JPH05198281A - 磁界型電子レンズ及びそれを用いた電子顕微鏡 - Google Patents

磁界型電子レンズ及びそれを用いた電子顕微鏡

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JPH05198281A
JPH05198281A JP4230287A JP23028792A JPH05198281A JP H05198281 A JPH05198281 A JP H05198281A JP 4230287 A JP4230287 A JP 4230287A JP 23028792 A JP23028792 A JP 23028792A JP H05198281 A JPH05198281 A JP H05198281A
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lens
magnetic
field generating
superconductor
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Shigeyuki Hosoki
茂行 細木
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】凹レンズ特性を有する磁界型電子レンズを実現
し、従来補正不可能であった磁界型電子レンズの球面収
差と色収差の補正を可能とすること。 【構成】荷電粒子ビームの進行方向に沿って上下に配置
された超伝導体からなるコイル(2,3)と、コイル
(2)の上側およびコイル(3)の下側にそれぞれ設け
られた超伝導体からなる磁気遮蔽板(1,4)とからな
り、コイル(2)が発生するベル型分布の磁界のうち磁
界強度がピーク値となる位置よりも上方の磁界部分が磁
気遮蔽板(1)によって遮蔽され、コイル(3)が発生
するベル型分布の磁界のうち磁界強度がピーク値となる
位置よりも下方の磁界部分が第2の磁気遮蔽板(4)に
よって遮蔽される。 【効果】この結果、全体として谷型の軸方向磁界強度分
布が得られ、幾何光学的に凹レンズ特性を有する磁界型
電子レンズが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁界型電子レンズの改
良に係り、特に、電子顕微鏡等の電子ビーム応用装置や
微小部二次イオン分析装置等のイオンビーム応用装置を
含めた荷電粒子ビーム応用装置全般において、荷電粒子
ビームの収束や拡大のために使用される磁界型電子レン
ズの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来電子顕微鏡等の電子ビーム応用装置
や微小部二次イオン分析装置等のイオンビーム応用装置
においては、荷電粒子ビーム(電子ビーム又はイオンビ
ーム)の収束や拡大のために、静電型および磁界型の電
子レンズが用いられてきた。特に、透過型電子顕微鏡の
ように試料の原子スケールでの構造までをも観察するよ
うな高倍率の電子顕微鏡においては、高倍率かつ分解能
の良い試料像を取得するために、レンズ収差の小さな電
子レンズを用いることが必要であり、このため、静電型
の電子レンズに比べてレンズ収差の絶対値をより小さく
することのできる磁界型の電子レンズが主として用いら
れてきた。
【0003】ところが、これまでのところ、磁界型電子
レンズにおいてはいわゆる凸レンズしか構成することが
できなかったため、光学レンズ系におけるように凸レン
ズと凹レンズとを組み合わせることによって収差の値を
小さくすると云う手法を採ることができなかった。この
ため、光学顕微鏡の分解能が使用する光の波長のオーダ
ーであるのに対して、電子顕微鏡(例えば、100kV
で加速された電子ビームを用いる電子顕微鏡)では、電
子ビームの波長が約4pmであるのに対し、得られる分
解能は約0.1nmとかなり大きい。このように電子顕
微鏡の分解能が使用する電子ビームの波長に比べて良く
ならない原因は、電子レンズそのものの属性である球面
収差や色収差などのレンズ収差による影響分が殆どであ
