JPH0511002B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、型内のキヤビテイにセラミツク射
出用原料を射出注入する際に細径のノズルからス
プールや容量の大きい型のキヤビテイに流入する
ときのジエツテイング現象を防止して高品質のセ
ラミツク射出成形体を得るためのセラミツク射出
成形方法およびその装置に関するものである。

従来の技術 周知のように、セラミツク射出成形では、セラ
ミツク粉末に熱可塑性樹脂を主体とする有機結合
剤や可塑材などを混合して均一に混練されたセラ
ミツク射出用原料を細径のノズルでスプールを介
して型内のキヤビテイに高速で射出注入して成形
を行なつている。

このような高速な流体が細径のノズルのような
流路から径の大なスプールおよびキヤビテイの広
い空間に噴射される際にはセラミツク射出用原料
に絞られたままの状態で射出されるいわゆるジエ
ツテイング現象が起り、射出注入終了後の型内の
原料には流入によるラインが生じてしまう。射出
成形ではこのようなラインはその後の脱脂工程や
焼成工程において、クラツクの原因となり、成形
品の機械的性質などを損い、製品品質を低下させ
る。

このため、従来はセラミツク射出用原料が射出
される際にジエツテイング現象の生じにくい部位
やジエツテイング現象によりクラツクの原因とな
るラインが生じても製品としては特に問題とはな
らない部位を限定してこれらの部位をノズルに近
接させるなどの成形条件の選択により主にジエツ
テイング現象の問題点もしくはジエツテイング現
象そのものの解消を図つている。

さらに、金型構造での対応策としては、セラミ
ツク射出用原料をキヤビテイに射出するためのノ
ズルの径およびスプール径を拡大することにより
容量の大きいキヤビテイに射出用原料が流入した
際のジエツテイング現象の低下を図つており、ま
たキヤビテイ内に移動可能なピンを突出させ、こ
のピンを射出用原料の流入と同期させて後退させ
ることにより射出用原料の自由運動空間を減少さ
せてジエツテイング現象の発生の解消を図る方法
が取られている。

発明が解決しようとする問題点 しかしながら、成形品の部位を限定する成形条
件の選定によりジエツテイング現象の発生を防止
する方法では、成形品の形状や使用目的などによ
りそのような部位を限定することが困難な場合が
あり、あらゆる成形品の製造にこの方法を採用す
ることは困難である。

またノズルやスプールの径を拡大する方法で
は、複雑な成形品や大型の成形品を製造する際に
はその径を拡大することは成形作業などのために
制限を受け、このように複雑な成形品や大型の成
形品のためのキヤビテイを用いる際には有効にジ
エツテイング現象の発生を防止することができな
いという問題点がある。

さらに、キヤビテイに突出させたピンを後退さ
せる方法では、射出用原料の自由運動空間の減少
がピンの移動方向の一軸方向に限定されるために
ジエツテイング現象の発生が前述と同様に有効に
防止されないという問題点がある。

この発明は上記問題点を解決することを基本的
な目的とし、セラミツク射出用原料のキヤビテイ
内への射出の際のジエツテイング現象を有効に防
止して高品質の成形品を得ることができるセラミ
ツク射出成形方法およびその装置を提供すること
を目的とするものである。

問題点を解決するための手段 すなわちこの発明のセラミツク射出成形方法
は、型内のキヤビテイにセラミツク射出用原料を
射出注入するに先立ち、このキヤビテイにセラミ
ツク射出用原料とは分散混合しない液状媒体を注
入して型内を加圧し、この加圧状態でキヤビテイ
へのセラミツク射出用原料の射出注入を開始し、
その後このキヤビテイから前記液状媒体を排出す
ることを特徴とするものである。

さらにこの発明のセラミツク射出成形装置は、
セラミツク射出用原料が射出注入される型内のキ
ヤビテイに前記セラミツク射出用原料とは分散混
合しない液状媒体を注入する注入路とこのキヤビ
テイに注入された液状媒体を排出するための排出
路がそれぞれがキヤビテイに開口するように型を
貫通して形成され、この注入路および排出路には
それぞれ開閉バルブが設けられており、前記注入
路は型外部に配置される液状媒体供給手段に連結
されていることを特徴とするものである。

作 用 この発明のセラミツク射出成形方法によれば、
セラミツク射出用原料の射出前に型内のキヤビテ
イには液状媒体が注入されてこの型内は加圧され
ており、この加圧状態のキヤビテイにセラミツク
射出用原料が射出されるので、この原料はキヤビ
テイでの自由運動空間が３次元的に減少されて、
自由運動が阻害されてジエツテイング現象が防止
される。このセラミツク射出用原料の射出の開始
後にキヤビテイから前記液状媒体を型外に排出
し、キヤビテイにセラミツク射出用原料を残存さ
せて、成形を行なわれる。

