JPH05311998A - 地下トンネル工事における湧水吸引装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 〔目的〕掘削坑の切羽付近に溜った湧水を連続的に汲み
上げることができ、しかも最下位の水中ポンプを切羽に
仕掛ける発破から離して設置したままで使用できるよう
にした。 〔構成〕掘削坑１内の切羽２から離れた位置に水中ポン
プ５を内設した第１の密閉チャンバー３ａを設け、該水
中ポンプ５に接続したホース４を水中ポンプ５の吸引力
の及ぶ範囲で地上寄りに設置した第２の密閉チャンバー
３ｂに連結するという手順で、夫々水中ポンプ５を内設
した密閉チャンバー３を地上付近までホース４を介して
所要数連結して地上に導出し、第１の密閉チャンバー３
ａには地上のバキュウームタンク８にホース７ａ、７ｂ
を介して連結された密閉タンク６の中継により湧水１２
を吸引して、第１の水中ポンプ５を水没し作動可能とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、地下トンネル等を掘削
する際に生じる湧水を、地上に吸出すのに用いる地下ト
ンネル工事における湧水吸引装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】地下トンネルの掘削工事において、掘削
作業によって生じたズリ（掘削土）は、トロッコで地上
に搬出するようにしているが、切羽からの湧水を放置し
たままにすると、付近の低位置に溜ってトロッコが水没
するので、このような切羽の湧水は、水中ポンプを設置
して地上に吸い上げるようにしていた。

【０００３】即ち、図２(a) に示すように切羽２１の深
度が浅い場合は、水中ポンプ２０を切羽２１の付近の湧
水２２中に設置し、ホース２３を介して地上に汲み上げ
る。また、図２(b) に示すように切羽２１の深度が深い
場合は、一台の水中ポンプ２０の揚水能力を超す場合に
は、切羽２１と地上の途中にタンク２４を設置し、水中
ポンプ２０で汲み上げた揚水をタンク２４に一旦溜め
て、このタンク２４に溜めた湧水をタンク２４内に設置
した水中ポンプで地上に汲み上げるというものであっ
た。

【０００４】一方、地下トンネルの掘削作業は、削岩
機、アースオーガ等による掘削作業に併用して、掘削の
先頭位置に発破を仕掛けて掘削の作業能率を高めるよう
にしている。ところが、この発破を仕掛けるときに、付
近に水中ポンプを設置したままでは危険であるので、水
中ポンプは発破を仕掛ける位置から少なくとも５０ｍほ
ど離しておかなければならない。

【０００５】このように、従来は、トンネルの掘削位置
に発破を仕掛けるたびに水中ポンプを移動し、発破が終
わると再び先頭の掘削位置に設置するという面倒な作業
を強いられていたのである。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
の事情に鑑みてなされたもので、切羽から出たズリを地
上に搬送するため、切羽付近の湧水を連続的に汲み上げ
るようにし、しかも湧水を汲み上げる水中ポンプを発破
の位置から離して設置したままで使用できるようにした
湧水吸引装置を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の地下トンネル工事における湧水吸引装置
は、掘削坑１内の切羽２から所定距離離れた位置に第１
の密閉チャンバー３ａを設け、該密閉チャンバー３ａに
ホース４を接続して該ホース４の先端を前記切羽２付近
の湧水１２中に導き、且つ前記第１の密閉チャンバー３
ａ内に水中ポンプ５を設け、該水中ポンプ５に接続した
ホース４の他端を前記水中ポンプ５の吸引力の及ぶ範囲
で前記第１の密閉チャンバー３ａから地上寄りに設置し
た第２の密閉チャンバー３ｂの上方内に連通するという
手順で、夫々水中ポンプ５を内設した密閉チャンバー３
を地上付近までホース４を介して所要数連結すると共
に、最も地上寄りの密閉チャンバー３内の水中ポンプ５
に接続されたホース４を地上に導出する一方、密閉タン
ク６に連通した上方からのホース７ａの下端を前記密閉
タンク６内に下方寄りに垂下すると共に、下方からのホ
ース７ｂの上端を前記密閉タンク６内に上方寄りに立上
げ、且つ前記下方からのホース７ｂの上端を前記上方か
らのホース７ａの下端より高い位置に配し、かくして成
る密閉タンク６を地上のバキュームタンク８に設けられ
た吸引ポンプ８ａの吸引力の及ぶ範囲内ごとに前記ホー
ス７ａ、７ｂを介して連結すると共に、最下端のホース
７ｂを前記第１の密閉チャンバー３ａの上方内に連通し
たものである。