る(この他にも、回折収差や電子ビームと試料内電子と
の相互作用などによる影響分のように原理的に避けられ
ないものもあるが、この影響分はごく僅かでしかな
い)。
【0004】そして、これまでは、上記したレンズ収差
による影響分も全く補正することができないものと考え
られてきた。電子線ホログラフィなどの新技術も、元々
は電子顕微鏡の対物レンズがもつ球面収差の影響を軽減
せんがために案出されたものであり、コヒーレントな電
子線を用いた時の電子回折像(フーリエ変換像)までを
記録し、その逆フーリエ変換はレーザー・ビームを用い
て光学的に行なうと云う手法を用いることによって、で
きるだけ電子レンズの収差の影響を無くそうとしたもの
である。なお、この種技術に関する文献としては、例え
ば、“電子顕微鏡の理論と応用I”,電子顕微鏡学会
編,1959年10月,丸善社発行、および“The Elec
tron Microscope", E.& F. N. Spon Limited, London,
(1961)を挙げることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来
の磁界型電子レンズにおいては、いわゆる凸レンズ特性
を有するものしか構成できなかったため、光学レンズ系
におけるように、凸レンズに凹レンズを組み合わせるこ
とによって凸レンズのもつ収差を補正すると云う手法を
用いることができなかった。このために、従来の磁界型
電子レンズを用いた電子顕微鏡においては、どうしても
十分な分解能を得ることができなかったのである。な
お、このことは、単に電子顕微鏡に限らず、細く収束さ
れた電子ビームやイオンビームを用いる荷電粒子ビーム
応用装置全般について云えることである。
【0006】したがって、本発明の目的は、凹レンズ特
性を有する磁界型の電子レンズを提供することである。
本発明の他の目的は、上記した本発明による凹レンズ特
性を有する磁界型電子レンズを従来の凸レンズ特性を有
する磁界型電子レンズに組み合わせることによって、レ
ンズ収差量を大幅に低減し得る磁界型の複合電子レンズ
を提供することである。本発明のさらに他の目的は、上
記した本発明による磁界型複合電子レンズを使用するこ
とによって、高倍率で高分解能の試料像観察を可能なら
しめ得る電子顕微鏡を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、磁界型電子レンズを、荷電粒子
ビームの進行方向に沿って上下に配置された超伝導体か
らなる第一および第二の磁界発生用コイルと、上記第一
の磁界発生用コイルの上側および上記第二の磁界発生用
コイルの下側にそれぞれ設けられた超伝導体からなる第
一および第二の磁気遮蔽板とから構成している。上記第
一の磁気遮蔽板によって上記第一の磁界発生用コイルの
上側に発生する磁界部分が遮蔽され、上記第二の磁気遮
蔽板によって上記第二の磁界発生用コイルの下側に発生
する磁界部分が遮蔽される。すなわち、上記第一の磁界
発生用コイルによって発生されるベル(鐘)型分布の磁
界のうち磁界強度がピーク値となる位置よりも上方の磁
界部分が上記第一の磁気遮蔽板によって遮蔽され、上記
第二の磁界発生用コイルによって発生されるベル型分布
の磁界のうち磁界強度がピーク値となる位置よりも下方
の磁界部分が上記第二の磁気遮蔽板によって遮蔽され
る。この結果、全体として谷型の磁界分布を有する、幾
何光学的に凹レンズ特性を有する磁界型電子レンズが得
られる。
【0008】また、本発明によれば、上記した凹レンズ
特性を有する磁界型電子レンズのうち上記第二の磁界発
生用コイルと上記第二の磁気遮蔽板とからなる部分(下
側部分)を、超伝導体からなる第三の磁界発生用コイル
と第三の磁気遮蔽板とによって構成された凸レンズ特性
を有する磁界型電子レンズ部分(上側部分)と組み合わ
せることによって、レンズ収差量を大幅に低減した磁界
型複合電子レンズ(凸レンズ)が提供される。
【0009】さらにまた、本発明によれば、上記した凹
レンズ特性をもつ磁界型電子レンズのうち上記第二の磁
