JPH0520715B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はケースを有する時計に関し、該ケース
は少くとも部分的に硬質の天然物質又は人工物質
を含んで形成され、前記物質は、例えば花崗岩と
か準貴石又は例えばタングステンやチタニウムの
如き或る金属の炭化物又は窒化物のごとき物質で
ある。

〔従来の技術〕

スイス特許第517963号に記載の時計用ケースに
は水晶板や保護キヤツプを冠せた裏側カバーを取
付けた金属製内部ケース環を有している。この裏
側カバーは金属炭化物の粉末を焼結した硬質物質
から製造される。内部ケース環は原則的に上記キ
ヤツプの製作許容誤差を補償するためにキヤツプ
ににかわ付けされるが、その焼結工程中に生ずる
著しい収縮作用のためにその寸法精度を確保しえ
ないことはよく知られている。

この特殊なケース内の焼結物質製キヤツプを硬
質の鉱石キヤツプに置き替えたいと欲する場合に
は該鉱石キヤツプ内に中央開口を機械加工により
成形して金属製の内部ケース環上に水晶板を組付
け、更に当然ながら内部ケース環上に設けられた
文字板の観察を同時に行ないうるようにしなけれ
ばならない。この構造の代替交換操作は研削作業
により硬質物質に対する加工が行われるので、極
端に困難となり、これは与えられた時間内におい
てほんのわずかな物質量が機械的加工の作業の時
間内に行われるにすぎないからである。この場合
その中央開口がそのキヤツプを実質的に弱くしそ
のため時計の機械加工および組立作業中破損せし
めるという大きな危険を伴なうことを付け加えて
おかなければならぬ。かくしてこのような交換作
業をする場合には何人といえども高い廃棄率を招
来して結果的には比較的高い製造費を要すること
になる。

他方において、内部ケース環を形成する金属輪
形部分が存在するために、結局は上記キヤツプの
お陰で時計の強度が確保されると共に摩耗に対す
る保護が効果的に得られることになる。スイス特
許第517963号の分析結果を約言すれば、ここに記
載した時計用ケースは製造工程中の堅牢性に関し
ては通常のものが得られ、この堅牢性は時計の使
用者にとつて満足されたものと結論することがで
きよう。

最後に、上記ケースの薄弱性は該ケースが焼結
物質か又は機械加工石であるのかについてそのい
ずれかをその製造中に銘記することが肝要であ
る。スイス特許第583439号はスイス特許第517963
号記載の組立品を或る考えの下に時計完成化のた
めに寄与する教示を与えている。つまり中央開口
を有しないケース環に対し機械加工を施した一片
の準貴石を使用することを推奨する。この場合上
記中央開口はケース環と共に全体が一体化して形
成された湾曲面部により蔽われ、かつ時計の文字
板として利用すべきことを推奨している。しかし
ながら比較的に単純な形状のこの部分は時計の駆
動機構部を内蔵すべき収容室の機械加工を必要と
し、更に付属脚部分間の空間の機械加工並びに特
に固定脚を組付けるための凡ての貫通穴を機械加
工しなければならない。水晶板や裏側カバーを固
定化するための嵌め込み溝は上記ケース環に設け
られ、上記脚部がその上にねじ込まれたナツトと
協働しかつ裏側カバーの肉厚部分に埋設される。
防湿用パツキンが嵌込み用溝部と裏側カバーによ
りケース環の二個の面に対し挟圧されている。

この配置設計のものはケース環と文字板とを単
一片とし形成する該部分の製作について或る程度
の利点を持つものではあるが、それにも関らず上
記貴石上に複雑な機械加工を施こす必要があり、
即ち固定すべき脚部に対しその挿通穴を貫通加工
しなければならない。その上これらの穴の存在は
また機械加工中とか時計の使用中とかのいずれに
おいてもその部分が衝撃作用を受けるときはいつ
でも該貴石を破損に導びくような亀裂が発生す
る。これらの困難性は明らかに弱点となるばかり
でなく貴石部分の厚みが増大して価格が高くな
り、更には時計の全体的な厚みも増加する。

