JPH0513959Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は燃料に含有される硫黄によるピストン
リング、シリンダライナ等の腐食、摩耗を防止す
るようにしたデイーゼル機関に関する。

〔従来の技術〕

第３図に示す従来のデイーゼル機関において、
硫黄を含む燃料油（以下重油という。）を燃焼す
る場合、シリンダ注油孔０７より注入する油内に
アルカリ成分を混入させて、硫黄分と中和し、シ
リンダライナ０３またはピストンリング０４の腐
食摩耗を防止している。

第３図において、０１はピストン、０２はシリ
ンダカバー、０５は排気弁、０６は排気孔、０１
１は燃料噴射弁である。

〔考案が解決しようとする問題点〕

前述のような従来技術によると、シリンダ内で
硫酸ガスと中和するシリンダ油内のアルカリ成分
（例えばCa）は、中和後にCaSO₄となつて、固形
粉末を形成する。

この生成したCaSO₄は、次のような問題点があ
り、機関部品の信頼性を損つている。

(1) CaSO₄の固形粉末が、排気弁シートの咬み込
みシート面に圧痕を形成し、シートの吹き抜け
を生じる。

(2) 排気タービンブレードに付着し、タービン性
能を損う。

(3) 排気中のCaSO₄は、排気ガスエコノマイザチ
ユーブに付着し、伝熱を損う。

はなはだしい時は、チユーブ間を閉塞する。

〔問題点を解決するための手段〕

シリンダ内にアンモニアガス又はアンモニア水
を注入し、シリンダ内の硫酸ガスを中和する。

アンモニアガス又はアンモニア水の噴射口は、
ピストンが上死点又は下死点付近にある時に、ピ
ストントツプランドに対向するシリンダ壁に設け
られ、ピストントツプランドが噴射口を通過する
時期に射出を行う。

〔作用〕

デイーゼル機関で、硫黄を含む燃料油（以下重
油という）を燃焼させた場合、注入したアンモニ
アと反応中和し、硫安（（NH₄）₂SO₄）を形成し、
硫酸による、ピストンリング、シリンダライナの
腐食摩耗を防止する。

この場合、生ずる硫安（（NH₄）₂SO₄）は、さ
らさらした粉末であり、CaSO₄よりやわらかく、
堆積することが少ない。従つて、上記機関部品の
損傷は極めて少なくなる。

〔実施例〕

(1) 第１実施例（第１図） 第１図は、上死点におけるピストン位置を示
す。１はピストン、２はシリンダカバ、３はシリ
ンダライナ、４はピストンリング、５は排気弁、
６は排気孔、７はシリンダ油の注油孔、８はアン
モニアガスまたはアンモニア水の噴出孔、９は噴
出孔８に設けた逆止弁、１０はピストントツプラ
ンド、１１は燃料噴射管、１２は燃料噴霧であ
る。ピストン１は上死点にあり、ピストンの動き
は緩まんであるので、ピストントツプランド１０
とアンモニアガスまたはアンモニア水の噴出孔８
とが相い対している時間は、他のストローク位置
に較べ長く、噴出期間を比較的自由に選べる。

デイーゼル機関は、通常、ピストン１の圧縮終
りの上死点前に、燃料噴射弁１１から、燃料噴霧
を噴射し、燃料が、シリンダ内で着火・燃焼し始
める。

この燃焼期間中に燃料中の硫黄は酸化され、
SO₂ないしSO₃になる。

したがつて、これを中和するため、ピストン１
が上死点から膨張行程に入り始めてから、アンモ
ニアガスまたは、アンモニア水を噴出孔８から噴
出すれば、噴出したアンモニアガスまたはアンモ
ニア水はピストンのトツプランド１０に衝突し、
ピストントツプランド１０とシリンダライナ３の
間〓に拡散し、両面に付着している硫酸と中和す
る。

特に、アンモニアガス、またはアンモニア水を
噴出する噴出孔８はシリンダライナ３の円周方向
に多数設けられており、この両面に集中噴出し、
ピストンリング４およびシリンダライナ３の摺動
面の硫酸と中和し、これらの硫酸による腐食摩耗
を防止する。

また、この間〓間に集中して、アンモニアガス
またはアンモニア水が噴出することで、シリンダ
内には拡散され難く、効率的に両面の中和が行な
われることにより、アンモニアガスまたはアンモ
ニア水の消費量は比較的少なくて済む。

(2) 第２実施例（第２図） 第２図は、ピストンが排気弁閉じ終り（２サイ
クル機関の場合）、吸気弁の閉じ終り（４サイク
ル機関の場合）の位置にある状態を示し、第１実
施例と共通の部材には第１実施例と同一符号を付
してある。本実施例の作用は、第１実施例と基本
的には同じであるが、シリンダ内のガス圧力が比
較的に低いので、アンモニアガスまたはアンモニ
ア水の噴出圧力が低くて済むので、経済的であ
り、かつ実用的である。

アンモニアガスまたはアンモニア水を噴出する
のは、第１、第２実施例共に、図示していない貯
蔵タンクに、アンモニアガスまたは、アンモニア
水を貯え、そこから、高圧ポンプにより噴出孔８
に導かれる。前記高圧ピストンから噴出孔８に至
る送り管に、クランク軸と連動して開閉する制御
弁を設け、アンモニアガスまたはアンモニア水の
噴出孔からの噴出期間、噴出時期を制御する。

〔考案の効果〕

硫黄を含む燃料をデイーゼル機関で燃焼する際
に、アンモニアガスまたはアンモニア水を噴出す
ることにより、硫酸ガスをアンモニアにより中和
し、硫酸によるピストンリング、ならびにシリン
ダライナの腐食摩耗を防止する。

また、従来技術と異なり、シリンダ油の中に
Caなどが含まれないため、CaSO₄の生成による
排気弁シートの吹き抜けを防止することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案デイーゼル機関の第１実施例に
おける要部断面図、第２図は本考案の第２実施例
における要部断面図、第３図は従来装置の断面図
である。 １……ピストン、２……シリンダカバ、３……
シリンダライナ、４……ピストンリング、５……
排気弁、６……排気孔、７……シリンダ油の注油
孔、８……アンモニアガスまたはアンモニア水の
噴出孔、９……逆止弁、１０……ピストントツプ
のランド。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 硫黄を含む燃料油を用いるデイーゼル機関にお
   いて、シリンダライナに、アンモニアガスまたは
   アンモニア水の噴出孔をピストントツプランドと
   相い対する位置に設け、ピストントツプランドが
   前記噴出孔をおおう時期に、アンモニアガスまた
   はアンモニア水のシリンダ内への噴出を開始する
   ようにしたことを特徴とするデイーゼル機関。