またこの発明のセラミツク射出成形装置によれ
ば、注入路の開閉バルブを開き、排出路の開閉バ
ルブを閉じて、液状媒体供給手段から液状媒体を
供給すると、この液状媒体は注入路からキヤビテ
イに注入されて型内は加圧され、注入路の開閉バ
ルブを閉じることにより型内の加圧状態は維持さ
れる。この状態でセラミツク射出用原料をキヤビ
テイに射出すれば、この原料はキヤビテイで自由
運動空間が３次元的に減少されて、ジエツテイン
グ現象が防止される。

さらに、排出路の開閉バルブを開いてキヤビテ
イの液状媒体を型外に排出するとキヤビテイにセ
ラミツク射出用原料が残存し、これを成形して成
形品が得られる。

実施例 次にこの発明のセラミツク射出用成形用装置の
一実施例を添附図面に基づいて説明する。

金型は固定型１と可動型２とを主体として構成
されており、可動型２には内部を貫通して型内面
に開口する連通管を有するエジエクタピン３が設
けられており、このエジエクタピン３と可動型２
との当接面にはＯリング３ａが配置されて、型内
の内容物の洩れが防止されており、固定型１には
セラミツク射出用原料が流入するためのスプール
４が形成されている。

この固定型１の内面内と可動型２の内面内とに
スライドコア５，６が配置されており、このスラ
イドコア５，６によりキヤビテイ７が形成されて
いる。

このスライドコア５，６の外周部には一定の間
隙を有するようにして固定型１と可動型２とに密
着してシールリング８が設けられており、このシ
ールリング８の内面とスライドコア５，６の外面
と固定型１および可動型２の側面とで空間８ａが
形成されている。シールリング８と固定型１およ
び可動型２との当接面にはＯリング８ｂが配置さ
れており、前記空間８ａ内の内容物の外部への洩
れが防止されている。

さらに、シールリング８には連通管９がその先
端を前記空間８ａに突き出して開口するようにし
て挿通されており、この連通管９は金型の外部に
配置されている加圧ポンプ１０に接続されてい
る。この加圧ポンプ１０にはこのポンプ１０への
作動命令が伝達されるライン１１が接続されてお
り、さらに加圧ポンプ１０は媒体タンク１０ａに
連結されており、この加圧ポンプ１０と媒体タン
ク１０ａとで液状媒体供給手段が構成されてい
る。

この媒体タンク１０ａに貯蔵され、加圧ポンプ
１０で供給される液状媒体としては、JISシリン
ダ油１号もしくは２号を用いる。

前記スライドコア５には空間８ａとキヤビテイ
７とを連通するようにして連通管１２が形成され
ている。これらの連通管９と、空間８ａと、連通
管１２とによりキヤビテイに液状媒体を注入する
ための通路が構成されており、前記連通管１２に
は外部に配置されているタイマーなどの制御手段
にライン１３で接続された開閉弁１４が設けられ
ている。

さらに前記エジエクタピン３の連通管１５は、
型内の液状媒体を排出するための通路を兼用する
ようにされ、上記と同様にライン１６で制御手段
に接続された開閉弁１７が設けられている。

また、型内の液状媒体を排出するための通路が
さらにシールリング８に開口する連通管１５ａと
空間８ａとで構成されており、この連通管１５ａ
にライン１６で制御手段に接続された開閉弁１７
が同様に設けられている。これら連通管１５およ
び１５ａは前記媒体タンク１０ａに連結されてい
る。

なお、この装置は従来と同様にしてスプール４
を介してキヤビテイ７内にセラミツク射出用原料
を射出注入するためのノズル１８を有する射出筒
１９が固定型１のスプール４部分に突き当たるよ
うにして配置されている。

次にこの装置を用いて本発明の射出成形方法を
行なう場合の一例について説明する。

可動型２を固定型１に対して前進させて型閉じ
を行ない、キヤビテイ７内にセラミツク射出用原
料を射出注入するに先立ち、この型閉じの終了に
基づく信号がライン１１を通して加圧ポンプ１０
に伝達され、加圧ポンプ１０で媒体タンク１０ａ
に貯蔵された液状媒体を連通管９に供給する。

この媒体は連通管９を通り、空間８ａに供給さ
れる。この際に連通管１２の開閉弁１４はライン
１３の信号に基づき開かれており、この連通管１
２を通して媒体はキヤビテイ７に流入する。

一方、このときには開閉弁１７は閉じられてお
り、前記空間８ａはスライドコア５，６およびシ
ールリング８で密封されており、また、スプール
４がノズル１８に残留する射出用原料により閉じ
られており、スライドコア５，６および型でこの
キヤビテイ７も密封されており、前記射出用原料
の流入が進行し空間８ａおよびキヤビテイ７に媒
体が満たされるとキヤビテイ７は加圧状態とな
る。