更にこの特許の構造において、その収容室の壁
体内に形成した横方向の溝によりその駆動機構部
が収容室内部に収納されている。この溝の加工は
上記貴石内の複雑な機械加工作業と同様に厄介で
ある。その取付け方法はまたその駆動機構部が収
容室の床面に対し弾性的に支持されるように実施
される（即ち文字板の反対側の湾曲表面の中央面
に対して支持される）。結果としてこの時計が衝
撃を受けてこの湾曲表面に対して起す慣性運動の
減衰期間中この時計は上記ケース環の接合点にお
いて始動破壊の危険を引起すことになる。

最後にこの組立体は多数の組立部品から成りか
つ貴石面にパンキンが使用されて組立てられ、そ
の場合貴石物質の性質を考慮すれば完全な湿気防
止の密封作用が保証されていないことに留意しな
ければならない。

〔発明の要約〕

かくして本発明は、硬質の天然物質又は人工無
機物質により少くともその一部が形成されたケー
スと、該ケース内に収蔵した時計の駆動機構部
と、水晶板および裏側カバーとを具備する時計を
提供することをその目的とし、前記ケースは前記
駆動機構部を収容すべき収容室を有する機械加工
の容易な物質の内部ケース環と、前記内部ケース
環を取巻きその周囲を全面的に被覆する前記硬質
物質から機械加工された外部ケース環とを具備
し、時計の文字板を構成するわん曲面部が外部ケ
ース環と一体物として形成されかつその文字板側
が凹面となつており、水晶板が前記わん曲面部を
被覆し、前記水晶板を位置決めし固定する手段が
前記わん曲面部を取巻きかつ外部ケース環に配設
され、裏側カバーが外部ケース環内に埋設されか
つ前記内部ケース環に固定され、腕輪取付け突起
が裏側カバーと一体でかつ外部ケース環から外側
に突出し、前記内部ケース環が水晶板の外側直径
より大きな外側直径を有している。

これらの特徴的構造をもつため、該時計におい
て硬質無機物質から単一の一体物として形成され
たケース部分は不連続的結合部が最小限に規制さ
れ、時計の抵抗作用を製造期間中並びに使用中に
も同様に向上させるため、長短針の軸部や竜頭の
巻芯軸の貫通穴を除外すればその他に貫通穴は全
く存在しない簡単化した形態のケースが得られ
る。

本発明のもう一つの目的は密封性の問題が簡潔
に解決され、しかも効果的な構造態様をもつ時計
を提供することである。この目的のために本発明
によれば水晶板はにかわ付けにより外部ケース環
に固着される。これによつて、無機物質表面に設
けられた相互接合面の密封作用はにかわ付けによ
り確保され、他方において金属対金属の相互接合
面間の密封作用はパツキンの利用により確保され
る。したがつて無機物質は如何なる永久歪力を受
けることなく時計の種々な部分を上記ケース環部
分に確実に固定化することができる。

本発明の他の目的は上記ケースの凡ての部分が
着用者に目視可能な時計を提供することであり、
ただし無機物質で作られている腕輪の付属突起物
を除外する。

この目的は内部ケース環の外周縁部分が外部ケ
ース環により全く蔽われているという事実のため
に達成されるものである。このようにして製作さ
れた時計は摩耗し易い部分を最大限に保護して秀
れた審美効果を奏する。

〔実施例〕

図面に示した実施例において、時計は硬質の天
然物質又は人造物質から形成された部分２を有す
るケース１を具備する。上記物質は、花崗岩、準
貴石、金属炭化物、単結晶性金属酸化物その他で
ある。単一の一体物として形成されたこの部分は
ケース１の外部ケース環３と呼称される環状物体
部片であり、かつ該ケース環１の略3/4の高さの
位置にケース環１を水平方向に仕切る湾曲面部４
が形成され、この湾曲面部４の上表面上には時計
の文字板５が形成されている。

かくして上述した部分２の内部には円形状の中
央収容室６が形成され、この収容室はケース環３
の外側周と同心状に形成されている。ケース環３
の外側周面の断面は略円錐曲線形状である。しか
しながら、ケース環３の形状および収容室６の形
成配置はこれに限定されるものではなく、時計に
対す所望の審美的形態に沿つて決定できるもので
あつて、上記収容室６は鉱石製ケース環３の一般
的形態に従つて偏心配置も可能であり、このケー
ス環３自体は同様に審美的効果を考慮した上で決
定された種々の変形された外形を取りうるものと
する。文字板５を形成する湾曲面部４の表面は凹
曲面状をなし、この部分は外部ケース環３の起立
した外周部分７によつて取り囲まれている。この
起立外周部７は水晶板９を位置決めし固定化する
断面形手段８によつて決定される。図示の構造に
おいてこのような断面形による設定手段は肩部１
１をもつて環状段部１０から成り、上記肩部１１
上ににかわ接合剤によつて水晶板９を取付ける。
かくしてこの水晶板９は外部ケース環３の肉厚部
内に埋設される。

