JPH0515761Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は主として各種のスポーツ靴に有効な
皮革を主体とする靴底に関するものである。

（従来の技術） 天然皮革（以下皮革という。）の靴底は、一般
的ではあるが、比較的重いものであり、屈曲性と
弾性が要求されるスポーツ靴では、皮革組織内に
樹脂を含浸硬化せしめて前記要求を満たすことも
公知であるが、これでは一層重くなつてフツトワ
ークに支障をきたすところから、皮革に薄いスチ
ール板を介在せしめて弾性を助長する手段も提供
されている。

（考案が解決しようとする問題点） 皮革に樹脂を含浸硬化せしめると、重く硬くな
つて屈曲性を阻害するものであり、スチール板を
介在せしめる場合、錆と皮革に含有のタンニンと
が反応してタンニン鉄を生成し皮革が割れる問題
点があつた。

又、皮革は耐水性に劣るため、使用を繰り返す
うちに吸水し、弾性が劣化すると共に、靴底の先
端部がそり上つて変形することもしばしばで、フ
ツトワークに支障をきたす欠点があつた。しか
し、皮革特有の柔軟な触感によつて履用感の良い
利点もある。

（問題点を解決するための手段） この考案は、モノマーを含浸せしめた肉薄の皮
革と透明ウレタン樹脂とを射出成型法により一体
化すると同時に、該透明ウレタン樹脂の所望部位
の上面に、繊維強化熱可塑性シートを密着せしめ
た皮革を主体とする靴底にして、靴底の弾性、耐
屈曲疲労性、耐水性、耐久性にすぐれ、軽量にし
て足裏になじみやすく、足の運動に順応し、かつ
靴の保型性にも富むようにしたものである。

（実施例） 図面に示すように、天然皮革１にアクリル酸エ
ステル系モノマー、塩化ビニール系モノマー、あ
るいはエチレン酢酸ビニール系モノマーを含浸し
て皮革組織内で重合させた肉薄の本底Ａと、透明
ウレタン樹脂２とを一体化して所望肉厚の靴底と
し、透明ウレタン樹脂２の所望部位の上面に、繊
維強化熱可塑性シート３を密着せしめたことを特
徴とする皮革を主体とする靴底である。天然皮革
の組織内で、前記各種モノマーを重合せしめる方
法としては、まず、天然皮革を真空容器内に封入
し真空ポンプで十分に減圧する。次に、減圧下で
真空容器内に、触媒を添加した前記モノマーを注
入し加熱する。注入されたモノマーは天然皮革に
含浸するとともに触媒と熱の作用で重合する、と
いう方法がとられる。

次に、ヒール付きのゴルフ靴の実施例を説明す
る。（第１図乃至第３図）天然皮革１に前記処理
を施した本底Ａの裁断面の所望部位を断面略梯形
状に加工して後、凹型金型に該本底Ａとナツト４
をインサートし、同時に繊維強化熱可塑性シート
３を、金型凸面に吸着或いは、両面テープ接着に
よりセツトし、射出成形した靴底である。

次に、第４図から第６図は野球靴或いは、一般
靴の実施例を示したもので、天然皮革１に前記処
理を施した本底Ａの裁断面の所望部位を断面略逆
梯形状に加工して後、上述したと同様の手段によ
り射出成形して、本底Ａと透明ウレタン樹脂２と
を一体化し、かつ透明ウレタン樹脂２の上面に繊
維強化熱可塑性シート３を配して、完全密着せし
めた靴底である。

（作用・効果） この考案は、上記のように天然皮革１にアクリ
ル酸エステル系モノマー、塩化ビニール系モノマ
ー、あるいはエチレン酢酸ビニール系モノマーを
含浸して皮革組織内で重合させた肉薄の本底Ａ
と、透明ウレタン樹脂２とを射出成型法により一
体化して所望肉厚の靴底にしたから、本底Ａは皮
革固有の特性を維持しつつ耐水性が付与できる。

そして、透明ウレタン樹脂２の所望部位の上面
に繊維強化熱可塑性シート３を密着せしめるた
め、該シート３の密着部位は他部位に比し弾性率
が高くなる。したがつて、弾性を付与したい部位
に該シートを密着して弾性の加減調節も可能にな
り、しかも、屈曲を反復する部位に密着して屈曲
疲労性に耐える設計が容易になる。又足の運動に
順応しやすい部位に密着することにより足裏にな
じむ靴底になつて履用触感を良くすることも可能
になり、さらに、靴底の変形しやすい部位に密着
することにより靴の保型作用を奏すると同時に、
靴底と靴の耐久性を向上せしめることができる。
特に、ヒール付きのゴルフ靴などにおいては、ウ
レタン樹脂２の上面に密着せしめた繊維強化熱可
塑性シート３により、従来のヒール付き靴底のシ
ヤンクの役割を果たし、足裏への衝撃緩和を増大
せしめ、疲労の軽減を大きくはかることができ
る。

このように、肉薄の本底Ａとウレタン樹脂と繊
維強化熱可塑性シートとを部分的に結合する本考
案の靴底は、一般靴はもちろん、激しい運動の伴
う各種のスポーツ靴に用いて有効であり、スポー
ツの種目に応じて弾性屈曲性の剛柔、目方の軽重
等を自在に調整した靴底が提供できる特徴があ
る。

なお、本底Ａの内側裁断面を梯形状にした場合
は、金型内で透明ウレタン樹脂の流動性が良好に
なり、したがつて射出成形しやすい。また、本底
Ａの内側裁断面を逆梯形状にした場合は、本底Ａ
に透明ウレタン樹脂との密着性が増大し剥離率は
減少する効果がある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すもので、第１図
乃至第３図はスパイク螺着前のゴルフ靴の靴底で
あり、第１図は接地面側の平面図、第２図は同側
面図、第３図は同要部拡大断面図。第４図乃至第
６図は野球靴或いは、一般靴の靴底であり、第４
図は接地面側の平面図、第５図は同側面図、第６
図は同要部断面図である。 １……天然皮革、２……透明ウレタン樹脂、３
……繊維強化熱可塑性シート、Ａ……本底。Ｂ…
…梯形状に加工した裁断面、Ｃ……逆梯形状に加
工した裁断面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 天然皮革にアクリル酸エステル系モノマー、塩
   化ビニール系モノマー、もしくはエチレン酢酸ビ
   ニール系モノマーを含浸して皮革組織内で重合さ
   せた本底と、透明ウレタン樹脂とを射出成型法に
   より一体化して所望肉厚の靴底とし、透明ウレタ
   ン樹脂の所望部位に上面に繊維強化熱可塑性シー
   トを密着せしめたことを特徴とする皮革を主体と
   する靴底。