界発生用コイルと上記第二の磁気遮蔽板とからなる部分
(下側部分)を、常伝導体からなる第四の磁界発生用コ
イルと同じく常伝導体からなる第四の磁気遮蔽板とによ
って構成された凸レンズ特性を有する磁界型電子レンズ
部分(上側部分)と組み合わせることによって、レンズ
収差量を大幅に低減した磁界型の複合電子レンズ(凸レ
ンズ)が提供される。
【0010】
【作用】従来用いられてきた磁界型電子レンズにおいて
は、入射荷電粒子ビームの中心軸に対して軸対称のフィ
ールド(磁場)を作ったとき、その軸方向磁界強度分布
は必ずベル型(もしくは、山型)となる。すなわち、磁
界分布の詳細な形状はそれぞれのレンズにおいて多少異
なるとしても、従来の磁界型電子レンズにおける軸方向
磁界強度分布は、必ずレンズ上端部(磁界強度Hz =
0)から始まって、次第に磁界強度を増し、レンズ中央
部(磁界強度Hz = max)を経てから、今度は次第に磁
界強度を減じ、レンズ下端部(磁界強度Hz =0)に終
わっている。そして、従来の磁界型電子レンズは、決ま
ってこのベル型(もしくは、山型)の軸方向磁界強度分
布を有するが故に、入射荷電粒子ビームに対して常に凸
レンズとしての特性しか示さないのである。
【0011】これに対して、磁界型電子レンズが凹レン
ズ特性を示すようにするためには、その軸方向磁界強度
分布が、電子線の進行方向に沿って、レンズ上端部で磁
界強度が最大値(Hz = max)を示し、レンズ中央部で磁
界強度が最小値(Hz = min)を示し、レンズ下端部で磁
界強度が最大値(Hz = max)を示すいわゆる谷型の軸方
向磁界強度分布を持つようにしてやらなければばならな
い。このような磁界強度分布を持たせることは、本発明
に従って、(1)超伝導体からなる磁気遮蔽板を用いる
ことによってレンズ上端部よりもさらに上方およびレン
ズ下端部よりもさらに下方に磁界が形成されるのを完全
に防止し、かつ、(2)超伝導体からなる磁界発生用コ
イルを用いることによって十分な強度の磁場を発生させ
る、ことにより始めて実現可能となるのである。
【0012】
【実施例】以下に、本発明の実施例につき、図面を参照
して、詳細に説明する。先ず、本発明により凹レンズ特
性を有する磁界型の電子レンズを形成するための基本的
構成について、図1を参照して説明する。図1におい
て、荷電粒子ビームの進行方向(Z軸)に沿って、第一
および第二の磁気遮蔽板1,4と第一および第二の磁界
発生用コイル(もしくは、リング)2,3とが設けられ
ている。ここで、磁気遮蔽板1,4および磁界発生用コ
イル2,3はいずれも超伝導体からなっている。磁気遮
蔽板1,4は、それぞれ中央部に荷電粒子ビームを通過
させるための円筒状開孔1a,4aを持った超伝導体薄
板からなる断面が略コの字状に形成された円盤状(ドー
ナツ状)構造体であり、これら磁気遮蔽板1,4によっ
ていわゆる超伝導体の持つ完全反磁性を利用した磁気遮
蔽体を構成している。磁気遮蔽板1は、コイル2の上方
に発生する磁界が効果的に遮蔽されるようにするため
に、コイル2の上半分を包囲するようにして設けられて
おり、磁気遮蔽板4は、コイル3の下方に発生する磁界
が効果的に遮蔽されるようにするために、コイル3の下
半分を包囲するようにして設けられている。
【0013】磁界発生用コイル2,3は、それぞれ磁気
遮蔽板1,4によって包囲された空間内に設けられてお
り、両コイル2,3に電流を流すことによって、図中に
矢印で示すような向きの磁界を発生させる。いま仮に、
磁気遮蔽板1,4が設けられておらず、両コイル2,3
だけが独立して存在するとしたならば、ビーム通過開孔
1a,4aとの間のビーム通路内に形成される軸方向磁
界の強度Hz は、同図(b)に破線で示すように、従来の
磁界型電子レンズにおけると同様、それぞれベル(鐘)型
の磁界分布を示すが、上記した本発明の構成によれば、
磁気遮蔽板1,4が存在するために、コイル2,3の作
る磁界はそれぞれ磁気遮蔽板1よりも上方および磁気遮
蔽板4よりも下方には漏れ出ないので、同図(b)に実線
