JPH05171374A - 粉末高速度工具鋼 - Google Patents
粉末高速度工具鋼Info
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- JPH05171374A JPH05171374A JP34068991A JP34068991A JPH05171374A JP H05171374 A JPH05171374 A JP H05171374A JP 34068991 A JP34068991 A JP 34068991A JP 34068991 A JP34068991 A JP 34068991A JP H05171374 A JPH05171374 A JP H05171374A
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- ceq
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 工具の使用条件の高速化に対応可能な高い高
温焼もどし軟化抵抗を有する粉末高速度工具鋼を提供す
る。 【構成】 重量比でC 1.5%を越え2.7%以下、Si≦1.0
%、Mn≦0.6%、Cr 3.0〜6.0%、WまたはさらにMoをW
+2Moで 14〜30%、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb2.5〜
7.0%、但しNb/V≧0.5、好ましくはCo≦15.0%含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、C−Ce
qが−0.30〜0.05(ただしCeq=0.24+0.033・W+0.063・M
o+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たす粉末高速度工具鋼で
ある。
温焼もどし軟化抵抗を有する粉末高速度工具鋼を提供す
る。 【構成】 重量比でC 1.5%を越え2.7%以下、Si≦1.0
%、Mn≦0.6%、Cr 3.0〜6.0%、WまたはさらにMoをW
+2Moで 14〜30%、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb2.5〜
7.0%、但しNb/V≧0.5、好ましくはCo≦15.0%含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、C−Ce
qが−0.30〜0.05(ただしCeq=0.24+0.033・W+0.063・M
o+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たす粉末高速度工具鋼で
ある。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具や圧造工具に
用いられ、特に高温における硬さと耐摩耗性が要求され
る高速使用条件下において、顕著に優れた耐摩耗性と同
時に高い靭性を有する粉末高速度工具鋼に関するもので
ある。
用いられ、特に高温における硬さと耐摩耗性が要求され
る高速使用条件下において、顕著に優れた耐摩耗性と同
時に高い靭性を有する粉末高速度工具鋼に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】切削工具、圧造工具に用いられる高速度
工具鋼は、高硬度で耐摩耗性が優れること、および靭性
に優れること、の2つの要求を満足することが望まれて
いる。溶製高速度工具鋼の靭性を向上させる方法として
は、Nb等の元素を微量添加し、結晶粒を微細化させて
靭性を向上する方法(例えば特開昭58-73753号、同58-11
7863号等)、Nbと希土類元素を複合添加することによ
り、Nbを主体としたMC型炭化物を均一微細化する方
法(特公昭61-896号)等種々提案されている。
工具鋼は、高硬度で耐摩耗性が優れること、および靭性
に優れること、の2つの要求を満足することが望まれて
いる。溶製高速度工具鋼の靭性を向上させる方法として
は、Nb等の元素を微量添加し、結晶粒を微細化させて
靭性を向上する方法(例えば特開昭58-73753号、同58-11
7863号等)、Nbと希土類元素を複合添加することによ
り、Nbを主体としたMC型炭化物を均一微細化する方
法(特公昭61-896号)等種々提案されている。
【0003】一方、耐摩耗性を向上させる方法として
は、炭化物を均一微細に分布させ、かつ結晶粒の微細化
が可能な粉末高速度工具鋼において、炭化物量を増大さ
せる方法が最も一般的である。例えば、特公昭57-2142
号、特開昭55-148747号は、主にW当量を高めることに
より、W,Moを主体とするM6C型炭化物量を増加さ
せ、高硬度化により耐摩耗性の向上を図ったものであ
る。また、粉末高速度工具鋼において、結晶粒の微細化
と、さらには、焼入温度を高めても結晶粒を粗大化させ
ないことを目的として、Nbを含有せしめることが検討
