JPH0566099A - 前方指向性弾頭 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 爆轟により破片となる金属ケースと、炸薬
と、起爆手段とからなり、金属ケースは側部内壁に複数
の突出片があり、突出片と炸薬の間には空間を保つ空気
室が設置されている前方指向性弾頭。 【効果】 特にミサイル弾頭の飛翔方向（前方）の標的
に対する破片の効果をより高めたものであり、従来の円
筒型弾頭と比べて前方に位置する標的に対して有効な破
片による被害を与えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は特にミサイル用弾頭の飛
翔方向の標的に対する破片の効果をより高めた前方指向
性弾頭に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ミサイル等に用いられる弾頭は、弾頭の
前部にホーミング部を配置する必要上、形状として円筒
型に限られる。円筒型の形状では生成する破片の殆どが
飛翔方向に対して側方に飛散するため、飛翔方向つまり
前方に破片を向けることは極めて難しい。又、通常の砲
弾に使用されるような釣鐘状の弾頭では破片がある程度
前方に広い範囲で飛散するが、弾頭の前部にホーミング
部を配置することは困難である。しかし実用上は、飛翔
方向（前方）に位置する標的に対して破壊効果を有する
弾頭が要望されている。

【０００３】破片を前方に向けることを意図した円筒型
弾頭が米国特許第３，９７４，７７１号明細書に開示さ
れている。図４はこの弾頭の構造の一例を示す断面図で
ある。同図面に示される弾頭においては起爆装置５によ
って起爆した炸薬３の爆轟によって固定板９と炸薬３と
の間の破片１が前方に飛散する。しかし、固定板９と外
殻１０との間に大きく無駄な空間１１があり、しかも構
造が極めて複雑である。このように円筒型の形状を有し
ながら破片を前方に飛散させる弾頭で、無駄な空間を持
たずかつ構造が単純なものが要望されているが、現在ま
でにこの要求に応ずる弾頭は知られていない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】円筒型弾頭の爆発のた
め側面周囲壁より生じた破片を前方に飛散させるために
は該破片の角度を全て前方に傾ける必要がある。そのた
めには弾頭の形状が円錐型に近くなり円筒型の形状とい
う要求とは異なることになる。一方、円錐型の弾頭を円
筒型の容器に入れれば要求とは一致するが大きな無駄な
空間を持たなければならなくなり、構造自体が複雑にな
る。これを避ける方法とし、爆轟により破片となる弾頭
内壁を階段状とすることが考えられるが、単に階段状に
しただけでは生じた破片は通常の円筒型弾頭と等しくほ
ゞ側方に飛散する。つまり、円筒型の形状を有しながら
破片を前方に飛散させる弾頭で無駄な空間を持たずかつ
単純なものを得るのは現状において非常に難しい技術で
ある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは長
期にわたって研究した結果、弾頭の炸薬の形状及び金属
ケースの形状を適切にすることによって、爆轟によって
生じた破片が前方に飛散するとの知見を得た。この知見
に基づいて、円筒状の形状を有しながら爆轟によって生
じた破片を前方に飛散し、かつ無駄な空間を持たずかつ
単純な構造を有する前方指向性弾頭を発明した。すなわ
ち本発明は金属ケースと、該ケース内に収納された炸薬
及び起爆手段とよりなる前方指向性弾頭において、金属
ケース側部内壁より飛翔方向に対して傾斜した複数の突
出片があり、突出片と炸薬の間には空間を保つ空気室が
設置されていることを特徴とする前方指向性弾頭及び突
出片先端部には空気室を保持するための羽根を有する前
記前方指向性弾頭に関する。

【０００６】次に本発明の前方指向性弾頭の好適な構成
の一例の縦断面図を示す図１及び図２に基づいて説明す
る。図中、２は金属ケース、３は金属ケース内に収納さ
れた炸薬である。矢印はこの弾頭の飛翔方向を示すもの
で、金属ケース２の側部内壁より飛翔方向に対して傾斜
した複数の突出片１′があり、突出片１′と炸薬３の間
には空間を保つ空気室４がある。５は起爆装置である。
６は突出片先端部に設けられた空気室を保持するための
羽根である。