で示したように、コイル2の作る軸方向磁界強度Hz は
そのピーク位置から上方において急激にゼロとなってお
り、また、コイル4の作る軸方向磁界強度Hz はそのピ
ーク位置から下方において急激にゼロとなっている。つ
まり、本発明のレンズ構成によれば、いわゆる谷型の軸
方向磁界強度分布が得られる。
【0014】そして、このような谷型の軸方向磁界強度
分布は、ビーム軸(Z軸)に沿って入射してくる荷電粒
子ビーム(電子ビーム)に対して、図2に示したよう
に、凹レンズとしての作用を示すことになる。すなわ
ち、図2は、図1の(b)に実線で示したような軸方向磁
界強度分布における入射電子ビームの軌道を示したもの
であり、Z軸に平行に進入してきた電子ビーム21は、
レンズ通過後にはあたかも焦点F1 をビーム源として斜
め外方に向かった電子ビームがそのまま直進しているが
ごとくに進み、また、レンズ中心点0を通る電子ビーム
22は、レンズ通過後においてもそのまま入射方向と同
じ方向に進み、さらに、焦点F2 に向って進入してきた
電子ビーム23は、レンズ通過後にはZ軸に平行な方向
に進むことになる。これは、まさに凹レンズ特性を示し
ていることに他ならない。
【0015】なお、図2における軸方向磁界強度Hz
は、具体的には、次のような分布形状になっているもの
とする。すなわち、ここでの軸方向磁界強度Hz は、レ
ンズ上端部(Z=−a)において最小の磁界強度(Hz
=0)から最大の磁界強度(Hz=H0/2)まで急激に
立ち上り、レンズ下端部(Z=a)においては 最大磁
界強度(Hz=H0/2)から 最小磁界強度(Hz=0)
まで急激に立ち下がっている。また、レンズ上端部から
レンズ下端部までの間における軸方向磁界強度Hzは、
Hz =H0[Z2/(a2+Z2)]なる関係式で表わされる曲
線に沿って変化しており、いわゆる谷型の軸方向磁界強
度分布を形成している。
【0016】上記した本発明による凹レンズ特性を示す
磁界型電子レンズは、従来の磁界型電子レンズ(凸レン
ズ)と組み合わせて使用することができる。以下に本発
明による磁界型電子レンズを使用して電子顕微鏡の対物
レンズを構成した場合の実施例について説明する。図3
(a)は、本発明になる電子顕微鏡用対物レンズの縦断
面構造を示している。同図中、5は超伝導体からなる磁
界発生用の第三のコイルで、6は超伝導体からなる第三
の磁気遮蔽板である。なお、磁気遮蔽板6はコイル5の
上方を完全には包囲しておらず、したがって、コイル5
の上方に発生する軸方向磁界は完全には遮蔽されないた
め、コイル5による発生磁界は従来同様のいわゆる山型
分布をしている。
【0017】これら超伝導体からなる第三のコイル5と
第三の磁気遮蔽板6とが組合わされて、磁界型電子レン
ズの上半部分Cを構成している。しかし、この上半部分
Cだけでは、従来の磁界型電子レンズと同様に、凸レン
ズ特性しか示さないが、これにさらに、第二のコイル3
と第二の磁気遮蔽板4とからなる下半部分Bが組み合わ
されることにより、この下半部分Bではいわゆる谷型の
磁界分布を示し、凹レンズ特性を呈することとなる。す
なわち、本実施例による電子レンズは、基本的には、上
記した上半部分Cの作用により対物レンズ(凸レンズ)
としての特性を示すが、この上半部分C(凸レンズ部
分)において生じる球面収差および色収差を補正するた
めに、凹レンズ特性を示す下半部分Bが付加されている
のである。
【0018】このように、図1に示したような単独で凹
レンズ特性を示す磁界型電子レンズを構成するよりは、
むしろ図3(a)に示したように、上半部分C(凸レン
ズ部分)と下半部分B(凹レンズ部分)とを組み合わせ
ることによって複合化レンズ構成とした方が、全体とし
てのレンズ構造を簡単化できる。ここで、磁界発生用コ
イル3,5および磁気遮蔽板4,6は、いずれも、Pb
(鉛)やNb3Sn(ニオブ3スズ化合物)などの超伝導
体からなっており、これら超伝導体からなる部分はいず
れも液体He(ヘリウム) でもって冷却されているもの
とする。
【0019】図3(a)に示した複合化電子レンズの具
