JPH05285234A - 定位的放射線治療装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 単線源方式でガントリの回転により放射線ビ
ームの定位的集中を行う方式の定位的放射線治療装置に
ついて、機械的精度要因による照射ビームの照射方向の
ずれを簡単に補償できるようにする。又、治療台の回転
を行わずに多方向からの照射ビームの定位的照射を可能
とする。 【構成】 照射ビーム形成用の照射コリメータ１５のコ
リメート孔１６の向きを錐体ビームＣの頂点Ｔに収束す
る線分に沿った何れか任意の方向に選択的に向けること
ができるようにしており、そのために照射コリメータに
矢印Ｘの如き振り子動及び矢印Ｙの如き回転動を組み合
わせて行わせるようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、細い放射線ビームを定
位的に一点に集中させて治療する定位的放射線治療装置
に係わり、特に照射ヘッドを有するガントリの回転によ
りビームの定位的集中を行うようになっている定位的放
射線治療装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】放射線治療技術の一つに定位的放射線治
療法（定位法）という放射線照射方法がある。定位法と
は病巣部に対し局所的に大線量を集中して照射するもの
であり、病巣部局所に対し、ごく細く絞った放射線ビー
ムをつまり照射ビームを集光的に集中照射する方法であ
る。この定位法は、悪性腫瘍の治療に非常に効果的であ
ると共に、周辺の正常組織に対して放射線の被ばくが著
しく低くなる等の効果がある。

【０００３】この様に定位法は従来の放射線治療に比
べ、病巣部に投与する線量が非常に大きい。その為、病
巣部に的確に照射が集中する場合には、大きな治療効果
が期待できるが、万一照射位置が病巣部からずれていた
場合には正常組織に与える損害は多大なものと成り、時
として致命的なものともなりえる。

【０００４】従って、この定位法を行う定位的放射線治
療装置には、非常に高い精度で常に病巣部の位置に照射
位置を一致させることが要求される。このような位置決
めの方法として、予め他の診断装置（ＣＴ，ＭＲＩ，シ
ミュレータ等）で病巣部位置を測定し、その測定された
病巣部位置を定位的放射線治療装置の照射ビームの焦
点、即ちアイソセンタに一致させて照射を開始するとい
う方法がとられている。

【０００５】定位的放射線治療装置として、ガンマユニ
ットと呼ばれる多線源方式の定位的放射線治療装置と、
電子線加速器等を用いる単線源方式の定位的放射線治療
装置（特公平２−５０３５２１号）がある。前者は、多
数の照射孔を有する半球状コリメータと、このコリメー
タの外部に配置されたコバルト６０の密封線源からな
り、半球状に配置された多数のコバルト６０線源からの
ガンマ線量が病巣部に集中的に加えられ治療を実現でき
るものである。一方後者は、電子線加速器等を用いて、
患者の病巣部を中心をにントリを回転させ、且つ治療台
も回転させながらあらゆる方向から病巣部に集中的に放
射線を照射することができる。従って、両者共病巣部に
はその積算線量として大線量を与えることができ、且つ
正常な組織に対しては線量の分散効果により低線量にで
きるものである。

【０００６】しかし、ガンマユニットの場合は、線源と
して多数（２００個程度）のコバルト６０を使用してい
て、且つコバルト６０は、半減期を有するため交換が必
要となり、その維持費及び管理上の問題、更に装置価格
が高いことから、普及しにくい要因を抱えている。又、
ガンマユニットその構造上の制約から頭部専用であり、
その他の部位には適さない。このため、電子線加速器を
用いての定位的放射線治療が期待されつつある。

【０００７】電子線加速器による定位的放射線治療を行
う場合について図７と図８を用いて概説する。電子線加
速器装置のガントリ１０１が面内に位置する回転軸芯１
０２を中心に回転し、このガントリ１０１に設けられた
照射ヘッド１０３から細く絞られた照射ビームが病巣部
に照射される。このため回転軸心１０２と照射ヘッド１
０３より照射される照射ビームの中心１０４との交点１
０５がアイソセンタとされ、この位置に患者の病巣部が
一致させられる。従って、ガントリ１０１が回転軸芯１
０２を中心に回転中も照射されるビーム中心は常に前記
交点１０５を捉えることができるものでなければならな
い。