されている{Metall.Trans.19A(1988) P1395〜1401,特
開平1-212736号}。
は、炭化物を均一微細に分布させ、かつ結晶粒の微細化
が可能な粉末高速度工具鋼において、炭化物量を増大さ
せる方法が最も一般的である。例えば、特公昭57-2142
号、特開昭55-148747号は、主にW当量を高めることに
より、W,Moを主体とするM6C型炭化物量を増加さ
せ、高硬度化により耐摩耗性の向上を図ったものであ
る。また、粉末高速度工具鋼において、結晶粒の微細化
と、さらには、焼入温度を高めても結晶粒を粗大化させ
ないことを目的として、Nbを含有せしめることが検討
されている{Metall.Trans.19A(1988) P1395〜1401,特
開平1-212736号}。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記特開昭58
-73753号、同58-117863号の溶製高速度工具鋼では、Nb
を過度に添加すると、Nbを主体としたNbCの粗大な炭
化物を晶出し、W,Moを主体とするM6C型炭化物も、
凝固時に粗大な炭化物を晶出させるために、結晶粒微細
化による靭性向上効果が減殺され、かえって靭性が低下
するといった問題点があった。また、上記の粉末高速度
工具鋼で、耐摩耗性を向上させる目的で、炭化物量の富
化や工具の高硬度化が行なわれてきたが、靭性が低下し
てしまい、工具の折損や欠けが問題となっていた。
-73753号、同58-117863号の溶製高速度工具鋼では、Nb
を過度に添加すると、Nbを主体としたNbCの粗大な炭
化物を晶出し、W,Moを主体とするM6C型炭化物も、
凝固時に粗大な炭化物を晶出させるために、結晶粒微細
化による靭性向上効果が減殺され、かえって靭性が低下
するといった問題点があった。また、上記の粉末高速度
工具鋼で、耐摩耗性を向上させる目的で、炭化物量の富
化や工具の高硬度化が行なわれてきたが、靭性が低下し
てしまい、工具の折損や欠けが問題となっていた。
【0005】また、前記特開昭55-148747号に、Nbを添
加した粉末高速度鋼が提案されているが、この例ではN
bをVの代替として添加し、硬質の炭化物を形成するこ
とを主眼においたものである。さらに、Metall.Trans.1
9A(1988) P1395〜P1401、特開平1-212736号に開示され
る高速度工具鋼は、Nbを添加することにより、結晶粒
を粗大化せずに焼入温度を高めることを可能としている
が、本発明者の考えによると合金元素量、特にW当量が
低いために、苛酷な工具使用条件下では高温焼もどし軟
化抵抗が不十分で、また炭化物量も少ないため、耐摩耗
性も不十分である。
加した粉末高速度鋼が提案されているが、この例ではN
bをVの代替として添加し、硬質の炭化物を形成するこ
とを主眼においたものである。さらに、Metall.Trans.1
9A(1988) P1395〜P1401、特開平1-212736号に開示され
る高速度工具鋼は、Nbを添加することにより、結晶粒
を粗大化せずに焼入温度を高めることを可能としている
が、本発明者の考えによると合金元素量、特にW当量が
低いために、苛酷な工具使用条件下では高温焼もどし軟
化抵抗が不十分で、また炭化物量も少ないため、耐摩耗
性も不十分である。
【0006】したがって、以上説明した従来の高速度工
具鋼は、高速化が要求されている近時の工具使用条件に
対応することが困難であった。
具鋼は、高速化が要求されている近時の工具使用条件に
対応することが困難であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】近年、工具の使用条件が
高速化されるにつれ、工具の高硬度化が重要な要因とな
っている。特に工具使用中に、工具が高温になるため、
焼もどし軟化抵抗特性が最も重要であることを知見し
た。
高速化されるにつれ、工具の高硬度化が重要な要因とな
っている。特に工具使用中に、工具が高温になるため、
焼もどし軟化抵抗特性が最も重要であることを知見し
た。
【0008】本発明は、この知見を考慮してなされたも
ので、下記の2点を基本的な技術思想とするものであ
る。焼もどし軟化抵抗を最大限に高めるために、化学
成分上、特に、W+2Mo、およびC−Ceqを特定範囲
内に規制することが有効であることを見出した。すなわ
ち、W+2Mo量を増すことにより、硬い炭化物を分散
させ、マトリックス中に固溶する合金元素量を増すこと
が有効である。C量は他の炭化物形成元素量との兼ね合
いで決める必要があり、C−Ceqで調整される。高い焼
もどし軟化抵抗を得るためには、C−Ceqを規制し、マ
トリックス中に固溶するC量を確保することが必要であ
る。
ので、下記の2点を基本的な技術思想とするものであ
る。焼もどし軟化抵抗を最大限に高めるために、化学
成分上、特に、W+2Mo、およびC−Ceqを特定範囲
内に規制することが有効であることを見出した。すなわ