湾曲面部４の中心には穴１２が貫通して形成さ
れ長短針の針軸１３と１４の挿入通路が設けられ
ている。更にその中心領域は強化部分１５があ
り、上記湾曲面部はこの中央部分における剛性度
をこの部分により増強している。この強化部分は
その機械加工の最終工程においてその裏面周辺部
のみを連続加工することにより仕上げられる。金
属製の内部ケース環１６は収容室６の内部に配置
される。この内部ケース環は環状の外輪部分１７
ａを有し、該外輪部分１７ａから半径方向内方に
向つてフランジ１７ｂが延在し、内部ケース環外
側周面とケース環３の内周壁面間ににかわ接合剤
を挟入することにより外側ケース環２に接着さ
れ、同様にしてはこれは絶対的な要件ではないけ
れども内部ケース環１６の上面と湾曲面部４の対
応する下面部分間ににかわ付けが施工される。

内部ケース環１６は最初にケーシング輪体１９
の形態をとる一つの内部挿入部材により時計の駆
動機構部１８を内蔵させるために設けられてい
る。図示の実施例において駆動機構１８はバレル
型のものとして考慮されており、上記ケーシング
輪体１９は図面左、右両部分に見られるようにそ
の全周のまわりに一定の半径方向断面を有しない
ようなものである。このケーシング輪体１９には
肩部２０が形成され、この肩部２０は駆動機構部
１８の周辺上に標準形式のものとして形成された
カラー部分に協同して内蔵される。

環状溝２１が内部ケース環１６の底面に設けら
れ、防湿性パツキン２２が該溝内に充填される。
更に数個のねじ穴２３が内部ケース環１６に設け
られねじ２５により裏側カバー２４をこれに取付
ることができる。裏側カバー２４は円形板体から
形成され、この板体は上記収容室６の開口を殆ん
ど全閉して当てがわれかつその形態は時計全体の
審美性を考慮して形取られる。このカバー２４に
は図示されていない腕輪を取付けるために文字板
の正午の位置に付属突起２６が形成されると共に
６時の位置に突起が形成される。

かくしてこの部分を密封するために、この時計
には金属部材と効果的な接触作用をもつ１個のパ
ツキンのみがその底部に必要となることは理解さ
れよう。このパツキンは更に裏側カバーと溝２１
によつて限界された矩形状の空間はその凡ての側
面がその内部を取囲んでいる。

同様にして内部ケース環１６は水晶板９の直径
d₂より大なる外側直径d₁を有する。この配置構成
は内部ケース環１６を設けたために湾曲面部４と
外側ケース環３間の連接個所に折れ易い部分を支
持する傾向をもつことは考慮内のものである。か
くして使用中衝撃が生じた場合に上述の区域にお
ける破断の危険性は実際上減小しうる。

次に時刻合せ用の竜頭軸２７に対する穿り穴が
どのようにして確保されるかについて以下詳細に
説明する。竜頭軸２７は外部ケース環３を貫通す
る半径方向の穴２８並びに内部ケース環１６に形
成して半径方向の穴２９とを同時に貫通し、その
とき半径方向の穴２９は竜頭軸２７の直径に合せ
て調節され、室内で作用を確実にして竜頭軸の回
転を可能にする。竜頭軸２７自体の回りに環状溝
３０が上記半径方向の穴２９の略中央位置に当つ
て設けられており、該環状溝３０内に密封材３１
を充填するように構成される。かくして外部の湿
気からこの部分が密封されうるように金属表面に
対接して作用する密封材がここにもまた設けられ
ている。竜頭３２は部分２と同一材質で作られ、
竜頭軸２７の外端に冠せて取付られ、この外端取
付部分は例えばにかわ付けによりその先端部分に
竜頭３２が固着化される。竜頭軸２７を通すため
に内部ケース環１６に穿つた穴２９は駆動機構部
１８の上部表面を含む半径方向の平面に対し殆ん
ど接線状に孔穿けされている。これは上記竜頭軸
２７が密封材３１の環状溝３０を形成するために
比較的大きい直径を持たねばならない事実に基い
ている。もしも上記湾曲面部４の下面が平坦であ
るものとすれば穴２９と内部ケース環１６の上部
表面間の材料肉厚が極めて薄弱となるから穴２７
を楕円形にしなければならず、かくては密封部３
１に良好な接触作用を保証できなくなり、密封機
能を阻害する結果を生ずるにいたるからである。