【０００８】然るに、電子線加速器による定位的放射線
治療装置のガントリ並びにガントリに設けられた照射ヘ
ッドは、重量物であるため、例えば図７や図８に点線で
示したようにガントリの回転中のガタやたわみが生じ、
ビーム中心が病巣部を捉えることができなくなる。つま
り、照射ビームの中心が１０４ａや１０４ｂの様に回転
軸心１０２の上に交差しなくなり、この結果照射ビーム
集中性が悪くなってしまう。従って、前記したように慎
重に位置決めを行ったにもかかわらず、このような状態
で治療を行うと、病巣部に対する線量と正常組織に対す
る線量の比が小さくなるため、病巣部を破壊する効果が
小さくなり、且つ正常な組織まで破壊される危険性が生
じることになる。

【０００９】尚、ガントリ１０１の回転だけではその回
転円弧の面内についてしか照射ビームの多方向照射が得
られない。このため、治療台１０６をアイソセンタを中
心にして水平面内で回転させ、この治療台１０６の回転
とガントリの回転を組み合わせることによりあわゆる方
向からの照射が可能となるようにされている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、単
線源方式でガントリの回転により放射線ビームの定位的
集中を行う方式の定位的放射線治療装置について、機械
的精度要因による照射ビームの照射方向のずれを簡単に
補償できるような構造の提供を目的とする。又、複雑な
構造を必要とする治療台の回転を行わずともあらゆる方
向からの照射ビームの定位的照射を可能とする構造の提
供を目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために本発明では、放射線から放射される放射線を錐
体形のビームに整える錐体コリメータ及びこの錐体コリ
メータが与える錐体ビームから更に細く絞った照射ビー
ムをそのコリメート孔にて形成する定位法用コリメータ
が設けられた照射ヘッドを先端部に有するガントリと、
このガントリを回転可能に支持する支持台とを備えてお
り、ガントリの回転に伴って多方向から照射される照射
ヘッドからの照射ビームがガントリの回転軸心上でアイ
ソセンタを結ぶように集中させられてなる定位的放射線
治療装置において、定位法用コリメータのコリメート孔
の向きを錐体ビームの頂点に収束する線分に沿った何れ
か任意の方向に選択的に向けることができるようにして
いる（請求項１）。

【００１２】又、本発明では、このようなコリメート孔
の向きの可変的設定を行うために、錐体ビームの頂点を
中心とし且つ錐体ビームの中心線を含む面内にある一つ
の円弧に沿った軌跡の振り子動と、錐体ビームの中心線
を回転軸芯とする回転動とを組合せ的に定位法用コリメ
ータに行わせるようにしている（請求項２）。

【００１３】更に、本発明は、定位法用コリメータの回
転動を照射ヘッド全体の回転により行わせるようにして
いる（請求項３）。

【００１４】

【作用】定位法用コリメータのコリメート孔の向きを任
意の方向に選択的に設定できるようにしたことにより、
一つにはガントリの機械的精度不足にるアイソセンタの
ミスアライメントの解消を簡単に行えるようになり、よ
り効率のよい定位法治療が可能となる。

【００１５】即ち、前述したようにガントリの回転ガタ
やたわみにより照射ビームの照射方向が本来ガントリの
回転軸芯上に結ぶべきアイソセンタからずれてミスアラ
イメントを生じるようになった場合、このずれを補償す
る方向にコリメート孔の向きを設定し、このコリメート
孔の向きに応じた方向に照射ビームの照射方向を向けて
やることにより、ミスアライメントを解消することがで
きる。

