JPH0517513Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、回転体の外周面との間に微小なクリ
アランスを介在させた状態で軸封機能を営むフロ
ート型セグメントシールに関する。

〔従来の技術〕

回転体（回転軸または回転軸に外装したスリー
ブなど）の外周面に非回転の環状体を配置し、該
環状体を回転体外周面から僅かにフロートさせた
状態で軸封を行なう軸封装置の一種として、フロ
ート型セグメントシールがある。

第５図および第６図はこのフロート型セグメン
トシールの一例を概略的に示すもので、ハウジン
グ１０１の内周に形成された環状の収容部１０２
内に、円周方向に複数に分割されその分割部１０
４が密閉状に互いに合接するとともに外周のエキ
ステンシヨンスプリング１０５で円周方向に結束
された環状体１０３が収容されている。この環状
体１０３は、一端がハウジング１０１内周の端盤
１０７に支持されたコンプレツシヨンスプリング
１０６によつて低圧空間Ｂ側へ押圧されて、一端
面１０３ｂがハウジング１０１の端面１０１ａと
密接し、また、内周面１０３ａが微小なクリアラ
ンスＣを介して回転体１０８の外周面と対向して
いる。１１０は、前記環状体１０３の一端面１０
３ｂに形成した穴１１１と係合して該環状体１０
３の回り止めをなすピンで、前記ハウジング１０
１の端面１０１ａに植え込まれている。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記セグメントシールは、環状体１０３が、回
転している回転体１０８の外周面から流体の動圧
により僅かにフロートした状態で軸封を行なうも
ので、環状体１０３の内周面１０３ａと回転体１
０８外周面との間のクリアランスＣは、シール性
能を高める観点からは極力小さくすることが望ま
しい。

ところが、クリアランスＣを小さくすると、振
動等によつて環状体１０３の内周面１０３ａが回
転体１０８と接触するので、大きな摺動発熱が起
こる。そして通常、環状体１０３はカーボン材等
からなつていて、金属製である回転体１０８より
も熱膨張係数が小さいため、前記摺動発熱により
温度が上昇すると前記クリアランスＣが減少し、
さらに発熱量が増大するので、最終的には環状体
１０３が完全に回転体１０８と接触状態になつて
しまう。そしてこのとき、環状体１０３の内外周
から径方向に作用する流体圧力のバランスがなさ
れなくなるため、環状体１０３と回転体１０８の
摺動負荷が過大となつて異常摩耗の原因となる。

また、前記流体圧力による摺動負荷を軽減する
には、第７図に示すように、環状体１０３の内周
面１０３ａに、密封対象である高圧空間Ａ側へ通
じる導圧溝１１２を形成して、径方向への圧力バ
ランスを図ることが知られているが、この場合実
際にシールを行なうのは、前記内周面１０３ａの
うち、導圧溝１１２が形成されていない、幅の狭
いシールダム部１１３のみとなるので、回転体１
０８との間にクリアランスＣを介在させるフロー
ト型のセグメントシールでは、シール性能に問題
を生じることとなる。

さらに、第８図に示すような、非分割の環状体
１１４を、回転体１０８の外周面から僅かにフロ
ートした状態として軸封を行なうフローテイング
リングシールの場合は、上記のような熱膨張係数
の差によつてクリアランスＣが消滅すると、環状
体１１４の内周面１１４ａと回転体１０８外周面
との摺動負荷が極端に大きくなつて、シール破損
や、最悪の事態ではこのシールを装着した機器の
破壊にもつながるため、クリアランスＣをそれほ
ど小さく設定することができず、シール性能が低
かつた。

