JPH05149837A - 建物側壁の耐震試験装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】実際の建物の振動時の挙動に即した状態で試験
を実施可能な建物側壁の耐震試験装置を提供する。 【構成】試験すべき側壁材６、７を固定する供試体取付
け部材２を具備し、該供試体取付け部材２は、側壁平面
部１０を固定する正面部材３と、該正面部材３の少なく
とも一端に屈曲させて設けた建物隅部８、９を試験する
ための屈曲部材４、５とからなり、該供試体取付け部材
２を固定支柱１に対し変位可能に装着した建物側壁の耐
震試験装置において、前記供試体取付け部材２は、前記
固定支柱１に対し、前記側壁平面部１０の取付け面と平
行な面内方向および該面内方向と直角な面外方向以外の
斜め方向Ａに変位可能とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建物側壁を構成するパ
ネル材やガラス窓等の耐震、耐風圧、水密等の試験を行
なう性能試験装置に関し、特に建物側壁の耐震性能試験
装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】建物を構築する場合、特にカーテンウォ
ール構造等の高層建築の場合、建築前に実際のパネル材
やガラス窓等の側壁部材を用いて、建物の形状、立地条
件、設計条件等に応じて、耐震、耐風圧、水密等に関し
各種性能試験が行なわれる。このような性能試験の結果
に基づいて側壁部材の選定や設計仕様等が安全性等を考
慮して最終的に定まり、実際の建物が構築される。

【０００３】このような性能試験装置においては、試験
すべきパネル材等を固定する供試体取付け部材を備え、
この供試体取付け部材を固定支柱に対し変位あるいは振
動させて耐震性能試験を行なう。この耐震試験装置はさ
らにパネル材外面を気密状態にしてこの気密空間を加圧
あるいは負圧状態にして耐風圧試験を行ない、またパネ
ル材等に対し散水することにより水密試験を行なうこと
もできる。

【０００４】従来の耐震試験装置においては、供試体取
付け部材は、固定支柱に対し、供試体の固定面に平行な
面内方向またはこの面に直角な面外方向に変位するよう
に構成されていた。

【０００５】供試体取付け部材は、通常試験すべき側壁
の平面部を固定する正面部材と、この正面部材の一端に
建物内面側に屈曲させて設けた出隅部を試験するための
屈曲部材とからなり、平面部と出隅部の試験を同時に行
なっていた。耐震試験を行なう場合、正面部材を面内方
向またはこれと直角な面外方向に変位または振動させて
供試体に対し面内の水平左右方向もしくは上下方向また
は面外の前後方向に各種変位力を与えて変形させて、応
力、歪、クラック発生等の各種試験項目をチェックして
いた。この場合、出隅部を形成する屈曲部材は正面部材
に追随して同一方向に変位または振動する構成であっ
た。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際の
建物の出隅部においては、直角に形成された各壁材方向
に沿って変位力が作用するため隅部全体としては各変位
力の合力方向である斜め方向に変位することになる。前
記従来の耐震試験装置では、供試体に対しこのような斜
め方向の変位を与えることはできず、出隅部に対し実際
の建物の挙動に対応した試験を行なうことができなかっ
た。

【０００７】本発明は上記従来技術の欠点に鑑みなされ
たものであって、実際の建物の振動時の挙動に即した状
態で試験を実施可能な建物側壁の耐震試験装置の提供を
目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明においては、試験すべき側壁材を固定する供
試体取付け部材を具備し、該供試体取付け部材は、側壁
平面部を固定する正面部材と、該正面部材の少なくとも
一端に屈曲させて設けた建物隅部を試験するための屈曲
部材とからなり、該供試体取付け部材を固定支柱に対し
変位可能に装着した建物側壁の耐震試験装置において、
前記供試体取付け部材は、前記固定支柱に対し、前記側
壁平面部の取付け面と平行な面内方向および該面内方向
と直角な面外方向以外の斜め方向に変位可能としたこと
を特徴とする建物側壁の耐震試験装置を提供する。

【０００９】好ましい実施例においては、前記供試体取
付け部材の屈曲部材は、出隅部を試験するために前記正
面部材に対し建物内面側に屈曲して設けられたことを特
徴とする。

【００１０】さらに好ましい実施例においては、前記供
試体取付け部材の屈曲部材は、前記正面部材の一端に該
正面部材に対し建物内面側に屈曲させて設けた出隅部を
試験するための第１屈曲部材と、前記正面部材の他端に
該正面部材に対し建物外面側に屈曲させて設けた入り隅
部を試験するための第２屈曲部材とからなることを特徴
とする。