ち、W+2Mo量を増すことにより、硬い炭化物を分散
させ、マトリックス中に固溶する合金元素量を増すこと
が有効である。C量は他の炭化物形成元素量との兼ね合
いで決める必要があり、C−Ceqで調整される。高い焼
もどし軟化抵抗を得るためには、C−Ceqを規制し、マ
トリックス中に固溶するC量を確保することが必要であ
る。
【0009】多くの合金元素をマトリックス中へ固溶
せしめんとして焼入温度を高くすると、結晶粒が粗大化
するが、これをNbを含有せしめ、かつそのNb/V比
を規制することにより、結晶粒の粗大化を防止し、微細
結晶粒を確保し、靭性の低下を防止する。NbはVと同
様MC炭化物を形成するが、結晶粒の粗大化を防止する
のに有効な1μm以下の微細NbCを形成するためには、
原子比でVよりも多いNbを含有しなければならない。
重量比ではNb/Vが0.5以上必要である。
せしめんとして焼入温度を高くすると、結晶粒が粗大化
するが、これをNbを含有せしめ、かつそのNb/V比
を規制することにより、結晶粒の粗大化を防止し、微細
結晶粒を確保し、靭性の低下を防止する。NbはVと同
様MC炭化物を形成するが、結晶粒の粗大化を防止する
のに有効な1μm以下の微細NbCを形成するためには、
原子比でVよりも多いNbを含有しなければならない。
重量比ではNb/Vが0.5以上必要である。
【0010】そして、これらは以下に示すような成分バ
ランスをさらに満たして、はじめて上記の特性を満足で
きることを見い出した。すなわち本発明は、重量比でC
1.5%を越え2.7%以下、Si≦1.0%、Mn≦0.6%、Cr 3.0
〜6.0%、WまたはさらにMoをW+2Moで 14〜30%か
つ、W/2Mo≧1、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb 2.5〜
7.0%、但しNb/V≧0.5、残部がFeおよび不可避的不純
物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.05(Ceq=0.24+0.033
・W+0.063・Mo+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たすこと
を特徴とする粉末高速度工具鋼である。
ランスをさらに満たして、はじめて上記の特性を満足で
きることを見い出した。すなわち本発明は、重量比でC
1.5%を越え2.7%以下、Si≦1.0%、Mn≦0.6%、Cr 3.0
〜6.0%、WまたはさらにMoをW+2Moで 14〜30%か
つ、W/2Mo≧1、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb 2.5〜
7.0%、但しNb/V≧0.5、残部がFeおよび不可避的不純
物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.05(Ceq=0.24+0.033
・W+0.063・Mo+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たすこと
を特徴とする粉末高速度工具鋼である。
【0011】また、本発明は重量比でC 1.5%を越え2.7
%以下、Si≦1.0%、Mn≦0.6%、Cr3.0〜6.0%、Wまた
はさらにMoをW+2Moで 14〜30%かつ、W/2Mo≧1、
V 5.0%を越え10.0%以下、Nb 2.5〜7.0%、但しNb/V
≧0.5、Co 15.0%以下、残部がFeおよび不可避的不純
物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.05(Ceq=0.24+0.033
・W+0.063・Mo+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たすこと
を特徴とする粉末高速度工具鋼である。
%以下、Si≦1.0%、Mn≦0.6%、Cr3.0〜6.0%、Wまた
はさらにMoをW+2Moで 14〜30%かつ、W/2Mo≧1、
V 5.0%を越え10.0%以下、Nb 2.5〜7.0%、但しNb/V
≧0.5、Co 15.0%以下、残部がFeおよび不可避的不純
物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.05(Ceq=0.24+0.033
・W+0.063・Mo+0.2V+0.1・Nb)の関係を満たすこと
を特徴とする粉末高速度工具鋼である。
【0012】
【作用】以下に成分の限定理由を説明する。Cは同時に
添加されるCr,W,Mo,V,Nbと硬い炭化物を形成して
耐摩耗性向上に寄与する。さらに、焼入時にマトリック
ス中に固溶して焼もどし2次硬化を向上する作用もあ
る。しかし、多すぎるとマトリックス中に固溶する炭素
量が著しく増え靭性を低下させる。したがって、C量は
Cr,W,Mo,V,Nb含有量との兼ね合いで決める必要が
あり、本発明では1.5〜2.6%の範囲とC-Ceqの値が−0.