【００１６】他の一つは、治療台の回転を行わずとも定
位的照射が可能となる。即ち、従来の装置ではガントリ
の回転で多方向的に照射される照射ビームが形成するビ
ーム放射面が病巣部を横断すると共に、このビーム放射
面が治療台の回転に伴って相対的に回転することによ
り、病巣部への全体的照射を行うようにされているが、
本発明の構造による場合には、コリメート孔の方向変化
に応じた照射ビームの照射方向の変化によりビーム放射
面の病巣部に対する横断角度を異ならせる事ができ、こ
れにより治療台の回転がなくとも病巣部の全体的照射が
可能となる。この結果、治療がよりやり易くなり、又治
療台の構造の簡易化も図れる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を説明する。この実
施例による定位的放射線治療装置は、その全体構成が図
２により示されるように、支持台１、ガントリ２、照射
ヘッド３、及び治療台４よりなっている。ガントリ２
は、支持台１により、水平面内にある回転軸芯５を中心
に治療台４上の患者６の周囲を回転できるように支持さ
れており、この回転に伴って照射ヘッド３から放射され
る照射ビームを回転軸芯５上の一点にアイソセンタＰと
して集中できるようにされている。一方、治療台４は、
高さ調節及び水平面内での位置調節により患者６の病巣
部をアイソセンタＰに位置決めできるようにされると共
に、アイソセンタＰを中心にして水平面内で回転できる
ようにされており、この回転のために回転盤７が設けら
れると共に、台車８が下部に取り付けられている。

【００１８】照射ヘッド３から放射される放射線ビーム
は、図示せぬ電子線発生源からの電子線９を偏向マグネ
ット１０で偏向させて真空窓１１よりＸ線ターゲット１
２に放射し、これによりＸ線ターゲット１２から発生す
るＸ線を平坦化フィルタ１３で線量分布が一様となるよ
うにした後に錐体コリメータ１４で四角錐形状の錐体ビ
ームＣとし、更にこの錐体ビームＣから定位法用コリメ
ータ１５のコリメート孔１６で更に細く絞って照射ビー
ムを形成することにより得られる。

【００１９】このような照射ヘッド３は、本発明におけ
る特徴的な構造を有するもので、図１に示すように定位
法用コリメータ１５が矢印Ｘの如き振り子動及び矢印Ｙ
の如き回転動を組合せ的に行うことにより、そのコリメ
ート孔１６の向きを任意の方向に向けることができるよ
うにされている。

【００２０】定位法用コリメータ１５は、直方体を円弧
状に湾曲させたようなブロック体に形成されており、同
一の円弧中心を持つ円弧面となるようにされた上側支持
面１７及び下側支持面１８が上面と下面のそれぞれに形
成され、又、中心部にコリメート孔１６が各支持面１
７、１８に直交するように貫通状態で形成されている。

【００２１】このような定位法用コリメータ１５の振り
子動は、振り子動機構１９によりなされるもので、この
振り子動機構１９は、２本ずつ上下対にして４本の支持
ローラ２０、２０、……を有しており、この対の支持ロ
ーラ２０、２０、……で定位法用コリメータ１５をその
各支持面１７、１８において挟持し、各支持ローラ２
０、２０、……の回転により定位法用コリメータ１５に
振り子動を行わせるようになっている。

【００２２】振り子動機構１９の支持ローラ２０、２
０、……による定位法用コリメータ１５の支持は、各支
持面１７、１８の円弧中心が、Ｘ線ターゲット１２上の
一点に結ぶ錐体ビームＣの頂点Ｔに位置するようになさ
れている。従って、振り子動に応じてその向きを変化さ
せるコリメート孔１６の中心線は常に錐体ビームＣの頂
点Ｔを通ることになるので、コリメート孔１６により形
成される照射ビームは常に一定の線量分布を持つことに
なる。

【００２３】定位法用コリメータ１５の回転動は、この
例では照射ヘッド３全体を回転させることにより照射ヘ
ッド３の中心線つまり錐体ビームＣの中心線Ａを回転軸
芯としてなされるようになっている。この照射ヘッド３
の回転は、回転機構２１によりなされるもので、照射ヘ
ッド３をそのハウジング２２の基端部でガントリ２の先
端部に回転可能に支持させると共に、ハウジング２２の
基端部に駆動ベルト２３を巻回させ、この駆動ベルト２
３を駆動源２４にて回転駆動させることによりなされる
ようになっている。

【００２４】このような振り子動と回転動とを組合せ的
に用いることにより、図４に示すように、振り子動によ
るコリメート孔１６の可動範囲Ｑが描く円Ｓの内に含ま
れる任意の点に照射ビームを向けることができる。この
ことは、逆に言えば、円Ｓの内にある何れかの点に照射
するように照射ビームの方向がずれた場合に、このずれ
た照射ビームの方向を本来あるべきアイソセンタＰに向
けることができるということである。つまり、図７や図
８に示すようなガントリの機械的精度要因で生じる照射
ビームの照射方向のずれを解消できるということであ
る。