【００１１】さらに好ましい実施例においては、複数層
の供試体取付け部材を固定支柱に装着し、少なくとも１
層の供試体取付け部材は固定支柱に対し前記斜め方向に
変位可能に装着されたことを特徴とする。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。図１は本発明に係る建物側壁の耐震性能試
験装置の外観を示す斜視図である。固定支柱１に対し４
層の供試体取付けスラブ２が装着されている。この例で
は、下側の３層のスラブ２に試験すべきカーテンウォー
ルを構成するパネル材６およびガラス窓７が固定されて
いる。これらの試験すべき供試体であるパネル材６およ
びガラス窓７は、建物側壁を構成する平面部１０とその
両側の出隅部８および入り隅部９とを連結して一体構成
とした構造である。

【００１３】供試体取付けスラブ２は、Ｉ形鋼、Ｈ形鋼
またはこれらを並列させて接合したビーム材等により構
成する。これらのスラブ２は実際にカーテンウォール等
を取付ける建物の床スラブ材に近似した構成であること
が望ましい。各スラブ材２は上からみてクランク形状で
あって、建物側壁の平面部１０を取付けるための比較的
長い正面部材３と、この正面部材３の一端に建物内面側
（後方側）に屈曲させて設けた出隅部８を取付けるため
の第１屈曲部材４と、正面部材３の他端に建物外面側
（前方側）に屈曲させて設けた入り隅部９を取付けるた
めの第２屈曲部材５とにより構成される。

【００１４】供試体を固定した複数層のスラブ材２の内
少なくとも１層のスラブ材２は、正面部材３に対しある
角度θの斜め方向（矢印Ａ方向）、即ち平面部１０と平
行な面内方向およびこれと直角な面外方向以外の方向に
変位可能に構成される。

【００１５】その他の各スラブ２は、固定支柱１に対
し、側壁平面部１０の面内で水平左右方向または上下方
向に変位可能に装着され、あるいは面外の前後方向（平
面部１０の面に対し直角方向）に変位可能に装着され
る。このような各スラブ材の移動変位範囲内で、供試体
を取付けた各スラブ２をそれぞれ変位あるいは振動させ
ることにより、供試体に対し各種の面内変形、面外変形
を与え、建物側壁の平面部１０、出隅部８および入り隅
部９に発生する応力、クラック、破損等の状況をチェッ
クする。これにより建物側壁の耐震性能試験が行なわれ
る。このとき、ある１層のスラブ材２を隣接するスラブ
材に対し前記矢印Ａ方向に変位させることにより、出隅
部８および入り隅部９に対し実際の建物の挙動に対応し
た斜め方向の変形力を与えることができる。

【００１６】なお、各スラブ２の変位方向は前記実施例
に限定されず、全層のスラブを同じ斜め方向（矢印Ａ方
向）に変位させるように構成してもよいし、あるいは１
層を斜め方向として他の層を同一面内方向に変位させる
ように構成してもよい。

【００１７】上記耐震性能試験装置はさらに、供試体に
対し外面（前面）から気密的に圧接して密封試験空間を
形成するための移動可能な風箱（図示しない）を具備
し、耐風圧試験および水密試験を行なうように構成して
もよい。

【００１８】図２は、試験用風箱を取付けた状態の本発
明に係る性能試験装置の水平断面図である。前述のよう
に、供試体取付けスラブ２は、正面部材３とその両端の
第１屈曲部材４および第２屈曲部材５とにより構成され
る。このスラブ２は、固定支柱１に対し、支持プレート
３０およびオイルレスベアリング、油圧シリンダ等を含
む駆動手段３１を介して、前述の矢印Ａ方向に摺動可能
に装着される。スラブ２の各方向への変位は、油圧シリ
ンダの駆動により行なわれる。このようにして固定支柱
１に対し変位可能に装着されたクランク形状のスラブ２
に対し、試験すべき建物側壁の平面部１０、出隅部８お
よび入り隅部９からなる供試体（パネル６等）が固定さ
れる。