30〜0.05の関係を満足するようC量を調整する。この関
係を満足させることにより、高い高温焼もどし軟化抵抗
を得るための1条件が達成される。
添加されるCr,W,Mo,V,Nbと硬い炭化物を形成して
耐摩耗性向上に寄与する。さらに、焼入時にマトリック
ス中に固溶して焼もどし2次硬化を向上する作用もあ
る。しかし、多すぎるとマトリックス中に固溶する炭素
量が著しく増え靭性を低下させる。したがって、C量は
Cr,W,Mo,V,Nb含有量との兼ね合いで決める必要が
あり、本発明では1.5〜2.6%の範囲とC-Ceqの値が−0.
30〜0.05の関係を満足するようC量を調整する。この関
係を満足させることにより、高い高温焼もどし軟化抵抗
を得るための1条件が達成される。
【0013】Si,Mnは脱酸剤として添加するが、多量
に添加すると靭性を害する等の問題があるので、Si 1.
0%以下、Mn 0.6%以下に限定する。Crは焼入性を高
め、また焼もどし2次硬化性を高める目的で3〜6%添加
する。3%より少ないと上記効果が少なく、逆に6%より多
いとCrを主体とするM23C6型の炭化物が極端に増えて
全体の靭性を害し、さらに焼もどし時に炭化物の凝集を
速め軟化抵抗を減ずる。
に添加すると靭性を害する等の問題があるので、Si 1.
0%以下、Mn 0.6%以下に限定する。Crは焼入性を高
め、また焼もどし2次硬化性を高める目的で3〜6%添加
する。3%より少ないと上記効果が少なく、逆に6%より多
いとCrを主体とするM23C6型の炭化物が極端に増えて
全体の靭性を害し、さらに焼もどし時に炭化物の凝集を
速め軟化抵抗を減ずる。
【0014】本発明の目的である顕著な耐摩耗性を付与
するためには、硬い炭化物を多量に分散させ、しかもマ
トリックス硬度を高める必要がある。本発明で、W,M
o量は、上記の目的で重要な元素である。Wまたはさら
にMoをW+2Moで14〜30%とする。14%より少ないと
上記効果が少ない。しかし、W+2Moが30%を越える
と、連結した炭化物が急増し、マトリックス中に固溶す
る合金元素も極端に多くなって靭性の低下が著しくなる
ので、WまたはさらにMoをW+2Moで14〜30%とする。
するためには、硬い炭化物を多量に分散させ、しかもマ
トリックス硬度を高める必要がある。本発明で、W,M
o量は、上記の目的で重要な元素である。Wまたはさら
にMoをW+2Moで14〜30%とする。14%より少ないと
上記効果が少ない。しかし、W+2Moが30%を越える
と、連結した炭化物が急増し、マトリックス中に固溶す
る合金元素も極端に多くなって靭性の低下が著しくなる
ので、WまたはさらにMoをW+2Moで14〜30%とする。
【0015】Vは耐摩耗性を高めるのに有効な元素であ
り、本発明において最も重要な元素の一つである。Vは
Cと結合して硬質のVC炭化物を形成する。このVC炭
化物は被加工材が硬質材の場合に特に効果的で、耐摩耗
性を著しく改善する効果がある。特にアブレッシブ摩耗
に対する耐摩耗性は、Vが5%を越える添加により優れた
ものとなる。しかし、10%を越えると製造上、粗大なM
C型炭化物の晶出が避けがたく、靭性や工具の被研削性
を害するので、10%以下とした。Nbも、本発明において
最も重要な元素の一つである。Nbを特定の成分範囲に
限定すると、耐摩耗性に有効な1〜5μmのNbを主体とし
た硬質の炭化物と、1μm以下の微細な炭化物が晶出す
る。
り、本発明において最も重要な元素の一つである。Vは
Cと結合して硬質のVC炭化物を形成する。このVC炭
化物は被加工材が硬質材の場合に特に効果的で、耐摩耗
性を著しく改善する効果がある。特にアブレッシブ摩耗
に対する耐摩耗性は、Vが5%を越える添加により優れた
ものとなる。しかし、10%を越えると製造上、粗大なM
C型炭化物の晶出が避けがたく、靭性や工具の被研削性
を害するので、10%以下とした。Nbも、本発明において
最も重要な元素の一つである。Nbを特定の成分範囲に
限定すると、耐摩耗性に有効な1〜5μmのNbを主体とし
た硬質の炭化物と、1μm以下の微細な炭化物が晶出す
る。
【0016】本発明者は、この微細なNbCが結晶粒成
長を抑制し、焼入温度を高めても結晶粒の粗大化を効果
的に抑制する成分範囲を見出した。この微細なNbCは
Nb量、Nb/V比と密接に関係しておりNb量及びNb/V
比が低いと、微細なNbCがほとんど晶出しないため、
Nb≧2.5%およびNb/V≧0.5となるようNb量を調整し