本考案は、以上のような問題に鑑みてなされた
もので、その目的とするところは、温度上昇によ
つて環状体と回転体が接触した際に、流体圧力に
よる負荷の増大を防止するとともに、シール性の
向上を図ることにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案の第１請求項によるフロート型セグメン
トシールは、ハウジングの内周に形成された環状
の収容部内に、円周方向に複数に分割されその分
割部が互いに密接衝合状態となるようにエキステ
ンシヨンスプリングで円周方向に結束された非回
転の環状体が収容され、該環状体の一端面はハウ
ジングの端面と密接し、該環状体の内周面は微小
なクリアランスを介して回転体の外周面と対向す
るフロート型セグメントシールにおいて、前記環
状体の内周面に、円周方向へ延びるとともに、前
記分割部の衝合面へ開放された所要数の溝を形成
したことを特徴とするものである。

また、本考案の第２請求項によるフロート型セ
グメントシールは、上記第１請求項によるフロー
ト型セグメントシールにおいて、前記分割部が、
前記溝よりも低圧空間側となる位置で円周方向へ
屈曲したステツプ構造になることを特徴とするも
のである。

本考案の第３請求項によるフロート型セグメン
トシールは、上記第１請求項によるフロート型セ
グメントシールにおいて、前記環状体が、分割部
の位相が互いに異なり対向端面同士で密接した高
圧空間側のバツクリングと低圧空間側のシールリ
ングを有し、前記溝を前記バツクリングおよびシ
ールリングの双方の内周面に形成したことを特徴
とするものである。

〔作用〕

第１請求項によると、通常は、環状体は回転体
外周面から僅かにフロートした状態となつてお
り、環状体の分割部はエキステンシヨンスプリン
グの張力によつて互いに密接している。このと
き、環状体の内周面に形成された溝によつて、回
転体外周面との間に介在するクリアランスには、
径方向に対して狭い部分と広い部分が、軸方向に
交互に存在することとなるので、一種のラビリン
スシールのように機能し、良好なシール性を発揮
する。そして、温度上昇による熱膨張によつて、
環状体内周面と回転体外周面が接触状態となつた
場合は、環状体の内径よりも回転体の外径が大と
なつた時点で、前記分割部に隙間が生じ、この隙
間から前記溝内へ密封対象である高圧側の流体が
入り込むことによつて、溝幅に応じて径方向の流
体圧力のバランスがなされ、回転体との摺動負荷
が軽減される。

また、第２請求項によると、前記分割部に生じ
る隙間は、ステツプ構造によつて軸方向に不連続
となり、高圧空間の圧力が環状体内周面の溝内へ
効率よく導入される。

また、第３請求項によると、温度上昇によつて
環状体の内径よりも回転体の外径が大となつた時
点で、前記環状体を構成するバツクリングとシー
ルリングの双方の分割部に隙間が生じるが、該双
方の分割部の位相が異なつているので、前記隙間
は軸方向に対して互いに不連続である。したがつ
て、前記第２請求項によるものと同様に、バツク
リングにおける径方向の圧力バランスが効率よく
なされる。そして、バツクリングとシールリング
の双方の内周面に溝を形成した場合は、前記ラビ
リンスシール機能をより高めることができる。

〔実施例〕

以下、本考案のフロート型セグメントシール
を、図示の実施例を参照しながら説明する。

第１図ないし第３図に示す実施例において、１
はハウジングで、その内周に形成された環状の収
容部２内には環状体３が収容されている。この環
状体３は、カーボン材からなるバツクリング４、
シールリング５およびカバーリング６を組み合わ
せたものであつて前記収容部２をなすハウジング
１の内側端面１ａに突設した図示しないピンに嵌
め込まれたキー７によつて回り止めがなされてい
る。

密封対象である高圧空間Ａ側のバツクリング４
と、低圧空間Ｂ側のシールリング５はその対向端
面同士で密接しており、これらバツクリング４お
よびシールリング５は互いに異なる位相で円周方
向に複数に分割されている。そして、バツクリン
グ４はその外周面に巻装したエキステンシヨンス
プリング８で円周方向に結束され、シールリング
５は、該シールリング５と異なる位相で分割され
該シールリング５の外周面に密接させたカバーリ
ング６を介して、もう１つのエキステンシヨンス
プリング９で該カバーリング６とともに円周方向
に結束されている。