【００１９】この供試体の外面には風箱１１が気密的に
装着される。この風箱１１は、試験すべき供試体の形状
に対応した形状を有し、供試体の前面から供試体に対し
圧接して、供試体の上下左右各周縁部に沿って設けたシ
ール材（図示しない）に風箱周縁部のエッジを食込ませ
ることにより供試体外面の風箱内部に密封空間１２を形
成する。風箱１１には給気ダクト２１及び排気ダクト２
２を介してそれぞれ給気ファン１４および排気ファン１
５が接続される。これらのファン１４および１５を選択
的に駆動制御することにより風箱内部空間１２を加圧あ
るいは負圧状態にして供試体の耐風圧性能試験が行なわ
れる。

【００２０】風箱１１にはさらに、供試体の出隅部８、
平面部１０および入り隅部９に沿って多数のノズル部１
３を有する配水管２３が導入される。風箱１１内を各種
風圧変形状態に設定してノズル部１３より散水すること
により供試体の水密性能試験が行なわれる。これらの耐
震試験、耐風圧試験および水密試験を適宜組合せて実施
することにより、実際の気候条件や振動条件に即した試
験を行なうことができる。

【００２１】図３は、供試体取付けスラブ２の別の形状
例を示す。この例は正面部材３に対する第１屈曲部材４
および第２屈曲部材５の屈曲角度を直角以外に変えた例
である。出隅部の屈曲角度θ１および入り隅部の屈曲角
度θ２は試験すべき建物の形状に合せて任意に設定する
ことができる。

【００２２】図４は供試体取付けスラブ２のさらに別の
例を示す。この例は、正面部材３に対し後方に屈曲した
出隅部試験用の屈曲部材４のみを一端に設けたＬ字形状
のスラブ２の構成である。図５は供試体取付けスラブ２
のさらに別の例を示す。この例は、正面部材３に対し後
方に屈曲した第１屈曲部材４および第２屈曲部材５を両
端に設けたコ字形状のスラブ２の構成である。

【００２３】なお、供試体取付けスラブ２の構成および
支柱に対する取付け手段等は図示した実施例に限定され
るものではなく、例えばスラブ２を並列する２本のＨ形
鋼で構成し、両Ｈ形鋼の間に支柱１を挟んで連結し、各
支柱１の両側でスラブ２を支持してもよい。

【００２４】図６は、本発明に係る耐震試験装置の供試
体取付けスラブ２を支柱１へ取付けて支持する場合の支
持構造の一例を示す。（ａ）は上面図、（ｂ）は側面図
である。スラブ２の上下両面に支持プレート３０が固定
される。上下の支持プレート３０間に補強プレートを介
装してもよい。支柱１には保持プレート３２が摺動ガイ
ド部材３３を介して上下の支持プレート３０を挟んで固
定される。摺動ガイド部材３３は図示しないガイド手段
（ガイド溝、ガイド壁、ガイドローラ等）を介して、支
持プレート３０に対し相互に矢印Ａ方向に摺動可能であ
る。上側の保持プレート３２上には油圧シリンダ３４が
止め金具３７により固定される。油圧シリンダ３４のピ
ストン３５の駆動方向は前記矢印Ａ方向に配設される。
スラブ２側の支持プレート３０には当接部材３６が固定
され、この当接部材３６に油圧シリンダ３４のピストン
３５が連結固定される。

【００２５】このような構成において、支柱１側に固定
配置された油圧シリンダ３４を駆動することにより、ピ
ストン３５が当接部材３６を介して支持プレート３０を
矢印Ａ方向に移動させる。これにより、スラブ２が支柱
１に対し、矢印Ａ方向に移動する。

【００２６】図７は、本発明に係る耐震試験装置の供試
体取付けスラブ２を支柱１へ取付けて支持する場合の支
持構造の別の例を示す。（ａ）は上面図、（ｂ）はＸ方
向からみた側面図である。この例におけるスラブ２は、
２本の並列配置したＩ形鋼４０により構成され、両Ｉ形
鋼４０間に支柱１が立設されている。両Ｉ形鋼４０の上
下面にはこれらを連結固定する連結プレート４２が設け
られる。支柱１には支持プレート４３が固定され、この
支持プレート４３に対し上下の連結プレート４２を挟ん
で保持プレート４４が補強プレート４５とともに固定さ
れる。支持プレート４４には、摺動プレート４６が固定
される。摺動プレート４６はオイルレスベアリング５０
を介して連結プレート４２に対し相互に矢印Ａ方向に摺
動可能である。下側の摺動プレート４６（または保持プ
レート４４）には油圧シリンダ４９が固定される。油圧
シリンダ４９のピストンは連結プレート４２に固定した
当接部材５１に連結固定される。油圧シリンダ４９のピ
ストン駆動方向は前記矢印Ａ方向に配設される。