またスライドコア５，６で仕切られた空間８ａ
とキヤビテイ７とは同一の圧力がかかるので、ス
ライドコア５，６の歪やキヤビテイ７からの圧洩
れが防止される。この加圧状態が予め設定したタ
イマの時間により媒体の供給から一定時間経過す
ると、開閉弁１４を閉じることにより型内は一定
の圧力に維持される。

この際に加圧ポンプ１０からの媒体の供給も停
止させるのが望ましい。

なお、上記開閉弁１４の閉じ動作をタイマによ
ることなく圧力センサなどにより型内の圧力を検
知して所望圧力に達したならば開閉弁１４を閉じ
るようにしてもよい。

この状態で射出筒１９のノズル１８からセラミ
ツク射出用原料のキヤビテイ７への射出注入を開
始し、制御手段のタイマに所定時間を設定して作
動させる。

この際に型内は加圧された状態にあるので、こ
の原料のジエツテイング現象が防止される。

一方、前記タイマの作動から一定時間が経過す
ると、前記ライン１６からの信号により開閉弁１
７を開くとキヤビテイ７の媒体は連通管１５およ
び連通管１５ａを通して型から排出されて型内は
減圧され、液状媒体は媒体タンク１０ａに送られ
る。

このように射出中に型内から媒体を排出するの
は原料のキヤビテイへの注入により原料自身の自
由運動空間が減少されているので、媒体を排出し
てもジエツテイング現象は有効に防止されてお
り、注入量に見合うだけ排出することにより原料
の射出注入作業を容易にするとともに作業効率を
向上させるためである。

原料のキヤビテイ７への射出注入が完了し、キ
ヤビテイ７から媒体が全量排出されるとキヤビテ
イ７には原料のみが残存した状態にあり、これを
成形してジエツテイング現象によるラインなどが
生じていない成形品が得られる。なお、この開閉
弁１７による媒体の排出は開閉弁１７を全開して
行なうものであつてもよいことは勿論のこと、ラ
イン１６からの信号によりその開閉弁１７をパル
ス的に開閉動作させるようにしたり、開閉弁の開
度角を徐々に変えるなどにより媒体を排出するも
のであつてもよい。

なお、この実施例では液状媒体としてJISシリ
ンダ油１号もしくは２号を用いたが、これに限定
されるものではなく、セラミツク射出用原料の射
出注入の際にこの原料が絞られた状態のままで射
出されることなく、この自由運動を阻害するよう
に一定の粘度を有しており、さらにこの原料との
親和性が小さくて、原料と液状媒体とが分散混合
しないで両者の間に境界が保たれるものであれば
よい。

発明の効果 以上説明したようにこの発明によれば型内のキ
ヤビテイにセラミツク射出用原料を射出注入する
に先立ち、このキヤビテイにセラミツク射出用原
料と分散混合しない液状媒体を注入して型内を加
圧し、この加圧状態でキヤビテイへのセラミツク
射出用原料の射出注入の開始を行ない、その後に
このキヤビテイから前記液状媒体を排出するの
で、セラミツク射出用原料の射出注入の際の原料
の自由運動空間が３次元的に減少されてキヤビテ
イの形状や大きさに影響されることなくジエツテ
イング現象が有効に防止され、高品質のセラミツ
ク成形品を得ることができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明のセラミツク射出成形装置の
一実施例を示す正面断面図、第２図は同じく平面
図である。 １……固定型、２……可動型、４……スプー
ル、５，６……スライドコア、７……キヤビテ
イ、８……シールリング、９……連通管、１０…
…加圧ポンプ、１０ａ……媒体タンク、１２……
連通管、１４……開閉弁、１５……連通管、１７
……開閉弁、１８……ノズル。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 型内のキヤビテイにセラミツク射出用原料を
   射出注入するに先立ち、このキヤビテイに前記セ
   ラミツク射出用原料とは分散混合しない液状媒体
   を注入して型内を加圧し、この加圧状態でキヤビ
   テイへのセラミツク射出用原料の射出注入を開始
   し、その後このキヤビテイから前記液状媒体を排
   出することを特徴とするセラミツク射出成形方
   法。 ２ セラミツク射出用原料が射出注入される型内
   のキヤビテイに前記セラミツク射出用原料とは分
   散混合しない液状媒体を注入する注入路とこのキ
   ヤビテイに注入された前記液状媒体を排出するた
   めの排出路がそれぞれがキヤビテイに開口するよ
   うに型を貫通して形成され、この注入路および排
   出路にはそれぞれ開閉バルブが設けられており、
   前記注入路は型外部に配置される液状媒体供給手
   段に連結されていることを特徴とするセラミツク
   射出成形装置。