JPH05318724A - インクジェット記録装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低消費電力で、電磁力を用いた引き打ち法高
速印字を可能にする。 【構成】 磁性粉と熱可塑性樹脂からなるプラスチック
マグネット材料によって、流路基板１と蓋板４とを形成
する。そして、両者の対向面が互いに磁気的に吸引し合
うように配置する。両板１，４の間には、圧力発生室２
ｂに対応する孔部３ａを有する補強板３を介在させる。
また、蓋板４上にはコイル５（電磁力発生装置）を取り
付ける。非印字時は、コイル５に電圧を印加せず、予め
磁化されている蓋板４および流路基板１は、その極性に
よって互いに引き付け合い、孔部３ａと対応する圧力発
生室２ｂの容積が極めて小さくなる。印字時には、一旦
コイル５に電圧を印加して電磁石として作用させ蓋板４
を流路基板１から離反させた後、すぐに電圧印加を停止
して再び蓋板４を流路基板１に接近させ圧力発生室２ｂ
の容積を減少させて、インクを射出する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録装
置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、オンデマンド型インクジェット記
録装置において、高電圧駆動を要する圧電素子を用いる
構成に代えて、特公昭６２−９４３１号や特開昭５７−
１０５３６０号に示されるように、振動板（蓋板）を電
磁力によって変形させ圧力発生室内の体積を変化させて
インク滴を射出する構成とし、高電圧駆動に伴なう欠点
（安全性やコストの問題）を解決したものがある。

【０００３】一方、高速印字を可能にするために、常時
圧力発生室内の容積を最小とし、印字に際しては、一旦
圧力室内容積を最大にしてから再び最小として、インク
滴を射出するいわゆる引き打ち法が採用されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の通り、引き打ち
法により高速射出を実現し、良好な印字品質を実現する
ためには、常時振動板を圧力発生室内へ変形させて圧力
発生室内の容積を最小にしておく必要がある。電磁力を
利用したインクジェット記録装置において、この引き打
ち法の印字を行なうには、予め振動板に永久磁石を取り
付け、この永久磁石に近接して設けたコイル（電磁力発
生装置）に電圧を印加することにより反磁界を形成し、
永久磁石のついた振動板を流路基板側へ変形させ圧力発
生室容積を最小としておく必要がある。そして、インク
滴を射出する場合は、一旦コイルへの電圧印加を停止し
て圧力発生室容積を大きくした後、再びコイルに電圧を
印加して圧力発生室容積を最小にし、瞬間的に圧力発生
室内のインクをノズルを介して射出させる。

【０００５】このように、印字スタンバイ中は圧力発生
室側へ振動板を変形させておく必要があり、常時コイル
に電流を流しておく必要がある。そのため消費電力が増
大する。

【０００６】あるいは、特公昭６２−２６９１２号に示
されているように、印字スタンバイ中は蓋板を変形させ
ずに、印字信号が入力された時点で振動板を圧力発生室
の容積を増加させる方向に変形する様に磁界を発生さ
せ、その容積が最大になった所で電圧印加を停止して、
振動板を解放しインク滴を射出する方法もある。この場
合、コイルに常時電流を流しておく必要はない。しか
し、インク滴射出後、振動板の振動は拘束を受けないた
め、振動が収束するまでの時間が長くかかるとともに、
射出時の圧力発生室の容積変化速度が遅いことから、射
出速度は遅く高速印字を実現するのは難しい。

【０００７】そこで本発明の目的は、電磁力を用いて蓋
板または流路基板を変形させてインク射出を行なうイン
クジェット記録装置において、低消費電力で引き打ち法
による印字が行なえ高速印字を可能にすることを目的と
する。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るインクジェット記録装置は、インク流
路が形成されている流路基板と、流路基板の流路面に設
けられている蓋板と、流路基板または蓋板の少なくとも
一方を磁気的に反発または吸引可能な電磁力発生装置と
を有しており、流路基板または蓋板のうち少なくとも一
方は、常磁性体または反磁性体のいずれかを含み、両者
が磁気的に互いに吸引し合うように設けられているもの
である。

【０００９】そして、電磁石発生装置は、印字時には、
一旦作動して蓋板と流路基板とを離反させた後、作動を
停止して再び蓋板と流路基板とを接近させるように設定
されている。

【００１０】

【実施例】図１〜３に本発明の第１の実施例を示してい
る。流路基板１は、常磁性体の粉末（ＳｍＣｏ系磁粉な
ど）を熱可塑性樹脂（ナイロンなど）からなるバインダ
ーによって結合したプラスチックマグネット材料を用
い、射出成形によってインク流路２を有する形状に形成
されている。このインク流路２は、大容積の共通インク
室２ａと、複数の圧力発生室２ｂと、各圧力発生室２ｂ
と共通インク室２ａとを連通するリストリクション部２
ｃと、各圧力発生室２ｂから流路基板側面へ穿設された
ノズル部２ｄとから構成されている。

【００１１】流路基板１の流路面上には、比較的高剛性
の材料からなり、上記圧力発生室２ｂに対応する孔部３
ａを有する補強板３が配設されている。

【００１２】補強板３上には、流路基板１と同様のプラ
スチックマグネット材料により成形された磁性体部４ａ
と、非磁性体部４ｂとが結合されてなる蓋板４が接着さ
れている。このとき、図２に示すように、例えば流路基
板１の上面がＮ極、蓋板４の磁性体部４ａの下面がＳ極
というふうに、両者の対向面がそれぞれ異なる極性を示
し互いに吸引し合うように配置される。