体的な構成例を図4に示す。図4に示されるように、磁
気遮蔽板4,6の周囲には液体ヘリウム槽7が設けられ
ており、さらにその外側には液体窒素槽9が設けられて
いる。液体ヘリウム槽7内には液体ヘリウムが充填され
ており、該槽7内に超伝導体からなる磁気遮蔽板4,6
と磁界発生用コイル3,5とが設けられている。磁気遮
蔽板4,6はそれぞれ支持体13,13を介して透磁性
材料からなる槽壁8に固定されており、また磁界発生用
コイル3,5はそれぞれ支持体12,11を介して槽壁
8に固定されている。この槽壁8の外周には同じく透磁
性材料からなる槽壁10が設けられており、両槽壁8,
10間に形成された液体窒素槽9内には液体窒素が充填
されている。また、槽壁8と槽壁10との間は、支柱1
4を介して相互に堅固に固定されている。
【0020】なお、図4中では構造上のさらに細部につ
いての図示を省略しているが、超伝導体からなる磁気遮
蔽板4,6やコイル3,5は機械的に充分に堅固に固定
されるようにして、外部振動が加えられた場合にも超伝
導状態が安定に維持されるように配慮されているものと
する。なお、超伝導体からなる磁界発生用コイル3,5
を附勢するための電源回路やこれらコイルを常伝導状態
から超伝導状態に移行させるための電気的結線やスイッ
チ回路等についての図示も省略されているが、これらは
当該技術分野において通常用いられている方法および手
段に従って容易に構成することができる。
【0021】上記実施例に示した複合化電子レンズによ
れば、図3(b)に示すように、エネルギーが揃った入
射電子ビームEb1(エネルギー:E0)に対して生じる
球面収差Δfの大部分を補正することができ、また、図
3(c)に示すように、エネルギーが揃っていない入射
電子ビームEb2(エネルギー: E0〜E0+ΔE)に対
して生じる色収差Δhの大部分をも補正できる。このた
め、この複合化電子レンズを電子顕微鏡の対物レンズと
して使用することにより、電子顕微鏡としての一層の高
分解能化を図ることができる。なお、本実施例における
ように凸レンズ部分に凹レンズ部分を組み合わせて複合
化したことにより、複合化レンズとしての焦点距離は本
来の対物レンズ(凸レンズ部分)の焦点距離よりも長くな
るが、これはそもそも対物レンズの焦点距離を短くした
いと云う願望がレンズ収差(球面収差や色収差)を小さ
くしたいと云う要請からきていることを考えれば、本発
明によりすでにレンズ収差が大幅に低減され得ている以
上、もはや全く問題にならないことである。また、上記
したような複合化レンズ構成とした状態においてもなお
焦点距離を短くする必要があるならば、この複合化レン
ズを強励磁化してやれば良い。本発明においては、磁界
発生用コイル3,5を超伝導体で構成しているので、こ
のような強励磁化は極めて容易である。
【0022】なお、上記実施例の複合化レンズ構成にお
いては、コイル5と磁気遮蔽板6とからなる上半部分
(凸レンズ部分)も超伝導体で構成し、この上半部分を
も液体He (ヘリウム)で極低温に冷却するようにして
いるが、この上半部分(凸レンズ部分)を構成している
コイル5および磁気遮蔽板6は、必ずしも超伝導体で構
成する必要はなく、通常の常伝導体で構成しても良いこ
とは云うまでもない。この上半部分(凸レンズ部分)を
常伝導体で構成した場合には、その分だけ高価な超伝導
体の使用量を節約でき、かつ冷却能力も小さくて済むの
で、レンズ全体をより安価に構成できる利点がある。ま
た、上記実施例による複合化レンズを対物レンズとして
用いた電子顕微鏡によって像観察を行なう場合、光軸上
の色収差は補正することができないため、この光軸上の
透過波だけは像形成に利用しないようにしたいわゆる暗
視野観察法を用いることによって、より高分解能の試料
像を得ることができる。また、本実施例におけるような
凸レンズと凹レンズとの複合化は、電子顕微鏡のコンデ
ンサーレンズに対して適用しても同様に有効である。こ
のコンデンサーレンズを本発明による複合化レンズ構成
とすることにより、電子ビーム源として電界放射陰極を
