JPH0519491B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） この発明は泡ガラス製の断熱タイル、即ちガラ
スの発泡体を基材とする断熱タイルの製造方法に
関し、詳しくは表面に強度の強い層を形成する手
段に関する。 （従来の技術） 従来より、種々の方法で建物を断熱化すること
が行なわれている。建物を断熱化する方式を大別
すると内断熱方式と外断熱方式とがあり、このう
ち内断熱方式は建物の内側に断熱材を張る方式で
あり、また外断熱方式は建物の外側に断熱材を張
る方式であつて、コンクリート製の建物の断熱方
式としてよく用いられている。コンクリート製建
物の場合には、建物の外側に断熱材を張るとコン
クリート壁自体が蓄熱層として働くようになつて
室内の温度がより安定化する外、コンクリート壁
自体の温度変化が少なくなつて建物の寿命も向上
する利点が生ずる。 ところで一般に断熱材として用いられているも
のは、プラスチツク発泡体とかグラスウールとか
ロツクウールとかであり、これらを建物の外側に
張ると、更にその外側に化粧を施すことが必要と
なる。しかしながらこれら断熱材は強度の弱いも
のであつて外側に化粧を施す場合にタイル等の重
量物を用いることができず、やむなく高級感の出
難い軽量の化粧材を用いざるを得なかつた。 そこでタイル自体に断熱性をもたせた泡ガラス
製断熱タイルが開発され、これを外装材として用
いる試みが行なわれている。この泡ガラス製の断
熱タイルは軽量且つ断熱性に優れる外、ALC材
と異なつて吸水性、透水性を有しない等の利点を
有している。反面この泡ガラス製断熱タイルは強
度が弱い欠点があり、そこで強度を高めるため
に、また併せてタイル表面に化粧を施すために、
第２図に示すようにタイル表面に釉薬を施して美
麗な且つ強度の強い釉層１００を形成することが
行なわれている。 （発明が解決しようとする問題点） ところでこの施釉の泡ガラス製断熱タイル１０
２においては、その製造時の加熱・発泡の際、泡
ガラス素地１０４の膨張に基づいて釉層１００が
引き伸ばされる。このとき釉層１００の層厚が薄
いとその引伸ばしによつて釉層１００が引き千切
られたり、層厚に薄い部分ができたりしてむらが
生ずる。従つてかかる施釉の断熱タイルにおいて
は、釉層１００を厚く形成することが必要とな
る。ところがこのように釉層１００を厚く形成す
ると製造上、性能上次のような種々の問題が生ず
る。 即ち、タイル表面に釉薬を施す方法としてはス
プレー掛け、幕掛け等の方法があるが、このよう
な方法にて釉薬を厚く塗布しようとするとスプレ
ー掛け、幕掛けを何回も繰り返さなければなら
ず、作業が煩雑且つ面倒となる。他方、釉薬の成
分若しくは同等の成分の素地原料を泡ガラス素地
原料の上に重ねた状態の成形体を加熱してその加
熱時に泡ガラス素地の発泡と粉末状釉薬の溶融・
焼成を行なう方法があり、この場合には釉層１０
０を比較的簡単に厚く形成できるが、反面、成形
装置が複雑化してしまうこと及びタイル端部で釉
層と素地とが剥がれてしまうこと、複雑なタイル
の形状には対応できないことなどの問題が生ず
る。 第二に、釉層１００を厚くすると、加熱・焼成
時に若干収縮する傾向にある釉層１００と、逆に
発泡膨張する泡ガラス素地１０４との間に極めて
大きな応力が発生したり、タイルが反り返る等の
変形を起したりする外、表面の釉層１００に引張
り応力が残留して釉層１００の強度低下を招いた
りする。 第三に、泡ガラス製断熱タイルを建築物の外装
材として使用するのはもともとその断熱性の良
さ、軽量さに基づくものであるが、釉層１００は
熱伝導性が良いために釉層１００を厚くするとタ
イル全体の断熱性能が低下し、また重量も重くな
るなど本来の特徴が減殺されてしまう。 第四に、釉層１００と泡ガラス素地１０４とは
熱容量、熱伝導率が大きく異なるために、温度変
化によつてこれら両層１００，１０４の層界面に