【０００８】

【作用】本発明においては、最下位の水中ポンプ５を掘
削坑１の切羽２に仕掛けた発破の影響がないように遠ざ
けてあるので、まず最初に湧水１２を第１の密閉チャン
バー３ａ内に吸い上げて、水中ポンプ５を水没させる必
要がある。そのために、先ず吸引ポンプ８ａを作動し
て、密閉タンク６、６…で中継しながら吸引し、第１の
密閉チャンバー３ａから湧水１２に導かれたホース４を
介して第１の密閉チャンバー３ａ内に汲み上げる。

【０００９】そこで、第１の密閉チャンバー３ａ内の水
中ポンプ５が湧水１２で水没した時点で、該水中ポンプ
５を作動して湧水１２を汲み上げ上位の第２の密閉チャ
ンバー３ｂ内に貯水する。第１の密閉チャンバー３ａ内
の水中ポンプ５に接続されたホース４は地上寄りの第２
の密閉チャンバー３ｂの上方内に連通してあり、このよ
うな接続により第２の密閉チャンバー３ｂ及び上位の密
閉チャンバー３に汲み上げた揚水の逆流を防止すること
ができる。

【００１０】次に、この第２の密閉チャンバー３ｂ内の
水中ポンプ５が水没した時点で、第２の密閉チャンバー
３内の水中ポンプ５を作動するというように順次上位の
水中ポンプ５を作動し、最上位に設けられた水中ポンプ
５に接続したホース４を介して湧水１２を連続的に地上
に導出する。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。

【００１２】図１(a) は、本発明の地下トンネル工事に
おける湧水吸引装置の実施例を示す断面図であり、図１
(b) は図１(a) に示す密閉タンクの拡大断面図である。

【００１３】図１(a) において、掘削坑１内に設置する
最も切羽２寄りの第１の密閉チャンバー３ａは、切羽２
から所定距離離して設置してあるが、この離間距離は、
切羽２に仕掛ける発破の影響を回避できる５０ｍ程度を
とるものとする。

【００１４】第１の密閉チャンバー３ａには下方に向け
てホース４を接続し、このホース４の先端を切羽２から
出た湧水１２中に導く。第１の密閉チャンバー３ａ内に
は水中ポンプ５が設けてあり、該水中ポンプ５に接続し
たホース４を介して水中ポンプ５の揚程内で地上寄りに
設置した第２の密閉チャンバー３ｂの上方から内部に垂
下した状態で連通する。このような接続により、第２の
密閉チャンバー３ｂとその上位の密閉チャンバー３に汲
み上げた揚水の逆流を防止することができる。この第２
の密閉チャンバー３ｂには、上記同様に水中ポンプ５を
設けてある。そして、第２の密閉チャンバー３ｂ以降の
上位に設置した密閉チャンバー３に対して各水中ポンプ
５の揚程内で必要な台数だけホース４を介して地上間に
設け、最も地上寄りの密閉チャンバー３内の水中ポンプ
５に接続されたホース４を地上に導出する。

【００１５】なお、各水中ポンプ５の吸い込み口にはフ
ィルター１０を設け、各密閉チャンバー３内に吸い上げ
られた湧水中の泥土等を濾過するようにする。

【００１６】バキュームタンク８は掘削坑１の地上に設
置し、バキュームタンク８に吸引ポンプ８ａを設けてこ
のバキュームタンク８内を減圧にし、バキュームタンク
８に接続したホース７ａ内に吸引力を及ぼす。

【００１７】密閉タンク６、６…においては、各密閉タ
ンク６に連結した上方からのホース７ａの下端を該密閉
タンク６内に下方寄りに垂下すると共に、下方からのホ
ース７ｂの上端を密閉タンク６内に上方寄りに立上げ、
且つ下方からのホース７ｂの上端を上方からのホース７
ａの下端より高い位置に設ける。なお、各密閉タンク６
内に垂下した上方からのホース７ａの下端に絞り口を形
成した絞り管９を嵌合し、吸引流速を増大するようにし
てある。

【００１８】このような密閉タンク６、６…を、バキュ
ームタンク８と最下位の第１の密閉チャンバー３ａ間に
上方からのホース７ａと下方からのホース７ｂを介して
接続し、第１の密閉チャンバー３ａにおいてはその内部
上方に気密性を保って連通する。このような構成によ
り、各密閉タンク６、６…内に地上のバキュームタンク
８の吸引力が順次作用する結果、各密閉タンク６内にお
いては下方からのホース７ｂを経て吸引した湧水１２が
貯留し、これを上方からのホース７ａを介して上方に吸
い上げることができる。

【００１９】このような密閉タンク６の設置間隔は、地
上に設けられた吸引ポンプ８ａの吸引力の及ぶ範囲、即
ち５〜６ｍの範囲内ごとにホース７ａ、７ｂを介して接
続する。