用いた時などにおいて、電子ビームの良好なコヒーレン
ト性を保ちながら試料への収束電子ビーム照射を行なう
のに有効である。
【0023】図5に、本発明による凸レンズと凹レンズ
とを組み合わせてなる磁界型電子レンズをコンデンサー
レンズおよび対物レンズとして使用した電子顕微鏡の構
成例を示す。なお、この図は、電子ビーム源20から蛍
光板70に至るまでの電子ビームEbの結像状態を幾何
光学的に示したものである。図中、30がコンデンサー
レンズ、40が対物レンズであり、これら両レンズ部分
に、本発明になる凸レンズと凹レンズとを組み合わせて
なる磁界型電子レンズが用いられる。なお、図5中、5
0は中間レンズを、60は投射レンズをそれぞれ示して
いる。
【0024】本発明による磁界型電子レンズは、電子ビ
ームの加速エネルギーが 数keV〜数十keV 程度の中
高電圧の電子顕微鏡から加速エネルギーが 1〜3MeV
程度におよぶ超高電圧の電子顕微鏡に至るまでの広い範
囲にわたって利用可能であるが、液体ヘリウムによる冷
却構造を必要とするため、加速エネルギーが 数keV程
度以下の小型(低電圧)の電子顕微鏡においてはある程
度装置が大型化すると云う難点があることは否めない。
しかしながら、加速エネルギーが 数十keV以上の大型
(高電圧)の電子顕微鏡においては、殆ど装置の大型化
を招くことがないので、十分に有効に利用できる。な
お、加速エネルギーが 数keV程度以下の小型(低電
圧)電子顕微鏡に本発明の磁界型電子レンズを利用しよ
うとする場合には、加速エネルギーが低い分だけ使用す
る超伝導体の臨界磁場が小さくて済むので、液体窒素に
よる冷却のみでも超伝導状態に移行させることのできる
例えばペロブスカイト型超伝導体などの高温超伝導体
(BaYCuO系など)を用いることにより冷却構造をよ
り簡単かつ小型に構成してやることができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、従来不可能であった磁界型電子レンズの凹レンズ化
が可能となったため、磁界型電子レンズの収差の補正が
可能となり、それにより電子顕微鏡のより一層の高分解
能化が可能になった。ただし、回折収差についてはこれ
を補正することは不可能であるため、回折収差によるボ
ケの量d≒0.61λ/sinθ(θは試料への電子線の照射
角、λは電子線の波長)を小さくして分解能を向上させ
るには、電子線の照射角θを大きく選ぶことが必要とな
る。従来は、磁界型電子レンズの球面収差を減らすこと
と回折収差を減らすこととは電子線照射角θに関して二
律背反であったため両者の影響が最小になるように電子
線照射角θが選択されてきたが、本発明によれば、電子
線照射角θを10~1ラジアン程度の充分大きな値に設定
することができ、それにより回折収差によるボケの量を
無視し得る程度に小さくすることが可能となった。そし
て、この回折収差の低減は、上述した球面収差および色
収差の低減と合わせて、画期的な分解能向上をもたらす
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる磁界型電子レンズの原理的構成を
示す図である。
【図2】本発明になる磁界型電子レンズの磁界分布と電
子ビームの軌道とを対応させて示す説明図である。
【図3】本発明になる磁界型複合レンズの概略構成を示
す図である。
【図4】本発明になる磁界型複合レンズの具体的構造の
一例を示す図である。
【図5】本発明になる磁界型電子レンズを組み込んでな
る電子顕微鏡の幾何光学的結像状態を示す図である。
【符号の説明】
1…磁気遮蔽板, 2…磁界発生用
コイル,1a…ビーム通過開孔, 3…
磁界発生用コイル,4…磁気遮蔽板,
4a…ビーム通過開孔,5…磁界発生用コイル,
6…磁気遮蔽板,7…液体ヘリウム槽,
8…液体ヘリウム槽の槽壁,9…液体窒素
槽, 10…液体窒素槽の槽壁,11
…コイル支持体, 12…コイル支持
体,13…遮蔽板支持体, 14…固定
用支柱,20…電子ビーム源, 30…
コンデンサーレンズ,40…対物レンズ,
50…中間レンズ,60…投射レンズ,
