JPH0560178A - 歯付ベルト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 心線であるアラミド繊維コードのフィラメン
ト群の引き揃え性を改善し、心線のほつれ性およびベル
トの横振れを阻止した歯付ベルトを提供する。 【構成】 ベルト長さ方向に沿って配置された複数の歯
ゴム２と、心線３を埋設した背ゴム４とからなる歯付ベ
ルト１であり、上記心線３としてアラミド繊維の原糸を
構成するフィラメント群を少なくとも２本以上収束して
撚り合わせ、この撚糸をさらに同方向へ追撚りして最終
的に撚り数を１０〜２５回／１０ｃｍとし、そしてこれ
にゴム層を付着させたアラミド繊維コードを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は歯付ベルトに係るもの
で、アラミド繊維コードを心線に用いた歯付ベルトに関
する。

【０００２】

【従来の技術】歯付ベルトは平ベルトやＶベルトと異な
りすべりのない確実駆動が可能であり、また歯車やチェ
ーンの確実駆動に比べて給油を必要としない等の利点を
有しているため、近年需要が急速に増大しつつある。特
に、自動車のオーバーヘッドカム軸（ＯＨＣ）の伝動駆
動にあってはその進出が顕著である。

【０００３】とこらが、ＯＨＣ駆動の場合、歯付ベルト
は高負荷で且つ多軸で使用されるため、屈曲疲労を受け
て伸ばされやすい。そして、このような苛酷な条件で使
用される歯付ベルトは、約０．１％伸長すると、プーリ
との噛み合いが悪くなり、ジャンピング現象を起こすと
言われている。この挙動は、特に歯付ベルトの心線の特
性である伸びや屈曲性に影響されている。

【０００４】ところで、今日歯付ベルトの心線の１つと
して強力が大きく、伸びの小さなアラミド繊維コードが
使用されている。例えば、特開昭５４−１３５９５４号
公報には、アラミド繊維を撚り係数１．４〜２．６、太
さ３００〜５００デニールのコードを歯付ベルトの心線
に用いることが開示されている。しかも、最近では心線
となるアラミド繊維コードとして、原糸を複数本引き揃
えて撚糸し、これに接着処理を施したものが開発されて
いる。これはベルトの屈曲疲労性とコードのほつれ性の
両方を改善したものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このようにし
て得られたアラミド繊維コードでも、原糸を複数本引き
揃えて撚糸としているが、この撚糸方法は１回撚り（一
段撚り）が一般的であるため、原糸を構成している１〜
６デニールのフィラメント同志の引き揃え性が悪く、こ
れが原因でカットされたベルト端面における心線のほつ
れが発生しやすいことが明らかになった。

【０００６】しかも、引き揃え性が悪い心線を用いた歯
付ベルトでは、とりわけベルト幅方向の横振れが大きく
なって、ベルト端面とプーリフランジ間での摩耗が激し
く、またそれによる騒音も発生した。本発明はこのよう
な問題点を改善するものであり、アラミド繊維コードを
構成する複数のフィラメント群の引き揃え性を改善し、
心線のほつれ性およびベルトの横振れを阻止した歯付ベ
ルトを提供するにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明の特徴とす
るところは、ベルト長さ方向に沿って配置された複数の
歯ゴムと、心線を埋設した背ゴムとからなる歯付ベルト
において、上記心線としてアラミド繊維の原糸を構成す
るフィラメント群を少なくとも２本以上収束して撚り合
わせ、この撚糸をさらに同方向へ追撚りして最終的に撚
り数を１０〜２５回／１０ｃｍとし、そしてこれにゴム
層を付着させたアラミド繊維コードを用いる点にある。

【０００８】図１は、本発明に係る歯付ベルトの断面斜
視図であり、歯付ベルト１はベルトの長手方向に沿って
複数の歯ゴム２とアラミド繊維コードからなる心線３を
埋設した背ゴム４とからなり、歯ゴム２の表面にはカバ
ー帆布５が貼着されている。歯ゴム２および背ゴム４に
は、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム（ＣＳＭ）、
アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム（ＡＣ
ＳＭ）、またはアクリロニトリル−ブタジエンゴムの２
重結合部分に８０％以上の水素添加した水素化アクリロ
ニトリル−ブタジエンゴム（水素化ニトリルゴムと言
い、Ｎ−ＮＢＲ）であり、耐熱性の改良されたゴムであ
る。

【０００９】カバー帆布５は、緯糸方向（ベルト長手方
向）に伸縮性を有する平織物、綾織物、朱子織物等を使
用することができる。なかでも、平織物の場合は、経糸
５ａと緯糸５ｂとが上下に交互積層されているために、
経糸５ａと緯糸５ｂの波形状交差点が経、緯方向に連続
して形成される。一方、綾織物、朱子織物を使用した場
合には、経糸と緯糸とがそれぞれ複数本おきに波形状に
交差点を形成し、通常の平織物より波形状の交差点が少
なく、かつゴムが糸間のみならず交差点まで充分浸透す
る。これをベルト歯部に使用した場合には、ベルトの屈
曲性における経糸と緯糸の糸同志による直線接触を回避
し、ベルトライフを向上することができるため好まし
い。

【００１０】また、上記カバー帆布５には必ず経糸５ａ
と緯糸５ｂの表面にＲＦＬ液、イソシアネート溶液、エ
ポキシ溶液等の接着剤を付着させる。このカバー帆布５
はポリアミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエス
テル繊維等を素材としている。