【００２０】上記のような構成においては、先ず最初
に、吸引ポンプ８ａを作動することにより切羽２付近の
湧水１２を第１の密閉チャンバー３ａ内に吸引し、この
第１の密閉チャンバー３ａ内の水中ポンプ５が水没した
時点で該水中ポンプ５を作動し、次いで第２の密閉チャ
ンバー３ｂに貯留した湧水が汲み上げられるというよう
に、順次地上に向けて設置した密閉チャンバー３内に吸
引した湧水１２を貯留しながら各水中ポンプ５が水没し
た時点で作動させ、順次高位置の密閉チャンバー３に吸
引する。

【００２１】このように上記構成においては、掘削坑１
の切羽２付近に出た湧水１２を地上に汲み上げるため
に、第１の密閉チャンバー３ａ内に水中ポンプ５を設置
してあるが、水中ポンプは使用の際に各水中ポンプ５が
水中に没していることが条件となる。本発明において
は、水中ポンプ５を各密閉チャンバー３に収容し、下位
の水中ポンプ５がその上位に設置された密閉チャンバー
３内に湧水１２を汲み上げて水没させることにより、各
水中ポンプ５を各密閉チャンバー３内で作動可能として
ある。

【００２２】また、掘削坑１の深度が大きくなるにつれ
て、最下位の密閉チャンバー３ａに接続したホース４に
水中ポンプ５を接続してさらに最下位の密閉チャンバー
３ａを連結して該密閉チャンバー３ａから新たにホース
４を垂下して湧水１２に導き、一方これに合わせて密閉
タンク６をホース７ａ、７ｂを介して連結するという方
法により掘削坑１の掘り進みに従って湧水１２の処置を
することができる。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
最下位の密閉チャンバー３ａに接続した密閉タンク６、
６…の中継により、切羽２から遠ざけて設置された最下
位の密閉チャンバー３ａ内にも水中ポンプ５の作動を可
能とするように湧水１２の汲み上げによって水没状態に
し、次いで上位の密閉チャンバー３に順次汲み上げるこ
とにより切羽２の湧水１２を連続的に地上に汲み上げる
ことができる。従って、切羽より出たズリの搬出作業を
中断することなく行うことができる。

【００２４】また、掘削坑１の切羽２に発破を仕掛けた
場合でも、最下位の水中ポンプ５は発破の影響がない位
置に設置されているので、この水中ポンプ５を移動する
ことなく連続的に使用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１(a) は、本発明の地下トンネル工事におけ
る湧水吸引装置の実施例を示す断面図であり、図１(b)
は図１(a) に示す密閉タンクの拡大断面図である。

【図２】図２は従来の湧水吸引法を示す断面図であり、
図２(a) は切羽の浅い掘削坑の場合、図２(b) は切羽の
深い掘削坑の場合を示す。

【符合の説明】

１…掘削坑、２…切羽、３…密閉チャンバー、３ａ…第
１の密閉チャンバー、４…ホース、５…水中ポンプ、６
…密閉タンク、７ａ、７ｂ…密閉タンクを接続したホー
ス。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】掘削坑１内の切羽２から所定距離離れた位
   置に第１の密閉チャンバー３ａを設け、該密閉チャンバ
   ー３ａにホース４を接続して該ホース４の先端を前記切
   羽２付近の湧水１２中に導き、且つ前記第１の密閉チャ
   ンバー３ａ内に水中ポンプ５を設け、該水中ポンプ５に
   接続したホース４の他端を前記水中ポンプ５の吸引力の
   及ぶ範囲で前記第１の密閉チャンバー３ａから地上寄り
   に設置した第２の密閉チャンバー３ｂの上方内に連通す
   るという手順で、夫々水中ポンプ５を内設した密閉チャ
   ンバー３を地上付近までホース４を介して所要数連結す
   ると共に、最も地上寄りの密閉チャンバー３内の水中ポ
   ンプ５に接続されたホース４を地上に導出する一方、密
   閉タンク６に連通した上方からのホース７ａの下端を前
   記密閉タンク６内に下方寄りに垂下すると共に、下方か
   らのホース７ｂの上端を前記密閉タンク６内に上方寄り
   に立上げ、且つ前記下方からのホース７ｂの上端を前記
   上方からのホース７ａの下端より高い位置に配し、かく
   して成る密閉タンク６を地上のバキュームタンク８に設
   けられた吸引ポンプ８ａの吸引力の及ぶ範囲内ごとに前
   記ホース７ａ、７ｂを介して連結すると共に、最下端の
   ホース７ｂを前記第１の密閉チャンバー３ａの上方内に
   連通したことを特徴とする地下トンネル工事における湧
   水吸引装置。