JPH05168642A

JPH05168642A - 外科手術用具

Info

Publication number: JPH05168642A
Application number: JP3343623A
Authority: JP
Inventors: Morihito Idemoto; 守人出本
Original assignee: Sumitomo Bakelite Co Ltd
Current assignee: Sumitomo Bakelite Co Ltd
Priority date: 1991-12-25
Filing date: 1991-12-25
Publication date: 1993-07-02
Anticipated expiration: 2011-05-29
Also published as: JP2500213B2

Abstract

(57)【要約】【目的】ホーンの摩擦発熱による生物組織の炭化や、
ホーン自体の熱劣化を防止すると共に、切断部の変性を
最小限に抑え、かつ細かい作業に適し、硬組織を精密で
安全に切削することのできる外科手術用具を提供する。【構成】振動伝達具（１）の先端近傍部の作業面
（３）には、振動方向に対して角度を有する複数の溝を
設け、内部に長軸方向に設けたイリゲーション液通路
（７）は、作業面、もしくは作業面の根元側側面に１個
または複数個のイリゲーション液噴出孔（２）に開口し
ている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、超音波振動により生物
組織を切削、分離するための外科手術用具に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来、生物組織、特に硬骨組織及び軟骨
組織の切断分離には外科用メスが用いられているが、切
断作業の効率が悪く、長時間を要し、手術者に多大の労
力がかかり、且つ切断分離に高度の技術を必要とすると
言う欠点があった。

【０００３】また、超音波を利用した外科手術用具も多
数開発されており、超音波振動源に接続された操作部を
超音波振動させ、接触した生物組織を破砕し、吸引除去
する為の外科手術用具（例えば、特公昭４７−３９１９
７号公報）や、硬質及び軟質の生物組織の切断分離用と
して開発された、超音波振動源に接続されたのこぎり状
の操作部分を有する外科手術用具などが知られている。
しかし、振動方向に対して垂直な平面の操作部を有した
振動体が、軟質の生物組織の表面層を超音波振動によっ
て破砕、乳化、吸引除去する外科手術用具は、超音波周
波数の機械的振動によって生物組織の表面層をたたく作
用で組織を破砕しているため、操作部を生物組織に深く
くい込ませて組織を切断分離する作業は難しく、更に硬
い生物組織を切断するには不適当であった。

【０００４】また、超音波振動するのこぎり状の操作部
分によって生物組織を切断分離する外科手術用具は、切
断効率を向上させるために操作部の形状を工夫している
が、切断に必要とされる３０〜５０μｍ程度の操作部の
振幅によって、操作部と切断される生物組織との間に摩
擦熱が発生し、操作部、例えば熱伝導性の優れたチタン
合金の場合でも数百度の表面温度に達し、切断されてい
る組織は炭化される。更に、刃形状等の肉厚の薄い操作
部は摩擦熱によって劣化し、破砕する恐れがあった。

【０００５】また、硬組織を超音波振動で切断する作業
をミクロ的に観察した場合、図８（ａ）に示したよう
に、矢印Ｂの振動方向で骨（２１）を切断する場合は、
刃形状振動伝達具（２０）の先端部（２２）で剪断力に
よって微細破断部（２４）を連続的に発生させているの
であるが、マクロ的には切断しているような形状とな
る。図８（ｂ）は刃形状振動伝達具（２０）を正面方向
より見た図で、厚みの薄い刃形状で骨を微細剪断する場
合、振動伝達具（２０）の先端部（２２）の角度を鋭角
にするに従って剪断力は上昇するが、切断部以外の変性
層（２５）が広く発生し、術後の切断部の骨の再生状態
が悪化するという欠点があった。

【０００６】切断幅を広くとる場合、刃形状振動伝達具
（２０）では肉厚を厚くする結果、側面の接触面積が大
きくなりすぎて、切断速度が落ちたり、また、超音波振
動による摩擦熱が多量に発生する恐れがあった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の外科
手術用具のこのような問題点を解決することを目的とし
たもので、ホーンの発熱により生物組織を炭化させ、あ
るいはホーン自体が劣化するという問題を解消すると共
に、切断部の変性を最小限に抑えて、かつ細かい作業に
適した形状の外科手術用具を提供しようとするものであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】即ち本発明は、超音波振
動により生物組織の切削、分離する外科手術装置の振動
伝達具であって、該振動伝達具は先端近傍部に超音波の
機械的振動方向に対して角度を有する複数の溝が設けら
れた作業面、及び内部にイリゲーション液通路を有し、
該イリゲーション液通路は作業面に位置する、もしくは
先端部近傍で止まっていて作業面の根元側側面に位置す
る、それぞれ１個または複数個のイリゲーション噴出孔
につながっていることを特徴とする外科手術用具であ
る。