【００１１】そして、本発明に用いる心線３であるアラ
ミド繊維コードは、１〜６デニールのアラミド繊維のフ
ィラメントを１００〜３００本収束した原糸を、少なく
とも２本以上引き揃えて撚り合わせ、次いでこの撚糸を
さらに同方向へ追撚りして撚り数１０〜２５回／１０ｃ
ｍにしたものである。この場合、１回撚りではその撚り
数は２〜１０回／１０ｃｍである。まず、１回撚りで複
数のフィラメント群の引き揃え性が良好になり、さらに
これに撚りを加えるとよりこの引き揃え性が改善され
る。

【００１２】この追撚りの方法は、アラミド繊維のフィ
ラメントを１００〜３００本収束した原糸をクールスタ
ンドに複数個設置して、これを給糸テンション装置へ供
給した後、糸道を通して複数の穴に貫通して寄せ合わ
せ、これをリング撚糸機によってボビンに巻き付け、さ
らにこのボビンに巻かれた撚糸を同様の装置のリング撚
糸機によって追撚りしたものである。この追撚りによっ
て得られたコードは、その製造過程で張力を付与する回
数が多いため、フィラメント群がタイトに引き締まると
ともに、引き揃え性が良好になる。尚、一度に同じ撚り
数を与えて得たコードは、フィラメント群がタイトに引
き締まらず、また引き揃え性も劣っている。

【００１３】そして、上記アラミド繊維コードはゴム糊
でオーバコート処理される。ゴム糊は歯付ベルト１の歯
ゴム２と背ゴム４に使用するゴムと同質のものが好まし
く、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化
クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリル
ゴム等をメチルエチルケトン、トルエン等の溶剤にとか
したものである。これによって、アラミド繊維コード自
身はよりタイトに引き締まるとともに、歯ゴム２と背ゴ
ム４との接着力も向上する。

【００１４】

【作用】このようなコードは、その製造過程で張力が付
与される回数が多いため、フィラメント群がタイトに引
き締まるとともに、まず引き揃え性が良好になるため、
１回で大きく撚られることにより得られたコードに比べ
てコード径が小さく、また引張強さも大きくて、伸びが
小さく、更にこれらのバラツキが小さくなることが明ら
かになった。しかもこのコードを歯付ベルト１の心線３
に用いると、ベルトの引張強さが向上して、そのバラツ
キが小さくなり、ベルトの横振れも小さくなり、しかも
ベルト端面に露出しているコードのほつれ性も大きく改
善される。

【００１５】

【実施例】以下、更に本発明を実施例により詳細に説明
する。心線として複数のフィラメント群を収束した１５
００デニールの原糸を２本クールスタンドに設置して、
これをリング撚糸機によって６回／１０ｃｍの撚り数で
１回撚りとし、このようにして得られた撚糸をさらに
９．７回／１０ｃｍの撚り数で追撚り（２回撚り）して
コードを得た。尚、比較例として１５．７回／１０ｃｍ
の撚り数で１回撚りとしてコードを得た。

【００１６】これらのコードを表１に示すゴム糊に含浸
した後、１６０°Ｃで５０秒間乾燥させ、２００°Ｃで
５０秒間ベーキングしてオーバーコート処理を行ってア
ラミド繊維コードを得た。一方、カバー帆布は緯糸に
６．６ナイロンウーリー加工糸を用い、経糸に工業用
６．６ナイロンを用いたベルト断面上での厚みが０．２
５ｍｍの綾織組織のものである。そして、歯ゴムと背ゴ
ムは表２からなる水素化ニトリルゴム組成物を用いた。

【００１７】

【表１】

【００１８】

【表２】

【００１９】以上の材料を用いて従来の圧入法により歯
付ベルトを作製した。得たベルトは歯ピッチ８ｍｍのＳ
ＴＰＤ歯型であり、歯数２０９，幅３４ｍｍである。次
いで、上記心線の引張強さ、太さ、および歯付ベルトの
引張強さ、横振れ、そしてほつれ度を測定した。その結
果を表２に示す。

【００２０】

【表３】

【００２１】この場合、歯付ベルトの横振れの測定で
は、フランジなしの歯付プーリおよびフランジ付歯付プ
ーリにベルトを掛け、フランジ付歯付プーリに荷重５
３．８ｋｇを加え、またフランジなしの歯付プーリ側に
ダイヤルゲージを設置し、ベルトを２回転させた後、ベ
ルトの１回転中の横方向の振れ（Ｆ：前方向、Ｒ：後方
向）を求めた。

【００２２】この結果によると、追撚りして得られたコ
ードは、太さが均一で小さくて、しかも引張強さが大き
くて伸びが小さく、更にはこれらのバラツキも小さいこ
とが判る。また、このコードを心線に用いた歯付ベルト
でも横振れ値が小さくて、ベルト側面に露出したコード
のほつれ性も改善されている。

【００２３】

【発明の効果】以上のように本発明の歯付ベルトでは、
心線としてアラミド繊維の原糸を構成するフィラメント
群を少なくとも２本以上収束して撚り合わせ、この撚糸
をさらに同方向へ追撚りしたコードを使用することによ
り、コード引き揃え性が良好になって引張強さが大き
く、伸びが小さくなり、またこれらのバラツキも小さく
なって、ベルトの横振れやベルト側面に露出したコード
のほつれ性も少なくなる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る歯付ベルトの断面斜視図。

【符号の説明】

１ 歯付ベルト ２ 歯ゴム ３ 心線 ４ 背ゴム ５ カバー帆布

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ベルト長さ方向に沿って配置された複数
   の歯ゴムと、心線を埋設した背ゴムとからなる歯付ベル
   トにおいて、上記心線としてアラミド繊維の原糸を構成
   するフィラメント群を少なくとも２本以上収束して撚り
   合わせ、この撚糸をさらに同方向へ追撚りして最終的に
   撚り数を１０〜２５回／１０ｃｍとし、そしてこれにゴ
   ム層を付着させたアラミド繊維コードを用いることを特
   徴とする歯付ベルト。