応力が発生し、特に急激な温度変化が生じた場合
の熱衝撃に対して極めて弱い欠点がある。 第五に、泡ガラス素地１０４の表面に釉薬を厚
く施すと、かかる釉薬は焼成時に溶融して表面が
平滑化することから、複雑な表面形状のタイルに
対して十分に対応できない不具合がある。 （問題点を解決するための手段） 本発明はこのような問題点を解決するためにな
されたものであり、その要旨は、天然ガラス質鉱
物を主材とし且つ所定量の発泡剤を含有する粉末
状の泡ガラス素地原料の成形体を加熱により発泡
化させて泡ガラス製の断熱タイルを製造するに際
し、前記成形体の表面に泡ガラス素地原料を易溶
化する溶化剤を施し、該成形体の加熱時に該泡ガ
ラス素地表面の溶融粘性を低下させた状態におい
て前記発泡剤を発泡させることにある。 （作 用） 本発明に従つて表面に溶化剤の施された泡ガラ
ス原料成形体を加熱すると、同原料の主材たる天
然ガラス質鉱物が軟化・溶融化して適度の粘性と
なつた状態において発泡剤のガス化反応、即ち発
泡が行なわれる。一方その表層部においては、溶
化剤が泡ガラス素地の表面に溶け出して泡ガラス
素地原料の表層部の軟化温度を低下させ、その溶
融粘性を低下させる。従つて表層部で発生したガ
ス、或いは内部で発生して表層部に達したガスは
容易に外へ逃げ、従つて表層部に閉じ込められる
気泡の量が少なくなる。この結果表層部は気孔率
の少ない層、換言すれば硬質の層となつて発泡断
熱タイルを補強する。即ち本発明のタイルにおい
ては、泡ガラス素地自体が表面の硬質補強層を構
成するのである。 而して泡ガラス素地自体が強度の強い表面層を
構成することから、かかる断熱タイルにおいては
素地自体の色が表面に表われ、これが化粧色とな
る。このためかかる発泡断熱タイルを外装材とし
て用いた場合、表面が欠け等損傷や破壊を受けて
その内部が露出した場合にも、それ程目立たない
利点が生ずる。尚、このような溶化剤を施さない
で泡ガラス原料成形体をそのまま加熱・焼成した
場合、その表面で素地原料中に含まれる鉄分が酸
化反応を起して赤く発色し、表面部の色が内部の
色と異なつた色となる。これに対し、かかる溶化
剤を施した場合には、加熱時に表層部が溶融して
被膜を形成し、この被膜によつて鉄分の酸化反応
が抑制されるため、こうした表面部のみの赤発色
反応を起さない。 本発明において溶化剤とは、泡ガラス素地原料
の軟化ないし溶融点を下げて溶融粘性を低下させ
るものであり、その溶融時に素地と一体となつて
表層部を形成するものである。このような溶化剤
としてはナトリウム、カリウム、リチウム、カル
シウム、マグネシウム等の塩、軟化温度300〜
1000℃のフリツト等があり、これらを単独で或い
は２種以上組合せて使用することが可能である。
またこれを泡ガラスの原料成形体表面に施す方法
としては、これらを単独で塗布するか、或いは泡
ガラス素地原料と同組成の材料中に予め一定量混
合しておいて、これを成形体表面に施すなどの方
法が可能である。尚これら溶化剤は、成形体表面
において泡ガラス原料とともに溶融・混合したと
き、その熱膨張係数を著しく高めないものが望ま
しく、また成形体表面に施す量としては表面１cm²
当り（発泡膨張前）５〜75mgが望ましく、より適
当なのは10〜40mgである。 本発明によれば泡ガラス素地表面に厚い釉層を
形成する必要はなく、単に素地中に溶け込む溶化
剤を施すだけで良いから、硬質表面層の形成のた
めの作業は簡単であり、また複雑な装置も必要と
しない。 また泡ガラス素地自体が硬質の表面層を形成す
ることから、前述の施釉タイルのように素地の発
泡・膨張時において層界面の大きな応力が発生し
たり、タイル自体が変形を起したがりせず、また
表層部に引張り応力を生ぜしめて表層部の強度低
下を招くこともない。 更に、表層部は素地の一部であつて気泡量が素
地本体に比べて少ないだけであるから、泡ガラス
タイルの持つ断熱性能・軽量性は損なわれず、ま