【０００９】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明
する。図１は本発明の一実施例となる外科手術用具を示
す図である。

【００１０】振動伝達具（１）は、接続ネジ（４）によ
り同じ共振周波数の振動体に接続され、振動体に共振周
波数の高周波電力を加えることにより発生させた超音波
振動を、先端の作業面（３）を介して生物組織に伝え
る。振動体と振動伝達具（１）の接続は、超音波振動の
腹面で行なえば、ネジ接続の他、溶接、圧着等の方法が
可能であり、特に限定されない。また、振動体は内部に
イリゲーション液通路を有する、電歪型または磁歪型の
いずれの振動子も使用でき、特に限定はされないが、電
気、機械変換効率の優れたＢＬＴ振動子を用いるのが好
ましい。振動体にて発生した超音波振動は振動伝達具
（１）によって伝達、拡大され、作業面（３）で最大振
幅となるが、その振幅は 100〜 200μｍに達する。これ
以上に振幅を上げれば、切削速度は見かけ上より大きく
なるが、切削部の焦げや、作業面（３）の耐久性及び切
削音等の問題を生ずるので、上限振幅は 200μｍとする
のが好ましいが、技術的には特に限定されるものではな
い。また、共振周波数は２０〜４５KHz が好ましく、２
２KHz 〜４０KHz が特に良い振動が得られる。

【００１１】イリゲーション液通路（７）は、振動体か
ら振動伝達具（１）へと続き、その内部を通って振動伝
達具（１）前方の作業面（３）の近傍に位置するイリゲ
ーション液噴出孔（２）で開口している。図２および図
３はイリゲーション液噴出孔（２）の開口位置を示す作
業面（３）近傍の拡大図で、図２に示した例では、イリ
ゲーション液通路（７）が作業面（３）の根元側で２つ
に分岐し、その分岐通路（７′）が振動伝達具（１）の
長軸方向に対して５〜１０°の角度をなしており、図４
（ａ）にも示したように、イリゲーション液噴出孔
（２）は作業面（３）の根元側両側面に開口していて、
超音波振動中の作業面（３）に向けてイリゲーション液
を噴霧できる構造になっている。一方、図３の例ではイ
リゲーション液噴出孔（６）は、作業面（３）に直接開
口していて、作業面（３）の振動による摩擦熱の発生を
防止している。イリゲーション液噴出孔の開口位置は、
作業部（３）の振動に対する耐久性等の関係からは、作
業面の根元側近傍もしくは作業面（３）のどちらでも良
い。また、イリゲーション液噴出孔（２）の開口径につ
いては特に限定はないが、イリゲーション液通路
（７）、分岐通路（７′）の直径より小さい方が好まし
い。

【００１２】図４は作業面に設ける溝の方向の例を示し
た図である。溝の方向については、切削対象の骨の硬さ
や、操作時の力の入れ方に応じて選択できる。図４
（ａ）に示した溝（８）は、超音波の振動方向、即ち振
動伝達具（１）の長軸方向に対して直角をなし、曲面形
状の骨を切削する場合に、長軸方向に平行な溝に比べて
切削部へのくい込みが大きく、操作者が切削方向以外の
方向に作業面（３）を滑らせたり、過って別の部分を切
削する恐れが少ない特徴がある。これに対して、図４
（ｂ）に示した溝（９）は、曲線形状の切削線を作成す
る場合、溝（９）が振動方向に対して鋭角の角度を有す
ることによって、左右の切削時の移動が、簡便となる。
作業面の溝形状は、直線には限らず曲線でも良く、切削
対象によって選択できる。

【００１３】図５は、作業面（１０）が振動方向に対し
てと角度αを有している例で、操作者が振動伝達具
（１）をαの角度で立てながら使用できるので、狭い部
分の切削にも好適である。角度については特に限定され
ないが、５〜４５°が好ましい。

【００１４】図６は、複数の作業面（３）（１２）（１
３）を有している例で、各作業面は溝のピッチ、深さ、
および幅がそれぞれ異っており、切削対象や、切削形状
に合せて、１つの振動伝達具（１）で適切な作業面を選
択でき、複数の振動伝達具を用意する必要がない利点が
ある。