【００２７】支柱１の支持プレート４３の取付け面と反
対側にはガイドローラ４７が装着される。このガイドロ
ーラ４７はガイド壁４８に沿って転動する。ガイド壁４
８はスラブ２を構成する両Ｉ形鋼４０を連結する連結プ
レート４１上に固定される。ガイド壁４８のガイド方向
は前記矢印Ａ方向である。

【００２８】このような構成において、支柱１側に固定
配置された油圧シリンダ４９を駆動することにより、そ
のピストンが当接部材５１を介してスラブ２側の連結プ
レート４２を矢印Ａ方向に押圧する。これにより、連結
プレート４２が矢印Ａ方向に移動するとともに、ガイド
壁４８がガイドローラ４７を回転させながら矢印Ａ方向
に移動する。従って、スラブ２が全体として支柱１に対
し矢印Ａ方向に移動する。

【００２９】なお、スラブ２の斜め方向（矢印Ａ方向）
への移動駆動手段は前記各実施例に限定されず、他のい
かなるガイド手段および駆動手段を用いてもよい。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る建物
側壁の耐震試験装置においては、試験すべき供試体の取
付けスラブを供試体平面に対し平行および直角方向以外
の斜め方向に変位可能に構成しているため、出隅部およ
び入り隅部に対し斜め方向の変形力を付与することが可
能になり、実際の建物の出隅部および入り隅部に作用す
る変形力に極めて近似させた条件で建物側壁の挙動を検
査することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る建物側壁の耐震試験装置の外観図

【図２】本発明に係る建物側壁の耐震試験装置の構成図

【図３】本発明に係る建物側壁の耐震試験装置を構成す
る供試体取付け部材の別の例の断面図

【図４】本発明に係る建物側壁の耐震試験装置を構成す
る供試体取付け部材のさらに別の例の断面図

【図５】本発明に係る建物側壁の耐震試験装置を構成す
る供試体取付け部材のさらに別の例の断面図

【図６】（ａ）（ｂ）はそれぞれ本発明に係る建物側壁
の耐震試験装置を構成する供試体取付け部材の支柱に対
する支持構造の一例を示す上面図および側面図

【図７】（ａ）（ｂ）はそれぞれ本発明に係る建物側壁
の耐震試験装置を構成する供試体取付け部材の支柱に対
する支持構造の別の例を示す上面図および側面図

【符号の説明】

１ 支柱 ２ 供試体取付けスラブ ３ 正面部材 ４ 第１屈曲部材 ５ 第２屈曲部材 ６ パネル材 ７ 窓ガラス ８ 出隅部 ９ 入り隅部 １０ 平面部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】試験すべき側壁材を固定する供試体取付け
   部材を具備し、該供試体取付け部材は、側壁平面部を固
   定する正面部材と、該正面部材の少なくとも一端に屈曲
   させて設けた建物隅部を試験するための屈曲部材とから
   なり、該供試体取付け部材を固定支柱に対し変位可能に
   装着した建物側壁の耐震試験装置において、前記供試体
   取付け部材は、前記固定支柱に対し、前記側壁平面部の
   取付け面と平行な面内方向、該面内方向と直角な面外方
   向および前記面内方向、面外方向以外の斜め方向に変位
   可能としたことを特徴とする建物側壁の耐震試験装置。
2. 【請求項２】前記供試体取付け部材の屈曲部材は、出隅
   部を試験するために前記正面部材に対し建物内面側に屈
   曲して設けられたことを特徴とする請求項１の建物側壁
   の耐震試験装置。
3. 【請求項３】前記供試体取付け部材の屈曲部材は、前記
   正面部材の一端に該正面部材に対し建物内面側に屈曲さ
   せて設けた出隅部を試験するための第１屈曲部材と、前
   記正面部材の他端に該正面部材に対し建物外面側に屈曲
   させて設けた入り隅部を試験するための第２屈曲部材と
   からなることを特徴とする請求項１の建物側壁の耐震試
   験装置。
4. 【請求項４】複数層の供試体取付け部材を固定支柱に装
   着し、少なくとも１層の供試体取付け部材は固定支柱に
   対し前記斜め方向に変位可能に装着されたことを特徴と
   する請求項１、２または３の建物側壁の耐震試験装置。