【０００７】炸薬３が爆轟することによって金属ケース
２の側壁が破片となる。この場合炸薬の爆轟により生成
したガスが空気室４内で圧縮されることにより、その反
動から側壁内側の突出片の傾斜角度に従って破片は前方
に飛散することになる。又、空気室を保持する羽根６が
あることによってこのガスの圧縮の効果が更に強まり、
破片はより前方へ飛散することになる。この空気室４が
存在しない場合、圧縮されるガスの効果が期待できない
ことから破片は通常の角度を付けていない弾頭と比較し
て、前方指向性に関し大差の無いものとなる。

【０００８】空気室４の大きさは、つまり破片と炸薬と
の間隔があまり狭すぎると圧縮されるガスの効果が期待
できないため前方指向性に関して能力が落ちるし、あま
り広すぎるとその分破片自体の質量が小さくなりかつ破
片の速度が遅くなるため破片の威力が小さくなる。弾頭
に対する要求によってこの間隔は変化するが、破片の威
力を重要視する場合この間隔はある程度狭く、例えば破
片の厚みよりも小さく設定することが望ましく、又、前
方指向性を重要視する場合この間隔はある程度広く、例
えば破片の厚みよりも大きく設定することが望ましい。

【０００９】金属ケースの突出片１′の数は弾頭に対す
る要求により決定される。突出片の数を少なく、つまり
爆轟によって生成する破片を大きくすると、その分炸薬
の量は少なくなりそれによって破片の速度は遅くなる
が、破片の質量は大きくなる。又、突出片１′の数を多
くつまり生成する破片を小さくするとその分炸薬の量は
多くなり、それによって破片の速度は速くなるが破片の
質量は小さくなる。

【００１０】金属ケース２の材質としては、破片となる
部分は標的に対して貫徹の効果の大きい強度の高い材質
のものであり、かつ衝撃によって細分しない材質のもの
が好ましく、その他は構造体を保持する強度を有する材
質のものが好ましい。

【００１１】金属ケース２の突出片１′の前方に対して
傾いている角度は４５°付近がその構成上最も好まし
い。ただし、弾頭に対する要求によっては異なる角度で
も適用可能である。例えば、角度が小さくなるに従って
前方に破片が飛散する角度は小さくなるが、弾頭側面の
空間は小さくて済むために炸薬の量を多く、つまり破片
の威力を大きくすることが可能となる。又、角度が大き
くなるに従って弾頭側面の空間は大きくなるために炸薬
の量が少なく、つまり破片の威力が小さくなるが、前方
に破片が飛散する角度は大きくなる。

【００１２】炸薬３としては、破片速度を速くしたい場
合は高爆速の炸薬、例えばシクロテトラメチレンテトラ
ニトラミン（ＨＭＸ）、あるいはシクロトリメチレント
リニトラミン（ＲＤＸ）等の二次爆薬を主成分とする炸
薬を使用することが望ましいが、特に破片速度の要求が
強くない場合はアルミ粉及び過塩素酸アンモニウム（Ａ
Ｐ）等の発熱剤及び酸化剤を主成分とする高エネルギー
の炸薬でも構わない。

【００１３】羽根６は金属ケースが破片となり飛び出す
までの間ガスの流れを遮断する目的のため、材質として
はある程度の強度を持つものであれば構わない。又、厚
みは前記の目的からある程度の厚みがあればよいが、余
り厚すぎると破片の速度が遅くなってしまうため好まし
くない。

【００１４】本弾頭の製造方法に関して、金属部分を組
立ててからその後で炸薬を入れることは困難であるが、
金属部分を縦に分割し、炸薬に分割された金属部分を取
付けてからその外側を保持することによって製造するこ
とが可能である。

【００１５】

【作用】起爆装置５によって起爆した炸薬３の爆轟によ
り金属ケース２が破片となって飛散するが、炸薬３の爆
轟の際の反応によって生成したガスが空気室４内で圧縮
されることにより、その反動から突出片の角度に従って
破片が前方に飛散することになる。さらに、突出片に空
気室を保持する羽根６を取り付けることによって生成し
たガスは空気室から逃げにくくなることから圧縮の効果
は強くなり破片はより前方に飛散することになる。