【００１５】図７（ａ）は、矢印Ａの方向に振動する本
発明の振動伝達具（１）の骨（１５）を切削するときの
ミクロ的プロセスを示している。溝（５）に挟さまれた
作業面（１０）は振動方向（Ａ）に対して角度を有して
おり、作業面（１０）の振動により剪断力が発生して微
細破断部（１４）が生じ、マクロ的には、骨（１５）を
切削する作用を示す。この時の作業面（１０）の角度は
１〜３０°、好ましくは５〜１０°が良い。この角度の
効果により、振動以外の操作者の機械的な力によって作
業面（１０）を骨面に押えつけなくても、振動により作
業面（１０）が自動的に骨に食いこみ、剪断破砕を生じ
る。これによって作業面（１０）を押えつける力が軽減
され、図７（ｂ）に示すように変性層（１６）が薄くな
り、術後の骨の再生に有効である。溝（５）の深さは微
細破断部（１４）の大きさによって異なり、0.01〜0.５
mm、好ましくは0.05〜0.３mmとするのが良いが、特に限
定はされない。溝の幅については、0.１〜0.５mmが好適
である。また、作業面の溝の本数は特に限定はされず、
振動伝達具（１）の作業面（３）を有する先端形状は、
ブロック状やドーム状でも良く、切削部の進入方向や寸
法により適宜に選択できる。

【００１６】また、図７（ａ）のように溝（５）で挟さ
まれた作業面（３）のエッジ部（１８）はすくい角を有
し、その角度は特に限定されないが、この形状を有する
ことによって、剪断力による微細破断部（１４）の大き
さを制御でき、切削後の表面状態を調整できる。エッジ
部（１８）の断面形状は、曲線もしくは直線のいずれで
も差しつかえなく、また、両側の２つのエッジ部の断面
形状とすくい角は、同一でも良く異なっていても差しつ
かえはない。

【００１７】

【発明の効果】本発明に従うと、超音波振動により生物
組織、特に骨などの硬組織を切削、分離する作業を、従
来の外科手術用具に比べて技術の熟練を必要とせず、か
つ迅速に切断、分離でき、また切削面周辺の骨細胞組織
の摩擦熱による変質や、機械的な圧迫による組織の変性
を防いで、術後の治癒の促進を図り、更に術者が安全に
かつ視野を妨害されることなく精密な幅広い切削作業が
でき、長時間連続して高振幅で使用できる外科手術用具
として好適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例となる外科手術用具の基本的
な構造を示す図である。

【図２】イリゲーション液噴出孔の開口位置の例を示す
振動伝達具先端部の拡大図である。

【図３】イリゲーション液噴出孔の開口位置の他の例を
示す振動伝達具先端部の拡大図である。

【図４】作業面の溝形状の例を示す図である。

【図５】作業面が振動方向と角度を有した例を示す図で
ある。

【図６】複数の作業面を有する振動伝達具の例を示す図
である。

【図７】本発明の振動伝達具による切削におけるミクロ
的プロセスを示す図で、（ａ）は側断面図、（ｂ）は正
面の断面図である。

【図８】従来の超音波振動による外科手術用具のミクロ
的な切削状態を示す図で、（ａ）は振動方向に垂直な刃
形状の振動伝達具の例、（ｂ）は振動方向に平行な刃形
状の振動伝達具の例である。

【符号の説明】

１振動伝達具２、６イリゲーション液噴出孔３、１０、１２、１３作業面５、８、９溝７イリゲーション液通路１４、２４微細破断部１６、２５変性層１８エッジ部２０刃形状振動伝達具

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】超音波振動により生物組織を切削、分離
する外科手術装置の振動伝達具であって、該振動伝達具
は先端近傍部に超音波の機械的振動方向に対して角度を
有する複数の溝が設けられた作業面、及び内部にイリゲ
ーション液通路を有し、該イリゲーション液通路は該作
業面に位置する、もしくは先端部近傍で止まっていて前
記作業面の根元側側面に位置する、それぞれ１個または
複数個のイリゲーション噴出孔につながっていることを
特徴とする外科手術用具。
【請求項２】溝のピッチが異なる複数の作業面を有す
ることを特徴とする請求項（１）記載の外科手術用具。
【請求項３】作業面が超音波の機械振動方向に対して
角度を有することを特徴とする請求項（１）記載の外科
手術用具。
【請求項４】深さの異なる複数の溝を有することを特
徴とする請求項（１）記載の外科手術用具。
【請求項５】溝にはさまれている各々の作業面が、超
音波の機械振動方向に対して角度を有することを特徴と
する請求項（１）記載の外科手術用具。