この環状体３は、ハウジング１内周に固定され
た端盤１１とバツクリング４の間に弾装したコン
プレツシヨンスプリング１０によつて低圧空間Ｂ
側へ押圧され、シールリング５の一端面５ｂがハ
ウジング１の前記内側端面１ａと密接している。
環状体３の内径、すなわちバツクリング４および
シールリング５の内径は、その内周に挿通された
回転軸または回転軸に外装したスリーブなどの金
属製の回転体１６の外径よりも僅かに大きく形成
されている。

バツクリング４の内周面４ａには円周方向に延
びる溝１２が形成され、また、シールリング５の
内周面にも同様の溝１３が形成されている。そし
て、これらの溝１２，１３はそれぞれ、エキステ
ンシヨンスプリング８，９の張力に互いに密接衝
合するバツクリング４の分割部１４の衝合面、及
びシールリング５の分割部１５の衝合面に開放さ
れている。

以上の構成において、環状体３の内径は回転体
１６の外径よりも僅かに大きいため、通常、この
環状体３は回転時における回転体１６外周の流体
の動圧によつて、回転体１６の外周面１６ａから
僅かにフロートしており、すなわち環状体３は回
転体１６と非接触状態で軸封機能を営む。このと
き、バツクリング４およびシールリング５の分割
部１４，１５はエキステンシヨンスプリング８，
９の張力によつてそれぞれ密接状態になつてお
り、したがつて環状体３内周の溝１２，１３はそ
れぞれ分割部１４，１５において円周方向に連続
している。

この状態では、環状体３の内周面すなわちバツ
クリング４およびシールリング５の内周面４ａ，
５ａと、回転体１６の外周面１６ａとの間には微
小なクリアランスＣが介在しているが、前記内周
面４ａ，５ａに溝１２，１３が形成されているこ
とによつて、このクリアランスＣには径方向に対
して狭い部分C₁と、径方向に対して広い部分C₂
が、軸方向に交互に存在し、C₁は所謂ラビリン
スシールにおける絞り部、C₂は同じく膨張部と
して機能するので、クリアランスＣ内における高
圧空間Ａ側から低圧空間Ｂ側への流体の運動エネ
ルギを減衰させ、漏れを効果的に防止する。

次に、回転体１６の振動に伴なう環状体３内周
面との接触等によつて発熱し、温度が上昇した場
合は、環状体３と回転体１６の熱膨張差によつて
やがて環状体３内周面が回転体１６の外周面１６
ａと全周で接触するが、回転体１６の外径が環状
体３の内径よりも大きくなると、バツクリング４
およびシールリング５は回転体１６によつて拡径
させられるため、第３図に示すようにそれぞれの
分割部１４，１５には面開きが起こつて隙間１４
Ｇ，１５Ｇが形成される。ここで、バツクリング
４とシールリング５は、その分割部１４，１５の
位相が異なつている（カバーリング６の分割部と
の位相も異なつている）ので、両隙間１４Ｇ，１
５Ｇは互いに不連続であり、隙間１４Ｇへ侵入し
た高圧空間Ａからの流体が、そのまま低圧空間Ｂ
へ漏れ出ることはない。そして、前記隙間１４Ｇ
を通じてバツクリング４内周の溝１２内へ高圧空
間Ａの流体圧力が導入されるので、バツクリング
４に径方向に作用する前記流体圧力は一部バラン
スすることとなり、バツクリング４の内周面４ａ
と回転体１６の外周面１６ａとの面圧が緩和され
る。したがつて摺動発熱量が軽減されるととも
に、この面圧の緩和および前記隙間１４Ｇ，１５
Ｇの発生による漏れ量の増加が放熱作用を促し、
温度上昇による異常摩耗が防止される。

また、シールリング５の内周面５ａに形成され
た溝１５には、高圧空間Ａの流体圧力は導入され
ないが、上記一連の作用により、全体として温度
上昇が抑えられるので、シールリング５の内周面
５ａの摩耗も抑制される。すなわちこのことは、
シール性を向上する目的で前記クリアランスＣを
小さく設定した場合の従来の困難性が解消される
ことを意味する。