【００１６】

【発明の効果】本発明の前方指向性弾頭を用いることに
より、弾頭前部にホーミング部を有する通常のミサイル
弾頭においても前方に位置する標的に対して従来の弾頭
に比べてより有効な破片による被害を与えることができ
る。

【００１７】

【実施例】実施例、比較例により本発明を説明する。 実施例 １ 図１、図２に示す本発明の前方指向性弾頭を製造した。
まず、弾頭の構成について述べる。炸薬３は高爆速のも
ので、ＲＤＸを８０％、残部がポリウレタン型バインダ
ーから成り爆速８０００ｍ／ｓであって、最大外径７０
ｍｍ、最小外径５６ｍｍ、長さ１１２ミリであり、その
側面は次に述べる金属ケース２の内壁側面の構造に基づ
いて８段の階段状に成形したものである。階段の角度は
すべて９０°に、前方に対する角度は４５°になるよう
に設定した。金属ケース２は外径８４ｍｍ、長さ１１２
ミリであり、炸薬と同様に前方に対する角度が４５°に
なるように設定した８ケの突出片１′が取付けられてい
る。突出片１′の厚みは４．５ｍｍであり、炸薬との間
に空間が保持されている。その間隔つまり空気室の厚み
は５．５ｍｍである。又、図２においては突出片１′の
先端は羽根６が設けてある。羽根は接着剤で突出片に取
付けてある。なお、金属ケースはＳＳ４１炭素鋼、羽根
はステンレス板である。

【００１８】前記前方指向性弾頭を爆轟させて生成破片
の飛散角度分布を算定した。その算定方法を図３に基づ
いて説明する。前方指向性弾頭７を中心部に垂直縦置き
に固定し、その周囲０．８ｍの距離の全周に厚み３．２
ｍｍのＳＳ４１の標的鋼板８を配置し（図は側方の鋼板
のみを記載）、弾頭を上方から起爆して飛散した破片の
飛散分布を測定した。結果を表１に示す。

【００１９】実施例 ２ 炸薬を高エネルギーの炸薬、ＡＰ４２％、アルミ粉２６
％、残部がポリウレタン型バインダ及びＲＤＸからな
り、爆速６０００ｍ／ｓのものを使用した以外、実施例
１と全く同様にして該弾頭を爆轟させて生成破片の飛散
角度分布を算定した。結果を表１に示す。

【００２０】比較例 炸薬側面に凹凸が無く、金属ケース内側に突出片が無
く、空気室が無い通常の円筒型弾頭（大きさは実施例と
実質的に同一）において全く同様の実験を行なった。結
果を表１に示す。

【表１】 実施例及び比較例は、本発明の弾頭が前方指向性に関し
て従来の弾頭に比べて優れていることを示している。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の前方指向性弾頭の一例を示す
断面図である。

【図２】図２は、他の本発明の前方指向性弾頭の一例を
示す断面図である。

【図３】図３は、実験方法の概要図である。

【図４】図４は、米国特許第３，９７４，７７１号明細
書に記載の破片を前方に向けることを意図した弾頭の断
面図である。

【符号の説明】 １ 破片 １′ 突出片 ２ 金属ケース ３ 炸薬 ４ 空気室 ５ 起爆装置 ６ 羽根 ７ 前方指向性弾頭 ８ 標的鋼板 ９ 固定板 １０ 外殻 １１ 空間

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属ケースと、該ケース内に収納された
   炸薬及び起爆手段とより成る前方指向性弾頭において、
   金属ケース側部内壁より弾頭飛翔方向に対して傾斜した
   複数の突出片があり、突出片と炸薬の間には空間を保つ
   空気室が設置されていることを特徴とする前方指向性弾
   頭。
2. 【請求項２】 突出片先端部には空気室を保持するため
   の羽根を有する請求項１の前方指向性弾頭。