接ワイヤ４が比較的高速（５〜１０ｍ/min程度）で送給される ため、高速走行するワイヤ４が繰出孔１１と擦れ合って繰出孔に磨耗が生じてし まう。

【０００６】 この繰出孔１１内の磨耗は、繰出孔１１からワイヤ４への給電位置（接触位置 ）および給電面積（接触面積）のばらつきを招き、これにより溶接中の電流・電 圧が大幅に乱れ、アーク６が不安定となって健全な溶接が行えない。また、繰出 孔１１内の磨耗によりワイヤ４の送り方向性も安定しなくなる。

【０００７】 このようにワイヤ繰出孔１１が磨耗した支持電極１０は、新品のものと交換す るしかなく、その寿命の短さが問題となっていた。

【０００８】 以上の事情を考慮して創案された本考案の目的は、溶接ワイヤの走行によって 生じたワイヤ繰出孔の磨耗を適宜補正でき、長期間安定した溶接を行うことがで きる溶接ワイヤ支持電極構造を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために本考案は、溶接ワイヤが挿通されワイヤの側面を支 持して給電する溶接ワイヤ支持電極において、中心に溶接ワイヤの繰出孔を有す ると共に先端部が先細に形成され且つ先端部に軸方向にスリットが形成されたコ ンタクトチップと、該コンタクトチップの先端部を囲繞して設けられその先端部 を径方向内方に押圧するためのテーパ状の内周面を有するワイヤガイドチップと 、から構成されている。

【００１０】

【作用】

上記構成によれば、溶接ワイヤはコンタクトチップの中心に形成された繰出孔 を通って走行するが、この溶接ワイヤの走行によりコンタクトチップの繰出孔が 磨耗した際には、コンタクトチップの先端部を囲繞して設けられたワイヤガイド チップをコンタクトチップの根元方向へ移動させる。

【００１１】 すると、先細に形成されたコンタクトチップの先端部がワイヤガイドチップの テーパ状内周面によって径方向内方に押圧され、繰出孔の磨耗が補正される。こ のとき、コンタクトチップの先端部には軸方向にスリットが形成されているので 、その先端部は軽い押圧力で容易に径方向内方へ可撓する。

【００１２】 かかる補正を行うことにより、繰出孔内におけるワイヤの給電位置および給電 接触面積を一定に保つことができ、溶接ワイヤ支持電極の長寿命化を図ることが 可能となる。

【００１３】

【実施例】

以下に本考案の一実施例を添付図面に基づいて説明する。

【００１４】 本実施例に係る溶接ワイヤ支持電極は、上述した図２に示す消耗電極式溶接装 置１の電極１０の代わりに取り付けられるものである。すなわち、溶接装置１自 体は何等変更はない。よって、支持電極のみを図１を用いて説明する。

【００１５】 図示するようにこの溶接ワイヤ支持電極１２は、中心に溶接ワイヤ４の繰出孔 １１を有するコンタクトチップ１３と、コンタクトチップ１３の先端部を囲繞す るように設けられたワイヤガイドチップ１４と、から構成されている。上記コン タクトチップ１３は、導電性の高いＣｕ合金等からなっており、繰出孔１１内を 走行する溶接ワイヤ４に接触してこれに電流・電圧を供給する機能を有している 。他方、上記ワイヤガイドチップ１４は、耐磨耗性の高いセラミックやタングス テン等からなっており、コンタクトチップ１３の先端部を径方向内方に押圧する と共に溶接ワイヤ４の走行を案内する機能を有している。

【００１６】 以下、コンタクトチップ１３とワイヤガイドチップ１４とをそれぞれ説明する 。

【００１７】 《コンタクトチップ１３について》 上記コンタクトチップ１３の先端は、先細のテーパ状に成形されている。この 外側テーパ部１５には、軸方向に沿ってスリット１６が形成されている。このス リット１６は、外側テーパ部１５の周方向に等間隔を隔てて複数本（２〜４本程 度）形成される。なお、本実施例では上記スリット１６をコンタクトチップ１３ の外側テーパ部１５に形成した構成としたが、コンタクトチップ１３の中央部の 方まで延長して形成してもよい。

【００１８】 上記コンタクトチップ１３の中央部には、ワイヤガイドチップ１４を螺合させ るためのオネジ部１７が設けられている。また、コンタクトチップ１３の根元部 には、コンタクトチップ１３をトーチ（ノズル２）に取り付けるためのトーチ取 付ネジ１８が設けられている。