た。しかし、Nbが7%を越えると、極めて粗大なNbCを
晶出し、靭性や被研削性を害するので、7%以下とした。
長を抑制し、焼入温度を高めても結晶粒の粗大化を効果
的に抑制する成分範囲を見出した。この微細なNbCは
Nb量、Nb/V比と密接に関係しておりNb量及びNb/V
比が低いと、微細なNbCがほとんど晶出しないため、
Nb≧2.5%およびNb/V≧0.5となるようNb量を調整し
た。しかし、Nbが7%を越えると、極めて粗大なNbCを
晶出し、靭性や被研削性を害するので、7%以下とした。
【0017】Coは本発明鋼の焼きもどし軟化抵抗の向
上するために極めて有効な元素である。マトリックス中
に固溶し、炭化物の析出および凝集を遅らせ、高温にお
ける硬さと強度を著しく向上させる効果があり、切削工
具、エンドミル等の工具とワークの接触部が特に高温に
なる用途にとって極めて重要な添加元素である。しか
し、Coが15.0%を越えると固溶によるCo単独相の晶出
が生ずることにより靭性が低下するので15.0%以下とし
た。
上するために極めて有効な元素である。マトリックス中
に固溶し、炭化物の析出および凝集を遅らせ、高温にお
ける硬さと強度を著しく向上させる効果があり、切削工
具、エンドミル等の工具とワークの接触部が特に高温に
なる用途にとって極めて重要な添加元素である。しか
し、Coが15.0%を越えると固溶によるCo単独相の晶出
が生ずることにより靭性が低下するので15.0%以下とし
た。
【0018】
【実施例】表1に-120メッシュのガスアトマイズ粉末を
HIP(熱間静水圧プレス処理)する方法により作製した
8種類の実験材の化学組成を示す。それぞれの材料は、
HIPを行ない、鍛伸により約16mm角とした後、該鍛伸
材を860℃で焼なまし、結晶粒が粗にならない温度範囲
で可能な限り高い温度で15分間のオーステナイト化を行
なった後、550℃の熱浴焼入を行なった。なお、焼もど
し温度は560℃で行なった。なお、表1に示すΔCはC
−Ceqの値である。
HIP(熱間静水圧プレス処理)する方法により作製した
8種類の実験材の化学組成を示す。それぞれの材料は、
HIPを行ない、鍛伸により約16mm角とした後、該鍛伸
材を860℃で焼なまし、結晶粒が粗にならない温度範囲
で可能な限り高い温度で15分間のオーステナイト化を行
なった後、550℃の熱浴焼入を行なった。なお、焼もど
し温度は560℃で行なった。なお、表1に示すΔCはC
−Ceqの値である。
【0019】焼もどし後の硬さ、インターセプト法によ
る結晶粒度(焼入後)、650℃で1時間加熱保持後、空冷し
た際の硬さ(焼もどし軟化抵抗と称する)を測定した。こ
の材料の靭性を評価するために、上記鍛伸材より5φ×7
0Lの試験片を採取し、上記した焼入れ、焼もどしの熱処
理を施した後、スパン50Lで曲げ試験を行なった。ま
た、SiC研磨紙を用いたアブレッシブ摩耗試験を行な
った。5φ丸棒を10kgの荷重で#500のSiC紙に端面を押
し付けながら、980rpmで回転させ、60mm/minの送り速度
で1000mm走らせた後の摩耗減量を測定した。これらの結
果を表2に示す。
る結晶粒度(焼入後)、650℃で1時間加熱保持後、空冷し
た際の硬さ(焼もどし軟化抵抗と称する)を測定した。こ
の材料の靭性を評価するために、上記鍛伸材より5φ×7
0Lの試験片を採取し、上記した焼入れ、焼もどしの熱処
理を施した後、スパン50Lで曲げ試験を行なった。ま
た、SiC研磨紙を用いたアブレッシブ摩耗試験を行な
った。5φ丸棒を10kgの荷重で#500のSiC紙に端面を押
し付けながら、980rpmで回転させ、60mm/minの送り速度
で1000mm走らせた後の摩耗減量を測定した。これらの結
果を表2に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】表1に示す合金のうち、試料No.1〜No.5
は、Nb含有量を変化させたものである。No.1およびN
o.2は、本発明鋼よりもNb量の少ない比較鋼であり、焼
入温度が1200℃を越えて高くなると結晶粒が急激に粗大
化し、抗折力が低下したため、焼入温度を1200℃に設定
した。しかし、表2に示すように1200℃の焼入温度で
は、マトリックス中への合金元素の固溶量が不十分で、
十分な焼もどし軟化抵抗が得られなかった。
は、Nb含有量を変化させたものである。No.1およびN
o.2は、本発明鋼よりもNb量の少ない比較鋼であり、焼