【００２５】又、定位法用コリメータ１５に振り子動を
行わせることにより、図５に示すように、ガントリ２の
回転軸芯５に直角に交差する方向だけでなく、振り子動
により可能な範囲において傾いた角度で交差する方向か
らの照射ビームの照射を行うことができ、この照射ビー
ムの傾きと治療台２５の矢印Ｚの如き前後動とを組み合
わせれば、治療台２５の回転がなくとも定位法的照射が
可能となる。

【００２６】即ち、図６に模式化しして示すように、照
射ビームの傾きの変化と治療台の前後動つまり病巣部α
の前後動を組み合わせる結果、各傾きの照射ビームを逆
方向にたどって得られる各照射ビームの集中点に病巣部
αを置いた場合と同様の照射を行うことができる。

【００２７】

【発明の効果】本発明によれば、機械的精度要因で照射
ビームの照射方向にずれが生じた場合に、定位法用コリ
メータの振り子動と回転動の組合せでこれを簡単に補償
することができ、しかもこの補償された向きの照射ビー
ムが常に一定の線量分布を持つようになっているので、
放射線の定位的照射を常に高精度で安定的に行え、定位
法的治療の質を高めることができる。又、本発明によれ
ば、治療台の回転を必要とせずに定位法的治療を行える
ので、装置構造の簡易化を図ることもできる

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例による定位的放射線治療装置
の照射ヘッドの構成図である。

【図２】本発明の一実施例による定位的放射線治療装置
の全体構成図である。

【図３】定位法用コリメータと振り子動機構の関係を示
す斜視図である。

【図４】定位法用コリメータの振り子動と回転動との組
合せにより得られる照射ビームの照射方向の可変範囲に
ついての説明図である。

【図５】定位法用コリメータの振り子動を利用した定位
法的治療の様子を示す説明図である。

【図６】図５による定位法的治療における病巣部への放
射線照射の仕方の模式図である。

【図７】従来の定位的放射線治療装置における照射ビー
ムの照射方向のずれについての説明図である。

【図８】従来の定位的放射線治療装置における照射ビー
ムの照射方向の他のずれについての説明図である。

【符号の説明】

２ ガントリ ３ 照射ヘッド ５ 回転軸芯 １２ Ｘ線ターゲット（放射線源） １４ 錐体コリメータ １５ 定位法用コリメータ １６ コリメート孔 Ａ 錐体ビームの中心線 Ｃ 錐体ビーム Ｐ アイソセンタ Ｔ 錐体ビームの頂点

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 放射線源から放射される放射線を錐体形
   のビームに整える錐体コリメータ及びこの錐体コリメー
   タが与える錐体ビームから更に細く絞った照射ビームを
   そのコリメート孔にて形成する定位法用コリメータが設
   けられた照射ヘッドを先端部に有するガントリと、この
   ガントリを回転可能に支持する支持台とを備えており、
   ガントリの回転に伴って多方向から照射される照射ヘッ
   ドからの照射ビームがガントリの回転軸芯上でアイソセ
   ンタを結ぶように集中させられてなる定位的放射線治療
   装置において、 定位法用コリメータのコリメート孔の向きを錐体ビーム
   の頂点に収束する線分に沿った何れか任意の方向に選択
   的に向けることができるようにしたことを特徴とする定
   位的放射線治療装置。
2. 【請求項２】 定位法用コリメータに、錐体ビームの頂
   点を中心とし且つ錐体ビームの中心線を含む面内にある
   一つの円弧に沿った軌跡の振り子動と、錐体ビームの中
   心線を回転軸芯とする回転動とを組み合わせて行わせる
   ことによりそのコリメート孔の向きを選択的に設定でき
   るようにした請求項１に記載の定位的放射線治療装置。
3. 【請求項３】 照射ヘッド全体を回転させることにより
   定位法用コリメータの回転動がなされるようになってい
   る請求項２に記載の定位的放射線治療装置。