【００１３】蓋板４の上面には、複数の圧力発生室２ｂ
にそれぞれ対向するように、コイル５からなる電磁石
（電磁力発生装置）が固定部材６を介して取り付けられ
ている。なお詳述しないが、コイル５および固定部材６
は蓋板４に対し着脱自在である。そして、コイル５には
図示しないリード線から選択的に電力が供給されるもの
である。

【００１４】このような構成のインクジェット記録装置
の作動について説明する。図２に示すように、通常時
（非印字時）は、コイル５に電圧を印加せず、磁界を作
っていない。従って、予め磁化されている蓋板４および
流路基板１は、その極性によって互いに引き付け合う。
実際には、薄い平板である蓋板４の方が撓み易く流路基
板１側に引き寄せられる。そして、圧力発生室２ｂの容
積が極めて小さくなる。なお、ノズル部２ｄ，リストリ
クション部２ｃにおいては、補強板３が介在しているた
め、蓋板４は変形せず正確な形状に保たれる。

【００１５】この状態からインク滴を射出する場合は、
まず図３に示すように駆動回路（図示せず。）からの印
字信号に基づいてコイル５に電流が流れ、コイル５が電
磁石として作用して蓋板４が吸引されて変形する。この
時、蓋板４はその極性に反して、流路基板１から離反す
る方向（図面上方）に向かって変形する。そして、ほぼ
水平になることにより圧力発生室２ｂの容積が最大とな
る。この時、共通インク室２ａからリストリクション部
２ｃを通って、圧力発生室２ｂにインクが補充される。
圧力発生室２ｂの容積が所望の大きさにまで到達した
ら、電圧印加が遮断される。そこで、コイル５側に吸引
されていた蓋板４は、自らの極性に従って流路基板１と
引き付け合って変形する。そして、再び図２に示すよう
に、圧力発生室２ｂが最小容積となる。この時に、圧力
発生室２ｂ内のインクは、ノズル部２ｄより外部の図示
しない印字媒体に向けて射出される。

【００１６】このように本発明は、一時的に圧力発生室
２ｂの容積を増大させてすぐに初期状態に復帰させるだ
けでインク射出を行なうもので、電磁石から解放される
ことによる蓋板の復元力と、流路基板１または蓋板４と
に予め付与されている磁性による磁気的な引力とが、圧
力発生室２ｂの容積を小さくする力として働くため、蓋
板４の変形速度すなわち射出速度を大きくすることが可
能となり、効率よく高速印字が可能となる。

【００１７】また通常状態（非印字時）には、電圧を印
加していないため、消費電力が少なくてすむ。またこの
状態では圧力発生室２ｂの容積が最小であるため、流体
的抵抗が大きい状態となり、外部から加わる振動や衝撃
などによるインクの流動が抑制され、外乱に対する信頼
性が向上する。

【００１８】図４には、本発明の第２の実施例をインク
流路２に直交する方向に断面した状態を示している。こ
れは、流路基板７の圧力発生室２ｂ内に突起７ａを設け
たものである。前述と同様に流路基板１および蓋板４は
磁性体からなっており、この突起７ａの作用で鎖線で示
すような磁路が形成し易くなっており、非印字時に両板
１，４が吸引し合う際の信頼性が向上する。なお、突起
７ａはインク的の射出の妨げとならないような形状およ
び大きさに形成されている。

【００１９】なお、上記２つの実施例では流路基板１と
蓋板４のいずれもプラスチックマグネット材料で形成し
たがこれに限定されるものではない。例えば、流路基板
１または蓋板４のいずれか一方のみを磁性体により形成
することもできる。また、常磁性体ではなく反磁性体に
より形成してもよく、この場合電磁石に加える電圧の向
きを常磁性体と反対にすればよい。また、常磁性体と反
磁性体とを結合した構成とすることもできる。この時
は、圧力発生室に対向する部分とそれ以外の部分とで分
ける構成とすることが望ましい。すると電圧印加時に圧
力発生室２ｂの容積が拡大する時、それ以外の部分（共
通インク室２ａなど）では容積が減少しようとするた
め、インクの補充などにおける効率の向上が可能であ
る。

【００２０】また、実施例では電磁力発生装置のコイル
５が圧力発生室２ｂの真上にあるが、圧力発生室上に電
磁力が作用すれば、別の場所にあるコイルより磁性材の
ヨークに電磁力を作用させても良い。

【００２１】

【発明の効果】本発明に係るインクジェット記録装置に
よると、印字に際して、電磁石の吸引から解放されるこ
とによる蓋板の復元力と、流路基板または蓋板の磁気的
な引力とを利用して蓋板を変形させ、インク射出を行な
うため、効率よく高速で印字できる。しかも、通常は、
電圧印加を遮断しておけ消費電力が少なくてすむ。ま
た、外部から加わる振動や衝撃などに対する信頼性も向
上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例の展開斜視図

【図２】第１の実施例の通常状態の断面図

【図３】第１の実施例の電圧印加時の断面図

【図４】第２の実施例の通常状態の断面図

【符号の説明】

１ 流路基板 ２ インク流路 ４ 蓋板 ５ コイル（電磁力発生装置）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インク流路が形成されている流路基板
   と、上記流路基板の上記流路面に設けられている蓋板
   と、上記流路基板または上記蓋板の少なくとも一方を磁
   気的に反発または吸引可能な電磁力発生装置とを有し、 上記流路基板または上記蓋板のうち少なくとも一方は、
   常磁性体または反磁性体のいずれかを含み、両者が磁気
   的に互いに吸引するように設けられていることを特徴と
   するインクジェット記録装置。
2. 【請求項２】 上記電磁石発生装置は、印字時には、一
   旦作動して上記蓋板と上記流路基板とを離反させた後、
   作動を停止して再び上記蓋板と上記流路基板とを接近さ
   せるように設定されたものであることを特徴とするイン
   クジェット記録装置。