なお、上記実施例ではバツクリング４およびシ
ールリング５の双方の内周面にそれぞれ溝１２，
１３を設けたが、バツクリング４にのみ溝１２を
形成した場合でも十分な効果を期待できる。ま
た、環状体３がシールリング５とその外周面に密
接させたカバーリング６からなる２−リング構造
のものや、あるいは環状体３がシールリング５の
みで構成された１−リング構造のものについて
も、シールリング５の内周面５ａに分割部１５へ
通じる溝１３を形成することによつて、上記と同
様の効果が得られる。そしてこの場合は、第４図
に示すように、分割部１５を溝１３よりも低圧空
間Ｂ側となる位置で円周方向へ屈曲したステツプ
部１５′を有する構造とすれば、分割部１５に隙
間１５Ｇが形成されたときの漏れ量の大幅な増大
を防止するとともに、溝１３内への高圧空間Ａの
圧力導入を効率よく行なうことができる。

〔考案の効果〕

以上、本考案によると、環状体が回転体の外周
面からフロートした状態で軸封をなす通常時にお
いては、環状体内周面に設けた溝がラビリンスシ
ール作用を果たすので、良好なシール性を発揮す
る。また、温度上昇により環状体が回転体と接触
状態となつた場合は、環状体の分割部に生じた隙
間から前記溝内へ高圧空間側の圧力が導入されて
圧力バランスがなされるので、負荷を軽減して異
常発熱やこれに伴なう異常摩耗を防止することが
でき、このため、環状体と回転体の間のクリアラ
ンスを極力小さく設定してシール性の向上が図れ
る。

また、前記温度上昇時に分割部に形成される隙
間が軸方向に不連続となる構造とすることによつ
て、前記隙間から環状体内周面の溝への圧力導入
を効率よく行ない、負荷の軽減効果をより高める
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案フロート型セグメントシールの
一実施例を示す部分断面図、第２図は同じく環状
体のフロート状態の説明図、第３図は同じく環状
体の部分斜視図、第４図は他の実施例を示す環状
体内周面の部分展開図、第５図は従来のフロート
型セグメントシールを示す部分断面図、第６図は
同じく環状体のフロート状態の説明図、第７図は
他の従来例を示す部分断面図、第８図は環状体が
非分割のフローテイングリングシールを示す説明
図である。 １……ハウジング、２……収容部、３……環状
体、４……バツクリング、４ａ，５ａ……内周
面、５……シールリング、６……カバーリング、
８，９……エキステンシヨンスプリング、１０…
…コンプレツシヨンスプリング、１２，１３……
溝、１４，１５……分割部、１５′……ステツプ
部、１６……回転体、１６ａ……外周面、Ａ……
高圧空間、Ｂ……低圧空間、Ｃ……クリアラン
ス。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ ハウジングの内周に形成された環状の収容部
   内に、円周方向に複数に分割されその分割部が
   互いに密接衝合状態となるようにエキステンシ
   ヨンスプリングで円周方向に結束された非回転
   の環状体が収容され、該環状体の一端面はハウ
   ジングの端面と密接し、該環状体の内周面は微
   小なクリアランスを介して回転体の外周面と対
   向するフロート型セグメントシールにおいて、
   前記環状体の内周面に、円周方向へ延びるとと
   もに、前記分割部の衝合面へ開放された所要数
   の溝を形成したことを特徴とするフロート型セ
   グメントシール。 ２ 前記分割部が、前記溝よりも低圧空間側とな
   る位置で円周方向へ屈曲したステツプ構造にな
   ることを特徴とする請求項１に記載のフロート
   型セグメントシール。 ３ 前記環状体が、分割部の位相が互いに異なり
   対向端面同士で密接した高圧空間側のバツクリ
   ングと低圧空間側のシールリングを有し、前記
   溝を前記バツクリングおよびシールリングの双
   方の内周面に形成したことを特徴とする請求項
   １に記載のフロート型セグメントシール。