JPH05328645A - 圧縮機用電動機の回転子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 軸孔６を有するヨーク鉄心１と、このヨーク
鉄心１の外周部に装着された磁石２と、この磁石２の外
周部に嵌着された金属管３と、ヨーク鉄心１の軸方向両
端部に装着された端板とを具備し、ヨーク鉄心１と前記
端板とに複数のクランプピン９を挿通して構成する圧縮
機用電動機の回転子において、部品点数を少なくすると
ともに材料費を削減して回転子をコストダウンする。 【構成】 磁石２を３個の円弧状片２ａ，２ｂ，２ｃで
構成するとともに、クランプピン９の挿通箇所を３点と
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、密閉型圧縮機に使用さ
れる電動機の回転子に関し、特に永久磁石界磁を備えた
回転子に関する。

【０００２】

【従来の技術】密閉型圧縮機に使用される磁石を装着し
た回転子は、遠心力によって磁石が飛散しないための補
強と、磁石粉等が回転子外部へ極力漏れないための密閉
とを目的として、保護部材によって回転子の外周部と軸
方向両端部をそれぞれ覆って構成される。図４及び図５
は上記回転子の構造を示す断面図であり、例えば特開平
２−２４６７４８号公報等に開示されるものである。こ
の回転子は、厚肉円筒形のヨーク鉄心１の外周部に瓦形
状をした円弧状の磁石２を複数個配置し、この磁石２の
外周部に薄肉の金属管３を嵌着し、一方磁石２の軸方向
両端には端板４，４を装着して構成されている。

【０００３】ヨーク鉄心１は、軸孔６、クランプピン挿
通孔７、磁石の位置決めのための突起８をそれぞれ有
し、一般に円形薄鉄板を多数積層するとともにカシメク
ランプ部１１によって薄鉄板相互をかしめて固着するこ
とにより形成される。これは各薄鉄板にプレス抜きと同
時に打ち出し突起を設け、この突起を隣接する薄鉄板に
おける突起の背面の凹部に嵌合させてプレス型内で所定
の積厚に積層するものであり、図示の例では４ヶ所のカ
シメクランプ部１１が設けてある。

【０００４】磁石２は、フェライト等の硬質磁性材で磁
気異方性のものにより形成されるが、このような磁石は
円弧の中心角が１４０゜を越えると量産が不可能であ
り、従つて圧縮機用電動機の回転子においては、図示す
るように中心角が約９０°の４片の円弧状の磁石２ｄ，
２ｅ，２ｆ，２ｇを等配状に配置して金属管３の締め付
けによって固定し、各片の中央を磁極の中心として４極
に着磁して構成されている。

【０００５】金属管３は、耐遠心力のための補強と外周
部の密封を行うものであり、引張強度に優れ且つ非磁性
体のものが用いられ、一般にステンレス等のキャンを焼
きばめ圧入によって装着する。また端板４，４は、磁石
２の軸方向両端部を密閉するものであり、金属製の円形
板が使用される。端板４，４と金属管３とはすきま嵌合
となっており、端板４，４とヨーク鉄心１とはそれぞれ
の内部を軸方向に貫通する複数のクランプピン９によっ
て相互が固定されている。このクランプピン９は、磁気
的バランスを考慮して各磁極の中央に対応する位置に各
１箇所、合計４箇所に挿通されている。

【０００６】圧縮機用電動機の回転子においては、この
他に、圧縮機構によって生じるアンバランスを矯正する
ためのバランスウェイトを回転子の一方端または両端に
具備させて構成する場合が多い。この場合は、図６に示
すように、ヨーク鉄心１にバランス調整用の孔部１０を
設け、さらに不足する重量を補う外付けのバランスウェ
イト５をクランプピン９によって端板４上にかしめて取
り付けて構成する。図６において、回転子下側にバラン
スウェイトを設ける場合も同様であるが、一般的には、
圧縮機構に遠い側に具備すべきバランスウェイト量は比
較的小さいために、バランス調整用の孔部１０のみで足
りるため、外付けのバランスウェイト５は回転子の一方
端のみに必要とされる場合がほとんどである。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】磁石２の外周部を覆う
金属管３は、焼きばめ圧入によって嵌着される。この焼
きばめ圧入は、熱した状態の金属管をさらに加圧気味に
嵌入するものであり、このように形成することにより、
磁石２の径方向の厚みのばらつきにかかわらず常に最小
限のしめしろを確保でき、金属管３による締め付け力を
磁石２やヨーク鉄心５に作用させることができる。また
ヨーク鉄心１は、上記金属管３による締め付けととも
に、自身を構成する薄鉄板相互のカシメクランプ部１１
によってクランプされており、さらに軸孔６がクランク
シャフトに嵌合されるために安定した状態に形状が保持
される。また上記金属管３による締め付けによって、磁
石２も軸方向にずれたりすることがない。

【０００８】従って、クランプピン９の役割は主とし
て、軸方向端部を密閉するための端板４をヨーク鉄心１
に固着することにあり、回転子の強度上は、クランプピ
ンによるクランプ箇所を削減してコストダウンすること
ができる。しかしクランプ箇所を３点にすると、４極の
磁極における磁路のパーミアンスが非対称となるため好
ましくない。またクランプ箇所を２点にすると、外付け
のバランスウェイト５を必要とする回転子において、バ
ランスウェイト５は円周方向に１８０°以内の範囲に取
り付けられるため、バランスウェイト５の取り付けがで
きなくなってしまう欠点がある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、圧縮機用電動
機の回転子において、磁石を３個の円弧状片で構成する
とともに、クランプピンの挿通箇所を３点としたもので
ある。上記３個の磁石には各片の隣接部に３箇所の分割
点が生じるため、３等配に装着した各円弧状片の中央部
と隣接部とをそれぞれ極間とする６極に着磁して使用す
れば、磁気的なバランスが良好に構成できる。また上記
６極に着磁した場合において、クランプピンの挿通箇所
は３等配とし、且つ磁極の中央と対応する部分に設ける
ように構成する。さらにこの場合、ヨーク鉄心を薄鉄板
の積層体によって構成するものにおいては、前記薄鉄板
の相互をかしめて固着するためのカシメクランプ部を、
磁極の中央と対応する部分で且つ前記クランプピンの存
在しない部分に設けて構成する。