入温度が1200℃を越えて高くなると結晶粒が急激に粗大
化し、抗折力が低下したため、焼入温度を1200℃に設定
した。しかし、表2に示すように1200℃の焼入温度で
は、マトリックス中への合金元素の固溶量が不十分で、
十分な焼もどし軟化抵抗が得られなかった。
【0023】一方、Nb量が2.5%以上、Nb/Vが0.5以上
の本発明鋼である試料No.3およびNo.4は、Nbの結晶
粒微細化の効果により、焼入温度 1250℃でも結晶粒の
粗大化が起こらず、1250℃の焼入温度が適用でき、この
焼入により比較鋼である試料No.1および試料No.2に比
べて高い硬さ、高い焼もどし軟化抵抗および少ない摩耗
減量となった。また、Nb量が7%を越える比較鋼である
試料No.5は、5μm以上のNbCの巨大炭化物が多く発生
し、抗折強度が著しく低下した。
の本発明鋼である試料No.3およびNo.4は、Nbの結晶
粒微細化の効果により、焼入温度 1250℃でも結晶粒の
粗大化が起こらず、1250℃の焼入温度が適用でき、この
焼入により比較鋼である試料No.1および試料No.2に比
べて高い硬さ、高い焼もどし軟化抵抗および少ない摩耗
減量となった。また、Nb量が7%を越える比較鋼である
試料No.5は、5μm以上のNbCの巨大炭化物が多く発生
し、抗折強度が著しく低下した。
【0024】また、表1に示す合金のうち試料No.6〜
No.8は、V量を変化させたものである。本発明鋼であ
る試料No.7に比べて、V量が5%以下の試料No.6は、M
C型炭化物が少ないために摩耗減量が多くなった。ま
た、V量が10%を越える試料No.8は、MC型炭化物が過
剰となり、靭性が著しく低下した。
No.8は、V量を変化させたものである。本発明鋼であ
る試料No.7に比べて、V量が5%以下の試料No.6は、M
C型炭化物が少ないために摩耗減量が多くなった。ま
た、V量が10%を越える試料No.8は、MC型炭化物が過
剰となり、靭性が著しく低下した。
【0025】(実施例2)実施例1と同様に表3に示す
W+Mo量を変化させた化学組成の試料を得た。ここで
C−CeqはΔCとして示す。これらの試料に対して実施
例1と同様に焼もどし後の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟
化抵抗、摩耗減量および抗折力を測定した。結果を表4
に示す。表4より、W+2Moの値が大きくなると、マト
リックス中に固溶し得る合金元素量が増え、焼もどし軟
化抵抗が向上することがわかる。表4において、W+2
Moの値が14%未満の比較鋼である試料No.9は硬さ、焼
もどし軟化抵抗ともに本発明鋼より低いものであった。
一方、W+2Moの値が30%を越える比較鋼である試料N
o.12は、硬さおよび焼もどし軟化抵抗は高い値となる
が、抗折力が著しく低下し、好ましくないものであっ
た。
W+Mo量を変化させた化学組成の試料を得た。ここで
C−CeqはΔCとして示す。これらの試料に対して実施
例1と同様に焼もどし後の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟
化抵抗、摩耗減量および抗折力を測定した。結果を表4
に示す。表4より、W+2Moの値が大きくなると、マト
リックス中に固溶し得る合金元素量が増え、焼もどし軟
化抵抗が向上することがわかる。表4において、W+2
Moの値が14%未満の比較鋼である試料No.9は硬さ、焼
もどし軟化抵抗ともに本発明鋼より低いものであった。
一方、W+2Moの値が30%を越える比較鋼である試料N
o.12は、硬さおよび焼もどし軟化抵抗は高い値となる
が、抗折力が著しく低下し、好ましくないものであっ
た。
【0026】(実施例3)C−Ceqの値が硬さ、焼もど
し軟化抵抗および抗折力に及ぼす影響を確認するため
に、実施例1と同様にして表5に示すC量を変化させた
化学組成の試料を得た。ここで、C−CeqはΔCとして
示す。これら試料に対して実施例1と同様に焼もどし後
の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟化抵抗、摩耗減量、およ
び抗折力を測定した。結果を表6に示す。
し軟化抵抗および抗折力に及ぼす影響を確認するため
に、実施例1と同様にして表5に示すC量を変化させた
化学組成の試料を得た。ここで、C−CeqはΔCとして
示す。これら試料に対して実施例1と同様に焼もどし後