た熱的性質・挙動が表面層、素地本体共にほぼ同
等であることから、温度変化に基づいて両層界面
に大きな応力は発生しないし、熱衝撃に対しても
強い抵抗性を有する。 加えて、素地そのものが硬質表層部を形成する
ために、複雑な表面形状のタイルにも十分対応で
きる。 （実施例） 次に本発明をより明確にすべく、以下その実施
例を説明する。但し本発明はかかる実施例にのみ
限定されるものではない。 実施例 １ 抗火石、流紋岩、真珠岩、黒曜石、シラス、伊
勢珪砂等の天然ガラス質鉱物の一種若しくは二種
以上をクラツシヤー及びミルを用いて粉砕した粉
末状主材原料に発泡剤として炭化珪素を0.18重量
％添加し、更に顔料を加えて成る坏土を大きさ
120mm×120mm×40mm（厚み）の矩形体に圧縮成形
し、その表面に第１表に示す組成の溶化剤（10時
間細摩したもの）を１cm²当り20〜30mgスプレー塗
布した。そしてこれを焼成し、第１図に示す如く
泡ガラス素地１０及び表層部１２から成る大きさ
180mm×180mm×60mm（厚み）の泡ガラス製断熱タ
イル１４を得た。この断熱タイル１４の耐熱衝撃
性、表面硬度を調べたところ、耐熱衝撃性につい
ては泡ガラス単体のものと同じであつたが、表層
部１２の硬度は泡ガラス単体のものに比べて硬く
また強度も強くなつていた。

【表】 実施例 ２ 実施例１と同様の方法で得た成形体表面に、第
２表に示すようにホウ酸系フリツト、蛙目粘土、
更に硫酸カルシウムとしての石膏を泡ガラス素地
原料に混合して成る組成の溶化剤20〜40mg／cm²を
スプレー塗布し、これを焼成して第１実施例と同
じ大きさの発泡断熱タイル１４を得た。その耐熱
衝撃性は泡ガラス単体のものと同じであり、また
表層部１２の強度は第１の実施例のものよりも更
に強く、しかも表面平滑度が良好であつた。

【表】

【表】 以上本発明の実施例を詳述したが、本発明は上
記実施例よりも厚みの薄いタイルに対して適用す
ることも勿論可能であるし、発泡剤の種類も上記
のものに限定されない等、当業者の知識に基づき
様々な変更を加えた態様で実施することが可能で
ある。 （発明の効果） このように、本発明は泡ガラス素地原料の成形
体表面に溶化剤を施し、該溶化剤の働きで同表面
における素地原料の溶融粘性を低下させた状態に
おいて発泡剤を発泡させるようにしたものであ
る。 かかる本発明によれば、 表面に補強層を備えた泡ガラス製断熱タイル
が簡単に製造できる。 加熱によつて層界面に応力を発生させたり、
タイルの変形を惹起したり、或いは表層部に引
張り応力を生ぜしめて表層部の強度を低下させ
たりしない。 温度変化によつて大きな応力を発生させず、
また熱衝撃に対する抵抗性も強くなる。 表面の補強層形成によつて泡ガラスタイルの
持つ断熱性能、軽量性が損なわれることになら
ない。 断熱タイルの表面が損傷して内部が露出して
もそれ程目立たない。 表面形状が複雑なタイルにも容易に対応でき
る。 等の優れた効果が生ずる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例によつて製造した泡
ガラス製断熱タイルの一部切欠斜視図であり、第
２図は表面に釉層を形成した泡ガラス製断熱タイ
ルの一部切欠斜視図である。 １０：泡ガラス素地、１２：表層部、１４：泡
ガラス製断熱タイル。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 天然ガラス質鉱物を主材とし且つ所定量の発
   泡剤を含有する粉末状の泡ガラス素地原料の成形
   体を加熱により発泡化させて泡ガラス製の断熱タ
   イルを製造するに際し、 前記成形体の表面に泡ガラス素地原料を易溶化
   する溶化剤を施し、該成形体の加熱時に該泡ガラ
   ス素地表面の溶融粘性を低下させた状態において
   前記発泡剤を発泡させることを特徴とする泡ガラ
   ス製断熱タイルの製造方法。