70…蛍光板。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】荷電粒子ビームの進行方向に沿って上下に
    配置された超伝導体からなる第一および第二の磁界発生
    用コイルと、上記第一の磁界発生用コイルの上側および
    上記第二の磁界発生用コイルの下側をそれぞれ取り囲む
    ようにして設けられた超伝導体からなる第一および第二
    の磁気遮蔽板とを有してなり、上記第一の磁気遮蔽板に
    よって上記第一の磁界発生用コイルの上方に発生する磁
    界が遮蔽され、上記第二の磁気遮蔽板によって上記第二
    の磁界発生用コイルの下方に発生する磁界が遮蔽される
    ように構成されてなることを特徴とする磁界型電子レン
    ズ。
  2. 【請求項2】荷電粒子ビームの進行方向に沿って上下に
    配置された超伝導体からなる第一および第二の磁界発生
    用コイルと、上記第一の磁界発生用コイルの上側および
    上記第二の磁界発生用コイルの下側をそれぞれ取り囲む
    ようにして設けられた超伝導体からなる第一および第二
    の磁気遮蔽板とを有してなり、上記第二の磁気遮蔽板に
    よって上記第二の磁界発生用コイルの下方に発生する磁
    界が遮蔽されるように構成されてなることを特徴とする
    磁界型電子レンズ。
  3. 【請求項3】上記の超伝導体からなる第一および第二の
    磁界発生用コイルと上記の超伝導体からなる第一および
    第二の磁気遮蔽板とを極低温に冷却するための液体ヘリ
    ウムを冷媒とした冷却機構が付設されてなることを特徴
    とする請求項1または2に記載の磁界型電子レンズ。
  4. 【請求項4】上記の超伝導体からなる第一および第二の
    磁界発生用コイルと上記の超伝導体からなる第一および
    第二の磁気遮蔽板とを極低温に冷却するための液体窒素
    を冷媒とした冷却機構が付設されてなることを特徴とす
    る請求項1または2に記載の磁界型電子レンズ。
  5. 【請求項5】請求項2記載の磁界型電子レンズを対物レ
    ンズとして搭載してなることを特徴とする電子顕微鏡。
  6. 【請求項6】荷電粒子ビームの進行方向に沿って上下に
    配置された常伝導体からなる第一の磁界発生用コイルお
    よび超伝導体からなる第二の磁界発生用コイルと、上記
    第一の磁界発生用コイルの上側を取り囲むようにして設
    けられた常伝導体からなる第一の磁気遮蔽板と上記第二
    の磁界発生用コイルの下側を取り囲むようにして設けら
    れた超伝導体からなる第二の磁気遮蔽板とを有してな
    り、上記第二の磁気遮蔽板によって上記第二の磁界発生
    用コイルの下方に発生する磁界が遮蔽されるように構成
    されてなることを特徴とする磁界型電子レンズ。
  7. 【請求項7】上記の超伝導体からなる第二の磁界発生用
    コイルと上記の超伝導体からなる第二の磁気遮蔽板とを
    極低温に冷却するための液体ヘリウムを冷媒とした冷却
    機構が付設されてなることを特徴とする請求項6記載の
    磁界型電子レンズ。
  8. 【請求項8】上記の超伝導体からなる第二の磁界発生用
    コイルと上記の超伝導体からなる第二の磁気遮蔽板とを
    極低温に冷却するための液体窒素を冷媒とした冷却機構
    が付設されてなることを特徴とする請求項6記載の磁界
    型電子レンズ。
  9. 【請求項9】請求項6記載の磁界型電子レンズを対物レ
    ンズとして搭載してなることを特徴とする電子顕微鏡。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012090464A1 (ja) * 2010-12-28 2012-07-05 株式会社日立ハイテクノロジーズ 回折収差補正器を適用した荷電粒子ビーム顕微鏡
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