上記収容室６の底部周囲には強化部分１５を取
り囲む一つの環状の溝が形成されており、これは
より一そう肉厚の内部ケース環の利用を可能にす
るものであり、これにより時計の全体厚みを増大
させることなくしかも時計の密封作用を保証す
る。

この特殊な解決策は文字板５を形成する湾曲面
部４が凹状曲面に形成され、かつ上記収容室６は
当初その全表面に亘つて機械加工が施されその後
にその内側溝壁体表面のみが仕上加工されるとい
う事実に鑑みて可能にされたのである。かくして
段部１０の高さ位置にある湾曲面部４の断面形状
は機械加工操業時にその部分に受ける作動圧力に
充分耐え得る形態をとることができる。

硬質物質から成る部分２の機械加工は好ましく
は熟練工に良く知られているダイヤモンド研削機
による研削工程を通して行なわれる。本発明の枠
組内において、このような機械加工は上記内部ケ
ース環の設定のために特別な精密度は要求されな
い。即ちこの場合、該時計要素は精密性を必要と
する凡ゆる機能が確保され、更にはその間におい
て時計の駆動機構部の位置付けと、パツキン２２
及び３１の気密保持と裏側カバーに対するねじ２
３の取付け配置等を指摘することができよう。

以上のように、本発明によれば、時計の硬質無
機物質から単一の一体物として形成されたケース
部分は不連続的結合部が最小限に規制され、時計
の強度が製造中及び使用中に向上し、長短計の軸
部と竜頭の巻芯軸の貫通穴以外には貫通孔の存在
しない簡単な構造のケースが得られる。内部ケー
ス環は外周が外部ケースにより全面的に被覆され
ているため摩耗し易い部分は最大限に保護され審
美効果の大きなものとなる。また内部ケース環は
水晶板より大きな直径を有するため、この内部ケ
ース環が文字板を形成するわん曲面部と外側ケー
ス環との間の折れやすい連接個所を支持し、ケー
ス全体を丈夫なものとする効果がある。さらに文
字板は凹面形状にわん曲形成されているので、時
計全体の厚さを増大させることがない。

【図面の簡単な説明】

唯一個の図面は本発明に係る時計の一部を取除
いた時計の直径方向に沿う断面図を示す。 １…ケース、２…硬質物質からなる部分、３…
外側ケース環、４…湾曲面部、５…文字板、６…
収容室、７…起立周縁部分、９…水晶板、１０…
環状段部、１３，１４…竜頭軸、１５…強化部
分、１６…内部ケース環、１９…輪状ケーシン
グ、１８…駆動機構部、２０…肩部、２４…裏側
カバー、２５…固定ねじ、２６…突起、２７…竜
頭軸、２８，２９…半径方向の穴、３０…環状
溝、３１…密封材、３２…竜頭。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少くとも部分的に硬質天然物質又は人工物質
   から形成されたケースと、該ケース内部に内蔵さ
   れた時計駆動機構部とを具備する時計であつて、 前記ケースは前記駆動機構部を収容すべき収容
   室を有する機械加工の容易な物質の内部ケース環
   と、前記内部ケース環を取巻きその周囲を全面的
   に被覆する前記硬質物質から機械加工された外部
   ケース環とを具備し、 時計の文字板を構成するわん曲面部が外部ケー
   ス環と一体物として形成されかつその文字板側が
   凹面となつており、 水晶板が前記わん曲面部を被覆し、 前記水晶板を位置決めし固定する手段が前記わ
   ん曲面部を取巻きかつ外部ケース環に配設され、 裏側カバーが外部ケース環内に埋設されかつ前
   記内部ケース環に固定され、 腕輪取付け突起が裏側カバーと一体でかつ外部
   ケース環から外側に突出し、 前記内部ケース環が水晶板の外側直径より大き
   な外側直径を有している ことを特徴とする時計。