【００１０】

【作用】クランプピンの挿通箇所の数と磁石の数が一致
しているため、磁気的な対称性が良好に構成できる。ま
た円周方向１８０°以内の範囲にクランプピンの挿通箇
所が２点存在するため、バランスウェイトの取り付けに
も支障が生じない。

【００１１】

【実施例】本発明の実施例を図１〜図３に基づいて説明
する。尚、図４〜図６に示した従来例と同一または相当
部分には同一の符号を付して重複する説明は省略する。

【００１２】図１は本発明による回転子の平面断面図で
ある。磁石２は３個の円弧状片２ａ，２ｂ，２ｃによつ
て構成され、これら各片はヨーク鉄心１の外周部に３等
配に装着されている。この磁石各片２ａ，２ｂ，２ｃは
相互の隣接部に隙間が存在するため、磁気的なバランス
を良好にするためには図２に示すように着磁するのが好
ましい。図２に示すＳ，Ｎは例えば磁石外周部における
極性を示しており、磁石２ａ，２ｂ，２ｃの各円弧状片
の中央部と隣接部とを極間に位置させて６極に着磁して
ある。磁石２の単価は、材料費と成形に要する加工費と
よりなるものであるため、磁石２の使用個数を従来の４
個から３個へと削減したことによって回転子がコストダ
ウンされる。

【００１３】またヨーク鉄心１においては、クランプピ
ン９の挿通箇所を３等配に構成するとともに、この３点
のクランプピン９と６０°変位させて薄鉄板相互のカシ
メクランプ部１１も３等配で設けてある。これらクラン
プピン９の挿通箇所及びカシメクランプ部１１は、６極
に着磁される磁石２の各磁極の中央と対応する部分に設
けてある。このように構成することにより、磁石２によ
る磁束がヨーク鉄心１の内部を流れる際の磁気抵抗を少
なくすることができる。そして磁石２、クランプピン９
及びカシメクランプ部１１をそれぞれ３等配で構成する
ため、磁路のパーミアンスのバランスが良く、振動や騒
音が少なく、且つ特性の良い電動機が構成できる。尚、
磁気的な特性に配慮することなく、回転子のコストダウ
ンのみを図る場合は、６極にこだわることなく任意の極
数に着磁すればよい。

【００１４】図３は本発明による回転子の平面図であ
り、バランスウェイト５の取り付けの状態を示してい
る。円弧状のバランスウェイト５は円周方向に１８０°
以内の範囲に納まる大きさに形成されており、少なくと
も２個のクランプピン９によってかしめて取り付ける必
要がある。本発明の場合、クランプピン９の間隔は１２
０°であるので、無理なくバランスウェイト５を取り付
けることができる。

【００１５】また圧縮機用電動機を６極とすることによ
り、４極の場合と比較して、トルクリップルが少ないた
めに低速域でも安定したインバータ駆動ができ、また電
動機固定子のコイルピッチが小さくなってコイル量が削
減できる等の特長が生じる。

【００１６】

【発明の効果】本発明によれば、クランプピンによるク
ランプ箇所を３点に削減するに当たり、磁石の円弧状片
の数も３個に削減したものであって、回転子の材料費を
大幅に削減でき、同時に部品点数が少なくなることから
組立も容易となって、回転子がコストダウンされるもの
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す回転子の平面断面図。

【図２】図１の回転子の着磁の例を示す説明図。

【図３】本発明の実施例を示す回転子の平面図。

【図４】従来例を示す回転子の平面断面図。

【図５】従来例を示す回転子の正面断面図。

【図６】別の従来例を示す回転子の正面断面図。

【符号の説明】

１ ヨーク鉄心 ２，２ａ，２ｂ，２ｃ，２ｄ，２ｅ，２ｆ，２ｇ 磁石 ３ 金属管 ４ 端板 ５ バランスウェイト ６ 軸孔 ９ クランプピン １１ カシメクランプ部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸孔を有するヨーク鉄心と、このヨーク
   鉄心の外周部に装着された磁石と、この磁石の外周部に
   嵌着された金属管と、前記ヨーク鉄心の軸方向両端部に
   装着された端板とを具備し、前記ヨーク鉄心と前記端板
   とに複数のクランプピンを挿通して構成する圧縮機用電
   動機の回転子において、前記磁石を３個の円弧状片で構
   成するとともに、前記クランプピンの挿通箇所を３点と
   したことを特徴とする回転子。
2. 【請求項２】 前記磁石を３等配に装着するとともに、
   各円弧状片の中央部と隣接部とをそれぞれ極間とする６
   極に着磁したことを特徴とする請求項１記載の回転子。
3. 【請求項３】 前記クランプピンの挿通箇所を３等配と
   し、且つ磁極の中央と対応する部分に設けたことを特徴
   とする請求項２記載の回転子。
4. 【請求項４】 前記ヨーク鉄心を薄鉄板の積層体によっ
   て構成するものにおいて、前記薄鉄板の相互をかしめて
   固着するためのカシメクランプ部を、磁極の中央と対応
   する部分で且つ前記クランプピンの存在しない部分に設
   けたことを特徴とする請求項３記載の回転子。