【００１９】 《ワイヤガイドチップ１４について》 他方、上記ワイヤガイドチップ１４は、上記コンタクトチップ１３の外側テー パ部１５に被さるような形状に成形されている。すなわち、ワイヤガイドチップ １４は、外側テーパ部１５を囲繞するキャップ状に成形されており、その内面に 内側テーパ部１９が形成されている。この内側テーパ部１９のテーパ角は、上記 外側テーパ部１５のテーパ角より大きめに成形されている。この構成によれば、 外側テーパ部１５に内側テーパ部１９を被せて押し付けると、各テーパ部１５， １９の先端同志が強く接触し、外側テーパ部１５の先端が径方向内方に押圧され ることになる。

【００２０】 このキャップ状のワイヤガイドチップ１４の内面には、ガイドチップ１４を上 記コンタクトチップ１３のオネジ部１７に螺合するためのメネジ部２０が設けら れている。また、ワイヤガイドチップ１４の先端には、走行する溶接ワイヤ４を 案内するためのガイド孔２１が設けられている。このガイド孔２１の孔径は溶接 ワイヤ４の直径より僅かに大径に形成されており、溶接ワイヤ４を精度よく案内 するようになっている。この構成によれば、ガイド孔２１には走行する溶接ワイ ヤ４が擦りつけられることになるが、ガイドチップ１４自体が耐磨耗性の高いセ ラミックやタングステン等から成形されているので、ガイド孔２１が著しく磨耗 することはない。

【００２１】 このワイヤガイドチップ１４のメネジ部２０を上記コンタクトチップ１３のオ ネジ部１７に螺合することにより、コンタクトチップ１３とガイドチップ１４と が一体となって溶接ワイヤ支持電極１２が構成される。このとき、コンタクトチ ップ１３の外側テーパ部１５とガイドチップ１４の内側テーパ部１９とは適度に 接触した状態となっている。この支持電極１２は、図２に示す消耗電極式溶接装 置１のノズル２内に、電極１０の代わりに取り付けられる。

【００２２】 以上の構成からなる本実施例の作用を述べる。

【００２３】 上記構成によれば、コンタクトチップ１３の繰出孔１１を通って走行する溶接 ワイヤ４は、内側テーパ部１９の接触により径方向内方に変形した外側テーパ部 １５の先端近傍にて繰出孔１１内面と接触し、ここから給電される。この接触給 電部が長期の使用により磨耗すると、給電位置および給電面積が変化するためア ーク６が不安定となる。この場合、一旦溶接を止め、コンタクトチップ１３にネ ジ止めされたワイヤガイドチップ１４を増し締めし、ガイドチップ１４をコンタ クトチップ１３の根元方向へ移動させる。

【００２４】 これにより、ガイドチップ１４の内側テーパ部１９がコンタクトチップ１３の 外側テーパ部１５に押し付けられ、各テーパ部１５，１９の先端同志が強く接触 し、Ｃｕ合金製の外側テーパ部１５の先端が径方向内方に変形する。この結果、 繰出孔１１内面の接触給電部の磨耗が補正される。このとき、外側テーパ部１５ には軸方向に複数本のスリット１５が形成されているので、外側テーパ部１５は 軽い押圧力で容易に径方向内方へ可撓する。

【００２５】 かかる補正を行うことにより、繰出孔１１内における溶接ワイヤ４の給電位置 および給電接触面積を一定に保つことができ、溶接ワイヤ支持電極１２の長寿命 化を図ることが可能となる。

【００２６】

【考案の効果】

以上説明したように本考案に係る溶接ワイヤ支持電極構造よれば、溶接ワイヤ の走行によって生じたワイヤ繰出孔の磨耗を適宜補正でき、長期間安定した溶接 を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す溶接ワイヤ支持電極構
造の説明図である。

【図２】上記溶接ワイヤ支持電極が取り付けられる消耗
電極式溶接装置の概略図である。

【図３】従来例を示す溶接ワイヤ支持電極構造の説明図
であり、(a) は側面図、(b) は底面図である。

【符号の説明】

４ 溶接ワイヤ １１ 繰出孔 １２ 溶接ワイヤ支持電極 １３ コンタクトチップ １４ ワイヤガイドチップ １５ コンタクトチップの先端部としての外側テーパ部 １６ スリット １９ ワイヤガイドチップの内周面としての内側テーパ
部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶接ワイヤが挿通されワイヤの側面を支
   持して給電する溶接ワイヤ支持電極において、 中心に溶接ワイヤの繰出孔を有すると共に先端部が先細
   に形成され且つ先端部に軸方向にスリットが形成された
   コンタクトチップと、 該コンタクトチップの先端部を囲繞して設けられその先
   端部を径方向内方に押圧するためのテーパ状の内周面を
   有するワイヤガイドチップと、を備えたことを特徴とす
   る溶接ワイヤ支持電極構造。