の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟化抵抗、摩耗減量、およ
び抗折力を測定した。結果を表6に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】表6より、ΔCの値が-0.30未満である試
料No.13およびΔCの値が0.05を越える試料No.16は、
本発明鋼である試料No.14およびNo.15に比べて硬さ、
焼もどし軟化抵抗および抗折力のいずかが劣り好ましく
ないことが確認された。
料No.13およびΔCの値が0.05を越える試料No.16は、
本発明鋼である試料No.14およびNo.15に比べて硬さ、
焼もどし軟化抵抗および抗折力のいずかが劣り好ましく
ないことが確認された。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】(実施例4)実施例1と同様にして表7に
示す試料を得た。また、表7に示す試料に対して実施例
1と同様に焼もどし後の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟化
抵抗、摩耗減量および抗折力を測定した。結果を表8に
示す。試料No.17は、Cr量が3%未満の比較鋼であり、
硬さがHRC67以下と低いものであり、また焼もどし軟化
抵抗もHRC59以下の低いもので好ましくないものであっ
た。また、試料No.18は、Cr量が6%を越える比較鋼で
あり、焼もどし軟化抵抗がHRC59以下と低く好ましくな
いものであった。
示す試料を得た。また、表7に示す試料に対して実施例
1と同様に焼もどし後の硬さ、結晶粒度、焼もどし軟化
抵抗、摩耗減量および抗折力を測定した。結果を表8に
示す。試料No.17は、Cr量が3%未満の比較鋼であり、
硬さがHRC67以下と低いものであり、また焼もどし軟化
抵抗もHRC59以下の低いもので好ましくないものであっ
た。また、試料No.18は、Cr量が6%を越える比較鋼で
あり、焼もどし軟化抵抗がHRC59以下と低く好ましくな
いものであった。
【0033】試料No.19〜No.22は本発明鋼であり、HR
C68以上の硬さ、HRC59以上の焼もどし軟化抵抗を有して
いた。また、本発明鋼のうち試料No.20〜No.22はCo
を含む鋼であり、Co量が増加するにしたがって、焼も
どし軟化抵抗が高くなり、Coの添加によりCoのないも
のに比べ焼もどし軟化抵抗が改善されたことがわかる。
なおCoを添加する場合は、残留オーステナイトが存在
するのを防ぐため、焼もどしは3回行なった。一方、C
o量が15%を越える比較鋼である試料No.23では焼もどし
軟化抵抗は高い値を示すものの、抗折力が著しく低下し
好ましくないものであった。
C68以上の硬さ、HRC59以上の焼もどし軟化抵抗を有して
いた。また、本発明鋼のうち試料No.20〜No.22はCo
を含む鋼であり、Co量が増加するにしたがって、焼も
どし軟化抵抗が高くなり、Coの添加によりCoのないも
のに比べ焼もどし軟化抵抗が改善されたことがわかる。
なおCoを添加する場合は、残留オーステナイトが存在
するのを防ぐため、焼もどしは3回行なった。一方、C
o量が15%を越える比較鋼である試料No.23では焼もどし
軟化抵抗は高い値を示すものの、抗折力が著しく低下し
好ましくないものであった。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、従来不十分であった高
温での軟化抵抗特性を大幅に向上できるので高温での耐
摩耗性を顕著に改善し、かつMC炭化物を増量すること
により、より一層耐摩耗性を向上することができた。ま
た結晶粒が微細なままで、靭性も従来と同等以上に高い
ため、工具の高速使用条件下で、大幅な寿命向上が達成
できる。
温での軟化抵抗特性を大幅に向上できるので高温での耐
摩耗性を顕著に改善し、かつMC炭化物を増量すること
により、より一層耐摩耗性を向上することができた。ま
た結晶粒が微細なままで、靭性も従来と同等以上に高い
ため、工具の高速使用条件下で、大幅な寿命向上が達成
できる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比でC 1.5%を越え2.7%以下、Si≦
1.0%、Mn≦0.6%、Cr 3.0〜6.0%、WまたはさらにMo
をW+2Moで 14〜30%、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb
2.5〜7.0%、但しNb/V≧0.5、残部がFeおよび不可避
的不純物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.05(ただしCeq
=0.24+0.033・W+0.063・Mo+0.2V+0.1・Nb)の関係
を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼。 - 【請求項2】 重量比でC 1.5%を越え2.7%以下、Si≦
1.0%、Mn≦0.6%、Cr 3.0〜6.0%、WまたはさらにMo
をW+2Moで 14〜30%、V 5.0%を越え10.0%以下、Nb
2.5〜7.0%、但しNb/V≧0.5、Co ≦15.0%、残部がFe
および不可避的不純物よりなり、C−Ceqが−0.30〜0.
05(ただしCeq=0.24+0.033・W+0.063・Mo+0.2V+0.1
・Nb)の関係を満たすことを特徴とする粉末高速度工具
鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34068991A JPH05171374A (ja) | 1991-12-24 | 1991-12-24 | 粉末高速度工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34068991A JPH05171374A (ja) | 1991-12-24 | 1991-12-24 | 粉末高速度工具鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05171374A true JPH05171374A (ja) | 1993-07-09 |
Family
ID=18339373
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP34068991A Pending JPH05171374A (ja) | 1991-12-24 | 1991-12-24 | 粉末高速度工具鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05171374A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2722211A1 (fr) * | 1994-07-06 | 1996-01-12 | Thyssen Aciers Speciaux Sa | Acier pour outils de mise en forme |
WO2007021243A1 (en) * | 2005-08-18 | 2007-02-22 | Erasteel Kloster Aktiebolag | Powder metallurgically manufactured steel, a tool comprising the steel and a method for manufacturing the tool |
CN114622122A (zh) * | 2022-03-04 | 2022-06-14 | 长沙市萨普新材料有限公司 | 一种高铌铁基超硬材料及其制备方法 |
-
1991
- 1991-12-24 JP JP34068991A patent/JPH05171374A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2722211A1 (fr) * | 1994-07-06 | 1996-01-12 | Thyssen Aciers Speciaux Sa | Acier pour outils de mise en forme |
WO2007021243A1 (en) * | 2005-08-18 | 2007-02-22 | Erasteel Kloster Aktiebolag | Powder metallurgically manufactured steel, a tool comprising the steel and a method for manufacturing the tool |
CN114622122A (zh) * | 2022-03-04 | 2022-06-14 | 长沙市萨普新材料有限公司 | 一种高铌铁基超硬材料及其制备方法 |
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